JP2003300994A - グリコシル−l−アスコルビン酸のアシル化誘導体及びその用途 - Google Patents

グリコシル−l−アスコルビン酸のアシル化誘導体及びその用途

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JP2003300994A JP2002104717A JP2002104717A JP2003300994A JP 2003300994 A JP2003300994 A JP 2003300994A JP 2002104717 A JP2002104717 A JP 2002104717A JP 2002104717 A JP2002104717 A JP 2002104717A JP 2003300994 A JP2003300994 A JP 2003300994A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安定性の改善されたグリコシル−L−アスコ
ルビン酸のアシル化誘導体を提供するとともに、そのよ
うに安定性の改善されたグリコシル−L−アスコルビン
酸のアシル化誘導体を配合した皮膚外用剤を提供するこ
とを課題とする。 【解決手段】 グリコシル−L−アスコルビン酸のアシ
ル化誘導体におけるアシル基が分岐を有する炭素数4〜
20の脂肪族アシル基であることを特徴とするグリコシ
ル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体、及び、その
ようなグリコシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導
体を配合してなる皮膚外用剤を提供することによって上
記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グリコシル−L−
アスコルビン酸のアシル化誘導体及びそれを含有する皮
膚外用剤に関し、更に詳細には、アシル基が分岐を有す
る脂肪族アシル基であるグリコシル−L−アスコルビン
酸のアシル化誘導体及びそれを含有する美白に好適な化
粧料などの皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ビタミンC、すなわち、L−アスコルビ
ン酸は、抗壊血病因子とも呼ばれるように、壊血病の特
効薬として頻用されてきた。今日では、抗壊血病因子と
しての作用以外に、生体内における諸種のヒドロキシル
化反応に深く係わり、例えば、コラーゲンの生合成、芳
香族アミノ酸の代謝、副腎におけるアドレナリンの生
成、さらには、肝臓における生体異物の解毒機構などに
重要な役割を果たしていることが判ってきた。これらの
多彩な生理活性ゆえに、毎年、大量のL−アスコルビン
酸が食品、化粧品及び医薬品の分野で消費されている。
【0003】周知のとおり、L−アスコルビン酸は非常
に不安定な物質であり、他のビタミンとは違って、熱、
光、酸素、金属イオンなどによってたやすく分解したり
変性する。したがって、食品、化粧品及び医薬品などに
配合して所期の生理作用を得るためには、本来必要な量
を遙かに上回るL−アスコルビン酸を配合したり、保存
や取扱いに細心の注意を払う必要があった。また、L−
アスコルビン酸は油溶性でないことから、生体におけ
る、例えば、皮膚や粘膜などの脂肪分に富む部位に適用
すると、脂肪分が浸透を妨げ、有効量のL−アスコルビ
ン酸が目的とする組織に到達しないという問題があっ
た。これらの問題点を解消すべく、従来より、L−アス
コルビン酸を酸エステルやグリコシル転移物などの誘導
体に変換する多種多様の試みがなされてきた。
【0004】しかしながら、例えば、2−ステアリル−
L−アスコルビン酸、6−パルミチル−L−アスコルビ
ン酸及び2,6−ジパルミチル−L−アスコルビン酸な
どの公知の脂肪酸エステルは、L−アスコルビン酸と比
較すると、油溶性は確かに改善されているものの、これ
らは生体内でL−アスコルビン酸を遊離しないので、L
−アスコルビン酸本来の重要な生理作用が全く期待でき
ないという問題がある。また、例えば、燐酸エステルや
硫酸エステルなどの無機酸エステルは、L−アスコルビ
ン酸と同様、いずれも油溶性でないうえに、硫酸エステ
ルは、脂肪酸エステルと同様、生体内でL−アスコルビ
ン酸を遊離しないという問題がある。
【0005】特開平3−139288号公報、特開平3
