JP2004033977A - 電気脱イオン装置の運転方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】陽極11を有する陽極室17と、陰極12を有する陰極室18と、これらの陽極室17と陰極室18との間に複数のアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14を交互に配列することにより交互に形成された濃縮室15及び脱塩室16とを備え、脱塩室16にイオン交換体が充填され、濃縮室15にイオン交換体、活性炭又は電気導電体が充填されている電気脱イオン装置の運転停止中に、陽極11と陰極12との間に電圧を印加してイオンの移動を防止する。また、運転停止後に濃縮室内の水を、原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水と置換する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気脱イオン装置の運転方法に係り、特にシリカやホウ素の除去率を高めるようにした電気脱イオン装置を停止している間の該電気脱イオン装置の保守管理運転を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体製造工場、液晶製造工場、製薬工業、食品工業、電力工業等の各種の産業又は民生用ないし研究施設等において使用される脱イオン水の製造には、図2に示す如く、電極(陽極11、陰極12)の間に複数のアニオン交換膜(A膜)13及びカチオン交換膜(C膜)14を交互に配列して濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成し、脱塩室16にイオン交換樹脂、イオン交換繊維もしくはグラフト交換体等からなるアニオン交換体及びカチオン交換体を混合もしくは複層状に充填した電気脱イオン装置が多用されている(特許第1782943号、特許第2751090号、特許第2699256号)。なお、図2において、17は陽極室、18は陰極室である。
【0003】
脱塩室16に流入したイオンはその親和力、濃度及び移動度に基いてイオン交換体と反応し、電位の傾きの方向にイオン交換体中を移動し、更に膜を横切って移動し、すべての室において電荷の中和が保たれる。そして、膜の半浸透特性のため、及び電位の傾きの方向性のために、イオンは脱塩室16では減少し、隣りの濃縮室15では濃縮される。即ち、カチオンはカチオン交換膜14を透過して、また、アニオンはアニオン交換膜13を透過して、それぞれ濃縮室15内に濃縮される。このため、脱塩室16から生産水として脱イオン水(純水)が回収される。
【0004】
なお、陽極室17及び陰極室18にも電極水が通液されており、一般に、この電極水としては、電気伝導度の確保のためにイオン濃度の高い濃縮室15の流出水(濃縮水)が通液されている。
【0005】
即ち、原水は脱塩室16と濃縮室15とに導入され、脱塩室16からは脱イオン水(純水)が取り出される。一方、濃縮室15から流出するイオンが濃縮された濃縮水は、ポンプ(図示せず)により一部が水回収率の向上のために、濃縮室15の入口側に循環され、一部が陽極室17の入口側に送給され、残部が系内のイオンの濃縮を防止するために排水として系外へ排出される。そして、陽極室17の流出水は、陰極室18の入口側へ送給され、陰極室18の流出水は排水として系外へ排出される。
【0006】
このような電気脱イオン装置にあっては、陽極室17では、水解離によるH+の生成でpHが低下する。一方、陰極室18ではOH−の生成でpHが高くなる。このため、pHが低下した酸性の陽極室17の流出水を陰極室18に通液することで、陰極室18におけるアルカリを中和してスケール障害を抑制している。
【0007】
このような電気脱イオン装置にあっては、濃縮水の影響で電気脱イオン装置の生産水の水質が影響を受ける可能性があることはこれまでに各種報告されている。また、電極室に活性炭やイオン交換樹脂を充填することは、USP5,868,915に示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電気脱イオン装置にあっては、シリカ及びホウ素の除去が若干不十分であり、例えば、シリカについては99.9〜99.99%以上の除去率を得ることは困難であった。
【0009】
本出願人は、上記従来の問題点を解決し、シリカ及びホウ素を高度に除去することができる電気脱イオン装置を特願2001−678号にて提案している。
【0010】
同号の電気脱イオン装置は、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室と、これらの陽極室と陰極室との間に複数のアニオン交換膜及びカチオン交換膜を交互に配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを備え、該脱塩室にイオン交換体が充填され、該濃縮室にイオン交換体、活性炭又は電気導電体が充填されている電気脱イオン装置であって、該陽極室及び陰極室にそれぞれ電極水を通水する手段と、該濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段と、該脱塩室に原水を通水して脱イオン水を取り出す手段とを有する電気脱イオン装置において、該濃縮水通水手段が、該原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水を、脱塩室の脱イオン水取り出し口に近い側から該濃縮室内に導入すると共に、該濃縮室のうち脱塩室の原水入口に近い側から流出させ、この濃縮室から流出した濃縮水の少なくとも一部を系外へ排出する手段であることを特徴とする。
