JP2004016120A - 豆乳様飲料または食品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【効果】本発明によれば、従来の豆乳及び調整豆乳の製造工程で廃棄される「おから」を無くす事を可能とし、更に、「おから」中に含まれる有効成分である食物繊維を多量に含んだ、豆乳と品質及び風味の遜色の無い密閉容器に充填した豆乳様飲料および豆乳様食品を提供することができ、製造工程を脱酸素にて実施することにより、更に高品質化が図られる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、「おから」を分離することなくこれを食物繊維として積極的に取り込み、しかも青臭みがなく、舌ざわりがなめらかですぐれた風味、食感を有する豆乳様飲料又は豆乳様食品を短時間に効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
日本人における食生活が欧米化するに従い、コレステロール含量の多い食品になる傾向にあり、心臓疾患を始めとするさまざまな疾病を誘発する要因が増加傾向にある。その中で最近では、特に植物性のタンパクの有効性が認められFDA(米国食品医薬品局)においても大豆タンパク質を一日25g以上摂取する事により心臓疾患のリスクを低減する事が出来る等大豆の食品としての価値が見なおされ始めている。また、今後、世界人口の増加が予想され、栄養成分として非常にバランスの良い大豆食品が世界規模の食料事情を解決できる食物の一つと言われている。
従来、豆乳は、全粒大豆を水に浸漬した後、これを磨砕、加熱し、おからを分離した後、均質化して製造されており、酵素処理や添加物を使用するなどの方法により豆乳の品質を向上する検討もされてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような現状にあって、近年、豆乳はすぐれた大豆食品として、豆腐製造用原料のほか直接飲用するための飲料としても、クローズアップされている。しかしながら、従来の豆乳の製造では、水を多量に使用し、また、大豆の浸漬から豆乳に至るまでは10数時間という長時間を要するうえ、おからが大量に生成するが、有効利用の途が少なく、廃棄物となるため、その処理が問題となっている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、大豆利用食品の重要性に鑑み、再度豆乳に着目し、おからを分離することなく、むしろこれを食物繊維源等として積極的に利用し、それでいて舌ざわりがなめらかですぐれた食感、風香味を有する全く新しいタイプの豆乳を製造する方法、しかも、短時間に効率よく製造する方法を新たに開発することとし、各方面から鋭意検討、研究の結果、遂に本発明を完成するに至った。
以下、本発明について詳述する。
【0005】
本発明においては、原料として大豆を使用するが、大豆の品種としては特に限定される事なく全ての大豆が使用可能であり、大豆を水に浸漬し、膨潤させる必要はない。大豆以外にも例えば搾油した後の脱脂大豆等のその他目的として処理された大豆も使用可能である。更に、大豆の脱皮についても食物繊雑をより多く含有させたければ脱皮処理を行う必要は無いが、大豆の汚れや農薬及び微生物的な安全性の観点より脱皮を行っても良い。
【0006】
また、粉砕する大豆の加熱処理や蒸煮などは、実施してもしなくても良い。加熱することで微生物的安全性の向上、大豆酵素の失活、クッキングフレーバーの付与が可能であるが、反対に、加熱により大豆本来の風味の損失があるため、過度の加熱処理は控えるのが好ましい。
【0007】
これらの大豆を各種粉砕機により乾燥大豆粉末にする。例としては、ジェット式やトルネード式及びボール式及びカッター式のミル等の乾式破砕機を使用して粉砕する事が出来る。また、脱皮した大豆を使用すると内容物の色調が良くなる傾向にあるため、特に内容物の色調等の外観を重視するPET容器等の透明な容器には好ましい。
【0008】
大豆の粉砕は100μm以上、特に200μm以上の粉砕粒度になると完全に分散・溶解できなくなるため、この粉砕方法により、それ以下、好ましくは100μm以下になるように粉砕する。更に、粉砕粒度を細かくすれば、溶解時の溶け残り(溶解不良)の問題のほか、粉っぽさ等の欠点を減少ないし低減することができ、通常、粒径100μm以下の粒子の含有量が、70%以上であることが好ましい。このように破砕することで、従来の蒸煮設備が無くても豆乳様飲料を製造することが可能になり、製造時間の短縮にもつながる。
