JP2004021037A - 吸音材及び車両用内装材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガラス転移温度が50℃以下の樹脂層に不織布が貼り合わされた層と、繊維径が7〜50μm、目付が50〜2000g/m2、厚みが4〜50mmの短繊維不織布とが積層一体化されていることを特徴とする吸音材であり、さらにはガラス転移温度が50℃以下の樹脂層に不織布が貼り合わされた層のフラジール通気度が、0.05〜50cm3/cm2・秒であることを特徴とする吸音材である。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量で厚みが薄いにも関わらず吸音性および制振特性にすぐれた吸音材に関する。詳しくは、500Hz〜4000Hzでの吸音特性にすぐれた吸音材に関する。さらには、広い温度域での成型時の絞り部での変形が大きくても千切れることのない成形性の良い吸音材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車や建築用途などの吸音材として短繊維不織布が広く用いられている。吸音性能を高くするために、繊維径を細くして空気の通過抵抗を大きくしたり、目付を大きくするなどの方法が採られてきた。その結果、高い吸音性能を求められる場合には、繊維径が15μm程度と比較的細い繊維を用い、目付が500〜5000g/cm2の厚くて重い短繊維不織布が用いられている。
極細繊維を含む不織布は優れた吸音特性やフィルター性、遮蔽性などのすぐれた特性があり多くの用途に利用されてきたが、強度が弱かったり、形態安定性が悪いなどの問題があり、その改善のために別の不織布と積層複合化して用いられてきた。この際に不織布を積層一体化する方法として、スプレーや転写などでバインダーとなる樹脂あるいは熱融着繊維などを用いていた。しかしながら、これらの方法では、乾燥あるいは樹脂の融解接着の目的で熱処理を行うことが必要であり、排気ガスにようる環境汚染の問題や省エネルギーの観点からあまり好ましい物でなかった。また、バインダー樹脂が不織布間の界面で皮膜を形成し、吸音性が低下するなどの問題もあった。
【0003】
一方、極細繊維不織布と長繊維不織布を積層一体化する方法は通称S/M/Sなどの名前で知られる、スパンボンド不織布(S)の間に極細繊維であるメルトブローン不織布(M)を積層して熱エンボス法で接合する方法が知られている。しかしながら、これらの不織布は、ボリューム感に欠け、硬い風合いとなっており用途が制限されてしまうという問題点があった。
また、コフォームと呼ばれる、メルトブローン不織布の内部に20〜30μm前後の短繊維を吹き込んで複合化した不織布も商品化されており、優れた吸音性能を示すといわれている。
【0004】
極細繊維を用いた不織布は、800Hz以上の高周波数域での吸音性能は優れるものの、500Hz周辺の低周波数域では吸音性能があまり良くないと言う問題があった。また、この問題を解決するために厚みを20〜50mm程度に厚くする方法もとることが可能であるが、その場合は逆に高周波数域での吸音性能が低下するという問題があった。
【0005】
近年、自動車用途を中心として小型化や軽量化が進むにつれて、従来の高目付の吸音材を用いて重量則で遮音する手法がとりにくくなってきたために低周波数域で吸音性能の高い軽量の不織布が求められている。しかしながら、従来の不織布の厚みを大きくして低周波数域での吸音率を高くすると、高周波数域で吸音性能が低下するという問題を生じた。また、多孔質の吸音材表面にフィルム状のシートを貼り合わせると、500〜1000Hzの低周波数域での吸音性能を著しく改善することも確認されているが、2000Hz以上の高周波数域での吸音性能が良くないという問題があった。さらに、自動車内装材は電気製品などに組み込まれる吸音材は立体成型を行われる事が少なくないが、成型時の絞りが深いと絞り部での変形が大きく吸音材の変形が追随できなくて千切れるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低周波数域でも吸音性能が高く、薄くて軽量な形態安定性の良い吸音材を、安価に提供することを目的とする。特に、自動車関連では、燃費向上や快適性改善のため、軽量で優れた吸音材が要求されており、その要望に応える事も目的とする。成型時の絞り部での変形が大きくても千切れることのない成形性の良い吸音材に関する。また、必要により難燃性の吸音材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる問題を解決するために以下の手段をとる。