−135992号公報、特開平3−183492号公
報、特開平6−228183号公報及び特開平6−26
3790号公報などに記載されている2−グルコピラノ
シル−L−アスコルビン酸や2−ガラクトピラノシル−
L−アスコルビン酸などのグリコシル−L−アスコルビ
ン酸は、L−アスコルビン酸の欠点を解消すべく開発さ
れた物質である。これらは、いずれも分子内に還元性基
を有しないので、熱、光、酸素及び金属イオンに対して
水が介在しない限りに於いて、或いは水との接触が防が
れている状態に於いて、頗る安定であり、しかも、生体
内ではL−アスコルビン酸を速やかに遊離するという特
徴がある。しかしながら、公知のグリコシル−L−アス
コルビン酸はいずれも油溶性ではないことから、用途に
よっては、L−アスコルビン酸と同様の問題を内包して
いる。
【0006】このような課題を解決する技術として、特
開平11−286497号公報には、グリコシル−L−
アスコルビン酸のアシル化誘導体を用いる技術が開示さ
れているが、本発明者の研究によれば、上記公報に開示
されているグリコシル−L−アスコルビン酸のアシル化
誘導体は、アシル基の安定性の点で満足できるものでは
なく、導入したアシル基が経時変化に伴い一部失われて
しまうという欠点があることが判明した。このため、上
記公報に開示されているようなグリコシル−L−アスコ
ルビン酸のアシル化誘導体を、化粧料等の皮膚外用剤に
配合しても、得られる皮膚外用剤は安定性に欠け、保存
中にその効果が失われやすいということが判明した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような状
況下為されたものであり、安定性の改善されたグリコシ
ル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体を提供すると
ともに、そのように安定性の改善されたグリコシル−L
−アスコルビン酸のアシル化誘導体を配合した皮膚外用
剤を提供することを課題とするものである。
【0008】
【課題の解決手段】本発明者は、安定性の改善されたグ
リコシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体を求め
て、鋭意研究努力を重ねた結果、グリコシル−L−アス
コルビン酸のアシル化誘導体におけるアシル基を、分岐
を有する炭素数4〜20の脂肪族アシル基とすることに
よって、意外にも、グリコシル−L−アスコルビン酸の
アシル化誘導体の安定性が飛躍的に増すことを見出し、
皮膚外用剤に配合しても、その効果が失われ難いことを
確認して、本発明を完成するに至った。
【0009】即ち、本発明は、グリコシル−L−アスコ
ルビン酸のアシル化誘導体におけるアシル基が分岐を有
する炭素数4〜20の脂肪族アシル基であることを特徴
とするグリコシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導
体、及び、そのようなグリコシル−L−アスコルビン酸
のアシル化誘導体を配合してなる皮膚外用剤を提供する
ことにより、上記課題を解決するものである。
【0010】本発明のグリコシル−L−アスコルビン酸
のアシル化誘導体は、該誘導体におけるアシル基が分岐
を有する炭素数4〜20の脂肪族アシル基であることを
特徴とするものであるが、好ましくは、該アシル基が、
以下に示す一般式(I)で表されるものが良い。 一般式(I)
【化2】 (但し、式中nおよびmは0または正の整数を表し、n
+m=0〜16の範囲にあるものとする。)
【0011】より具体的には、本発明のグリコシル−L
−アスコルビン酸のアシル化誘導体としては、2−O−
α−D−モノグルコシル−6−O−(2−プロピルペン
タノイル)−L−アスコルビン酸 、6−O−(2−ブ
チルヘキサノイル)−2−O−α−D−モノグルコシル
−L−アスコルビン酸、又は、2−O−α−D−モノグ
ルコシル−6−O−(2−ペンチルヘプタノイル)−L
−アスコルビン酸が、特に好ましいものとして挙げられ
る。
【0012】このような本発明のグリコシル−L−アス
コルビン酸のアシル化誘導体は、安定性に優れ、各種皮
膚外用剤、特に、美白用の化粧料に配合して好適であ
る。以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明が対象とするグリコシル−
L−アスコルビン酸には特に制限はないが、望ましいグ
