JP2003213443A - 被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板および絶縁被膜処理剤及び処理方法 - Google Patents
被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板および絶縁被膜処理剤及び処理方法Info
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Abstract
接性、打ち抜き性等の優れた無方向性電磁鋼板の製造を
可能とする。 【解決手段】 粒子径0.04〜0.19μmの超微粒
樹脂を含有し、クロム酸を主体とする絶縁被膜剤により
処理され、絶縁被膜成分中の有機物成分を有機Cとして
2.5〜25.0%を含有し、膜厚0.5〜10.0μ
mの絶縁被膜を有する被膜性能の優れる無方向性電磁鋼
板。また、クロム酸100質量部に対し、硼酸、硼酸塩
の1種又は2種以上を硼酸として10〜45質量部、M
gO,CaO,ZnO,Al2O3の中から選ばれる1種
又は2種以上を10〜35質量部、還元剤としてグリセ
リン、アジピン酸、コハク酸の1種又は2種以上を10
〜30質量部、および粒子径0.04〜0.19μmの
超微粒樹脂を含む樹脂エマルジョンを固形分として5〜
50質量部配合する無方向性電磁鋼板の絶縁被膜剤。
Description
製造において、高速ラインにおける塗れ性が極めて優れ
ると共に、焼付け後の絶縁被膜の性状として、打ち抜き
性、溶接性、密着性、占積率、外観等被膜特性の優れる
有機−無機系絶縁被膜剤とそれを用いた絶縁被膜の形成
方法に関する。
ターやトランスの鉄心に使用する場合には、所定の形状
に打ち抜いた後、所定枚数積み重ね、溶接、かしめ或い
は接着等により鉄心とされる。また、この際、必要に応
じて歪焼鈍が施される。通常、この無方向性電磁鋼板表
面には絶縁被膜処理が施される。
抜き性、溶接性、耐食性、密着性、占積率等が重要で、
さらにコア打ち抜き後に歪み取り焼鈍工程を必要とする
場合には、歪み取り焼鈍後の密着性、絶縁性、耐食性等
も重要となる。
系、有機−無機混合系被膜が使用条件や目的に応じて適
用されてきた。一般に、無機系被膜は耐熱性や溶接性は
優れるが打ち抜き性が劣る。一方、有機被膜の場合には
打ち抜き性、密着性は優れるが耐熱性が悪く、溶接性が
劣る欠点がある。
的な特性が得られる有機−無機系被膜が用いられるよう
になった。有機−無機系被膜としては、特開昭52−3
3846号公報には、燐酸系、クロム酸系の1種又は2
種以上と有機樹脂の混合被膜を形成するに際し、処理液
中に有機樹脂粒子を添加して表面粗さを2〜10μHma
xとする打ち抜き性と溶接性の優れた絶縁被膜形成法が
提案されている。
り焼鈍後の被膜特性が優れた無方向性電磁鋼板の製造法
として、CrO3100質量部、Al,Mg,Ca,Z
nから選ばれる酸化物の1種又は2種以上20〜40質
量部、粒子径0.2〜0.5μmに調整したアクリル、
スチレン、酢ビ及び又はこれらの共重合体からなる樹脂
の1種又は2種以上の微粒子エマルジョン溶液10〜6
0質量部、粒子径を1〜50μmに調整したメチルメタ
アクリレート、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、
セルローズ、シリコン、メラミン、フェノール、ポバー
ル樹脂及び/又はこれらの共重合体、架橋体の1種又は
2種以上を2〜30質量部からなるものが開示され、こ
れにより、打ち抜き性、溶接性が良好で且つ、歪取り後
の潤滑性、絶縁性、耐蝕性が著しく改善されることが述
べられている。
磁鋼板の表面にクロム酸系の1種又は2種以上とクロム
酸金属塩(CrO3に換算して)1質量部に対して、水
分散性エマルジョン0.1〜5質量部、粒径が2〜50
μmの球状有機樹脂粒子0.1〜1.0質量部を主成分
