JP2003286277A - ガンマブチロラクトンの精製方法 - Google Patents

ガンマブチロラクトンの精製方法

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ガンマブチロラクトンを高度に精製するため
の方法を提供する。 【構成】 粗ガンマブチロラクトンを40℃以上100
℃未満で酸性イオン交換樹脂と接触させた後、蒸留塔に
供給し蒸留することを特徴とするガンマブチロラクトン
の精製方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、N−メチルピロリ
ドンの原料や電解液溶媒として有用なガンマブチロラク
トンの精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガンマブチロラクトンは、無水マレイン
酸若しくは無水コハク酸の水素化反応、又は1,4−ブ
タンジオールの脱水素反応等の方法により製造されてい
る。ガンマブチロラクトンの製造には、反応中に生成す
る4−ヒドロキシブタナール、テトラヒドロフラノ−2
−オキシブタナール等のアルデヒド類及び2−ヒドロキ
シテトラヒドロフラン等のヘミアセタール類とガンマブ
チロラクトンとの分離が困難であるという問題がある。
【0003】特開平11−286482号公報に記載さ
れているように、粗ガンマブチロラクトンの精製方法と
しては、2基の蒸留塔を用い、第一塔においてガンマブ
チロラクトンよりも低沸点物を留去し、次いで第二塔に
おいて減圧蒸留により精製ガンマブチロラクトンを留出
させて取得する方法、又は1基の蒸留塔を用い、低沸点
物及び高沸点物をそれぞれ塔頂及び塔底から排出し精製
ガンマブチロラクトンを側流として取得する方法等が行
われている。このような方法で99%以上、更には9
9.5%以上の純度のガンマブチロラクトンを得ること
ができる。しかしながら、これらの方法では、粗ガンマ
ブチロラクトンに含まれているアルデヒド類やヘミアセ
タール類、特にガンマブチロラクトンと沸点が近いテト
ラヒドロフラノ−2−オキシブタナールを除去すること
が困難である。
【0004】この不純物を除去する方法としては、特開
平11−286482号公報には、粗ガンマブチロラク
トンに酸性物質を添加して100℃以上、好ましくは1
20℃以上で処理してテトラヒドロフラノ−2−オキシ
ブタナールを高沸点化合物に転換させた後、蒸留すると
いう精製方法が記載されている。しかしながら、この方
法には、生成した高沸点化合物が蒸留塔塔底で加熱され
て低沸点化合物に分解し、これが留出してガンマブチロ
ラクトンの純度を低下させるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ガンマブチ
ロラクトンを高度に精製するための方法を提供すること
を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
を行った結果、意外にも粗ガンマブチロラクトンを比較
的低温、好ましくは40℃以上100℃未満で酸性イオ
ン交換樹脂と接触させるとテトラヒドロフラノ−2−オ
キシブタナールが高沸点化合物ではなく低沸点化合物に
転換すること、及びこの低沸点化合物は蒸留により容易
にガンマブチロラクトンから分離できることを見いだ
し、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明の要旨は、粗ガンマブチ
ロラクトンを比較的低温、好ましくは40℃以上100
℃未満で酸性イオン交換樹脂と接触させた後、蒸留塔に
供給し蒸留することを特徴とするガンマブチロラクトン
の精製方法、に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る精製方法では、無水マレイン酸若しくは無
水コハク酸の水素化反応、又は1,4−ブタンジオール
の脱水素反応などの方法で製造されたいずれの粗ガンマ
ブチロラクトンをも対象とすることができる。好ましい
のは、1,4−ブタンジオールの脱水素反応で製造され
たガンマブチロラクトンである。
【0009】この反応は公知であり、触媒としては、各
種の助触媒で改良されたニッケル触媒、コバルト触媒、
パラジウム触媒、銅触媒、銅−クロム触媒などの固体触
