JP2003286774A - 粘弾性ダンパー、その製造方法およびそれを用いた制震構造 - Google Patents

粘弾性ダンパー、その製造方法およびそれを用いた制震構造

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 座屈荷重に左右されることなく細い形状とす
ることができる粘弾性ダンパー、その製造方法およびそ
の粘弾性ダンパーを用いた耐震構造を提供する。 【解決手段】 粘弾性ダンパー1を以下のように構成す
る。筒状の外筒部材2とその内部に納められた内筒部材
4の間のすきまに粘弾性体3を設ける。内筒部材4の内
部には、一方の端部が内筒部材4の端部に係止されるエ
ンドプレート5aを備える軸部材5を配置し、それを後
端カバー7で覆って固定する。内筒部材4の他方の端部
から露出する軸部材5の端部を、ガイド孔6cを通して
先端カバー6で覆って固定する。後端カバー7にはコの
字プレート7a、軸部材5の端部には取付部5bをそれ
ぞれ設けて、建物のフレームなどに容易に取り付けられ
るようにしておく。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粘弾性ダンパー、
その製造方法およびそれを用いた制震構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、建物の制震手段として種々の手段
が知られている。中でも、取付けが容易なため、既設建
物の耐震改修工事にも利用しやすい制震ダンパーは近年
普及が著しい。制震ダンパーは、建物の躯体のうち、例
えば柱と梁で囲まれるフレームにブレースなどとして設
け、フレームの変形に伴うブレースの引張や圧縮による
変形時に外乱のエネルギーを消費させ、地震・強風など
の外力による振動の減衰を図るものである。比較的小さ
な外力でもエネルギーを消費しやすい粘弾性体を用いた
制震ダンパーが、粘弾性ダンパーである。建物の制震ダ
ンパーに用いる粘弾性ダンパーとしては、例えば、特開
平11−280294号公報や特開平11−30344
8号公報に記載されているものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来の粘弾性ダンパーでは、粘弾性ダンパーが圧
縮荷重を受けるときに座屈しないように配慮しなければ
ならなかった。例えば特開平11−280294号公報
に記載の粘弾性ブレースでは、心材を形鋼、角形鋼管、
円形鋼管などから構成して座屈強度を向上している。そ
のため、粘弾性ブレースが太くなってしまい、全面ガラ
ス張りの建物などで剥き出しで使う場合、居住空間のデ
ザイン性や見栄えの点で採用できないという問題があっ
た。特開平11−303448号公報に記載のブレース
は、圧縮時には、軸状のブレース本体が粘弾性体の充填
されたボックス材内で座屈変形して外乱のエネルギーの
消費を実現する。ブレース本体は、ボックス材で覆われ
て変形量が規制されるので、ボックス材が変形しない限
りは座屈破壊を起こさない。したがって所定の荷重範囲
では座屈するおそれはないが、座屈変形により制震効果
を出しているので、大地震に備えてより高荷重に耐える
ものとするには、ボックス材の強度を上げたり、ブレー
ス本体を太くして座屈荷重を引き上げたりすることが必
要となる。そのために、ブレースが太くなったり、低荷
重では制震効果が減退したりするといった問題があっ
た。
【0004】本発明は、このような問題に鑑みてなされ
たものであって、圧縮力を受けても座屈しない構成とす
ることにより、座屈荷重に左右されることなく細い形状
とすることができる粘弾性ダンパーおよびそれを用いた
耐震構造を提供することを目的とする。またそのような
粘弾性ダンパーの製造方法を提案することを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、請求項1に記載の発明では、軸方向変位に対して
