JP2011219413A - ピラジン誘導体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光学活性2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体の製造方法。
【解決手段】工程I、II及びIIIにより、式(A)の光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体を製造する。式中、R1及びR2は、リン原子上に不斉を発現させるか又はリン原子が不斉面の一点をなす一対の基であり、水素原子、炭化水素基又は置換炭化水素基を示し、R3は不斉炭化水素基又は置換不斉炭化水素基を示し、R4及びR5は、水素原子又はアルキル基を示し、互いに結合し飽和又は不飽和環を形成してもよい。
Figure 2011219413

【選択図】なし

Description

本発明は、ピラジン誘導体の製造方法の製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、不斉合成反応において不斉触媒として用いられる金属錯体の配位子、抗がん剤として用いられる遷移金属錯体の配位子源等として有用な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体の製造方法に関する。
光学活性なホスフィン配位子を有する金属錯体を触媒とする有機合成反応は古くから知られており、極めて有用であることから、多くの研究成果が報告されている。近年では、リン原子そのものが不斉である配位子が開発されている。例えば特許文献1には、優れた触媒性能を発揮する金属錯体を提供することができる光学活性な2,3−ビス(ジアルキルホスフィノ)ピラジン誘導体及びその製造方法が記載されている。
特許文献1に記載の製造方法は、ジアルキル(ベンゾイルオキシメチル)ホスフィン−ボランから、過硫酸カリウム及び三塩化ルテニウムを用いて、ジアルキル−ホスフィンボランを得る工程を含んでいる。過硫酸カリウムは爆発のおそれのある化合物である。三塩化ルテニウムは高価な化合物であり、その使用は経済的に不利である。
また、光学活性な2,3−ビス(ジアルキルホスフィノ)ピラジン誘導体には、リン原子の不斉によって、(R,R)体、(S,S)体及び(R,S)体の3種の異性体が存在する。光学活性な2,3−ビス(ジアルキルホスフィノ)ピラジン誘導体の製造においては、これらの異性体のうち、所望のもののみが容易に得られることも求められる。
特開2007−56007号公報
従って、本発明の目的は、工業的に有利であり、異性体のいずれをも容易に製造し得る、光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体の製造方法を提供することにある。
本発明は、下記一般式(A)で表される光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体の製造方法であって、下記工程I、II及びIIIを含むことを特徴とするピラジン誘導体の製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
〔工程I〕
一般式(1)
Figure 2011219413
(式中、R1及びR2は、それらが存在することによりリン原子上に不斉を発現させるか又はリン原子が不斉面の一点をなす一対の基であり、それぞれ水素原子、炭化水素基又は置換炭化水素基を示す。)
で表される水素−ホスフィンボラン化合物と、一般式(2)
Figure 2011219413
(式中、R3は不斉炭化水素基又は置換不斉炭化水素基を示す。)
で表される光学活性イソシアネート化合物とをカップリング反応に付して、一般式(3)
Figure 2011219413
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同義である。)
で表されるホスフィンボラン化合物を得た後、得られた一般式(3)で表されるホスフィンボラン化合物を光学分割により精製して、一般式(3’)
Figure 2011219413
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同義であり、*は不斉を示す。)
で表される光学活性なホスフィンボラン化合物を得る。
〔工程II〕
前記工程Iで得られた一般式(3’)で表されるホスフィンボラン化合物を分解反応に付して、一般式(1’)
Figure 2011219413
(式中、R1及びR2並びに*は、前記と同義である。)
で表される光学活性な水素−ホスフィンボラン化合物を得る。
〔工程III〕
前記工程IIで得られた一般式(1’)で表される光学活性な水素−ホスフィンボラン化合物と、一般式(4)
Figure 2011219413
(式中、R4及びR5は、水素原子又はアルキル基を示し、同一の基であっても異なる基であってもよく、互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成していてもよく、該飽和又は不飽和の環は、置換基を有してもよく、Xはハロゲン原子を示す。)