リコシル−L−アスコルビン酸としては、L−アスコル
ビン酸における2位の位置に1又は複数のグルコシル残
基若しくはガラクトシル残基が結合した、例えば、2−
O−α−D−モノグルコピラノシル−L−アスコルビン
酸を初めとする一連の2−グルコピラノシル−L−アス
コルビン酸、及び、2−O−β−D−モノガラクトピラ
ノシル−L−アスコルビン酸を初めとする一連の2−ガ
ラクトピラノシル−L−アスコルビン酸が挙げられる。
本発明のグリコシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘
導体は、このようなグリコシル−L−アスコルビン酸
に、分岐を有する炭素数4〜20の脂肪族アシル基を導
入してアシル化することによって得ることができる。導
入するアシル基としては、例えば、イソオクタノイル
基、イソパルミトイル基、イソステアロイル基、2−プ
ロピルペンタノイル基、2−ブチルヘキサノイル基、2
−ペンチルへプタノイル基などが好適に例示でき、これ
らの中では、上記一般式(I)の構造を有するアシル基
が特に好ましく、具体的には、2−プロピルペンタノイ
ル基、2−ブチルヘキサノイル基、2−ペンチルへプタ
ノイル基が特に好ましく例示できる。
【0014】かかるグリコシル−L−アスコルビン酸の
アシル化誘導体は、諸種の方法により調製することがで
きる。例えば、グリコシル−L−アスコルビン酸に適宜
のアシル化剤を反応させれば、所望のアシル化誘導体が
得られる。このとき、必要とあれば、反応系内に触媒を
共存させてもよく、その触媒はリパーゼなどの酵素であ
ってもよい。原料となるグリコシル−L−アスコルビン
酸は、例えば、特開平3−139288号公報、特開平
3−135992号公報及び特開平3−183492号
公報に記載されているように、シクロマルトデキストリ
ン・グルカノトランスフェラーゼなどの糖転移酵素の存
在下でL−アスコルビン酸にシクロマルトデキストリン
や澱粉加水分解物などのα−グルコシル化合物を反応さ
せるか、あるいは、特開平6−228183号公報及び
特開平6−263790号公報に記載されているよう
に、β−ガラクトシダーゼの存在下で5,6−イソプロ
ピリデン−L−アスコルビン酸にラクトースなどのβ−
ガラクトシル化合物を反応させることによって得ること
ができる。ちなみに、2−グルコピラノシル−L−アス
コルビン酸の市販品としては、例えば、『AA−2G』
(固形分重量当りの2−O−α−D−モノグルコピラノ
シル−L−アスコルビン酸含量98%以上、株式会社林
原商事販売)が挙げられる。用途にもよるれども、この
発明においては、グリコシル−L−アスコルビン酸は必
ずしも高度に精製されておらずともよく、調製方法に特
有な類縁体や他の成分との未分離組成物であっても、実
質的なアシル化を妨げない他の成分との混合物であって
もよい。
【0015】化学反応による場合には、ヒドロキシル基
を有する化合物をアシル化するための通常一般の方法を
適用すればよく、個々の方法としては、例えば、酸又は
酸ハライド、酸無水物若しくは酸エステルなどのアシル
化剤を用いる方法が挙げられる。アシル化剤としては、
2−エチルヘキサン酸、イソパルミチン酸、イソステア
リン酸、2−プロピルペンタン酸、2−ブチルヘキサン
酸、2−ペンチルへプタン酸などのカルボン酸、酸ハラ
イド、酸無水物或いはカルボン酸エステルが好ましく例
示できる。
【0016】反応は、通常、反応系への水の侵入を遮断
した非水系で行なわれ、例えば、ピリジン、ジメチルス
ルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの有機溶剤中、
必要に応じて、p−トルエンスルホン酸などの触媒を共
存させて、グリコシル−L−アスコルビン酸にカルボン
酸無水物を反応させる。反応条件としては、L−アスコ
ルビン酸のアシル化に通常用いられる反応がそのまま適
用できるが、グリコシル−L−アスコルビン酸1モルに
対して、アシル化剤を3モル以下、望ましくは、2モル
以下反応させるときには、反応がほぼ特異的に進行し、
グリコシル−L−アスコルビン酸におけるL−アスコル
ビン酸残基の特定の部位にアシル基を導入することがで
きる。例えば、2−O−α−D−モノグルコピラノシル
−L−アスコルビン酸の場合、2モル以下のアシル化剤
を反応させると、実質的に、L−アスコルビン酸残基に
