JP2004018417A - [s,s]−エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸鉄錯塩粉体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】固結性の改善した[S,S]−EDDS鉄錯塩の粉体をより簡便に製造する方法の提供。
【解決手段】[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩水溶液を[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩水溶液を濃縮する方法、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩水溶液に[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩結晶を加える方法等によりスラリー化させた後、噴霧乾燥を行うことを特徴とする[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩粉体の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩水溶液を[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩水溶液を濃縮する方法、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩水溶液に[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩結晶を加える方法等によりスラリー化させた後、噴霧乾燥を行うことを特徴とする[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩粉体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、写真処理、特に写真漂白剤組成物の1つの成分として用いられるキレート剤である[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩粉体(以下、[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体ともいう)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真処理、特に写真漂白剤組成物に用いられるキレート剤としては、ラセミ、メソ体混合物からなるEDDS鉄錯塩よりも、生分解性の良い[S,S]−EDDS鉄錯塩の方が望まれる。ところが、本出願人がWO00/66540で記載しているように[S,S]−EDDS鉄アンモニウム塩粉体に関して、ラセミ、メソ体混合物からなるEDDS鉄錯塩よりも固結し易いことがわかっており、そのため、スプレードライによる乾燥の後、流動層型乾燥機を用いてさらに造粒乾燥を行うことで、固結し難い粉体を製造している。
【0003】
[S,S]−EDDS鉄錯塩スプレードライ造粒品の固結のメカニズムは以下の通りと考えられている。まず、[S,S]−EDDS鉄錯塩のスプレードライ造粒はその乾燥速度が著しく速いために結晶化が進行せず非晶質の含水スプレードライ粒子を生成する。また、結晶化した[S,S]−EDDS鉄錯塩はほとんど結晶水を有しないことがわかっている。非晶質含水スプレードライ粒子は後の保管貯蔵時に結晶化をおこす際に放出される含水分が行き先をなくした結果、表面に濃縮される。ここで生じた濡れがスプレードライ粒子の溶解、相互固着をおこすことにより固結が進行する。そこで前記のようにスプレードライ造粒後に流動層型乾燥機を用いて造粒乾燥を行うことで、結晶化を進行させ固結性の改善した粉体を得ていた。しかし、スプレードライ後に造粒乾燥を必要とする二段階の製造であるため、製造時間の短縮,製造コストの削減を目的として乾燥時間の短縮が求められていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、固結性の改善した[S,S]−EDDS鉄錯塩の粉体をより簡便に製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記結晶化した粉体を走査電子顕微鏡(SEM)で観察することにより粒子の一部が結晶化した粉体は速やかに結晶化が粒子全体に進行することを見出し、これらの知見に基づいて、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩水溶液をスラリー化させた後、噴霧乾燥を行うことを特徴とする[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩粉体の製造方法を要旨とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明の[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体の原料となる[S,S]−EDDS鉄錯塩は、例えば特開平8−34764号公報に記載されているように[S,S]−EDDSと、鉄ならびにアルカリ金属水酸化物またはアンモニアを反応させて製造される。アルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用される。具体的な[S,S]−EDDS鉄錯塩としては、[S,S]−EDDS鉄アンモニウム塩、[S,S]−EDDS鉄ナトリウム塩、[S,S]−EDDS鉄カリウム塩等が挙げられる。本発明では、この反応液をスラリー化させた後、噴霧乾燥を行う。スラリー化の方法としては、[S,S]−EDDS鉄錯塩水溶液を濃縮する方法、[S,S]−EDDS鉄錯塩水溶液に[S,S]−EDDS鉄錯塩結晶を加える方法、[S,S]−EDDS鉄錯塩水溶液を冷却する方法等があるが、[S,S]−EDDS鉄錯塩水溶液を濃縮する方法、[S,S]−EDDS鉄錯塩水溶液に[S,S]−EDDS鉄錯塩結晶を加える方法が好ましい。