JP2003300988A - 光学活性第2級ホスフィンボラン誘導体及びその中間体の製造方法 - Google Patents

光学活性第2級ホスフィンボラン誘導体及びその中間体の製造方法

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JP2003300988A
JP2003300988A JP2002104764A JP2002104764A JP2003300988A JP 2003300988 A JP2003300988 A JP 2003300988A JP 2002104764 A JP2002104764 A JP 2002104764A JP 2002104764 A JP2002104764 A JP 2002104764A JP 2003300988 A JP2003300988 A JP 2003300988A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】高い光学純度の光学活性な第2級ホスフィンボ
ランをエナンチオマーの両方について任意選択的に得る
ことが可能であると共に、低コストで短時間に大量に製
造することができる光学活性な第2級ホスフィンボラン
の製造方法及びその中間体の製造方法を提供すること。 【解決手段】式(1)で示されるホスフィンボラン誘導
体のラセミ体と、式(2)で示される光学活性炭酸エス
テルハライドとを塩基の存在下で反応させて、式(3)
で示されるアルコキシカルボニルホスフィンボランのジ
アステレオマー混合物を得、分割して光学活性アルコキ
シカルボニルホスフィンボランを得、さらにアルカリ剤
の存在下で加水分解して光学活性第2級ホスフィンボラ
ン誘導体を得る方法。 R1及びR2は、アルキル基等を表し、R*は、光学活
性を有するアルキル基等を表す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リン原子上に不斉
中心を有する光学活性なホスフィン誘導体の中間原料と
して有用な光学活性第2級ホスフィンボラン誘導体の製
造方法、該光学活性第2級ホスフィンボラン誘導体の中
間原料として有用なアルコキシカルボニルホスフィンボ
ランの製造方法及び光学活性アルコキシカルボニルホス
フィンボランの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】J.Am.Chem.Soc.199
8,120,1635〜1636頁や、特開平11−8
0179号公報等には、1,2−ビス(ホスフィノ)エ
タンを骨格とするビスホスフィン配位子が、不斉選択性
および触媒活性に優れた不斉水素化反応の触媒であるこ
とが開示されており、このため、ビスホスフィン配位子
の効率よい製造方法の開発が望まれている。
【0003】これに対し、上記ビスホスフィン配位子の
製造の際に、中間原料として第2級ホスフィンボラン誘
導体を用いると、活性な水素原子を有して反応性に富む
ため有用であることが知られている。さらに、この第2
級ホスフィンボラン誘導体のうち、特に光学活性体は、
リン原子上に不斉中心を有する各種の光学活性体を高い
光学純度で且つ収率よく誘導できることも今本らにより
示されている。
【0004】このため、光学活性な第2級ホスフィンボ
ラン誘導体を高光学純度で工業的に有利に合成すること
ができれば、上記ビスホスフィン配位子を容易に製造で
きるため望ましい。
【0005】従来、このような光学活性な第2級ホスフ
ィンボランの製造方法としては、例えば、下記反応式
(1)
【0006】
【化13】
【0007】に従って、ホスフィンボラン(化合物(1
1))に(−)―スパルテイン−(S)―ブチルリチウ
ム錯体を作用させ、酸化して光学活性なホスフィンボラ
ンのアルコール類(化合物(12))を得た後、酸化を
経て脱炭酸することにより光学活性な第2級ホスフィン
ボラン誘導体(化合物(13))を得る方法(J.Or
g.Chem.,Vol.65,No.13,2000
年)が提案されている。また、下記反応式(2)
【0008】
【化14】
【0009】に従って、ジクロロホスフィン(化合物
(14))にリチウム2−ボロネンチオレート、メチル
マグネシウムブロマイド及びボラン―THF錯体を作用
させて、ボルニルチオメチルホスフィンボラン(化合物
(15))を得た後、HPLCで分離して光学活性な、
ボルニルチオメチルホスフィンボラン(化合物(1
6))を得、次にリチウムナフタレニドで還元的にP-S
結合を解裂して光学活性な第2級ホスフィンボラン(化
合物(17))を得る方法(J.Org.Chem.,
Vol.65,No.6,2000年)も提案されてい
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記反
応式(1)を用いる方法は、不斉源として天然物の
(−)―スパルテインを用いるために光学活性な第2級
ホスフィンボラン誘導体の両方のエナンチオマーを得る
ことは不可能であり、またホスフィンの置換基によって
は光学純度が高くないという問題があった。また、上記
反応式(2)を用いる方法は、得られる第2級ホスフィ
ンボラン誘導体の光学純度が高いものの、ジアステレオ
マー混合物の分割手段としてHPLC等の特殊な分離手
段を用いなければならないため、コストが高く、また短
時間に大量に製造することができないという問題があっ
た。
【0011】従って、本発明の目的は、高い光学純度の
光学活性な第2級ホスフィンボランをエナンチオマーの
両方について任意選択的に得ることが可能であると共
に、低コストで短時間に大量に製造することができる光
学活性な第2級ホスフィンボランの製造方法及びその中
間体の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本
発明者は、まず、上記一般式(1)で表されるホスフィ
