JP2004004207A - 負帯電性トナー及びそれを用いた静電荷像現像剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】低速から高速に至る広範囲な静電荷像現像装置において高品位な画像を提供することができ、高速現像時においても地汚れの少ない画像が得られ、現像装置内のトナーの飛散を低減でき、現像剤の使用初期から終了時に至るまで安定した画像が得られる静電荷像現像用の負帯電性トナーを提供する。また、黒以外の着色剤を用いた場合でも帯電制御剤による色相の変化がなく、耐オフセット性や定着性等に優れた静電荷像現像用の負帯電性トナーを提供する。
【解決手段】バインダー樹脂と着色剤と帯電制御剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が、
(A)2価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物
(B)2価以上の脂肪族多価アルコール
とを主成分として反応させたポリエステル樹脂であり、前記帯電制御剤が有機ベントナイトを含有することを特徴とする負帯電性トナー。
【選択図】
【解決手段】バインダー樹脂と着色剤と帯電制御剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が、
(A)2価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物
(B)2価以上の脂肪族多価アルコール
とを主成分として反応させたポリエステル樹脂であり、前記帯電制御剤が有機ベントナイトを含有することを特徴とする負帯電性トナー。
【選択図】
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、あるいは静電印刷法に用いる静電荷像現像用の負帯電性トナー及びそれを用いた静電荷像現像剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法における二成分現像方法ではキャリアが現像剤の攪拌、搬送、帯電などの機能を分担しており、キャリアとトナーの機能分離が明確になっている。そのためトナーの帯電制御が比較的容易で、高速化にも対応可能なことから二成分現像方法は広く用いられている。この二成分現像方法における画像品質は、トナー粒子の帯電立ち上がり性、帯電経時安定性、帯電量等によって大きく左右される。そこで、これらの帯電特性を制御し、常時、安定した状態で用いる目的で、トナー粒子を製造する際には正電荷又は負電荷付与性の帯電制御剤(CCA)を内添する方法が採られている。
【0003】
従来、トナーに負電荷を付与する帯電制御剤として、特公平2−16916号公報には、アゾ系金属キレート錯体が記載されている。しかしながら、アゾ系金属キレート錯体は、有色のためカラートナーには適さず、更に、トナー混練時の機械的衝撃あるいは温湿度条件によって分解もしくは変質し、帯電制御剤本来の機能が低下するという問題点があった。また、上記アゾ系キレート錯体は重金属を含有するため、安全性、環境保護という観点からも問題であった。
【0004】
一方、サリチル酸、及びその誘導体のキレート錯体、又はサリチル酸誘導体の金属塩は、特公平2−060183号公報(亜鉛錯塩系)、特公平8−010360号公報(アルミニウム錯塩系)、特開2000−227675号公報、特開2000−227676号公報、特開2000−227678号公報、特開2000−258961号公報、特開2000−258962号公報、特開2000−330338号公報(以上ジルコニウム錯塩、又はジルコニウム塩系)等に開示されている。これらはそれ自体が無色ないし淡色の化合物であり、帯電立ち上がり性、及び帯電量に優れる事からカラートナー用負帯電性帯電制御剤としてしばしば適用されているが、その反面、帯電経時安定性等に未だ課題がある。
【0005】
さらに、最近においては、非磁性一成分現像方式では6m/分以上、また、二成分現像方式では20m/分以上の現像速度といったように、マシンの印刷速度が上昇してきている。それに伴い、高速現像における耐摩耗性、帯電経時安定性が求められるだけでなく、帯電不良あるいは逆極性に帯電するトナー粒子の発生を防止し、トナーがマシン内部へ飛散したり、印刷時の汚れとなって印刷品質を低下させたりしないことが要求されている。前記のような従来の帯電制御剤ではこのような高速現像における要求特性を十分に満足するものではない。
【0006】
ところで、トナーの帯電特性が優れたものとするためには、帯電制御剤がトナー粒子中、あるいはトナー粒子表面に均一に微分散することが重要である。帯電制御剤がトナー中の一部分に凝集していたり、均一に分散していても微粒子状になっておらず、粗粒子として存在していると、所期の帯電量が得られず、また、帯電の立ち上がり特性が不良となったり、帯電の減衰が激しいトナーとなってしまう。そこで、帯電制御剤をトナー中に均一に微分散するために種々の工夫が従来から行われているが、トナーのバインダー樹脂の種類や化学組成を選択することも重要な要素である。トナーの帯電特性を優れたものとするためには、帯電特性の優れた帯電制御剤を使用するのみではなく、使用する帯電制御剤に応じて、それを均一に微分散しうる樹脂を選択し、両者を組み合わせて使用することが必要である。従来の技術においては、トナーの帯電特性が優れたものとするための適した組合せについて満足しうる技術は開示されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、低速から高速に至る広範囲な静電荷像現像装置において高品位な画像を提供することができ、高速現像時においても地汚れの少ない画像が得られ、現像装置内のトナーの飛散を低減でき、現像剤の使用初期から終了時に至るまで安定した画像が得られる静電荷像現像用の負帯電性トナーを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、黒以外の着色剤を用いた場合でも帯電制御剤による色相の変化がない静電荷像現像用の負帯電性トナーを提供することを目的とする。更に、本発明の他の目的は、耐オフセット性や定着性等に優れた静電荷像現像用の負帯電性トナーを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は上記課題を解決するために、バインダー樹脂と着色剤と帯電制御剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が、
(A)2価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物
(B)2価以上の脂肪族多価アルコール
とを主成分として反応させたポリエステル樹脂であり、前記帯電制御剤が有機ベントナイトを含有することを特徴とする負帯電性トナーを提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の負帯電性トナーを製造するために用いる、2価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物(A)としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸又はその誘導体又はそのエステル化物が、また、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等の三官能以上の多価カルボン酸又はその誘導体又はそのエステル化物が挙げられる。
【0011】
また、2価以上の脂肪族多価アルコール(B)としては、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体ジオール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体ジオール、エチレンオキサイド−テトラハイドロフラン共重合体ジオール、ポリカプロカクトンジオール等のジオールが、また、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリメチロールベンゼン、等の三官能以上の多価アルコールが挙げられる。
【0012】
また、上記(A)のカルボン酸化合物と反応する脂肪族系のアルコール成分(B)として、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、等のエポキシ化合物も用いることができる。
【0013】
また、本発明では性能に影響を与えない範囲において芳香族ジオールあるいは3価以上の芳香族多価アルコールを併用することもできる。芳香族ジオールあるいは3価以上の芳香族多価アルコールとしては、例えばカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、等が挙げられる。また、下記一般式(I)で表されるビスフェノールA骨格を有する化合物も本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0014】
【化1】
<一般式(1)>
(式中、R1及びR2は、同一又は異なっていても良く、エチレン基又はプロピレン基を示す。また、m、nは、同一又は異なっていても良く、0〜7の整数を示し、かつm+nは0〜7の整数を示す。)
【0015】
下記一般式(I)で表される芳香族ジオールの具体的な化合物としては、例えばビスフェノールA、ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0016】
本発明では脂肪族多価アルコールを反応させたポリエステル樹脂を用いることにより、本発明で使用する帯電制御剤の分散性を良好にすることができる。また、ポリエステル樹脂における分子鎖のフレキシビリティが良好となり、キャリアと混合して二成分現像剤として用いた場合、現像装置内でキャリアが受けるストレスを緩和する効果があり、キャリア表面の樹脂被覆相が剥離するのを防ぎ、結果として現像剤の寿命が延びるという効果が得られる。
【0017】
更に、ポリエステル主鎖が軟質化することにより低温での定着性が改善される。さらに、定着・オフセット性能を改善する目的で、トナー中にワックスを添加することは一般的に用いられる手段であるが、本発明における脂肪族系多価アルコールを用いたポリエステル樹脂では特にワックス類との相溶性が良好であり、低温での定着性能及び耐オフセット性がさらに改良される。
【0018】
したがって、上記芳香族ジオールは本発明の主旨を損なわない範囲で用いる必要がある。上記芳香族ジオールを用いる量は全アルコール成分に対して30モル%以下であることが望ましい。より好ましくは20モル%以下である。
【0019】