で表される2,3−ジハロゲノピラジンとを反応させて、一般式(5)
Figure 2011219413
(式中、R1、R2、R4及びR5並びに*は、前記と同義である。)
で表される光学活性なビス(ホスフィン−ボラン)ピラジン化合物を得た後、該ビス(ホスフィン−ボラン)ピラジン化合物の脱ボラン化反応を行って、一般式(A)
Figure 2011219413
(式中、R1、R2、R4及びR5並びに*は、前記と同義である。)
で表される光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体を得る。
本発明の光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体の製造方法は、爆発のおそれのある化合物や高価な化合物を使用することがない点で、工業的に有利である。また、本発明の製造方法によれば、光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体のいずれの異性体も、容易に製造することができる。
先ず、前記工程Iについて説明する。
前記一般式(1)、(3)、(3’)において、R1、R2で示される基について以下に説明する。
1とR2は、それぞれ水素原子、炭化水素基又は置換炭化水素基を示す。R1とR2は、互いに独立していてもよく或いは架橋により連結していてもよい。
前記炭化水素基としては、特に制限はないが、例えばアルキル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。
前記アルキル基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状アルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、5−メチルペンチル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば炭素数3〜16のシクロアルキル基が挙げられ、具体的にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、シクロヘプチル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基が挙げられる。環状アルキル基には多環アルキル基も含まれ、多環アルキル基としては、メンチル基、ボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば炭素数7〜12のアラルキル基が挙げられ、具体的にはベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、1−フェニルブチル基、2−フェニルブチル基、3−フェニルブチル基、4−フェニルブチル基、1−フェニルペンチル基、2−フェニルペンチル基、3−フェニルペンチル基、4−フェニルペンチル基、5−フェニルペンチル基、1−フェニルヘキシル基、2−フェニルヘキシル基、3−フェニルヘキシル基、4−フェニルヘキシル基、5−フェニルヘキシル基、6−フェニルヘキシル基等が挙げられる。
前記アリール基としては、例えば炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ビナフチル基等が挙げられる。
前記置換炭化水素基としては、前記炭化水素基の少なくとも1個の水素原子が炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、保護基を有するアミノ基等の置換基で置換された炭化水素基、又は前記炭化水素基の少なくとも1個の炭素原子が酸素、窒素、硫黄、リン等のヘテロ原子で置換した基等が挙げられる。
前記置換炭化水素基には複素環基も含まれ、この場合は脂肪族複素環基でも芳香族複素環基でもよい。脂肪族複素環基としては、例えば5員もしくは6員の脂肪族複素環基が挙げられ、具体例としては、ピロリジル−2−オン基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。芳香族複素環基としては、例えば5員もしくは6員の芳香族複素環基が挙げられ、具体例としては、例えばピリジル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、フルフリル基、ピラニル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基等が挙げられる。
本発明において、リン原子上に不斉を発現させる場合は、不斉の効果をより高く発揮させるためには、R1とR2において立体的な嵩高さが大きく異なる組み合わせが好ましく、具体例としては、メチル基とtert−ブチル基との組み合わせ、メチル基とアダマンチル基との組み合わせ等が挙げられる。
本発明において、リン原子が軸不斉の対称面の一点を構成する場合は、不斉の効果をより高く発揮させるためには、R1又はR2にある不斉を構成する部分がリン原子にできるだけ近いことが好ましく、具体例としては、R1とR2が架橋により連結し、それらとリン原子を含めた一団が、2,5−ジメチルホスホラン又は2,5−ジエチルホスホランである場合等が挙げられる。
