JP2003318005A - Ptc素子 - Google Patents

Ptc素子

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JP2003318005A
JP2003318005A JP2002117467A JP2002117467A JP2003318005A JP 2003318005 A JP2003318005 A JP 2003318005A JP 2002117467 A JP2002117467 A JP 2002117467A JP 2002117467 A JP2002117467 A JP 2002117467A JP 2003318005 A JP2003318005 A JP 2003318005A
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Japan
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temperature
ptc element
conductive composition
resistance
resistance value
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Application number
JP2002117467A
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English (en)
Inventor
Hajime Tsujiha
一 辻葩
Hiroto Komatsu
博登 小松
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Shin Etsu Polymer Co Ltd
Shin Etsu Chemical Co Ltd
Original Assignee
Shin Etsu Polymer Co Ltd
Shin Etsu Chemical Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【解決課題】 室温域での低抵抗化を図りながらも、低
抵抗の安定域の終点付近から急激な抵抗上昇を呈して、
リチウムイオン電池などの電池耐久温度に見合った十分
な抵抗値上昇を示すPTC素子を提供すること。 【解決手段】 本発明に係るPTC素子は、室温領域で
の素子自体の基準抵抗値R0が30mΩ以下にあり、基
準抵抗値R0の3倍に相当する温度をT℃とし、該温度
T+20℃における素子抵抗値が20Ω以上となるよう
に設計し、温度20±5℃における導電性組成物の抵抗
率S0を1.01Ω・cm以上とすることを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電器機の回路もし
くは電器機に内蔵された電池や部品を保護するためのP
TC素子(温度に依存して電気抵抗が増加する特性を有
する素子)及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】PTC素子は、セラミック系と高分子系に
大別されるが、後者は高分子を構成成分とするシート状
物の表裏に、ニッケルなどの金属からなる電極が貼着さ
れた形態をしている。そして、このシート状物を構成す
る導電性を有する組成物(以下、導電性組成物)は、高
分子に導電性微粒子が分散してなる系であって、正常な
電流が供給されている時には低抵抗であり、突発的な過
電流の発生時には高抵抗になって導通を遮断することで
回路を保護するといった機能や、長時間の使用時に回路
などから発生する熱より電池が破裂するといった事故が
起きないように、電池耐久限界温度に達する前に、導通
を遮断して電池を保護するといった働きをする。
【0003】一般にこの遮断機能を高めるために、導電
性組成物に高密度ポリエチレンに代表される結晶化度の
高い高分子が使用されている。結晶化度の高いポリエチ
レンが用いられる理由は、過負荷時の発熱温度がポリエ
チレンの融点に達すると、該ポリエチレンの結晶が溶融
して体積が急激に膨張し、個々の導電性微粒子同士の距
離が広がるので、その結果、抵抗値が急激に上昇する
(以下、トリップ)ためである。
【0004】従来のPTC素子における温度と抵抗値の
挙動の一例として、携帯電話などに使用されている角型
リチウムイオン電池用PTC素子における抵抗値の挙動
を図5に示す。電器機製品は温度60℃程度の温度まで
正常に機能するような設計になっている。例えば、温度
60℃におけるPTC素子の抵抗値は温度20℃におけ
る抵抗値に対して約1.5倍程度の抵抗上昇に留まるよ
うに設計され、温度60℃以下の温度域では電池から正
常な電流が供給されている。
【0005】そして、この素子は温度80℃付近でトリ
ップが開始して急激な抵抗上昇を呈する。尚、図5にお
ける関係曲線は温度80℃付近で変曲点を有し、温度8
0℃付近までは比例関数的に抵抗上昇を呈し、温度80
℃付近を超えると指数関数的に上昇する。かかる変曲点
が正確なトリップ温度とされるが、近年では室温抵抗値
の3倍程度になる温度がトリップ開始温度として取り扱
われている。例えば、角型リチウムイオン電池は温度9
0℃付近で暴発の危険が高まるといわれ、この電池には
温度80℃付近でトリップを開始するPTC素子が用い
られ、このような素子は温度80℃付近で室温抵抗の3
倍にまで、比例的に抵抗上昇を呈し、温度80℃付近か
ら指数関数的に上昇する。尚、100℃以上では少なく
とも10Ω以上にまでPTC素子の抵抗値が上昇して導