おける6位の位置のヒドロキシル基だけをアシル化する
ことができる。また、公知の方法によってL−アスコル
ビン酸における6位のヒドロキシル基だけをアシル化し
た後、適宜有機溶剤又は有機溶剤と水との適宜混液中、
例えば、シクロマルトデキストリン・グルカノトランス
フェラーゼなどの糖転移酵素の存在下でそのアシル化さ
れたL−アスコルビン酸にシクロマルトデキストリンや
澱粉部分加水分解物などのα−グルコシル化合物を反応
させるときには、L−アスコルビン酸残基における6位
のヒドロキシル基だけがアシル化された2−グルコピラ
ノシル−L−アスコルビン酸のモノアシル化誘導体を得
ることができる。本発明において、特に好ましいグリコ
シル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体としては、
例えば、2−O−α−D−モノグルコシル−6−O−
(2−プロピルペンタノイル)−L−アスコルビン酸
、6−O−(2−ブチルヘキサノイル)−2−O−α
−D−モノグルコシル−L−アスコルビン酸、及び、2
−O−α−D−モノグルコシル−6−O−(2−ペンチ
ルヘプタノイル)−L−アスコルビン酸を例示できる。
【0017】酵素反応による場合には、グリコシル−L
−アスコルビン酸及びアシル化剤を基質とし、通常、こ
れらの基質と酵素に応じた適宜有機溶剤が用いられ、場
合によっては、適宜分配率の水及び有機溶剤からなる二
成分系が用いられる。酵素としてはリパーゼが一般的で
あり、酵素剤は固定化されていてもよい。有機溶剤とし
て、例えば、sec−ブチルアルコール、t−ブチルア
ルコール、t−アミルアルコール、ジオキサン、テトラ
ヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、ピ
リジンなどの親水性有機溶剤が用いられる。反応条件
は、酵素法によるL−アスコルビン酸のアシル化の場合
と同様に設定すればよく、酵素の種類にも特に制限がな
い。なお、グリコシル−L−アスコルビン酸、とりわ
け、2−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸は水溶
液における安定性が著しく高いので、L−アスコルビン
酸のアシル化の場合とは違って、複雑な条件設定の必要
がない。
【0018】斯くして得られるアシル化誘導体は、L−
アスコルビン酸の脂肪酸エステルを精製するための通常
の方法を適用することにより精製することができる。個
々の精製方法としては、例えば、塩析、透析、濾過、濃
縮、分別沈澱、分液抽出、ゲルクロマトグラフィー、イ
オン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフ
ィー、ガスクロマトグラフィー、親和クロマトグラフィ
ー、ゲル電気泳動、等電点電気泳動、結晶化などが挙げ
られ、これらは、反応条件並びに所望するアシル化誘導
体の種類及び純度に応じて適宜組合せて適用される。
【0019】かくして得られる本発明のグリコシル−L
−アスコルビン酸のアシル化誘導体は、従来のグリコシ
ル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体、具体的には
特開平11−286497号公報に記載されているグリ
コシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体に比し
て、溶液などの実使用形態における安定性が極めて優れ
ているのみならず、水系、有機溶媒系への溶解性が増し
ており、このような種々の優れた特性を有する本発明の
グリコシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体を、
化粧品や医薬品などに配合することによって、アスコル
ビン酸の生体利用性、組織親和性、生体への吸収性を著
しく改善することができる。
【0020】これらの性質故に、本発明のグリコシル−
L−アスコルビン酸のアシル化誘導体は、L−アスコル
ビン酸本来の生理作用を必要とする食品分野、化粧品分
野及び医薬品分野を含む諸種の分野において、安定にし
て安全なL−アスコルビン酸給源として有利に用いるこ
とができる。加えて、本発明のグリコシル−L−アスコ
ルビン酸のアシル化誘導体は、同様の分野において、ア
シル化誘導体及び/又はL−アスコルビン酸の物性を利
用する、例えば、抗酸化剤、安定化剤、矯味剤、緩衝
