JP2003224928A - ディジタル形方向継電器 - Google Patents

ディジタル形方向継電器

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Abstract

(57)【要約】 【課題】電力系統自体に不平衡要因がある場合、あるい
は単相再閉路無電圧時間中などの場合、事故が発生して
いないにも拘わらず逆相、零相などの不平衡成分が存在
するため、それらの電気量を用いて演算する場合、感度
が鈍くなるとか、動作を誤る可能性があった。 【解決手段】電力系統に逆相分や零相分等の不平衡成分
が存在している状態においても、不平衡事故が発生した
場合、正しく事故の方向を判別することのできるよう
に、基準となる時点の電圧データおよび電流データと、
その基準となる時点から予定のサンプリング間隔だけ離
れた時点の電圧データおよび電流データとを用いて、そ
れぞれ不平衡成分電圧の変化分および不平衡成分電流の
変化分を求める手段と、この不平衡成分電圧の変化分お
よび不平衡成分電流の変化分を入力してその位相関係を
求め、前方事故か後方事故かを判定する手段と、を備え
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は逆相変化分あるいは
零相変化分等の不平衡成分電気量の変化分を用いて、事
故の方向を判別するようにしたディジタル方向継電器に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】電力系統の事故方向の判定を、逆相分電
気量あるいは零相分電気量を用いた方向継電器により行
うことは電気協同研究第37巻1号第54頁の記事等で広く
知られている。
【0003】ここで、逆相方向継電器をディジタル形で
実現しようとした場合、一定サンプリング間隔で得た電
力系統の電圧、電流のサンプル値をそれぞれVm、Im
すると、電圧、電流の逆相成分は次式(3)のように求め
ることができる。 3V2m=Vam+Vb(m-8)+Vc(m-4)、 3I2m=Iam+Ib(m-8)+Ic(m-4) (3)
【0004】ここで、サンプリング間隔は電気角30°、
mはサンプリングの時点、添字の2は逆相成分、更にa,
b,cは各々A相、B相、C相の電気量である。また、m-
αはmからαサンプリング前の電気量であることを示し
ている。
【0005】電力系統が3相平衡している場合、逆相成
分は存在しないから(3)式の各項の値はともに0である
が、電力系統に不平衡事故が発生すると、系統保護リレ
ーから見た逆相インピーダンスZ2は、V2m=Z2・I2m
の関係が成立する。この式においてZ2は一般的にほと
んどがリアクタンス成分であるため、V2mとI2mとはほ
ぼ位相が90°ずれる。その際、電圧と電流のうちどちら
が進みとなるかは、事故が前方即ち保護方向か、後方か
によって決まる。
【0006】逆相回路には電源がないため、正相回路と
は逆の関係になり、事故が前方の場合、電流が電圧に対
して進み、後方事故の場合は電流が電圧に対して遅れる
こととなる。従って、例えば電流を90°進み側に移相
し、電圧との内積をとった結果が正となれば後方事故、
負となれば前方事故と判定することができる。実際の演
算は次式(4)のようになる。 V2m×J2m+V2(m-3)×J2(m-3)<0 (4)
【0007】ここで、J2mはI2mの位相を90°進めたも
のである。実際には若干の不感帯をもたせ、それをKと
すれば動作ゾーンは図16のように表すことができる。
この原理は地絡事故について、零相回路についても全く
同じであり、判定に使用する電気量に零相成分を用いる
だけである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、同一鉄
塔に多回線が共架されて回線間に零相循環電流が流れて
いる場合とか、単相再閉路無電圧時間中のように一時的
に3相のうち1相が欠相している状態の場合には、電力
系統には実際に事故が発生していないにも拘わらず逆相
成分や零相成分などの不平衡成分が存在するため、それ
らの電気量を用いて演算した場合、感度が鈍くなるとか
誤動作する可能性があった。
【0009】本発明の目的は、定常状態において電力系
統に逆相分や零相分等の不平衡成分が存在していたとし
ても、不平衡事故が発生した場合に正しく事故の方向を
判別することのできるディジタル形方向継電器を供給す
ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1に係るディジタル形方向継電器の発明