ンボラン誘導体のラセミ体と、上記一般式(2)で表さ
れる光学活性な炭酸エステルハライドの光学活性体の1
種とを反応させて、上記一般式(3)で表されるアルコ
キシカルボニルホスフィンボランのジアステレオマー混
合物を得た後、再結晶法等の簡便な方法でジアステレオ
マー混合物を分割し、さらにアルカリ剤の存在下に加水
分解すれば、上記一般式(5)で表される光学活性第2
級ホスフィンボラン誘導体を、高い光学純度で任意選択
的に得ることができることを見出し、本発明を完成する
に至った。
【0013】すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0014】
【化15】
【0015】(式中、R1及びR2は、直鎖状又は分岐状
のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。但
し、R1とR2とでは同一の基となることはない。)で表
されるホスフィンボラン誘導体のラセミ体と、下記一般
式(2)
【0016】
【化16】
【0017】(式中、R*は光学活性を有するアルキル
基又は環式テルペン基、Xはハロゲン原子を示す。)で
表される光学活性炭酸エステルハライドとを塩基の存在
下で反応させて、下記一般式(3)
【0018】
【化17】
【0019】(式中、R1、R2及びR*は前記と同
義。)で表されるアルコキシカルボニルホスフィンボラ
ンのジアステレオマー混合物を得ることを特徴とする光
学活性第2級ホスフィンボラン誘導体の第1中間体の製
造方法を提供するものである。
【0020】また、本発明は、前記光学活性第2級ホス
フィンボラン誘導体の第1中間体を分割して下記一般式
(4)
【0021】
【化18】
【0022】(式中、R1、R2及びR*は前記と同義。
*は不斉リン原子を示す。)で表される光学活性アル
コキシカルボニルホスフィンボランを得る第二工程を有
することを特徴とする光学活性第2級ホスフィンボラン
誘導体の第2中間体の製造方法を提供するものである。
【0023】また、本発明は、前記光学活性第2級ホス
フィンボラン誘導体の第2中間体をアルカリ剤の存在下
に加水分解して下記一般式(5)
【0024】
【化19】
【0025】(式中、R1、R2及びP*は前記と同
義。)で表される光学活性第2級ホスフィンボラン誘導
体を得る第三工程を有することを特徴とする光学活性第
2級ホスフィンボラン誘導体の製造方法を提供するもの
である。
【0026】
【発明の実施の形態】まず、本発明に係る光学活性第2
級ホスフィンボラン誘導体の製造方法について説明す
る。該方法は、ホスフィンボラン誘導体のラセミ体をジ
アステレオマーにした後、ホスフィンボラン誘導体の一
方のみを任意選択的に得るホスフィンボラン誘導体のラ
セミ分割に関する方法であり、具体的には、上記一般式
(1)で表されるホスフィンボラン誘導体のラセミ体
と、上記一般式(2)で表される光学活性炭酸エステル
ハライドとを塩基の存在下で反応させて、上記一般式
(3)で表されるアルコキシカルボニルホスフィンボラ
ンのジアステレオマー混合物を得る第一工程、該アルコ
キシカルボニルホスフィンボランのジアステレオマー混
合物を分割して上記一般式(4)で表される光学活性ア
ルコキシカルボニルホスフィンボランを得る第二工程、
及び、該光学活性アルコキシカルボニルホスフィンボラ
ンをアルカリ剤の存在下に加水分解して上記一般式
(5)で表される光学活性第2級ホスフィンボラン誘導
体を得る第三工程を有するものである。
【0027】<第一工程>第一工程で用いられるホスフ
ィンボラン誘導体のラセミ体は、上記一般式(1)で表
されるものである。なお、本発明において、一般式
(1)は、P原子を不斉中心とした(R)体と(S)体
とを当量含むラセミ体を示す意味で用いる。
【0028】一般式(1)中、R1及びR2は炭素数1〜
18の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アリール基又は
アラルキル基を示す。アルキル基としては、具体的に
は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso―ブ
チル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、iso
―ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、is
o―オクチル基、n−ドデシル基、iso―ドデシル
基、n−オクタデシル基、iso―オクタデシル基、シ
クロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。ア
リール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル
基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基として
は、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。但し、
一般式(1)において、R1とR2は、同一の基となるこ
とはない。
【0029】上記一般式(1)で表されるホスフィンボ
ラン誘導体のラセミ体のうち、好ましい化合物として
は、例えば、エチルメチルホスフィンボラン、イソプロ
ピルメチルホスフィンボラン、n−プロピルメチルホス
フィンボラン、イソブチルメチルホスフィンボラン、n
−ブチルメチルホスフィンボラン、tert−ブチルメ
チルホスフィンボラン、sec−ブチルメチルホスフィ
ンボラン、イソヘプチルメチルホスフィンボラン、n−
ヘプチルメチルホスフィンボラン、イソヘキシルメチル
ホスフィンボラン、n−ヘキシルメチルホスフィンボラ
ン、シクロペンチルメチルホスフィンボラン、シクロヘ
キシルメチルホスフィンボラン、ベンジルメチルホスフ
