JP2003342070A - 圧電磁器組成物及びその製造方法並びに圧電素子 - Google Patents
圧電磁器組成物及びその製造方法並びに圧電素子Info
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Abstract
つ機械的品質係数が高く誘電損失が小さい圧電磁器組成
物及びその製造方法,並びに該圧電磁器組成物を利用し
た圧電素子を提供すること。 【解決手段】 一般式{Lix(K1-yNay)1-x}(N
b1-zTaz)O3で表され,かつx,y,zがそれぞれ
0≦x≦0.2,0≦y≦1.0,0≦z≦0.4の組
成範囲にある化合物を主成分とする圧電磁器組成物であ
って,該圧電磁器組成物は,ニッケル又はニッケルを含
有して成る化合物を含有する。
Description
磁器組成物及びその製造方法並びに,該圧電磁器組成物
を材料とする圧電素子に関する。
含んだPZT(PbTiO3−PbZrO3)成分系磁器
が用いられてきた。上記PZTは,電気機械結合係数や
圧電定数等の圧電特性に優れており,上記PZTを利用
した圧電素子は,センサ,アクチュエータ,フィルター
等に広く利用されている。
成物は,優れた特性を有する一方で,その構成元素に鉛
を含んでいるため,PZTを含んだ製品の産業廃棄物か
ら有害な鉛が溶出し,環境汚染を引き起こすおそれがあ
った。そして,近年の環境問題に対する意識の高まり
は,PZTのように環境汚染の原因となりうる製品の製
造を困難にしてきた。そのため,組成中に鉛を含有しな
い圧電磁器組成物の開発が求められ,一般式(K1-xN
ax)NbO3(但し,0<x<1)で表される圧電磁器
組成物(非特許文献1参照)が注目されてきた。
American Ceramic Societ
y”,米国,1962,Vol.45,No.5,p.
209
(K1-xNax)NbO3(但し,0<x<1)で表され
る圧電磁器組成物は,焼成が困難であるためホットプレ
ス焼成を行う必要がある。そのため,製造コストが高く
なるという問題があった。また,上記圧電磁器組成物は
機械的品質係数Qmが低く,また誘電損失が大きいとい
う問題があった。そのため,上記一般式(K1-xNax)
NbO3(但し,0<x<1)で表される圧電磁器組成
物は,PZTに代わる新しい圧電磁器組成物として有望
視されているものの,ほとんど実用化には至っていな
い。それ故,上記の一般式で表される圧電磁器組成物が
開発された後も,環境汚染のおそれがあるPZT等の鉛
系圧電磁器組成物が広く利用されているのが現状であ
る。
されたもので,鉛を含まず,常圧にて焼成が可能であ
り,かつ機械的品質係数が高く誘電損失が小さい圧電磁
器組成物及びその製造方法,並びに該圧電磁器組成物を
利用した圧電素子を提供しようとするものである。
1-yNay)1-x}(Nb1-zTaz)O3で表され,かつ
x,y,zがそれぞれ0≦x≦0.2,0≦y≦1.