は、電力系統の電圧値および電流値を周期的にサンプリ
ングしてディジタル値に変換し、このディジタル値に変
換された電圧データおよび電流データを用いて事故方向
の判定演算を行うようにしたディジタル形方向継電器に
おいて、基準となる時点の電圧データおよび電流データ
と、その基準となる時点から所定のサンプリング間隔だ
け離れた時点の電圧データおよび電流データとを用い
て、それぞれ不平衡成分電圧の変化分および不平衡成分
電流の変化分を求める手段と、この不平衡成分電圧の変
化分および不平衡成分電流の変化分を入力してその位相
関係を求め、前方事故か後方事故かを判定する手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】この発明によれば、変化分の電気量を使用
することで、常時存在する逆相分電気量の影響を受けに
くくすることが可能であり、事故の方向判別の精度を上
げることが可能となる。
【0012】また、請求項2に係るディジタル形方向継
電器の発明は、電力系統の電圧値および電流値を周期的
にサンプリングしてディジタル値に変換し、このディジ
タル値に変換された電圧データおよび電流データを用い
て事故方向の判定演算を行うようにしたディジタル形方
向継電器において、基準となる時点の電圧データおよび
電流データと、その基準となる時点から所定のサンプリ
ング間隔だけ離れた時点の電圧データおよび電流データ
とを用いて、それぞれ不平衡成分電圧の変化分および不
平衡成分電流の変化分を求める手段と、これら不平衡成
分電圧の変化分および不平衡成分電流の変化分から不平
衡インピーダンス分を求める手段と、この求められた不
平衡インピーダンス分を基準値と比較し、前方事故か後
方事故かを判定する手段と、を備えたことを特徴とす
る。
【0013】この発明によれば電気量の変化分を使用し
てインピーダンスを求めることで、常時存在する不平衡
成分電気量の影響を受けにくくすることが可能であり、
事故の方向判別の精度を上げることが可能となる。
【0014】更に、請求項3に係るディジタル形方向継
電器の発明は、電力系統の電圧値および電流値を周期的
にサンプリングしてディジタル値に変換し、このディジ
タル値に変換された電圧データおよび電流データを用い
て事故方向の判定演算を行うようにしたディジタル形方
向継電器において、基準となる時点の電圧データおよび
電流データと、その基準となる時点から所定のサンプリ
ング間隔だけ離れた時点の電圧データおよび電流データ
とを用いて、電流の逆相変化分ΔI2と電圧の逆相変化分
ΔV2を求める第1の手段と、任意の定数K1とK2、Ψお
よび、電流が電圧に対し進んでいる位相をφとしたとき
に、(1)式K1ΔI2−ΔV2cos(φ−Ψ)2が成立し
た場合前方事故と判定する第2の手段と、(2)式K1ΔI
2−ΔV 2cos(φ−Ψ)<K2が成立した場合後方事故と
判定する第3の手段と、を設けたことを特徴とする。
【0015】更にまた、請求項4に係るディジタル形方
向継電器の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか
の請求項に係るディジタル形方向継電器において、前記
不平衡成分電圧の変化分および不平衡成分電流の変化分
として、それぞれ逆相変化分の電気量または零相変化分
の電気量のいずれかを使用することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態について説明する。図1は、本発明に係る全て
の実施の形態に共通なハードウェア構成図である。図1
において、101は保護対象である送電線、102はこの送電
線101から電圧を取り出すためのPT回路、103は送電線10
1から電流を取り出すためのCT回路である。
【0017】また、104-1および104-2は電力回路である
CT回路102およびPT回路103をそれぞれ電子回路と電気的
に分離するためと、取り込んだ電流値、電圧値を後述す
る演算回路109で取り扱う大きさに変換するための入力
変換器である。
【0018】105-1、105-2は折り返し周波数をカットす
るアナログフィルタ、106-1、106-2はアナログフィルタ
の出力を所定間隔でサンプリングし、そのサンプル値を
保持するサンプルホルダーである。
【0019】107は複数のサンプルホールド値を時系列
に並び換えて出力するマルチプレクサ、108マルチプレ
クサの出力をディジタル値に変換して出力するA/D変換