また、本発明で使用するポリエステル樹脂を製造するために用いるカルボン酸成分としては、ナフタレンジカルボン酸、及び/またはその低級アルキルエステルとして、ジメチルナフタレート、ジエチルナフタレート、ジブチルナフタレート等がより好適に用いられる。これらの化合物は全酸成分の1モル%以上を用いることが必要であり、より好ましくは5モル%以上である。
【0020】
ナフタレン環構造を含むモノマーは樹脂のTgを上げるのに効果があり、樹脂の耐熱凝集性が向上する。特にアルコール成分として軟質の脂肪族系ジオールを主体に用いた系においては、樹脂のTgの低下を抑えることができ、脂肪族系ジオールを用いることによる低温定着性とナフタレンジカルボン酸による耐熱凝集性の両方を併せ持つ樹脂を得ることができる。
【0021】
本発明で用いるポリエステル樹脂は、例えば触媒の存在下で上記の原料成分(A)(B)を用いて脱水縮合反応或いはエステル交換反応を行うことにより得ることができる。この際の反応温度及び反応時間は、特に限定されるものではないが、通常150〜300℃で2〜24時間である。
【0022】
上記反応を行う際の触媒としては、例えばテトラブチルチタネート、酸化亜鉛、酸化第一錫、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート、パラトルエンスルホン酸等を適宜使用する事が出来る。
【0023】
本発明に用いられるポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上のものが好ましいが、中でも、そのTgが55℃以上のものが特に好ましい。Tgが50℃以下ではトナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。
【0024】
また、本発明に使用されるポリエステル樹脂の軟化点としては、90℃以上、中でも、90℃〜180℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜160℃の範囲である。軟化点が90℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすく、保存時や印字の際にトラブルになりやすく、180℃を越える場合には定着性が悪くなることが多い。
【0025】
さらに、カラートナー用の黒トナーあるいは有彩色のトナーとして、より低温での定着性能が要求される場合には、ポリエステル樹脂の軟化点としては、90℃〜130℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜120℃の範囲である。本発明のポリエステル樹脂の酸価としては、20mgKOH/g以下であることが、トナーの耐湿性が良好となる点で好ましい。
【0026】
本発明では有機ベントナイトを含有する物質を帯電制御剤として用いる。有機ベントナイトとは、有機カチオン形成性化合物とベントナイトを主成分として製造される物質であり、ベントナイトとはSiO2とAl2O3を主とし、モンモリロン石を主成分とした層状構造を有する粘度鉱物である。このような天然の層状化合物であるベントナイトは、イオン交換などによって有機分子を層間に取り込むことができる。ベントナイトの層間には、本来、ナトリウムやカリウムなどの無機の金属カチオンが存在するが、これをイオン交換することによってアルキルアンモニウムイオンなど、有機カチオンをインターカレート(包接)し、有機物と無機物が交互に積層した複合体(層間化合物)が生じる。本発明で帯電制御剤として使用する有機ベントナイトは、ベントナイト中の無機カチオンを有機カチオン形成性化合物から生じる有機カチオンで交換したものである。
【0027】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物としては、公知の化合物を使用できる。例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラペンチルアンモニウムフルオロフォスフェート、テトラエチルアンモニウムベンゾエート、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、トリエチルメチルアンモニウムアイオダイド、等の4級アンモニウム塩がある。
【0028】
また、イソプロピルピリジニウムクロライド、ブチルピリジニウムクロライド、ヘプチルピリジニウムクロライド、デシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド、等のピリジウム塩がある。
【0029】
更に、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、ポリ−(4−ビニルピリジン)、ポリアリルアミン、アミノアセチル化されたポリビニルアルコール、ポリ−(L)−リジン、キトサン、ポリピロール、あるいはジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有アクリレートを含有するビニルモノマーとの共重合体、等から得られるポリマ−性アンモニウム塩がある。
【0030】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物のアニオン成分としては特に限定されるものではないが、安全性あるいは環境保護という観点からは、クロム、コバルト、銅、ニッケル、モリブデン、鉛、水銀、等の重金属を含まないアニオンであることが好ましい。
【0031】
本発明で使用する有機ベントナイトを調製するための方法としては、特に限定されるものではなく、従来用いられているイオン交換操作により製造することができる。例えば、水、水と有機溶媒の混合物、あるいは有機溶媒中にベントナイトを浸漬し、これに有機カチオン形成性化合物を添加して、一定時間放置後、これを濾過洗浄し、乾燥することにより得ることができる。
【0032】
本発明で用いる帯電制御剤は、本発明における樹脂中に均一に分散することができるので、少量で所望の帯電量を得ることができる。
【0033】
帯電制御剤の使用量としてはバインダー樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部の範囲であり、この範囲であると、トナー抵抗の低下もなく十分な帯電性能が得られる。より好ましくは0.3〜5質量部であり、特に、0.5〜3質量部であることが好ましい。
【0034】
なお、本発明では従来公知の帯電制御剤も併用することができる。併用することができる化合物としては、例えば正帯電制御剤としてニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する樹脂等が、負帯電制御剤としてトリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックス等の重金属含有酸性染料、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含有する樹脂、等がある。本発明で用いる帯電制御剤は負帯電性帯電制御剤であるので、その他の帯電制御剤を併用する場合は負の帯電制御剤であることが好ましい。
【0035】
本発明で使用することができる着色剤としては、例えば、黒の着色剤としては製法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、或いは、C.I.Pigment Black 11の鉄酸化物系顔料、C.I.Pigment Black 12の鉄−チタン酸化物系顔料、フタロシアニン系のシアニンブラックBX等があげられる。また、以下に例示する有彩色の顔料を使用して有彩色のトナーとして、あるいは2種類以上の顔料を使用して黒色に調色して使用することもできる。
【0036】
本発明のトナーに使用できる青系の着色剤としては、フタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 1,2,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,17:1,27,28,29,56,60,63等が挙げられる。青系の着色剤として、好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3(一般名フタロシアニンブルーG),15(フタロシアニンブルーR),16(無金属フタロシアニンブルー),60(インダンスロンブルー)が挙げられ、最も好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,60が挙げられる。
【0037】
また、黄色系の着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1,3,4,5,6,12,13,14,15,16,17,18,24,55,65,73,74,81,83,87,93,94,95,97,98,100,101,104,108,109,110,113,116,117,120,123,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,156,168,169,170,171,172,173,180,185等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Yellow 12(一般名ジスアゾイエロー AAA),13(ジスアゾイエロー AAMX),17(ジスアゾイエロー AAOA),97(ファストイエロー FGL),110(イソインドリノンイエロー 3RLT),および155(サンドリンイエロー 4G),180(ベンズイミダゾロン)が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment Yellow 17,155,180が挙げられる。
【0038】
さらに、赤色系着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,15,17,18,22,23,31,37,38,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:3,54,57:1,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,65,66,67,68,81,83,88,90,90:1,112,114,115,122,123,133,144,146,147,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,185,187,188,189,190,193,194,202,208,209,214,216,220,221,224,242,243,243:1,245,246,247等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Red 48:1(一般名バリウムレッド),48:2(カルシウムレッド),48:3(ストロンチウムレッド),48:4(マンガンレッド),53:1(レーキレッド),57:1(ブリリアントカーミン6B),122(キナクリドンマゼンタ 122)および209(ジクロロキナクリドンレッド)が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment
Red 57:1,122および209が挙げられる。
【0039】
これら着色剤の含有量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜15質量%であることが更に好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせて使用することができる。
【0040】
また、本発明の負帯電性トナーには、これまで公知の種々の離型剤、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミド系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のポリオレフィンワックス及び/又は変性ポリオレフィンワックスを用いることができるが、本発明では、特に、高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックス等を離型剤として用いることが好ましい。このようなワックスは本発明のポリエステル樹脂中における分散性が良く、また、離型性、摺動性が良好であり好ましい。これらのワックスをトナー中に添加する場合、同量のポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等ポリオレフィン系ワックスと比較して、より良好な耐ホットオフセット性、定着強度が得られる。
【0041】
また、更に高級脂肪酸エステル化合物及び/または脂肪族アルコール化合物を主成分とするワックスはヒートロール定着時におけるオフセット現象を防止する離型剤としての働きの他に、多数枚、長時間の印刷においても、例えば二成分現像剤用トナーとして用いた場合、キャリア表面に付着することなく、トナーに安定した帯電を与え、飛散トナーの発生等が無く高品位かつ高精細な画像の印刷を可能とする。
【0042】
高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスの中でも、カルナウバワックス、ライスワックス、カイガラムシワックス、モンタン系エステルワックス等の天然物に由来するワックス、合成エステル系ワックスとしてはペンタエリスリトールのテトラベヘン酸エステル、アルコール系ワックスとしてはフィッシャートロプシュワックス等を酸化して得られる高級アルコール系ワックスが特に好ましい。
【0043】
離型剤の融点(滴点、軟化温度)は、60〜180℃であることが好ましく、65〜170℃であることがより好ましい。融点が低すぎる場合、保存中に凝集しやすく、トナーの流動性も低下し易くなる。融点が高すぎる場合、画像の定着工程において溶融しにくく、十分な離型効果を発揮し難い。
【0044】
また、離型剤はキャリア等の帯電部材に固着し、帯電性能の不安定化、画質の劣化の原因となる場合があるので、固着の抑制の観点から、その硬度は高い方が良く、25℃における針入度が5以下のものが好ましく、2以下のものが特に好ましい。
【0045】
天然ワックス、合成エステルワックス、アルコール系ワックスは、構造あるいは遊離酸に起因して、カタログ値で2〜40程度の酸価を有するが、樹脂の場合と同様の理由によりこれらの値は低い方が望ましい。
【0046】
離型剤は、単独で用いても組み合わせて用いても良く、バインダー樹脂に対して0.1〜15質量部、好ましくは1〜5質量部含有させることにより良好な定着オフセット性能が得られる。0.1質量部より少ないと耐オフセット性が損なわれ易く、15質量部より多いとトナーの流動性が悪くなり易く、また、帯電部材への固着により、トナーの帯電特性に悪影響を与え易くなる。
【0047】
本発明のトナーには、トナーの流動性向上、帯電特性改良などトナーの表面改質のために種々の添加剤(外添剤と呼ぶ)を用いることができる。本発明で用いることのできる外添剤としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機微粉体及びそれらをシリコーンオイル、シランカップリング剤などの疎水化処理剤で表面処理したもの、ポリスチレン、アクリル、スチレンアクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン、ナイロン、シリコン、フェノール、フッ化ビニリデン、等の樹脂微粉体等が用いられる。
【0048】
これらの中でも各種のポリオルガノシロキサンやシランカップリング剤等で表面を疎水化処理した二酸化珪素(シリカ)が特に好適に用いることができる。そのようなものとして、例えば、次のような商品名で市販されているものがある。
【0049】
【0050】
外添剤の粒子径はトナーの直径の1/3以下であることが望ましく、特に好適には1/10以下である。また、これらの外添剤は、異なる平均粒子径の2種以上を併用してもよい。外添剤の使用割合はトナー100質量部に対して、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0051】
本発明におけるトナーは、その他の添加剤をトナー粒子内部に含める様にしても良い。一例として、例えば金属石鹸、ステアリン酸亜鉛等の滑剤が、研磨剤として、例えば酸化セリウム、炭化ケイ素等が使用できる。
【0052】
また、着色剤の一部もしくは全部を磁性粉に置き換えた場合には磁性一成分現像用トナーとして用いることができる。磁性粉としては、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属、もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどの合金や化合物の粉末が用いられる。これらの磁性粉は、必要に応じて有機珪素あるいはチタン化合物等により疎水化処理したものも好適に用いられる。磁性粉の含有量はトナー質量に対して15〜70質量%が良い。
【0053】
本発明のトナーは、特定の製造方法によらず極めて一般的な製造方法に依って得る事ができるが、例えば樹脂と着色剤と帯電制御剤とを、樹脂の融点(軟化点)以上で溶融混練した後、粉砕し、分級することにより得ることが出来る。
【0054】
具体的には例えば、上記の樹脂と着色剤を2本ロール、3本ロール、加圧ニーダー、又は2軸押し出し機等の混練手段により混合する。この際、樹脂中に、着色剤等が均一に分散すればよく、その溶融混練の条件は特に限定されるものではないが、通常80〜180゜Cで30秒〜2時間である。着色剤は樹脂中に均一に分散するようにあらかじめフラッシング処理、あるいは樹脂と高濃度で溶融混練したマスターバッチを用いても良い。
【0055】
次いで、それを冷却後、ジェットミル等の粉砕機で微粉砕し、風力分級機等により分級するという方法が挙げられる。トナーを構成する粒子の平均粒径は、特に制限されないが、通常5〜15μmとなる様に調整される。通常、この様にして得られたトナー母体に対しては、トナー母体よりも小さい粒径の微粒子(以下、外添剤と呼ぶ)が、例えばヘンシェルミキサー等の混合機を用いて混合される。
【0056】
本発明の負帯電性トナーを製造する他の方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、あるいは特開平5−66600号公報、特開平8−62891号公報等により開示されている転相乳化法等がある。転相乳化法とは、バインダー樹脂と着色剤等と有機溶剤からなる混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を添加することによりWater in Oilの不連続相を生成させ、さらに水を追加することで、Oil in Waterの不連続相に転相し、そして、更に水性媒体を追加することで水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁液を形成させ、その後、有機溶剤を除去することによりトナー粒子を製造する方法である。
【0057】
本発明におけるトナーは磁性キャリアと混合することにより二成分現像剤として用いることができる。この場合、磁性キャリアの表面は樹脂により被覆されたものであることが望ましい。表面を樹脂で被覆することにより現像剤の帯電が安定する。
【0058】
本発明のトナーを用いて二成分現像剤を作製するキャリアとしては、通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉キャリア、マグネタイトキャリア、フェライトキャリアが使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトキャリアが好適に用いられる。キャリアの形状は球形、不定形等、特に差し支えなく使用できる。平均粒径は一般的には10〜500μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜80μmが好ましい。
【0059】
また、これらのキャリアを樹脂で被覆したコーティングキャリアも好適に使用でき、被覆樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等が使用できる。これらの中でも、特にシリコン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂が帯電安定性、被覆強度等に優れ、より好適に使用し得る。つまり本発明では、磁性キャリアが、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアであることが好ましい。
【0060】
キャリア芯材表面への樹脂の被覆方法は特に手段を選ぶものではないが、被覆樹脂の溶液中に浸漬する浸漬法、被覆樹脂溶液をキャリア芯材表面へ噴霧するスプレー法、あるいはキャリアを流動エアーにより浮遊させた状態で噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被覆樹脂溶液を混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法などが挙げられる。
【0061】
被覆樹脂溶液中に使用される溶剤は被覆樹脂を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が使用できる。キャリア表面への被覆層の厚さは、通常0.1〜3.0μmである。
【0062】