【0009】
大豆使用量については、豆乳感を出すためには大豆の含量が2%以上必要であり、2重量%〜15重量%が良く、更に豆乳感があり、飲み易い飲料にするには4重量%〜10重量%が好ましい。特に、10重量%以上を含有すると粘性が大きくなり飲みにくくなる傾向にある。
【0010】
乾燥大豆粉砕物は溶媒を用いて溶解するが、溶媒としては、通常、水(加温水)を使用するが、後記する調合液を調製する際に使用する液体も適宜使用可能である。
【0011】
乾燥大豆粉砕物を溶解する溶媒としては、乾燥大豆粉砕物を溶解し得る液体がすべて使用可能であって、例えば水が使用されるが、調合液の調製に使用する後記する各種副原料を添加した水も適宜使用可能である。調合及び溶解する水としては、特に限定はないが、ミネラル等を除去した純水の他軟水、海洋深層水や上記水を電気分解したアルカリイオン水及び磁気処理した磁化水等の機能性水も使用する事が出来る。
【0012】
溶解方法としては、剪断能力を有し高速攪拌出来るような高速溶解機やバブブレンダー等の設備を使用する事ができ、溶解温度についても、30℃以上、好ましくは40℃〜100℃のお湯であれば問題無い。90℃以上の湯で長時間溶解する場合、大豆中のタンパク成分の溶出と変性により粘性が上がり溶解にムラが発生する為、粉砕大豆の添加量が多くなるほど溶解が困難になる等の問題が生じ易いことから、作業効率を考慮すると50℃〜90℃の湯がより好ましい。
【0013】
均質化方法としては、バルブ式のホモゲナイザーや液同士が衝突するナノマイザー等の均質機を使用する事が出来る。均質時の圧力として15MPa以上が好ましく、更に、均質化工程を2回以上、例えば溶解時及び調合液の2回以上行うのが経時安定性が向上し、品質上の観点より好ましい。特に2回以上実施すれば青臭みが無くなるメリットがある。
【0014】
均質時の圧力としては、15MPa以上、15〜85MPa、好ましくは20〜50MPaの圧力で処理し、均質化するのが好ましい。15MPaより小さい場合、十分な均質化ができない場合があるので、それより大きく、例えば20MPa以上とすると更に好適である。また85MPaよりも大きくすると、物理的な反応や変化が進行してしまう場合があるので、それ以下とするのが好ましく、例えば50MPa以下にすると更に好適である。また、圧力処理時間としては、瞬間乃至は数十秒で良く、瞬間的な処理が好ましい。
【0015】
均質化方法としては、高圧乳化法がすべて使用可能であって、例えばバルブ式による高圧処理方法や、ジェネレーター式による液と液を衝突させるタイプの高圧処理方法等が適宜使用される。具体的な装置としては、市販されている各種の均質機、例えば、前者の場合には、ゴーリン社製やイズミフードマシナリ社製の高圧ホモゲナイザーが使用可能であり、後者の場合には、ナノマイザー、ナノジェネレーター(新日本工機(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等が使用可能である。
【0016】
このようにして均質化処理した調合液を殺菌処理し、容器に充填して豆乳様飲料とすることができるほか、更に副原料を添加して調味することもできる。
【0017】
副原料としては、pH調整剤;ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類;ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、大豆リン脂質等の乳化剤;酸化防止剤;グルコース、フルクトース、マルトース、シュークロース、トレハロース、ラフィノース、でんぷん、その他糖類;コーヒー、抹茶、ココア、チョコレート、麦芽;各種ミネラル;酸味料;イソフラボン等の機能性成分;増粘剤;エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール類;果汁;甘味料;香料;酵素;その他から1種以上を選択、使用する。また、副原料は、製造した豆乳製品に添加してもよい。
【0018】
このようにして得られた調合液は容器に充填する。充填する容器としては、金属缶・ビン・PETボトル・紙容器・軟包材容器など全ての容器が適用でき、且つ殺菌方法としてレトルト殺菌や超高温短時間殺菌、蒸気直接加熱殺菌など全ての殺菌方法が適用できる。更にタンパク変性を極力抑えるためには、超高温短時間殺菌(125〜150℃、2〜60秒)、蒸気直接加熱殺菌で処理するのが好ましい。