器、109はマイコン等のディジタル演算回路である。
【0020】(第1の実施の形態)図2は前記演算回路
109の機能を演算手段の形式で表した第1の実施の形態
のブロック図である。図2において、110はディジタル
フィルタであり、入力されたディジタルデータV、Iを
フィルタリングしたのち、v,iをそれぞれ次に述べる
演算手段111、112に入力する。
【0021】111は電圧逆相分演算手段であり、例えば
以下の式(5)で電圧の逆相分求める。 3V2m=VAm+VB(m-8)+VC(m-4) (5) ここでmは現時点のサンプルを示し、以下30°ごとにデ
ータがあるものとする。従って、m-4は120°前のデータ
を意味する。
【0022】112は電流逆相分演算手段であり、例えば
以下(6)のような式で電流の逆相分を求める。 3I2m=IAm+IB(m-8)+IC(m-4) (6) 113はこれらの演算結果を保存しておくための電圧およ
び電流データ保存手段である。
【0023】114は電圧逆相変化分演算手段であり、例
えば1サイクル前の値と現時点の値との変化分を、以下
のような式(7)で求める。 ΔV2m=V2m−V2(m-12) (7)
【0024】115は電流逆相変化分演算手段であり、例
えば1サイクル前の値と現時点の値との変化分を、以下
のような式(8)で求める。 ΔI2m=I2m−I2(m-12) (8) この例では先に逆相成分を求め、次に変化分を求めてい
るが、先に変化分を求め、次に逆相分を求めても全く同
じである。
【0025】116は前方事故判定手段であり、逆相変化
分電圧と逆相変化分電流の位相関係から前方事故を判定
する。逆相のインピーダンスはほぼ順リアクタンスであ
ることを考慮入れると、前方事故の場合は、ΔI2mは−
ΔV2mに対して約90°遅れることになる。従ってΔI2m
を90°移相し、−ΔV2mとの内積をとることでそれらの
位相関係を見ることができる。これを式で表すと例えば
以下の式(9)のようになる。 ΔI2m∠90°*(−ΔV2m1|ΔV2m| (9)
【0026】この式(9)によればΔI2mの90°進み分を
−ΔV2mに投影した成分が、k1以上になった場合に動
作となる。この動作域を図に示したものが図3である。
内積演算は次の式(10)で求める。 −ΔV2m*ΔI2m∠90°=−ΔV2m・ΔJ2m−ΔV2(m-3)・ΔJ2(m-3) (10)
【0027】ここでΔJ2mはΔI2mを90°進めたもの
で、例えば次式(11)のように求めることができる。 ΔJ2m=(ΔI2m−2ΔI2(m-2))/√3 (11)
【0028】絶対値は例えば次式(12)のように求めるこ
とができる。
【数1】
【0029】逆相インピーダンスに抵抗成分Rが多く含
まれている場合などは、電流の移相を変化させて、最も
感度の良い角度を変更すればよく、ユーザーによる整定
とすることも可能である。
【0030】117は後方事故判定手段であり、前述の前
方事故判定手段116と同様、逆相変化分電圧と逆相変化
分電流の位相関係から後方事故を判定する部分である。
ただし、前方事故と反対であるので以下のような式(13)
で判定する。 ΔI2m∠90*(−ΔV2m)<k2|ΔV2m| (13) 具体的な演算方法は前方事故の判定と全く同じであるの
で省略する。
【0031】図3にこの動作域を示す。これらの判定式
中のk1,k2は感度を決める要素であり、系統条件に合
わせて適宜決めれば良い。以上述べた実施の形態によれ
ば、変化分の電気量を使用することで、常時存在する逆
相分電気量の影響を受けにくくすることが可能であり、
事故の方向判別の精度を上げることが可能となる。
【0032】なお、自明なことであるが、電流を移相す
る代りに電圧を移相して判定しても全く同じである。ま
た、逆相変化分電圧と逆相変化分電流との位相関係を求
めるのに、どちらかの電気量を90°移相して内積演算を
行うようにしたが、外積演算を行っても良い。
【0033】(変形例1)第1の実施の形態の変形例と
して、単純に位相差だけを見るものを挙げることができ
る。既に述べたように、前方事故では−ΔV2mとΔJ2m
はほぼ同位相となることから、その位相差をφとすれば
次の式(14)、
【数2】 で判定が可能となる。このときX=0とすれば動作範囲
【数3】 となり、
【数4】 となる。これを図示すると図4となる。
【0034】(変形例2)この変形例2は動作領域をオ
フセットさせたもので、例えば−ΔV2mに−(ΔV2m
αΔV2m)を代入すれば図5に示すようにαΔV2mだけ
オフセットした特性を得ることができる。なお、は例え