第一の発明は、ガラス転移温度が50℃以下の樹脂層に不織布が貼り合わされた層と、繊維径が7〜50μm、目付が50〜2000g/m2、厚みが4〜50mmの短繊維不織布とが積層一体化されていることを特徴とする吸音材である。
【0008】
第二の発明は、第一の発明において、ガラス転移温度が50℃以下の樹脂層と不織布とが貼り合わされた層のフラジール通気度が、0.05〜50cm3/cm2・秒であることを特徴とする吸音材である。
【0009】
第三の発明は、 第一又は第二の発明において、樹脂層に貼り合わされた不織布が、水流交絡不織布、芯鞘型複合繊維で構成された不織布、ポリトリメチレンテレフタレート繊維で構成された不織布及びハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合ポリエステル繊維で構成された不織布のうちのいずれかであることを特徴とする吸音材である。
【0010】
そして第四の発明は、第一〜三の発明の何れかにの何れかに記載の吸音材を成形した部材が少なくとも一部に用いられていることを特徴とする車両用内装材である。
【0011】
第五の発明は、第四の発明における成形した部材が、天井材、ダッシュボード下部、カーペット部の何れかに用いられる部材であることを特徴とする車両用内装材である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明における吸音材は、少なくともガラス転移温度が50℃以下の樹脂層と不織布とが貼り合わされた層が必要である。なお、本発明におけるガラス転移温度は、内部透過損失(tanδ)のピーク温度で求められる温度である。
【0013】
樹脂層に用いられる樹脂は、少なくともガラス転移温度が50℃以下であり、好ましくは40℃以下である。ガラス転移温度が50℃以下の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエチレンなどのポリオレフィンなどが例としてあげられる。発明者らは、樹脂層のガラス転移温度が50℃以下であると吸音特性が優れることを見出したのであり、ガラス転移温度が50℃より高いと、曲げ剛性が高く変形しにくいうえに変形時に異音を発生する傾向が強くなる。本発明の吸音材の性能発現機構については明らかではないが、樹脂層と背部壁面の間の空気が共鳴する機構であると推定している。また、ガラス転移温度が室温に近いと内部透過損失が大きくなる傾向にあるため吸音性能をより改善できる可能性も考えられる。
【0014】
樹脂層の厚みが概ね30〜50μmであると、吸音材表面での音の反射が大きくなって約2000Hz以上の高周波数域の吸音性能が低下する傾向がある。その対策としては、ニードルパンチ法などで孔をあけて通気性を有するようにすることが好ましい。本発明者の検討の範囲では、ガラス転移温度が高い樹脂を用いた場合ほど通気性を高く設定する方が吸音性能を改善する傾向が認められた。
【0015】
樹脂層と不織布を貼り合わせる方法としては特に限定されないが、あらかじめ樹脂フィルムを作成した後に、接着剤などで貼り合わせても良いが、フィルム成形と同時に樹脂層と不織布とを貼り合わせる押出ラミネート法などの方法を用いてもよい。
【0016】
樹脂層が貼り合わされる不織布は、伸度が20%以上であることが好ましい。伸度が20%未満であると深絞り成形時の変形追随性などの成形性が悪くなる傾向がある。また、この不織布の目付は、10〜200g/m2であることが好ましい。目付が10g/m2より小さくなると、強度が低下し、一方、目付が200g/m2を超えると、短繊維不織布との複合化する際に皺が入ったり、接合力が弱いという問題が生じる場合がある。また、目付をあまり大きくしすぎても目的とする吸音性などの改善効果があまり変わらず、コスト削減や軽量化などの観点からあまり好ましくない。
【0017】
樹脂層が貼り合わされる不織布を構成する繊維としては、長繊維、短繊維のいずれでもよいが、長繊維の場合は、伸長回復性の高いエラストマー繊維など柔らかい素材が深絞り成形時の変形追随性などの観点から好ましい。また、積層される短繊維不織布と類似の素材であることがリサイクルの点で好ましい。一方、複数の素材よりなる繊維を混合した不織布でも問題はない。
