JP2004309800A - 光学補償フィルムの製造方法および光学補償フィルム - Google Patents
光学補償フィルムの製造方法および光学補償フィルム Download PDFInfo
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Abstract
【課題】工程数が少なく、量産性に優れ、面内の優れた均一性を有する光学補償フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム基材と2つの光学補償層を有する光学補償フィルムの製造方法であって、
前記基材の両面に光学補償層形成材料の溶液および溶融液の少なくとも一方を塗工して、これを固化することにより、前記基材の両面に光学補償層を形成する製造方法により提供される。
【選択図】 なし
【解決手段】プラスチックフィルム基材と2つの光学補償層を有する光学補償フィルムの製造方法であって、
前記基材の両面に光学補償層形成材料の溶液および溶融液の少なくとも一方を塗工して、これを固化することにより、前記基材の両面に光学補償層を形成する製造方法により提供される。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術】
本発明は、例えば、液晶表示装置等の光学補償に使用する光学補償フィルムの製造方法および光学補償フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示装置等の各種表示装置には、位相差フィルムとして光学補償フィルムが使用されている。前記光学補償フィルムは、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーを、無機材料基材(SUSベルト、銅薄板、ガラス、Siウエハ等)の上に塗工することによって作製されている。また、ポリイミドをSiウエハ上に塗工して、負の光学補償フィルムを製造する方法等も開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0003】
しかしながら、これらの製造方法は、実用に際して以下のような問題がある。例えば、光学補償において前記基材は不要であることから、使用に際しては、前記基材上に形成された光学補償層のみを、前記基材から対象部材に転写したり、前記基材から前記光学補償層のみを剥離して巻き取ること等が必要となる。このような工程は煩雑である。また、前記無機材料基材は、コストが高いという問題もある。
【0004】
これらの問題を解消するため、前記無機材料基材に代えて透明プラスチックフィルム基材の上にポリイミド等のポリマーの溶液を塗工して、乾燥し、光学補償層を形成して、光学補償フィルムを製造することが開示されている(特許文献5参照)。
【0005】
この方法で作製した光学補償フィルムは、無機材料基材の場合とは異なり、そのまま用いることができるので、無機材料基材を用いる場合のように、光学補償層を基材から剥離させる必要がない。従って、この方法は工程数が少なく、量産性に優れる。
【0006】
しかし、プラスチックフィルム基材に光学補償層を形成した光学補償フィルムは、カール(丸く縮まる、反る)するという現象がある。その結果、光学補償フィルムの面内の均一性が損なわれ、例えば位相差バラツキが発生し、表示特性が低下するという問題がある。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第5,344,916号明細書
【特許文献2】
米国特許第5,395,918号明細書
【特許文献3】
米国特許第5,480,964号明細書
【特許文献4】
米国特許第5,580,950号明細書
【特許文献5】
米国特許第6,074,709号明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、工程数が少なく量産性に優れ、面内の均一性を有する光学補償フィルムの製造方法、および面内の均一性に優れた光学補償フィルムを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の光学補償フィルムの製造方法は、
プラスチックフィルム基材と光学補償層を有する光学補償フィルムの製造方法であって、
前記基材の両面に光学補償層形成材料の溶液および溶融液の少なくとも一方を塗工して、これを固化することにより、前記基材の両面に光学補償層を形成することを特徴とする。
【0010】
さらに、前記課題を解決するために、本発明は、プラスチックフィルム基材と光学補償層を有し、前記基材の両面に、前記光学補償層が形成されている光学補償フィルムを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、製造効率およびコスト削減に優れるプラスチックフィルムを基材とした光学補償フィルムのカール防止を解決することを中心課題として、一連の研究を重ねた。その過程で従来のプラスチックフィルムを基材とした光学補償フィルムがカールする原因を突き止めた。すなわち、従来のフィルムでは、基材の一方の面に光学補償層を形成しているため、その形成時(材料液の固化時)に応力が発生し、その結果カールするのである。
【0012】
この知見に基づき、さらに研究を重ねたところ、プラスチックフィルム基材の両面に光学補償層を形成すれば、発生する応力を緩和することができ、その結果カールを防止できることを見出し、本発明に至った。しかも、この方法は、簡単に実施でき、製造効率に優れ、コストも低い。
【0013】
以下、例を挙げて本発明の実施形態について説明する。
前記光学補償層形成材料としては、特に制限されないが、例えば、非液晶性材料、特に非液晶性ポリマーであることが好ましい。このような非液晶性材料を用いれば、例えば、液晶性材料とは異なり、基材の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx>nz、ny>nzという負の光学的一軸性を示す膜が形成できる。
【0014】
前記非液晶性ポリマーとしては、例えば、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
【0015】
前記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
【0016】
前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000−511296号公報に開示された、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記式(1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
【0017】
【化1】
【0018】
前記式(1)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
【0019】
前記式(1)中、Zは、例えば、C6〜20の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(2)で表される基である。
【0020】
【化2】
【0021】
前記式(2)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R7)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R7は、それぞれ独立に、水素またはC(R9)3である。R8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC6〜20アリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
【0022】
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C1〜10のアルキル基、そのフッ素化誘導体、およびFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された前記多環式芳香族基があげられる。
【0023】
この他にも、例えば、特表平8−511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(3)または(4)で示されるホモポリマーや、繰り返し単位が下記一般式(5)で示されるポリイミド等があげられる。なお、下記式(5)のポリイミドは、下記式(3)のホモポリマーの好ましい形態である。
【0024】
【化3】
【0025】
前記一般式(3)〜(5)中、GおよびG’は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0026】
前記式(3)および式(5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
【0027】
前記式(3)〜(5)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
【0028】
前記式(4)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0029】
前記式(5)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
【0030】
前記式(3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(6)で表されるもの等があげられる。
【0031】
【化4】
【0032】
さらに、前記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
【0033】
前記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
【0034】
前記ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
【0035】
また、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−[4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
【0036】
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2’−ビス(トリハロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0037】
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
【0038】
前記ベンゼンジアミンとしては、例えば、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼンおよび1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンのようなベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。前記ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、および3,3’−ジアミノベンゾフェノン等があげられる。前記ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8−ジアミノナフタレン、および1,5−ジアミノナフタレン等があげられる。前記複素環式芳香族ジアミンの例としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、および2,4−ジアミノ−S−トリアジン等があげられる。
【0039】
また、前記芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
【0040】
前記ポリエーテルケトンとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載された、下記一般式(7)で表されるポリアリールエーテルケトンがあげられる。
【0041】
【化5】
【0042】
前記式(7)中、Xは、置換基を表し、qは、その置換数を表す。Xは、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、低級アルコキシ基、または、ハロゲン化アルコキシ基であり、Xが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。
【0043】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子があげられ、これらの中でも、フッ素原子が好ましい。前記低級アルキル基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖を有する低級アルキル基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、および、tert−ブチル基が好ましく、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。前記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の前記低級アルキル基のハロゲン化物があげられる。前記低級アルコキシ基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、および、tert−ブトキシ基が、さらに好ましく、特に好ましくはメトキシ基およびエトキシ基である。前記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の前記低級アルコキシ基のハロゲン化物があげられる。
【0044】
前記式(7)中、qは、0から4までの整数である。前記式(7)においては、q=0であり、かつ、ベンゼン環の両端に結合したカルボニル基とエーテルの酸素原子とが互いにパラ位に存在することが好ましい。
また、前記式(7)中、R1は、下記式(8)で表される基であり、mは、0または1の整数である。
【0045】
【化6】
【0046】
前記式(8)中、X’は置換基を表し、例えば、前記式(7)におけるXと同様である。前記式(8)において、X’が複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。q’は、前記X’の置換数を表し、0から4までの整数であって、q’=0が好ましい。また、pは、0または1の整数である。
【0047】
前記式(8)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−もしくはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等があげられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合している水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、前記R2としては、下記式(9)〜(15)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
【0048】
【化7】
【0049】
前記式(7)中、前記R1としては、下記式(16)で表される基が好ましく、下記式(16)において、R2およびpは前記式(8)と同義である。
【0050】
【化8】
【0051】
さらに、前記式(7)中、nは重合度を表し、例えば、2〜5000の範囲であり、好ましくは、5〜500の範囲である。また、その重合は、同じ構造の繰り返し単位からなるものであってもよく、異なる構造の繰り返し単位からなるものであってもよい。後者の場合には、繰り返し単位の重合形態は、ブロック重合であってもよいし、ランダム重合でもよい。
【0052】
さらに、前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p−テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましく、このようなポリアリールエーテルケトンは、例えば、下記一般式(17)で表すことができる。なお、下記式において、nは前記式(7)と同様の重合度を表す。
【0053】
【化9】
【0054】
前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの具体例としては、下記式(18)〜(21)で表されるもの等があげられ、下記各式において、nは、前記式(7)と同様の重合度を表す。
【0055】
【化10】
【0056】
また、これらの他に、前記ポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されるポリアミドやポリエステルがあげられ、それらの繰り返し単位は、例えば、下記一般式(22)で表すことができる。
【0057】
【化11】
【0058】
前記式(22)中、Yは、OまたはNHである。また、Eは、例えば、共有結合、C2アルキレン基、ハロゲン化C2アルキレン基、CH2基、C(CX3)2基(ここで、Xはハロゲンまたは水素である。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基、および、N(R)基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の基であり、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。前記Eにおいて、Rは、C1−3アルキル基およびC1−3ハロゲン化アルキル基の少なくとも一種類であり、カルボニル官能基またはY基に対してメタ位またはパラ位にある。
【0059】
また、前記(22)中、AおよびA’は、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
【0060】
前記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、前記定義のものである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C1−9アルコキシカルボニル基、C1−9アルキルカルボニルオキシ基、C1−12アリールオキシカルボニル基、C1−12アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C1−12アリールカルバモイル基、ならびに、C1−12アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記A’は、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせがあげられる。前記tは、0から4までの整数であり、前記zは、0から3までの整数である。