濃縮方法は特定の方法に限定されるわけではなく加熱、減圧、膜分離等もしくはそれを組み合わせた方法により行なわれる。添加する結晶として用いる[S,S]−EDDS鉄錯塩結晶粉体の製造方法は特に限定するものではない。純度は85質量%以上であればよい。例えば、固結して商品価値のなくなった[S,S]−EDDS鉄錯塩を破砕して用いる、あるいは本発明の方法で製造される結晶化した[S,S]−EDDS鉄錯塩スプレードライ粉体を用いればよい。反応液への添加方法は特定の投入方法に限定されるわけではなく、一般的な粉体の投入方法により反応液に添加される。このときは、反応液を特に加熱・冷却する必要はなく、液温は10℃〜35℃の範囲であればよい。濃縮または結晶添加後の[S,S]−EDDS鉄錯塩濃度は65質量%以上であることが好ましい。65質量%未満ではスラリーを生じない。ただし、75質量%以下であることが好ましい。高濃度のスラリーは粘性が増加し、移液時の停留やスプレードライ時のノズルの詰まり等の不都合を生じる場合がある。
【0009】
本発明の噴霧乾燥による造粒方法では、スプレードライ時の品温を140℃以下、かつ、乾燥時間10秒以下で粉体を製造することが好ましい。スプレードライ時の品温が140℃以上では熱分解による不純物の生成があり、乾燥時間が10秒以上でも同様の現象がある。ただし、品温は100℃以上が好ましい。品温が低すぎると乾燥が不十分となり、結晶化の進行にも不都合を生じる場合がある。
【0010】
「品温」とは、スプレードライ乾燥機の場合は排気温度を意味する。また、「乾燥時間」とは、スプレードライの場合は装置内での平均滞留時間を意味する。また、「[S,S]−EDDS鉄錯塩濃度」とは、溶液またはスラリー中に含まれる[S,S]−EDDS鉄錯塩の質量を、溶液またはスラリーの質量で除した値をパーセント表示した値を意味する。
【0011】
本発明の[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体の製造に使用するスプレードライ乾燥機は特定の構造に限定されるものではなく、遠心噴霧型スプレードライ乾燥機または、加圧噴霧型スプレードライ乾燥機を使用できる。また、乾燥方式は回分、連続いずれでもよい。
【0012】
本発明の製造方法で得られた[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体は、固結強度が低くなり、例えば[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体が包装された状態で、50℃、荷重300g/cm2の加圧下で堆積されたとき、1ヶ月経過した時点における包装袋の内容物としての[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体の集合体の圧縮強度が3kg/cm2以下となる。
【0013】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0014】
<固結強度測定方法>
JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)に準じて実施した。
【0015】
1) 内径φ25mm、分離面断面積4.9cm2のSUS製セルに10g程度充填する。
【0016】
2) セルの上に濾紙、目皿を置き、その上から一点式プレス機により313g/cm2の荷重をかける。
【0017】
3) 一点式プレス機を50℃の恒温箱に入れ、一ヶ月後、セルから固結したテストピースを取り出し、圧縮試験機(コンピュータ計測制御式精密万能試験機:島津オートグラフAGS−100Bにより、テストピースに荷重し、テストピースが破壊した時に試験機が示した最大荷重を、テストピース断面積で割った値を固結強度とした。
【0018】
実施例1
[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩50%水溶液28.5kgに液温28℃で、固結した[S,S]−EDDS鉄アンモニウム塩を破砕して製造した結晶を添加して68質量%でスラリー化した後、スプレードライ造粒乾燥機を用いて、熱風入り口温度180℃、排気温度86℃により、58分かけてスプレードライにより噴霧乾燥造粒した。装置内の平均滞留時間は約8秒であった。その結果、平均粒径約50μmで、含水率が2.00質量%である[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を得た。この粉体をX線回折により結晶構造を調べた結果、結晶質であった。得られた[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を、上記の方法で固結強度を測定した結果、固結しておらず固結強度は0.2kg/cm2となった。
【0019】
比較例1
スプレードライ造粒乾燥機を用いて、熱風入り口温度180℃、排気温度86℃により、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩50%水溶液28.5kgを52分かけてスプレードライにより噴霧乾燥造粒した。装置内の平均滞留時間は約8秒であった。その結果、平均粒子径50μmであり、含水率が7.93質量%である[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を得た。この粉体をX線回折により結構造を調べた結果、非晶質だった。得られた[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を、上記の方法で固結強度を測定した結果、固結強度は3.8kg/cm2となった。
【0020】
比較例2