とする水溶液を焼き付けて表面粗さが0.5〜1.5μ
mの被膜を形成する溶接性と密着性に優れた電磁鋼板の
電気絶縁被膜処理方法が提案されている。
き性向上の目的で添加される有機樹脂の溶接性劣化を緩
和するために、極めて粗い粒子状物質を添加して表面粗
度の粗さを得て溶接性向上効果を得ている。このため、
占積率の低下の弊害は否めず、塗れ性、液安定性、外観
やコストアップをもたらす問題がある。
有機−無機成分を基本とするコーティング剤やその処理
方法においては、被膜成分の鋼板への塗れ性や液の安定
性、外観が十分でなく、更には、近年の高速の塗布・焼
付け処理ラインにおける液の塗れ性、塗布性問題から生
じる打ち抜き性、溶接性や外観不良の問題は根強く更な
る改善が望まれている。
分を基本とする絶縁被膜剤の塗れ性向上とこれによる打
ち抜き性、溶接性、密着性、外観の改善をすべく考案さ
れたものである。これにより、従来の半有機被膜の欠点
を改善するための塗れ性の優れた絶縁被膜剤とそれによ
る表面均一性、被膜性能の優れた無方向性電磁鋼板の製
造方法を提供することを目的とし、以下の構成を要旨と
する。 (1)粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂を含
有し、クロム酸を主体とする絶縁被膜剤により処理さ
れ、絶縁被膜成分中の有機物成分を有機Cとして2.5
〜25.0%を含有し、膜厚0.5〜10.0μmの絶
縁被膜を有することを特徴とする被膜性能の優れる無方
向性電磁鋼板。 (2)絶縁被膜が、クロム酸として100質量部に対
し、粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂を含む
樹脂を固形分として5〜50質量部含有することを特徴
とする(1)の優れる無方向性電磁鋼板。 (3)樹脂中の粒子径0.04〜0.19μmの超微粒
樹脂が、質量で樹脂固形分の30%以上、残部が粒子径
0.35〜0.50μmの樹脂であることを特徴とする
(2)の被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板。 (4)樹脂がTg:20〜100のアクリル、スチレ
ン、酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ
アミド、ポリカーボネート、メラミン、ポリウレタン、
アルキド、イソシアネート、エポキシ樹脂の1種又は2
種以上からなることを特徴とする(1)〜(3)の無方
向性電磁鋼板の絶縁被膜剤。 (5)表面粗度Ra値が0.1〜1.0μm、光沢度7
0以上を有することを特徴とする(1)〜(4)の無方
向性電磁鋼板。
(θ);45度で測定。 (6)クロム酸100質量部に対し、硼酸、硼酸塩の1
種又は2種以上を硼酸として10〜45質量部、Mg
O,CaO,ZnO,Al2O3の中から選ばれる1種又
は2種以上を10〜35質量部、還元剤としてグリセリ
ン、アジピン酸、コハク酸の1種又は2種以上を10〜
30質量部、および粒子径0.04〜0.19μmの超
微粒樹脂を含む樹脂エマルジョンを固形分として5〜5
0質量部配合することを特徴とする無方向性電磁鋼板の
絶縁被膜剤。 (7)樹脂エマルジョン中の粒子径0.04〜0.19
μmの超微粒樹脂が、質量で樹脂固形分の30%以上、
残部が粒子径0.35〜0.50μmの樹脂であること
を特徴とする(6)の無方向性電磁鋼板の絶縁被膜剤。 (8)樹脂エマルジョンがTg:20〜100のアクリ
ル、スチレン、酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリプロピ
レン、ポリアミド、ポリカーボネート、メラミン、ポリ
ウレタン、アルキド、イソシアネート、エポキシ樹脂の
1種又は2種以上からなり、エマルジョン中の界面活性
剤の量が質量で樹脂固形分の0.5〜8.0%であるこ