【0061】
前記式(22)で表されるポリアミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(23)で表されるものが好ましい。
【化12】
【0062】
前記式(23)中、A、A’およびYは、前記式(22)で定義したものであり、vは0から3の整数、好ましくは、0から2の整数である。xおよびyは、それぞれ0または1であるが、共に0であることはない。
【0063】
本発明のプラスチックフィルム基材としては特に制限はなく、適宜なものを用いることができる。そのプラスチックフィルムの例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂および、これらの混合物のフィルムがあげられる。
【0064】
また、本発明のプラスチックフィルム基材として、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムがあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基およびシアノ基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
前記基材の厚みは、特に制限されないが、延伸処理を施されることや、強度、薄膜化等の点から、例えば5〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜300μm、特に好ましくは5〜150μmの範囲である。
【0065】
本発明の光学補償フィルムの製造方法は、例えば、以下に示すようにして行うことができる。
【0066】
まず、プラスチックフィルム基材の両面に光学補償層形成材料の溶液および溶融液の少なくとも一方を塗工する。
【0067】
前記形成材料の溶液における前記形成材料濃度は、特に制限されないが、例えば、塗工が容易な粘度となることから、溶媒100重量部に対して、例えば、前記形成材料5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。
【0068】
前記形成材料の溶液の溶媒としては、特に制限されず、例えば、前記非液晶性ポリマー等の形成材料を溶解できればよく、前記形成材料の種類に応じて適宜決定できる。具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド類;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0069】
前記形成材料の溶液は、例えば、必要に応じて、さらに安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤を配合してもよい。
また、前記形成材料の溶液は、例えば、前記形成材料の配向性等が著しく低下しない範囲で、異なる他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
【0070】
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。
【0071】
このように、前記他の樹脂等を前記形成材料の溶液に配合する場合、その配合量は、前記形成材料100重量部に対してに対して、例えば0〜50重量部であり、好ましくは0〜30重量部である。
【0072】
前記形成材料の溶液の塗工方法としては、前記基材の両面が塗工可能な方法であれば限定されないが、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビア印刷法等があげられる。
【0073】
前記形成材料の溶融液は、特に限定されないが、例えば前述のような非液晶性ポリマー等の前記形成材料を加熱溶融した液が挙げられる。前記形成材料の溶融液の塗工方法としては、前記基材の両面が塗工可能な方法であれば限定されないが、例えば、ロールコート法、ディップコート法等が挙げられる。前記形成材料の溶融液は、例えば、必要に応じて、上述の安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤および異なる他の樹脂をさらに含有してもよい。
【0074】
次いで、前記基材に塗工された前記形成材料の溶液または溶融液を固化させて、前記基材の両面に光学補償層を有する光学補償フィルムを形成する。
前記固化の方法としては、前記形成材料を固化させ、前記形成材料フィルムを形成する方法であれば、特に制限されず、例えば、自然乾燥や加熱乾燥等の乾燥があげられる。その条件も、例えば、前記形成材料の種類や、溶液の場合には前記溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、温度は、通常、20℃〜400℃であり、好ましくは60℃〜300℃であり、さらに好ましくは65℃〜250℃である。なお、固化は、一定温度で行っても良いし、段階的に温度を上昇または下降させながら行っても良い。固化時間も特に制限されないが、通常、0.5分〜200分、好ましくは1分〜120分、さらに好ましくは5分〜100分以下である。
【0075】
なお、前記形成材料の塗工と固化を行う順序の組み合わせは、前記基材の両面に、前記形成材料の溶液または溶融液を塗工し、固化させるのであれば、特に制限されない。例えば、まず前記基材の片面のみに前記形成材料の溶液を塗工して、それを風乾のように加熱をせずに乾燥した後、前記基材の別の片面に前記形成材料の溶液を塗工して、前記基材の両面を固化させて、前記基材の両面に光学補償層を形成してもよい。また、前記基材の両面に、一度に前記形成材料の溶液を塗工し、その後固化させて前記基材の両面に光学補償層を形成してもよい。
【0076】
前記基材に光学補償層を形成後、この光学補償層と前記基材とを一体として、さらに延伸するかまたは収縮させてもよい。
前記延伸の方法としては、特に制限されず、例えば、固定端延伸や、従来公知の方法が適用できる。
この際の延伸倍率は、その延伸方向において、延伸前の前記光学補償層と前記基材の一体の長さに対して、1.0001〜3.0倍であることが好ましい。前記延伸倍率が1.0001〜3.0倍であれば、延伸ムラが発生しにくいため、フィルム面内において屈折率のばらつきが生じないという効果が得られるためである。前記延伸倍率は、より好ましくは1.0005〜1.8倍の範囲であり、特に好ましくは1.001〜1.50倍である。なお、前記延伸方向は特に限定されず、MD方向、TD方向のいずれであってもよい。
【0077】
前記収縮方法としては、特に制限されず、例えば、緩和法や、従来公知の方法が適用できるが、例えば、収縮時における基材の変形を防止できる点から、緩和法が好ましい。
このように、前記光学補償層と前記基材を一体として延伸するかまたは収縮させて得られる光学補償フィルムは、面内位相差(△nd)および厚み方向位相差(Rth)を適宜制御できるので、好ましい。
【0078】
このような方法によって、例えば、プラスチックフィルム基材と光学補償層とを有し、前記基材の両面に前記光学補償層が形成されている、光学補償フィルムを得ることができる。このような方法によって形成された光学補償層の一層は、例えば0.1〜100μmの厚みを有する。前記基材の面上に形成された前記光学補償層は、両方の厚みは等しくても異なっていてもよい。両方の厚みが等しいと、光学補償フィルムがカールしにくくなり、より好ましい。このような方法によって形成された光学補償層の一層は、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜20μmの厚みを有する。
【0079】
さらに、このような方法によって前記基材の両面に形成される前記光学補償層は、両面とも同じ数の前記光学補償層が形成されてもよいし、異なる数の前記光学補償層が形成されてもよい。各光学補償層の厚みは、上述のように、等しくても、異なっていてもよい。
そして、前記基材の両面に形成される前記光学補償層は、同じ光学補償層形成材料から形成されてもよいし、異なる前記形成材料から形成されてもよい。
【0080】
本発明の光学補償フィルムは、プラスチックフィルム基材と光学補償層とを有し、前記基材の両面に前記光学補償層が形成されている、光学補償フィルムである。この光学補償フィルムは、どのような方法で製造してもよいが、前述の本発明の製造方法により製造することが好ましい。この光学補償フィルムは、前記基材の両面に前記光学補償層が形成されているので、前記基材のカールが抑制される。また、基材層の両面に光学補償層を形成することにより、厚み精度が向上し、その結果、面内位相差(△nd)および厚み方向位相差(Rth)のバラツキの少ない光学補償フィルムとなる。
【0081】
本発明の光学補償フィルムは、下記の式(1)から(3)を全て満たし、かつ前記光学補償フィルムの複屈折率(△n)が0.0005〜0.5の範囲にあるのが好ましい。
nx>ny>nz (1)
3(nm)≦△nd (2)
(nx−nz)/(nx−ny)>1 (3)
(前記式において、△nは、[{(nx+ny)/2}−nz]・d/dで表され、△ndは(nx−ny)・dで表され、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記光学補償フィルムにおけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学補償フィルムの面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であり、dは前記光学補償フィルムの厚みを示す。)
【0082】
光学補償フィルムの複屈折率(△n)の値が0.0005以上の場合は、所定の位相差を得るためには光学補償層をより薄くすることができ、一方0.5以下の場合は厚みムラによる位相差のバラツキが少なくなる。光学補償フィルムの複屈折率(△n)の値は好ましくは0.001〜0.2の範囲、さらに好ましくは0.002〜0.15の範囲である。
【0083】
式中においてnx,ny,nzとは、前記光学補償フィルムにおける3つの光軸方向における屈折率をそれぞれ示す。具体的に、図1の概略図に光学補償フィルムにおける屈折率(nx, ny, nz)の光軸方向を矢印で示す。屈折率nx, ny, nzは、前述のように、それぞれX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、図示のように、前記X軸とは面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な前記光学補償フィルムの厚み方向を示す。
【0084】
面内位相差(△nd)は、10(nm)≦△ndであるのが好ましい。さらに、20(nm)≦△ndであるのが、より好ましい。
Nz係数は、(nx−nz)/(nx−ny)>3であるのが好ましい。さらに、(nx−nz)/(nx−ny)>4であるのが、より好ましい。
【0085】
また、本発明の製造方法により得られる光学補償フィルムは、カールの発生が抑制されているのが好ましい。そのような光学補償フィルムとしては、全くカールしていない光学補償フィルムが含まれ、例えば、一辺が10cmの正方形状に成形し、この成形体を、その凸面を下にして水平面上に設置した場合、前記水平面からの前記成形体の前記凸面までの高さの最大値が、10mm以下である光学補償フィルムが、より好ましい。前記距離の最大値は、5mm以下である光学補償フィルムが、さらに好ましい。
【0086】
また、本発明の製造方法により得られる光学補償フィルムは、面内位相差値と厚み方向位相差値にばらつきが少ないものが好ましい。例えば、一辺が6cmの正方形状に成形し、この成形体の面上で、相互に1cmの距離をおいて任意に25個の点をとった場合、
前記各点における面内位相差値(△nd(X))と、これらの平均値(△nd(V))とが、下記の式(4)を満たし、かつ
前記各点における厚み方向位相差値(Rth(X))と、これらの平均値(Rth(V))とが、下記の式(5)を満たすのが、より好ましい。
|△nd(V)−△nd(X)|≦3(nm) (4)
|Rth(V)−Rth(X)|≦5(nm) (5)
【0087】
前記式において、
△nd(V)は、25点における面内位相差値の平均値を表し、
△nd(X)は、前記成形体の各点における面内位相差値を表し、
△ndは、(nx−ny)・dで表される。
Rth(V)は、25点における厚み方向位相差値の平均値を表し、
Rth(X)は、前記成形体の各点における厚み方向位相差値を表し、
Rthは、[{(nx+ny)/2}−nz]・dで表される。
【0088】
nx、nyおよびnzは、それぞれ前記光学補償フィルムにおけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学補償フィルムの面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であり、dは前記光学補償フィルムの厚みを示す。)
【0089】
さらに好ましくは、|△nd(V)−△nd(X)|≦2(nm)であり、よりさらに好ましくは、|△nd(V)−△nd(X)|≦1(nm)である。
さらに好ましくは、|Rth(V)−Rth(X)|≦3(nm)であり、よりさらに好ましくは、|Rth(V)−Rth(X)|≦2(nm)である。
【0090】
次に、本発明の光学補償フィルムと偏光子とを含む光学補償フィルム付偏光板について説明する。
【0091】
本発明で用いる偏光子は、特に限定されないが、例えば、偏光子の片側又は両側に、適宜の接着層を介して、保護層を接着したものが挙げられる。
【0092】
前記偏光子(偏光フィルム)としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって調製したもの等が使用できる。この中でも、自然光を入射させると直線偏光を透過するフィルムが好ましく、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。前記二色性物質を吸着させる各種フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられ、これらの他にも、例えば、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、好ましくはPVA系フィルムである。また、前記偏光フィルムの厚みは、通常、1〜80μmの範囲であるが、これには限定されない。
【0093】
前記保護層としては、特に制限されず、従来公知の透明フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような透明保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロール等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等があげられる。また、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等もあげられる。この中でも、偏光特性や耐久性の点から、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。
【0094】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムがあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有す熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
【0095】
また、前記保護層は、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx,ny,nzは、それぞれ前記保護層におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記保護層の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であり、dは、その膜厚を示す。
Rth={[(nx+ny)/2]−nz}・d
【0096】
また、前記透明保護層は、さらに光学補償機能を有するものでもよい。このように光学補償機能を有する透明保護層としては、例えば、液晶セルにおける位相差に基づく視認角の変化が原因である、着色等の防止や、良視認の視野角の拡大等を目的とした公知のものが使用できる。具体的には、例えば、前述した透明樹脂を一軸延伸または二軸延伸した各種延伸フィルムや、液晶ポリマー等の配向フィルム、透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を配置した積層体等があげられる。これらの中でも、良視認の広い視野角を達成できることから、前記液晶ポリマーの配向フィルムが好ましく、特に、ディスコティック系やネマチック系の液晶ポリマーの傾斜配向層から構成される光学補償層を、前述のトリアセチルセルロースフィルム等で支持した光学補償位相差板が好ましい。このような光学補償位相差板としては、例えば、富士写真フィルム株式会社製「WVフィルム」等の市販品があげられる。なお、前記光学補償位相差板は、前記位相差フィルムやトリアセチルセルロースフィルム等のフィルム支持体を2層以上積層させることによって、位相差等の光学特性を制御したもの等でもよい。
【0097】
前記透明保護層の厚みは、特に制限されず、例えば、位相差や保護強度等に応じて適宜決定できるが、通常、500μm以下であり、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜150μmの範囲である
【0098】
前記透明保護層は、例えば、偏光フィルムに前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光フィルムに前記透明樹脂製フィルムや前記光学補償位相差板等を積層する方法等の従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
【0099】
また、前記透明保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。前記ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記透明保護層の表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、前記処理は、従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。前記反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
【0100】