ば定数である。
【0035】ここではオフセットを電圧の方向にとった
が、動揺の計算を電流に対して行えば、電流の方向にと
ることも可能である。このように、様々な簡単な変更、
あるいは機能追加が可能であるが、基本的に逆相電流の
変過分と逆相電圧の変過分の位相差に着目するという点
で第1の実施形態から変形例2までは共通している。
【0036】(第2の実施の形態)図6は本発明の第2
の実施の形態を示す演算手段のブロック図である。この
第2の実施例は逆相変化分電流と逆相変化分電圧から逆
相インピーダンスを求め、その値から事故の方向を判定
しようというものである。なお、ディジタルフィルタ11
0から演算手段115までは図2の場合と同じであるので説
明は省略する。
【0037】逆相インピーダンスのうち、リアクタンス
分はIm(ΔV2/ΔI2)で求めることができる。変化分
を用いることで、定常状態で存在している逆相分はキャ
ンセルすることができ、精度を上げることができる。
【0038】逆相回路は定常時は電源を持たないため、
前方事故の場合発生する電圧は、自分の背後にあるイン
ピーダンスにより決まり、電流が電圧に対し進むことに
なる。その大きさは事故が前方であれば事故点に関係な
く、背後のインピーダンスと等しいものなる。
【0039】逆に背後事故であれば、前方のインピーダ
ンスを求めることとなり、遅れ方向となる。遅れ方向を
正にとれば、背後事故においては前方の電力系統が最も
大きいケースでインピーダンスは最小となる。従って、
それ以下であればインピーダンスが負になる場合も含め
て、前方事故と判定できるので、判定式は次式(15)のよ
うに表すことができる。 Im(ΔV2/ΔI2)<K1 (15) ここでK1は系統構成等により考えられ得る最小のイン
ピーダンス以下にすれば良い。
【0040】この式を積の形で表すと次式のようにな
る。次式(16)が成立すれば前方の事故となり、成立しな
ければ後方の事故となる。 ΔV2*ΔI2∠90°<K1ΔI2 2 (16) 上式を演算するためには、逆相変化分電流の大きさと逆
相変化分電圧と逆相変化分電流の内積を求めれば良い。
【0041】図6において、120は逆相変化分電流の大
きさの2乗を求める絶対値演算手段であり、例えば次式
(17)のように表すことができる。 |ΔI2|2=(ΔI2m)2+(ΔI2(m-3))2 (17)
【0042】121は逆相変化分電流を90°位相したもの
と逆相変化分電圧の内積を求める内積演算手段であり、
求め方は既に示したとおりである。122は絶対値演算手
段120, 内積演算手段121から既述の判定式により前方事
故か否かを判定する前方事故判定手段、そして123は絶
対値演算手段120, 内積演算手段121から既述の判定式に
より後方事故か否かを判定する後方事故判定手段であ
る。
【0043】以上述べたように、本発明によれば電気量
の変化分を使用してインピーダンスを求めることで、常
時存在する逆相分電気量の影響を受けにくくすることが
可能であり、事故の方向判別の精度を上げることが可能
となる。この場合の動作域の例を図7に示す。
【0044】電力系統により誤差が発生しやすい場合な
どは、判定式に不感帯を設けることも可能である。次式
(18)に本実施の形態の変形例を示す。 K1ΔI2 2−ΔV2*ΔI2∠90°>K2 (18) 上式では右辺を0とせず定数を置いたことで感度の調整
ができるようになり誤差に強くなる。その他の演算方法
は全く同じであるのでここでは省略する。
【0045】(第3の実施の形態)図8は本発明による
第3の実施の形態を示す演算手段のブロック図である。
110から115は図2の場合と同じであり、また120から123
は図6の場合と同じであるので説明は省略する。
【0046】第3の実施の形態では前方事故の判定を次
式(19)によって行う。 K1ΔI2−ΔV2cos(φ−Ψ)2 (19) ここでΨは最も感度を高くしたい角度に設定すれば良
い。既に述べているように、一般に逆相回路のインピー
ダンスはほとんどがリアクタンス成分であるので、電流
と電圧の位相はほぼ90°開く。従って、Ψは90°付近に
設定すれば良い。
【0047】以下ではΨを90°にした場合について説明
する。上式(19)の両辺にΔI2をかけてサンプリング表
現に変更すると、次式(20)となる。 K1|ΔI2m|2−ΔV2m*ΔI2m∠90°2ΔI2m (20)
【0048】130は逆相変化分電流の2乗の平方根を求
める平方根演算手段である。これらの演算により、上の