粘弾性負荷を設けた粘弾性ダンパーであって、中立位置
から、軸方向に引き伸ばされるときに、粘弾性負荷によ
り減衰が与えられ、中立位置から、軸方向に圧縮される
ときに、抵抗が無負荷となる構成を用いる。そのため、
粘弾性ダンパーが中立位置から軸方向に引き伸ばされる
と外力による振動が粘弾性負荷により減衰される。また
粘弾性ダンパーが中立位置から軸方向に圧縮されると抵
抗が無負荷となるので、圧縮を受けても座屈することが
なくなる。
【0006】請求項2に記載の発明では、筒状の外筒部
材と、該外筒部材の内周部に粘弾性体を介して接合され
た筒状の内筒部材と、前記外筒部材から一方の端部を露
出した状態で、該端部を前記外筒から軸方向に引っ張り
出す方向には、前記内筒部材と一体に移動するように係
止され、その逆方向には該内筒部材と別体で移動するよ
うに設けられた軸部材とを備え、該軸部材の前記外筒部
材から露出した端部と、その軸方向逆側の前記外筒部材
の端部とに、それぞれ被取付部材を設けた粘弾性ダンパ
ーを用いる。そのため、この粘弾性ダンパーを、被取付
部材によって建物のフレームなどの制震対象に取り付け
ることにより、制震対象の相対変位によって、軸部材が
引っ張られる場合には、軸部材と一体に移動するよう係
止された内筒部材が移動して、内筒部材と外筒部材の間
の粘弾性体が変形してエネルギーの消費が起こる。ま
た、軸部材がそれとは逆方向に移動する場合には、軸部
材は内筒部材とは別体で移動するので、内筒部材から抵
抗を受けることがないため、軸部材には、圧縮方向荷重
がかからない。
【0007】請求項3に記載の発明では、筒状の外筒部
材の内部に所定のすきまを設けて筒状の内筒部材を配置
し、それらを高温状態にして前記すきまにホットメルト
性の粘弾性体を流し込み、その冷却後、前記内筒部材の
内部に、一端部に該内筒部材と係止する係止部を設けた
軸部材を配置し、該軸部材の他端部を軸方向に移動可能
に露出させた状態で、前記外筒部材の両端部を封止して
製造する粘弾性ダンパーの製造方法を用いる。そのた
め、このような製造方法によれば、請求項1または2に
記載の粘弾性ダンパーを製造することができる。
【0008】請求項4に記載の発明では、梁と柱で囲ま
れた建物のフレームに、請求項1または2に記載の少な
くとも2本の粘弾性ダンパーを互いに交差する方向に取
り付けてなる粘弾性ダンパーを用いた制震構造を用い
る。そのため、建物のフレームが地震・強風などの外力
により変形すると、少なくとも1本の粘弾性ダンパーに
は、引張力が作用するので制震効果を発揮することがで
きる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下では、本発明の実施の形態
を、添付図面を参照して説明する。なおすべての図面を
通して、同一または相当する部材は、同一の符号を付し
ている。まず、本発明に係る粘弾性ダンパーの実施の形
態について説明する。図1(a)は、本実施形態に係る
粘弾性ダンパーの概略構成を示す軸長手方向の断面図で
ある。図1(b)、(c)は、それぞれ図1(a)のA
−A断面図、B−B断面図である。
【0010】粘弾性ダンパー1は、建物などの制震対象
に取り付けられるもので、大きくは、外筒部材2、粘弾
性体3、内筒部材4、軸部材5、先端カバー6、後端カ
バー7からなる。
【0011】外筒部材2は、例えば鋼管などからなり、
真直に延ばされて両端が開口された円筒状の部材であ
る。それぞれの開口部の近傍には外周から径方向に延ば
された孔あきプレート2aが2つずつ設けられている。
孔あきプレート2a…は、ボルトなどの締結部材が貫通
可能な取付孔2b…を備える鋼板などを外筒部材2に溶
接などによって取り付けたものである。
【0012】外筒部材2の内側には、加温によって液状
化するホットメルト性を有する高分子材料からなる粘弾
性体3によって外周部が密着された、例えば鋼管などか