前記アンチグレア処理とは、偏光板表面において外光が反射することによる、偏光板透過光の視認妨害を防止すること等を目的とし、例えば、従来公知の方法によって、前記透明保護層の表面に、微細な凹凸構造を形成することによって行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト法やエンボス加工等による粗面化方式や、前述のような透明樹脂に透明微粒子を配合して前記透明保護層を形成する方式等があげられる。
【0101】
前記透明微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等があげられ、この他にも導電性を有する無機系微粒子や、架橋または未架橋のポリマー粒状物等から構成される有機系微粒子等を使用することもできる。前記透明微粒子の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20μmの範囲である。また、前記透明微粒子の配合割合は、特に制限されないが、一般に、前述のような透明樹脂100質量部あたり2〜70質量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜50質量部の範囲である。
【0102】
前記透明微粒子を配合したアンチグレア層は、例えば、透明保護層そのものとして使用することもでき、また、透明保護層表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、前記アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視覚補償機能等)を兼ねるものであってもよい。
【0103】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、アンチグレア層等は、前記透明保護層とは別個に、例えば、これらの層を設けたシート等から構成される光学層として、偏光板に積層してもよい。
【0104】
光学補償フィルム付偏光板を作製する方法としては、例えば、接着層又は粘着層を介して、光学補償フィルムと偏光板を貼り合わせる方法等が挙げられる。
貼り合わせに用いられる接着剤又は粘着剤としては特に限定はなく、その種類は、前記各構成物の材質等によって適宜決定できる。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤や、ゴム系接着剤等があげられる。また、ホウ酸、ホウ砂、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤等から構成される接着剤等も使用できる。
【0105】
前述のような粘着剤、接着剤は、例えば、湿度や熱の影響によっても剥がれ難く、光透過率や偏光度にも優れる。具体的には、前記偏光子がPVA系フィルムの場合、例えば、接着処理の安定性等の点から、PVA系接着剤が好ましい。なお、光学補償フィルム等の光学特性の変化を防止する点より、接着剤又は粘着剤の硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないのが好ましく、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないものが望ましい。また、加熱や加湿条件下に剥離等が生じない接着剤又は粘着剤が好ましく用いられる。
【0106】
これらの接着剤や粘着剤は、例えば、そのまま偏光子や透明保護層の表面に塗布してもよいし、前記接着剤や粘着剤から構成されたテープやシートのような層を前記表面に配置してもよい。また、例えば、水溶液として調製した場合、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。なお、前記接着剤を塗布する場合は、例えば、前記接着剤水溶液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。
【0107】
このような接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1nm〜500nmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。特に限定されず、例えば、アクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマー等の接着剤等を使用した従来公知の方法が採用できる。また、湿度や熱等によっても剥がれにくく、光透過率や偏光度に優れる偏光板を形成できることから、さらに、ホウ酸、ホウ砂、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のPVA系ポリマーの水溶性架橋剤を含む接着剤が好ましい。
【0108】
本発明の光学補償フィルム付偏光板は、各種液晶表示装置の形成などに好ましく用いることができる。実用に際しては、必要に応じて、接着層や粘着層を介して反射板、半透過反射板、位相差板(1/2波長板、1/4波長板などのλ板も含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの、液晶表示装置等の形成に用いられることのある他の光学層の1層又は2層以上を本発明の光学補償フィルムに積層することができる。なお、積層には、粘着層等の適宜な接着手段を用いることができる。
【0109】
特に、前述した光学補償フィルム付偏光板に、さらに反射板または半透過反射板が積層されている反射型偏光板または半透過型偏光板、前述した光学補償フィルム付偏光板に、更に位相差板が積層されている楕円偏光板または円偏光板、前述した光学補償フィルム付偏光板に、さらに、視角補償フィルムが積層されている偏光板、あるいは、前述した光学補償フィルム付偏光板に、更に高輝度向上フィルムが積層されている偏光板が望ましい。
【0110】
まず、前述した光学補償フィルム付偏光板に、更に、反射板または半透明反射板が積層されている反射型偏光板または半透過反射板型偏光板について説明する。
反射板は、それを偏光板に設けて反射型偏光板を形成するためのものである。反射型偏光板は、通常液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)から入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等に使用できる。このような反射型偏光板は、例えばバックライト等の光源の内蔵を省略できるため、液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。
【0111】
反射型偏光板は、偏光板の片面に、金属等から構成される反射層を形成する方法等、従来公知の方法によって製造できる。具体的には、例えば、前記偏光板の透明保護層の片面(露出面)を必要に応じてマット処理し、前記面に、アルミニウム等の反射性金属からなる金属箔や蒸着膜を反射層として形成した反射型偏光板が挙げられる。
【0112】
また、微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした上記の透明保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射層を形成した、反射型偏光板等も挙げられる。その表面が微細凹凸構造である反射層は、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。この様な反射層は、例えば前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式など、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
【0113】
また、反射板は、前記のように偏光板の透明保護層に反射層を直接形成する方式に代えて、前記透明保護フィルムのような適当なフィルムに反射層を設けた反射シート等を使用してもよい。前記反射板における反射層は、通常、金属から構成されるため、例えば、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続や、透明保護層の別途形成を回避する点などから、その使用形態は、前記反射層の反射面が前記フィルムや偏光板等で被覆された状態であることが好ましい。
【0114】
一方、半透過型偏光板は、前記反射型偏光板において、反射板に代えて、半透過型の反射層を有するものである。前記半透過型反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等が挙げられる。
前記半透過型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射して画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等に使用できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、一方、比較的暗い雰囲気下においても、内臓光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0115】
次に、前述した光学補償フィルム付偏光板に、更に位相差板(λ板)が積層されている楕円偏光板又は円偏光板について説明する。
位相差板は、直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変えるときに用いられる。
【0116】
上記の楕円偏光板は、スーパーツイストネマチック(SNT)型液晶表示装置の液晶層の複屈折によって生じた着色(青または黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示にする場合などに有効に用いられる。さらに、3次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができるため好ましい。また、円偏光は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0117】
前記の位相差板としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリノルボルネン等のポリマーフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどが挙げられる。
【0118】
位相差板は、例えば1/2や1/4等の各種波長板、液晶層の複屈折による着色の補償や視野角拡大等の視角の補償を目的としたものなど、使用目的に応じた位相差を有するものであってよく、厚さ方向の屈折率を制御した傾斜配向フィルムであってもよい。また、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものでもよい。
【0119】
次に、前述した光学補償フィルム付偏光板に更に視角補償フィルムが積層されている偏光板について説明する。
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなく、やや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明に見えるように視角を広げるためのフィルムである。このような視角補償フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルムなどにディスコティック液晶を塗工したものや位相差板が用いられる。
【0120】
通常の位相差板には、その両方向に一軸延伸された、複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、両方向に二軸延伸された複屈折を有するポリマーフィルムや、両方向に一軸延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した傾斜配向ポリマーフィルムのような2方向延伸フィルムなどが用いられる。
【0121】
傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮性フィルムを接着し、加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、前記の位相差板で用いるポリマーと同様のものが用いられる。
【0122】
次に、前述した光学補償板フィルム付偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されている偏光板について説明する。
この偏光板は通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより、自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光又は所定偏光の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すものである。バックライト等の光源からの光を入射させ、所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射する。
【0123】
この輝度向上フィルム面で反射した光を、さらにその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上板に再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させ、輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収されにくい偏光を供給して、液晶画像表示等に利用しうる光量増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光はほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。
【0124】
輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに、輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上板に再入射させることを繰り返す。そして、その両者間で反射、反転している光の偏光方向が、偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを透過させ、偏光子に供給するので、バックライト等の光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0125】
輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの(3M社製、商品名「D−BEF」等)、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの(日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」)のような、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを使用できる。
【0126】
従って、所定偏光軸の直線偏光を通過するタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率良く透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点より、その透過円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0127】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものを組合せて、2層以上の重畳した配置構造を構成することができる。そのような構成により、可視光域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、広い波長範囲の透過円偏光が得られる。
また、光学補償板フィルム付偏光板は、2層以上の光学層を含んでもよい。光学層として、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を有する、反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板等でもよい。
【0128】
前記の2層以上の光学層を有する光学補償フィルム付偏光板は、液晶表示装置等の製造過程において、前記偏光板上に、順次別個に積層することによっても形成することができる。一方、前記偏光板に予め前記光学層を積層して製造した光学部材は、品質の安定性や組み立て作業性等に優れて、液晶表示装置などの製造効率を向上させることができるという利点がある。なお、前記光学部材の積層には、粘着層等の適当な接着手段を用いることができる。
【0129】
本発明の光学補償フィルム付偏光板には、他の光学層や液晶セル等の他部材と接着するための粘着層もしくは接着層を設けることもできる。前記粘(接)着層は、アクリル系等の従来に準じた適宜な粘着剤等を用いて形成することができる。特に、吸湿による発泡現象や剥れ現象の防止、熱膨張差等による光学特性と低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの観点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層も好ましい。粘(接)着層は必要に応じて、本発明の光学補償フィルム付偏光板の必要な面に設けることができる。
【0130】
光学補償フィルム付偏光板に設けた粘(接)着層の表面が露出する場合には、その粘(接)着層を実用に供するまでの間、汚染防止等のために前記表面をセパレータでカバーすることが好ましい。このセパレータは、上記の透明保護フィルム等のような適当なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤を用いて剥離コートを設ける方法等により形成できる。
【0131】
なお、上記の光学補償フィルム付偏光板、光学部材を形成する偏光フィルム、透明保護フィルム、光学層、粘(接)着層などの各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理するなどの適当な方法により、紫外線吸収能を持たせたものでもよい。
【0132】
本発明の光学補償フィルムおよび光学補償フィルム付偏光板は、液晶表示装置等の各種装置の形成に用いることが好ましい。例えば、前記偏光板を液晶セルの片側または両側に配置して液晶パネルとし、反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。
液晶表示装置を形成する液晶セルの種類は、任意で選択でき、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなど、種々のタイプの液晶セルが使用できる。
【0133】