とを特徴とする(6)(7)の無方向性電磁鋼板の絶縁
被膜剤。 (9)界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェ
ノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノール
エーテル、ドデシルベンゼルスルホン酸Na、ポリオキ
シエチレンオレールエーテルサルフェートNa、ポリオ
キシエチレンノニエルフェノールエーテルサルフェート
NH4、スルホコハク酸ジナトリウムのエトキシ化アル
コール、スルホコハク酸ジナトリウムのエトキシ化ノニ
ルフェノール半エステル、モノドデシルジフェニルオキ
シドジスルホン酸Na、ジドデシルジフェニルオキシド
ジスルホン酸Na、アセチレンジオールのEO付加物の
1種又は2種以上を用いることを特徴とする(8)の無
方向性電磁鋼板の絶縁被膜剤。 (10)溶液の表面接触角が15度以下であることを特
徴とする(6)〜(9)の無方向性電磁鋼板の絶縁被膜
剤。 (11)(6)〜(10)の無方向性電磁鋼板の絶縁被
膜剤を仕上げ焼鈍後の無方向性電磁鋼板表面に、乾燥後
の付着量で0.5〜10g/m2となるよう塗布し、1
80℃〜400℃で焼付け処理して、絶縁被膜成分中に
有機成分を有機Cとして2.5〜25.0%にすること
を特徴とする無方向性電磁鋼板の絶縁被膜処理方法。
無機成分の主成分とし、樹脂エマルジョンを有機成分の
主成分とする半有機系絶縁被膜における、被膜の処理工
程と被膜特性上の欠点であった、高速塗布・焼付けライ
ンにおける塗れ性不良と、それによりもたらされる打ち
抜き性や溶接性不良の問題を解決すべく、液組成や焼付
け条件の改善に取り組んだ。
0m/分以上のような高速ラインにおいて、液の塗れ性
が十分でなくなり、均一塗布が困難になり、安定した塗
布膜が得られなくなるため、生産性を阻害するような低
速通板や、塗れ性向上のため塗布量を増やす等を行う必
要が生じる。しかしながら、このような条件変更を行っ
ても、本質的な液塗れ性不良の性質から、塗布前の鋼板
性状などの要因によっては、安定して均一な膜厚を有す
る製品が得られない問題が残る。
ち抜き時にポンチに不均一な欠けをもたらす。また膜厚
が増加すると、有機成分の絶対量増加により、溶接時に
おいて分解ガスによる溶接不良が生じやすい。
溶液成分や処理条件の研究を行った。その結果、粒子径
を超微粒とした樹脂エマルジョンを用い、クロム酸系化
合物、硼酸系化合物の適正な配合条件の処理液とするこ
とにより、超微細粒子による鋼板表面への被覆効果と吸
着効果、及び超微細粒子を覆う界面活性剤による塗れ性
向上効果により、処理液の塗れ性が極めて改善し、外観
が優れる均一な膜厚を得ると共に、優れた打ち抜き性、
溶接性、密着性、耐食性等、の被膜性能が得られる絶縁
被膜剤溶液と絶縁被膜形成技術の開発に成功した。
理剤組成に特徴があり、その処理剤により得られる美麗
で均一な被膜を有する無方向性電磁鋼板が基本となる。
微粒樹脂を有機成分として含有し、クロム酸を主体とす
る被膜剤により処理され、被膜中の有機成分を有機Cと
して2.5〜25質量%含有し、膜厚0.5〜10.0
μmを有する無方向性電磁鋼板に特徴がある。
ず鋼板表面への塗れ性に影響する。超微粒樹脂を用いる
ことは高速塗布ラインにおいて10μm以下、特に1μ
m以下の薄い膜厚を得るのに重要である。粒子径は小さ
いほど高速ラインでの塗れ性、塗膜の均一性が向上す
る。飛躍的な塗れ性改善効果を得るためには超微粒樹脂
の粒子径が0.19μm以下であることが重要である。
特に、粒子径0.14μm以下では飛躍的に塗れ性の向
上が得られる。このような超微粒樹脂エマルジョンを主
成分とする絶縁被膜剤を塗布すると、被膜欠陥がなく表
面外観が均一で且つ、均一な膜厚を有する製品が得られ
る。
mとした。安定なエマルジョンとするためには、比表面