らなる内筒部材4が設けられている。外筒部材2と内筒
部材4はほぼ同軸に配置されている。
【0013】外筒部材2の一方の端部には、硬化ゴムな
どからなるシーリング材9がその端部全周に当接して設
けられ、そのシーリング材9を介して後端カバー7が設
けられている。後端カバー7は、外筒部材2とほぼ同径
で、軸方向に所定長さの軸部材可動スペース7cが形成
された円筒管の一端をふさぎ、その軸方向の外周面に、
孔あきプレート2a、2aに整列するように設けられた
コの字プレート7aが溶接などによって固設されている
ものである。
【0014】孔あきプレート2a、2aとコの字プレー
ト7aは、スプライスプレート8、8を介して、外筒部
材2、後端カバー7がシーリング材9との密着を保った
状態で、例えばボルト止めなどによって固定されてい
る。軸部材可動スペース7cの所定長さは、粘弾性ダン
パー1の設計上の許容圧縮長さよりも長く設定されてい
る。
【0015】外筒部材2の他方の端部には、シーリング
材9が当接され、それを介して先端カバー6が設けられ
ている。先端カバー6は、外筒部材2と同径で適宜の長
さを備える円筒管の底面の中心に貫通するガイド孔6c
を備え、外周部に孔あきプレート2a、2aと整列する
ように設けられた孔あきプレート6a、6aが溶接など
によって固設されているものである。先端カバー6と外
筒部材2は、孔あきプレート2a、2aと孔あきプレー
ト6a、6aがそれぞれスプライスプレート8、8によ
って固定されている。
【0016】なお、シーリング材9、9は、例えば火災
などで粘弾性体3が液状化した場合にも粘弾性ダンパー
1の外部に流失されないように設けられている。
【0017】内筒部材4の内径側には、例えば鋼棒から
なる軸部材5が配置されている。軸部材5の後端カバー
7側の端部には、例えば鋼板などによって、後端カバー
7の内部に収まる外径を有し、内筒部材4の外側からそ
の端部に当接して係止することが可能な円板状のエンド
プレート5a(係止部)が固設されている。
【0018】軸部材5の他方の端部は、先端カバー6の
ガイド孔6cを貫通して、軸方向に移動可能に先端カバ
ー6の外部に所定長さだけ延ばされている。その先端に
は、鋼板などに適宜の取付孔5c…を設けて溶接などで
固定された取付部5bが設けられている。
【0019】軸部材5は、ガイド孔6cおよび内筒部材
4の内側を軸方向に滑らかに移動できれば、その軸の太
さや軸断面形状の制約はない。また、軸部材5とそれぞ
れの間に適宜の軸受や潤滑材を配してもよい。さらに、
内筒部材4の端部や内部に軸部材5を滑らかに移動でき
るように支持する適宜のガイド部材を設けてもよい。
【0020】コの字プレート7aおよび取付部5bは、
粘弾性ダンパー1を制震対象に取り付ける際、取付孔7
b…および取付孔5c…を介して例えばボルト止めなど
により制震対象に取り付けられる被取付部材である。
【0021】次に、本発明に係る粘弾性ダンパーの作用
を説明する。図2は、本発明に係る粘弾性ダンパーの作
用を説明する軸長手方向の概略断面図である。図2
(a)、(b)、(c)は、それぞれ粘弾性ダンパーが
中立位置にあるとき、引張力を受けるとき、および圧縮
力を受けるときの様子を模式的に示したものである。
【0022】中立位置にあるときは、エンドプレート5
aが内筒部材4の端部に当接しており、粘弾性体3には
内筒部材4の自重以外の外力は作用していない。図2
(b)に示したように、軸部材5が矢印の方向に引張力
を受ける場合、エンドプレート5aによって内筒部材4
の端部が押圧されて移動されるため、粘弾性体3にせん
断変形が生じる。そして時間が経過するうちに粘弾性体
3の変形エネルギーが熱に転化してエネルギーが消費さ
れる。
【0023】一方、図2(c)に示したように、軸部材
5が矢印の方向に圧縮力を受ける場合、軸部材5は、圧
縮方向には係止されておらず抵抗負荷もないので、設計
上の圧縮量の範囲で、軸部材可動スペース7c内を押し