本発明のトナーと、磁性キャリアとの質量割合は特に制限されるものではないが、通常キャリア100質量部当たり、トナー0.5〜10質量部である。
【0063】
こうして得られた本発明の負帯電性トナーは、公知慣用の方法で被記録媒体上に現像され定着されるが、定着方式としては、ヒートロール定着方式を採用するのが好ましい。ヒートロールとしては、トナーを溶融定着しうる温度に加熱できる円筒体の表面を、例えばシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の離型性と耐熱性を兼備するコーティング樹脂で被覆したものが用いられる。ヒートロール定着方式では、上記した様なヒートロールを少なくとも一つ有する適当な圧力にて押圧された二つのロール間を被印刷媒体が通過することによりトナーの定着が行われる。
【0064】
本発明の負帯電性トナーの格別顕著な技術的効果は、より高速で現像され、ヒートロール定着が行われる現像定着装置において発揮される。本発明における被記録媒体としては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、例えば、普通紙、樹脂コート紙等の紙類、PETフィルム、OHPシート等の合成樹脂フィルムやシート等が挙げられる。
【0065】
本発明の負帯電性トナーを用いた現像剤は、通常の二成分現像方式の現像装置で使用することができるが、特に高速処理の現像方式である20m/分以上の、更には30m/分以上の高速機に好適に用いることができる。特に45m/分以上の高速機であっても、カブリの発生が無く、均一な画像濃度において長時間の印刷ができる電子写真用現像剤を提供することができる。
【0066】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下において、組成表内の数値は『質量部』を表わす。最初にトナーを調製するにあたって用いたバインダー樹脂の合成例を下記に示す。
【0067】
(合成例1)
ナフタレンジカルボン酸 87質量部
テレフタル酸 249質量部
ジエチレングリコール 26質量部
ネオペンチルグリコール 104質量部
エチレングリコール 50質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で10時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が101℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価7、DSC測定法によるガラス転移温度70℃、軟化点が102℃であった。
【0068】
(合成例2)
テレフタル酸 315質量部
ジエチレングリコール 21質量部
シクロヘキサンジメタノール 144質量部
エチレングリコール 50質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
以上の原料を用いて合成例1と同様に反応を行った。得られた重合体は、無色の固体であり、酸価9、DSC測定法によるガラス転移温度60℃、軟化点が97℃であった。
【0069】
(合成例3)
イソフタル酸 116質量部
テレフタル酸 166質量部
無水トリメリット酸 38質量部
ジエチレングリコール 26質量部
ネオペンチルグリコール 104質量部
エチレングリコール 50質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で10時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が140℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価5、DSC測定法によるガラス転移温度72℃、軟化点が141℃であった。
【0070】
(合成例4)
ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 1650質量部
イソフタル酸 415質量部
テレフタル酸 415質量部
テトラブチルチタネート 6質量部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて230℃で24時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が99℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価7、DSC測定法によるガラス転移温度62℃、軟化点が103℃であった。
【0071】
(合成例5)
テレフタル酸 283質量部
ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 527質量部
無水トリメリット酸 45質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
【0072】
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で15時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が133℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価5、DSC測定法によるガラス転移温度64℃、軟化点が134℃であった。
【0073】
(帯電制御剤1の合成)
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド15部をメタノール135部に溶解した。これに平均粒径が0.5ミクロンのベントナイト25部を加えて1時間撹拌し、濾別した。脱イオン水で繰り返し洗浄した後、60℃に保った乾燥機により減圧下で24時間乾燥し帯電制御剤1を得た。
【0074】
(帯電制御剤2の合成)
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の40%水溶液16部に平均粒径が0.5ミクロンのベントナイト25部を加えて1時間撹拌し、濾別した。脱イオン水で繰り返し洗浄した後、60℃に保った乾燥機により減圧下で24時間乾燥し帯電制御剤2を得た。
【0075】
(実施例1)
<トナーの製造>
・合成例1の樹脂 93質量部
・モーガルL 4質量部
(カーボンブラック;キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製)
・帯電制御剤1 1質量部
・精製カルナバワックスNo.1 2質量部
(酸価5、セラリカNODA(株)製)
をヘンシェルミキサーで混合し、2軸混練機で混練する。このようにして得た混練物を粉砕、分級して体積平均粒子径7.5μmの「トナー原体1」を得た。
【0076】
・上記「トナー原体1」 100質量部
・日本アエロジル製シリカ「R−812」 1質量部
をヘンシェルミキサーで混合の後、篩いかけをして、実施例1のトナーを得た。
【0077】
<現像剤の調整>
実施例1のトナー4部とシリコン樹脂で被覆されたフェライトキャリア96部を摩擦混合させて実施例1のトナーを用いた現像剤Aを調整した。
【0078】
以下、実施例1と同様に表1の配合にてトナーを製造し直鎖ポリエステル樹脂をバインダー樹脂としたトナーによる現像剤A(実施例1)〜現像剤D(実施例4)、及び現像剤G(比較例1)〜現像剤I(比較例3)を製造した。また、分岐樹脂をバインダー樹脂としたトナーによる現像剤E(実施例5)、及び現像剤F(実施例6)、及び現像剤J(比較例4)〜現像剤N(比較例8)を製造した。
【0079】
【表1】
【0080】
表中の表示は以下の通り。
モーガルL;カーボンブラック「キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製」
T.Y.HG:TONER YELLOW HG (クラリアント製)
B.111:KET BLUE 111 (大日本インキ化学工業製)
Magenta R:Fastogen Super Magenta R(大日本インキ化学工業製)
PETB:高級脂肪酸エステル WEP−5 (日本油脂製)
カルナバWAX:精製カルナバワックスNo.1(酸価5、セラリカNODA(株)製)
E−84;ジサリチル酸亜鉛錯体(オリエント化学製)
TN−105;ジルコニウム錯体系帯電制御剤(保土谷化学製)
LR−147;ジベンジル酸硼素錯体(日本カーリット製)
【0081】
<ヒートロール定着による定着オフセットテスト>
市販の二成分現像方式の複写機を改造したテスト機にてA−4紙サイズの未定着画像サンプルを作製し、下記仕様のヒートロール定着ユニットを用いて、下記のテスト条件にて定着開始温度、およびオフセット現象の有無を確認した。
定着開始温度を測定するため下記の式により計算される画像濃度残存比率を求めた。
【0082】
画像濃度残存比率=堅牢度試験後画像濃度/同左試験前画像濃度
*画像濃度はマクベス画像濃度計RD−918にて測定した。
*堅牢度試験後画像濃度とは、学振型摩擦堅牢度試験機(荷重:200g、擦り操作:5ストローク)を用いて定着画像を擦った後の画像濃度である。
画像濃度残存比率80%以上で実用上問題ないレベルとし、その最低温度を定着開始温度とした。
【0083】
オフセット開始温度は定着画像サンプルを観察し、目視にてオフセット現象が認められる温度とした。結果を表2に示した。
【0084】
<帯電の立ち上がり比較>
現像剤50gが入った100ccのポリエチレン容器を115rpmのボールミルで3分撹拌した後、現像剤を採取し、ブローオフ帯電量測定機で帯電量を測定した。さらに7分撹拌(計10分)し、同様に帯電量を測定した。試験結果を表2に示す。
【0085】
<印刷耐久テスト>
市販の高速プリンター(A4紙220枚/分、約45m/分)を用いて50000枚の連続プリントにおける画像部の濃度及び地汚れ濃度を測定すると共に、現像剤の帯電量を測定した。画像濃度及び地汚れはマクベス濃度計RD−918で測定した。なお、地汚れは印刷後の白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。その差が0.01未満の時を○、0.01〜0.03未満の時を△、0.03以上の時を×とした。
【0086】
帯電量については印字枚数毎にトナーを現像装置内部から採取して、ブローオフ帯電量測定機で測定した。結果を表3に示した。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
表中の表示は次の通り。
「帯電量」; μC/g
「地汚れ評価」○:0.01未満、△:0.01〜0.03未満,×:0.03以上
【0090】
【発明の効果】