【0019】
本発明は、上記したところにしたがって実施することができるが、例えばその態様のひとつは次のとおりである。すなわち、大豆もしくは脱皮処理を行った大豆を100μm以下に粉砕し、得られた乾燥大豆粉末を40℃〜100℃のお湯にて溶解し、溶解物を15MPa以上の均質機により均質化を最低二回以上行い、密閉容器に充填する。
【0020】
また更に、本発明においては、これらの工程の少なくともひとつを脱酸素にて行うことも可能であって、脱酸素処理を併用することによって、豆乳製品の酸化による品質劣化を防止し、なめらかな食感を更に高める等、食感、風香味、色調等の品質を更に高めることができる。
【0021】
脱酸素処理の態様は、各工程は、脱気雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中又は脱気後不活性ガス雰囲気中で行い、更にまた、溶解液や調合液には不活性ガスをバブリングしたり脱気したりあるいは脱気後に不活性ガスをバブリングしたりして、脱酸素を行うものである。本発明において、脱酸素は、上記した処理の少なくともひとつでよいが、全工程、全原料に亘って脱酸素条件下とするのが好ましく、高圧均質化処理も脱酸素条件下で行うのが好ましい。また、空の容器や、充填後の容器のヘッドスペースについても、脱酸素処理を実施してもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、炭酸ガス等が1種又は2種以上使用される。
【0022】
このようにして製造された製品は、豆乳様飲料として飲料タイプにて使用できるほか、粘度を高めたり、固形化したり、あるいは他の飲食品と混合したりして豆乳様食品として食品タイプにて使用することもできる。また、本発明に係る豆乳は豆腐の製造原料として使用することももちろん可能である。
【0023】
以下、本発明を実施例により更により詳しく説明する。
【0024】
【実施例1】
アメリカ産VINTON種の生大豆をカッター式ミルにて50μm以下に粉砕した。粉砕した大豆10kgを70℃の純水60Lに溶解した。溶解液を均質機(新日本工機製:ナノマイザー)にて圧力20MPaにて均質化を行った。その後、117Lになる様に純水を加え、130℃、60秒のUHT殺菌を行った。その全量を圧力20MPaにて均質化を行いPETボトルに無菌的に充填を行った。
【0025】
なお、比較例として、M社製 無調整豆乳200ml容紙パック充填品を比較例1とし、N社製 豆腐のできる豆乳500ml容紙パック充填品を比較例2とした。
【0026】
実施例及び比較例1、比較例2を用い味覚に優れたパネラー12名による評価法及び順位法による品質試験を実施した。得られた結果を、評点法については表1、表2に示し、順位法については表3に示した。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
結論:
上記、評点法及び順位法の結果から大豆粉砕物を用いた豆乳様飲料でも一般流通している「おから」のでる従来からの製造法による豆乳と比較して風味、品質とも全く遜色の無い事が明らかとなった。
【0031】
【実施例2】
アメリカ産VINTON種の大豆をカッター式ミルにて50μm以下に粉砕した。粉砕した大豆10Kgを70℃の純水60Lに溶解した。溶解液を均質機(HV−OH−3−3−7S;イズミフードマシナリ社製)にて圧力20MPaで均質化を行った。その後、117Lになる様に純水を加え調整し、130℃、60秒のUHT殺菌を行った。その全量を圧力20MPaにて均質化を行いPETボトルに無菌的に充填を行った。
【0032】
【比較例1】
アメリカ産VINTON種の大豆をカッター式ミルにて50μm以下に粉砕した。粉砕した大豆10Kgを70℃の純水60Lに溶解した。溶解液を均質機で圧力10MPa(HV−OH−3−3−7S、イズミフードマシナリ社製)にて均貿化を行つた。その後、117Lになる様に純水を加え調整し、130℃、60秒のUHT殺菌を行った。その全量を圧力10MPaにて均質化を行いPETボトルに無菌的に充填を行った。
【0033】
【比較例2】
アメリカ産VINTON種の大豆をカッター式ミルにて50μm以下に粉砕した。粉砕した大豆10Kgを70℃の純水60Lに溶解した。溶解液を均質機で圧力20MPa(HV−OH−3−3−7S;イズミフードマシナリ社製)にて均質化を行った。その後、117Lになる様に純水を加え調整し、130℃、60秒のUHT殺菌を行いPETボトルに無菌的に充填を行った。