積に応じた界面活性剤の使用が必要であるが、粒子径が
0.04μm未満と小さ過ぎると、界面活性剤の必要量
が増し、塗布作業工程での泡立ち性が増して塗布行程の
作業を困難にする。又、樹脂製造コスト面においても好
ましくない。一方、超微粒樹脂の粒子径が0.19μm
超になると、鋼板への塗れ性向上効果が十分でなく、塗
布工程における作業条件の影響を受けやすいことから制
限される。
微粒樹脂を含むものを5〜50質量部配合する。5質量
部未満の場合、塗れ性向上効果が弱まるほか、密着性、
打ち抜き性が低下するため制限される。50質量部超の
場合には、塗れ性の向上は優れるが、溶接性、耐熱性を
低下するため制限される。5〜50質量部の範囲であれ
ば、塗れ性、打ち抜き性、溶接性、耐蝕性、耐熱性等の
優れる絶縁被膜が得られる。
は、塗れ性、被覆性向上のためには必ずしも樹脂分の1
00%を占める必要はなく、溶接性や滑り性等の他の被
膜性能向上の目的で、粒子径0.2〜0.5μmの中粒
或いは粗粒エマルジョンと併用しても良い。本発明の超
微粒樹脂エマルジョンに通常のエマルジョンを複合して
使用する場合は、超微粒樹脂を全樹脂の少なくとも30
質量%以上とし、残部は粒子径0.35〜0.50μm
の粗粒子樹脂を配合して使用する。超微粒樹脂が30質
量%未満では塗れ性向上効果が低下する。
向上効果が得られ、外観、占積率低下の影響を最小限と
して溶接性、滑り性が改善される。超微粒樹脂エマルジ
ョンを用いた本発明においては、その溶液の表面接触角
が15度以下(20℃、10Be)と、従来の処理液よ
り低下することにより、塗れ性の劇的な向上効果が得ら
れる。
粒子径は0.35〜0.50μmである。0.35μm
未満では複合による滑り性や溶接性向上効果が弱い。一
方0.50μm超の場合、エマルジョンそのものの沈降
性が大きくなって溶液安定性が悪く、工業生産に適さな
い。
で2.5〜25%とすることが重要である。有機C量は
樹脂成分添加量と焼付け条件により制御することができ
る。特に、焼付け温度は重要で、樹脂の炭化を起こさな
いように焼付け焼鈍温度サイクルを制御するのが重要で
ある。有機C量が2.5%未満では打ち抜き性、耐蝕
性、絶縁性等が低下する。一方、25.0%超と被膜中
に占める割合が多くなりすぎると溶接性を低下するため
制限される。
る。本発明の塗れ性の優れるエマルジョンを用いた場合
には、高速ライン塗布においても膜厚0.5μm程度ま
での均一な薄塗りが可能である。膜厚が0.5μm未満
では、鋼板の表面状態によっては耐蝕性、絶縁性、打ち
抜き性に影響する。一方、10μm超の場合には、本発
明の超微粒樹脂エマルジョンを用いても、高速ラインで
は、均一な塗膜が得られ難く、高速ラインでは焼付け時
の突沸現象と呼ぶ被膜形成での脱水時に生じるクレータ
ー状欠陥が抑制できなくなるため制限される。
はRa値で0.1〜0.45とするのが好ましい。超微
粒樹脂エマルジョンを用いた場合には、超微粒樹脂効果
により均一で、滑らか且つ、光沢の優れる絶縁被膜を形
成する。しかしながら被膜表面のRaが0.1μm未満
では、溶接性、滑り性等が低下する。一方、粗粒樹脂を
混合した場合にはRaは大きくなるが、0.45μm超
では占積率が低下するため制限される。特に本発明の超
微粒樹脂のみを樹脂として用いた場合の鋼板の表面粗度
は、Raで0.10〜0.25μmとすることができ
る。
件において70以上である。光沢度は絶縁被膜のスムー
ス性の一つの目安となる。光沢度の測定は一定角度から
光線を当てその反射率を測定することによって得られる
もので、市販の光沢度計により測定する。本発明では、
光源の入射角45度(鋼板L方向)で測定した値で評価
した。本発明に規定する範囲で超微粒樹脂エマルジョン
を使用する場合、粗粒子エマルジョンとの複合した場合
でも光沢度70以上の、平滑で光沢の優れる絶縁被膜が
得られる。
る。
