JP2004011658A - クラッチレリーズ軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガイドスリーブ20は、クリップ50の延在部52に係合し、その軸線に交差する方向の変位を制限する係合凹部22mを有しているので、クリップ50を係合凹部22mに組み付けることで、クリップ50のズレが抑制でき、レリーズフォークRFの組付けが容易になる。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両などに用いられるクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載され摩擦板を用いた動力断続装置であるクラッチを動作させる場合において、入力部材であるレリーズフォークで、回転部材であるクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを軸線方向に押圧することにより、スプリングの付勢力を摩擦板から解除して動力伝達の切り離しが行なわれている。
【0003】
ところで、レリーズフォークは車体等の固定側に通常配置されているが、クラッチカバーはエンジンのフライホイール等に取り付けられてそれと一体的に回転するようになっている。従って、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングをレリーズフォークが直に押圧するとなると、当接部の摩耗を招来することとなる。そこで、ダイヤフラムスプリングに当接して一体的に回転する回転輪を含むクラッチレリーズ軸受と、この軸受を所定の状態に保持すると共にレリーズフォークからの入力を受けるようになっている回転しない軸受保持部材とからなるクラッチレリーズ軸受装置を、ダイヤフラムスプリングとレリーズフォークとの間に設けている(例えば実開平1−174637号参照)。
【0004】
この実開平1−174637号に開示されたクラッチレリーズ軸受装置においては、軸受の内輪の先端部がダイヤフラムスプリングに対向し、一方、軸受の外輪の後端は、ガイドスリーブのフランジ部に半径方向移動自在に取り付けられている。レリーズフォークの先端によりガイドスリーブのフランジ部が後方から押されれば、内輪先端部がダイヤフラムスプリングに当接するよう、軸受装置全体が軸線方向に移動可能となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、かかる従来技術によるクラッチレリーズ軸受装置の場合、一本の折り曲げたワイヤ部材であるクリップを用いてレリーズフォークとガイドスリーブのフランジ部を弾性的に連結している。しかしながら、かかるクリップは単にガイドスリーブに引っかけている構成のため、特に組立時などにおいてクリップのズレが生じやすく、レリーズフォークの組付けに手間がかかる、或いは困難となる場合があった。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、組み付けがより容易に行えるクラッチレリーズ軸受装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、
互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された樹脂製の軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記軸受保持部材と前記入力部材とを連結するワイヤ部材が設けられ、前記軸受保持部材は、前記ワイヤ部材が組み付けられたとき、前記ワイヤ部材の外周面の一部もしくは全周に係合する係合凹部を有し、前記係合凹部は、前記ワイヤ部材における、その軸線に交差する方向の変位を制限することを特徴とする。
【0008】
【作用】
本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された樹脂製の軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、前記軸受保持部材と前記入力部材とを連結するワイヤ部材が設けられ、前記軸受保持部材は、前記ワイヤ部材が組み付けられたとき、前記ワイヤ部材の外周面の一部もしくは全周に係合する係合凹部を有し、前記係合凹部は、前記ワイヤ部材における、その軸線に交差する方向の変位を制限するので、組み付けにより、前記ワイヤ部材を前記係合凹部に係合させれば、前記係合凹部が前記ワイヤ部材の変位を制限するので、前記入力部材の組付けが容易になる。又、かかる係合凹部は、前記軸受保持部材が樹脂製であるので、比較的容易に成形できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。図2は、図1のクラッチレリーズ軸受装置をII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。図3は、図1のクラッチレリーズ軸受装置を矢印III方向に見た図である。図4(a)は、図1のように軸線方向に切断したクラッチレリーズ軸受装置を斜めに見た図であり、図4(b)は、係合凹部を拡大して示す図である。
【0010】
図2において、クラッチレリーズ装置は、クラッチレリーズ軸受10と、軸受保持部材であるガイドスリーブ20と、連結部材であるばね部材30とからなる。クラッチレリーズ軸受10は、左方端に当接部11aを有する略円管状の内輪11と、内輪11を同心的に内包する短い円管状の外輪12と、内輪11と外輪12との間に転動自在に配置された複数のボール15と、ボール15を所定間隔で保持する保持器16と、ボール15の軸線方向両側で内輪11と外輪12とにより画成される空間を防塵油密的に密封するシール17、18とからなる。内輪11は外輪12に対して回転自在に支持されている。また内輪11の当接部11aは、半径方向外方にめくれたような形状をしており、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに当接するようになっている。また、内輪11の当接部11aと反対側の端部はプレスによるブランク加工のままとし、切削加工を行わず製作コストを安くするようにしている。