また、前記液晶セルは、通常、対向する液晶セル基板の間隙に液晶が注入された構造であって、前記液晶セル基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス基板やプラスチック基板が使用できる。なお、前記プラスチック基板の材質としては、特に制限されず、従来公知の材料があげられる。
【0134】
また、液晶セルの両側に偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じ種類のものであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライトなどの適宜な部品を、適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0135】
さらに、本発明の液晶表示装置は、さらに光源を有する場合には、特に制限されないが、例えば、光のエネルギーが有効に使用できることから、例えば、偏光を出射する平面光源であることが好ましい。
【0136】
本発明の液晶表示装置の一例としては、以下のような構成があげられる。例えば、液晶セルおよび光学部材を有しており、前記液晶セルの少なくとも一方の面に本発明の光学補償フィルムまたは光学補償フィルム付偏光板が配置されている構造である。
【0137】
本発明の液晶表示装置は、視認側の光学補償フィルムの上に、例えば、さらに拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護層や保護板を配置したり、または液晶パネルにおける液晶セルと偏光板との間に補償用位相差板等を適宜配置することもできる。
【0138】
なお、本発明の光学補償フィルムや光学補償フィルム付偏光板は、前述のような液晶表示装置には限定されず、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)等の自発光型表示装置にも使用できる。
本発明の画像表示装置の一例としては、以下のような構成が挙げられる。例えば、本発明の光学補償フィルムまたは光学補償フィルム付偏光板を含む構成となっている。
【0139】
以下に、本発明の偏光板を備えるエレクトロルミネッセンス(EL)表示装置について説明する。本発明のEL表示装置は、本発明の光学補償フィルムまたは偏光板を有する表示装置であり、このEL装置は、有機ELおよび無機ELのいずれでもよい。
【0140】
近年、EL表示装置においても、黒状態における電極からの反射防止として、例えば、偏光子や偏光板等の光学フィルムをλ/4板とともに使用することが提案されている。本発明の光学補償フィルム偏光子や光学補償フィルムは、特に、EL層から、直線偏光、円偏光もしくは楕円偏光のいずれかの偏光が発光されている場合、あるいは、正面方向に自然光を発光していても、斜め方向の出射光が部分偏光している場合等に、非常に有用である。
【0141】
まずここで、一般的な有機EL表示装置について説明する。前記有機EL表示装置は、一般に、透明基板上に、透明電極、有機発光層および金属電極がこの順序で積層された発光体(有機EL発光体)を有している。前記有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層とアントラセン等の蛍光性有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層との積層体や、また、前記正孔注入層と発光層と電子注入層との積層体等、種々の組み合わせがあげられる。
【0142】
そして、このような有機EL表示装置は、前記陽極と陰極とに電圧を印加することによって、前記有機発光層に正孔と電子とが注入され、前記正孔と電子とが再結合することによって生じるエネルギーが、蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。前記正孔と電子との再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、電流と発光強度とは、印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0143】
前記有機EL表示装置においては、前記有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要なため、通常、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電体で形成された透明電極が陽極として使用される。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に、仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常、Mg−Ag、Al−Li等の金属電極が使用される。
【0144】
このような構成の有機EL表示装置において、前記有機発光層は、例えば、厚み10nm程度の極めて薄い膜で形成されることが好ましい。これは、前記有機発光層においても、透明電極と同様に、光をほぼ完全に透過させるためである。その結果、非発光時に、前記透明基板の表面から入射して、前記透明電極と有機発光層とを透過して前記金属電極で反射した光が、再び前記透明基板の表面側へ出る。このため、外部から視認した際に、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見えるのである。
【0145】
本発明の有機EL表示装置は、例えば、前記有機発光層の表面側に透明電極を備え、前記有機発光層の裏面側に金属電極を備えた前記有機EL発光体を含む有機EL表示装置において、前記透明電極の表面に、本発明の光学補償フィルム(偏光板等)が配置されることが好ましく、さらにλ/4板を偏光板とEL素子との間に配置することが好ましい。このように、本発明の光学補償フィルムを配置することによって、外界の反射を抑え、視認性向上が可能であるという効果を示す有機EL表示装置となる。また、前記透明電極と光学フィルムとの間に、さらに位相差板が配置されることが好ましい。
【0146】
前記位相差板および光学補償フィルム(偏光板等)は、例えば、外部から入射して前記金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって前記金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板として1/4波長板を使用し、かつ、前記偏光板と前記位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、前記金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、前記偏光板によって直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は、前記位相差板によって、一般に楕円偏光となるが、特に前記位相差板が1/4波長板であり、しかも前記角がπ/4の場合には、円偏光となる。
【0147】
この円偏光は、例えば、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び、有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、前記位相差板で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、前記偏光板の偏光方向と直交しているため、前記偏光板を透過できず、その結果、前述のように、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができるのである。
【0148】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(位相差の測定)
位相差計(王子計測機器社製、商品名:KOBRA21ADH)を用いて測定した。
(前記水平面からの前記成形体の前記凸面までの高さの最大値)
光学補償フィルムを一辺が10cmの正方形の形に切断した。そのフィルムの凸面を下にして水平面上に設置した(図2参照)。垂直方向における、前記水平面からの前記フィルムの両端までの高さH1およびH2を、ノギス(株式会社ミツトヨ製、商品名:ハイトゲージ)を用いて測定した。H1およびH2のうち大きいほうを、前記水平面からの前記成形体の前記凸面までの高さの最大値とした。
【0149】
(位相差値のばらつき)
光学補償フィルムを、長さ6cm×幅6cmの正方形に切断して調製し、これをサンプルとした。前記サンプルの面内において、相互に1cmの間隔をとって任意にとった25点のX1〜X25(図3参照)の各点について、前記装置を用いて面内位相差値と厚み方向位相差値を測定した。これら測定値から、それぞれの平均値を求めた。
その平均値と、各点における面内位相差値と厚み方向位相差値とから、各点における各位相差のばらつきを、下記式から算出した。
|△nd(V)−△nd(X)| (6)
|Rth(V)−Rth(X)| (7)
△nd(V)は、25点における面内位相差値の平均値を表し、
△nd(X)は、前記サンプルの各点における面内位相差値を表し、
Rth(V)は、25点における厚み方向位相差値の平均値を表し、
Rth(X)は、前記サンプルの各点における厚み方向位相差値を意味する。
【0150】
(実施例1)
2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FDA)及び2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(PFMB)から合成した、重量平均分子量Mw=120,000のポリイミドをシクロヘキサノンに溶解させ、10重量%のポリイミド溶液を調製した。
この溶液を、トリアセチルセルロースフィルム(基材)(厚さ80μm)の両面にディップコート法にて両面塗工した。なお、ポリイミド溶液の塗工量は、両面とも、前記トリアセチルセルロースフィルムの面積(cm2)あたり0.3mlとした。その後、100℃で10分間加熱処理し、透明で平滑な層毎の厚さ各3μmの3層構造フィルムを得た。得られた3層構造フィルムを、さらに175℃で固定端横延伸にて1.2倍横延伸した。平面と、光学補償フィルムの垂直方向の距離の最大値は3mmであった。また、得られた光学補償フィルムは、nx>ny>nzであり、光学補償フィルムの複屈折率は0.04であった。
【0151】
得られた光学補償フィルムから上記のようにサンプルを調製し、そのサンプルの25点すべてについて、面内位相差値および厚み方向位相差値のばらつきを測定した。面内位相差値(△nd)の平均値は50nmであり、面内位相差値のばらつきは25点すべて1nm以下であった。
また、厚み方向位相差値(Rth)の平均値は220nmであり、厚み方向位相差値のばらつきは25点すべて2nm以下であった。
サンプルの1点についての面内位相差値△ndは50nm、(nx−nz)/(nx−ny)=5であった。
【0152】
(実施例2)
実施例1で調製したポリイミド溶液を、トリアセチルセルロースフィルム(基材)(厚さ80μm)の、まず、片面にワイヤーバーコート法にて塗工し、風乾した。なお、ポリイミド溶液の塗工量は、前記トリアセチルセルロースフィルムの面積(cm2)あたり0.3mlとした。その後さらに前記トリアセチルセルロースフィルムの反対面側に前記ポリイミド溶液をワイヤーバーコート法にて塗工した。なお、ポリイミド溶液の塗工量は、前記トリアセチルセルロースフィルムの面積(cm2)あたり0.3mlとした。その後、100℃で10分間加熱処理し、透明で平滑な層毎の厚さ各3μmの3層構造フィルムを得た。得られた3層構造フィルムを、さらに、175℃で固定端横延伸にて1.2倍横延伸した。平面と、光学補償フィルムの垂直方向の距離の最大値は5mmであった。また、得られた光学補償フィルムは、nx>ny>nzであり、光学補償フィルムの複屈折率は0.04であった。
【0153】
得られた光学補償フィルムから上記のようにサンプルを調製し、そのサンプルの25点すべてについて、面内位相差値および厚み方向位相差値のばらつきを測定した。面内位相差値(△nd)の平均値は60nmであり、面内位相差値のばらつきは25点すべて1nm以下であった。
また、厚み方向位相差値(Rth)の平均値は220nmであり、厚み方向位相差値のばらつきは25点すべて2nm以下であった。
サンプルの1点についての面内位相差値△ndは60nm、(nx−nz)/(nx−ny)=4であった。
【0154】
(比較例1)
実施例1で調製したポリイミド溶液を、トリアセチルセルロースフィルム(基材)(厚さ80μm)の片面にワイヤーバーコートにて塗工した。なお、ポリイミド溶液の塗工量は、前記トリアセチルセルロースフィルムの面積(cm2)あたり0.3mlとした。その後、100℃で10分間加熱処理し、透明な厚さ6μmの2層積層フィルムを得た。平面と、光学補償フィルムの垂直方向の距離の最大値は35mmで、カールしていた。得られた2層積層フィルムを、さらに、175℃で固定端横延伸しようと試みたが、フィルムのカールがきつく、延伸ができなかった。2層積層フィルムの複屈折率は0.04であり、得られた2層積層フィルムの1点における面内位相差値△nd=1.5、(nx−nz)/(nx−ny)=167であった。
【0155】
(比較例2)
実施例1で調製したポリイミド溶液を、トリアセチルセルロースフィルム(基材)(厚さ80μm)の片面にワイヤーバーコートにて塗工した。なお、ポリイミド溶液の塗工量は、前記トリアセチルセルロースフィルムの面積(cm2)あたり0.2mlとした。その後、100℃で10分間加熱処理し、透明な厚さ4μmの2層積層フィルムを得た。平面と、光学補償フィルムの垂直方向の距離の最大値は25mmで、カールしていた。
得られた2層積層フィルムを、さらに、175℃で固定端横延伸で1.4倍延伸した。得られた光学補償フィルムは、nx>ny>nzであり、光学補償フィルムの複屈折率は0.04であった。
【0156】
得られた光学補償フィルムから上記のようにサンプルを調製し、そのサンプルの25点すべてについて、面内位相差値および厚み方向位相差値のばらつきを測定した。面内位相差値(△nd)の平均値は50nmであり、面内位相差値のばらつきは25点のうち最大値が5nmであった。
また、厚み方向位相差値(Rth)の平均値は220nmであり、厚み方向位相差値のばらつきは25点のうち最大値が7nmであった。
サンプルの1点についての面内位相差値△ndは50nm、(nx−nz)/(nx−ny)=4であった。
【0157】
(実施例3)
次に、上記の実施例1で作製した光学補償フィルムと偏光板(日東電工(株)製、商品名「HEG1425DU」)を、アクリル系粘着剤を用いて積層して積層偏光板を作製した。この偏光板と液晶セルを、偏光板が外側になるように接着して、液晶表示装置を作製した。その液晶表示装置の表示特性を調べたところ、正面と斜視の広い視角範囲にわたって、コントラストと表示の均質性に優れ、良好な表示品位であった。
【0158】
(比較例3)
実施例1で作製した光学補償フィルムの代わりに、比較例2で作製した2層積層フィルムを用いた以外は、実施例3と同様にして液晶表示装置を作製した。その液晶表示装置の表示特性を調べたところ、正面と斜視の広い視角範囲にわたって、コントラストおよび表示が実施例3と比較して、表示品位が悪かった。
【0159】
実施例1および2で作製した光学補償フィルムはカール発生が抑制されており、面内および厚み方向位相差のばらつきは抑制され、その光学補償フィルムを含む実施例3の液晶表示装置の表示特性は良好であった。一方、比較例1および2で作製した2層積層フィルムは、カールが発生し、2層積層フィルム内位相差のばらつきがあり、その2層積層フィルムを含む比較例3の液晶表示装置の表示特性はよくなかった。
【0160】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光学補償フィルムの製造方法は、プラスチックフィルム基材を用いるので、工程数が少なく、量産性に優れた方法である。さらに、本発明の製造方法は、プラスチックフィルム基材の両面に光学補償層形成材料を塗工するので、基材の収縮が偏らず、面内の均一性に優れた光学補償フィルムを得ることができる。また、基材の両面に光学補償層を形成することでカールが防止され、取り扱い性に優れた光学補償フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学補償フィルムの軸方向を示す図である。
【図2】本発明の光学補償フィルムと平面との距離の最大値を説明するための図である。
【図3】本発明の光学補償フィルムのサンプル中、面内位相差値と厚み方向位相差値を測定した点25個を示す図である。
【符号の説明】
nx,ny,nz フィルムの厚み方向をZ軸、Z軸に垂直な面内の方向をX軸、X軸及びZ軸に垂直な方向をY軸としたときの、それぞれの軸方向の屈折率を示す。
1 光学補償フィルム
H1 光学補償フィルムと平面の間の距離
H2 光学補償フィルムと平面の間の距離
2 光学補償フィルムのサンプル
X1〜X25 前記サンプル中、面内位相差値と厚み方向位相差値を測定する点
【発明の属する技術】
本発明は、例えば、液晶表示装置等の光学補償に使用する光学補償フィルムの製造方法および光学補償フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示装置等の各種表示装置には、位相差フィルムとして光学補償フィルムが使用されている。前記光学補償フィルムは、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーを、無機材料基材(SUSベルト、銅薄板、ガラス、Siウエハ等)の上に塗工することによって作製されている。また、ポリイミドをSiウエハ上に塗工して、負の光学補償フィルムを製造する方法等も開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0003】
しかしながら、これらの製造方法は、実用に際して以下のような問題がある。例えば、光学補償において前記基材は不要であることから、使用に際しては、前記基材上に形成された光学補償層のみを、前記基材から対象部材に転写したり、前記基材から前記光学補償層のみを剥離して巻き取ること等が必要となる。このような工程は煩雑である。また、前記無機材料基材は、コストが高いという問題もある。
【0004】
これらの問題を解消するため、前記無機材料基材に代えて透明プラスチックフィルム基材の上にポリイミド等のポリマーの溶液を塗工して、乾燥し、光学補償層を形成して、光学補償フィルムを製造することが開示されている(特許文献5参照)。
【0005】
この方法で作製した光学補償フィルムは、無機材料基材の場合とは異なり、そのまま用いることができるので、無機材料基材を用いる場合のように、光学補償層を基材から剥離させる必要がない。従って、この方法は工程数が少なく、量産性に優れる。
【0006】