[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩50%水溶液28.5kgに液温26℃で実施例1と同様の結晶を添加して63質量%とした。その結果、溶液はスラリー化しなかった。この溶液をスプレードライ造粒乾燥機を用いて、熱風入り口温度180℃、排気温度86℃で54分かけてスプレードライにより噴霧乾燥造粒した。装置内の平均滞留時間は約8秒であった。その結果、平均粒子径50μmであり、含水率が8.02質量%である[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を得た。この粉体をX線回折により結構造を調べた結果、非晶質だった。得られた[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を、上記の方法で固結強度を測定した結果、固結強度は3.4kg/cm2となった。
【0021】
比較例3
比較例1で製造した非晶質の[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を固結しない粉体とするために、これを種材としてさらに造粒乾燥をおこなった。非晶質の[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体2.50kgを種材として流動層造粒乾燥機に投入し、熱風温度110℃、流動層内温度64℃、風速0.85m/sにより流動化させた。そして、造粒原料として、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩:2.4kgを含む、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩水溶液4.8kgを60.5分かけて噴霧,造粒した。その後、更に熱風を約10分間送風後、送風を停止し、粉を取り出した。その結果、粒径約500μmで、含水率が2.06質量%である結晶質の[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を得た。得られた[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を、上記の方法で固結強度を測定した結果、固結強度は0.1kg/cm2となった。
【0022】
【発明の効果】
本発明により、従来スプレードライ以降に流動層に移して70分かけて造粒乾燥し得られていた結晶質の固結しない[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体をスプレードライ一段で製造することが可能となり、流動層固定費およびそれに伴う比例費を省略することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、写真処理、特に写真漂白剤組成物の1つの成分として用いられるキレート剤である[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩粉体(以下、[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体ともいう)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真処理、特に写真漂白剤組成物に用いられるキレート剤としては、ラセミ、メソ体混合物からなるEDDS鉄錯塩よりも、生分解性の良い[S,S]−EDDS鉄錯塩の方が望まれる。ところが、本出願人がWO00/66540で記載しているように[S,S]−EDDS鉄アンモニウム塩粉体に関して、ラセミ、メソ体混合物からなるEDDS鉄錯塩よりも固結し易いことがわかっており、そのため、スプレードライによる乾燥の後、流動層型乾燥機を用いてさらに造粒乾燥を行うことで、固結し難い粉体を製造している。
【0003】
[S,S]−EDDS鉄錯塩スプレードライ造粒品の固結のメカニズムは以下の通りと考えられている。まず、[S,S]−EDDS鉄錯塩のスプレードライ造粒はその乾燥速度が著しく速いために結晶化が進行せず非晶質の含水スプレードライ粒子を生成する。また、結晶化した[S,S]−EDDS鉄錯塩はほとんど結晶水を有しないことがわかっている。非晶質含水スプレードライ粒子は後の保管貯蔵時に結晶化をおこす際に放出される含水分が行き先をなくした結果、表面に濃縮される。ここで生じた濡れがスプレードライ粒子の溶解、相互固着をおこすことにより固結が進行する。そこで前記のようにスプレードライ造粒後に流動層型乾燥機を用いて造粒乾燥を行うことで、結晶化を進行させ固結性の改善した粉体を得ていた。しかし、スプレードライ後に造粒乾燥を必要とする二段階の製造であるため、製造時間の短縮,製造コストの削減を目的として乾燥時間の短縮が求められていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、固結性の改善した[S,S]−EDDS鉄錯塩の粉体をより簡便に製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記結晶化した粉体を走査電子顕微鏡(SEM)で観察することにより粒子の一部が結晶化した粉体は速やかに結晶化が粒子全体に進行することを見出し、これらの知見に基づいて、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩水溶液をスラリー化させた後、噴霧乾燥を行うことを特徴とする[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩粉体の製造方法を要旨とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明の[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体の原料となる[S,S]−EDDS鉄錯塩は、例えば特開平8−34764号公報に記載されているように[S,S]−EDDSと、鉄ならびにアルカリ金属水酸化物またはアンモニアを反応させて製造される。アルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用される。具体的な[S,S]−EDDS鉄錯塩としては、[S,S]−EDDS鉄アンモニウム塩、[S,S]−EDDS鉄ナトリウム塩、[S,S]−EDDS鉄カリウム塩等が挙げられる。本発明では、この反応液をスラリー化させた後、噴霧乾燥を行う。スラリー化の方法としては、[S,S]−EDDS鉄錯塩水溶液を濃縮する方法、[S,S]−EDDS鉄錯塩水溶液に[S,S]−EDDS鉄錯塩結晶を加える方法、[S,S]−EDDS鉄錯塩水溶液を冷却する方法等があるが、[S,S]−EDDS鉄錯塩水溶液を濃縮する方法、[S,S]−EDDS鉄錯塩水溶液に[S,S]−EDDS鉄錯塩結晶を加える方法が好ましい。濃縮方法は特定の方法に限定されるわけではなく加熱、減圧、膜分離等もしくはそれを組み合わせた方法により行なわれる。添加する結晶として用いる[S,S]−EDDS鉄錯塩結晶粉体の製造方法は特に限定するものではない。純度は85質量%以上であればよい。例えば、固結して商品価値のなくなった[S,S]−EDDS鉄錯塩を破砕して用いる、あるいは本発明の方法で製造される結晶化した[S,S]−EDDS鉄錯塩スプレードライ粉体を用いればよい。反応液への添加方法は特定の投入方法に限定されるわけではなく、一般的な粉体の投入方法により反応液に添加される。このときは、反応液を特に加熱・冷却する必要はなく、液温は10℃〜35℃の範囲であればよい。濃縮または結晶添加後の[S,S]−EDDS鉄錯塩濃度は65質量%以上であることが好ましい。65質量%未満ではスラリーを生じない。ただし、75質量%以下であることが好ましい。高濃度のスラリーは粘性が増加し、移液時の停留やスプレードライ時のノズルの詰まり等の不都合を生じる場合がある。
【0009】
本発明の噴霧乾燥による造粒方法では、スプレードライ時の品温を140℃以下、かつ、乾燥時間10秒以下で粉体を製造することが好ましい。スプレードライ時の品温が140℃以上では熱分解による不純物の生成があり、乾燥時間が10秒以上でも同様の現象がある。ただし、品温は100℃以上が好ましい。品温が低すぎると乾燥が不十分となり、結晶化の進行にも不都合を生じる場合がある。
【0010】
「品温」とは、スプレードライ乾燥機の場合は排気温度を意味する。また、「乾燥時間」とは、スプレードライの場合は装置内での平均滞留時間を意味する。また、「[S,S]−EDDS鉄錯塩濃度」とは、溶液またはスラリー中に含まれる[S,S]−EDDS鉄錯塩の質量を、溶液またはスラリーの質量で除した値をパーセント表示した値を意味する。
【0011】
本発明の[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体の製造に使用するスプレードライ乾燥機は特定の構造に限定されるものではなく、遠心噴霧型スプレードライ乾燥機または、加圧噴霧型スプレードライ乾燥機を使用できる。また、乾燥方式は回分、連続いずれでもよい。
【0012】
本発明の製造方法で得られた[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体は、固結強度が低くなり、例えば[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体が包装された状態で、50℃、荷重300g/cm2の加圧下で堆積されたとき、1ヶ月経過した時点における包装袋の内容物としての[S,S]−EDDS鉄錯塩粉体の集合体の圧縮強度が3kg/cm2以下となる。
【0013】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0014】
<固結強度測定方法>
JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)に準じて実施した。
【0015】
1) 内径φ25mm、分離面断面積4.9cm2のSUS製セルに10g程度充填する。
【0016】
2) セルの上に濾紙、目皿を置き、その上から一点式プレス機により313g/cm2の荷重をかける。
【0017】
3) 一点式プレス機を50℃の恒温箱に入れ、一ヶ月後、セルから固結したテストピースを取り出し、圧縮試験機(コンピュータ計測制御式精密万能試験機:島津オートグラフAGS−100Bにより、テストピースに荷重し、テストピースが破壊した時に試験機が示した最大荷重を、テストピース断面積で割った値を固結強度とした。
【0018】
実施例1
[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩50%水溶液28.5kgに液温28℃で、固結した[S,S]−EDDS鉄アンモニウム塩を破砕して製造した結晶を添加して68質量%でスラリー化した後、スプレードライ造粒乾燥機を用いて、熱風入り口温度180℃、排気温度86℃により、58分かけてスプレードライにより噴霧乾燥造粒した。装置内の平均滞留時間は約8秒であった。その結果、平均粒径約50μmで、含水率が2.00質量%である[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を得た。この粉体をX線回折により結晶構造を調べた結果、結晶質であった。得られた[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を、上記の方法で固結強度を測定した結果、固結しておらず固結強度は0.2kg/cm2となった。
【0019】
比較例1