【0018】
不織布と樹脂層をニードルパンチ法により積層する際に、ニードルによるニードル跡の孔があいてしまって、その孔を空気がチャンネリングして吹き漏れてしまい吸音率が低下するという場合も起こり得るが、繊維素材や樹脂層がエラストマーであれば変形して元に戻るため、孔のサイズが小さくなり、吸音率がほとんど低下することがない。発明者らの検討の範囲では、突き刺し密度が概ね100〜200カ所/cm2では、非エラストマーの不織布や樹脂層を用いた場合では吸音性能が著しく低下した場合も、エラストマーの場合はほとんど性能低下がない。したがって、エラストマーを用いると、突き刺し密度を高くして積層体の剥離強度を高くすることが可能となり、形態安定性を高くすることが可能ある。
【0019】
伸度が20%以上ある不織布を用いると、天井材、ダッシュ部材、カーペットなどの自動車内装材として深絞り成形を行う場合に、変形の追随性がよく千切れたりするという問題点がないために特に好ましい。この不織布は適度な強度特性を有することが好ましいが、スパンボンド法やメルトブロー法、フラッシュ紡糸法などにより製造された繊維末端の少ない不織布でもよいし、ポイントボンド法、エリアボンド法、サーマルボンド法などにより製造される短繊維不織布であっても良い。
【0020】
樹脂層は、水流交絡不織布、芯鞘型複合繊維を構成繊維とする不織布、あるいはポリトリメチレンテレフタレートを構成繊維とする不織布、ハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合ポリエステル繊維を構成繊維とする不織布のいずれかである場合には、成形時の追随性が極めて良いために特に好ましい。
【0021】
該不織布の繊維径が細いほど吸音性能は高くなるが、強度が低下する傾向があるため必要に応じて使い分けることが好ましい。吸音性能を重視する場合は、繊維径は1〜10μmが好ましく、強度を重視する場合は12〜40μm前後が好ましい。
【0022】
また、該不織布は、分割繊維あるいは海島型繊維を用いて得られる極細繊維を用いるのも好ましい形態の一つである。分割繊維は予め分割しておいたものを使用しても良いし、ニードルパンチや水流交絡法などを用いた積層加工の際に分割を同時に行っても良い。
【0023】
さらに、該不織布は、目付が20〜200g/m2である。目付が20g/m2より小さくなると、極細繊維の持つ吸音効果があまり期待できなくなる。一方、目付が200g/m2を超えると、短繊維不織布との複合化する際に皺が入ったり、接合力が弱いという問題が生じる場合がある。また、目付を大きくしすぎても目的とする吸音性などの改善効果があまり変わらず、コスト削減や軽量化などの観点からはあまり好ましくない。
【0024】
該不織布を構成する繊維素材としては、特に限定されるものではないが、伸度の高い芯鞘型複合繊維、ポリトリメチレンテレフタレートを主体とする繊維あるいはハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合ポリエステル繊維が、不織布の深絞り成形時の変形追随性などの観点からより好ましい。さらに、極細繊維に積層される短繊維不織布と類似の素材であることがリサイクルしやすく特に好ましい。一方、複数の素材よりなる繊維を混合しても問題はない。メルトブロー法による極細繊維である場合は、繊維が長繊維であり切断面がほとんどないことからエラストマーを用いることが好ましい。
【0025】
極細繊維不織布は、ニードルパンチ法により他の不織布と積層するとニードルにより多数の針の通過跡である孔があいてしまう可能性があるが、その場合には、その孔を空気がチャンネリングして吹き漏れてしまい吸音率が低下するという問題が生じるが、エラストマーであれば変形して元に戻るため孔のサイズが小さくなり、吸音率がほとんど低下することがないので好ましい。したがって、エラストマーの場合は、突き刺し密度を高くすることで積層体の剥離強度を高くすることが可能となり、形態安定性を高くすることが可能である。
【0026】