しかし、プラスチックフィルム基材に光学補償層を形成した光学補償フィルムは、カール(丸く縮まる、反る)するという現象がある。その結果、光学補償フィルムの面内の均一性が損なわれ、例えば位相差バラツキが発生し、表示特性が低下するという問題がある。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第5,344,916号明細書
【特許文献2】
米国特許第5,395,918号明細書
【特許文献3】
米国特許第5,480,964号明細書
【特許文献4】
米国特許第5,580,950号明細書
【特許文献5】
米国特許第6,074,709号明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、工程数が少なく量産性に優れ、面内の均一性を有する光学補償フィルムの製造方法、および面内の均一性に優れた光学補償フィルムを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の光学補償フィルムの製造方法は、
プラスチックフィルム基材と光学補償層を有する光学補償フィルムの製造方法であって、
前記基材の両面に光学補償層形成材料の溶液および溶融液の少なくとも一方を塗工して、これを固化することにより、前記基材の両面に光学補償層を形成することを特徴とする。
【0010】
さらに、前記課題を解決するために、本発明は、プラスチックフィルム基材と光学補償層を有し、前記基材の両面に、前記光学補償層が形成されている光学補償フィルムを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、製造効率およびコスト削減に優れるプラスチックフィルムを基材とした光学補償フィルムのカール防止を解決することを中心課題として、一連の研究を重ねた。その過程で従来のプラスチックフィルムを基材とした光学補償フィルムがカールする原因を突き止めた。すなわち、従来のフィルムでは、基材の一方の面に光学補償層を形成しているため、その形成時(材料液の固化時)に応力が発生し、その結果カールするのである。
【0012】
この知見に基づき、さらに研究を重ねたところ、プラスチックフィルム基材の両面に光学補償層を形成すれば、発生する応力を緩和することができ、その結果カールを防止できることを見出し、本発明に至った。しかも、この方法は、簡単に実施でき、製造効率に優れ、コストも低い。
【0013】
以下、例を挙げて本発明の実施形態について説明する。
前記光学補償層形成材料としては、特に制限されないが、例えば、非液晶性材料、特に非液晶性ポリマーであることが好ましい。このような非液晶性材料を用いれば、例えば、液晶性材料とは異なり、基材の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx>nz、ny>nzという負の光学的一軸性を示す膜が形成できる。
【0014】
前記非液晶性ポリマーとしては、例えば、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
【0015】
前記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
【0016】
前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000−511296号公報に開示された、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記式(1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
【0017】
【化1】
【0018】
前記式(1)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
【0019】
前記式(1)中、Zは、例えば、C6〜20の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(2)で表される基である。
【0020】
【化2】
【0021】
前記式(2)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R7)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R7は、それぞれ独立に、水素またはC(R9)3である。R8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC6〜20アリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
【0022】
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C1〜10のアルキル基、そのフッ素化誘導体、およびFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された前記多環式芳香族基があげられる。
【0023】
この他にも、例えば、特表平8−511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(3)または(4)で示されるホモポリマーや、繰り返し単位が下記一般式(5)で示されるポリイミド等があげられる。なお、下記式(5)のポリイミドは、下記式(3)のホモポリマーの好ましい形態である。
【0024】
【化3】
【0025】
前記一般式(3)〜(5)中、GおよびG’は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0026】
前記式(3)および式(5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
【0027】
前記式(3)〜(5)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
【0028】
前記式(4)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0029】
前記式(5)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
【0030】
前記式(3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(6)で表されるもの等があげられる。
【0031】
【化4】
【0032】
さらに、前記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
【0033】
前記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
【0034】
前記ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
【0035】
また、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−[4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
【0036】
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2’−ビス(トリハロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0037】
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
【0038】
前記ベンゼンジアミンとしては、例えば、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼンおよび1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンのようなベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。前記ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、および3,3’−ジアミノベンゾフェノン等があげられる。前記ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8−ジアミノナフタレン、および1,5−ジアミノナフタレン等があげられる。前記複素環式芳香族ジアミンの例としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、および2,4−ジアミノ−S−トリアジン等があげられる。
【0039】
また、前記芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
【0040】
前記ポリエーテルケトンとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載された、下記一般式(7)で表されるポリアリールエーテルケトンがあげられる。
【0041】
【化5】
【0042】
前記式(7)中、Xは、置換基を表し、qは、その置換数を表す。Xは、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、低級アルコキシ基、または、ハロゲン化アルコキシ基であり、Xが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。
【0043】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子があげられ、これらの中でも、フッ素原子が好ましい。前記低級アルキル基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖を有する低級アルキル基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、および、tert−ブチル基が好ましく、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。前記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の前記低級アルキル基のハロゲン化物があげられる。前記低級アルコキシ基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、および、tert−ブトキシ基が、さらに好ましく、特に好ましくはメトキシ基およびエトキシ基である。前記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の前記低級アルコキシ基のハロゲン化物があげられる。
【0044】
前記式(7)中、qは、0から4までの整数である。前記式(7)においては、q=0であり、かつ、ベンゼン環の両端に結合したカルボニル基とエーテルの酸素原子とが互いにパラ位に存在することが好ましい。
また、前記式(7)中、R1は、下記式(8)で表される基であり、mは、0または1の整数である。
【0045】
【化6】
【0046】
前記式(8)中、X’は置換基を表し、例えば、前記式(7)におけるXと同様である。前記式(8)において、X’が複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。q’は、前記X’の置換数を表し、0から4までの整数であって、q’=0が好ましい。また、pは、0または1の整数である。
【0047】
前記式(8)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−もしくはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等があげられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合している水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、前記R2としては、下記式(9)〜(15)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
【0048】
【化7】
【0049】
前記式(7)中、前記R1としては、下記式(16)で表される基が好ましく、下記式(16)において、R2およびpは前記式(8)と同義である。
【0050】
【化8】
【0051】
さらに、前記式(7)中、nは重合度を表し、例えば、2〜5000の範囲であり、好ましくは、5〜500の範囲である。また、その重合は、同じ構造の繰り返し単位からなるものであってもよく、異なる構造の繰り返し単位からなるものであってもよい。後者の場合には、繰り返し単位の重合形態は、ブロック重合であってもよいし、ランダム重合でもよい。
【0052】
さらに、前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p−テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましく、このようなポリアリールエーテルケトンは、例えば、下記一般式(17)で表すことができる。なお、下記式において、nは前記式(7)と同様の重合度を表す。
【0053】
【化9】
【0054】
前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの具体例としては、下記式(18)〜(21)で表されるもの等があげられ、下記各式において、nは、前記式(7)と同様の重合度を表す。
【0055】
【化10】
【0056】
また、これらの他に、前記ポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されるポリアミドやポリエステルがあげられ、それらの繰り返し単位は、例えば、下記一般式(22)で表すことができる。
【0057】
【化11】
【0058】
前記式(22)中、Yは、OまたはNHである。また、Eは、例えば、共有結合、C2アルキレン基、ハロゲン化C2アルキレン基、CH2基、C(CX3)2基(ここで、Xはハロゲンまたは水素である。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基、および、N(R)基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の基であり、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。前記Eにおいて、Rは、C1−3アルキル基およびC1−3ハロゲン化アルキル基の少なくとも一種類であり、カルボニル官能基またはY基に対してメタ位またはパラ位にある。
【0059】
また、前記(22)中、AおよびA’は、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
【0060】
前記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、前記定義のものである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C1−9アルコキシカルボニル基、C1−9アルキルカルボニルオキシ基、C1−12アリールオキシカルボニル基、C1−12アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C1−12アリールカルバモイル基、ならびに、C1−12アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記A’は、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせがあげられる。前記tは、0から4までの整数であり、前記zは、0から3までの整数である。
【0061】
前記式(22)で表されるポリアミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(23)で表されるものが好ましい。
【化12】
【0062】
前記式(23)中、A、A’およびYは、前記式(22)で定義したものであり、vは0から3の整数、好ましくは、0から2の整数である。xおよびyは、それぞれ0または1であるが、共に0であることはない。
【0063】
本発明のプラスチックフィルム基材としては特に制限はなく、適宜なものを用いることができる。そのプラスチックフィルムの例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂および、これらの混合物のフィルムがあげられる。
【0064】
また、本発明のプラスチックフィルム基材として、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムがあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基およびシアノ基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
前記基材の厚みは、特に制限されないが、延伸処理を施されることや、強度、薄膜化等の点から、例えば5〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜300μm、特に好ましくは5〜150μmの範囲である。
【0065】
本発明の光学補償フィルムの製造方法は、例えば、以下に示すようにして行うことができる。
【0066】
まず、プラスチックフィルム基材の両面に光学補償層形成材料の溶液および溶融液の少なくとも一方を塗工する。
【0067】
前記形成材料の溶液における前記形成材料濃度は、特に制限されないが、例えば、塗工が容易な粘度となることから、溶媒100重量部に対して、例えば、前記形成材料5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。
【0068】
前記形成材料の溶液の溶媒としては、特に制限されず、例えば、前記非液晶性ポリマー等の形成材料を溶解できればよく、前記形成材料の種類に応じて適宜決定できる。具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド類;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0069】
前記形成材料の溶液は、例えば、必要に応じて、さらに安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤を配合してもよい。
また、前記形成材料の溶液は、例えば、前記形成材料の配向性等が著しく低下しない範囲で、異なる他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
【0070】