剤、乳化促進剤、紫外線吸収剤、さらには、化学工業の
分野における反応原料、反応中間体、試薬などとしても
有利に用いることができる。本発明のグリコシル−L−
アスコルビン酸のアシル化誘導のうちでも、上記一般式
(I)で表される構造のアシル基が結合したアシル化誘
導体は、皮膚や粘膜への浸透性が著しく高いので、化粧
品や医薬品の分野において特に有用である。尚、本発明
のグリコシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体の
遊離のカルボキシル基を塩と為して使用する場合、かか
る塩も本発明の技術的範囲に属する。このような塩とし
ては、通常皮膚外用剤で使用されるものであれば特段の
制限はなく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などの
アルカリ金属塩、カルシウムやマグネシウムなどのアル
カリ度類金属塩、トリエタノールアミン塩やトリエチル
アミン塩などの有機アミン塩、アンモニウム塩、リジン
塩やアルギニン塩などの塩基性アミノ酸塩などが好適に
例示できる。
【0021】本発明の皮膚外用剤は、本発明のグリコシ
ル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体を含有するこ
とを特徴とするものである。本発明の皮膚外用剤におい
ては、本発明のグリコシル−L−アスコルビン酸のアシ
ル化誘導体の1種だけを含有させても良いし、2種以上
を組み合わせて含有させることもできる。本発明の皮膚
外用剤における、本発明のグリコシル−L−アスコルビ
ン酸のアシル化誘導体の好ましい含有量は、0.01〜
10重量%であり、更に好ましくは0.05〜5重量%
である。本発明の皮膚外用剤としては、皮膚に外用で投
与される形態のものであれば特段の制限はなく、例え
ば、化粧水、ローション、乳液、エッセンス、クリー
ム、ゲル、成形されていても良い粉体組成物、シャンプ
ー、リンスなどの化粧料(医薬部外品を含む)や、ロー
ション、乳液、クリーム、軟膏、貼付剤の形態の皮膚外
用剤が好ましく例示できる。
【0022】上記のような本発明の皮膚外用剤は、本発
明のグリコシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体
と、皮膚外用剤において通常使用される任意成分とを常
法に従って処理することにより製造することができる。
このような任意成分としては、例えば、ワセリンやマイ
クロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホ
バ油やセチルイソオクタネート等のエステル類、オリー
ブ油等のトリグリセライド類、オクタデシルアルコール
やオレイルアルコール等の高級アルコール類、グリセリ
ンや1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオー
ル、イソプレングリコール等の多価アルコール類、非イ
オン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活
性剤、両性界面活性剤、エタノール、カーボポール等の
増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体
類等が例示できる。本発明の皮膚外用剤としては、医薬
部外品を含む化粧料への適用が特に好ましい。これは本
発明のグリコシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導
体の主たる効果が美白効果であり、これには化粧料が特
に適しているからである。従って、化粧料の中でも美白
用の化粧料に適用することが特に好ましい。
【0023】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明について更に
詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみに
限定されないことは言うまでもない。
【0024】<実施例1> 〈2−エチルヘキサン酸誘導体の調製〉 (6−O−(2−エチルヘキサノイル)−2−O−α−
D−モノグルコシル−L−アスコルビン酸:化合物1)
室温下、反応容器に2−グルコピラノシル−L−アスコ
ルビン酸(商品名『AA−2G』、固形分重量当りの2
−O−α−D−モノグルコピラノシル−L−アスコルビ