0,0≦z≦0.4の組成範囲にある化合物を主成分と
する圧電磁器組成物であって,該圧電磁器組成物は,ニ
ッケル又はニッケルを含有してなる化合物を含有するこ
とを特徴とする圧電磁器組成物にある(請求項1)。
ニッケルを含有してなる化合物の含有形態としては,上
記一般式{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-zTaz)
O3で表される化合物におけるLi,K,Na,Nb,
Taのいずれか1種以上を,Ni原子に置換して配置す
る形態や,ニッケル又はニッケルを含有して成る化合物
をニッケル又は化合物の状態で含有する形態がある。次
に,本発明の作用効果につき説明する。本発明の圧電磁
器組成物は,上記一般式{Lix(K1-yNay)1-x}
(Nb1- zTaz)O3で表され,組成物中に鉛を含有し
ていない。そのため,上記圧電磁器組成物は,該圧電磁
器組成物の廃棄物等から有害な鉛が自然界に流出するこ
とがなく,安全である。
がそれぞれ上記の範囲にある。そのため,後述する実施
例でも明らかとなるように,上記圧電磁器組成物は,機
械的品質係数Qmが高く,かつ誘電損失が小さい。そし
て,上記圧電磁器組成物は,常圧下での焼成によっても
充分に緻密化することができる。
ず,常圧にて焼成が可能であり,かつ機械的品質係数が
高く誘電損失が小さい圧電磁器組成物を提供することが
できる。なお,本発明,及び後述する第2及び第3の発
明における圧電磁器組成物は,圧電特性を有する磁器組
成物に限らず,誘電特性を有する誘電磁器組成物をも含
む概念である。
y)1-x}(Nb1-zTaz)O3で表され,かつx,y,
zがそれぞれ0≦x≦0.2,0≦y≦1.0,0≦z
≦0.4の組成範囲にある圧電磁器組成物と,ニッケル
又はニッケルを含有してなる化合物とを,混合,焼成す
ることを特徴とする圧電磁器組成物の製造方法にある
(請求項9)。
く,一般式{Lix(K1-yNay)1 -x}(Nb1-zT
az)O3で表され,かつx,y,zがそれぞれ0≦x≦
0.2,0≦y≦1.0,0≦z≦0.4の組成範囲に
ある圧電磁器組成物と,ニッケル又はニッケルを含有し
てなる化合物とを,混合,焼成する。これにより上記混
合及び焼成時に,上記一般式{Lix(K1-yN
ay)1-x}(Nb1-zTaz)O3で表される圧電磁器組
成物にニッケル又はニッケルを含有して成る化合物を容
易に含有させることができる。
電磁器組成物を焼成することができる。そしてこれによ
り,上記圧電磁器組成物,即ち鉛を含有せず,機械的品
質係数Qmが高く,かつ誘電損失が小さい圧電磁器組成
物を容易に得ることができる。
合物と,ナトリウムを含有してなる化合物と,カリウム
を含有してなる化合物と,ニオブを含有してなる化合物
と,タンタルを含有してなる化合物と,ニッケルを含有
してなる化合物とを混合,焼成することを特徴とする圧
電磁器組成物の製造方法にある(請求項10)。
ムを含有してなる化合物と,ナトリウムを含有してなる
化合物と,カリウムを含有してなる化合物と,ニオブを
含有してなる化合物と,タンタルを含有してなる化合物
と,ニッケルを含有してなる化合物とを混合,焼成す
る。これにより上記混合及び焼成時に,一般式{Lix
(K1-yNay)1-x}(Nb 1-zTaz)O3で表される圧
電磁器組成物にニッケル又はニッケルを含有してなる化
合物を容易に含有させることができる。
電磁器組成物を焼成することができる。そして,混合及
び焼成後に得られる圧電磁器組成物は,鉛を含有せず,
機械的品質係数Qmが高く,かつ誘電損失が小さいもの
となる。
物よりなる圧電体を有することを特徴とする圧電素子に
ある(請求項12)。
ix(K1-yNay)1-x}(Nb1-zTaz)O3で表さ
れ,かつx,y,zがそれぞれ0≦x≦0.2,0≦y
≦1.0,0≦z≦0.4の組成範囲にある化合物を主
成分とする圧電磁器組成物であって,該圧電磁器組成物
は,ニッケル又はニッケルを含有して成る化合物を含有
することを特徴とする圧電磁器組成物よりなる圧電体を
用いている。そのため,上記圧電素子は,上記圧電磁器
組成物の,鉛を含有せず,機械的品質係数Qmが高く,
かつ誘電損失が小さいという優れた特性をそのまま利用
することができる。