込まれるままに移動する。したがって軸部材5には両端
から圧縮力が作用することがないから、その長さ・太さ
に関わらず、座屈することがない。
【0024】次に、粘弾性ダンパー1の荷重変位特性の
一例を説明する。図3(a)は、粘弾性ダンパー1の荷
重変位特性を数値計算するためのモデルを示したもので
ある。制震対象である建物を建物質量10と建物剛性1
1によってモデル化し、地震や強風などの外力によって
建物質量10が変位すると、その変位に連動して粘弾性
ダンパー1が変形するとした。また、粘弾性ダンパー1
は、ばねとダッシュポットからなるフォークトモデルに
よる粘弾性体モデル12と、それに引張側のみ剛のばね
13が直列接続するとしたモデル化を行った。
【0025】引張側のみ剛のばね13は、圧縮方向に変
形してもばねによる力が発生せず、引張方向には任意の
抗力が発生して引張方向の変形を0にするばねモデルで
あり、グラフに表すと図3(b)のようになる。ここ
で、横軸は引張側のみ剛のばね13の変形量(伸び量が
正、圧縮量が負)、縦軸は引張側のみ剛のばね13に発
生するばね力である。圧縮変形域では、ばね力が常に0
となる直線状の圧縮方向特性15bを示し、引張変形域
では、伸び量が常に0となる直線状の引張方向特性15
aを示す。
【0026】図4に、上記のモデルによって解析的に得
られた粘弾性ダンパー1の荷重変形関係の例を示す。粘
弾性ダンパー1に、振幅の変化する周期的外力を作用さ
せたときの復元力特性16をプロットしている。ここで
横軸は、正方向は伸び方向とした中立位置からの変位を
示し、単位は(cm)である。縦軸は、復元力を示し、
単位は(kN)である。
【0027】復元力特性16は、中立位置から引張力を
加えると最初は弾性的な復元力が生じて原点から急峻に
立ち上がる直線状の変化を示し(符号16aの曲線)、
次いで荷重がピークに達するにつれて傾きが鈍り、ほぼ
楕円状の曲線を描きながら、復元力が減少するにつれて
変位が戻る(符号16bの曲線)。ここまでの特性は従
来の粘弾性ダンパーの復元力特性と同様であるが、本発
明では、横軸に達すると横軸上を原点に向かう(符号1
6cの直線)。さらに圧縮されても復元力は働かないの
で、符号16dの直線に示すように横軸上を往復して原
点に復帰する。一方、粘弾性体は除荷されると残留ひず
みを残さず初期状態に復帰するので、いわゆるスリップ
型の復元力特性は示さず、再度引張力が作用すると上記
のサイクルを繰り返す。復元力特性16はグラフの第I
〜IV象限を通る楕円状ループとならず、グラフの第I
象限の範囲でループが閉じている点が従来の粘弾性ダン
パーとは異なるものである。
【0028】このように、粘弾性ダンパー1は、圧縮時
は抵抗せず、引張時は粘弾性体の変形が引き起こすため
に、中立位置から伸ばされる間でエネルギーの消費を起
こすダンパーとしての作用を備えていることが分る。な
お説明のために一例を解析した結果を示したもので、粘
弾性体のモデル化や用いる材料定数などが異なれば、復
元力特性16の形状が異なるのは当然である。その場合
でもループが第I象限の範囲に限られることは変わらな
い。
【0029】次に本発明に係る粘弾性ダンパー1の製造
方法について説明する。図5、6は、粘弾性ダンパー1
を製造する各工程を説明するための斜視説明図である。
まず図5(a)に示したように、円筒鋼管の両端外周に
孔あきプレート2a…を溶接などによって取り付けて、
外筒部材2を用意する。またそれより内径の小さい円筒
鋼管の両端外周に円筒鋼管を外筒部材2内にほぼ同軸位
置に納めるためのスペーサ4aを…取り付けた内筒部材
4を用意する。そして、内筒部材4を外筒部材2に入れ
て二重管構造を作る。
【0030】スペーサ4a…は、図示のように例えば鋼
板を溶接して設けることができる。ただし、外筒部材2
と内筒部材4のすきまが一定に確保されれば、粘弾性体
3の厚さを均一に設けることができるから、例えば内筒