ン酸含量98%以上、株式会社林原商事販売)を2.7
1g(8.0mmol)とり、アルゴン気流下、ピリジ
ンを350ml加え、溶解するまで撹拌した。次に、ピ
リジン50mlに溶解した2−エチルヘキサン酸無水物
(9.6mmol)をアルゴン気流下、2分間かけて反
応容器内に滴々加えた後、室温下で135分間反応させ
た。その後、反応容器内にメタノールを加え、濃縮し、
乾固して反応を停止させた。
【0025】得られた反応混合物の固状物をカラムクロ
マトグラフィー用シリカゲル(商品名『ワコーゲル』、
和光純薬工業株式会社製造)139.5gのカラムに負
荷し、酢酸エチル500ml、酢酸エチル/メタノール
混液(容量比9:1)500ml、酢酸エチル/メタノ
ール混液(容量比8:2)500ml及び酢酸エチル/
メタノール混液(容量比7:3)500mlをこの順序
でそれぞれ通液する一方、溶出液を100mlずつ採取
した。各溶出画分の一部をそれぞれとり、これを薄層ク
ロマトグラフィー用シリカゲルプレート(商品名『シリ
カゲル60 F254』、メルク製造)に少量滴下し、
乾燥させた後、酢酸エチル/メタノール混液(容量比
6:4)を用いて展開し、メイン・スポットを掻き取
り、酢酸エチルとエタノールの等量混合液100mlで
2回抽出し、濾過、乾固し、所期の誘導体を分取した。
分取した誘導体の構造を、H−NMRと13C−NM
Rにより同定したところ、2−O−α−D−モノグルコ
シル−L−アスコルビン酸におけるL−アスコルビン酸
残基の6位のヒドロキシル基に、2−エチルヘキサノイ
ル基が結合した、6−O−(2−エチルヘキサノイル)
−2−O−α−D−モノグルコシル−L−アスコルビン
酸であることが判明した。
【0026】<実施例2> 〈イソパルミチン酸誘導体の調製〉 (6−O−イソパルミトイル−2−O−α−D−モノグ
ルコシル−L−アスコルビン酸:化合物2)2−エチル
ヘキサン酸無水物をイソパルミチン酸無水物に代えた以
外は実施例1と同様にして、所期の誘導体を分取した。
分取した誘導体の構造を、H−NMRと13C−NM
Rにより同定したところ、2−O−α−D−モノグルコ
シル−L−アスコルビン酸におけるL−アスコルビン酸
残基の6位のヒドロキシル基に、イソパルミトイル基が
結合した、6−O−イソパルミトイル−2−O−α−D
−モノグルコシル−L−アスコルビン酸であることが判
明した。
【0027】<実施例3> 〈イソステアリン酸誘導体の調製〉 (6−O−イソステアロイル−2−O−α−D−モノグ
ルコシル−L−アスコルビン酸:化合物3)2−エチル
ヘキサン酸無水物をイソステアリン酸無水物に代えた以
外は実施例1と同様にして、所期の誘導体を分取した。
分取した誘導体の構造を、H−NMRと13C−NM
Rにより同定したところ、2−O−α−D−モノグルコ
シル−L−アスコルビン酸におけるL−アスコルビン酸
残基の6位のヒドロキシル基に、イソステアロイル基が
結合した、6−O−イソステアロイル−2−O−α−D
−モノグルコシル−L−アスコルビン酸であることが判
明した。
【0028】<実施例4> 〈2−プロピルペンタン酸誘導体の調製〉 (6−O−(2−プロピルペンタノイル)−2−O−α
−D−モノグルコシル−L−アスコルビン酸:化合物
4)2−エチルヘキサン酸無水物を2−プロピルペンタ
ン酸無水物に代えた以外は実施例1と同様にして、所期
の誘導体を分取した。分取した誘導体の構造を、H−
NMRと13C−NMRにより同定したところ、2−O
−α−D−モノグルコシル−L−アスコルビン酸におけ
るL−アスコルビン酸残基の6位のヒドロキシル基に、
2−プロピルペンタノイル基が結合した、6−O−(2
−プロピルペンタノイル)−2−O−α−D−モノグル
コシル−L−アスコルビン酸であることが判明した。
【0029】<実施例5> 〈2−ブチルヘキサン酸誘導体の調製〉 (6−O−(2−ブチルヘキサノイル)−2−O−α−
D−モノグルコシル−L−アスコルビン酸:化合物5)
2−エチルヘキサン酸無水物を2−ブチヘキサン酸無水
物に代えた以外は実施例1と同様にして、所期の誘導体
を分取した。分取した誘導体の構造を、H−NMRと
13C−NMRにより同定したところ、2−O−α−D
−モノグルコシル−L−アスコルビン酸におけるL−ア
スコルビン酸残基の6位のヒドロキシル基に、2−ブチ
ルヘキサノイル基が結合した、6−O−(2−ブチルヘ
キサノイル)−2−O−α−D−モノグルコシル−L−