【0011】
かかる同号の電気脱イオン装置によると、濃縮水として原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水を用い、しかも、このように水質の良好な水を、脱塩室の脱イオン水(生産水)取り出し側から原水流入側へ向かう方向に濃縮室に通水するため、シリカ、ホウ素濃度を極低濃度にまで低減した高水質の生産水を得ることができる。
【0012】
本発明は、この特願2001−678号の電気脱イオン装置の運転停止時における濃縮室から脱塩室側へのイオンの拡散を防止し、運転再開後、早期に高水質の水を生産することを可能とする電気脱イオン装置の運転方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気脱イオン装置の運転方法は、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室と、これらの陽極室と陰極室との間に複数のアニオン交換膜及びカチオン交換膜を交互に配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室と、該脱塩室に充填されたイオン交換体と、該濃縮室に充填されたイオン交換体、活性炭又は電気導電体と、該陽極室及び陰極室にそれぞれ電極水を通水する手段と、該濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段と、該脱塩室に原水を通水して脱イオン水を取り出す手段とを有し、該濃縮水通水手段が、該原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水を、脱塩室の脱イオン水取り出し口に近い側から該濃縮室内に導入すると共に、該濃縮室のうち脱塩室の原水入口に近い側から流出させ、この濃縮室から流出した濃縮水の少なくとも一部を系外へ排出する手段である電気脱イオン装置を運転する方法であって、該原水の供給を停止して該電気脱イオン装置による脱イオン水の製造を停止しているときに、該陽極と陰極との間に電圧を印加し、該濃縮室から脱塩室へのイオンの移動を抑制することを特徴とするものである。
【0014】
この電気脱イオン装置は、上記特願2001−678号と同一構成のものであり、上記の通り、濃縮水として原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水を用い、しかも、このように水質の良好な水を、脱塩室の脱イオン水(生産水)取り出し側から原水流入側へ向かう方向に濃縮室に通水するため、シリカ、ホウ素濃度を極低濃度にまで低減した高水質の生産水を得ることができる。
【0015】
本発明の電気脱イオン装置の運転方法では、該原水の供給を停止して該電気脱イオン装置による脱イオン水の製造を停止しているときに、該陽極と陰極との間に電圧を印加し、該濃縮室から脱塩室へのイオンの移動を抑制するので、運転を停止している間における濃縮室から脱塩室側へのイオンの移動が抑制され、運転再開直後から水質の良好な(即ちイオン濃度が低い)脱イオン水が脱塩室から取り出される。
【0016】
本発明では、運転停止後に濃縮室内の水を原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水と置換し、濃縮室内のイオン濃度の高い水を排出することにより、運転停止中における濃縮室側から脱塩室側へのイオンの拡散を防止することが好ましい。
【0017】
また、濃縮室内の水がシリカ又はホウ素濃度の低い水に置換されたとしても、濃縮室内のイオン交換体からイオンが脱離し再び濃縮室内のイオン濃度が高くなってくることがあるので、運転停止後、所定時間毎に濃縮室内の水をシリカ又はホウ素濃度の低い水と置換することが望ましい。
【0018】
なお、濃縮室内にシリカ又はホウ素濃度の低い水を供給する場合、該原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水を、脱塩室の脱イオン水取り出し口に近い側から該濃縮室内に導入すると共に、該濃縮室のうち脱塩室の原水入口に近い側から流出させることが好ましい。これは、濃縮室内のうち濃縮水流出側ほどイオン濃度が高くなっており、このイオン濃度の高い水をそのまま流出口から流出させて濃縮室内への拡散を防ぐためである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態に係る電気脱イオン装置の運転方法が適用される電気脱イオン装置の模式的な断面図である。この電気脱イオン装置は、図2に示す従来の電気脱イオン装置と同様、電極(陽極11、陰極12)の間に複数のアニオン交換膜(A膜)13及びカチオン交換膜(C膜)14を交互に配列して濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成したものであり、脱塩室16には、イオン交換樹脂、イオン交換繊維もしくはグラフト交換体等からなるアニオン交換体及びカチオン交換体が混合もしくは複層状に充填されている。