樹脂層が貼り合わされた不織布に積層される短繊維不織布は、繊維径が7〜50μmのであり、好ましくは7〜20μmである。繊維径が7μmより細いことは直接大きな問題を引き起こすことはないが、カード機からの紡出性など生産性の点であまり好ましくない。また、繊維径が7μmより大幅に小さいと、本発明における積層効果が小さくなる。また、不織布が毛羽立ちやすいなど別の問題を生じる場合がある。一方、繊維径が50μmより太いと、吸音性能に対する寄与が小さくなる傾向がある。
【0027】
該短繊維不織布の目付は、50〜2000g/m2の短繊維不織布である。目付が50g/m2より小さいと積層効果が小さく、不織布の嵩高性や風合いの点で好ましくない。一方、2000g/m2より大きい目付であると、厚みが大きくなりすぎたり、重さが重くなるため好ましくない。また、該短繊維不織布の厚みは4〜50mmである。厚みが4mmより薄いと吸音性能が低下する傾向がある。厚みが大きいほど低い周波数の吸音率を高くすることが可能となるが、50mmを超えると嵩張るため余り好ましくない。厚みが5〜20mmである場合、ハンドリングやコストパフォーマンスの観点から好ましい。
【0028】
該短繊維不織布の繊維長さは、38〜150mmが好ましく、より好ましくは50〜150mmである。本発明者らの検討の範囲では、繊維長が長いほど優れた吸音率を示した。ただし、繊維長が長すぎるとカードからの紡出性が悪くなる問題点が認められた。短繊維は単一成分でも良いが、2種類以上の混合物や複数成分の複合繊維でも良い。不織布の堅さを調整するために重量分率で30%程度以下であれば、さらに太い繊維を混合しても特性はあまり変化しない。太い繊維が多すぎると不織布風合いが硬くなりすぎるなどの問題を生じやすくなる。融点の異なる熱融着性繊維を用いることも寸法安定性を改善する観点から好ましい。
【0029】
短繊維不織布の重量ベースの充填密度は、嵩高性の観点から0.005〜0.3g/cm3であることが好ましい。充填密度が小さすぎると形態安定性が悪くなる傾向がある。充填密度が0.3g/cm3より大きくなると吸音性は悪くなる傾向がある。
【0030】
短繊維不織布の素材は、天然繊維であっても合成繊維であっても良いが、親水性の繊維を用いる場合は水がかからないように注意する必要がある。これは、水で不織布の空孔が詰まると吸音性能が低下する場合があるためである。また、環境問題の観点からリサイクル不織布である反毛などを用いることも可能である。
【0031】
前記の不織布と短繊維不織布との積層一体化方法は、特に限定されず、接着剤や接着パウダーなどの使用も可能であるが、ニードルパンチ法により一体化することが好ましい。ニードルパンチ法は、基本的には日本繊維機械学会不織布研究会編集の「不織布の基礎と応用」などで詳細に解説されている方法を採用することができる。
一般的に、不織布を積層する際には、ニードルにより多数の針の通過跡である孔があいてしまう問題があるが、本発明においては、驚くべきことに、ニードルパンチ法であっても、前記の不織布同士を複合化するのであれば、比較的太い嵩高の短繊維の影響を受けて、均一な極細繊維不織布に穴が開いてしまい、吸音性能やフィルター性能などが低下してしまう問題を防止できるのである。
【0032】
本発明においてニードルパンチ加工を行う際には、38番手より細いニードル(針)を用いることが好ましく、特に好ましくは40〜42番手である。ニードルは、短繊維不織布側から入り、極細繊維を含む不織布の外側に短繊維のループを生じさせることが好ましい。極細繊維を含む不織布は、繊維が他の物に引っかかったり、ニードルで切断されたりして毛羽立ちやすい欠点を有するが、短繊維のループは、極細繊維を含む不織布の表面毛羽立ちを防止したり、クッション層の役割を果たし、極細繊維不織布層にかかる外力を緩和することができるため、積層体の破壊の防止に役立つ。また、伸度が30%より高い別の不織布やフィルムなどと積層する際に、該短繊維のループと積層相手の第3の素材とを接着すると、曲げや引っ張りなどの外力がかかったときに極細繊維を含む不織布が破壊されるのを防止することが可能になる。
【0033】
短繊維のループを適切なループの大きさとするためには、ニードルパンチの針深度は15mm以下であることが好ましい。それ以上では、極細繊維不織布を針および短繊維が貫通するときの衝撃で極細繊維不織布が破れたり、貫通した後の針穴が大きくなりすぎることがある。針深度は、ニードルのバーブの位置にもよるが5mm以上であることが、不織布の交絡を増やして剥離を防止する上で好ましい。刺孔密度は30〜200本/cm2であることが好ましい。刺孔密度が30本/cm2より小さいと不織布の剥離の問題が生じやすく、250本/cm2より大きいと刺孔による開口総面積が大きすぎたり、極細繊維を含む不織布の破れや破壊を生じやすくあまり好ましくない。