スプレードライ造粒乾燥機を用いて、熱風入り口温度180℃、排気温度86℃により、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩50%水溶液28.5kgを52分かけてスプレードライにより噴霧乾燥造粒した。装置内の平均滞留時間は約8秒であった。その結果、平均粒子径50μmであり、含水率が7.93質量%である[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を得た。この粉体をX線回折により結構造を調べた結果、非晶質だった。得られた[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を、上記の方法で固結強度を測定した結果、固結強度は3.8kg/cm2となった。
【0020】
比較例2
[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩50%水溶液28.5kgに液温26℃で実施例1と同様の結晶を添加して63質量%とした。その結果、溶液はスラリー化しなかった。この溶液をスプレードライ造粒乾燥機を用いて、熱風入り口温度180℃、排気温度86℃で54分かけてスプレードライにより噴霧乾燥造粒した。装置内の平均滞留時間は約8秒であった。その結果、平均粒子径50μmであり、含水率が8.02質量%である[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を得た。この粉体をX線回折により結構造を調べた結果、非晶質だった。得られた[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を、上記の方法で固結強度を測定した結果、固結強度は3.4kg/cm2となった。
【0021】
比較例3
比較例1で製造した非晶質の[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を固結しない粉体とするために、これを種材としてさらに造粒乾燥をおこなった。非晶質の[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体2.50kgを種材として流動層造粒乾燥機に投入し、熱風温度110℃、流動層内温度64℃、風速0.85m/sにより流動化させた。そして、造粒原料として、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩:2.4kgを含む、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩水溶液4.8kgを60.5分かけて噴霧,造粒した。その後、更に熱風を約10分間送風後、送風を停止し、粉を取り出した。その結果、粒径約500μmで、含水率が2.06質量%である結晶質の[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を得た。得られた[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体を、上記の方法で固結強度を測定した結果、固結強度は0.1kg/cm2となった。
【0022】
【発明の効果】
本発明により、従来スプレードライ以降に流動層に移して70分かけて造粒乾燥し得られていた結晶質の固結しない[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アンモニウム塩粉体をスプレードライ一段で製造することが可能となり、流動層固定費およびそれに伴う比例費を省略することができる。
Claims (4)
- [S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩水溶液をスラリー化させた後、噴霧乾燥を行うことを特徴とする[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩粉体の製造方法。
- スラリー化が、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩水溶液を濃縮する方法、または、[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩水溶液に[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩結晶を加える方法である、請求項1記載の[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩粉体の製造方法。
- [S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩の濃度が65質量%以上で噴霧乾燥を行う請求項1または2記載の[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩粉体の製造方法。
- スプレードライ時の品温が140℃以下、かつ、乾燥時間を10秒以下とする請求項1乃至3いずれかに記載の[S,S]−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄錯塩粉体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002173073A JP2004018417A (ja) | 2002-06-13 | 2002-06-13 | [s,s]−エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸鉄錯塩粉体の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002173073A JP2004018417A (ja) | 2002-06-13 | 2002-06-13 | [s,s]−エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸鉄錯塩粉体の製造方法 |
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2002
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