磁器組成物の製造方法により製造される圧電磁器組成物
よりなる圧電体を有することを特徴とする圧電素子にあ
る(請求項13)。
造方法により得られる圧電磁器組成物を圧電体として用
いている。そのため,上記圧電素子は,上記圧電磁器組
成物が有する優れた特性をそのまま利用することができ
る。
成物は,一般式{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z
Taz)O3で表され,かつx,y,zがそれぞれ0≦x
≦0.2,0≦y≦1.0,0≦z≦0.4の組成範囲
にある。ここで,x>0.2,z>0.2の場合には,
上記圧電磁器組成物の機械的品質係数Qmが低下し,又
は誘電損失が大きくなり,所望の圧電特性を有する圧電
磁器組成物を得ることができない。
記ニッケル又はニッケルを含有して成る化合物の含有量
は,上記主成分1molに対してニッケル元素換算量で
10mol%以下であることが好ましい(請求項2)。
上記ニッケル又はニッケルを含有して成る化合物の含有
量がニッケル元素換算量で10mol%を越える場合に
は,上記圧電磁器組成物の圧電d31定数が低下し,上記
圧電磁器組成物を圧電素子として利用することが困難に
なるおそれがある。また,上記含有量が0.01mol
%未満の場合には,機械的品質係数Qmが上記従来の圧
電磁器組成物と比べて向上しないおそれがある。そのた
め,上記ニッケル又はニッケルを含有して成る化合物の
含有量は,0.01mol%以上であることが好まし
い。
において,Li,K,Na,Nb,Taのいずれか1種
以上と置換されたニッケルを含有していることが好まし
い(請求項3)。この場合にも上記圧電磁器組成物は,
ニッケルを含有しているので,上述したごとく,機械的
品質係数が高く誘電損失が小さいという優れた特性を示
すことができる。
係数Qmが200以上であることが好ましい(請求項
4)。この場合には,上記200以上という高い機械的
品質係数Qmを活かして,上記圧電磁器組成物を,発熱
が少なく電気的エネルギーと機械的エネルギーの変換効
率に優れた圧電素子,例えば圧電アクチュエータ,圧電
超音波モータ,圧電トランス,圧電振動子等として利用
することができる。
度が200℃以上であることが好ましい(請求項5)。
この場合には,200℃以上という高いキュリー温度を
活かして,上記圧電磁器組成物を,例えば自動車のエン
ジン付近等のように高温度の環境下にて利用することが
できる。
数が30pm/V以上であることが好ましい(請求項
6)。この場合には,上記30pm/V以上という高い
圧電d31定数を活かして,上記圧電磁器組成物を感度の
高いセンサ素子等として利用することができる。
合係数Kpが0.25以上であることが好ましい(請求
項7)。この場合には,上記0.25以上という高い電
気機械結合係数Kpを活かして,上記圧電磁器組成物を
機械エネルギーと電気エネルギーの変換効率に優れた圧
電アクチュエータ,圧電振動子等として利用することが
できる。
0.035以下であることが好ましい(請求項8)。こ
の場合には,0.035以下という低い誘電損失を活か
して,上記圧電磁器組成物を誘電損失に起因する誘電損
失ノイズの少ないセンサ素子等として利用することがで
きる。
は,リチウムを含有してなる化合物はLi2CO3であ
り,ナトリウムを含有してなる化合物はNa2CO3であ
り,カリウムを含有してなる化合物はK2CO3であり,
ニオブを含有してなる化合物はNb2O5であり,タンタ
ルを含有してなる化合物はTa2O5であり,ニッケルを
含有してなる化合物はNiOであることが好ましい(請
求項11)。この場合には,容易に上記圧電磁器組成物
を作製することができる。
の発明(請求項13)において,上記圧電素子として
は,例えば圧電振動子,表面波フィルター素子,圧電セ
ンサ素子,アクチュエータ素子,超音波モータ素子,圧
電トランス素子,圧電ジャイロセンサ素子,ノックセン
サ素子等がある。
組成物につき説明する。本例では,上記の圧電磁器組成
物を製造し,該圧電磁器組成物の圧電特性を測定した。
本例の圧電磁器組成物は,一般式{Lix(K1-yN
ay)1-x}(Nb1-zTaz)O3で表され,かつx,
y,zがそれぞれ0≦x≦0.2,0≦y≦1.0,0
≦z≦0.4の組成範囲にある化合物を主成分とする圧