前記一般式(2)、(3)、(3’)において、R3で示される基について説明する。
3は、不斉炭化水素基又は置換不斉炭化水素基を示す。不斉炭化水素基としては特に限定はなく、具体例としては、(S)−1−フェニルエチル基、(R)−1−フェニルエチル基、(S)−1−(p−トルイル)エチル基、(R)−1−(p−トルイル)エチル基、(S)−1−(1−ナフチル)エチル基、(R)−1−(1−ナフチル)エチル基、(S)−1−シクロヘキシルエチル基、(R)−1−シクロヘキシルエチル基、(S)−2−(4−メチルフェニル)−1−フェニルエチル基、(R)−2−(4−メチルフェニル)−1−フェニルエチル基等が挙げられ、これらの中でも、工業的に安価に利用できる(S)−1−フェニルエチル基、(R)−1−フェニルエチル基が好ましい。
前記置換不斉炭化水素基としては、前記不斉炭化水素基の少なくとも1個の水素原子が炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、保護基を有するアミノ基等の置換基で置換された炭化水素基、又は前記不斉炭化水素基の少なくとも1個の炭素原子が酸素、窒素、硫黄、リン等のヘテロ原子で置換した基等が挙げられる。
工程Iにおいては、反応容器中で前記一般式(1)で表される水素−ホスフィンボラン化合物と前記一般式(2)で表される光学活性イソシアネート化合物を混合し、カップリング反応を進行させる。その際、反応系に塩基を加えて反応を促進させることが好ましい。このカップリング反応により、前記一般式(3)で表されるホスフィンボラン化合物が生成する。前記一般式(1)で表される水素−ホスフィンボラン化合物としては、S体とR体との混合物(例えばラセミ体)を用いることができる。前記一般式(1)で表される水素−ホスフィンボラン化合物としてS体とR体との混合物を用いると、カップリング反応により生成する前記一般式(3)で表されるホスフィンボラン化合物は、Sp体とRp体との混合物となる(尚、Sp体は不斉リン原子の立体配置がSである化合物を意味し、Rp体は不斉リン原子の立体配置がRである化合物を意味する)。
カップリング反応後に、副生塩を除去し、前記一般式(3)で表されるホスフィンボラン化合物の対掌体(Sp体とRp体)の片側のみを得るための精製(光学分割)を行なうと、前記一般式(3’)で表される光学活性なホスフィンボラン化合物を得ることができる。前記一般式(3’)で表されるホスフィンボラン化合物は、リン原子上又はリン原子を不斉面の一点とする不斉部分、及び光学活性カルバモイル基を有することを特徴とする、不斉点を2点有するジアステレオマーである。
一般式(1)で表される水素−ホスフィンボラン化合物に、一般式(2)で表される光学活性イソシアネート化合物を付加させるとき、該イソシアネート化合物における基R3としてS体のものを用いるか、それともR体のものを用いるかは、一般式(3’)で表されるホスフィンボラン化合物のジアステレオマーの光学分割のしやすさに応じて適宜決定すればよい。例えばR1とR2とがメチル基とtert−ブチル基との組み合わせである場合については、以下のことが言える。
前記一般式(2)で表される光学活性イソシアネート化合物として、R3が(S)−不斉炭化水素基又は(S)−置換不斉炭化水素基であるものを用いると、晶析により光学分割を行う場合に、Sp体の一般式(3’)で表されるホスフィンボラン化合物が晶析しやすい。一方、前記一般式(2)で表される光学活性イソシアネート化合物として、R3が(R)−不斉炭化水素基又は(R)−置換不斉炭化水素基であるものを用いると、晶析により光学分割を行う場合に、Rp体の一般式(3’)で表されるホスフィンボラン化合物が晶析しやすい。
前記一般式(1)で表される水素−ホスフィンボラン化合物は、市販品を使用することができ、例えば日本化学工業(株)から入手可能である。前記一般式(3)で表される光学活性イソシアネート化合物も、市販品を使用することができ、例えば東京化成工業(株)から入手可能である。
前記カップリング反応時には、適宜溶媒が使用される。該溶媒としては、反応基質を分解しない溶媒が使用され、具体例としては、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、メタノール、エタノール、水等が挙げられるが、好ましくはトルエン又はTHFである。
反応時の前記溶媒の添加量は、反応時における反応混合物の流動性及び溶媒の反応に与える効果を考慮して、適宜に設定することができる。
反応時の原料の仕込み量としては、前記一般式(2)で表される光学活性イソシアネート化合物を基準として、前記一般式(1)で表される水素−ホスフィンボラン化合物が好ましくは0.4〜1.5当量であり、最適値は1当量である。
反応時に塩基を加えると反応が促進する。ここで用いる塩基としては特に限定はないが、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、イソプロピルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド等の有機金属が挙げられる。好ましくはn−ブチルリチウムである。