【0021】
また、濃縮室15と、陽極室17及び陰極室18にも、イオン交換体、活性炭又は金属等の電気導電体が充填されている。
【0022】
原水は脱塩室16に導入され、脱塩室16からは生産水が取り出される。この生産水の一部は、濃縮室15に脱塩室16の通水方向とは逆方向に向流一過式で通水され、濃縮室15の流出水は系外へ排出される。即ち、この電気脱イオン装置では、濃縮室15と脱塩室16とが交互に並設され、脱塩室16の生産水取り出し側に濃縮室15の流入口が設けられており、脱塩室16の原水流入側に濃縮室15の流出口が設けられている。また、生産水の一部は陽極室17の入口側に送給され、そして、陽極室17の流出水は、陰極室18の入口側へ送給され、陰極室18の流出水は排水として系外へ排出される。
【0023】
このように、濃縮室15に生産水を脱塩室16と向流一過式で通水することにより、生産水取り出し側ほど濃縮室15内の濃縮水の濃度が低いものとなり、濃度拡散による脱塩室16への影響が小さくなり、イオン除去率、特にシリカ、ホウ素の除去率を飛躍的に高めることができる。
【0024】
また、濃縮室にイオン交換体を充填することで、濃縮室のLVを20m/hr以下としても、脱イオン性能を確保することができる。これは、濃縮室内がスペーサであると、濃縮室膜面におけるシリカ、ホウ素の膜面濃縮を水流により拡散させる必要があったのに対し、濃縮室にイオン交換体等を充填することで、イオン交換体を通じてイオンが拡散するため、高い通水速度(LV)を必要としないためと考えられる。
【0025】
このように通水速度が低くても良いため、一過式で濃縮水を通水しても、水回収率は従来よりも向上させることができ、しかも、循環ポンプを用いる必要もないため、さらに経済的である。
【0026】
濃縮室充填物は、必要電流確保のためには活性炭等でも良いが、上記イオン拡散作用の点から、イオン交換体を充填することが望ましい。
【0027】
この図1の電気脱イオン装置では、電極室17,18にも生産水を供給しているが、電極室17,18でも濃縮室15と同様に、電流確保のために、イオン交換体や活性炭、又は電気導電体である金属等を充填することで、水質によらず消費電圧が一定になり、超純水等の高水質の水を通水しても必要電流を確保することが可能となる。
【0028】
なお、電極室では、特に陽極室での塩素やオゾン等の酸化剤の発生が起こるため、充填物としては、長期的にはイオン交換樹脂等を用いるよりも、活性炭を用いることが好ましい。また、電極室へ図1のように生産水を供給することは、電極室供給水にCl−が殆ど無いため、塩素の発生を防止できるので、充填物や電極の長期安定化のためには望ましい。
【0029】
なお、電極室は上記のような充填物を用いなくても、電極板の通水面側を多孔質状に加工し、その部分に電極水を通水できるようにしても良く、その場合、電極板と電極室が一体化できるので、組立等が簡単になる等のメリットがある。
【0030】
ところで、濃縮水の循環を行う場合、全体で循環してしまうと濃縮室の、特に生産水流出側でのシリカ、ホウ素の温度が上がってしまうので、図3のように濃縮室を分断させ、入口側と出口側で濃度勾配をとるようにすれば、生産水質は図1の向流通水と同等のものを得ることができる。
【0031】
図3(a)は本発明の電気脱イオン装置の運転方法が適用される電気脱イオン装置の他の例を示す概略的な斜視図、図3(b)は同系統図である。
【0032】
図示の如く、この電気脱イオン装置は、陽極11と陰極12との間に、カチオン交換膜とアニオン交換膜とを交互に配列して濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成した点においては従来の電気脱イオン装置と同様の構成とされているが、濃縮室15が仕切壁15Sにより2以上(図3においては2個)の濃縮水流通部15A,15Bに区画され、各濃縮水流通部15A,15Bの濃縮水の通水方向が脱塩室16内の通水方向と交叉する方向とされている点が従来の電気脱イオン装置と異なる。
【0033】
即ち、図3において、脱塩室16は、図3(a)における上側が入口側、下側が出口側であり、脱塩室16内を水は上から下へ向かって流れる。
【0034】
一方、濃縮室15内には、この脱塩室16内の通水方向と交叉する方向(図3(a)においては直交方向(なお、この直交方向とは必ずしも厳密なものではなく、80〜100゜程度の範囲を含む)に延在する仕切壁15Sが設けられ、濃縮室15内は図において上下に2段に分画され、各濃縮水流通部15A,15Bの各々に図の手前側から裏側へ通水が行われる。
【0035】