本発明の負帯電性トナーによれば、高速の現像速度においても地汚れのない画像を得ることができ、現像装置内のトナーの飛散を低減でき、現像剤の使用初期から終了時に至るまで安定した画像を得ることができる。また、低温定着性に優れ、幅広い温度領域で良好な定着・オフセット特性を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、あるいは静電印刷法に用いる静電荷像現像用の負帯電性トナー及びそれを用いた静電荷像現像剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法における二成分現像方法ではキャリアが現像剤の攪拌、搬送、帯電などの機能を分担しており、キャリアとトナーの機能分離が明確になっている。そのためトナーの帯電制御が比較的容易で、高速化にも対応可能なことから二成分現像方法は広く用いられている。この二成分現像方法における画像品質は、トナー粒子の帯電立ち上がり性、帯電経時安定性、帯電量等によって大きく左右される。そこで、これらの帯電特性を制御し、常時、安定した状態で用いる目的で、トナー粒子を製造する際には正電荷又は負電荷付与性の帯電制御剤(CCA)を内添する方法が採られている。
【0003】
従来、トナーに負電荷を付与する帯電制御剤として、特公平2−16916号公報には、アゾ系金属キレート錯体が記載されている。しかしながら、アゾ系金属キレート錯体は、有色のためカラートナーには適さず、更に、トナー混練時の機械的衝撃あるいは温湿度条件によって分解もしくは変質し、帯電制御剤本来の機能が低下するという問題点があった。また、上記アゾ系キレート錯体は重金属を含有するため、安全性、環境保護という観点からも問題であった。
【0004】
一方、サリチル酸、及びその誘導体のキレート錯体、又はサリチル酸誘導体の金属塩は、特公平2−060183号公報(亜鉛錯塩系)、特公平8−010360号公報(アルミニウム錯塩系)、特開2000−227675号公報、特開2000−227676号公報、特開2000−227678号公報、特開2000−258961号公報、特開2000−258962号公報、特開2000−330338号公報(以上ジルコニウム錯塩、又はジルコニウム塩系)等に開示されている。これらはそれ自体が無色ないし淡色の化合物であり、帯電立ち上がり性、及び帯電量に優れる事からカラートナー用負帯電性帯電制御剤としてしばしば適用されているが、その反面、帯電経時安定性等に未だ課題がある。
【0005】
さらに、最近においては、非磁性一成分現像方式では6m/分以上、また、二成分現像方式では20m/分以上の現像速度といったように、マシンの印刷速度が上昇してきている。それに伴い、高速現像における耐摩耗性、帯電経時安定性が求められるだけでなく、帯電不良あるいは逆極性に帯電するトナー粒子の発生を防止し、トナーがマシン内部へ飛散したり、印刷時の汚れとなって印刷品質を低下させたりしないことが要求されている。前記のような従来の帯電制御剤ではこのような高速現像における要求特性を十分に満足するものではない。
【0006】
ところで、トナーの帯電特性が優れたものとするためには、帯電制御剤がトナー粒子中、あるいはトナー粒子表面に均一に微分散することが重要である。帯電制御剤がトナー中の一部分に凝集していたり、均一に分散していても微粒子状になっておらず、粗粒子として存在していると、所期の帯電量が得られず、また、帯電の立ち上がり特性が不良となったり、帯電の減衰が激しいトナーとなってしまう。そこで、帯電制御剤をトナー中に均一に微分散するために種々の工夫が従来から行われているが、トナーのバインダー樹脂の種類や化学組成を選択することも重要な要素である。トナーの帯電特性を優れたものとするためには、帯電特性の優れた帯電制御剤を使用するのみではなく、使用する帯電制御剤に応じて、それを均一に微分散しうる樹脂を選択し、両者を組み合わせて使用することが必要である。従来の技術においては、トナーの帯電特性が優れたものとするための適した組合せについて満足しうる技術は開示されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、低速から高速に至る広範囲な静電荷像現像装置において高品位な画像を提供することができ、高速現像時においても地汚れの少ない画像が得られ、現像装置内のトナーの飛散を低減でき、現像剤の使用初期から終了時に至るまで安定した画像が得られる静電荷像現像用の負帯電性トナーを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、黒以外の着色剤を用いた場合でも帯電制御剤による色相の変化がない静電荷像現像用の負帯電性トナーを提供することを目的とする。更に、本発明の他の目的は、耐オフセット性や定着性等に優れた静電荷像現像用の負帯電性トナーを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は上記課題を解決するために、バインダー樹脂と着色剤と帯電制御剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が、
(A)2価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物
(B)2価以上の脂肪族多価アルコール
とを主成分として反応させたポリエステル樹脂であり、前記帯電制御剤が有機ベントナイトを含有することを特徴とする負帯電性トナーを提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の負帯電性トナーを製造するために用いる、2価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物(A)としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸又はその誘導体又はそのエステル化物が、また、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等の三官能以上の多価カルボン酸又はその誘導体又はそのエステル化物が挙げられる。
【0011】
また、2価以上の脂肪族多価アルコール(B)としては、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体ジオール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体ジオール、エチレンオキサイド−テトラハイドロフラン共重合体ジオール、ポリカプロカクトンジオール等のジオールが、また、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリメチロールベンゼン、等の三官能以上の多価アルコールが挙げられる。
【0012】
また、上記(A)のカルボン酸化合物と反応する脂肪族系のアルコール成分(B)として、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、等のエポキシ化合物も用いることができる。
【0013】
また、本発明では性能に影響を与えない範囲において芳香族ジオールあるいは3価以上の芳香族多価アルコールを併用することもできる。芳香族ジオールあるいは3価以上の芳香族多価アルコールとしては、例えばカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、等が挙げられる。また、下記一般式(I)で表されるビスフェノールA骨格を有する化合物も本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0014】
【化1】
<一般式(1)>
(式中、R1及びR2は、同一又は異なっていても良く、エチレン基又はプロピレン基を示す。また、m、nは、同一又は異なっていても良く、0〜7の整数を示し、かつm+nは0〜7の整数を示す。)
【0015】
下記一般式(I)で表される芳香族ジオールの具体的な化合物としては、例えばビスフェノールA、ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0016】
本発明では脂肪族多価アルコールを反応させたポリエステル樹脂を用いることにより、本発明で使用する帯電制御剤の分散性を良好にすることができる。また、ポリエステル樹脂における分子鎖のフレキシビリティが良好となり、キャリアと混合して二成分現像剤として用いた場合、現像装置内でキャリアが受けるストレスを緩和する効果があり、キャリア表面の樹脂被覆相が剥離するのを防ぎ、結果として現像剤の寿命が延びるという効果が得られる。
【0017】
更に、ポリエステル主鎖が軟質化することにより低温での定着性が改善される。さらに、定着・オフセット性能を改善する目的で、トナー中にワックスを添加することは一般的に用いられる手段であるが、本発明における脂肪族系多価アルコールを用いたポリエステル樹脂では特にワックス類との相溶性が良好であり、低温での定着性能及び耐オフセット性がさらに改良される。
【0018】
したがって、上記芳香族ジオールは本発明の主旨を損なわない範囲で用いる必要がある。上記芳香族ジオールを用いる量は全アルコール成分に対して30モル%以下であることが望ましい。より好ましくは20モル%以下である。
【0019】
また、本発明で使用するポリエステル樹脂を製造するために用いるカルボン酸成分としては、ナフタレンジカルボン酸、及び/またはその低級アルキルエステルとして、ジメチルナフタレート、ジエチルナフタレート、ジブチルナフタレート等がより好適に用いられる。これらの化合物は全酸成分の1モル%以上を用いることが必要であり、より好ましくは5モル%以上である。
【0020】
ナフタレン環構造を含むモノマーは樹脂のTgを上げるのに効果があり、樹脂の耐熱凝集性が向上する。特にアルコール成分として軟質の脂肪族系ジオールを主体に用いた系においては、樹脂のTgの低下を抑えることができ、脂肪族系ジオールを用いることによる低温定着性とナフタレンジカルボン酸による耐熱凝集性の両方を併せ持つ樹脂を得ることができる。
【0021】
本発明で用いるポリエステル樹脂は、例えば触媒の存在下で上記の原料成分(A)(B)を用いて脱水縮合反応或いはエステル交換反応を行うことにより得ることができる。この際の反応温度及び反応時間は、特に限定されるものではないが、通常150〜300℃で2〜24時間である。
【0022】
上記反応を行う際の触媒としては、例えばテトラブチルチタネート、酸化亜鉛、酸化第一錫、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート、パラトルエンスルホン酸等を適宜使用する事が出来る。
【0023】
本発明に用いられるポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上のものが好ましいが、中でも、そのTgが55℃以上のものが特に好ましい。Tgが50℃以下ではトナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。