媒や、ルテニウム錯体触媒等の均一系錯体触媒が知られ
ている。本発明の対象として特に好ましいのは、均一系
錯体触媒存在下に1,4−ブタンジオールを脱水素して
得られた粗ガンマブチロラクトンである。
【0010】均一系錯体触媒の存在下で1,4−ブタン
ジオールを脱水素させてガンマブチロラクトンを製造す
るには、通常は、触媒、未反応の1,4−ブタンジオー
ル及び反応により生成したガンマブチロラクトン、4−
ヒドロキシブタナール等のアルデヒド類、2−ヒドロキ
シテトラヒドロフラン等のヘミアセタール類などを含む
反応生成液を蒸留塔で蒸留し、触媒や未反応の1,4−
ブタンジオール等と粗ガンマブチロラクトンとを分離す
る。蒸留塔内でも脱水素反応は進行し、ガンマブチロラ
クトンと共に上記のアルデヒド類やヘミアセタール類な
どが生成する。これらのアルデヒド類やヘミアセタール
類等は、触媒存在下では速やかに脱水素されてガンマブ
チロラクトンとなるが、触媒が存在しない条件ではこの
脱水素反応は進行せず、ガンマブチロラクトンに沸点が
近いテトラヒドロフラノ−2−オキシブタナール等に変
化する。また、生成したテトラヒドロフラノ−2−オキ
シブタノールが、再びアルデヒド類やヘミアセタール類
に分解する反応も起こる。本発明者らの検討によれば、
これらの反応は100℃以上の温度で起こりやすい。
【0011】したがって、アルデヒド類やヘミアセター
ル類を含む粗ガンマブチロラクトンを常法により蒸留し
たのでは、蒸留塔内でこれらの反応が起きてしまい、高
純度のガンマブチロラクトンを得ることは困難である。
本発明に係る精製方法では、先ず粗ガンマブチロラクト
ンを酸性イオン交換樹脂と接触させて、粗ガンマブチロ
ラクトン中に含まれているテトラヒドロフラノ−2−オ
キシブタナールをテトラヒドロフラン、2,3−ジヒド
ロフラン、2,5−ジヒドロフラン等のガンマブチロラ
クトンよりも低沸点の環状エーテル類へ転化させる。
【0012】酸性イオン交換樹脂としては、強酸性イオ
ン交換樹脂、弱酸性イオン交換樹脂のいずれも使用する
ことができる。強酸性イオン交換樹脂、特にスルホン酸
基を有する強酸性イオン交換樹脂が好ましい。粗ガンマ
ブチロラクトンを酸性イオン交換樹脂と接触させる方法
としては、酸性イオン交換樹脂を充填した固定床反応器
に粗ガンマブチロラクトンを流通させる方法が好ましい
が、酸性イオン交換樹脂が懸濁状態で存在している反応
槽に粗ガンマブチロラクトンを連続的に供給し、かつ酸
性イオン交換樹脂は反応槽内に残留させつつ粗ガンマブ
チロラクトンだけを連続的に抜き出す方法等を用いるこ
ともできる。
【0013】固定床反応器を用いる場合には、通常は、
粗ガンマブチロラクトンの空間速度:SV(1/Hr)
は0.1〜20である。SVが0.2〜2、線速:LV
(m/hr)が0.1〜10、特に1〜5で行うのが好
ましい。イオン交換樹脂の固定層内における空隙率は、
体積比で10%〜50%、特に20%〜40%であるの
が好ましい。
【0014】連続槽型反応器を用いる場合には、酸性イ
オン交換樹脂が粗ガンマブチロラクトンに対して10重
量%以上、特に50%重量以上であるのが好ましい。粗
ガンマブチロラクトンを酸性イオン交換樹脂と接触させ
るのは、40℃以上100℃未満、特に60℃以上90
℃以下で行うのが好ましい。100℃以上では、イオン
交換樹脂から不純物が溶出してガンマブチロラクトンを
汚染したり、テトラヒドロフラノ−2−オキシブタノー
ルの高沸点化合物への転換が促進されてしまう。また、
40℃未満では、テトラヒドロフラノ−2−オキシブタ
ノールの環状エーテル類への転換速度が遅い。したがっ
て、いずれの場合も高純度ガンマブチロラクトンを得る
のが困難である。
【0015】粗ガンマブチロラクトン中のテトラヒドロ
フラノ−2−オキシブタノールを低沸点の環状エーテル
類に変換した後、常法により蒸留して精製ガンマブチロ
ラクトンを得ることができる。一般に前述の水素化反応
や脱水素反応で得られた粗ガンマブチロラクトン中に
は、4−ヒドロキシブタナールや2−ヒドロキシテトラ
ヒドロフラン等以外にも、テトラヒドロフラン、ジヒド
ロフラン、水、ブタノール、酢酸、酪酸、コハク酸ジメ
チル等のガンマブチロラクトンよりも低沸点の成分が含
まれている。また、ガンマブチロラクトンよりも高沸点