図3(b)に示す如く、脱塩室から取り出された生産水の一部はポンプにより循環される濃縮水流通部15Bの循環系に導入され、生産水取り出し側の濃縮水流通部15Bを循環する。この循環系の循環濃縮水の一部がポンプにより循環される濃縮水流通部15Aの循環系に導入され、原水流入側の濃縮水流通部15Aを循環し、その一部は系外へ排出される。
【0036】
この電気脱イオン装置であっても、生産水が生産水取り出し側の濃縮水流通部15Bを循環した後原水流入側の濃縮水流通部15Aに流入して循環し、その後系外へ排出されることにより、結果的には、濃縮水は、生産水の取り出し側から原水流入側へ通水され、その後一部が系外へ排出されたことになり、図1に示す脱塩室との向流一過式通水の場合と同様の効果が奏される。
【0037】
なお、濃縮室を仕切壁で仕切って形成する濃縮水流通部は3以上であっても良い。ただし、仕切壁の数を増やすことによる部材数の増加、装置構成の複雑化等を考慮した場合、濃縮室内を2又は3個の濃縮水流通部に区画するのが好ましい。
【0038】
このような電気脱イオン装置において、シリカのみならず特にホウ素をも除去しようとする際には、脱塩室の厚さが小さいほど良いことが、鋭意研究の結果判明している。脱塩室の厚さは5mm以下が良く、小さいほど良いが、水の通水性や製作時の取り扱い性等を考慮すると実用上2mm以上とすることが好ましい。
【0039】
また、電流確保を行い、濃度拡散の影響を排除することで、シリカ、ホウ素の除去率向上を図ることが本発明の目的であり、電流確保のためには、濃縮室、更には電極室に先に記したような工夫が必要となるが、シリカ、ホウ素高除去のための必要電流は、電流効率として10%以下に相当する電流値、さらに99.9%以上のシリカ、ホウ素除去率を得るためには望ましくは電流効率5%以下に相当する電流値が必要となる。なお、電流効率とは以下の式で示される。
電流効率(%)=1.31×セル当たり流量(L/min)×(原水当量導電率(μS/cm)−処理水当量導電率(μS/cm))/電流(A)
【0040】
このような電気脱イオン装置では、電気脱イオン装置の原水が高比抵抗であって、この水のシリカやホウ素のみをさらに低減したい場合であっても、必要電流が確保できるので、濃縮室及び電極室のいずれか一方にでも電流が流れなければ、電気脱イオン装置全体の電流が流れなくなるという従来の問題点は解消される。
【0041】
このため、高比抵抗の原水からさらに、シリカ、ホウ素を除去しようとする場合にも、電気脱イオン装置を用いることができ、従って、電気脱イオン装置の適用水質範囲を大きく広げることができるため、その工業的有用性は極めて大である。
【0042】
例えば、主として半導体工場の一次純水製造装置として用いた場合、水使用が少なく、原水に生産水が戻されて循環しているような場合でも、必要電流を確保することができ、装置の立ち上げ時等にも安定に起動させることができる。
【0043】
また、電気脱イオン装置を直列で複数段設置して多段通水するような場合の後段の電気脱イオン装置においても、必要電流を確保することができる。
【0044】
また、超純水製造工程の二次純水システム(サブシステム)において、比抵抗10MΩ・cm以上の水を原水としても、必要電流が確保できるので、デミナー(非再生式混床イオン交換装置)の代替として用いることができる。
【0045】
本発明では、このような電気脱イオン装置の運転を停止しているときに、陽極と陰極との間に電圧を印加し、濃縮室から脱塩室へのイオン移動を抑制する。なお、この場合、陽極には正の電圧を印加し、陰極には負の電圧を印加する。
【0046】
この運転停止後の印加電圧は、運転停止直後に陽極、陰極間に発生する残留電圧の30〜200%特に50〜150%とすることが望ましい。電気脱イオン装置の運転を停止した直後の状態、即ち原水の通水を停止すると共に陽極、陰極間への電圧印加を停止した直後の状態にあっては、陽極側の濃縮室に高濃度に陰イオンが存在し陰極側の濃縮室には高濃度に陽イオンが存在するので、陽極と陰極との間にはイオン分極電圧に相当する電圧が存在(残留)する。本発明者の研究によると、電気脱イオン装置の運転停止後に、この残留電圧の30〜200%の電圧を陽極、陰極間に印加することにより、濃縮室側から脱塩室側へのイオン移動が十分に抑制されることが見出された。なお、200%よりも高い電圧は、エネルギー効率を低下させるとともに装置構成材を損傷させる恐れがある。
【0047】
長期運転停止の場合、運転停止直後から印加電圧を上記の範囲内で低目の電圧とすることが好ましい。
【0048】
電気脱イオン装置停止時に印加する電圧は、連続的に印加される必要はなく断続的に印加されても同様の効果が得られる。
【0049】
なお、イオン交換膜、イオン交換体保護のため、停止中に印加する電圧を低くすると、微量のイオンが拡散する。高純度の脱イオン水製造を目的とした場合は、この微量イオンが脱イオン水製造再開時に問題となることがある。そこで、装置再起動時に通常の運転電流より多くの電流を流すよう定常運転時の印加電圧よりも高い電圧を印加し、処理水比抵抗率、残留イオン濃度を速やかに所定の値まで到達させることが好ましい。この場合の運転再開直後の印加電圧は、定常電圧の1.1〜1.5倍程度が好ましく、また、この高い電圧を印加する時間は0.5〜2min程度が好ましい。イオン移動防止用の電圧印加の電源は、商用電源である必要はない。充電池や小型発電設備を電源としてもよく、これらを用いることにより、停電時にも電気脱イオン装置内部のイオン逆拡散を防ぎ、停電時復帰時に速やかに所定の水質の脱イオン水を製造することができる。