ィンボラン、イソプロピルエチルホスフィンボラン、n
−プロピルエチルホスフィンボラン、イソブチルエチル
ホスフィンボラン、n−ブチルエチルホスフィンボラ
ン、tert−ブチルエチルホスフィンボラン、sec
−ブチルエチルホスフィンボラン、イソヘプチルエチル
ホスフィンボラン、n−ヘプチルエチルホスフィンボラ
ン、イソヘキシルエチルホスフィンボラン、n−ヘキシ
ルエチルホスフィンボラン、シクロペンチルエチルホス
フィンボラン、シクロヘキシルエチルホスフィンボラ
ン、ベンジルエチルホスフィンボラン、イソプロピル−
n−プロピルホスフィンボラン、イソブチル−n−プロ
ピルホスフィンボラン、n−ブチル−n−プロピルホス
フィンボラン、tert−ブチル−n−プロピルホスフ
ィンボラン、sec−ブチル−n−プロピルホスフィン
ボラン、イソヘプチル−n−プロピルホスフィンボラ
ン、n−ヘプチル−n−プロピルホスフィンボラン、イ
ソヘキシル−n−プロピルホスフィンボラン、n−ヘキ
シル−n−プロピルホスフィンボラン、シクロペンチル
−n−プロピルホスフィンボラン、シクロヘキシル−n
−プロピルホスフィンボラン、ベンジル−n−プロピル
ホスフィンボラン、イソブチルイソプロピルホスフィン
ボラン、n−ブチルイソプロピルホスフィンボラン、t
ert−ブチルイソプロピルホスフィンボラン、sec
−ブチルイソプロピルホスフィンボラン、イソヘプチル
イソプロピルホスフィンボラン、n−ヘプチルイソプロ
ピルホスフィンボラン、イソヘキシルイソプロピルホス
フィンボラン、n−ヘキシルイソプロピルホスフィンボ
ラン、シクロペンチルイソプロピルホスフィンボラン、
シクロヘキシルイソプロピルホスフィンボラン、ベンジ
ルイソプロピルホスフィンボラン、イソブチル−ter
t−ブチルホスフィンボラン、n−ブチル−tert−
ブチルホスフィンボラン、sec−ブチル−tert−
ブチルホスフィンボラン、ベンジル−tert−ブチル
ホスフィンボラン、tert−オクチルメチルホスフィ
ンボラン、アダマンチルメチルホスフィンボラン及びn
−テトラデシル−tert−ブチルホスフィンボラン等
が挙げられる。このうち、特にtert−ブチルメチル
ホスフィンボラン、シクロヘキシルメチルホスフィンボ
ラン、tert−オクチルメチルホスフィンボラン、ア
ダマンチルメチルホスフィンボランは、2つの置換基R
1とR2のうち一方がかさ高く他方がかさの低いものであ
り、不斉合成触媒用のリガンド中間体として用いられる
場合に優れた立体選択性を示すため好ましい。
【0030】原料の上記一般式(1)で表されるホスフ
ィンボランは、公知の方法により製造することができ
る。例えば、特開2001−253889号公報記載の
方法を用い、下記反応式(3)
【0031】
【化20】
【0032】に従って、容易に製造することができる。
なお、反応式(3)中、R1、R2及びXは上記と同義で
ある。
【0033】該方法を詳細に説明すると、モノアルキル
ホスフィン(化合物(18))とボラン―テトラヒドロ
フラン錯体のボラン化剤とを、モノアルキルホスフィン
に対して等モル以上、0℃程度の温度で1時間程度反応
させた後、反応液を濃縮し、次いで、残留物を蒸留する
ことによりモノアルキルホスフィンボラン(化合物(1
9))を得る。次に、得られたモノアルキルホスフィン
ボラン(化合物(19))とハロゲン化物(化合物(2
0))とをn−ブチルリチウム等の塩基の存在下にヘキ
サン等の不活性溶媒中で0℃程度の温度で反応させるこ
とにより上記一般式(1)で表されるホスフィンボラン
を製造するものである。
【0034】第一工程で用いられる光学活性炭酸エステ
ルハライドは、上記一般式(2)で表されるものであ
る。なお、本発明において、R*は、R*がとり得る
(R)体、(S)体等の複数の光学活性体のうちから任
意に選んだ1種のみを意味する。例えば、R*が理論上
(R)体と(S)体とをとり得る構造である場合に、一
般式(2)におけるR*は(R)体又は(S)体のいず
れかを指す。従って、本発明において、一般式(2)は
光学活性体の1種のみを表す。上記一般式(2)で表さ
れる光学活性炭酸エステルハライドは、一般式(1)で
表されるホスフィンボラン誘導体のラセミ体と反応して
該ラセミ体をジアステレオマー化するものである。
【0035】一般式(2)中、Xは塩素、臭素、ヨウ素
等のハロゲン原子を示し、このうち塩素原子は反応性が
高いため好ましい。また、式中に示されるR*は光学活
性なアルキル基又は環式テルペン基を表す。本発明で用
いられるR*としては、例えば、光学活性S−ブチル基
等のアルキル基、メンチル、イソメンチル、ボルニル、
イソボルニル等の環式テルペン基が挙げられる。このう
ち、R*が環式テルペン基であると、本工程で得られ上
記一般的(3)で表されるアルコキシカルボニルホスフ
ィンボランのジアステレオマー混合物が結晶を生成し易
いため好ましく、またボルニル基であると、該ジアステ
レオマー混合物が結晶をより生成し易いためさらに好ま
しい。
【0036】上記一般式(2)で表される光学活性炭酸
エステルハライドの具体的化合物としては、例えば、(1
S)-endo-2-ボルニルクロロホルメート、(1S)-exo-2-ボ
ルニルクロロホルメート、(1R)-endo-2-ボルニルクロロ
ホルメート、(1R)-exo-2-ボルニルクロロホルメート、
(+)-メンチルクロロホルメート、(-)-メンチルクロロホ
ルメート等が挙げられる。
【0037】光学活性炭酸エステルハライドは、公知の
方法により製造することができる。例えば、下記反応式
(4)
【0038】
【化21】
【0039】(式中、Xはハロゲン原子を示す。)に従
って、(−)−ボルネオール(化合物(21))をキノ
リンとトリホスゲンとをトルエン等の不活性溶媒中で6
0℃で12時間程度反応させることにより容易に(1S)-e