前記塩基の仕込量としては、必要とされる反応の促進の度合いに応じて適宜に設定することができるが、前記一般式(2)で表される光学活性イソシアネート化合物に対し、通常0.1mol%〜150mol%であり、好ましくは1mol%〜10mol%である。仕込む順序は特に重要ではなく、作業性等に応じて任意に決定できる。
反応温度は、通常−80〜50℃であり、好ましくは反応が促進され且つ副反応及びラセミ化が抑制される0〜30℃である。
反応時間は、通常1分〜24時間であり、好ましくは反応が完結するのに十分な時間である30分〜4時間である。
カップリング反応後、副生塩等の副生物を除き、次いで、精製により光学分割すれば、対掌体の片側のみ、即ち前記一般式(3’)で表されるホスフィンボラン化合物を得ることができる。この際行なわれる精製の方法としては、光学分割が可能であれば特に制限されるものではなく、分液洗浄、晶析、蒸留、昇華、カラムクロマトグラフィー等が挙げられるが、好ましくは工業的に有利な晶析である。
前記一般式(3’)で表されるホスフィンボラン化合物としては、具体的には次のような化合物が挙げられるが、あくまで例示であって、本発明の適用範囲はこれらに限定されない。
リン原子上に不斉を導入する場合の構造式を例示する。
Figure 2011219413
(a)(SP)−tert−ブチル(メチル)[N−((S)−1−フェニルエチル)カルバモイル]ホスフィンボラン、又は(RP)−tert−ブチル(メチル)[N−((S)−1−フェニルエチル)カルバモイル]ホスフィンボラン
(b)(SP)−アダマンチル(メチル)[N−((S)−1−フェニルエチル)カルバモイル]ホスフィンボラン、又は(RP)−アダマンチル(メチル)[N−((S)−1−フェニルエチル)カルバモイル]ホスフィンボラン
リン原子が軸不斉の対称面の一点を構成する場合の構造式を例示する。
Figure 2011219413
(c)(R,R)−2,5−ジメチル−1−[N−((S)−1−(1−ナフチル)エチル)カルバモイル]ホスホランボラン
次に、前記工程IIについて説明する。
反応容器中で、前記工程Iで得られた一般式(3’)で表されるホスフィンボラン化合物と塩基を混合し、該ホスフィンボラン化合物を分解する。分解反応促進のためにアルコールを添加することが好ましい。反応後、副生物を除去し、前記一般式(1’)で表される光学活性な水素−ホスフィンボラン化合物を得る。
反応時には適宜溶媒が使用される。該溶媒としては、反応基質を分解しない溶媒が使用され、具体例としては、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、メタノール、エタノール、水等が挙げられるが、好ましくはDMF又はアセトニトリルである。
反応時の溶媒の添加量は、反応時における反応混合物の流動性及び溶媒の反応に与える効果を考慮して、適宜に設定することができる。
前記塩基としては特に限定はないが、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられる。これらの塩基は、均一系又は液−液の2相系で反応させるため溶液として供給されることが好ましい。例えば塩基として水酸化カリウムを用いる場合は、1〜70%水酸化カリウム水溶液又はメタノール溶液として用いることが好ましく、より具体的には50%水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
前記塩基の仕込量は、必要とされる反応の促進の度合いに応じて適宜に設定することができるが、前記一般式(3’)で表されるホスフィンボラン化合物に対し、通常0.01当量〜10当量であり、好ましくは0.1当量〜5当量である。仕込む順序は特に重要ではなく、作業性等に応じて任意に決定できる。
反応を促進する為にアルコールを加えるが、ここで用いるアルコールとしては特に限定はないが、例えばメタノール、エタノールが挙げられ、好ましくはメタノールである。
反応温度は、通常−80〜50℃であり、好ましくは反応が促進され且つ副反応及びラセミ化が抑制される0〜30℃である。
反応時間は、通常1分〜24時間であり、好ましくは反応が完結するのに十分な時間である3時間〜20時間である。
反応後、得られた生成物は、副生塩の除去のみといった簡単な精製作業の後に工程IIIに供することもできるし、分液洗浄、晶析、蒸留、昇華、カラムクロマトグラフィーといった精製作業により、前記一般式(1’)で表される光学活性な水素−ホスフィンボラン化合物のみを単離した後に工程IIIに供することもできる。
次に、前記工程IIIについて説明する。
前記一般式(4)において、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