【0050】
また、本発明では、この運転停止後に濃縮室内の水を原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水と置換し、濃縮室内のイオン濃度を低下させ、これによって濃縮室から脱塩室へのイオン移動を抑制することが好ましい。さらに、このように原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水と置換しても、その後徐々にイオン交換体からイオンが脱離してきて再び濃縮室内のイオン濃度が高くなってくることがあるので、運転停止後、所定時間毎(例えば1日〜10日に1回程度の割合)にて濃縮室内の水を原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水と置換することが望ましい。
【0051】
濃縮室内の水を原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水と置換する場合は、該原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水を、脱塩室の脱イオン水取り出し口に近い側から該濃縮室内に導入すると共に、該濃縮室のうち脱塩室の原水入口に近い側から流出させることが好ましい。
【0052】
なお、濃縮室内の水を原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水よりも置換する場合、この置換水量は濃縮室内のイオン交換体の体積の4〜20倍特に5〜10倍程度が好ましい。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、シリカ、ホウ素を高度に除去して高純度の生産水を製造することができる電気脱イオン装置の運転を停止し、その後運転を再開する場合、運転再開後短時間のうちに高水質の脱イオン水を生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気脱イオン装置の運転方法が適用される電気脱イオン装置の模式的な断面図である。
【図2】従来の電気脱イオン装置を示す模式的な断面図である。
【図3】図3(a)は本発明方法が適用される電気脱イオン装置の他の例を示す概略的な斜視図、図3(b)は同系統図である。
【符号の説明】
11 陽極
12 陰極
13 アニオン交換膜(A膜)
14 カチオン交換膜(C膜)
15 濃縮室
15A,15B 濃縮水流通部
15S 仕切壁
16 脱塩室
17 陽極室
18 陰極室
Claims (4)
- 陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
これらの陽極室と陰極室との間に複数のアニオン交換膜及びカチオン交換膜を交互に配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室と、
該脱塩室に充填されたイオン交換体と、
該濃縮室に充填されたイオン交換体、活性炭又は電気導電体と、
該陽極室及び陰極室にそれぞれ電極水を通水する手段と、
該濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段と、
該脱塩室に原水を通水して脱イオン水を取り出す手段とを有し、
該濃縮水通水手段が、該原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水を、脱塩室の脱イオン水取り出し口に近い側から該濃縮室内に導入すると共に、該濃縮室のうち脱塩室の原水入口に近い側から流出させ、この濃縮室から流出した濃縮水の少なくとも一部を系外へ排出する手段である電気脱イオン装置を運転する方法であって、
該原水の供給を停止して該電気脱イオン装置による脱イオン水の製造を停止しているときに、該陽極と陰極との間に電圧を印加し、該濃縮室から脱塩室へのイオンの移動を抑制することを特徴とする電気脱イオン装置の運転方法。 - 請求項1において、前記運転停止後に前記濃縮室内の水を原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水と置換することを特徴とする電気脱イオン装置の運転方法。
- 請求項2において、運転停止後、所定時間毎に前記濃縮室内の水を原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水と置換することを特徴とする電気脱イオン装置の運転方法。
- 請求項2又は3において、前記置換を行うときに、該原水よりシリカ又はホウ素濃度の低い水を、脱塩室の脱イオン水取り出し口に近い側から該濃縮室内に導入すると共に、該濃縮室のうち脱塩室の原水入口に近い側から流出させることを特徴とする電気脱イオン装置の運転方法。
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