アスコルビン酸であることが判明した。
【0030】<実施例6> 〈2−ペンチルヘプタン酸誘導体の調製〉 (6−O−(2−ペンチルヘプタノイル)−2−O−α
−D−モノグルコシル−L−アスコルビン酸:化合物
6)2−エチルヘキサン酸無水物を2−ペンチルヘプタ
ン酸無水物に代えた以外は実施例1と同様にして、所期
の誘導体を分取した。分取した誘導体の構造を、H−
NMRと13C−NMRにより同定したところ、2−O
−α−D−モノグルコシル−L−アスコルビン酸におけ
るL−アスコルビン酸残基の6位のヒドロキシル基に、
2−ペンチルヘプタノイル基が結合した、6−O−(2
−ペンチルヘプタノイル)−2−O−α−D−モノグル
コシル−L−アスコルビン酸であることが判明した。
【0031】<実施例7〜12>実施例1〜6で得た6
種類の本発明のアシル化誘導体(化合物1〜化合物6)
のそれぞれを用い、下記に示す処方に従って、本発明の
皮膚外用剤である化粧水を作成した。即ち、処方成分を
80℃に加熱し、攪拌可溶化して、攪拌冷却し、6種類
の化粧水(実施例7〜12)を得た。同様にして、本発
明のアシル化誘導体を、6−O−イソバレロイル−2−
O−α−D−モノグルコシル−L−アスコルビン酸、ま
たは、6−O−パルミトイル−2−O−α−D−モノグ
ルコシル−L−アスコルビン酸に置換した以外は同様に
して、それぞれ、比較例1及び比較例2の化粧水を作成
した。作成した計8種類の化粧水を、50℃、湿度70
%の過酷条件で1週間保存し、保存後に各化粧料中に存
在するL−アスコルビン酸誘導体の残存量をHPLCで
定量し、残存率(%)を、保存開始時の各L−アスコル
ビン酸誘導体量に対する百分率として求め、各化粧料に
含まれるL−アスコルビン酸誘導体の安定性を確かめ
た。結果を表1に示す。なお、比較例1及び比較例2に
おいて使用した6−O−イソバレロイル−2−O−α−
D−モノグルコシル−L−アスコルビン酸、及び、6−
O−パルミトイル−2−O−α−D−モノグルコシル−
L−アスコルビン酸は、いずれも、実施例1〜6の方法
に準じて調製することができる。
【0032】 〈化粧水の処方〉 1,3−ブタンジオール 5 重量部 グリセリン 2 重量部 エタノール 10 重量部 メチルパラベン 0.2重量部 グルコシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体 0.1重量部 ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.1重量部 水 82.6重量部
【0033】
【表1】
【0034】表1の結果から明らかなように、本発明の
アシル化誘導体(化合物1〜化合物6)を配合した実施
例7〜12の化粧料は、一週間保存後も、90%を越え
るL−アスコルビン酸誘導体の残存率を示し、安定性に
優れたものであることが分かる。特に、実施例4〜6で
得たグルコシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体
(化合物4〜化合物6)を配合した実施例10〜12の
化粧料に至っては、L−アスコルビン酸誘導体の残存率
は実に99%にも達し、その安定性は極めて顕著であっ
た。これに対し、同じくグリコシル−L−アスコルビン
酸のアシル化誘導体ではあるけれども、本発明のグリコ
シル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体の範疇に入
らないグルコシル−L−アスコルビン酸のイソバレリア
ン酸誘導体を配合した比較例1の化粧料、及び、分岐を
有しないアシル基であるパルミトイル基を結合したグル
コシル−L−アスコルビン酸のパルミチン酸誘導体を配
合した比較例2の化粧料においては、一週間保存後のL
−アスコルビン酸誘導体の残存率は、高々80%未満に
過ぎず、本発明のアシル化誘導体と比べて、その安定性
は著しく劣るものであった。このような本発明のアシル
化誘導体の安定性は、原料であるグルコシル−L−アス
コルビン酸に比しても格段に優れているものであった。
【0035】<実験1>実施例8及び10、比較例1及
び2の化粧水、更に、実施例8の化粧水において、含ま
れる本発明のグリコシル−L−アスコルビン酸のアシル
化誘導体を水に置き換えた化粧水(対照例1)を用い
て、色黒に悩む人をパネラーとして、1群10人、計5
0人で使用テストを行った。使用テストは、上記5種の