通を遮断することが望まれている。また、PTC素子の
トリップは、最終的に10kΩオーダまでになる余力を
有することも望まれている。
【0006】一般に角型リチウムイオン電池用PTC素
子は、温度100℃での抵抗値は高ければ高いほど、遮
断後の漏れ電流が小さくなり安全性が高められるので好
ましいとされ、近年、温度100℃において20Ω以上
になるような急激な抵抗上昇を呈するPTC素子が望ま
れている。尚、ノート型パソコンなどに使用されている
筒型リチウムイオン電池は、上記電池と異なって防爆機
構があり、過電流の放出を防ぐためのPTC素子が導入
されているが、この素子は温度120℃付近でトリップ
を開始する設定になっていて、温度120℃付近で温度
20℃における抵抗値に対して3倍程度抵抗上昇をして
から最終的には10kΩオーダにまでトリップするとい
った設計になっている。この電池におけるPTC素子
も、急激な抵抗上昇を呈することが望まれている。
【0007】また、携帯電話などの用途では、画像のカ
ラー化が進行しつつあるので、大容量の電力供給が求め
られている。そして、PTC素子には、正常時により大
きな電流が流せることが望まれるので、一般的な電子機
器の使用温度の上限である温度60℃以下で低抵抗であ
ることが、高性能であるとされている。リチウムイオン
電池における一部の用途では、室温域で30mΩ以下の
抵抗値であることが望まれているものもある。
【0008】従来のPTC素子においては、導電性組成
物中の導電性粒子の種類と量を調整して、これを増量し
て、素子中の導電性組成物の固有抵抗値を0.8Ω・c
m程度以下とすることで対応しているものが提案されて
いる(特表2000−516391)。しかしながら、
このような導電性組成物を使用したPTC素子にあって
は、トリップ性の改善余地がある。
【0009】従来のPTC素子は、室温域で20〜30
mΩ程度の抵抗値を持ち、この抵抗値の3倍に達する温
度、即ち、該素子がトリップを開始する温度Tから20
℃高い温度においても、その素子は10Ωに達するトリ
ップ挙動を呈することが精々である。このため、上述の
ように大電流を流す能力を持ちながら、開始温度Tから
多少の温度上昇においても20Ω以上に容易に達するト
リップ挙動を呈する、優れたPTC素子が望まれてい
る。また、将来的には、室温域において15mΩ程度の
低抵抗で、且つ上記のような急激な抵抗上昇を呈するP
TC素子が望まれている。
【0010】
【本発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、
室温域での低抵抗化を図りながらも、低抵抗の安定域の
終点付近から急激な抵抗上昇を呈して、リチウムイオン
電池などの電池耐久温度に見合った十分な抵抗値上昇を
示すPTC素子を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を
解決するために、鋭意研究した結果、室温域(温度20
±5℃域)の素子抵抗値に対して3倍の抵抗値に達する
温度をトリップが開始する温度Tとし、そして、この開
始温度より20℃昇温した素子の抵抗値が20Ω以上と
なるように素子を設計すれば、リチウムイオン電池など
の暴発防止に対して極めて有効に作用し、トリップ挙動
が優れていることを見出し、本発明に至ったものであ
る。即ち、本発明に係るPTC素子は以下の(1)乃至
(5)の構成及び手段を特徴とするものである。
【0012】(1) 導電性組成物の表裏に金属製電極
が貼着されてなるPTC素子であって、温度20±5℃
での該素子における基準抵抗値R0が30mΩ以下にあ
り、上記基準抵抗値R0の3倍に相当する抵抗値に達す
る温度をT℃とし、該温度T+20℃における該素子抵
抗値が20Ω以上となることを特徴とするPTC素子。
【0013】(2) 温度20±5℃における上記導電
性組成物の抵抗率S0が1.01Ω・cm以上であるこ
とを特徴とする上記(1)記載のPTC素子。また、本
発明者等は、抵抗値とトリップ挙動に優れたものを得る
のに、あえて抵抗率の比較的高い領域の導電性組成物を
選択すると、トリップ開始温度以上の温度での指数関数
的抵抗上昇の勾配が大きくなってトリップ挙動が向上で
き、且つ室温域での抵抗値も比較的低抵抗に維持できる
ことを見出し、上記発明をするに至ったものである。具
体的には、室温域(温度20±5℃)におけるPTC素
子としての抵抗値に対して3倍の抵抗値に達する温度T
よりも20℃高い温度で20Ω以上の抵抗値とすること
を可能とし、室温域で30mΩ以下、特に、後述する導
電性組成物の厚みを選択することにより、好ましくは2
5mΩ以下、更に好ましくは15mΩ以下の低抵抗値ま
で可能としているものである。
【0014】(3) 上記導電性組成物に配合されるカ
ーボン粉末は、ASTM D2414−93の測定法に
定めるDBP吸油量が120cm/100g以下のカ
ーボン粉末であることを特徴とする上記(2)記載のP
TC素子。 (4) 上記導電性組成物に対してカーボン粉末が36
体積%以下の範囲で配合されていることを特徴とする上
記(3)記載のPTC素子。このようにカーボン粉末の
DBP吸油量及びカーボン粉末の配合量を選択すること
により、上記導電性組成物の抵抗率を1.01Ω・cm
以上とすることが容易にでき、また、PTC素子の上記
有効なトリップ挙動も十分に達成できる。
【0015】(5)上記導電性組成物の厚みが150μ
m以下であることを特徴とする上記(1)乃至(4)の
いずれかに記載のPTC素子。上述したように導電性組
成物の抵抗率が比較して高いので、PTC素子としての