ndo-2-ボルニルクロロホルメート(化合物(2))を製
造することができる。
【0040】第一工程で用いられる塩基としては、特に
制限はないが、例えば、水素化ナトリウム等の金属水素
化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン
類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化アル
カリ、ナトリウム・メトキシド、カリウム・メトキシ
ド、ナトリウム・エトキシド、カリウム・エトキシド等
のアルコキシド、ピペリジン、ピリジン、カリウムクレ
ゾラート、アルキルリチウム等が挙げられ、これらは1
種又は2種以上で用いられる。これらの塩基の中、アル
キルリチウムが好ましく、アルキルリチウムとしては、
例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム
等が挙げられる。本工程において、塩基は上記ホスフィ
ンボラン誘導体のラセミ体と上記光学活性炭酸エステル
ハライドとの反応の開始剤である。
【0041】第一工程においては、反応の際に溶媒を用
いるが、溶媒として不活性溶媒を用いると反応効率を高
めることができるため好ましい。該不活性溶媒として
は、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジ
オキサン等の鎖状または環状エーテル、ベンゼン、トル
エン、キシレン等の芳香族炭化水素等の1種又は2種以
上が挙げられる。
【0042】第一工程において、原料の混合比は、上記
一般式(2)で表される光学活性炭酸エステルハライド
の配合量が、上記一般式(1)で表されるホスフィンボ
ラン誘導体のラセミ体の配合量に対して、通常1〜3倍
モル、好ましくは1〜1.2倍モルである。配合比がこ
の範囲内にあると、生成物の分離精製が容易であると共
に経済的であるため好ましい。
【0043】また、塩基の添加量は、上記一般式(1)
で表されるホスフィンボラン誘導体のラセミ体に対し
て、通常1〜3倍モル、好ましくは1〜1.2倍モルで
ある。配合比がこの範囲内にあると、生成物の分離精製
が容易であると共に経済的であるため好ましい。
【0044】反応条件としては、反応温度が−78〜6
0℃、好ましくは−78〜0℃であり、反応時間が0.
5〜12時間、好ましくは1〜2時間である。
【0045】反応終了後、反応液に、例えば1M HC
l水溶液を添加してクエンチ(反応停止)し、生成物を
酢酸エチル等の極性溶媒で抽出し、抽出液を濃縮後、カ
ラムクロマトグラフィー等で精製すると、上記一般式
(3)で表されるアルコキシカルボニルホスフィンボラ
ンのジアステレオマー混合物が光学活性第2級ホスフィ
ンボラン誘導体の第1中間体として得られる。
【0046】なお、本発明において、一般式(3)は、
P原子を不斉中心とした(R)体と上記一般式(2)で
表される光学活性炭酸エステルハライドとの反応生成
物、及び該反応生成物のジアステレオマーでありP原子
を不斉中心とした(S)体と上記一般式(2)で表され
る光学活性炭酸エステルハライドとの反応生成物が当量
混在するジアステレオマー混合物を示す意味で用いる。
一般式(3)中、R1、R2及びR*は上記と同義であ
る。
【0047】<第二工程>第二工程は、第一工程で得ら
れ、上記一般式(3)で表されるアルコキシカルボニル
ホスフィンボランのジアステレオマー混合物を各ジアス
テレオマーに分割して上記一般式(4)で表される光学
活性アルコキシカルボニルホスフィンボランを得る工程
である。
【0048】第二工程のジアステレオマー混合物の分割
で用いることができる分割法としては、カラムクロマト
グラフィー法及びジアスレテオマー異性体間の溶解度差
を利用した再結晶法等が挙げられるが、この中、分割手
段が容易で且つ低コストで大量に処理できるため再結晶
法が好ましい。
【0049】再結晶法を行う場合に用いられる溶媒とし
ては、上記一般式(3)で表されるアルコキシカルボニ
ルホスフィンボランのジアステレオマー混合物の種類に
もよるが、通常トルエン、メタノール、エタノール、酢
酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジ
オキサン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の有機溶媒
が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることが
できる。例えば、上記一般式(3)で表されるアルコキ
シカルボニルホスフィンボランのジアステレオマー混合
物が[ (1S)-endo-2-ボルニルオキシカルボニル] (tert
−ブチル)メチルホスフィンボランである場合は、溶媒
としてn−ヘキサンを用いると結晶が生成し易くジアス
テレオマーを効率的に分離できるため好ましい。
【0050】再結晶法について具体例を挙げて説明す
る。例えば、アルコキシカルボニルホスフィンボランの
ジアステレオマー混合物が[ (1S)-endo-2-ボルニルオキ
シカルボニル] (tert−ブチル)メチルホスフィンボラ
ンである場合、再結晶法を行うと、通常、(Rp,1
S)体が結晶として析出する。このため、該結晶を濾液
から分離することにより(Rp,1S)体と、濾液中に
該(Rp,1S)体に比べて過剰に残る(Sp,1S)
体とに分割することができる。ここで、Rpとはリン原
子についてR体であることを示し、Spとはリン原子に
ついてS体であることを示す。なお、濾液中に過剰に残
る(Sp,1S)体)は、例えば、カラムクロマトグラ
フィー等の分離手段により分割することができる。
【0051】ジアスレテオマー混合物の分割が終了する
と、上記一般式(4)で表される光学活性アルコキシカ
ルボニルホスフィンボランが光学活性第2級ホスフィン
ボラン誘導体の第2中間体として得られる。なお、本発