電磁器組成物である。そして該圧電磁器組成物は,ニッ
ケル又はニッケルを含有して成る化合物を含有する。以
下,本例の圧電磁器組成物の製造方法につき説明する。
は,リチウムを含有してなる化合物と,ナトリウムを含
有してなる化合物と,カリウムを含有してなる化合物
と,ニオブを含有してなる化合物と,タンタルを含有し
てなる化合物と,ニッケルを含有してなる化合物とを混
合,焼成する。
なる化合物としてLi2CO3を,ナトリウムを含有して
なる化合物としてNa2CO3を,カリウムを含有してな
る化合物としてK2CO3を,ニオブを含有してなる化合
物としてNb2O5を,タンタルを含有してなる化合物と
してTa2O5を,ニッケルを含有してなる化合物として
NiOを準備し,上記圧電磁器組成物の原料とした。こ
れらの原料としては純度99%以上の高純度のものを準
備した。
(K1-yNay)1-x}(Nb1-zTaz)O3において,x
=0.1,y=0.5,z=0.1となるように配合
し,さらにNiOをニッケル元素換算で1mol%配合
した。配合後の原料をボールミルによりアセトン中にて
24時間混合して原料混合物を作製した。
間仮焼し,この仮焼後の原料混合物をボールミルにて2
4時間粉砕した。続いて,バインダーとしてポリビニー
ルブチラールを添加し,造粒した。造粒後の粉体を圧力
2ton/cm2にて,直径13mm,厚さ2mmの円
盤状に加圧成形し,成形体を常圧下,1000〜130
0℃にて1時間焼成した。ここで,焼成後の成形体は相
対密度98%以上に緻密化されていた。
し,円形研磨した後,この円盤試料の両面にスパッタ法
により金電極を設けた。そして,100℃のシリコーン
オイル中にて1〜5kV/mmの直流電圧を10分間電
極間に印加し,厚み方向に分極を施して本例の圧電磁器
組成物(本発明品)とした。
組成物について,機械的品質係数Qm,キュリー温度,
圧電d31定数,電気機械結合係数Kp,誘電損失,比誘
電率及び径方向の周波数定数Npを測定した。ここで機
械的品質係数Qm,圧電d31定数,電気機械結合係数K
p及び周波数定数Npは,インピーダンスアナライザー
を用いて共振−反共振法により測定した。また,誘電損
失及び比誘電率は,インピーダンスアナライザーを用い
て,測定周波数1kHzにて測定し,キュリー温度は,
上記圧電磁器組成物の温度を一分当たり2℃ずつ600
℃まで上げながら比誘電率を測定し,該比誘電率が最も
高いときの温度をもってキュリー温度とした。その結果
を表1に示す。
た特性を明らかにするために,以下のようにして比較品
を作製した。まず,比較品の原料として,純度99%以
上の高純度のLi2CO3,Na2CO3,K2CO3,Nb
2O5及びTa2O5を準備した。これらの原料を上記一般
式{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-zTaz)O3に
おいて,x=0.1,y=0.5,z=0.1となるよ
うに配合した。配合後の原料をボールミルによりアセト
ン中にて24時間混合して原料混合物を作製した。
間仮焼し,上記本発明品と同様にして,ボールミルにて
24時間粉砕,造粒した。造粒後の粉体を圧力2ton
/cm2にて,直径13mm,厚さ2mmの円盤状に加
圧成形し,成形体を常圧下,1000〜1300℃にて
1時間焼成した。ここで,焼成後の成形体は相対密度9
8%以上に緻密化されていた。
し,上記本発明品と同様に,金電極を設けた。そして,
100℃のシリコーンオイル中にて1〜5kV/mmの
直流電圧を10分間電極間に印加し,厚み方向に分極を
施して比較品とした。
も,機械的品質係数Qm,キュリー温度,圧電d31定
数,電気機械結合係数Kp,誘電損失,比誘電率及び径
方向の周波数定数Npを測定した。各測定値の測定方法
は,本発明品の場合と同様とした。その結果を表1に示
す。
的品質係数Qmは,比較品に比べて4倍以上高い値を示
した。したがって,本発明品の圧電磁器組成物は,発熱
の少ない圧電アクチュエータ,超音波モータ,圧電トラ
ンス,圧電振動子部品等に利用することができる。な
お,上記圧電磁器組成物をこのような圧電素子として用
いる場合には,上記機械的品質係数Qmは200以上で
あることが好ましい。