前記一般式(4)において、R4及びR5は、水素原子又はアルキル基を示す。R4とR5は、同一でもよく或いは異なっていてもよい。R4及びR5で示されるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキル基が挙げられ、具体的にはエチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソヘプチル基、n−ヘプチル基、イソヘキシル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。環状のアルキル基としては、例えば炭素数3〜6の環状アルキル基が挙げられ、具体的にはシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの基は、少なくとも一個の一価の置換基で適宜置換されていてもよい。
またR4及びR5は、互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成していてもよい。R4及びR5が結合して形成された環としては、飽和又は不飽和の五員環又は六員環が挙げられる。例えばベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。これらの環は、少なくとも一個の一価の置換基で適宜置換されていてもよい。
4及びR5で示されるアルキル基、又はR4及びR5が結合して形成された環を置換してもよい一価の置換基としては、特に制限はない。該置換基としては、例えばハロゲン原子が挙げられる。
4及びR5として特に好ましいのは、両者が互いに結合して、少なくとも一個の一価の置換基で置換されていてもよいベンゼン環を形成している場合である。
前記一般式(4)で表される2,3−ジハロゲノピラジン誘導体は、市販品を使用することができ、例えば2,3−ジクロロキノキサリンは東京化成工業(株)から入手可能である。
前記工程IIIにおいて、前記工程IIで得られた一般式(1’)で表される光学活性な水素−ホスフィンボラン化合物と、前記一般式(4)で表される2,3−ジハロゲノピラジン誘導体との反応は、例えば、塩基の存在下、不活性溶媒中、−78〜30℃で、1〜24時間反応させることにより行なわれる。この反応により、前記一般式(5)で表されるビス(ホスフィン−ボラン)ピラジン化合物が得られる。
反応時の原料の仕込み量としては、前記一般式(4)で表される2,3−ジハロゲノピラジン誘導体を基準として、前記一般式(1’)で表される光学活性な水素−ホスフィンボラン化合物が好ましくは2〜10当量であり、さらに好ましくは2〜3当量である。
前記不活性溶媒としては、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、ヘキサン、トルエン等が挙げられるが、好ましくはテトラヒドロフランである。反応時の前記不活性溶媒の添加量は、反応時における反応混合物の流動性及び溶媒の反応に与える効果を考慮して、適宜に設定することができる。
前記塩基としては、n−ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、t-ブトキシカリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリム等が挙げられるが、好ましくはn−ブチルリチウムである。前記塩基の仕込量としては、必要とされる反応の促進の度合いに応じて適宜に設定することができるが、前記一般式(4)で表される2,3−ジハロゲノピラジン誘導体に対し、通常2〜10当量であり、好ましくは2〜3当量である。仕込む順序は特に重要ではなく、作業性等に応じて任意に決定できる。
前記一般式(5)で表されるビス(ホスフィン−ボラン)ピラジン化合物の脱ボラン化反応は、例えば、前記反応により得られた該ビス(ホスフィン−ボラン)ピラジン化合物を含有する反応系に、脱ボラン化剤を添加し、0〜100℃で、10分〜3時間反応させることにより行なわれる。この脱ボラン化反応により、本発明の目的物である前記一般式(A)で表される光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体が得られる。
前記脱ボラン化剤としては、N,N,N’,N’,−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、トリエチレンジアミン(DABCO)、トリエチルアミン等が挙げられるが、好ましくはTMEDAである。前記脱ボラン化剤の仕込量としては、前記一般式(5)で表されるビス(ホスフィン−ボラン)ピラジン化合物を得る際に用いた前記一般式(4)で表される2,3−ジハロゲノピラジン誘導体に対し、通常2〜20当量であり、好ましくは2〜10当量である。
脱ボラン化反応により生成した前記一般式(A)で表される光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体は、必要に応じて分液洗浄、晶析、蒸留、昇華、カラムクロマトグラフィーといった精製作業に付してもよい。