明において、一般式(4)は、上記一般式(3)で表さ
れるアルコキシカルボニルホスフィンボランのジアステ
レオマー混合物のうち、ジアステレオマー分割で分離さ
れたそれぞれの光学活性体、すなわち光学活性体の1種
を示す意味で用いる。例えば、一般式(3)で表される
アルコキシカルボニルホスフィンボランのジアステレオ
マー混合物が(Rp,1S)体と(Sp,1S)体との
混合物である場合、一般式(4)で表される光学活性ア
ルコキシカルボニルホスフィンボランは、(Rp,1
S)体又は(Sp,1S)体のうち任意に選択したいず
れかを指す。
【0052】<第三工程>第三工程は、第二工程で得ら
れ、上記一般式(4)で表される光学活性アルコキシカ
ルボニルホスフィンボランをアルカリ剤の存在下に加水
分解して目的とする上記一般式(5)で表される光学活
性第2級ホスフィンボラン誘導体を得る工程である。
【0053】本発明で用いられるアルカリ剤の種類とし
ては、特に制限はないが、例えば、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム等の苛性アルカリが好ましく、特に好ま
しくは水酸化カリウムである。これらアルカリ剤の添加
量は、上記一般式(4)で表される光学活性アルコキシ
カルボニルホスフィンボランに対して、通常1倍モル以
上、好ましくは15〜20倍モルである。
【0054】加水分解で用いられる溶媒としては、例え
ば、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イ
ソプロパノール等が挙げられ、これらは1種又は2種以
上を適宜組み合わせて用いることができる。このうち、
アセトニトリル、水、メタノールからなる混合溶媒は反
応がスムーズに進行するため好ましく、また、該混合溶
媒を体積比でアセトニトリル:水:メタノール=10:
6:3としたものは基質の溶解性が良好であるため特に
好ましい。加水分解する温度は、通常0〜60℃、好ま
しくは0〜40℃で反応時間は1時間以上、好ましくは
4〜5時間である。
【0055】加水分解終了後は、反応液に1M HCl
等の酸を添加して中和処理した後、有機物をジエチルエ
ーテル等の極性溶媒にて抽出し、溶媒を留去して粗製品
を得る。これをクロマトグラフィー等で精製すると上記
一般式(5)で表される光学活性第2級ホスフィンボラ
ン誘導体を95%ee以上の高光学純度で得ることがで
きる。なお、本発明において、一般式(5)は、上記一
般式(1)で表されるホスフィンボラン誘導体のラセミ
体のうち、いずれか一種を示す意味で用いる。
【0056】なお、上記一般式(5)で表される光学活
性第2級ホスフィンボラン誘導体は、第一工程におい
て、光学活性炭酸エステルハライドを、(R)体、
(S)体等選択することにより、所望する構造の光学異
性体の1種を任意選択的に得ることができる。例えば、
t−ブチルメチルホスフィンボランを、(1S)-endo-2-ボ
ルニルクロロホルメートと反応させると最終的に(S)-t-
ブチルメチルホスフィンボランが得られる。
【0057】本発明で得られる上記一般式(5)で表さ
れる光学活性第2級ホスフィンボラン誘導体は、光学活
性なビスホスフィンボラン誘導体の原料等として用いる
ことができる。
【0058】本発明で得られる上記一般式(5)で表さ
れる光学活性第2級ホスフィンボラン誘導体の用途につ
いてより詳細に説明すると、例えば、下記反応式(5)
【0059】
【化22】
【0060】に従って、本発明で得られた光学活性な第
2級ホスフィンボラン誘導体の光学活性体の1種(化合
物(5))と1,2−ジクロロエタンとをn−ブチルリ
チウム等の塩基の存在下に反応させることにより、光学
活性なビスホスフィンボラン誘導体(化合物(22))
とすることができることが既に知られており(J.Or
g.Chem.,Vol.65,No.6,2000
年)、この化合物(22)はデヒドロアミノ酸等の不斉
還元反応の触媒として非常に有用なリガンドの前駆体で
あることも知られている。従って、本発明で得られる上
記一般式(5)で表される光学活性第2級ホスフィンボ
ラン誘導体は非常に有用である。
【0061】次に、本発明に係る光学活性第2級ホスフ
ィンボラン誘導体の第1中間体の製造方法について説明
する。なお、本発明において、光学活性第2級ホスフィ
ンボラン誘導体の第1中間体とは、上記のようにアルコ
キシカルボニルホスフィンボランのジアステレオマー混
合物を示す。該方法は、上記光学活性第2級ホスフィン
ボラン誘導体の製造方法において第一工程のみを行うも
のである。該方法で得られる上記一般式(3)で表され
るアルコキシカルボニルホスフィンボランのジアステレ
オマー混合物は、例えば、上記光学活性第2級ホスフィ
ンボラン誘導体の製造方法の第二工程の原料として使用
することができる。
【0062】次に、本発明に係る光学活性第2級ホスフ
ィンボラン誘導体の第2中間体の製造方法について説明
する。なお、本発明において、光学活性第2級ホスフィ
ンボラン誘導体の第2中間体とは、上記のように光学活
性アルコキシカルボニルホスフィンボランを示す。該方
法は、上記光学活性第2級ホスフィンボラン誘導体の製
造方法において第一工程及び第二工程を行うものであ
る。該方法で得られる上記一般式(4)で表される光学
活性アルコキシカルボニルホスフィンボランは、例え
ば、上記光学活性第2級ホスフィンボラン誘導体の製造
方法の第三工程の原料として使用することができる。
【0063】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】製造例1 <第一工程で用いるtert−ブチルメチルホスフィン
ボランの合成>水分を十分に除去しアルゴンガスで置換
した25mlフラスコに前記で調製したtert−ブチルホ
スフィンボラン(205mg、2mmol)、脱水したTHF6mlを加