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。
【0071】
このように、前記他の樹脂等を前記形成材料の溶液に配合する場合、その配合量は、前記形成材料100重量部に対してに対して、例えば0〜50重量部であり、好ましくは0〜30重量部である。
【0072】
前記形成材料の溶液の塗工方法としては、前記基材の両面が塗工可能な方法であれば限定されないが、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビア印刷法等があげられる。
【0073】
前記形成材料の溶融液は、特に限定されないが、例えば前述のような非液晶性ポリマー等の前記形成材料を加熱溶融した液が挙げられる。前記形成材料の溶融液の塗工方法としては、前記基材の両面が塗工可能な方法であれば限定されないが、例えば、ロールコート法、ディップコート法等が挙げられる。前記形成材料の溶融液は、例えば、必要に応じて、上述の安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤および異なる他の樹脂をさらに含有してもよい。
【0074】
次いで、前記基材に塗工された前記形成材料の溶液または溶融液を固化させて、前記基材の両面に光学補償層を有する光学補償フィルムを形成する。
前記固化の方法としては、前記形成材料を固化させ、前記形成材料フィルムを形成する方法であれば、特に制限されず、例えば、自然乾燥や加熱乾燥等の乾燥があげられる。その条件も、例えば、前記形成材料の種類や、溶液の場合には前記溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、温度は、通常、20℃〜400℃であり、好ましくは60℃〜300℃であり、さらに好ましくは65℃〜250℃である。なお、固化は、一定温度で行っても良いし、段階的に温度を上昇または下降させながら行っても良い。固化時間も特に制限されないが、通常、0.5分〜200分、好ましくは1分〜120分、さらに好ましくは5分〜100分以下である。
【0075】
なお、前記形成材料の塗工と固化を行う順序の組み合わせは、前記基材の両面に、前記形成材料の溶液または溶融液を塗工し、固化させるのであれば、特に制限されない。例えば、まず前記基材の片面のみに前記形成材料の溶液を塗工して、それを風乾のように加熱をせずに乾燥した後、前記基材の別の片面に前記形成材料の溶液を塗工して、前記基材の両面を固化させて、前記基材の両面に光学補償層を形成してもよい。また、前記基材の両面に、一度に前記形成材料の溶液を塗工し、その後固化させて前記基材の両面に光学補償層を形成してもよい。
【0076】
前記基材に光学補償層を形成後、この光学補償層と前記基材とを一体として、さらに延伸するかまたは収縮させてもよい。
前記延伸の方法としては、特に制限されず、例えば、固定端延伸や、従来公知の方法が適用できる。
この際の延伸倍率は、その延伸方向において、延伸前の前記光学補償層と前記基材の一体の長さに対して、1.0001〜3.0倍であることが好ましい。前記延伸倍率が1.0001〜3.0倍であれば、延伸ムラが発生しにくいため、フィルム面内において屈折率のばらつきが生じないという効果が得られるためである。前記延伸倍率は、より好ましくは1.0005〜1.8倍の範囲であり、特に好ましくは1.001〜1.50倍である。なお、前記延伸方向は特に限定されず、MD方向、TD方向のいずれであってもよい。
【0077】
前記収縮方法としては、特に制限されず、例えば、緩和法や、従来公知の方法が適用できるが、例えば、収縮時における基材の変形を防止できる点から、緩和法が好ましい。
このように、前記光学補償層と前記基材を一体として延伸するかまたは収縮させて得られる光学補償フィルムは、面内位相差(△nd)および厚み方向位相差(Rth)を適宜制御できるので、好ましい。
【0078】
このような方法によって、例えば、プラスチックフィルム基材と光学補償層とを有し、前記基材の両面に前記光学補償層が形成されている、光学補償フィルムを得ることができる。このような方法によって形成された光学補償層の一層は、例えば0.1〜100μmの厚みを有する。前記基材の面上に形成された前記光学補償層は、両方の厚みは等しくても異なっていてもよい。両方の厚みが等しいと、光学補償フィルムがカールしにくくなり、より好ましい。このような方法によって形成された光学補償層の一層は、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜20μmの厚みを有する。
【0079】
さらに、このような方法によって前記基材の両面に形成される前記光学補償層は、両面とも同じ数の前記光学補償層が形成されてもよいし、異なる数の前記光学補償層が形成されてもよい。各光学補償層の厚みは、上述のように、等しくても、異なっていてもよい。
そして、前記基材の両面に形成される前記光学補償層は、同じ光学補償層形成材料から形成されてもよいし、異なる前記形成材料から形成されてもよい。
【0080】
本発明の光学補償フィルムは、プラスチックフィルム基材と光学補償層とを有し、前記基材の両面に前記光学補償層が形成されている、光学補償フィルムである。この光学補償フィルムは、どのような方法で製造してもよいが、前述の本発明の製造方法により製造することが好ましい。この光学補償フィルムは、前記基材の両面に前記光学補償層が形成されているので、前記基材のカールが抑制される。また、基材層の両面に光学補償層を形成することにより、厚み精度が向上し、その結果、面内位相差(△nd)および厚み方向位相差(Rth)のバラツキの少ない光学補償フィルムとなる。
【0081】
本発明の光学補償フィルムは、下記の式(1)から(3)を全て満たし、かつ前記光学補償フィルムの複屈折率(△n)が0.0005〜0.5の範囲にあるのが好ましい。
nx>ny>nz (1)
3(nm)≦△nd (2)
(nx−nz)/(nx−ny)>1 (3)
(前記式において、△nは、[{(nx+ny)/2}−nz]・d/dで表され、△ndは(nx−ny)・dで表され、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記光学補償フィルムにおけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学補償フィルムの面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であり、dは前記光学補償フィルムの厚みを示す。)
【0082】
光学補償フィルムの複屈折率(△n)の値が0.0005以上の場合は、所定の位相差を得るためには光学補償層をより薄くすることができ、一方0.5以下の場合は厚みムラによる位相差のバラツキが少なくなる。光学補償フィルムの複屈折率(△n)の値は好ましくは0.001〜0.2の範囲、さらに好ましくは0.002〜0.15の範囲である。
【0083】
式中においてnx,ny,nzとは、前記光学補償フィルムにおける3つの光軸方向における屈折率をそれぞれ示す。具体的に、図1の概略図に光学補償フィルムにおける屈折率(nx, ny, nz)の光軸方向を矢印で示す。屈折率nx, ny, nzは、前述のように、それぞれX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、図示のように、前記X軸とは面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な前記光学補償フィルムの厚み方向を示す。
【0084】
面内位相差(△nd)は、10(nm)≦△ndであるのが好ましい。さらに、20(nm)≦△ndであるのが、より好ましい。
Nz係数は、(nx−nz)/(nx−ny)>3であるのが好ましい。さらに、(nx−nz)/(nx−ny)>4であるのが、より好ましい。
【0085】
また、本発明の製造方法により得られる光学補償フィルムは、カールの発生が抑制されているのが好ましい。そのような光学補償フィルムとしては、全くカールしていない光学補償フィルムが含まれ、例えば、一辺が10cmの正方形状に成形し、この成形体を、その凸面を下にして水平面上に設置した場合、前記水平面からの前記成形体の前記凸面までの高さの最大値が、10mm以下である光学補償フィルムが、より好ましい。前記距離の最大値は、5mm以下である光学補償フィルムが、さらに好ましい。
【0086】
また、本発明の製造方法により得られる光学補償フィルムは、面内位相差値と厚み方向位相差値にばらつきが少ないものが好ましい。例えば、一辺が6cmの正方形状に成形し、この成形体の面上で、相互に1cmの距離をおいて任意に25個の点をとった場合、
前記各点における面内位相差値(△nd(X))と、これらの平均値(△nd(V))とが、下記の式(4)を満たし、かつ
前記各点における厚み方向位相差値(Rth(X))と、これらの平均値(Rth(V))とが、下記の式(5)を満たすのが、より好ましい。
|△nd(V)−△nd(X)|≦3(nm) (4)
|Rth(V)−Rth(X)|≦5(nm) (5)
【0087】
前記式において、
△nd(V)は、25点における面内位相差値の平均値を表し、
△nd(X)は、前記成形体の各点における面内位相差値を表し、
△ndは、(nx−ny)・dで表される。
Rth(V)は、25点における厚み方向位相差値の平均値を表し、
Rth(X)は、前記成形体の各点における厚み方向位相差値を表し、
Rthは、[{(nx+ny)/2}−nz]・dで表される。
【0088】
nx、nyおよびnzは、それぞれ前記光学補償フィルムにおけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学補償フィルムの面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であり、dは前記光学補償フィルムの厚みを示す。)
【0089】
さらに好ましくは、|△nd(V)−△nd(X)|≦2(nm)であり、よりさらに好ましくは、|△nd(V)−△nd(X)|≦1(nm)である。
さらに好ましくは、|Rth(V)−Rth(X)|≦3(nm)であり、よりさらに好ましくは、|Rth(V)−Rth(X)|≦2(nm)である。
【0090】
次に、本発明の光学補償フィルムと偏光子とを含む光学補償フィルム付偏光板について説明する。
【0091】
本発明で用いる偏光子は、特に限定されないが、例えば、偏光子の片側又は両側に、適宜の接着層を介して、保護層を接着したものが挙げられる。
【0092】
前記偏光子(偏光フィルム)としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって調製したもの等が使用できる。この中でも、自然光を入射させると直線偏光を透過するフィルムが好ましく、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。前記二色性物質を吸着させる各種フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられ、これらの他にも、例えば、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、好ましくはPVA系フィルムである。また、前記偏光フィルムの厚みは、通常、1〜80μmの範囲であるが、これには限定されない。
【0093】
前記保護層としては、特に制限されず、従来公知の透明フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような透明保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロール等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等があげられる。また、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等もあげられる。この中でも、偏光特性や耐久性の点から、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。
【0094】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムがあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有す熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
【0095】
また、前記保護層は、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx,ny,nzは、それぞれ前記保護層におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記保護層の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であり、dは、その膜厚を示す。
Rth={[(nx+ny)/2]−nz}・d
【0096】
また、前記透明保護層は、さらに光学補償機能を有するものでもよい。このように光学補償機能を有する透明保護層としては、例えば、液晶セルにおける位相差に基づく視認角の変化が原因である、着色等の防止や、良視認の視野角の拡大等を目的とした公知のものが使用できる。具体的には、例えば、前述した透明樹脂を一軸延伸または二軸延伸した各種延伸フィルムや、液晶ポリマー等の配向フィルム、透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を配置した積層体等があげられる。これらの中でも、良視認の広い視野角を達成できることから、前記液晶ポリマーの配向フィルムが好ましく、特に、ディスコティック系やネマチック系の液晶ポリマーの傾斜配向層から構成される光学補償層を、前述のトリアセチルセルロースフィルム等で支持した光学補償位相差板が好ましい。このような光学補償位相差板としては、例えば、富士写真フィルム株式会社製「WVフィルム」等の市販品があげられる。なお、前記光学補償位相差板は、前記位相差フィルムやトリアセチルセルロースフィルム等のフィルム支持体を2層以上積層させることによって、位相差等の光学特性を制御したもの等でもよい。
【0097】
前記透明保護層の厚みは、特に制限されず、例えば、位相差や保護強度等に応じて適宜決定できるが、通常、500μm以下であり、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜150μmの範囲である
【0098】
前記透明保護層は、例えば、偏光フィルムに前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光フィルムに前記透明樹脂製フィルムや前記光学補償位相差板等を積層する方法等の従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
【0099】
また、前記透明保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。前記ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記透明保護層の表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、前記処理は、従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。前記反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
【0100】
前記アンチグレア処理とは、偏光板表面において外光が反射することによる、偏光板透過光の視認妨害を防止すること等を目的とし、例えば、従来公知の方法によって、前記透明保護層の表面に、微細な凹凸構造を形成することによって行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト法やエンボス加工等による粗面化方式や、前述のような透明樹脂に透明微粒子を配合して前記透明保護層を形成する方式等があげられる。
【0101】
前記透明微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等があげられ、この他にも導電性を有する無機系微粒子や、架橋または未架橋のポリマー粒状物等から構成される有機系微粒子等を使用することもできる。前記透明微粒子の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20μmの範囲である。また、前記透明微粒子の配合割合は、特に制限されないが、一般に、前述のような透明樹脂100質量部あたり2〜70質量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜50質量部の範囲である。
【0102】
前記透明微粒子を配合したアンチグレア層は、例えば、透明保護層そのものとして使用することもでき、また、透明保護層表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、前記アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視覚補償機能等)を兼ねるものであってもよい。
【0103】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、アンチグレア層等は、前記透明保護層とは別個に、例えば、これらの層を設けたシート等から構成される光学層として、偏光板に積層してもよい。
【0104】
光学補償フィルム付偏光板を作製する方法としては、例えば、接着層又は粘着層を介して、光学補償フィルムと偏光板を貼り合わせる方法等が挙げられる。
貼り合わせに用いられる接着剤又は粘着剤としては特に限定はなく、その種類は、前記各構成物の材質等によって適宜決定できる。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤や、ゴム系接着剤等があげられる。また、ホウ酸、ホウ砂、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤等から構成される接着剤等も使用できる。
【0105】
前述のような粘着剤、接着剤は、例えば、湿度や熱の影響によっても剥がれ難く、光透過率や偏光度にも優れる。具体的には、前記偏光子がPVA系フィルムの場合、例えば、接着処理の安定性等の点から、PVA系接着剤が好ましい。なお、光学補償フィルム等の光学特性の変化を防止する点より、接着剤又は粘着剤の硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないのが好ましく、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないものが望ましい。また、加熱や加湿条件下に剥離等が生じない接着剤又は粘着剤が好ましく用いられる。