前記一般式(A)で表される2,3−ビス(ジアルキルホスフィノ)ピラジン誘導体の具体的な化合物を例示すると、(R,R)−2,3−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)キノキサリン、(S,S)−2,3−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)キノキサリン、(R,S)−2,3−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)キノキサリン;(R,R)−2,3−ビス(アダマンチルメチルホスフィノ)キノキサリン、(S,S)−2,3−ビス(アダマンチルメチルホスフィノ)キノキサリン、(R,S)−2,3−ビス(アダマンチルメチルホスフィノ)キノキサリン;(R,R)−2,3−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)ピラジン、(S,S)−2,3−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)ピラジン、(R,S)−2,3−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)ピラジン;(R,R)−2,3−ビス(アダマンチルメチルホスフィノ)ピラジン、(S,S)−2,3−ビス(アダマンチルメチルホスフィノ)ピラジン、(R,S)−2,3−ビス(アダマンチルメチルホスフィノ)ピラジン等が挙げられる。
本発明の製造方法により得られる前記一般式(A)で表される光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体は、例えば、不斉合成反応において不斉触媒として用いられる金属錯体の配位子として有用である。該金属錯体を構成する金属原子としては、例えば、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、ニッケル、鉄等の遷移金属が挙げられる。
本発明の製造方法により得られる前記一般式(A)で表される光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体は、抗がん剤として用いられる遷移金属錯体の配位子源としても有用である(例えば特開2007−320909号公報参照)。該遷移金属錯体を構成する金属原子としては、金、銅又は銀が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、あくまで例示であって、本発明の適用範囲はこれらに限定されない。
すべての合成操作は、よく乾燥させたガラス容器を使って行なった。反応は窒素雰囲気下で行なった。原料試薬及び溶媒は、一般の試薬を使用した。ラセミのtert−ブチルメチルホスフィンボランは、日本化学工業(株)製のものを使用した。
NMRスペクトル測定は、JEOL製(1H;300MHz、13C;75.4MHz、31P;121.4MHz)NMR装置で行なった。内部標準としてテトラメチルシラン(1H)を使用した。比旋光度測定は、堀場製作所製比旋光度計SEPA−300で行なった。
〔実施例1〕
<工程I> (S P )−tert−ブチル(メチル)[N−((S)−1−フェニルエチル)カルバモイル]ホスフィン−ボランの製造
3L四つ口フラスコに、機械撹拌シール、温度計、等圧滴下ろうと及び排気部を備えた。そこへ、ラセミ−tert−ブチルメチルホスフィンボラン141.8g(1202mmol)及びTHF600ccを入れ、ラセミ−tert−ブチルメチルホスフィンボランを溶解させ、10℃以下に保持しながら1.59mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液75cc(119mmol)を滴下した。続いて、同温度にて(S)−(−)−α−メチルベンジルイソシアネート176.8g(1201mmol)を滴下した。その後室温に戻し、一晩撹拌熟成した。5重量%塩酸90g加えて反応を停止した後、ヘキサン240cc及び水240ccを加えて2層に分画した。水層を除去し、有機層を2.5重量%重曹水240g、続いて水240ccで洗い、濃縮して、粗生物(白色フレーク状固体)として、一般式(3)で表されるホスフィンボラン化合物を得た(348.3g)。粗生物を酢酸エチル240cc+ヘキサン1800ccで晶析し、ろ過、乾燥して無色粉末を得た。NMR分析により、得られた無色粉末は表題化合物と同定された。NMR分析結果を以下に示す。また、得られた無色粉末は、収量118.6g(447mmol)、収率37%(イソシアネートから)、ジアステレオマー過剰率>97%deであった。尚、ジアステレオマー過剰率は、1H−NMRのSPおよびRPの特定部プロトンの面積比から決定した。
(NMR分析結果)
1H−NMR(CDCl3);
(SP)−体(目的物);−0.5−1(3H,m),1.14(9H,d,14.7Hz),1.45(3H,d,10.5Hz),1.53(3H,d,6.9Hz),5.15(1H,pent,6.9Hz),7.2−7.4(6H,m).
(RP)−体;−0.5−1(3H,m),1.25(9H,d,14.7Hz),1.42(3H,d,10.5Hz),1.53(3H,d,6.9Hz),5.15(1H,pent,6.9Hz),7.2−7.4(6H,m).