分とする処理剤は、次のような組成で溶液が調整され
る。即ち、無機成分としてクロム酸をCrO3として1
00質量部に対し、硼酸又は硼酸塩の1種又は2種以上
を10〜45質量部、MgO,ZnO,CaO,Al2
O3の1種又は2種以上を10〜35質量部、還元剤と
してグリセリン、アジピン酸、コハク酸等の中から選ば
れる1種又は2種以上を10〜30質量部配合し、さら
に、粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂を含む
エマルジョンを5〜50質量部配合される。
液の鋼板面での塗れ性が極めて向上し、均一な塗膜が得
られる。
aO,Al2O3の等の酸化物は、重クロム酸塩を生成す
るモル比以下に抑え、良好な絶縁被膜を得るのに適して
いる。クロム酸及び酸化物成分は絶縁被膜の耐熱性、緻
密性、絶縁性、耐蝕性等の向上に寄与する。
O,Al2O3の1種又は2種以上を、CrO3100質
量当り15〜35質量部である。15質量部未満ではフ
リーのクロム酸が増加して、焼付け条件の厳密なコント
ロールが必要で、被膜のベタツキ、ステイッキング性等
を劣化する場合があるため制限される。45質量部超の
場合、酸化物の種類によっては未溶解の酸化物が生じた
り、析出物による塗れ性や被膜性能の低下が生じるため
制限される。好ましくはCrO3と酸化物による重クロ
ム酸塩を形成するモル比以下である。
性向上に寄与する。CrO3:100質量当り、硼酸硼
酸塩が10質量部未満では耐熱性と外観の向上効果が十
分でない。一方、30部超では溶液での溶解性が低くな
り析出が生じて均一な塗膜が得られなかったり、析出物
による塗れ性不良が生じる場合があるので制限される。
ハク酸は被膜焼付け過程のCrO3の還元に作用し、被
膜生成温度の低下、短時間化を実現するのに重要であ
る。還元剤の配合量がCrO3:100質量当り、5質
量部未満の場合、焼付け条件が狭まり、樹脂成分を安定
に保つために不利であり制限される。一方、20質量部
超の場合にも同様に焼付け温度に敏感になりすぎる問題
がある。還元剤としては本発明外の有機化合物を用いて
も良いが、安価に、安定した効果が得られるのはグリセ
リン、アジピン酸、コハク酸等である。
スチレン、酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレ
ン、ポリアミド、ポリカーボネート、メラミン、ポリウ
レタン、アルキド、イソシアネート、エポキシ樹脂の1
種又は2種以上、及び/又はこれらの共重合体、架橋体
が用いられる。これらの樹脂成分であれば安価で、被膜
性能の優れた絶縁被膜が得られる。
としたのは、20℃未満の場合、絶縁被膜が低温で融着
するブロッキング現象がおきやすく、被膜硬度が弱いた
めに絶縁被膜が鉄心加工工程で傷がつき易いためであ
る。また、極端な場合、スリッター等で発粉現象が生じ
やすくなり、好ましくない。一方、Tgが100℃超で
は造膜性が低下して、焼付け条件によっては被膜の緻密
さや滑らかさが低下して、外観として特に光沢が減少
し、被膜性能に影響する。
例えばアクリル樹脂のように複数種類の樹脂からなる場
合には、メチルメタアクリレート、ブチルアクリレー
ト、エチルアクリレート等の、Tgの異なるアクリル樹
脂の配合割合を変更することで調整できる。
は、界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェノ
ールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエ
ーテル、ドデシルベンゼルスルホン酸Na、ポリオキシ
エチレンオレールエーテルサルフェートNa、ポリオキ
シエチレンノニエルフェノールエーテルサルフェートN
H4、スルホコハク酸ジナトリウムのエトキシ化アルコ
ール、スルホコハク酸ジナトリウムのエトキシ化ノニル
フェノール半エステル、モノドデシルジフェニルオキシ