部材4にボルトを取付け、ボルトヘッドで適宜すきまを
確保してもよいし、粘弾性体3を設けるまでの間だけす
きまを固定するような適宜の治具を用いてもよい。
【0031】次に、図5(b)に示したように、外筒部
材2および内筒部材4の下に、粘弾性体3の流失を防ぐ
ためのシーリング材22を配置し、漏れ止めプレート2
3を外筒部材2に止めて固定する。具体的には、例えば
孔あきプレート2a、2aに取付ブラケット21、21
を一時的に固定し、ボルト24、24によって漏れ止め
プレート23を共締めすればよい。
【0032】そして上方に粘弾性体3を外筒部材2と内
筒部材4のすきまに流し込むためのサイロ状のバケット
20を配置する。この状態で適宜の高温炉内に入れて加
温し、状部のバケット20から、ホットメルト性で液状
化した粘弾性体3を流し込む。すきま内に所定量充填し
たあと、冷却し、粘弾性体3が固化するのを待って、バ
ケット20、漏れ止めプレート23、取付ブラケット2
1、シーリング材22を取り外す。
【0033】次に、図6(c)に示したように、軸部材
5を内筒部材4内部に通す。そしてエンドプレート5a
が位置する側には後端カバー7を、その逆側には先端カ
バー6を、それぞれ外筒部材2との間にシーリング材
9、9を挟んで配置する。それから、スプライスプレー
ト8…を介して、それぞれを孔あきプレート2a…とボ
ルト止めして結合する。
【0034】次に、図6(d)に示したように、先端カ
バー6から露出した軸部材5の端部に取付部5bを溶接
などによって取り付ける。以上の工程を順次実施するこ
とにより、粘弾性ダンパー1を製造することができる。
【0035】以上に説明した製造方法によれば、固体状
の粘弾性体を部材に粘着させて固定する場合と異なり、
外筒部材2および内筒部材4に対する張りむらなどが生
じないために優れた密着性を得ることができる。そこで
粘弾性体3をむらなく拘束することができ、その結果、
減衰効果を高めることができるという利点がある。
【0036】次に、粘弾性ダンパー1の変形例を説明す
る。図7は、粘弾性ダンパー1の変形例の概略構成を説
明するための軸長手方向断面図である。以下では上記と
異なる箇所のみを説明する。本変形例では、上記に説明
した内筒部材4に代えて、円筒鋼管の一方の端部に軸部
材5の軸部は貫通するがエンドプレート5aは引っかか
る大きさの貫通孔を備える係止プレート26aが、溶接
などによって設けられた内筒部材26を用いる。そし
て、エンドプレート5aが内筒部材26の内部に納めら
れるように配置する。また、後端カバー7に代えて円板
にコの字プレート7aを取り付けた後端カバー25を用
いる。
【0037】このように構成すれば、軸部材5が圧縮力
を受けるとエンドプレート5aは内筒部材26の内部で
移動するから、後端カバー7に設けた軸部材可動スペー
ス7cが不要となる。また、軸部材5の長さを短縮でき
る。したがって同等の減衰特性を備えながら、粘弾性ダ
ンパー1の短縮化および軽量化を図ることができ、小型
化と低コスト化が可能となる。
【0038】次に本発明に係る粘弾性ダンパーを用いた
制震構造の実施の形態について説明する。図8(a)
は、本発明に係る粘弾性ダンパーを用いた制震構造の実
施の形態を示す説明図である。本発明では、建物の一部
をなす梁17、17と柱18、18とで囲まれたフレー
ム30に上記に説明した本発明に係る粘弾性ダンパー
1、1を取り付けて構成したものである。
【0039】フレーム30を構成する一方の梁17のほ
ぼ中央には、取付孔(不図示)を備えたガセットプレー
ト19aが設けられ、他方の梁17と柱18、18の交
差部には、取付孔(不図示)を備えたガセットプレート
19b、19bがそれぞれを設けられている。粘弾性ダ
ンパー1、1はエンドプレート5aがガセットプレート
19aに、コの字プレート7aがガセットプレート19
bにそれぞれボルト締結されて固定されている。したが