の成分も含まれていることが多い。本発明方法では、予
備蒸留により、これらの低沸点成分及び高沸点成分の濃
度をあらかじめ低減させて、4−ヒドロキシブタナー
ル、2−ヒドロキシテトラヒドロフラン及びテトラヒド
ロフラノ−2−オキシブタナールの合計濃度を2重量%
以下とした粗ガンマブチロラクトンを用いるのが好まし
い。1重量%以下、特に0.5重量%以下の粗ガンマブチ
ロラクトンを用いるのが更に好ましい。
【0016】粗ガンマブチロラクトンは、蒸留塔の塔頂
から塔底のいずれの部位からでも導入することができる
が、アルデヒド類やヘミアセタール類の反応を抑制する
ため、蒸留塔の塔頂又は蒸留帯域の上部1割未満の位置
にある導入口から導入するのが好ましい。なお、蒸留帯
域の上部1割未満の位置とは、蒸留塔のうちリボイラー
部やコンデンサー部などを除いた蒸留作用、すなわち気
液接触の行われる部分、例えば充填塔であれば充填物の
存在する帯域を意味する。
【0017】また、粗ガンマブチロラクトンは、酸性イ
オン交換樹脂との接触させたときの温度で導入するのが
好ましく、導入口は蒸留塔内の液温が100℃未満であ
る部位に設けるのが好ましい。精製ガンマブチロラクト
ンは、蒸留塔の側流抜き出し口又は塔底から抜き出す。
塔底部では高沸点の不純物が混入するおそれがあるの
で、側流抜き出し口から精製ガンマブチロラクトンを抜
き出すのが好ましい。高沸点物の混入を避け、かつ4−
ヒドロキシブタナール、及び2−ヒドロキシテトラヒド
ロフランの混入を避けるためには、側流抜き出し口は蒸
留部の下から1〜5割、特に2〜4割の範囲内の位置に
設けるのが好ましい。
【0018】塔頂温度は、120℃以下であれば任意の
温度に設定することができる。蒸留時の圧力は、塔頂温
度に応じて設定すればよい。還流比は、蒸留塔内でのア
ルデヒド類とヘミアセタール類との反応を抑えるため、
及びエネルギーコスト低減化のため、低い方がよい。還
流比は、100〜0.1が好ましい。10〜0.1、特
に2〜0.1が、更に好ましい。
【0019】蒸留塔は、単位時間当たりの粗ガンマブチ
ロラクトンの導入量を100重量部とした場合に、塔頂
留出量を1〜30、好ましくは5〜20重量部とし、精
製ガンマブチロラクトンの抜き出し量を90〜60重量
部とするのが好ましい。塔底からの高沸点成分の抜き出
し量は1〜30、好ましくは5〜20重量部である。高
い生産性を確保するため、精製ガンマブチロラクトンの
抜き出し量が、できるだけ多くなるように操作するのが
好ましい。
【0020】蒸留塔としては、充填塔、棚段塔など常用
のいずれのものも使用できるが、理論段数5段以上、特
に10〜50段のものを用いるのが好ましい。50段を
超える蒸留塔は、蒸留塔建設のための経済性、運転、及
び安全管理のためには好ましくない。
【0021】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施
例に限定されるものではない。 製造例1 酸性イオン交換樹脂(ダイヤイオンPK216H、三菱
化学社製、ダイヤイオンは三菱化学社の登録商標)61
ccを充填したステンレス製カラムに、4−ヒドロキシ
ブタナール、2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、及び
テトラヒドロフラノ−2−オキシブタナールを総量で1
624重量ppm、並びにテトラヒドロフランを4重量
ppm含む粗ガンマブチロラクトンを48.3cc/h
rで導入した。その際、温度を80℃、SV0.793
(1/Hr)、LV1.71(m/Hr)とした。
【0022】カラムから流出したガンマブチロラクトン
をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、テト
ラヒドロフラン1243重量ppmを含む純度99.8
重量%のものであった。なお、4−ヒドロキシブタナー
ル、2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、及びそれら由
来の化合物は、いずれも分析下限値(3重量ppm)以
下であった。
【0023】製造例2 製造例1において、4−ヒドロキシブタナール、2−ヒ
ドロキシテトラヒドロフラン、及びテトラヒドロフラノ