え、氷浴で0℃に冷却した。ここにn-ブチルリチウム/ヘ
キサン水溶液(1.27ml、2mmol)をシリンジにて滴下し
た。30分間撹拌した後マイクロシリンジにてヨウ化メチ
ル284mg(2mmol)をゆっくり滴下した。滴下終了後フラス
コを徐々に昇温し、室温にて1時間撹拌後、反応液を10g
の氷に注ぎクエンチした。ここに希塩酸2ml、飽和食塩
水2mlを添加し撹拌した後、酢酸エチル10mlを追加して
分液ロートにて有機層と水層を分離した。分離した水層
に酢酸エチル5mlを加えて3回抽出を行った後に、有機層
を集めて希塩酸1ml、純水5ml、飽和食塩水5mlで洗浄し
た。硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、溶媒をエバポ
レーターにて除去した。得られた有機物をシリカゲルの
カラムクロマトグラフィーで分離精製した。目的物が溶
出している留分を集めてエバポレーターで溶媒を除去
し、白色固体のtert−ブチルメチルホスフィンボラ
ンを153mg得た(収率65%)。
【0065】(同定データ) Mp 33-37℃ Bp 90-91℃/15 mmHg1 H NMR (300.4 MHz, CDCl3) δ = 0.49 (br q, JHB = 9
8.6 Hz, 3H), 1.21 (d, 3JHP = 14.7 Hz, 9H), 1.33 (d
d, 2JHP = 10.7 Hz, J = 6.0 Hz, 3H), 4.41 (dm, JHP
= 354.8 Hz, 1H)13 C NMR (75.4 MHz, CDCl3) δ = 2.1 (d, JCP = 34.8
Hz), 26.0 (d, JCP = 34Hz), 26.2 (d, 2JCP = 3.0)31 P NMR (121.5 MHz, 1H decoupled, CDCl3 ) δ = -1
2.1 (br q, JPB = 51.4Hz) IR (KBr) 2970, 2380, 1463 HRMS EI m/z 117.1009. Calcd for C5H15BP (M+-H) 11
7.1005.
【0066】製造例2 <第一工程で用いる(1S)-endo-2-ボニルクロロホルメー
トの合成>アルゴン気流中、トリホスゲン15.1g (50.8mm
ol)を溶解したトルエン150mlを0℃に冷却し、ここに
(−)-ボルネオール23.1g (149mmol)とキノリン19.3g(14
9mmol)を溶解したトルエン150mlを1時間かけて滴下し
た。この反応液を0℃で1時間撹拌した後、60℃に昇温し
さらに3時間撹拌した。反応終了後、副生したキノリン
塩を濾過によって除去した後、濾液を濃縮し、残渣を減
圧蒸留することにより28.1gの(1S)-endo-2-ボルニルク
ロロホルメートが得られた。収率は87%であった。
【0067】(同定データ) Bp 54-55℃/0.2 mmHg1 H NMR (300.4 MHz, CDCl3) δ 0.86 (6H), 0.87 (3H),
1.11-1.19 (m, 1H), 1.20-1.40 (m, 2H), 1.66-1.80
(m, 2H), 1.80-1.94 (m, 1H), 2.30-2.44 (m, 1H), 4.9
5 (dm, 1H)13 C NMR (75.45 MHz, CDCl3) δ18.7, 19.6, 26.7, 27.
8, 36.0, 44.6, 48.0, 49.3, 89.3, 150.6 IR (KBr) 2958, 1777, 1171, 1151 HRMS EI m/z 216.0899. Calcd for C11H17O2Cl (M+) 21
6.0917.
【0068】実施例1 <t−ブチルメンチルオキシカルボニルメチルホスフィ
ンボランの合成>アルゴン雰囲気下、製造例1で得たt
−ブチルメチルホスフィンボラン236mg(2mmol)を2mlのT
HFに溶解し、-78 ℃に冷却した。ここにn-ブチルリチウ
ムのヘキサン溶液(1.3 ml、1.50 M ヘキサン溶液, 2 mm
ol)をシリンジにて注意深く滴下した。10分後、(+)-メ
ンチルクロロホルメート(481mg, 2.2 mmol)を注意深く
加えた。1時間この温度で撹拌した後、徐々に室温まで
昇温した。その後、反応液に冷却した塩酸溶液を注意深
く加えて反応を停止した。有機層を分離し、水層を酢酸
エチルで3回抽出して、これらの有機層を水、飽和食塩
水で洗浄後、硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレーター
にて濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマ
トグラフィーで精製して、412mgのt-ブチルメンチルオ
キシカルボニルメチルホスフィンボランのジアステレオ
マー混合物が無色油状物質として得られた。収率は67%
であった。
【0069】(同定データ)1 H NMR (300.4 MHz, CDCl3) δ 0.56 (br q, JHB = 85.
0 Hz, 6H), 0.74-0.77 (m, 6H), 0.8-0.9 (m, 2H), 0.
89-0.97 (m, 12H), 0.98-1.17 (m, 4H), 1.21-1.33 (m,
18H), 1.42-1.49 (m, 6H), 1.46-1.56 (m, 4H), 1.65-
1.77 (m, 4H), 1.86-2.07 (m, 4H), 4.84-4.97 (m, 2H)13 C NMR (75.4 MHz, CDCl3) δ4.5 (d, JCP = 34.8Hz),
4.7 (d, JCP = 34.8Hz), 15.7, 15,9 20.7, 20.8, 21.
9, 22.0, 22,9 23.1, 25.4-25.6 (m), 25.9, 26.1, 28.