面積を大きくとる必要があるが、従来の使用と同じ面積
で、少なくとも従来品よりも低い抵抗値を発揮させるに
は、後述する実施例における表2乃至表5を参照する
と、導電性組成物の厚みが150μm以下、特に80μ
m以下であることを好適としている。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳し
く説明する。図1は本発明に係るPTC素子のトリップ
挙動と比較例を示した線図である。図2は、本発明に係
るPTC素子の一例を示す概略断面図である。図3及び
図4は、本発明のPTC素子の製造方法に使用されるカ
レンダー成形機の概略図である。
【0017】本発明に係るPTC素子は、図2に示すよ
うに導電性組成物4の表裏に金属製電極5、5が貼着さ
れるPTC素子である。そして、該素子における基準抵
抗値R0は30mΩ以下であることと、上記基準抵抗値
R0の3倍に相当する抵抗値に達する温度をT℃とする
と、温度T℃より更に温度20℃を昇温させた温度T+
20℃における該素子抵抗値が20Ω以上となることを
特徴とするものである。
【0018】即ち、本発明に係るPTC素子は、図1に
示すように、温度20±5℃の室温域で、その基準抵抗
値R0が30mΩ以下、好ましくは25mΩ以下、更に
好ましくは15mΩ以下である。室温域での基準抵抗値
R0が上記のように低抵抗であれば、PTC素子の適用
装置への大電流の流通能力が増し、またPTC素子の抵
抗値を設定する際の自由度も増してくる。
【0019】本発明に係るPTC素子は、温度T+20
℃における該素子抵抗値が20Ω以上となることを特徴
とする。上述したように、PTC素子のトリップ挙動は
導電性組成物の配合組成によって決定されるが、そのト
リップ挙動は一般に、図1又は図5に示すような曲線を
描く。低温時、高分子成分によって拘束されていた導電
性粒子が、高分子の軟化点もしくは融点になると一気に
拘束が解かれて、高分子の温度膨張に準じて粒子間距離
が広がって抵抗値が急上昇する。従って、導電性組成物
は室温での粒子間の距離に比例して高温下での粒子間の
距離が大きくなって、感温性が増す。尚、室温での粒子
間距離はその粒子の配合量、分散性等によって影響を受
ける。本発明では、後述するように導電性組成物の性能
(抵抗率等)の選択、即ち導電性組成物における導電性
粒子の配合量及び種類の選択、導電性組成物の厚み形状
の選択を適宜行うことによって、PTC素子の上記温度
T+20℃における該素子抵抗値が20Ω以上となるよ
うに設計したものである。
【0020】本発明に係るPTC素子においての導電性
組成物4は、温度20±5℃における抵抗率S0が1.
01Ω・cm以上、特に1.01乃至4.0Ω・cmの
範囲にあることが望ましい。室温下にある導電性組成物
の抵抗率S0は上述した導電性組成物の室温での導電性
粒子間の距離と関係し、導電性組成物の感温性の指標と
もなる。このため、温度20±5℃における上記導電性
組成物の抵抗率S0が1.01Ω・cm以上であると、
上記開始温度Tよりも20℃高い温度において、PTC
素子を20Ω以上の抵抗値に設計することが容易にでき
る。従来のPTC素子における導電性組成物の抵抗率S
0が、0.8Ω・cm程度のものは、導電性組成物に十
分な感温性を付与することができず、PTC素子のトリ
ップ挙動の改善が十分にできない。また、上記導電性組
成物の抵抗率S0が4.0Ω・cmを上回ってくると、
導電性組成物の厚みを30μmに成形しても、PTC素
子の室温での基準抵抗値R0が30mΩを上回り、PT
C素子の低抵抗化が困難となる。
【0021】本発明に係るPTC素子の導電性組成物は
導電性粒子と高分子系組成物からなるが、上記導電性組
成物に配合される導電性粒子は、カーボン、グラファイ
ト、膨張黒鉛などの炭素系微粉末、金や銀などの金属微
粒子、金属酸化物もしくは他の原子によってドープされ
た酸化金属の微粒子、ポリアニリンやポリアセチレンな
どの導電性ポリマーの微粒子等が挙げられる。上記導電
性微粒子の平均粒径に限定がないが、本発明においては
1000μm以下がより望ましく、1000μmより大
きいとバインダーとなる高分子成分への保持がやや困難
になってくる。粒径の下限はなく、10nm〜200n
mが望ましい。また、本発明において、何種類かの導電
性粒子を複合してもかまわない。
【0022】上記導電性粒子のうち高性能且つ安価なカ
ーボン粒子を選択すべきである。以下に、カーボン粒子
の集合体について説明をする。上記カーボン粒子の集合
体であるカーボン粉末は、平均粒径が10乃至200n
m程度のカーボン粒子(一次粒子)の集合体であって、
一次粒子の平均粒径や凝集してなる塊状粒子(二次粒
子)の粒径、PHなど粒子の表面における化学的特性な
どが異なる多種のグレードがある。通常、PTC素子に
使用するカーボン粒子は、平均粒径が10乃至200n
m程度の一次粒子の集合体を使用している。本発明にお
いても上記の粒径のものを使用すると良い。また、本発
明において粒子の表面におけるPHなど特に限定は無
く、任意に選択することができる。
【0023】本発明に係るPTC素子においては、上記
導電性組成物に、ASTM D2414−93の測定法
に定めるDBP吸油量が120cm/100g以下の
カーボン粉末であることが好ましい。尚、PTC素子に
おいては、粒子の凝集の程度が選択基準として重要であ
る。一般に、一次粒子の凝集の程度は、粒子の集合体の
DBP吸油量(ある一定の条件下で、100gの粉末が
吸収できるジブチルテレフタレートの体積)で把握でき
る。
【0024】カーボン粉末の場合、凝集が発達している