【0106】
これらの接着剤や粘着剤は、例えば、そのまま偏光子や透明保護層の表面に塗布してもよいし、前記接着剤や粘着剤から構成されたテープやシートのような層を前記表面に配置してもよい。また、例えば、水溶液として調製した場合、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。なお、前記接着剤を塗布する場合は、例えば、前記接着剤水溶液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。
【0107】
このような接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1nm〜500nmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。特に限定されず、例えば、アクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマー等の接着剤等を使用した従来公知の方法が採用できる。また、湿度や熱等によっても剥がれにくく、光透過率や偏光度に優れる偏光板を形成できることから、さらに、ホウ酸、ホウ砂、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のPVA系ポリマーの水溶性架橋剤を含む接着剤が好ましい。
【0108】
本発明の光学補償フィルム付偏光板は、各種液晶表示装置の形成などに好ましく用いることができる。実用に際しては、必要に応じて、接着層や粘着層を介して反射板、半透過反射板、位相差板(1/2波長板、1/4波長板などのλ板も含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの、液晶表示装置等の形成に用いられることのある他の光学層の1層又は2層以上を本発明の光学補償フィルムに積層することができる。なお、積層には、粘着層等の適宜な接着手段を用いることができる。
【0109】
特に、前述した光学補償フィルム付偏光板に、さらに反射板または半透過反射板が積層されている反射型偏光板または半透過型偏光板、前述した光学補償フィルム付偏光板に、更に位相差板が積層されている楕円偏光板または円偏光板、前述した光学補償フィルム付偏光板に、さらに、視角補償フィルムが積層されている偏光板、あるいは、前述した光学補償フィルム付偏光板に、更に高輝度向上フィルムが積層されている偏光板が望ましい。
【0110】
まず、前述した光学補償フィルム付偏光板に、更に、反射板または半透明反射板が積層されている反射型偏光板または半透過反射板型偏光板について説明する。
反射板は、それを偏光板に設けて反射型偏光板を形成するためのものである。反射型偏光板は、通常液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)から入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等に使用できる。このような反射型偏光板は、例えばバックライト等の光源の内蔵を省略できるため、液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。
【0111】
反射型偏光板は、偏光板の片面に、金属等から構成される反射層を形成する方法等、従来公知の方法によって製造できる。具体的には、例えば、前記偏光板の透明保護層の片面(露出面)を必要に応じてマット処理し、前記面に、アルミニウム等の反射性金属からなる金属箔や蒸着膜を反射層として形成した反射型偏光板が挙げられる。
【0112】
また、微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした上記の透明保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射層を形成した、反射型偏光板等も挙げられる。その表面が微細凹凸構造である反射層は、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。この様な反射層は、例えば前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式など、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
【0113】
また、反射板は、前記のように偏光板の透明保護層に反射層を直接形成する方式に代えて、前記透明保護フィルムのような適当なフィルムに反射層を設けた反射シート等を使用してもよい。前記反射板における反射層は、通常、金属から構成されるため、例えば、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続や、透明保護層の別途形成を回避する点などから、その使用形態は、前記反射層の反射面が前記フィルムや偏光板等で被覆された状態であることが好ましい。
【0114】
一方、半透過型偏光板は、前記反射型偏光板において、反射板に代えて、半透過型の反射層を有するものである。前記半透過型反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等が挙げられる。
前記半透過型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射して画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等に使用できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、一方、比較的暗い雰囲気下においても、内臓光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0115】
次に、前述した光学補償フィルム付偏光板に、更に位相差板(λ板)が積層されている楕円偏光板又は円偏光板について説明する。
位相差板は、直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変えるときに用いられる。
【0116】
上記の楕円偏光板は、スーパーツイストネマチック(SNT)型液晶表示装置の液晶層の複屈折によって生じた着色(青または黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示にする場合などに有効に用いられる。さらに、3次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができるため好ましい。また、円偏光は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0117】
前記の位相差板としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリノルボルネン等のポリマーフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどが挙げられる。
【0118】
位相差板は、例えば1/2や1/4等の各種波長板、液晶層の複屈折による着色の補償や視野角拡大等の視角の補償を目的としたものなど、使用目的に応じた位相差を有するものであってよく、厚さ方向の屈折率を制御した傾斜配向フィルムであってもよい。また、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものでもよい。
【0119】
次に、前述した光学補償フィルム付偏光板に更に視角補償フィルムが積層されている偏光板について説明する。
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなく、やや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明に見えるように視角を広げるためのフィルムである。このような視角補償フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルムなどにディスコティック液晶を塗工したものや位相差板が用いられる。
【0120】
通常の位相差板には、その両方向に一軸延伸された、複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、両方向に二軸延伸された複屈折を有するポリマーフィルムや、両方向に一軸延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した傾斜配向ポリマーフィルムのような2方向延伸フィルムなどが用いられる。
【0121】
傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮性フィルムを接着し、加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、前記の位相差板で用いるポリマーと同様のものが用いられる。
【0122】
次に、前述した光学補償板フィルム付偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されている偏光板について説明する。
この偏光板は通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより、自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光又は所定偏光の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すものである。バックライト等の光源からの光を入射させ、所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射する。
【0123】
この輝度向上フィルム面で反射した光を、さらにその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上板に再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させ、輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収されにくい偏光を供給して、液晶画像表示等に利用しうる光量増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光はほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。
【0124】
輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに、輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上板に再入射させることを繰り返す。そして、その両者間で反射、反転している光の偏光方向が、偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを透過させ、偏光子に供給するので、バックライト等の光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0125】
輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの(3M社製、商品名「D−BEF」等)、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの(日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」)のような、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを使用できる。
【0126】
従って、所定偏光軸の直線偏光を通過するタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率良く透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点より、その透過円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0127】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものを組合せて、2層以上の重畳した配置構造を構成することができる。そのような構成により、可視光域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、広い波長範囲の透過円偏光が得られる。
また、光学補償板フィルム付偏光板は、2層以上の光学層を含んでもよい。光学層として、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を有する、反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板等でもよい。
【0128】
前記の2層以上の光学層を有する光学補償フィルム付偏光板は、液晶表示装置等の製造過程において、前記偏光板上に、順次別個に積層することによっても形成することができる。一方、前記偏光板に予め前記光学層を積層して製造した光学部材は、品質の安定性や組み立て作業性等に優れて、液晶表示装置などの製造効率を向上させることができるという利点がある。なお、前記光学部材の積層には、粘着層等の適当な接着手段を用いることができる。
【0129】
本発明の光学補償フィルム付偏光板には、他の光学層や液晶セル等の他部材と接着するための粘着層もしくは接着層を設けることもできる。前記粘(接)着層は、アクリル系等の従来に準じた適宜な粘着剤等を用いて形成することができる。特に、吸湿による発泡現象や剥れ現象の防止、熱膨張差等による光学特性と低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの観点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層も好ましい。粘(接)着層は必要に応じて、本発明の光学補償フィルム付偏光板の必要な面に設けることができる。
【0130】
光学補償フィルム付偏光板に設けた粘(接)着層の表面が露出する場合には、その粘(接)着層を実用に供するまでの間、汚染防止等のために前記表面をセパレータでカバーすることが好ましい。このセパレータは、上記の透明保護フィルム等のような適当なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤を用いて剥離コートを設ける方法等により形成できる。
【0131】
なお、上記の光学補償フィルム付偏光板、光学部材を形成する偏光フィルム、透明保護フィルム、光学層、粘(接)着層などの各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理するなどの適当な方法により、紫外線吸収能を持たせたものでもよい。
【0132】
本発明の光学補償フィルムおよび光学補償フィルム付偏光板は、液晶表示装置等の各種装置の形成に用いることが好ましい。例えば、前記偏光板を液晶セルの片側または両側に配置して液晶パネルとし、反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。
液晶表示装置を形成する液晶セルの種類は、任意で選択でき、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなど、種々のタイプの液晶セルが使用できる。
【0133】
また、前記液晶セルは、通常、対向する液晶セル基板の間隙に液晶が注入された構造であって、前記液晶セル基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス基板やプラスチック基板が使用できる。なお、前記プラスチック基板の材質としては、特に制限されず、従来公知の材料があげられる。
【0134】
また、液晶セルの両側に偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じ種類のものであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライトなどの適宜な部品を、適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0135】
さらに、本発明の液晶表示装置は、さらに光源を有する場合には、特に制限されないが、例えば、光のエネルギーが有効に使用できることから、例えば、偏光を出射する平面光源であることが好ましい。
【0136】
本発明の液晶表示装置の一例としては、以下のような構成があげられる。例えば、液晶セルおよび光学部材を有しており、前記液晶セルの少なくとも一方の面に本発明の光学補償フィルムまたは光学補償フィルム付偏光板が配置されている構造である。
【0137】
本発明の液晶表示装置は、視認側の光学補償フィルムの上に、例えば、さらに拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護層や保護板を配置したり、または液晶パネルにおける液晶セルと偏光板との間に補償用位相差板等を適宜配置することもできる。
【0138】
なお、本発明の光学補償フィルムや光学補償フィルム付偏光板は、前述のような液晶表示装置には限定されず、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)等の自発光型表示装置にも使用できる。
本発明の画像表示装置の一例としては、以下のような構成が挙げられる。例えば、本発明の光学補償フィルムまたは光学補償フィルム付偏光板を含む構成となっている。
【0139】
以下に、本発明の偏光板を備えるエレクトロルミネッセンス(EL)表示装置について説明する。本発明のEL表示装置は、本発明の光学補償フィルムまたは偏光板を有する表示装置であり、このEL装置は、有機ELおよび無機ELのいずれでもよい。
【0140】
近年、EL表示装置においても、黒状態における電極からの反射防止として、例えば、偏光子や偏光板等の光学フィルムをλ/4板とともに使用することが提案されている。本発明の光学補償フィルム偏光子や光学補償フィルムは、特に、EL層から、直線偏光、円偏光もしくは楕円偏光のいずれかの偏光が発光されている場合、あるいは、正面方向に自然光を発光していても、斜め方向の出射光が部分偏光している場合等に、非常に有用である。
【0141】