<工程II> 光学活性水素−ホスフィンボラン化合物〔(R)−tert−ブチルメチルホスフィン−ボラン〕の製造
200cc四つ口フラスコに、機械撹拌シール、温度計及び排気部を備え、そこへ、工程Iで得られた(SP)−tert−ブチル(メチル)[N−((S)−1−フェニルエチル)カルバモイル]ホスフィン−ボラン10.03g(37.8mmol)及びDMF100ccを入れ、ホスフィン−ボランを溶解させた後、氷水浴にて10℃以下とした。ここに50重量%水酸化カリウム水溶液21.26g(189mmol)とメタノール25ccを添加した。次に、氷水浴をはずして18時間撹拌熟成した。次いで、500cc三角フラスコに冷水100ccと石油エーテル100ccを入れ、ここに反応液を分散させることで反応を停止した。水層と有機層とを分離し、水層を石油エーテル100ccで再抽出し、先に分離した有機層と合わせた後、水50ccで2回洗い、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC200)にて精製し、無色粉末を得た。NMR分析により、得られた無色粉末は表題化合物と同定された。NMR分析結果を以下に示す。また、得られた無色粉末は、収量3.01g(25.5mmol)、収率67%であった。
(NMR分析結果)
1H−NMR(CDCl3);
−0.5−1(3H,m),1.22(9H,d,14.7Hz),1.32(3H,dd,10.5Hz,6.0Hz),4.4(1H,dm,355Hz).
<工程III> 光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体〔(S,S)−2,3−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)キノキサリン(略称:(S,S)−QuinoxP * )〕の製造
フラスコにて、工程IIで得られた(R)−tert−ブチルメチルホスフィン−ボラン3.01g(25.5mmol)を脱水THF25ccに溶解し、−78℃に冷却した。ここに1.65mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液15.5cc(25.6mmol)を滴下して加え、同温度で15分撹拌熟成した。続いて2,3−ジクロロキノキサリン1,703mg(8.56mmol)をよく撹拌しながら一度に加えた。添加後、1時間かけて室温に戻し、3時間撹拌した。続いてテトラメチルエチレンジアミン10.07g(87mmol)を添加し、室温(25℃)で2時間撹拌熟成した。1M塩酸を加えて反応停止し、ヘキサンを加えて有機成分を抽出した。有機層を1M塩酸、続いて飽和食塩水で分液洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=30/1)で精製し、表題化合物を橙色粉末として得た。さらに熱メタノールから再結晶精製して橙色立方晶の結晶を得た。収量は2,149mg(6.427mmol)、収率は75%であった。得られた表題化合物の分析結果を以下に示す。
(分析結果)
1H−NMR(CDCl3);
1.02(18H,t,6.0Hz),1.4(6H,t,3.2Hz),7.68−7.75(2H,m),8.07−8.14(2H,m).
13C−NMR(CDCl3);
4.8(d),27.6(t),31.9(t),129.6(d),141.6,165.1(d),165.2(d).
31P−NMR(CDCl3);
−16.6.
比旋光度;+53.5°([α]D 22(c=1,CHCl3);尚、(R,R)−QuinoxP*は比旋光度−54.3°であることが既知である)
融点;102−103℃
〔実施例2〕
<工程I> (R P )−tert−ブチル(メチル)[N−((R)−1−フェニルエチル)カルバモイル]ホスフィン−ボランの製造
(S)−(−)−α−メチルベンジルイソシアネート176.8gを(R)−(+)−α−メチルベンジルイソシアネート17.7gに代え、これに対応して反応スケールを調整した以外は、実施例1の工程Iと同様の手順で、無色粉末を得た。
得られた無色粉末は、NMR分析が実施例1の工程Iに示した(RP)−体の結果と同様の結果を示したことから、表題化合物と同定された。また、得られた無色粉末は、収量11.9g(44.7mmol)、収率37%(イソシアネートから)、ジアステレオマー過剰率>97%deであった。
<工程II> 光学活性水素−ホスフィンボラン化合物[(S)−tert−ブチルメチルホスフィン−ボラン]の製造
(SP)−tert−ブチル(メチル)[N−((S)−1−フェニルエチル)カルバモイル]ホスフィン−ボラン10.03gに代えて、工程Iで得られた(RP)−tert−ブチル(メチル)[N−((R)−1−フェニルエチル)カルバモイル]ホスフィン−ボラン10.03gを使用した以外は、実施例1の工程IIと同様の手順で、無色粉末を得た。
NMR分析により、得られた無色粉末は表題化合物と同定された。NMR分析結果を以下に示す。また、得られた無色粉末は、収量3.01g(25.5mmol)、収率67%であった。
(分析結果)
1H−NMR(CDCl3);
−0.5−1(3H,m),1.22(9H,d,14.7Hz),1.32(3H,dd,10.5Hz,6.0Hz),4.4(1H,dm,355Hz).