ものはDBP吸油量が高く、凝集が発達していないもの
は低い。PTC素子においては、トリップ挙動を重視し
ているので、カーボン粒子の個々が独立しているほうが
望ましい。従って、ケッチェンブラックなどのDBP吸
油量が120cm/100gを上回るカーボン粉末
は、トリップが緩慢になりPTC素子として好ましくな
い。このため、カーボン粉末のDBP吸油量は120c
/100g以下のものが好適であるとした。
【0025】本発明に係るPTC素子は、上記導電性組
成物中にカーボン粉末が36体積%以下で配合すること
が好ましい、特に、30乃至36体積%の範囲で含まれ
ることが好ましい。36体積%を超えてカーボン粉末を
配合すると、室温域(温度20±5℃)における導電性
組成物の抵抗率S0が1.01Ω・cm以上にならない
場合があるため、トリップ挙動の改善が十分に期待でき
ないおそれがある。また、カーボン粉末の配合量が30
体積%未満では、導電性組成物の抵抗率S0が高すぎ
て、PTC素子の室温域での低抵抗化を図ることが困難
となる場合がある。
【0026】本発明に係るPTC素子における導電性組
成物は、高分子組成物とカーボン粉末より構成されてい
る。上記高分子組成物は、結晶性高分子組成物であるこ
とが望ましい。尚、常温における高分子成分中の高分子
結晶が占める重量パーセントを結晶化度と表現するが、
この結晶化度はトリップ挙動に影響を与え、結晶化度が
40%未満ではPTC素子として不充分なトリップ特性
であるので、40%以上の結晶化度を要する。結晶化度
についての上限はないが、高いほうが望ましい。
【0027】上記の高分子組成物とは、1).結晶性高
分子の単体、2).複数の高分子からなる混合物、若し
くは3).上記1)および2)に、その他の高分子やオ
リゴマーもしくはその他の添加物質との混合物、といっ
た形態としていてもよい。以下に、上記高分子組成物に
用いる結晶性高分子を例に挙げると、ポリエチレン、ホ
モタイプのポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポ
リフェニリデンエーテルなどの液晶性ポリマーが挙げら
れ、本発明においては任意に選択することができる。結
晶性高分子は上記の高分子であれば、分子量、短鎖や長
鎖の分岐の状態、シンジオタックチックやアイソタック
チックもしくはアタックチックなど分子のコーホメーシ
ョンなどの分子構造的特徴にも限定はなく任意である。
【0028】また、角型リチウムイオン電池等に使用す
るPTC素子にあっては、温度90乃至100℃付近で
トリップを呈することが要求されるが、この場合には、
エチレン−酢酸ビニルを代表とするカルボン酸ビニルと
エチレンとの共重合体、エチレン−メチルアクリレート
やエチレン−エチルアクリレートおよびエチレン−ブチ
ルアクリレートなどのアクリル酸エステルとエチレンと
の共重合体、エチレン−メタクリレートメタクリルレー
トなどのメタクリル酸エステルとエチレンとの共重合体
などのエラストマーとポリエチレンやポリプロピレンな
どの結晶性高分子との混合物とすると良い。
【0029】また、上記導電性組成物に金属との接着性
を付与することを目的として、金属との接着性を有する
エラストマーを高分子組成物に配合するのが好適であ
る。金属との接着性を有するエラストマーは、エチレン
-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-プロピレン-
ジエン共重合体(EPDM)などのエチレン-αオレフィ
ン-ジエン共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエン共
重合体などのスチレン系ゴム、ポリエステル系ゴム、ア
クリル系ゴム、ブタジエン系ゴム、イソプレン系ゴム、
天然ゴムなどの未架橋のゴムに、カルボン酸もしくはそ
の無水化物などの酸性を呈する官能基、水酸基、エポキ
シ基など金属との親和性を有する官能基をもつエラスト
マーが挙げられる。これらのエラストマーはムーニー粘
度、分子内の分岐、分子量分布などの分子構造的特性は
任意である。
【0030】また、幾種類かの混合物であってもかまわ
ないし、上記の高分子を主成分とした混合物であっても
良く、たとえば、上記の未架橋のゴムもしくは非架橋性
ゴムに、パラフィンオイルなどの可塑剤の添加により流
動性について改質したものや、また他の高分子やフィラ
ーなどによって補強されたものを選択してもかまわな
い。そして、金属と接着性を有するエラストマーとし
て、最も好適なのは、エチレン-αオレフィン共重合体
およびエチレン-αオレフィン-ジエン共重合体に無水マ
レイン酸を付加させたものである。その製造方法は、パ
ーオキサイドを用いて行うのが主流で、架橋助剤もしく
は橋かけ剤を併用するなど、本発明においてその製造方
法については任意である。なお、PTC素子は耐熱性を
付与するために、放射線や電子線が照射により架橋が施
しているが、上記の接着成分は、放射線や電子線が照射
により、金属との接着強度(剥離強度)が50〜500
%程度に向上する。
【0031】上記導電性組成物は、その厚みが150μ
m以下、より好ましくは30乃至150μmの範囲、更
に好ましくは30乃至70μmの範囲にあることであ
る。本発明に係るPTC素子においては、上述したよう
に下記導電性組成物における抵抗率S0は1.01Ω・
cmで、通常のPTC素子よりも低抵抗を呈するために
は、導電性組成物の厚みが150μm以下であることが
必要とされる。また厚さの下限はないが、後述するよう
に、その取り扱いと製造上の可能性を考慮すると、30