【0011】
一方、ガイドスリーブ20は樹脂製であって、円管状の本体21と、本体21の中央近傍の外周から半径方向に延在するフランジ部22と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向左方に突出する外壁部23と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向右方に突出するガイド部25(図1)とからなる。本体21の内方には図示しないガイド軸が延在しており、本体21はガイド軸上を摺動自在となっている。なお、本体21の内方には拡径部24が設けられている。この拡径部24は、本体21がガイド軸上を摺動する際に異物を噛みこまないように機能するものである。外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10の外方に設けられ、その半径方向の移動制限部となっている。また、クラッチレリーズ軸受10を半径方向に移動可能とするため、外輪12の外周と外壁23の内周との間には隙間27が形成されている。ガイド部25はばね部材30の組付時にガイドの機能を有するものであり、ばね部材30の両わきを軸線方向に延在している。また、外輪12は、板材をプレスすることによって形成されているが、JIS規格のSUJ2を素材として旋削し、その後焼き入れすることによって形成しても良い。
【0012】
ワイヤ部材であるクリップ50は、図1から明らかなように略コの字形状に折り曲げられたばね鋼線から形成され、垂直部51と、その両端から水平に延在する2つの延在部52と、各延在部52の自由端からレリーズフォークRF(図2に一点鎖線で示す)側に延在する架橋部54と、架橋部54から半径方向内方に向かいレリーズフォークRFに係合する係合部55とからなる。係合部55は、レリーズフォークRFに設けられた溝RFgに嵌入される突起56を有する。
【0013】
図4(a)において、ガイドスリーブ20のフランジ部22は、補強部材40が配置される側が、クリップ50の延在部52が水平に配置される部分まで削られて薄肉部となっており、フランジ部22の厚肉部と薄肉部との間の段付き部に、隆起部22jを形成している。隆起部22jは、図4(b)に示すように、先端にテーパ面22kを有すると共に、その根本に係合凹部22mを有している。尚、嵌合凹部22mは、フランジ部22の全幅にわたって設けられる必要はなく、その一部で足りる。
【0014】
係合凹部22mは、その断面の約2/3(180度以上であると良い)は円周の一部であるが、残りは切欠部22nとなっている。この切欠部22nの半径方向(図4(b)で上下方向)長さをdとし、クリップ50(図4(b)で一点鎖線で示す)の外径をφCとし、係合凹部22mの内径をφDとすると、d<φD、φCなる関係が成立する。ガイドスリーブ20に組み付け際、クリップ50の延在部52を半径方向外方から差し入れ、テーパ面22kに沿って滑らせて、切欠部22nから係合凹部22m内に装填する。このとき、フランジ22と薄肉の部分22sとが離隔して、クリップ50の進入を許容する。侵入しやすいようにフランジ22に逃げを形成しても良い。更に、d<φCであるので、組み付け時には切欠部22nが開くように隆起部22jが変形して、延在部52の侵入を許容し、延在部52が係合凹部22mに係合した後には、弾性力に基づいて切欠部22nが閉じるように隆起部22jが変形することで、延在部52の抜け出しが防止される。
【0015】
尚、φD<φCとすると、延在部52が係合凹部22mに係合した後、隆起部22jはフリー状態に戻らず、わずかに変形した状態に維持されるため、その弾性力に基づいて、延在部52は係合凹部22mと密着した状態に維持されクリップ50の姿勢は安定するが、クリップ外径φCがあまり大きくなると、隆起部22jの最も薄肉の部分22sの応力が高くなり、破断などの恐れがある。そこで、かかる場合にはクリップ外径φCと係合凹部22m内径φDとのバラツキを抑制(φD≒φC)しなくてはならず、コストが増大する。
【0016】
これに対し、φD>φCとすると、延在部52が係合凹部22mに係合した後、延在部52と係合凹部22mとの間に隙間が生じることとなるため、組み付け後において、延在部52は係合凹部22m内である程度がたつくこととなるが、d<φCである限り、延在部52の軸線に直交する全ての方向における隙間以上の変位は制限され、また延在部52の軸線方向の変位は任意に許容されるため、たとえばレリーズフォークRFを取り付けやすくなるという利点がある。又、隆起部22jの最も薄肉の部分22sの応力の応力増大を招くこともない。
【0017】
尚、本実施の形態においては、係合凹部22mが切欠部22nを有するため、クリップ50の延在部52における外周の一部が、係合凹部22mの内周に係合するようになっているが、切欠部22mをなくして(係合凹部22mを完全な貫通孔として)、そこにクリップ50の端部を挿入させることで組付けを行い、それにより延在部52の外周面と係合凹部22mの内周面とを全周にわたって係合させても良い。
【0018】
図1より明らかなように、同一形状のものが2つ設けられたばね部材30は、クラッチレリーズ軸受10をガイドスリーブ20に対して取り付ける機能を有する。図5は、ばね部材30の斜視図である。ばね部材30は、一枚のSK5等のばね鋼板をプレスで打ち抜いた後折り曲げその後焼入処理することによって形成されている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20のフランジ部に当接するベース部31と、軸受の外輪12に当接する押圧部32と、ベース部31と押圧部32との間に設けられ、押圧部32に外輪12を付勢するための弾性力を付与する梁部33とからなっている。なお、押圧部32はシール17に接触しないように、またばね部材30の組付を容易にすべく、軸線方向外方に傾斜した傾斜部32aを有する。
【0019】
更にばね部材30は、梁部33の中央下面において上方にくぼんだ凹部34を有しており、この凹部34には、ガイドスリーブ20のフランジ部22に形成された凸部22h(図2)が係合するようになっている。また、ベース部31の両側部31aにおける下方端近傍においては、くぼみを構成する切欠き37が形成され、更にその下縁部31b中央には、比較的大きな切欠き38が形成されている。切欠き38と下縁部31bとの交差部には、面取り39が形成されている。