【0034】
積層された吸音材全体の破断伸度は20%以上あることが好ましく、より好ましくは50%以上、特に好ましくは100%以上である。20%未満の破断伸度の不織布は、成型時の変形に追随できず極細繊維層などで破壊が起こることにより吸音率が著しく低下してしまう傾向がある。また、破断伸度が高く、加工工程でも変形性があると応力のコントロール不良などで切断されるなどの問題を回避することが容易となる。成形温度は室温から200℃前後での加工が考えられるが、本発明の要件を充足していれば問題となることはほとんどない。
【0035】
積層された吸音材全体の通気度は、フラジール通気度で0.05〜50cm3/cm2・秒であることが好ましい。通気度が低すぎると、高周波数域での吸音性が低下するという問題を生じやすく、また通気度が高すぎると、本発明が目的とする低周波数域での吸音性能を改善することが難しくなる傾向がある。
【0036】
本発明で用いられる全ての不織布および樹脂層の素材は難燃タイプの樹脂を用いる事が好ましい。ハロゲンを含まない、リン系の難燃剤を塗布あるいは難燃成分の共重合を行うことも好ましい。他の成分が燃えやすい物であっても、表層に難燃層がくることで通常の難燃基準に合格することが比較的容易に達成できる。
【0037】
【実施例】
以下に本発明を実施例をあげて説明する。評価及び測定は以下の方法により実施した。
(ガラス転移温度):
オリエンテック社製RHEOVIBRON MODEL RHEO−1021及びDDV−01FPを用いて、内部透過損失(tanδ)のピーク温度を求めた。
(平均繊維径):
走査型電子顕微鏡写真で、繊維側面を20本以上測定して、その平均値から計測した。極細繊維不織布がメルトブロー法の場合は、繊維径のバラツキが大きいため100本以上を測定して平均値を採用した。
【0038】
(目付および充填密度):
不織布を20cm角に切り出してその重量を測定した値を1m2あたりに換算して目付とした。充填密度は、不織布の目付を20g/cm2の荷重下での厚みで割った値を求めて、g/cm3に単位換算して求めた。
【0039】
(剥離):
複合した不織布を手で90度前後折り曲げる動作を20回繰り返して、剥離が生じるかどうかを目視で評価した。
【0040】
(破断伸度):
不織布を長さ20cm幅5cmの矩形に切り出した。室温25℃で、試長10cm、クロスヘッド10cm/分で低速伸長引っ張り測定をした場合の破断伸度を求めた。
【0041】
(吸音率):
JIS A−1405に準じて、垂直入射法吸音率を求めた。500Hz、2000Hzと4000Hzの値を代表値として用いた。
【0042】
(フラジール通気度):
JIS L−1096の6.27.1(A法)により測定した。
【0043】
実施例1
ハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合ポリエステルエラストマー(東洋紡績株式会社製ペルプレンP40B、ガラス転移温度約−70℃)の樹脂を厚みが25μmになるように押出ラミネート法により、平均繊維径14μm、目付15g/m2のポリエステルス製スパンボンド不織布(東洋紡績株式会社製エクーレ6151A)と貼り合わせた。その上に、平均繊維径14μm、繊維長51mm、捲縮数12個/2.54 cmの短繊維よりなる目付300g/m2、厚み20mmの熱融着繊維(融点約130℃)を30重量パーセント含むポリエチレンテレフタレート製サーマルボンド短繊維不織布を重ねて、40番手のニードルを用いて、刺孔密度50本/cm2、針深度10mmでニードルパンチ積層加工を実施して、厚みが15mmになるように調整した後、熱融着繊維の融点より30℃高い温度で熱接着により一体化した。積層した吸音材のフラジール通気度は0.16cm3/cm2・秒であった。吸音材を20回程度折り曲げても剥離の問題は生じなかった。吸音率は、500Hzで28%、2000Hzと4000Hzでそれぞれ89%、83%で良好であった。
【0044】
実施例2