μm程度までが望ましい。なお、トリップ挙動は厚さに
よる影響ほとんど無く、導電性組成物を30μm程度に
まで薄層化しても、遜色がない。
【0032】上記導電性組成物の抵抗率S0が1.01
Ω・cm以上であると、低抵抗化において若干不利とな
るが、導電性組成物の薄層化によって低抵抗化を図るこ
とができる。例えば、カレンダー成形によるシート化に
よって、導電性組成物の薄層化を図る方法(特願200
1−348944号)を提案したが、この方法に従うこ
とにより上記30μm程度の薄層化が可能となるため、
導電性組成物の抵抗率が高くても低抵抗を達成すること
ができる。従来のPTC素子はその導電性抵抗率S0が
0.5乃至0.8Ω・cmで厚さが150μmの導電性
組成物から構成されるが、上記カレンダー成形によるシ
ート化で30μmの導電性組成物を構成するならば、導
電性組成物の抵抗率4.0Ω・cmのものを使用して
も、PTC素子としての抵抗値が現行と等しいものを得
ることができる(素子としての面積が同じであった場
合)。例えば、抵抗率1.8Ω・cmの導電性組成物
は、抵抗率0.8Ω・cmの導電組成物に対して導電性
微粒子の配合量が1割程度少ない添加量で達成できる
が、この導電組成物を50μmの厚さにして得たPTC
素子は、導電性粒子間の距離における感温性は高くなる
ので、図1に示すように抵抗上昇が急激になり、トリッ
プ挙動が格段に優れてくる。一方、抵抗率0.8Ω・c
mで厚さが150μmの導電性組成物から構成される従
来のPTC素子は、室温域において20mΩであるが、
トリップ挙動においては15Ω未満と、上昇抵抗値も低
い。
【0033】本発明に係るPTC素子に使用される電極
としては通常金属から成る。本発明において電極の材質
については、金属である限りは特に限定はなく、金、
銀、チタン、パラジウム、ニッケルなど高性能な金属で
あったり、鉛、亜鉛、アルミニウム、ステンレスなど鉄
系合金、ジュラルミンなどアルミ系合金など安価な金属
を選択してもかまわない。
【0034】本発明における電極は、金属板もしくは金
属箔から得られる。そして、金属板もしくは金属箔の厚
さは、本発明において特に限定は無く任意に選択でき
る。また、銅箔、鉄箔、銅系合金箔、鉄系合金箔などの
酸化しやすい金属には、金、パラジウム、亜鉛、錫、ニ
ッケルから選択される金属によってメッキ処理して表面
保護層を設けることを好適といている。さらに、金属部
品に対して、ソーダ塩類、燐酸塩類、アンモニア塩類、
から選択される化合物の水溶液、無機酸、有機酸から選
択される化合物またはこれら化合物の水溶液に浸漬し
て、酸化物と金属の一部を溶解させるなどして洗浄する
こともできる。
【0035】次に、本発明に係るPTC素子の一実施形
態における好ましい製造方法を説明する。尚、本発明に
係るPTC素子は、以下に示す実施形態の製造方法に限
るものではない。先ず、本発明のPTC素子の製造方法
において、上記導電性組成物は加圧ニーダーやバンバリ
ーミキサーおよび二本ロール機もしくは押出機などの混
練装置によって混合される。尚、シート成形機に供給す
る際の該組成物の性状は特に限定はない。組成物の供給
温度は任意に選択でき、また形状も、ベルト状、ペレッ
ト状、紐状、粉末状、塊状など任意に選択できる。望ま
しい供給方法としては該組成物をその構成する高分子成
分の融点以上の温度(120〜200℃)に加熱して、ベルト状
もしくは無定型な塊状として供給する。尚、上記導電性
組成物の原料を混練装置に投入して得た混練物を直接、
シート成形機に供給する方法を採っても良い。
【0036】上記製造方法における導電性組成物のシー
ト化の一例としては、上述したようにカレンダー成形に
よるシート化によって、導電性組成物の薄層化を図る方
法(特願2001−348944号)を以下に挙げるこ
とができるが、本発明に係るPTC素子の製造方法はこ
れに制限されるものではない。具体的には、上記導電性
組成物を温度120℃以上に加熱した後、少なくとも2
箇所以上のニップ部で圧延シート化するものである。ま
た、上記ニップ間におけるテンションによって延伸され
ない状態で導電性組成物のシート体を成形する。ニップ
工程における圧延手段は一対のベルト、ロール等の挟持
或いは挟圧可能なものであれば良く、特にニップロール
を用いることが望ましい。
【0037】上記シート体はニップ工程間に該ニップ部
に使用したニップロール上に導電性組成物を載せて後段
のニップ部に供給することにより、上記組成物を上記ニ
ップ工程間で長尺シートを引き取り延伸(テンションに
よる延伸)することなくシート化することが望ましい。
このようなカレンダー成形の一例としては、図3もしく
は図4に示すように、カレンダー成形機が複数のロール
9、10、11、12、13から構成されている。そし
て各ロールの間隙はニップ部a、b、cとして機能し、
このニップ部によって導電性組成物を所定の厚さに圧延
する。そして、カレンダー成形機は、少なくとも二箇所
以上のニップ部a、bを有し、ニップ部は、加熱により
可塑化した導電性組成物をシート状に粗成形するための
ニップ部a、シート状組成物を目的の厚さにするための
最終ニップ部b、又はcから構成されている。上記カレ
ンダー成形方法ならば、第一ニップ部aから最終ニップ
部b、cに至るまで、シート状組成物はニップロール1
3、12に支持された状態で供給される。このため、延
伸されるなどして不均一な性状のシート体が最終ニップ
部b、cに供給されることはなく、安定した品質のシー
ト体が得られる。
【0038】また、導電性組成物はポリエチレンなどの
結晶性高分子を含有するので、シート化するには100