【0020】
図6は、図1のVI−VI線に沿って切断した部分を拡大して矢印方向に見た図である。ガイドスリーブ20のフランジ部22には、更に突起22cが形成されている。突起22cは、斜面22dと台部22eとからなっており、ばね部材30が装着された際に切欠き37に係合する形状となっている。
【0021】
尚、ガイドスリーブ20のフランジ部22には、突起22cの近傍において、矩形状の突起であるストッパ22gが形成されている。このストッパ22gは、図1から明らかなように、ばね部材30をガイドスリーブ20に取り付ける際に、ばね部材30の切欠き38に係合して、それ以上ばね部材30が内方に押し込まれることを防止するようになっている。ばね部材30の面取り39は、その挿入を容易にする機能を有する。
【0022】
次に、本発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置の動作につき以下に説明する。図1において、一点鎖線で示すレリーズフォークRFが枢動すると、その先端が補強部材40のアンビル部42に当接して一定の荷重を印加する。補強部材40の板厚は比較的厚くその剛性も十分であるため、レリーズフォークRFより伝達される大荷重を受けることができる。クラッチレリーズ軸受装置は、レリーズフォークからの入力により図示しないガイド軸上を軸線方向に摺動して、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに内輪11の当接部11aを当接させる。ダイヤフラムスプリングが回転していても、内輪11は回転自在であるので、当接後にダイヤフラムスプリングと一体で回転することとなり、更に軸受装置が軸線方向に移動することによりダイヤフラムスプリングが押圧されてクラッチが動作されるようになっている。
【0023】
ばね部材30は適切な板厚となっていて、ガイドスリーブ20に対してクラッチレリーズ軸受10を、押圧部32と外輪12との間に作用する摩擦力のみで支持しているため、軸受10はガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能となっている。従って、内輪11の当接部11aがダイヤフラムスプリングに当接したとき、両者の間に偏心があれば、軸受10を同心に位置させようとする公知の力が生じ、それにより軸受10は半径方向に移動して、自動調心が達成されることとなる。なお、ガイドスリーブ20の外壁部23は、軸受10が所定量以上半径方向外方に移動しないよう制限する機能を有する。また、一般の玉軸受の外輪にはフランジがないタイプが多いので、本実施の形態のように外輪をばね部材30で挟みこむように構成すれば、外輪自体を改造する必要がなく既存のものを使用でき、コスト低減に寄与しうる。
【0024】
以上、本発明を実施例を参照して説明してきたが、本発明は上記実施例に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、クリップ50の断面は、係合凹部22mの係合部のみ円形であればよい。
【0025】
【発明の効果】
本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された樹脂製の軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、前記軸受保持部材と前記入力部材とを連結するワイヤ部材が設けられ、前記軸受保持部材は、前記ワイヤ部材が組み付けられたとき、前記ワイヤ部材の外周面の一部もしくは全周に係合する係合凹部を有し、前記係合凹部は、前記ワイヤ部材における、その軸線に交差する方向の変位を制限するので、組み付けにより、前記ワイヤ部材を前記係合凹部に係合させれば、前記係合凹部が前記ワイヤ部材の変位を制限するので、前記入力部材の組付けが容易になる。又、かかる係合凹部は、前記軸受保持部材が樹脂製であるので、比較的容易に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。
【図2】図1のクラッチレリーズ軸受装置をII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図3】図1のクラッチレリーズ軸受装置を矢印III方向に見た図である。
【図4】図4(a)は、図1のように軸線方向に切断したクラッチレリーズ軸受装置を斜めに見た図であり、図4(b)は、係合凹部を拡大して示す図である。
【図5】ばね部材30の斜視図である。
【図6】図1のVI−VI線に沿って切断した部分を拡大して矢印方向に見た図である。
【符号の説明】
10 クラッチレリーズ軸受
20 ガイドスリーブ
22m 係合凹部
30 ばね部材
40 補強部材
50 クリップ
Claims (1)
- 互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された樹脂製の軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記軸受保持部材と前記入力部材とを連結するワイヤ部材が設けられ、前記軸受保持部材は、前記ワイヤ部材が組み付けられたとき、前記ワイヤ部材の外周面の一部もしくは全周に係合する係合凹部を有し、前記係合凹部は、前記ワイヤ部材における、その軸線に交差する方向の変位を制限することを特徴とするクラッチレリーズ軸受装置。
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JP2002161363A JP4228595B2 (ja) | 2002-06-03 | 2002-06-03 | クラッチレリーズ軸受装置 |
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Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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