判定式を演算することができる。この判定式による動作
域は図9のように表すことができる。
【0049】このように本発明によれば、電気量の変化
分を使用することにより、常時存在する逆相分電気量の
影響を受けにくくすることが可能である。また、基本的
に逆相電圧、電流変化分の位相差に着目した手法である
が、逆相変化分電流により補償していることで、それが
多く流れた場合には動作しやすくなるという特性を持っ
ており、更に事故の方向判別の精度を上げることが可能
となる。
【0050】(第4の実施の形態)図10は本発明の第
4の実施の形態を示す演算手段のブロック図である。図
2と比較し、逆相分電気量に代えて零相分電気量を使用
すること以外は全く同じである。140および141はそれぞ
れ電圧逆相分演算手段および電流逆相分演算手段であ
り、例えば次式(21)のように演算することができる。 3V0m=Vam+Vbm+Vcm、 3I0m=Iam+Ibm+Icm (21)
【0051】142および143はそれぞれ電圧逆相変化分演
算手段および電流逆相変化分演算手段であり、例えば1
サイクル前の値との変化分を求めるとすると以下のよう
な式(22)で求めることができる。 ΔI0m=I0m−I0(m-12)、 ΔV0m=V0m−V0(m-12) (22)
【0052】その他については図2と全く同じであるの
でここでは省略する。このときの動作範囲を図11に示
す。本発明によれば、零相変化分の電気量を使用するこ
とで常時存在する零相分電気量の影響を受けにくくする
ことが可能であり、単に零相分を使用するのに比べ、事
故の方向判別の精度を上げることが可能となる。事故の
影響が逆相よりも零相に現れやすい電力系統などでは零
相の変化分を使用したほうが良い。
【0053】(第5の実施の形態)図12は本発明の第
5の実施の形態を示す演算手段のブロック図である。図
12は逆相電気量の代りに零相の電気量を使用すること
以外は図6と全く同じであるので、説明は省略する。
【0054】図13はこの第5実施の形態による動作範
囲を示したものである。本発明によれば、零相変化分の
電気量を使用することで常時存在する零相分電気量の影
響を受けにくくすることが可能であり、事故の方向判別
の精度を上げることが可能となる。事故の影響が逆相よ
りも零相に現れやすい電力系統などでは零相の変化分を
使用したほうが良い。また、零相分の演算には時間遅れ
がないため、周波数変動の影響を受けにくいということ
も言える。
【0055】(第6の実施の形態)図14は第6の実施
の形態を示す演算手段のブロック図である。図14は逆
相電気量の代りに零相の電気量を使用すること以外は図
8と全く同じであるので、説明は省略する。
【0056】図15は第6実施の形態による動作範囲を
示したものである。本発明によれば、零相変化分の電気
量を使用することで常時存在する零相分電気量の影響を
受けにくくすることが可能であり、また、逆相変化分電
流により補償していることで、更に事故の方向判別の精
度を上げることが可能となる。事故の影響が逆相よりも
零相に現れやすい電力系統などでは零相の変化分を使用
したほうが良い。
【0057】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば定
常状態において電圧および電流に逆相分または零相分が
発生している場合においても、変化分を使用することか
らその影響を受けにくく、精度よく事故の方向判別を行
うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る全ての実施の形態に共通なハード
ウェア構成図。
【図2】第1の実施の形態を実現する演算手段のブロッ
ク図。
【図3】第1の実施の形態の動作範囲を示す図。
【図4】第1の実施の形態の変形例1の動作範囲を示す
図。
【図5】第1の実施の形態の変形例2の動作範囲を示す
図。
【図6】第2の実施の形態を実現する演算手段のブロッ
ク図。
【図7】第2の実施の形態の動作範囲を示す図。
【図8】第3の実施の形態を実現する演算手段のブロッ
ク図。
【図9】第3の実施の形態の動作範囲を示す図。
【図10】第4の実施の形態を実現する演算手段のブロ
ック図。
【図11】第4の実施の形態の動作範囲を示す図。
【図12】第5の実施の形態を実現する演算手段のブロ
ック図。
【図13】第5の実施の形態の動作範囲を示す図。
【図14】第6の実施の形態を実現する演算手段のブロ
ック図。
【図15】第6の実施の形態の動作範囲を示す図。
【図16】従来の逆相方向継電器の演算による動作範囲