−2−オキシブタナールを総量で364重量ppm、並
びにテトラヒドロフランを42ppm含む粗ガンマブチ
ロラクトンを用いた以外は、製造例1と同様にして、テ
トラヒドロフラン795重量ppmを含む純度99.9
重量%のガンマブチロラクトンを得た。なお、4−ヒド
ロキシブタナール、2−ヒドロキシテトラヒドロフラ
ン、及びそれら由来の化合物は、いずれも分析下限値
(3重量ppm)以下であった。
【0024】実施例1 15段のガラス製オルダーショウ蒸留塔に、製造例1で
得たガンマブチロラクトンを30℃、100g/hrで
塔頂から導入し、塔頂から低沸点成分を10g/hr
で、塔頂から10段目から精製ガンマブチロラクトンを
70g/hrで、塔底から高沸点成分を20g/hrで
それぞれ抜き出した。
【0025】塔頂圧力を30mmHg、還流比を1と
し、連続運転を行った。その際、塔頂温度は100℃、
精製ガンマブチロラクトンを抜き出した塔頂から10段
目の温度は108℃、塔底温度は112℃であった。精
製ガンマブチロラクトンをガスクロマトグラフィーによ
り分析したところ、純度99.99重量%であった。な
お、テトラヒドロフラン、4−ヒドロキシブタナール、
2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、及びそれら由来の
化合物は、いずれも分析下限値(3重量ppm)以下で
あった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 和成 岡山県倉敷市潮通三丁目10番地 三菱化学 株式会社内 Fターム(参考) 4C037 EA03 EA04

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粗ガンマブチロラクトンを40℃以上1
    00℃未満で酸性イオン交換樹脂と接触させた後、蒸留
    塔に供給し蒸留することを特徴とするガンマブチロラク
    トンの精製方法。
  2. 【請求項2】 粗ガンマブチロラクトンが、1,4−ブ
    タンジオールの脱水素反応により製造されたものである
    ことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 1,4−ブタンジオールの脱水素反応
    が、均一系錯体触媒の存在下に行われたものであること
    を特徴とする請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 粗ガンマブチロラクトンが、4−ヒドロ
    キシブタナール、2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、
    及びテトラヒドロフラノ−2−オキシブタナールを含む
    ものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか
    に記載の方法。
  5. 【請求項5】 粗ガンマブチロラクトンを、酸性イオン
    交換樹脂を充填した反応器に流通して酸性イオン交換樹
    脂と接触させることを特徴とする請求項1乃至4に記載
    の方法。
  6. 【請求項6】 酸性イオン交換樹脂が、強酸性イオン交
    換樹脂であることを特徴とする請求項1乃至5に記載の
    方法。
  7. 【請求項7】 蒸留を、粗ガンマブチロラクトンを塔頂
    温度が120℃以下の蒸留塔に導入し、減圧下にガンマ
    ブチロラクトンよりも低沸点の成分を塔頂から留出さ
    せ、精製ガンマブチロラクトンを蒸留塔の側流抜き出し
    口又は塔底から抜き出す方法により行うことを特徴とす
    る請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
  8. 【請求項8】 蒸留塔への粗ガンマブチロラクトンの導
    入口が、蒸留塔の塔頂又は蒸留部の上部1割未満の位置
    にあることを特徴とする請求項7記載の方法。
  9. 【請求項9】 精製ガンマブチロラクトンを、蒸留塔の
    側流抜き出し口から抜き出すことを特徴とする請求項7
    又は8記載の方法。
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