数Qmに加えて,圧電d31定数においても比較品より高
い値を示した。一般に,上記圧電d31定数は,電荷検出
型回路あるいは電流検出型回路を用いた場合には,加速
度センサ,加重センサ,衝撃センサ及びノックセンサ等
の圧電型センサの出力電圧に比例する。その点からみる
と,圧電d31定数が高い圧電磁器組成物ほど電荷センサ
出力の大きなセンサを作ることができる。そして,比較
品と同等以上の特性を有するセンサを作製するには,少
なくとも30pm/V以上の圧電d31定数を有し,かつ
200以上の機械的品質係数Qmを有することが好まし
い。
においても,比較品よりも高い値を示した。一般に上記
電気機械結合係数Kpは,圧電トランス素子,超音波モ
ータ素子,又は超音波振動子等の電気変換効率に比例す
る。その点からみると,電気機械結合係数Kpが高い圧
電磁器組成物ほど電気変換効率の高い圧電トランス素
子,超音波モータ素子,又は超音波振動子を作ることが
できる。そして,比較品と同等以上の特性を有する圧電
トランス素子,超音波モータ素子,又は超音波振動子を
作製するには,少なくとも0.25以上の電気機械結合
係数Kpを有し,かつ200以上の機械的品質係数Qm
を有することが好ましいといえる。
べて3分の1以下の値を示した。したがって,本発明品
の圧電磁器組成物は,誘電損失に起因する誘電損失ノイ
ズの少ないセンサ等に利用することができる。なお,こ
のような誘電損失ノイズの少ないセンサ圧電素子として
上記圧電磁器組成物を用いる場合には,上記誘電損失は
0.035以下であることが好ましい。
℃という高い値を示した。そのため,本発明品の圧電磁
器組成物は,自動車のエンジン付近等の高温度部におい
ても長時間安定に使用することができるノックセンサ等
の高温用センサ部品等として利用することができる。な
お,上記高温用センサ部品等として長時間安定に使用す
るためには,上記キュリー温度は,200℃以上である
ことが好ましい。
高く,725という高い値を示した。そのため,本発明
品の圧電磁器組成物は,圧電体のみならず誘電体として
も利用することができる。そして,上記比誘電率は,一
般に積層コンデンサ部品等のコンデンサの静電容量に比
例する。その点からみると,上記比誘電率が高い圧電磁
器組成物ほど静電容量の大きなコンデンサを作ることが
できる。本発明品の圧電磁器組成物は,上記のような高
い比誘電率を有しているため,大きな静電容量を有する
コンデンサ等に利用することができる。
よりも高い値を示した。そのため,本発明品の圧電磁器
組成物を用いると,周波数が高くかつ小型の圧電振動子
部品を作製することができる。
1-x}(Nb1-zTaz)O3の上記組成範囲内(0≦x≦
0.2,0≦y≦1.0,0≦z≦0.4)において,
上記本発明品とは異なる組成範囲についても本例と同様
に圧電磁器組成物を作製し圧電特性の測定をおこなった
ところ,本例と同様の効果が得られることを確認でき
た。
て圧電磁器組成物を作製した例である。具体的には,ま
ず実施例1と同様に,上記リチウムを含有してなる化合
物としてLi2CO3を,ナトリウムを含有してなる化合
物としてNa2CO3を,カリウムを含有してなる化合物
としてK2CO3を,ニオブを含有してなる化合物として
Nb2O5を,タンタルを含有してなる化合物としてTa
2O5を,ニッケルを含有してなる化合物としてNiOを
準備し,上記圧電磁器組成物の原料とした。これらの原
料としては純度99%以上の高純度のものを準備した。
(K1-yNay)1-x}(Nb1-zTaz)O3において,x
=0.1,y=0.5,z=0.1となるように,即ち
Li0 .1(K0.45Na0.45)(Nb0.9Ta0.1)O3とな
るように配合し,さらにLi0 .1(K0.45Na0.45)
(Nb0.9Ta0.1)O31molに対して,NiOをニ
ッケル元素換算で,それぞれ0.1mol%,0.5m
ol%,2mol%,及び5mol%となるように配合
し,4種類の配合物を得た。続いてこれらの配合物をボ
ールミルによりアセトン中にて24時間混合して原料混
合物を作製した。
料混合物を仮焼し,粉砕し,バインダーとしてポリビニ
ールブチラールを添加し,造粒した。さらに,実施例1
と同様にして,造粒後の粉体を加圧成形し,焼成した。
ここで,焼成後の成形体は相対密度98%以上に緻密化