実施例1において、エラストマー樹脂層と貼り合わせたポリエステル製スパンボンド不織布を、平均繊維径12μmの芯成分がハードセグメントとソフトセグメントよりなるブロック共重合ポリエステルエラストマー(東洋紡績株式会社製ペルプレンP40B)で、かつ芯成分がポリトリメチレンテレフタレートの複合繊維よりなる目付20g/m2のスパンボンド不織布に変更した。また、短繊維不織布の間にペルプレンP40Bのメルトブローン不織布(平均繊維径2.5μm、目付50g/m2)を挟み込んで実施例1と同様に積層した。積層した吸音材のフラジール通気度は0.10cm3/cm2・秒であった。作成した不織布を20回程度折り曲げても剥離の問題は生じなかった。吸音率は、500Hzで60%、2000Hzと4000Hzでそれぞれ100%、100%と高く良好であった。表面を指でこすっても全く毛羽立たず、形態安定性に非常に優れていた。不織布の破断伸度は57%であった。成形温度140℃で最大成形絞り深さが約80%の成形でも全くの問題なく成形できた。
【0045】
比較例1
平均繊維径14μm、繊維長51mm、捲縮数12個/2.54cmの短繊維よりなる目付500g/m2のポリエチレンテレフタレート製短繊維不織布を40番手のニードルを用いて、表と裏の両方からそれぞれ刺孔密度30本/cm2、針深度10mmでニードルパンチ加工して、厚み10mmの不織布を得た。該不織布は、実施例1に比べて目付が高いにもかかわらず、吸音率を測定したところ、500Hzで12%、2000Hzと4000Hzでそれぞれ22%、61%と低く問題であった。
【0046】
比較例2
ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度約70℃)の樹脂よりなる厚みが25μmのフィルムを目付20g/m2のポリエステル系熱接着性不織布により、平均繊維径14μm、目付15g/m2のポリエステルス製スパンボンド不織布(東洋紡績株式会社製エクーレ6151A)と貼り合わせた。その上に、平均繊維径14μm、繊維長51mm、捲縮数12個/2.54 cmの短繊維よりなる目付300g/m2、厚み20mmの熱融着繊維(融点約130℃)を30重量パーセント含むポリエチレンテレフタレート製サーマルボンド短繊維不織布を重ねて、40番手のニードルを用いて、刺孔密度50本/cm2、針深度10mmでニードルパンチ積層加工を実施して、厚みが15mmになるように調整した後、熱融着繊維の融点より30℃高い温度で熱接着により一体化した。積層した吸音材のフラジール通気度は0.16cm3/cm2・秒であった。吸音材を20回程度折り曲げても剥離の問題は生じなかった。吸音率は、500Hzで48%、2000Hzと4000Hzでそれぞれ89%、21%であった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の吸音材は、低周波数域でも吸音性能が高く、薄くて軽量な形態安定性の良い吸音材となる。また、素材を選定することで良好な成型性を示す。特に、自動車用途で燃費向上や快適性改善のため、軽量で優れた成形性吸音材として利用できる。その他産業上の広い用途で吸音材として好適に使用することができる。
Claims (5)
- ガラス転移温度が50℃以下の樹脂層に不織布が貼り合わされた層と、繊維径が7〜50μm、目付が50〜2000g/m2、厚みが4〜50mmの短繊維不織布とが積層一体化されていることを特徴とする吸音材。
- 請求項1において、ガラス転移温度が50℃以下の樹脂層と不織布とが貼り合わされた層のフラジール通気度が、0.05〜50cm3/cm2・秒であることを特徴とする吸音材。
- 請求項1又は2において、樹脂層に貼り合わされた不織布が、水流交絡不織布、芯鞘型複合繊維で構成された不織布、ポリトリメチレンテレフタレート繊維で構成された不織布及びハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合ポリエステル繊維で構成された不織布のうちのいずれかであることを特徴とする吸音材。
- 請求項1〜3の何れかに記載の吸音材を成形した部材が少なくとも一部に用いられていることを特徴とする車両用内装材。
- 請求項4における成形した部材が、天井材、ダッシュボード下部、カーペット部の何れかに用いられる部材であることを特徴とする車両用内装材。
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