を示す図。
【符号の説明】
101…送電線、102…変成器、103…変流器、104、105…
入力変換回路、106…A/D変換回路、107…演算回路、11
0、210…ディジタルフィルタ、111…電圧逆相分演算手
段、112…電流逆相分演算手段、113…電圧・電流保存手
段、114…電圧逆相変化分演算手段、115…電流逆相変化
分演算手段、116,122,131…前方事故判定手段、117,12
3,132…後方事故判定手段、120…電気量の絶対値演算手
段、121…2つの電気量の内積演算、130…平方根演算手
段、140…電圧逆相分演算手段、141…電流逆相分演算手
段、142…電圧逆相変化分演算手段、143…電流逆相変化
分演算手段。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 天羽 秀也 東京都府中市晴見町2丁目24番地の1 東 芝システムテクノロジー株式会社内 (72)発明者 園部 泰孝 東京都府中市東芝町1番地 株式会社東芝 府中事業所内 Fターム(参考) 5G058 EE01 EG04 EG09 EH01 EH02 EH03 GG02 GG03 GG04 GG07 GG09

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電力系統の電圧値および電流値を周期的
    にサンプリングしてディジタル値に変換し、このディジ
    タル値に変換された電圧データおよび電流データを用い
    て事故方向の判定演算を行うようにしたディジタル形方
    向継電器において、 基準となる時点の電圧データおよび電流データと、その
    基準となる時点から所定のサンプリング間隔だけ離れた
    時点の電圧データおよび電流データとを用いて、それぞ
    れ不平衡成分電圧の変化分および不平衡成分電流の変化
    分を求める手段と、 この不平衡成分電圧の変化分および不平衡成分電流の変
    化分を入力してその位相関係を求め、前方事故か後方事
    故かを判定する手段と、を備えたことを特徴とするディ
    ジタル形方向継電器。
  2. 【請求項2】 電力系統の電圧値および電流値を周期的
    にサンプリングしてディジタル値に変換し、このディジ
    タル値に変換された電圧データおよび電流データを用い
    て事故方向の判定演算を行うようにしたディジタル形方
    向継電器において、 基準となる時点の電圧データおよび電流データと、その
    基準となる時点から所定のサンプリング間隔だけ離れた
    時点の電圧データおよび電流データとを用いて、それぞ
    れ不平衡成分電圧の変化分および不平衡成分電流の変化
    分を求める手段と、 これら不平衡成分電圧の変化分および不平衡成分電流の
    変化分から不平衡インピーダンス分を求める手段と、 この求められた不平衡インピーダンス分を基準値と比較
    し、前方事故か後方事故かを判定する手段と、を備えた
    ことを特徴とするディジタル形方向継電器。
  3. 【請求項3】 電力系統の電圧値および電流値を周期的
    にサンプリングしてディジタル値に変換し、このディジ
    タル値に変換された電圧データおよび電流データを用い
    て事故方向の判定演算を行うようにしたディジタル形方
    向継電器において、 基準となる時点の電圧データおよび電流データと、その
    基準となる時点から所定のサンプリング間隔だけ離れた
    時点の電圧データおよび電流データとを用いて、電流の
    逆相変化分ΔI2と電圧の逆相変化分ΔV2を求める第1の
    手段と、 任意の定数と,および、電流が電圧に対し進んでいる位
    相をとしたときに、 K1ΔI2−ΔV2cos(φ−Ψ)2 (1) が成立した場合前方事故と判定する第2の手段と、 K1ΔI2−ΔV2cos(φ−Ψ)<K2 (2) が成立した場合後方事故と判定する第3の手段と、を設
    けたことを特徴とするディジタル形方向継電器。
  4. 【請求項4】 前記不平衡成分電圧の変化分および不平
    衡成分電流の変化分として、それぞれ逆相変化分の電気
    量または零相変化分の電気量のいずれかを使用すること
    を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載
    のディジタル形方向継電器。
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