されていた。
磨し,円形研磨した後,この円盤試料の両面にスパッタ
法により金電極を設けた。そして,100℃のシリコー
ンオイル中にて1〜5kV/mmの直流電圧を10分間
電極間に印加し,厚み方向に分極を施して4種類の圧電
磁器組成物を作製した。これらをそれぞれ試料E1,試
料E2,試料E4,及び試料E5とした。上記試料E
1,E2,E4,及びE5は,いずれもLi0.1(K
0.45Na0.45)(Nb0.9Ta0.1)O3を主成分とし,
Niの含有量だけが互いに異なっている。ここで,試料
E1は,1molのLi0.1(K0.45Na0.45)(Nb
0.9Ta0. 1)O3に対して,0.1mol%のNiを含
有するものである。同様に,試料E2,試料E4,試料
E5は,1molのLi0.1(K0.45Na0.45)(Nb
0.9Ta0.1)O3に対して,それぞれ0.5mol%,
2mol%,及び5mol%のNiを含有するものであ
る。
5について,機械的品質係数Qm,圧電d31定数,電気
機械結合係数Kp,誘電損失,比誘電率及び径方向の周
波数定数Npを測定した。測定方法は,実施例1と同様
である。その結果を表2に示す。なお,表2には,比較
のため,実施例1の本発明品及び比較品をそれぞれ試料
E3及び試料Cとし,その圧電特性及び誘電特性の結果
を併せて表記した。なお,試料E3は,1molのLi
0.1(K0.45Na0.45)(Nb0.9Ta0.1)O3に対し
て,1mol%のNiを含有するものであり,試料C
は,Niを含有していないものである。
E5の機械的品質係数Qmは,すべて,試料Cの108
という値よりも大きかった。特に,Ni含有量が1mo
l%(試料E3)のときに最大となり,このとき機械的
品質係数Qmは,457という試料C1の4倍を越える
非常に大きな値を示した。このように高い機械的品質係
数Qmを生かして,上記試料E1〜試料E5の圧電磁器
組成物は,発熱の少ない優れた圧電アクチュエータ,圧
電超音波モータ,圧電トランス,及び圧電振動子部品等
に利用することができる。
は,すべて,試料Cの39.6pm/Vという値よりも
大きく,また電気機械結合係数Kpもすべて,試料Cの
0.292という値よりも大きかった。圧電d31定数及
び電気機械結合係数Kpは,特にNi含有量が2mol
%(試料E4)のときに最大となり,それぞれ50.5
pm/V,0.356という非常に大きな値を示した。
検出型回路を用いた場合の,加速度センサ,荷重セン
サ,衝撃センサ,及びノックセンサ等の圧電型センサの
出力電圧に比例する。そのため,上記試料E1〜試料E
5は,その高い圧電d31定数を生かして,感度の高く,
センサ出力電圧の大きなセンサに利用することができ
る。
すべて,試料Cの672という値と同等以上の高い値を
示した。特に,Ni含有量が5mol%(試料E5)の
ときに最大となり,このとき比誘電率は822という非
常に大きな値を示した。そのため,本発明の圧電磁器組
成物は,圧電体のみならず,優れた誘電体としても利用
することができる。
等のコンデンサの静電容量に比例する。その点からみる
と,比誘電率の高い圧電磁器組成物ほど静電容量の大き
なコンデンサを作製することができる。上記試料E1〜
E5は,その優れた比誘電率を生かして,大きな静電容
量を有するコンデンサ等に利用することができる。
すべて,試料Cの0.0388という値よりも小さかっ
た。特に,Ni含有量が1mol%(試料E3)のとき
に,最小となり,このとき誘電損失は0.0123とい
う試料C1の3分の1未満の非常に小さい値を示した。
このように小さい誘電損失を生かして,上記試料E1〜
試料E5の圧電磁器組成物は,誘電損失に起因する誘電
損失ノイズの少ないセンサ等に利用することができる。
pは,すべて,試料Cの2579という値よりもすべて
大きかった。特に,Ni含有量が0.1mol%(試料
E1)のときに最大となり,このとき,周波数定数は2
747という非常に大きな値を示した。このように高い
周波数定数Npを生かして,上記試料E1〜試料E5の
圧電磁器組成物は,例えば試料Cと同じ周波数の振動子
を作製する場合に,より小さな圧電振動子部品を作製す
ることが可能である。
含有量を10mol%を越えて増加させると,圧電磁器