【0024】
また、本発明に使用されるポリエステル樹脂の軟化点としては、90℃以上、中でも、90℃〜180℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜160℃の範囲である。軟化点が90℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすく、保存時や印字の際にトラブルになりやすく、180℃を越える場合には定着性が悪くなることが多い。
【0025】
さらに、カラートナー用の黒トナーあるいは有彩色のトナーとして、より低温での定着性能が要求される場合には、ポリエステル樹脂の軟化点としては、90℃〜130℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜120℃の範囲である。本発明のポリエステル樹脂の酸価としては、20mgKOH/g以下であることが、トナーの耐湿性が良好となる点で好ましい。
【0026】
本発明では有機ベントナイトを含有する物質を帯電制御剤として用いる。有機ベントナイトとは、有機カチオン形成性化合物とベントナイトを主成分として製造される物質であり、ベントナイトとはSiO2とAl2O3を主とし、モンモリロン石を主成分とした層状構造を有する粘度鉱物である。このような天然の層状化合物であるベントナイトは、イオン交換などによって有機分子を層間に取り込むことができる。ベントナイトの層間には、本来、ナトリウムやカリウムなどの無機の金属カチオンが存在するが、これをイオン交換することによってアルキルアンモニウムイオンなど、有機カチオンをインターカレート(包接)し、有機物と無機物が交互に積層した複合体(層間化合物)が生じる。本発明で帯電制御剤として使用する有機ベントナイトは、ベントナイト中の無機カチオンを有機カチオン形成性化合物から生じる有機カチオンで交換したものである。
【0027】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物としては、公知の化合物を使用できる。例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラペンチルアンモニウムフルオロフォスフェート、テトラエチルアンモニウムベンゾエート、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、トリエチルメチルアンモニウムアイオダイド、等の4級アンモニウム塩がある。
【0028】
また、イソプロピルピリジニウムクロライド、ブチルピリジニウムクロライド、ヘプチルピリジニウムクロライド、デシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド、等のピリジウム塩がある。
【0029】
更に、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、ポリ−(4−ビニルピリジン)、ポリアリルアミン、アミノアセチル化されたポリビニルアルコール、ポリ−(L)−リジン、キトサン、ポリピロール、あるいはジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有アクリレートを含有するビニルモノマーとの共重合体、等から得られるポリマ−性アンモニウム塩がある。
【0030】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物のアニオン成分としては特に限定されるものではないが、安全性あるいは環境保護という観点からは、クロム、コバルト、銅、ニッケル、モリブデン、鉛、水銀、等の重金属を含まないアニオンであることが好ましい。
【0031】
本発明で使用する有機ベントナイトを調製するための方法としては、特に限定されるものではなく、従来用いられているイオン交換操作により製造することができる。例えば、水、水と有機溶媒の混合物、あるいは有機溶媒中にベントナイトを浸漬し、これに有機カチオン形成性化合物を添加して、一定時間放置後、これを濾過洗浄し、乾燥することにより得ることができる。
【0032】
本発明で用いる帯電制御剤は、本発明における樹脂中に均一に分散することができるので、少量で所望の帯電量を得ることができる。
【0033】
帯電制御剤の使用量としてはバインダー樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部の範囲であり、この範囲であると、トナー抵抗の低下もなく十分な帯電性能が得られる。より好ましくは0.3〜5質量部であり、特に、0.5〜3質量部であることが好ましい。
【0034】
なお、本発明では従来公知の帯電制御剤も併用することができる。併用することができる化合物としては、例えば正帯電制御剤としてニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する樹脂等が、負帯電制御剤としてトリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックス等の重金属含有酸性染料、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含有する樹脂、等がある。本発明で用いる帯電制御剤は負帯電性帯電制御剤であるので、その他の帯電制御剤を併用する場合は負の帯電制御剤であることが好ましい。
【0035】
本発明で使用することができる着色剤としては、例えば、黒の着色剤としては製法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、或いは、C.I.Pigment Black 11の鉄酸化物系顔料、C.I.Pigment Black 12の鉄−チタン酸化物系顔料、フタロシアニン系のシアニンブラックBX等があげられる。また、以下に例示する有彩色の顔料を使用して有彩色のトナーとして、あるいは2種類以上の顔料を使用して黒色に調色して使用することもできる。
【0036】
本発明のトナーに使用できる青系の着色剤としては、フタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 1,2,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,17:1,27,28,29,56,60,63等が挙げられる。青系の着色剤として、好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3(一般名フタロシアニンブルーG),15(フタロシアニンブルーR),16(無金属フタロシアニンブルー),60(インダンスロンブルー)が挙げられ、最も好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,60が挙げられる。
【0037】
また、黄色系の着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1,3,4,5,6,12,13,14,15,16,17,18,24,55,65,73,74,81,83,87,93,94,95,97,98,100,101,104,108,109,110,113,116,117,120,123,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,156,168,169,170,171,172,173,180,185等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Yellow 12(一般名ジスアゾイエロー AAA),13(ジスアゾイエロー AAMX),17(ジスアゾイエロー AAOA),97(ファストイエロー FGL),110(イソインドリノンイエロー 3RLT),および155(サンドリンイエロー 4G),180(ベンズイミダゾロン)が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment Yellow 17,155,180が挙げられる。
【0038】
さらに、赤色系着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,15,17,18,22,23,31,37,38,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:3,54,57:1,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,65,66,67,68,81,83,88,90,90:1,112,114,115,122,123,133,144,146,147,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,185,187,188,189,190,193,194,202,208,209,214,216,220,221,224,242,243,243:1,245,246,247等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Red 48:1(一般名バリウムレッド),48:2(カルシウムレッド),48:3(ストロンチウムレッド),48:4(マンガンレッド),53:1(レーキレッド),57:1(ブリリアントカーミン6B),122(キナクリドンマゼンタ 122)および209(ジクロロキナクリドンレッド)が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment
Red 57:1,122および209が挙げられる。
【0039】
これら着色剤の含有量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜15質量%であることが更に好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせて使用することができる。
【0040】
また、本発明の負帯電性トナーには、これまで公知の種々の離型剤、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミド系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のポリオレフィンワックス及び/又は変性ポリオレフィンワックスを用いることができるが、本発明では、特に、高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックス等を離型剤として用いることが好ましい。このようなワックスは本発明のポリエステル樹脂中における分散性が良く、また、離型性、摺動性が良好であり好ましい。これらのワックスをトナー中に添加する場合、同量のポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等ポリオレフィン系ワックスと比較して、より良好な耐ホットオフセット性、定着強度が得られる。