6 (d, JCP = 28.6Hz), 28.7 (d, JCP = 28.6Hz), 31.4-
31.5 (m), 33.9,34.0, 40.6, 40.8, 46.7, 47.0, 77.2,
77,4 171.3, 172.331 P NMR (121.5 MHz, 1H decoupled, CDCl3 ) δ40.4-4
2.4 (m) IR (KBr) 2957, 2871, 2402, 2343, 1702, 1459, 1370 HRMS EI m/z 299.2281. Calcd for C16H33PB (M+-H) 29
9.2312.
【0070】実施例2 <[(1S)-endo-2-ボルニルオキシカルボニル](t−ブ
チル)メチルホスフィンボランの合成> アルゴン雰囲気下、製造例1で得たt−ブチルメチルホ
スフィンボラン3.76g(31 mmol)を80mlのTHFに溶解し、-
78 ℃に冷却した。ここにn-ブチルリチウムのヘキサン
溶液(23 ml、1.50 M ヘキサン溶液, 34mmol)をシリンジ
にて注意深く滴下した。10分後、製造例2で得た(1S)-e
ndo-2-ボルニルクロロホルメート7.1g (33 mmol)を注意
深く加えた。1時間この温度で撹拌した後、徐々に室温
まで昇温した。その後、反応液に冷却した塩酸溶液を注
意深く加えて反応を停止した。有機層を分離し、水層を
酢酸エチルで3回抽出して、これらの有機層を水、飽和
食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレー
ターにて濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムク
ロマトグラフィーで精製して、6.49gの[(1S)-endo-2-
ボルニルオキシカルボニル](t−ブチル)メチルホス
フィンボランのジアステレオマー混合物が白色固体とし
て得られた。収率は70%であった。
【0071】(同定データ) Mp 50-65℃1 H NMR (300.4 MHz, CDCl3) δ 0.60 (br q, JHB = 88.
6 Hz, 6H), 0.87 (3H),0.874 (3H), 0.90 (6H), 0.91
(6H), 1.0-1.1 (m, 2H), 1.22-1.33 (m, 18H), 1.22-1.
44 (m, 4H), 1.47 (d, 2JHP = 9.6Hz, 6H), 1.70-1.86
(m, 4H), 1.93-2.20 (m, 2H), 5.0-5.17 (m, 2H)13 C NMR (75.4 MHz, CDCl3) δ4.5 (d, JCP = 35.4Hz),
13.3, 13.6, 18.8, 19.6, 25.5 (m), 27.1, 27.8, 27.
9, 28.6 (d, JCP = 28.4Hz), 28.7 (d, JCP = 28.4Hz
), 36.7, 36.8, 44.7, 44.8, 48.9, 49.2, 82.8, 83.
3, 172.3 (d, JCP =70.0Hz), 172.4 (d, JCP = 69.5Hz)31 P NMR (121.5 MHz, 1H decoupled, CDCl3 ) δ40.8-4
3.0 (m) IR (KBr) 2956, 2880, 2378, 1704, 1475, 1368 HRMS EI m/z 297.2155. Calcd for C16H31PB (M+-H) 29
7.2155.
【0072】実施例3 <[(1S)-endo-2-ボルニルオキシカルボニル](t−
ブチル)メチルホスフィンボランのジアステレオマー混
合物のジアステレオ分割>実施例2で得られた[(1S)-en
do-2-ボルニルオキシカルボニル](t−ブチル)メチ
ルホスフィンボランのジアステレオマー混合物9.96gを
ヘキサン60mlに添加し、これを60℃に加温して溶解させ
た。その後溶液を徐々に0℃に冷却し、3時間0℃で保持
した後に生じた結晶を濾別した。濾液は濃縮し、再度ヘ
キサンから再結晶した。この結晶の濾別、濾液の濃縮及
びヘキサンからの再結晶からなる一連の手順は、結晶が
析出しなくなるまで繰り返した。集めた結晶を再度ヘキ
サンから再結晶して、95%のジアステレオ過剰率の(RP)-
[(1S)-endo-2-ボルニルオキシカルボニル](t-ブチル)メ
チルホスフィンボランが32%の収率で得られた。
【0073】(同定データ) Mp 97.6-99.0℃1 H NMR (300.4 MHz, CDCl3) δ 0.60 (br q, JHB = 90.
0 Hz, 3H), 0.87 (3H),0.89 (3H), 0.90 (3H), 1.01-1.
09 (m, 1H), 1.28 (d, 3JHP = 14.4 Hz, 9H), 1.27-1.4
3 (m, 2H), 1.47 (d, 2JHP = 9.8Hz, 3H), 1.69-1.86
(m, 2H), 1.93-2.01 (m, 2H), 2.33-2.50 (m, 2H), 5.0
0-5.09 (m, 1H)13 C NMR (75.4 MHz, CDCl3) δ4.5 (d, JCP = 35.1Hz),
13.6, 18.8, 19.6, 25.5 (d, 2JCP = 1.9Hz), 27.1, 2
7.8, 28.6 (d, JCP = 28.6Hz), 36.8, 44.8, 48.0, 4
9.0, 83.4, 172.4 (d, JCP = 69.5Hz)31 P NMR (121.5 MHz, 1H decoupled, CDCl3 ) δ41.0-4
3.0 (m) IR (KBr) 2956, 2880, 2377, 1702, 1474, 1368 HRMS EI m/z 297.2143. Calcd for C16H31PB (M+-H) 29
7.2155.