まずここで、一般的な有機EL表示装置について説明する。前記有機EL表示装置は、一般に、透明基板上に、透明電極、有機発光層および金属電極がこの順序で積層された発光体(有機EL発光体)を有している。前記有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層とアントラセン等の蛍光性有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層との積層体や、また、前記正孔注入層と発光層と電子注入層との積層体等、種々の組み合わせがあげられる。
【0142】
そして、このような有機EL表示装置は、前記陽極と陰極とに電圧を印加することによって、前記有機発光層に正孔と電子とが注入され、前記正孔と電子とが再結合することによって生じるエネルギーが、蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。前記正孔と電子との再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、電流と発光強度とは、印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0143】
前記有機EL表示装置においては、前記有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要なため、通常、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電体で形成された透明電極が陽極として使用される。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に、仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常、Mg−Ag、Al−Li等の金属電極が使用される。
【0144】
このような構成の有機EL表示装置において、前記有機発光層は、例えば、厚み10nm程度の極めて薄い膜で形成されることが好ましい。これは、前記有機発光層においても、透明電極と同様に、光をほぼ完全に透過させるためである。その結果、非発光時に、前記透明基板の表面から入射して、前記透明電極と有機発光層とを透過して前記金属電極で反射した光が、再び前記透明基板の表面側へ出る。このため、外部から視認した際に、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見えるのである。
【0145】
本発明の有機EL表示装置は、例えば、前記有機発光層の表面側に透明電極を備え、前記有機発光層の裏面側に金属電極を備えた前記有機EL発光体を含む有機EL表示装置において、前記透明電極の表面に、本発明の光学補償フィルム(偏光板等)が配置されることが好ましく、さらにλ/4板を偏光板とEL素子との間に配置することが好ましい。このように、本発明の光学補償フィルムを配置することによって、外界の反射を抑え、視認性向上が可能であるという効果を示す有機EL表示装置となる。また、前記透明電極と光学フィルムとの間に、さらに位相差板が配置されることが好ましい。
【0146】
前記位相差板および光学補償フィルム(偏光板等)は、例えば、外部から入射して前記金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって前記金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板として1/4波長板を使用し、かつ、前記偏光板と前記位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、前記金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、前記偏光板によって直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は、前記位相差板によって、一般に楕円偏光となるが、特に前記位相差板が1/4波長板であり、しかも前記角がπ/4の場合には、円偏光となる。
【0147】
この円偏光は、例えば、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び、有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、前記位相差板で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、前記偏光板の偏光方向と直交しているため、前記偏光板を透過できず、その結果、前述のように、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができるのである。
【0148】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(位相差の測定)
位相差計(王子計測機器社製、商品名:KOBRA21ADH)を用いて測定した。
(前記水平面からの前記成形体の前記凸面までの高さの最大値)
光学補償フィルムを一辺が10cmの正方形の形に切断した。そのフィルムの凸面を下にして水平面上に設置した(図2参照)。垂直方向における、前記水平面からの前記フィルムの両端までの高さH1およびH2を、ノギス(株式会社ミツトヨ製、商品名:ハイトゲージ)を用いて測定した。H1およびH2のうち大きいほうを、前記水平面からの前記成形体の前記凸面までの高さの最大値とした。
【0149】
(位相差値のばらつき)
光学補償フィルムを、長さ6cm×幅6cmの正方形に切断して調製し、これをサンプルとした。前記サンプルの面内において、相互に1cmの間隔をとって任意にとった25点のX1〜X25(図3参照)の各点について、前記装置を用いて面内位相差値と厚み方向位相差値を測定した。これら測定値から、それぞれの平均値を求めた。
その平均値と、各点における面内位相差値と厚み方向位相差値とから、各点における各位相差のばらつきを、下記式から算出した。
|△nd(V)−△nd(X)| (6)
|Rth(V)−Rth(X)| (7)
△nd(V)は、25点における面内位相差値の平均値を表し、
△nd(X)は、前記サンプルの各点における面内位相差値を表し、
Rth(V)は、25点における厚み方向位相差値の平均値を表し、
Rth(X)は、前記サンプルの各点における厚み方向位相差値を意味する。
【0150】
(実施例1)
2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FDA)及び2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(PFMB)から合成した、重量平均分子量Mw=120,000のポリイミドをシクロヘキサノンに溶解させ、10重量%のポリイミド溶液を調製した。
この溶液を、トリアセチルセルロースフィルム(基材)(厚さ80μm)の両面にディップコート法にて両面塗工した。なお、ポリイミド溶液の塗工量は、両面とも、前記トリアセチルセルロースフィルムの面積(cm2)あたり0.3mlとした。その後、100℃で10分間加熱処理し、透明で平滑な層毎の厚さ各3μmの3層構造フィルムを得た。得られた3層構造フィルムを、さらに175℃で固定端横延伸にて1.2倍横延伸した。平面と、光学補償フィルムの垂直方向の距離の最大値は3mmであった。また、得られた光学補償フィルムは、nx>ny>nzであり、光学補償フィルムの複屈折率は0.04であった。
【0151】
得られた光学補償フィルムから上記のようにサンプルを調製し、そのサンプルの25点すべてについて、面内位相差値および厚み方向位相差値のばらつきを測定した。面内位相差値(△nd)の平均値は50nmであり、面内位相差値のばらつきは25点すべて1nm以下であった。
また、厚み方向位相差値(Rth)の平均値は220nmであり、厚み方向位相差値のばらつきは25点すべて2nm以下であった。
サンプルの1点についての面内位相差値△ndは50nm、(nx−nz)/(nx−ny)=5であった。
【0152】
(実施例2)
実施例1で調製したポリイミド溶液を、トリアセチルセルロースフィルム(基材)(厚さ80μm)の、まず、片面にワイヤーバーコート法にて塗工し、風乾した。なお、ポリイミド溶液の塗工量は、前記トリアセチルセルロースフィルムの面積(cm2)あたり0.3mlとした。その後さらに前記トリアセチルセルロースフィルムの反対面側に前記ポリイミド溶液をワイヤーバーコート法にて塗工した。なお、ポリイミド溶液の塗工量は、前記トリアセチルセルロースフィルムの面積(cm2)あたり0.3mlとした。その後、100℃で10分間加熱処理し、透明で平滑な層毎の厚さ各3μmの3層構造フィルムを得た。得られた3層構造フィルムを、さらに、175℃で固定端横延伸にて1.2倍横延伸した。平面と、光学補償フィルムの垂直方向の距離の最大値は5mmであった。また、得られた光学補償フィルムは、nx>ny>nzであり、光学補償フィルムの複屈折率は0.04であった。
【0153】
得られた光学補償フィルムから上記のようにサンプルを調製し、そのサンプルの25点すべてについて、面内位相差値および厚み方向位相差値のばらつきを測定した。面内位相差値(△nd)の平均値は60nmであり、面内位相差値のばらつきは25点すべて1nm以下であった。
また、厚み方向位相差値(Rth)の平均値は220nmであり、厚み方向位相差値のばらつきは25点すべて2nm以下であった。
サンプルの1点についての面内位相差値△ndは60nm、(nx−nz)/(nx−ny)=4であった。
【0154】
(比較例1)
実施例1で調製したポリイミド溶液を、トリアセチルセルロースフィルム(基材)(厚さ80μm)の片面にワイヤーバーコートにて塗工した。なお、ポリイミド溶液の塗工量は、前記トリアセチルセルロースフィルムの面積(cm2)あたり0.3mlとした。その後、100℃で10分間加熱処理し、透明な厚さ6μmの2層積層フィルムを得た。平面と、光学補償フィルムの垂直方向の距離の最大値は35mmで、カールしていた。得られた2層積層フィルムを、さらに、175℃で固定端横延伸しようと試みたが、フィルムのカールがきつく、延伸ができなかった。2層積層フィルムの複屈折率は0.04であり、得られた2層積層フィルムの1点における面内位相差値△nd=1.5、(nx−nz)/(nx−ny)=167であった。
【0155】
(比較例2)
実施例1で調製したポリイミド溶液を、トリアセチルセルロースフィルム(基材)(厚さ80μm)の片面にワイヤーバーコートにて塗工した。なお、ポリイミド溶液の塗工量は、前記トリアセチルセルロースフィルムの面積(cm2)あたり0.2mlとした。その後、100℃で10分間加熱処理し、透明な厚さ4μmの2層積層フィルムを得た。平面と、光学補償フィルムの垂直方向の距離の最大値は25mmで、カールしていた。
得られた2層積層フィルムを、さらに、175℃で固定端横延伸で1.4倍延伸した。得られた光学補償フィルムは、nx>ny>nzであり、光学補償フィルムの複屈折率は0.04であった。
【0156】
得られた光学補償フィルムから上記のようにサンプルを調製し、そのサンプルの25点すべてについて、面内位相差値および厚み方向位相差値のばらつきを測定した。面内位相差値(△nd)の平均値は50nmであり、面内位相差値のばらつきは25点のうち最大値が5nmであった。
また、厚み方向位相差値(Rth)の平均値は220nmであり、厚み方向位相差値のばらつきは25点のうち最大値が7nmであった。
サンプルの1点についての面内位相差値△ndは50nm、(nx−nz)/(nx−ny)=4であった。
【0157】
(実施例3)
次に、上記の実施例1で作製した光学補償フィルムと偏光板(日東電工(株)製、商品名「HEG1425DU」)を、アクリル系粘着剤を用いて積層して積層偏光板を作製した。この偏光板と液晶セルを、偏光板が外側になるように接着して、液晶表示装置を作製した。その液晶表示装置の表示特性を調べたところ、正面と斜視の広い視角範囲にわたって、コントラストと表示の均質性に優れ、良好な表示品位であった。
【0158】
(比較例3)
実施例1で作製した光学補償フィルムの代わりに、比較例2で作製した2層積層フィルムを用いた以外は、実施例3と同様にして液晶表示装置を作製した。その液晶表示装置の表示特性を調べたところ、正面と斜視の広い視角範囲にわたって、コントラストおよび表示が実施例3と比較して、表示品位が悪かった。
【0159】
実施例1および2で作製した光学補償フィルムはカール発生が抑制されており、面内および厚み方向位相差のばらつきは抑制され、その光学補償フィルムを含む実施例3の液晶表示装置の表示特性は良好であった。一方、比較例1および2で作製した2層積層フィルムは、カールが発生し、2層積層フィルム内位相差のばらつきがあり、その2層積層フィルムを含む比較例3の液晶表示装置の表示特性はよくなかった。
【0160】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光学補償フィルムの製造方法は、プラスチックフィルム基材を用いるので、工程数が少なく、量産性に優れた方法である。さらに、本発明の製造方法は、プラスチックフィルム基材の両面に光学補償層形成材料を塗工するので、基材の収縮が偏らず、面内の均一性に優れた光学補償フィルムを得ることができる。また、基材の両面に光学補償層を形成することでカールが防止され、取り扱い性に優れた光学補償フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学補償フィルムの軸方向を示す図である。
【図2】本発明の光学補償フィルムと平面との距離の最大値を説明するための図である。
【図3】本発明の光学補償フィルムのサンプル中、面内位相差値と厚み方向位相差値を測定した点25個を示す図である。
【符号の説明】
nx,ny,nz フィルムの厚み方向をZ軸、Z軸に垂直な面内の方向をX軸、X軸及びZ軸に垂直な方向をY軸としたときの、それぞれの軸方向の屈折率を示す。
1 光学補償フィルム
H1 光学補償フィルムと平面の間の距離
H2 光学補償フィルムと平面の間の距離
2 光学補償フィルムのサンプル
X1〜X25 前記サンプル中、面内位相差値と厚み方向位相差値を測定する点
Claims (17)
- プラスチックフィルム基材と光学補償層を有する光学補償フィルムの製造方法であって、
前記基材の両面に光学補償層形成材料の溶液および溶融液の少なくとも一方を塗工して、これを固化することにより、前記基材の両面に光学補償層を形成する製造方法。 - 前記形成材料の塗工が、前記形成材料の溶液の塗工であり、前記固化が、前記溶液の乾燥により実施される請求項1に記載の製造方法。
- 前記基材の両面に形成された両方の前記光学補償層の厚みを等しくする請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記形成材料が、非液晶性材料である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記非液晶性材料が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマー材料である請求項4に記載の製造方法。
- 前記基材に光学補償層を形成後、この光学補償層と前記基材とを一体としてさらに延伸するか、または収縮させる請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法によって製造された光学補償フィルム。
- プラスチックフィルム基材と光学補償層を有し、前記基材の両面に、前記光学補償層が形成されている請求項7に記載の光学補償フィルム。
- 前記光学補償フィルムが、下記の式(1)から(3)を全て満たし、
かつ前記光学補償フィルムの複屈折率(△n)が、0.0005〜0.5の範囲にある請求項7または8に記載の光学補償フィルム。
nx>ny>nz (1)
3(nm)≦△nd (2)
(nx−nz)/(nx−ny)>1 (3)
(前記式において、
△nは、[{(nx+ny)/2}−nz]・d/dで表され、
△ndは(nx−ny)・dで表され、
nx、nyおよびnzは、それぞれ前記光学補償フィルムにおけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学補償フィルムの面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であり、dは前記光学補償フィルムの厚みを示す。) - 前記光学補償層が、非液晶性材料で形成されている請求項8または9に記載の光学補償フィルム。
- 前記非液晶性材料が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマー材料である請求項10に記載の光学補償フィルム。
- 一辺が10cmの正方形状に成形し、この成形体を、その凸面を下にして水平面上に設置した場合、
前記水平面からの前記成形体の前記凸面までの高さの最大値が、10mm以下である請求項7〜11のいずれかに記載の光学補償フィルム。 - 一辺が6cmの正方形状に成形し、この成形体の面上で、相互に1cmの距離をおいて任意に25個の点をとった場合、
前記各点における面内位相差値(△nd(X))と、これらの平均値(△nd(V))とが、下記の式(4)を満たし、かつ
前記各点における厚み方向位相差値(Rth(X))と、これらの平均値(Rth(V))とが、下記の式(5)を満たす請求項7〜12のいずれかに記載の光学補償フィルム。
|△nd(V)−△nd(X)|≦3(nm) (4)
|Rth(V)−Rth(X)|≦5(nm) (5)
(前記式において、
△ndは、(nx−ny)・dで表される。
Rthは、[{(nx+ny)/2}−nz]・dで表される。
nx、nyおよびnzは、それぞれ前記光学補償フィルムにおけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学補償フィルムの面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であり、dは前記光学補償フィルムの厚みを示す。) - 光学補償フィルムと偏光子とを含む偏光板であって、前記光学補償フィルムが請求項7〜13のいずれかに記載の光学補償フィルムである光学補償フィルム付偏光板。
- 液晶セルおよび光学部材を含み、前記液晶セルの少なくとも一方の表面に前記光学部材が配置された液晶表示装置であって、前記光学部材が、請求項7〜13のいずれかに記載の光学補償フィルムまたは請求項14に記載の光学補償フィルム付偏光板である液晶表示装置。
- 請求項7〜13のいずれかに記載の光学補償フィルムまたは請求項14に記載の光学補償フィルム付偏光板を含むことを特徴とする画像表示装置。
- 画像表示装置が、液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置およびエレクトロルミネッセンス表示装置からなる群から選択された一つである請求項16に記載の画像表示装置。
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