って、粘弾性ダンパー1、1は、ハの字状に配置され、
互いの軸長手方向が所定角度で交差する位置関係にあ
る。
【0040】次に本実施形態の作用を説明する。このよ
うな構成によれば、建物に外力が加わって曲げ変形が起
こると、フレーム30が図示の2点鎖線で示したよう
に、いずれか一方の粘弾性ダンパー1は圧縮方向に、い
ずれか他方の粘弾性ダンパー1は引張方向にそれぞれ変
形する。したがって引張方向に変形した粘弾性ダンパー
1によって振動エネルギーが消費され、振動が減衰され
る。粘弾性ダンパー1は圧縮を受けても座屈しないの
で、軸部材5を細く設計することができる。その結果、
粘弾性ダンパー1全体を従来よりも細くすることがで
き、梁17、柱18などに比べてスリムで見栄えのよい
粘弾性ダンパー1とすることができる。そのため、例え
ば全面ガラス張りの建物などのように粘弾性ダンパー1
が居住空間内に露出して設けられても見栄えのよいデザ
インに仕上げることが可能となる。
【0041】このような作用は、少なくとも2本の粘弾
性ダンパー1を互いに交差する方向にフレーム30に固
定することにより得られるので、本実施形態の変形例と
して、例えば、図8(b)に示したように、梁17と柱
18の交差するフレーム30の四隅にそれぞれガセット
プレート19c、19c、19d、19dを設けて、そ
れぞれにエンドプレート5a、5aおよびコの字プレー
ト7a、7aを取り付けて、粘弾性ダンパー1、1がフ
レーム30の対角線上に互いに交差するように固定して
もよい。このように構成すれば、建物の変形が同じなら
ば、図8(a)の場合よりも、粘弾性ダンパー1の変形
量が大きくなるから、より大きな減衰が付与される。本
発明の粘弾性ダンパー1によれば、座屈の心配がないの
で、このように粘弾性ダンパー1が長くなる構成として
も細い形状のままとすることができる。
【0042】また、粘弾性ダンパー1は細くすることが
できるので、1つのフレーム30に2本以上配置して、
より大きな減衰を付与するようにしてもよい。
【0043】なお、上記の説明では、粘弾性ダンパー1
の断面は円筒状として説明したが、粘弾性体3を液状化
して流し込むので、どのような断面でも粘弾性体3を回
り込ませることができるから、軸部材5を囲むように納
めることができれば、外筒部材2および内筒部材4は、
例えば、楕円、角型、星型などどのような断面の筒状で
あってもよい。そのようにすれば、種々のデザインが実
現できるとともに、粘弾性ダンパー1の太さに比べて比
較的広い粘弾性体3の拘束面積を確保することができる
から、より減衰効果の高い粘弾性ダンパーを構成するこ
とができる。
【0044】
【発明の効果】以上に述べたように、請求項1に記載の
発明では、粘弾性ダンパーが圧縮を受けても座屈しない
ので、座屈荷重に左右されることなく細い形状の粘弾性
ダンパーを構成することができるから、デザイン上の見
栄えが問題となる居住空間内の見えるところにも配置で
きるという効果を奏する。
【0045】請求項2に記載の発明では、軸部材を内筒
部材に一方向にのみ係止することにより、圧縮を受けて
も座屈しないように構成できるので、軸部材の太さを座
屈強度に関係なく設計することができる。その結果、細
い形状の粘弾性ダンパーを構成することができ、デザイ
ン上の見栄えが問題となる居住空間内の見えるところに
も配置できるという効果を奏する。
【0046】請求項3に記載の発明では、請求項1また
は2に記載の粘弾性ダンパーを製造することができ、特
に複雑な断面でも粘弾性体の密着性がよい粘弾性ダンパ
ーを容易に製造できるという効果を奏する。
【0047】請求項4に記載の発明では、圧縮方向に減
衰が働かない粘弾性ダンパーであっても、制震効果を発
揮させることができ、その結果、細い形状の粘弾性ダン
パーを用いた制震構造を提供できるという効果を奏す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る粘弾性ダンパーの実施の形態の