組成物の圧電d31定数が低下することを確認している。
そのため,この場合には,圧電素子への適用が困難にな
ってしまうおそれがある。
1-x}(Nb1-zTaz)O3の上記組成範囲内(0≦x≦
0.2,0≦y≦1.0,0≦z≦0.4)において,
上記試料E1〜試料E5とは異なる組成範囲についても
本例と同様に圧電磁器組成物を作製し圧電特性の測定を
おこなったところ,本例と同様の効果が得られることを
確認できた。
Claims (13)
- 【請求項1】 一般式{Lix(K1-yNay)1-x}(N
b1-zTaz)O3で表され,かつx,y,zがそれぞれ
0≦x≦0.2,0≦y≦1.0,0≦z≦0.4の組
成範囲にある化合物を主成分とする圧電磁器組成物であ
って,該圧電磁器組成物は,ニッケル又はニッケルを含
有して成る化合物を含有することを特徴とする圧電磁器
組成物。 - 【請求項2】 請求項1において,上記ニッケル又はニ
ッケルを含有して成る化合物の含有量は,上記主成分1
molに対してニッケル元素換算量で10mol%以下
であることを特徴とする圧電磁器組成物。 - 【請求項3】 請求項1又は2において,上記圧電磁気
組成物は,上記一般式において,Li,K,Na,N
b,Taのいずれか1種以上と置換されたニッケルを含
有していることを特徴とする圧電磁器組成物。 - 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項において,
上記圧電磁器組成物は,機械的品質係数Qmが200以
上であることを特徴とする圧電磁器組成物。 - 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項において,
上記圧電磁器組成物は,キュリー温度が200℃以上で
あることを特徴とする圧電磁器組成物。 - 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項において,
上記圧電磁器組成物は,圧電d31定数が30pm/V以
上であることを特徴とする圧電磁器組成物。 - 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項において,
上記圧電磁器組成物は,電気機械結合係数Kpが0.2
5以上であることを特徴とする圧電磁器組成物。 - 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項において,
上記圧電磁器組成物は,誘電損失が0.035以下であ
ることを特徴とする圧電磁器組成物。 - 【請求項9】 一般式{Lix(K1-yNay)1-x}(N
b1-zTaz)O3で表され,かつx,y,zがそれぞれ
0≦x≦0.2,0≦y≦1.0,0≦z≦0.4の組
成範囲にある圧電磁器組成物と,ニッケル又はニッケル
を含有してなる化合物とを,混合,焼成することを特徴
とする圧電磁器組成物の製造方法。 - 【請求項10】 リチウムを含有してなる化合物と,ナ
トリウムを含有してなる化合物と,カリウムを含有して
なる化合物と,ニオブを含有してなる化合物と,タンタ
ルを含有してなる化合物と,ニッケルを含有してなる化
合物とを混合,焼成することにより請求項1〜8のいず
れか一項に記載の圧電磁器組成物を得ることを特徴とす
る圧電磁器組成物の製造方法。 - 【請求項11】 請求項10において,リチウムを含有
してなる化合物はLi2CO3であり,ナトリウムを含有
してなる化合物はNa2CO3であり,カリウムを含有し
てなる化合物はK2CO3であり,ニオブを含有してなる
化合物はNb 2O5であり,タンタルを含有してなる化合
物はTa2O5であり,ニッケルを含有してなる化合物は
NiOであることを特徴とする圧電磁器組成物の製造方
法。 - 【請求項12】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の
圧電磁器組成物よりなる圧電体を有することを特徴とす
る圧電素子。 - 【請求項13】 請求項9〜11のいずれか1項に記載
の圧電磁器組成物の製造方法により製造される圧電磁器
組成物よりなる圧電体を有することを特徴とする圧電素
子。
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