化粧水のそれぞれを各群毎にパネラーに割り当て、通常
使用している化粧水の代わりに朝晩1日2回30日間塗
布してもらい、使用終了後、色黒の改善度合いを、(ス
コア5:著しく改善した)、(スコア4:明確に改善し
た)、(スコア3:やや改善した)、(スコア2:不
変)、(スコア1:悪化した)の基準でスコアを付けて
評価してもらった。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】表2の結果から明らかなように、本発明の
グリコシル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体を配
合した実施例8及び実施例10の化粧水は、(スコア
5:著しく改善した)及び(スコア4:明確に改善し
た)と評価したパネラーの数が、その他の化粧水に比べ
て顕著に多く、美白効果に優れることがわかる。これ
は、本発明のグリコシル−L−アスコルビン酸のアシル
化誘導体の安定性が優れることとグリコシル−L−アス
コルビン酸のアシル化誘導体の基本的構造が生体利用性
に優れるためであると思われる。
【0038】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、安定性
の改善されたグリコシル−L−アスコルビン酸のアシル
化誘導体を提供することができ、以て効果の高い皮膚外
用剤、特に美白効果に優れた化粧料を提供することがで
きる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 17/00 A61P 17/00 Fターム(参考) 4C057 BB02 DD01 KK02 4C083 AC102 AC122 AC432 AC482 AD201 AD202 CC02 CC04 EE01 EE16 4C086 AA01 AA02 AA03 EA11 GA02 MA01 MA04 MA17 MA63 NA03 NA14 ZA89

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グリコシル−L−アスコルビン酸のアシ
    ル化誘導体におけるアシル基が分岐を有する炭素数4〜
    20の脂肪族アシル基であることを特徴とするグリコシ
    ル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体。
  2. 【請求項2】 アシル基が、一般式(I)で表されるも
    のであることを特徴とする請求項1記載のグリコシルL
    −アスコルビン酸のアシル化誘導体。 一般式(I) 【化1】 (但し、式中nおよびmは0または正の整数を表し、n
    +m=0〜16の範囲にあるものとする。)
  3. 【請求項3】 グリコシル−L−アスコルビン酸のアシ
    ル化誘導体が、2−O−α−D−モノグルコシル−6−
    O−(2−プロピルペンタノイル)−L−アスコルビン
    酸 、6−O−(2−ブチルヘキサノイル)−2−O−
    α−D−モノグルコシル−L−アスコルビン酸、又は、
    2−O−α−D−モノグルコシル−6−O−(2−ペン
    チルヘプタノイル)−L−アスコルビン酸である請求項
    1又は2記載のグリコシル−L−アスコルビン酸のアシ
    ル化誘導体。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のグリコ
    シル−L−アスコルビン酸のアシル化誘導体を含有する
    皮膚外用剤。
  5. 【請求項5】 皮膚外用剤が化粧料であることを特徴と
    する請求項4記載の皮膚外用剤。
  6. 【請求項6】 美白用であることを特徴とする請求項4
    又は5記載の皮膚外用剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010189343A (ja) * 2009-02-19 2010-09-02 Seiwa Kasei Co Ltd グルコピラノシルアスコルビン酸誘導体又はその塩、その製造方法、及び化粧料
CN115974946A (zh) * 2021-10-14 2023-04-18 南京华狮新材料有限公司 一种具有美白功效的化合物及其制备方法

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