乃至200℃の範囲の温度にロールを調節することが好
ましい。なお、シート化方法は段階的に厚さを薄くして
行うが、各ニップ部において薄くしてゆく際の余剰な導
電性組成物はバンク14、15、16としてストックさ
れつつ混練がなされ、かかる混練状態はシートの均一性
を高めるのに効果的な役目を果たす。
【0039】上記カレンダー成形のなかでも最も簡素な
形態は、図3に示すように3本からなるロール成形機で
あって、導電性組成物4は共通ロール13を介して第一
ニップ部aと最終ニップ部bを通過する構造になってい
る。また、ポピュラーで好適形態を有する成形機は図4
に示すような4本のロールからなるカレンダー成形機で
ある。以下、図4に基づきカレンダー成形機について説
明をすると、ロール9とロール10は導電性組成物4を
ニップ部aで粗シート体に圧延する。ロール10とロー
ル11は粗シートを目的の厚さに更に近づけた厚みの中
間シート体に圧延する。ロール11とロール12は所望
の厚さに精度良く圧延する。従って、ロール9とロール
10、ロール10とロール11、ロール11とロール1
2における3箇所の間隙が、ニップ部として機能し多段
階に圧延を行う。
【0040】更に具体的に説明すると、本発明に係るP
TC素子における導電性組成物は、ポリエチレンなどの
結晶性高分子を含有するので、この高分子の融点である
温度120℃以上にあらかじめ加熱して可塑化される。
可塑化された組成物はロール9とロール10の上に投入
され、ロール9とロール10とのニップ部aで10.0
mm以下の厚さ、望ましくは0.2〜0.5mmの厚さ
の粗シート体とされる。かかる粗シート体はロ―ル10
に支持されながらロール10とロール11のニップ部b
に供給され、かかるニップ部bで500μm以下、望ま
しくは100〜300μmの厚さの中間シート体に圧延
がなされる。さらに、中間シート体はロ―ル11に支持
されながらロール11とロール12のニップ部cに供給
され、かかるニップ部cで目的の厚さのシート体に成形
される。この場合、まだ可塑化状態が若干残る粗シート
体及び中間シート体はロール10及びロール11に支持
されながらテンションがかからない状態で各ロールを移
動するため、組成物中の充填物の分散状態が安定した粗
シート体或いは中間シート体を最終ニップ部cに供給す
ることができる。
【0041】また、本実施形態の製造方法において、シ
ート成形機における上記ロールの駆動方式、ロールの配
置、ロールの材質、ロール温度調節方式などに関して限
定はなく任意である。また、導電性組成物の供給方法、
シート体の引出し方法についても、特には限定がない。
また、この成形機に金属箔を張り合わせるたり歪みを解
消するためのニップロール(金属もしくはゴム製のロー
ル)やニップベルトを付属させても良い。
【0042】本発明のPTC素子の製造方法において、
上記最終ニップ部に、或いは最終ニップ部を通過した後
に、該組成物の移動と略同速度に移動するキャリアーシ
ートを供給し、該シート化組成物と共に積畳(「重ね巻
取り」を含む。)することが望ましい。即ち、カレンダ
ー成形において、シート体に成形された組成物が最終ニ
ップ部から排出されると、後段の巻取り機によって引か
れつつ冷却がなされるが、冷却が完了するまでに延伸が
かかると、前記に述べたような抵抗値のばらつきを生じ
てしまう。また、上記キャリアーシートを最終ニップ部
で挟んで用いると、さらなる薄層化が可能となる。
【0043】上記キャリアーシートとして適しているも
のは、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリイ
ミド系高分子などの高分子フィルム、剥離紙、不織布あ
るいは織布(剥離性を付与したものが望ましい)、アル
ミ金属箔などであり、特に120乃至200℃の温度で
の耐熱素材から選択することが好ましい。また、キャリ
アーシートはその表面状態についての限定はない。しか
し、キャリアーシート表面に無数の凹凸があれば最終ニ
ップ部で高分子組成物を凹部に食い込ませることができ
るため、該導電性組成物を最終ニップ部から引き取り易
くなる。このため、通常、引き取り難い組成物配合及び
薄層化した導電性組成物においては効果を奏する。
【0044】更に、PTC素子を構成する電極(金属
箔)を上記キャリアーシートに選定しても良い。この場
合、反対側の金属箔は、後設の装置もしくは別工程によ
って貼着がなされる。また、金属箔以外の別の長尺シー
トをキャリアーとしてニップに供給することができる
が、キャリアーシートは両面に限らず、片面だけ貼着し
た状態で引き出す方式にしてもかまわない。
【0045】本発明に係るPTC素子は、このような製
造方法により、厚さが150μm以下である厚さの上記導
電性組成物で製品化でき、実質的な低抵抗化を望むニー
ズに即応することができる。上記カレンダー成形装置等
によるシート体は、ニップ部を構成するロール同士が触
れる程度にクリアランスを狭めても、高分子組成物の樹
脂圧でロールが軋むので、上述のように30μm程度の
厚さにまでの薄層化が可能である。尚、これより薄層化
したものを得ようとすると、ロール同志が擦られて磨耗
する虞がある。このため、上記導電性組成物のシート体
は、30μm以上、特に50μm以上にて薄層化するこ
とが好ましい。特に、上記30μm程度の厚さのシート
体を確実に得るには、上記最終ニップ部にキャリアーシ
ートも同時に供給する方法を採用することが好ましい。
上記キャリアーシートがクリアランスの総厚の何割かを
占めることから、結果として導電性組成物の薄層化が可
能になる。
【0046】上記シート体の表裏に金属箔を貼着する工