概略構成を示す軸長手方向および短手方向の断面図であ
る。
【図2】 本発明に係る粘弾性ダンパーの作用を説明す
る軸長手方向の概略断面図である。
【図3】 本発明に係る粘弾性ダンパーの荷重変位特性
を数値計算するためのモデルを示すための説明図であ
る。
【図4】 本発明に係る粘弾性ダンパーの荷重変位特性
を数値計算した結果の一例を示すグラフである。
【図5】 本発明に係る粘弾性ダンパーの製造工程を説
明するための斜視説明図である。
【図6】 図5に続く製造工程を説明するための斜視説
明図である。
【図7】 本発明に係る粘弾性ダンパーの変形例の概略
構成を示す軸長手方向の断面図である。
【図8】 本発明に係る粘弾性ダンパーを用いた制震構
造の実施の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 粘弾性ダンパー 2 外筒部材 3 粘弾性体 4、26 内筒部材 5 軸部材 5a エンドプレート(係止部) 5b 取付部(被取付部材) 6 先端カバー 7、25 後端カバー 7a コの字プレート(被取付部材) 9 シーリング材 12 粘弾性体モデル 13 引張側のみ剛のばね 16 復元力特性 17 梁 18 柱 19a、19b、19c、19d ガセットプレート 30 フレーム

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸方向変位に対して粘弾性負荷を設けた
    粘弾性ダンパーであって、 中立位置から、軸方向に引き伸ばされるときに、粘弾性
    負荷により減衰が与えられ、中立位置から、軸方向に圧
    縮されるときに、抵抗が無負荷となることを特徴とする
    粘弾性ダンパー。
  2. 【請求項2】 筒状の外筒部材と、 該外筒部材の内周部に粘弾性体を介して接合された筒状
    の内筒部材と、 前記外筒部材から一方の端部を露出した状態で、該端部
    を前記外筒から軸方向に引っ張り出す方向には、前記内
    筒部材と一体に移動するように係止され、その逆方向に
    は該内筒部材と別体で移動するように設けられた軸部材
    とを備え、 該軸部材の前記外筒部材から露出した端部と、その軸方
    向逆側の前記外筒部材の端部とに、それぞれ被取付部材
    を設けたことを特徴とする粘弾性ダンパー。
  3. 【請求項3】 筒状の外筒部材の内部に所定のすきまを
    設けて筒状の内筒部材を配置し、 それらを高温状態にして前記すきまにホットメルト性の
    粘弾性体を流し込み、 その冷却後、前記内筒部材の内部に、一端部に該内筒部
    材と係止する係止部を設けた軸部材を配置し、 該軸部材の他端部を軸方向に移動可能に露出させた状態
    で、前記外筒部材の両端部を封止して製造する粘弾性ダ
    ンパーの製造方法。
  4. 【請求項4】 梁と柱で囲まれた建物のフレームに、請
    求項1または2に記載の少なくとも2本の粘弾性ダンパ
    ーを互いに交差する方向に取り付けてなる粘弾性ダンパ
    ーを用いた制震構造。
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JP2008240814A (ja) * 2007-03-26 2008-10-09 Tokai Rubber Ind Ltd 粘弾性ダンパーの製造方法
US8002093B2 (en) * 2002-02-21 2011-08-23 Oiles Corporation Damper and vibration damping structure using the same
JP5283774B1 (ja) * 2012-08-20 2013-09-04 大和リース株式会社 仮設建物用制震ダンパー

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