【0041】
また、更に高級脂肪酸エステル化合物及び/または脂肪族アルコール化合物を主成分とするワックスはヒートロール定着時におけるオフセット現象を防止する離型剤としての働きの他に、多数枚、長時間の印刷においても、例えば二成分現像剤用トナーとして用いた場合、キャリア表面に付着することなく、トナーに安定した帯電を与え、飛散トナーの発生等が無く高品位かつ高精細な画像の印刷を可能とする。
【0042】
高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスの中でも、カルナウバワックス、ライスワックス、カイガラムシワックス、モンタン系エステルワックス等の天然物に由来するワックス、合成エステル系ワックスとしてはペンタエリスリトールのテトラベヘン酸エステル、アルコール系ワックスとしてはフィッシャートロプシュワックス等を酸化して得られる高級アルコール系ワックスが特に好ましい。
【0043】
離型剤の融点(滴点、軟化温度)は、60〜180℃であることが好ましく、65〜170℃であることがより好ましい。融点が低すぎる場合、保存中に凝集しやすく、トナーの流動性も低下し易くなる。融点が高すぎる場合、画像の定着工程において溶融しにくく、十分な離型効果を発揮し難い。
【0044】
また、離型剤はキャリア等の帯電部材に固着し、帯電性能の不安定化、画質の劣化の原因となる場合があるので、固着の抑制の観点から、その硬度は高い方が良く、25℃における針入度が5以下のものが好ましく、2以下のものが特に好ましい。
【0045】
天然ワックス、合成エステルワックス、アルコール系ワックスは、構造あるいは遊離酸に起因して、カタログ値で2〜40程度の酸価を有するが、樹脂の場合と同様の理由によりこれらの値は低い方が望ましい。
【0046】
離型剤は、単独で用いても組み合わせて用いても良く、バインダー樹脂に対して0.1〜15質量部、好ましくは1〜5質量部含有させることにより良好な定着オフセット性能が得られる。0.1質量部より少ないと耐オフセット性が損なわれ易く、15質量部より多いとトナーの流動性が悪くなり易く、また、帯電部材への固着により、トナーの帯電特性に悪影響を与え易くなる。
【0047】
本発明のトナーには、トナーの流動性向上、帯電特性改良などトナーの表面改質のために種々の添加剤(外添剤と呼ぶ)を用いることができる。本発明で用いることのできる外添剤としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機微粉体及びそれらをシリコーンオイル、シランカップリング剤などの疎水化処理剤で表面処理したもの、ポリスチレン、アクリル、スチレンアクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン、ナイロン、シリコン、フェノール、フッ化ビニリデン、等の樹脂微粉体等が用いられる。
【0048】
これらの中でも各種のポリオルガノシロキサンやシランカップリング剤等で表面を疎水化処理した二酸化珪素(シリカ)が特に好適に用いることができる。そのようなものとして、例えば、次のような商品名で市販されているものがある。
【0049】
【0050】
外添剤の粒子径はトナーの直径の1/3以下であることが望ましく、特に好適には1/10以下である。また、これらの外添剤は、異なる平均粒子径の2種以上を併用してもよい。外添剤の使用割合はトナー100質量部に対して、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0051】
本発明におけるトナーは、その他の添加剤をトナー粒子内部に含める様にしても良い。一例として、例えば金属石鹸、ステアリン酸亜鉛等の滑剤が、研磨剤として、例えば酸化セリウム、炭化ケイ素等が使用できる。
【0052】
また、着色剤の一部もしくは全部を磁性粉に置き換えた場合には磁性一成分現像用トナーとして用いることができる。磁性粉としては、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属、もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどの合金や化合物の粉末が用いられる。これらの磁性粉は、必要に応じて有機珪素あるいはチタン化合物等により疎水化処理したものも好適に用いられる。磁性粉の含有量はトナー質量に対して15〜70質量%が良い。
【0053】
本発明のトナーは、特定の製造方法によらず極めて一般的な製造方法に依って得る事ができるが、例えば樹脂と着色剤と帯電制御剤とを、樹脂の融点(軟化点)以上で溶融混練した後、粉砕し、分級することにより得ることが出来る。
【0054】
具体的には例えば、上記の樹脂と着色剤を2本ロール、3本ロール、加圧ニーダー、又は2軸押し出し機等の混練手段により混合する。この際、樹脂中に、着色剤等が均一に分散すればよく、その溶融混練の条件は特に限定されるものではないが、通常80〜180゜Cで30秒〜2時間である。着色剤は樹脂中に均一に分散するようにあらかじめフラッシング処理、あるいは樹脂と高濃度で溶融混練したマスターバッチを用いても良い。
【0055】
次いで、それを冷却後、ジェットミル等の粉砕機で微粉砕し、風力分級機等により分級するという方法が挙げられる。トナーを構成する粒子の平均粒径は、特に制限されないが、通常5〜15μmとなる様に調整される。通常、この様にして得られたトナー母体に対しては、トナー母体よりも小さい粒径の微粒子(以下、外添剤と呼ぶ)が、例えばヘンシェルミキサー等の混合機を用いて混合される。
【0056】
本発明の負帯電性トナーを製造する他の方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、あるいは特開平5−66600号公報、特開平8−62891号公報等により開示されている転相乳化法等がある。転相乳化法とは、バインダー樹脂と着色剤等と有機溶剤からなる混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を添加することによりWater in Oilの不連続相を生成させ、さらに水を追加することで、Oil in Waterの不連続相に転相し、そして、更に水性媒体を追加することで水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁液を形成させ、その後、有機溶剤を除去することによりトナー粒子を製造する方法である。
【0057】
本発明におけるトナーは磁性キャリアと混合することにより二成分現像剤として用いることができる。この場合、磁性キャリアの表面は樹脂により被覆されたものであることが望ましい。表面を樹脂で被覆することにより現像剤の帯電が安定する。
【0058】
本発明のトナーを用いて二成分現像剤を作製するキャリアとしては、通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉キャリア、マグネタイトキャリア、フェライトキャリアが使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトキャリアが好適に用いられる。キャリアの形状は球形、不定形等、特に差し支えなく使用できる。平均粒径は一般的には10〜500μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜80μmが好ましい。
【0059】
また、これらのキャリアを樹脂で被覆したコーティングキャリアも好適に使用でき、被覆樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等が使用できる。これらの中でも、特にシリコン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂が帯電安定性、被覆強度等に優れ、より好適に使用し得る。つまり本発明では、磁性キャリアが、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアであることが好ましい。
【0060】
キャリア芯材表面への樹脂の被覆方法は特に手段を選ぶものではないが、被覆樹脂の溶液中に浸漬する浸漬法、被覆樹脂溶液をキャリア芯材表面へ噴霧するスプレー法、あるいはキャリアを流動エアーにより浮遊させた状態で噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被覆樹脂溶液を混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法などが挙げられる。
【0061】
被覆樹脂溶液中に使用される溶剤は被覆樹脂を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が使用できる。キャリア表面への被覆層の厚さは、通常0.1〜3.0μmである。
【0062】
本発明のトナーと、磁性キャリアとの質量割合は特に制限されるものではないが、通常キャリア100質量部当たり、トナー0.5〜10質量部である。
【0063】
こうして得られた本発明の負帯電性トナーは、公知慣用の方法で被記録媒体上に現像され定着されるが、定着方式としては、ヒートロール定着方式を採用するのが好ましい。ヒートロールとしては、トナーを溶融定着しうる温度に加熱できる円筒体の表面を、例えばシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の離型性と耐熱性を兼備するコーティング樹脂で被覆したものが用いられる。ヒートロール定着方式では、上記した様なヒートロールを少なくとも一つ有する適当な圧力にて押圧された二つのロール間を被印刷媒体が通過することによりトナーの定着が行われる。
【0064】
本発明の負帯電性トナーの格別顕著な技術的効果は、より高速で現像され、ヒートロール定着が行われる現像定着装置において発揮される。本発明における被記録媒体としては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、例えば、普通紙、樹脂コート紙等の紙類、PETフィルム、OHPシート等の合成樹脂フィルムやシート等が挙げられる。
【0065】
本発明の負帯電性トナーを用いた現像剤は、通常の二成分現像方式の現像装置で使用することができるが、特に高速処理の現像方式である20m/分以上の、更には30m/分以上の高速機に好適に用いることができる。特に45m/分以上の高速機であっても、カブリの発生が無く、均一な画像濃度において長時間の印刷ができる電子写真用現像剤を提供することができる。