程、シート体中の高分子成分を架橋して耐熱性を付与す
る工程、リード端子を接合するための前処理工程、チッ
プ形状に打ち抜く工程、リード端子を接合する工程、品
質の検査、などついても、装置や製法に関して特に限定
はない。一般に、耐熱性を付与するために放射線若しく
は電子線の照射により架橋を施したり、また最終製品に
するまでヒートサイクル処理(数から数十の回数でトリ
ップさせることにより導電粒子の偏在を発達させるなど
の後処理)をしたりするがこのような処理を行うことが
望ましい。
【0047】本発明のPTC素子は、上記導電性組成物
のPTC素子用シートの両面に2枚の上記金属箔を貼着
したものであり、上記シート体層に耐熱性を付与するた
めに放射線若しくは電子線照射により架橋しても良い。
またこの場合、上述した接着成分であるエラストマーは
放射線若しくは電子線の照射により、金属箔との接着強
度(剥離強度)が50〜500%程度にまで向上させる
ことができる。上記照射線量は、放射線については30
〜200KGry、望ましくは80〜150KGryの
範囲であり、電子線については3〜150MRad、
望ましくは80〜150M Radの範囲で照射するこ
とが望ましい。尚、PTC素子のチップ化は、上記照射
の前でも良く、上記照射の後でも良い。
【0048】本発明のPTC素子は、打ち抜きされた形
状や、ハンダの積層方法により、Disc strap,Terminal
device,Strap,SMDなどの形態をとり、一次電池や
二次電池の保護、自動車などのモーターの保護、スピー
カーの保護、携帯電話などでの充電電池の保護、コンピ
ューター回路の保護などの用途で使用される。
【0049】
【実施例】以下、実施例及び比較例に基いて更に本発明
のPTC素子を説明する。尚、本発明は以下の実施例に
限るものではない。 (実施例1−1乃至1−4及び比較例1−1乃至1−
5)下記表1に示す9種類の配合組成を、温度160℃
に温度調節した加圧式ニーダーに投入し、15分間の混
練に、混練物の温度が220℃になったので取り出し
た。直ちに混練物を温度100℃に温度調節した二本ロ
ール(ロールの間隙は3mm)に投入してシート状にした
後、冷却したのちに賽の目状にカットして、4mm×4
mm×3mmである9種類の導電性組成物のペレットを
得た。
【0050】
【表1】
【0051】尚、表1中の材料は下記の通りである。 高密度ポリエチレン:三井化学(株)製製品 ハイゼッ
クス5000 エチレン−アクリレート:日本ユニカー(株)製製品
NUC−6220 マレイン酸変性EPDM:日本合成ゴム(株)製製品
T7761P カーボン粉末A:コロンビアカーボン(株)製製品 4
10;DBP吸油量65cm/100g カーボン粉末B:コロンビアカーボン(株)製製品 8
20;DBP吸油量120cm/100g カーボン粉末C:コロンビアカーボン(株)製製品 6
30;DBP吸油量130cm/100g
【0052】このペレットを、温度180℃に温度調節
した押出機( L/Dが15の単軸の押出機、軸の太さは
40mm)に投入して、40rpmの回転数で運転した
ところ、約185℃の無定形の溶融した導電性組成物が
押出された。この溶融した組成物を、カレンダー装置に
供給し、厚さ75±10μm、幅1250mm、長さ1
50mmの長尺シートを得た。
【0053】一方、厚さ125μmの圧延して得たニッ
ケル板を、ワイヤカットによって5mm×25mmの金
属部品にカットした。そして、それぞれ9種類のカット
シートの表裏に金属部品を重ねるようにして、固定用冶
具に100セット分を固定して、そのまま、温度180
℃に温度調節したプレス装置に挿入して、100kgf
/cmに加圧し、5分後に加圧したままプレス装置に
冷却水を循環すると、10分後には、温度50℃にな
り、これを取り出だしたところ、図2の断面図に示すよ
うな3種類のPTC素子を得た。そして、得られたPT
C素子を、種類ごとに1つの袋に入れて、電子線照射装
置にて、加速電圧3.0MeV、100kGryの線量
になる条件で照射した。
【0054】これにより得た9種類のPTC素子につい
て、温度20℃における抵抗値を測定し、それぞれのP
TC素子における導電性組成物の抵抗率を算出したとこ
ろ、表2のとおりであった。また下記に述べるトリップ
挙動の試験方法により、抵抗上昇を測定して比較したと
ころ、表3に示すとおりであった。実施例1−1乃至1
−4のいずれの素子も温度80℃付近における抵抗値
は、温度20℃の抵抗値のほぼ3倍程度で、かかるポイ
ントに開始温度Tが存在した。しかし、導電性組成物の
抵抗率S0が0.8Ω・cm以下である比較例1−1、
1−2、1−3、1−4、1−5は、温度100℃乃至
110℃における抵抗値が10Ω以下で、優れたもので
はなかった。これに対して、本発明による実施例1−
1、1−2、1−3、1−4は、温度100℃における
抵抗値が20Ωを上回っており、[開始温度T+20℃
の抵抗値]>20Ωを満たし、トリップ挙動が優れたも
のであった。
【0055】
【表2】
【0056】(トリップ挙動の試験方法)両端にあるP
TC素子のリードに、ハンダにより電線を接合し、電線
を抵抗測定器に接続して素子の抵抗を測定する。測定の
環境は温度20、30、40、50、60、70、8
0、100、110、120、130、140℃であ
り、素子をオーブンに入れて測定を開始する。そして、
測定の方法は、温度20℃から順次に昇温してゆき、測
定する温度に達したら5分間その温度を保持して、その
時(5分間保持した時 )に抵抗値をプロットする。プ