<工程III> 光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体〔(R,R)−2,3−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)キノキサリン(略称:(R,R)−QuinoxP * )〕の製造
(R)−tert−ブチルメチルホスフィン−ボラン3.01g(25.5mmol)及び2,3−ジクロロキノキサリン1,703mgを、工程IIで得られた(S)−tert−ブチルメチルホスフィン−ボラン236mg(2.0mmol)及び2,3−ジクロロキノキサリン133mg(0.67mmol)に代え、これに対応して反応スケールを調整した以外は、実施例1の工程IIIと同様の手順で、橙色立方晶の結晶を得た。得られた橙色立方晶の結晶は、収量179mg(0.535mmol)、収率80%であった。得られた橙色立方晶の結晶は、分析の結果、表題化合物であると同定された。分析結果を以下に示す。
(分析結果)
1H−NMR(CDCl3);
1.02(18H,t,6.0Hz),1.4(6H,t,3.2Hz),7.68−7.75(2H,m),8.07−8.14(2H,m).
13C−NMR(CDCl3);
4.8(d),27.6(t),31.9(t),129.6(d),141.6,165.1(d),165.2(d).
31P−NMR(CDCl3);
−16.6.
比旋光度;−54.3°([α]D 22(c=1,CHCl3
融点;102−103℃

Claims (4)

  1. 下記一般式(A)で表される光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体の製造方法であって、下記工程I、II及びIIIを含むことを特徴とするピラジン誘導体の製造方法。
    〔工程I〕
    一般式(1)
    Figure 2011219413
    (式中、R1及びR2は、それらが存在することによりリン原子上に不斉を発現させるか又はリン原子が不斉面の一点をなす一対の基であり、それぞれ水素原子、炭化水素基又は置換炭化水素基を示す。)
    で表される水素−ホスフィンボラン化合物と、一般式(2)
    Figure 2011219413
    (式中、R3は不斉炭化水素基又は置換不斉炭化水素基を示す。)
    で表される光学活性イソシアネート化合物とをカップリング反応に付して、一般式(3)
    Figure 2011219413
    (式中、R1、R2及びR3は、前記と同義である。)
    で表されるホスフィンボラン化合物を得た後、得られた一般式(3)で表されるホスフィンボラン化合物を光学分割により精製して、一般式(3’)
    Figure 2011219413
    (式中、R1、R2及びR3は、前記と同義であり、*は不斉を示す。)
    で表される光学活性なホスフィンボラン化合物を得る。
    〔工程II〕
    前記工程Iで得られた一般式(3’)で表されるホスフィンボラン化合物を分解反応に付して、一般式(1’)
    Figure 2011219413
    (式中、R1及びR2並びに*は、前記と同義である。)
    で表される光学活性な水素−ホスフィンボラン化合物を得る。
    〔工程III〕
    前記工程IIで得られた一般式(1’)で表される光学活性な水素−ホスフィンボラン化合物と、一般式(4)
    Figure 2011219413
    (式中、R4及びR5は、水素原子又はアルキル基を示し、同一の基であっても異なる基であってもよく、互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成していてもよく、該飽和又は不飽和の環は、置換基を有してもよく、Xはハロゲン原子を示す。)
    で表される2,3−ジハロゲノピラジンとを反応させて、一般式(5)
    Figure 2011219413
    (式中、R1、R2、R4及びR5並びに*は、前記と同義である。)
    で表される光学活性なビス(ホスフィン−ボラン)ピラジン化合物を得た後、該ビス(ホスフィン−ボラン)ピラジン化合物の脱ボラン化反応を行って、一般式(A)
    Figure 2011219413
    (式中、R1、R2、R4及びR5並びに*は、前記と同義である。)
    で表される光学活性な2,3−ビスホスフィノピラジン誘導体を得る。
  2. 1がtert−ブチル基又はアダマンチル基であり、R2がメチル基である請求項1記載のピラジン誘導体の製造方法。
  3. 3が(S)−1−フェニルエチル基又は(R)−1−フェニルエチル基である請求項1又は2記載のピラジン誘導体の製造方法。
  4. 4及びR5が互いに結合して、置換基を有していてもよいベンゼン環を形成している請求項1〜3のいずれかに記載のピラジン誘導体の製造方法。
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