【0034】
実施例2と比較試験をするために、比較例1及び2を実施したものである。なお、上記の試験区分を一覧化したものを下記表4に示す。
【0035】
分析結果
調合時及び殺菌後のBx.と、殺菌後のサンプルを3000rpm、10分間の遠心後の遠沈量(%)を下記表5に示す。
【0036】
【0037】
次に、上記殺菌後のサンプルの粒度分布を、Shimadzu SALD−1100により測定し、1〜31μmの粒度の含有率と31〜150μmの含有率をそれぞれ、下記表6に示す。
【0038】
【0039】
以上から明らかなように、比較例1及び比較例2では特に殺菌後の沈澱量が多くなり、且つ、粒度の大きな物の含有率も高くなる傾向にある。なお、比較例1及び比較例2に関しては、不溶性固形物が多い為、加熱によるUHT殺菌等でのプレートの焦げ付きが起こり連続生産性が低くなる傾向にある。また、比較例2では大豆粉末が充分均質化されていないためブリックスが低い結果となった。充分均質化されれば、大豆本来の甘味が増加することが言える。
更に比較例1及び比較例2に関しては、保存すると経時的に沈殿量が多くなる傾向にあった。
【0040】
パネル試験結果
専門パネラーによる実施例2及び比較例1、比較例2との青臭みの強さ及び後味に残る粉っぽの質の結果を、下記表7及び表8に示す。
【0041】
【0042】
【0043】
以上の結果より、均質化回数が一回のみの場合や均質化条件が低い場合では、青臭みが強く且つ後味が粉っぽくなり悪くなる傾向にあることがわかる。
先の実施例2を用いて、実施例3とで、品質の比較を行い、下記表9を得た。
【実施例3】
アメリカ産VINTON種の大豆をカッター式ミルにて50μm以下に粉砕した。粉砕した大豆10Kgを70℃の純水60Lに溶解した。溶解液を均質機(HV−OH−3−3−7S、イズミフードマシナリ社製)にて圧力20MPaにて均質化を行った。その後、117Lになる様に純水を加え調整し、内容液中に窒素ガスを吹き込み、溶存酸素濃度が1ppm以下になるように不活性ガス置換した。その不活性ガス置換した調合液を130℃、60秒のUHT殺菌を行った。その全量を圧力20MPaにて均質化を行いPETボトルに無菌的に充填を行った。
【0044】
【0045】
パネル試験結果
専門パネラーによるパネル試験結果を下記表10に示す。実施例2の評価を0とした時の美味しさの評価点を示したものである。
【0046】
【0047】
上記結果から明らかなように、内容液中の溶存酸素を除去する事により、油脂等の加熱による酸化が抑えられ、総合評価として良い傾向にあることがわかる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、粉末化することで、大豆を浸漬する時間の短縮及び浸漬する水の使用削減ができ、オカラを廃棄物として出すことなく、なめらかで栄養価の高いしかも青臭みもない高品質の豆乳様飲料を製造することができ、食物繊維その他オカラの有効成分も多量に含まれ、大豆全体も有効利用することができる。また、本発明を使用すると大豆以外にも穀類(米、粟、麦等)の全ての栄養素を簡便に、且つ廃棄物を出す事無く飲用する事が出来る飲食物を提供する事が出来る。
Claims (7)
- 大豆もしくは脱皮処理した大豆を加水することなく粉砕し、得られた乾燥大豆粉砕物を溶媒に溶解し、溶解物を均質化した後、密封容器に充填すること、を特徴とする豆乳様飲料または食品の製造方法。
- 請求項1の全工程で、酵素等の処理剤を全く使用しないこと、を特徴とする請求項1に記載の方法。
- 乾燥大豆粉砕物が100μm以下の粒度に粉砕されていること、を特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
- 乾燥大豆粉砕物が2〜15重量%含有されていること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 均質化は、15MPa以上の圧力による均質化工程を2回以上実施するものであること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 溶媒として、40〜100℃の湯を使用すること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法で製造してなる、おからの排出のない高品質豆乳様飲料または食品。
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