【0074】実施例4 < (S)-t-ブチルメチルホスフィンボランの合成>実施例
3で得られた(RP)-[(1S)-endo-2-ボルニルオキシカルボ
ニル] (t-ブチル)メチルホスフィンボラン596 mg(2 mmo
l, 95% de)をアセトニトリル(10ml)/メタノール(3ml)混
合溶液に溶解した。ここに27% KOH水溶液 (40 mmol)を
室温で添加し、激しく撹拌した。4時間後、薄層クロマ
トグラフィーにより原料の消費を確認した後、反応液を
1 M 塩酸水溶液で処理し、有機物をジエチルエーテルで
3回抽出した。抽出溶液を水、飽和食塩水で洗浄後、硫
酸ナトリウムで脱水してエバポレーターで濃縮した。残
渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、
目的物が溶出している留分を濃縮して白色固体の (S)-t
-ブチルメチルホスフィンボランが177mg得られた。収率
は75%であった。この生成物の光学純度を、(S)-t-ブチ
ルメチルホスフィンボランに2-ピコリル基を導入してキ
ラルHPLCにより分析したところ、95% eeであった。(Chi
ral Daicel AD-H column (10% 2-propanol/hexane, 1 m
L/min)
【0075】(同定データ)[α]20 D +3.4 (c 1.18, CH
Cl3); その他の物性同定データは、t-ブチルメチルホス
フィンボランと同じであった。
【0076】実施例5 < (S)-t-ブチルメチルホスフィンボランの合成>KOHの使
用量を、(RP)-[(1S)-endo-2-ボルニルオキシカルボニ
ル] (t-ブチル)メチルホスフィンボラン596 mg(2 mmol,
95% de)に対して40 mmol(20等量)から30 mmol(15等量)
に変更した以外は、実施例4と同じ条件で表記化合物の
合成を実施したところ、収率は65%、生成物の光学純度
は95% eeであった。
【0077】
【発明の効果】本発明に係る光学活性第2級ホスフィン
ボラン誘導体の製造方法によれば、特に1,2−ビス
(ホスフィノ)エタンを骨格とするビスホスフィン配位
子の中間原料として有用である光学活性な第2級ホスフ
ィンボラン誘導体を高い光学純度で任意選択的に得るこ
とが可能であると共に、低コストで短時間に大量に製造
することができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1) 【化1】 (式中、R1及びR2は、炭素数1〜18の直鎖状又は分
    岐状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示
    す。但し、R1とR2とでは同一の基となることはな
    い。)で表されるホスフィンボラン誘導体のラセミ体
    と、下記一般式(2) 【化2】 (式中、R*は光学活性を有するアルキル基又は環式テ
    ルペン基、Xはハロゲン原子を示す。)で表される光学
    活性炭酸エステルハライドとを塩基の存在下で反応させ
    て、下記一般式(3) 【化3】 (式中、R1、R2及びR*は前記と同義。)で表される
    アルコキシカルボニルホスフィンボランのジアステレオ
    マー混合物を得ることを特徴とする光学活性第2級ホス
    フィンボラン誘導体の第1中間体の製造方法。
  2. 【請求項2】 下記一般式(1) 【化4】 (式中、R1及びR2は、炭素数1〜18の直鎖状又は分
    岐状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示
    す。但し、R1とR2とでは同一の基となることはな
    い。)で表されるホスフィンボラン誘導体のラセミ体
    と、下記一般式(2) 【化5】 (式中、R*は光学活性を有するアルキル基又は環式テ
    ルペン基、Xはハロゲン原子を示す。)で表される光学
    活性炭酸エステルハライドとを塩基の存在下で反応させ
    て、下記一般式(3) 【化6】 (式中、R1、R2及びR*は前記と同義。)で表される
    アルコキシカルボニルホスフィンボランのジアステレオ
    マー混合物を得る第一工程、及び、該アルコキシカルボ
    ニルホスフィンボランのジアステレオマー混合物を分割
    して下記一般式(4) 【化7】 (式中、R1、R2及びR*は前記と同義。P*は不斉リン
    原子を示す。)で表される光学活性アルコキシカルボニ
    ルホスフィンボランを得る第二工程を有することを特徴
    とする光学活性第2級ホスフィンボラン誘導体の第2中
    間体の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記ジアステレオマー混合物の分割を、
    再結晶法で行うことを特徴とする請求項2記載の光学活
    性アルコキシカルボニルホスフィンボランの製造方法。
  4. 【請求項4】 下記一般式(1) 【化8】 (式中、R1及びR2は、炭素数1〜18の直鎖状又は分
    岐状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示
    す。但し、R1とR2とでは同一の基となることはな
    い。)で表されるホスフィンボラン誘導体のラセミ体
    と、下記一般式(2) 【化9】 (式中、R*は光学活性を有するアルキル基又は環式テ
    ルペン基、Xはハロゲン原子を示す。)で表される光学
    活性炭酸エステルハライドとを塩基の存在下で反応させ
    て、下記一般式(3) 【化10】 (式中、R1、R2及びR*は前記と同義。)で表される
    アルコキシカルボニルホスフィンボランのジアステレオ
    マー混合物を得る第一工程、該アルコキシカルボニルホ
    スフィンボランのジアステレオマー混合物を分割して下
    記一般式(4) 【化11】 (式中、R1、R2及びR*は前記と同義。P*は不斉リン
    原子を示す。)で表される光学活性アルコキシカルボニ
    ルホスフィンボランを得る第二工程、及び、該光学活性
    アルコキシカルボニルホスフィンボランをアルカリ剤の
    存在下に加水分解して下記一般式(5) 【化12】 (式中、R1、R2及びP*は前記と同義。)で表される
    光学活性第2級ホスフィンボラン誘導体を得る第三工程
    を有することを特徴とする光学活性第2級ホスフィンボ
    ラン誘導体の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記ジアステレオマー混合物の分割を、
    再結晶法で行うことを特徴とする請求項4記載の光学活
    性第2級ホスフィンボラン誘導体の製造方法。
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