【0066】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下において、組成表内の数値は『質量部』を表わす。最初にトナーを調製するにあたって用いたバインダー樹脂の合成例を下記に示す。
【0067】
(合成例1)
ナフタレンジカルボン酸 87質量部
テレフタル酸 249質量部
ジエチレングリコール 26質量部
ネオペンチルグリコール 104質量部
エチレングリコール 50質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で10時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が101℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価7、DSC測定法によるガラス転移温度70℃、軟化点が102℃であった。
【0068】
(合成例2)
テレフタル酸 315質量部
ジエチレングリコール 21質量部
シクロヘキサンジメタノール 144質量部
エチレングリコール 50質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
以上の原料を用いて合成例1と同様に反応を行った。得られた重合体は、無色の固体であり、酸価9、DSC測定法によるガラス転移温度60℃、軟化点が97℃であった。
【0069】
(合成例3)
イソフタル酸 116質量部
テレフタル酸 166質量部
無水トリメリット酸 38質量部
ジエチレングリコール 26質量部
ネオペンチルグリコール 104質量部
エチレングリコール 50質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で10時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が140℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価5、DSC測定法によるガラス転移温度72℃、軟化点が141℃であった。
【0070】
(合成例4)
ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 1650質量部
イソフタル酸 415質量部
テレフタル酸 415質量部
テトラブチルチタネート 6質量部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて230℃で24時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が99℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価7、DSC測定法によるガラス転移温度62℃、軟化点が103℃であった。
【0071】
(合成例5)
テレフタル酸 283質量部
ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 527質量部
無水トリメリット酸 45質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
【0072】
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で15時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が133℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価5、DSC測定法によるガラス転移温度64℃、軟化点が134℃であった。
【0073】
(帯電制御剤1の合成)
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド15部をメタノール135部に溶解した。これに平均粒径が0.5ミクロンのベントナイト25部を加えて1時間撹拌し、濾別した。脱イオン水で繰り返し洗浄した後、60℃に保った乾燥機により減圧下で24時間乾燥し帯電制御剤1を得た。
【0074】
(帯電制御剤2の合成)
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の40%水溶液16部に平均粒径が0.5ミクロンのベントナイト25部を加えて1時間撹拌し、濾別した。脱イオン水で繰り返し洗浄した後、60℃に保った乾燥機により減圧下で24時間乾燥し帯電制御剤2を得た。
【0075】
(実施例1)
<トナーの製造>
・合成例1の樹脂 93質量部
・モーガルL 4質量部
(カーボンブラック;キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製)
・帯電制御剤1 1質量部
・精製カルナバワックスNo.1 2質量部
(酸価5、セラリカNODA(株)製)
をヘンシェルミキサーで混合し、2軸混練機で混練する。このようにして得た混練物を粉砕、分級して体積平均粒子径7.5μmの「トナー原体1」を得た。
【0076】
・上記「トナー原体1」 100質量部
・日本アエロジル製シリカ「R−812」 1質量部
をヘンシェルミキサーで混合の後、篩いかけをして、実施例1のトナーを得た。
【0077】
<現像剤の調整>
実施例1のトナー4部とシリコン樹脂で被覆されたフェライトキャリア96部を摩擦混合させて実施例1のトナーを用いた現像剤Aを調整した。
【0078】
以下、実施例1と同様に表1の配合にてトナーを製造し直鎖ポリエステル樹脂をバインダー樹脂としたトナーによる現像剤A(実施例1)〜現像剤D(実施例4)、及び現像剤G(比較例1)〜現像剤I(比較例3)を製造した。また、分岐樹脂をバインダー樹脂としたトナーによる現像剤E(実施例5)、及び現像剤F(実施例6)、及び現像剤J(比較例4)〜現像剤N(比較例8)を製造した。
【0079】
【表1】
【0080】
表中の表示は以下の通り。
モーガルL;カーボンブラック「キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製」
T.Y.HG:TONER YELLOW HG (クラリアント製)
B.111:KET BLUE 111 (大日本インキ化学工業製)
Magenta R:Fastogen Super Magenta R(大日本インキ化学工業製)
PETB:高級脂肪酸エステル WEP−5 (日本油脂製)
カルナバWAX:精製カルナバワックスNo.1(酸価5、セラリカNODA(株)製)
E−84;ジサリチル酸亜鉛錯体(オリエント化学製)
TN−105;ジルコニウム錯体系帯電制御剤(保土谷化学製)
LR−147;ジベンジル酸硼素錯体(日本カーリット製)
【0081】
<ヒートロール定着による定着オフセットテスト>
市販の二成分現像方式の複写機を改造したテスト機にてA−4紙サイズの未定着画像サンプルを作製し、下記仕様のヒートロール定着ユニットを用いて、下記のテスト条件にて定着開始温度、およびオフセット現象の有無を確認した。
定着開始温度を測定するため下記の式により計算される画像濃度残存比率を求めた。
【0082】
画像濃度残存比率=堅牢度試験後画像濃度/同左試験前画像濃度
*画像濃度はマクベス画像濃度計RD−918にて測定した。
*堅牢度試験後画像濃度とは、学振型摩擦堅牢度試験機(荷重:200g、擦り操作:5ストローク)を用いて定着画像を擦った後の画像濃度である。
画像濃度残存比率80%以上で実用上問題ないレベルとし、その最低温度を定着開始温度とした。
【0083】
オフセット開始温度は定着画像サンプルを観察し、目視にてオフセット現象が認められる温度とした。結果を表2に示した。
【0084】
<帯電の立ち上がり比較>
現像剤50gが入った100ccのポリエチレン容器を115rpmのボールミルで3分撹拌した後、現像剤を採取し、ブローオフ帯電量測定機で帯電量を測定した。さらに7分撹拌(計10分)し、同様に帯電量を測定した。試験結果を表2に示す。
【0085】
<印刷耐久テスト>
市販の高速プリンター(A4紙220枚/分、約45m/分)を用いて50000枚の連続プリントにおける画像部の濃度及び地汚れ濃度を測定すると共に、現像剤の帯電量を測定した。画像濃度及び地汚れはマクベス濃度計RD−918で測定した。なお、地汚れは印刷後の白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。その差が0.01未満の時を○、0.01〜0.03未満の時を△、0.03以上の時を×とした。
【0086】
帯電量については印字枚数毎にトナーを現像装置内部から採取して、ブローオフ帯電量測定機で測定した。結果を表3に示した。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
表中の表示は次の通り。
「帯電量」; μC/g
「地汚れ評価」○:0.01未満、△:0.01〜0.03未満,×:0.03以上
【0090】
【発明の効果】
本発明の負帯電性トナーによれば、高速の現像速度においても地汚れのない画像を得ることができ、現像装置内のトナーの飛散を低減でき、現像剤の使用初期から終了時に至るまで安定した画像を得ることができる。また、低温定着性に優れ、幅広い温度領域で良好な定着・オフセット特性を得ることができる。
Claims (4)
- バインダー樹脂と着色剤と帯電制御剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が、
(A)2価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物
(B)2価以上の脂肪族多価アルコール
とを主成分として反応させたポリエステル樹脂であり、前記帯電制御剤が有機ベントナイトを含有することを特徴とする負帯電性トナー。 - 前記多塩基酸化合物として、1モル%以上のナフタレンジカルボン酸、及び/またはその酸無水物、及び/またはその低級アルキルエステルを用いる請求項1記載の負帯電性トナー。
- 更に離型剤として高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスを含む請求項1記載の負帯電性トナー。
- シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアと請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の負帯電性トナーを含有する静電荷像現像剤。
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