ロットし終えたら、つぎの測定温度に昇温して測定を行
う。
【0057】
【表3】
【0058】また、カーボンはDBP吸油量が120c
/100gで、36体積%以下であれば、1.01
Ω・cm以上の抵抗率の導電性組成物が得られ、これを
用いれば温度100℃における素子としての抵抗値が2
0Ωになるトリップ挙動の優れたPTC素子となること
を示唆する結果となった。
【0059】(実施例2−1、2−2及び参考例1)上
記各実施例1の製法に従って、配合1−2のペレットか
ら、厚さが100±10μmであるシートA、厚さが1
50±10μmであるシートBおよび160±10μm
であるシートCを得た。そして、シートAとシートBお
よびシートCをビク歯で5mm×12mmの大きさにカ
ットして、3種類のカットシートに調整した。一方、上
記各実施例1の金属部品をあらかじめ用意しておき、上
記3種類のカットシートの表裏に金属部品を重ねるよう
にして、固定用冶具に100セット分固定して、そのま
ま、180℃に温度調節したプレス装置に挿入して、1
00kgf/cm に加圧し、5分後に加圧したままプ
レス装置に冷却水を循環すると、10分後には、50℃
になり、これを取り出だしたところ、図2の断面図に示
す2種類のPTC素子を得た。そして、得られたPTC
素子を、種類ごとに1つの袋に入れて、電子線照射装置
にて、加速電圧3.0MeV、100kGryの線量に
なる条件で照射した。
【0060】これにより得た3種類のPTC素子につい
て、20℃における抵抗値を測定し、それぞれのPTC
素子における導電性組成物の抵抗率を算出したところ、
表4のとおりであった。また、トリップ挙動の試験方法
により、抵抗上昇を測定して比較したところ、表5に示
すとおりであった。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】以上の結果、導電組成物の厚さが150μ
mを下回る実施例2−2は、室温時の抵抗値が従来のP
TC素子とほぼ同等のであったが、実施例2−1は低抵
抗なものであり、温度100℃における両者の抵抗値は
20Ωを上回っていてトリップ挙動に優れたものであっ
た。これに対して参考例1は、トリップ挙動が優れてい
るが、室温時の抵抗値は上記より優れたものではなかっ
た。このことから、厚さが150μm以下の厚さが好適
であることがわかった。
【0064】
【発明の効果】本発明に係るPTC素子によれば、室温
領域での素子自体の基準抵抗値R0が30mΩ以下にあ
り、基準抵抗値R0の3倍に相当する抵抗値に達する温
度をT℃とし、温度T+20℃における素子抵抗値が2
0Ω以上となるように設計し、温度20±5℃にいける
導電性組成物の抵抗率S0を1.01Ω・cm以上とす
ることで、室温域での低抵抗化を図りながら、トリップ
開始付近から急激な抵抗上昇を呈して、リチウムイオン
電池などの電池耐久温度に見合った十分な抵抗値上昇が
見られる。このため、PTC素子は従来のものよりもト
リップ挙動が極めて優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係るPTC素子のトリップ挙動
と比較例を示した線図である。
【図2】図2は、本発明に係るPTC素子の一例を示す
概略断面図である。
【図3】図3は、本発明のPTC素子の製造方法に使用
されるカレンダー成形機の概略図である。
【図4】図4は、本発明のPTC素子の製造方法に使用
されるカレンダー成形機の概略図である。
【図5】図5は、従来の角型リチウムイオン電池に使用
するPTC素子のトリップ挙動を説明するために示した
抵抗値に対する温度曲線図である。
【符号の説明】
4 導電性組成物 5 電極 9、10 第一のニップを構成するロール 11、12 第一のニップを構成するロール 13 第一のニップと最終ニップを兼用構成
するロール

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性組成物の表裏に金属製電極が貼着
    されてなるPTC素子であって、温度20±5℃での該
    素子における基準抵抗値R0が30mΩ以下にあり、 上記基準抵抗値R0の3倍に相当する抵抗値に達する温
    度をT℃とし、該温度T+20℃における該素子抵抗値
    が20Ω以上となることを特徴とするPTC素子。
  2. 【請求項2】 温度20±5℃における上記導電性組成
    物の抵抗率S0が1.01Ω・cm以上であることを特
    徴とする請求項1記載のPTC素子。
  3. 【請求項3】 上記導電性組成物に配合されるカーボン
    粉末は、ASTMD2414−93の測定法に定めるD
    BP吸油量が120cm/100g以下のカーボン粉
    末であることを特徴とする請求項2記載のPTC素子。
  4. 【請求項4】 上記導電性組成物中にカーボン粉末が3
    6体積%以下の範囲で配合されていることを特徴とする
    請求項3記載のPTC素子。
  5. 【請求項5】 上記導電性組成物の厚みが150μm以
    下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに
    記載のPTC素子。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006228760A (ja) * 2005-01-21 2006-08-31 Shin Etsu Polymer Co Ltd 過電流保護素子及びその製造方法
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