ドジスルホン酸Na、ジドデシルジフェニルオキシドジ
スルホン酸Na、アセチレンジオールのEO付加物の1
種又は2種以上が用いられる。
るのが通常である。本発明の超微粒樹脂エマルジョンに
おいては、これらの界面活性剤を適量用いることによ
り、樹脂粒子の安定性と良好な塗れ性が得られる。本発
明の樹脂粒子径では、好ましくは質量で樹脂固形分の
0.5〜8.0%が配合される。0.5%未満ではエマ
ルジョン粒子の安定性と塗れ性が得られない。一方、
8.0%超になると発砲性により塗布作業性を困難に
し、泡による被膜表面欠陥を生じる場合がある。
マルジョンとした後、他の被膜組成物と配合して被膜処
理剤とする。これにより、絶縁被膜中で樹脂が凝集せ
ず、均一な分散状態を得ることができる。なお、被膜処
理剤配合工程でさらに界面活性剤を添加して使用しても
よい。特に、塗布条件(ロール条件、鋼板表面性状等)
が劣る場合には若干の補助効果を発揮する。
特徴としては、表面接触角が15度以下である。表面接
触角は鋼板に高速塗布する場合の重要な条件の一つであ
り、小さいほど優れた塗れ性が得られる。表面接触角は
固体と液体間の接触角(塗れ)を測定した値で、市販の
接触角計(例:協和界面科学製CA−S150型)で測
定した値である。本発明の超微粒樹脂を利用する場合、
界面活性剤の添加なしで15度以下の接触角が達成され
る。特に、粒子径0.14未満のエマルジョンの適用に
おいては表面接触角10度以下のような極めて小さい値
が得られる。
明する。
け処理を行う場合は、連続焼鈍とコーティングを行うラ
インにおいて、最終板厚の冷延コイルを洗浄と仕上げ焼
鈍を行った後、前記絶縁被膜処理剤を希釈溶液としてゴ
ムロール等で塗布し焼付け処理が行われる。焼付け処理
は180℃〜400℃である。180℃未満では造膜が
十分でなく、ベタツキ、耐蝕性やスティッキング性を低
下する。一方、400℃超では有機分の分解や焼失が生
じて、外観、打ち抜き性を阻害するのみならず、本発明
の目的とする有機成分を有機Cとして2.5〜25.0
%含有する絶縁被膜の製品が得られない。好ましい焼付
け温度は250〜350℃である。なお焼付け時間は特
に限定しないが、所望の被膜状態および有機C量となる
よう、適宜決定される。
l:0.002%、Mn:0.25%を含有する板厚
0.5mmの無方向性電磁鋼板冷延コイルを連続焼鈍ラ
インで焼鈍後、同ラインにて表1に示すような粒子径を
変更した樹脂エマルジョンを用いた絶縁被膜剤を乾燥後
の質量で1.0g/m2(片面あたり)塗布し、到達板
温330℃で焼き付け処理を行った。この際のラインス
ピードは180m/min.であった。
性能について調査した。ここで、TIG溶接性は、12
0A,Th−W(1.5mmφ),Ar流量6l/Mi
n.、締め付け:12.3MPa,スピ−ド;60cm
/分の条件で溶接したときの溶接部外観を判断した。ま
た打ち抜き性は、スチ−ルダイスによる打ち抜きで、か
えり高さ50μmに達するまでの打ち抜き回数を測定し
た。結果を表2に示す。
した材料は高速コーティング試験において、何れも非常
に良好な塗れ性を示し、極めて光沢の優れる均一な絶縁
被膜を形成した。被膜特性においても、良好な耐食性、
溶接性、打ち抜き性が得られ、特に、粒子径0.14μ
m以下のエマルジョンを用いた場合には良好であった。
が0.25,0.50μmの場合は、エッジ部に斑点の
発生が多く見られ、絶縁被膜の均一性、光沢度等の外観
が本発明に比しかなり劣る結果となり、打ち抜き性にお
いても不均一塗布の影響を受けて本発明に比しやや劣る
結果となった。
粒樹脂エマルジョンを用いた本発明3と、0.25μm
の樹脂エマルジョンを用いた比較例の顕微鏡写真を示
す。本発明の場合には,極めて微細な粒子が分散してい
る様子が見られる。
量を定量したところ、7.5〜12.0%であった。 (実施例2)実施例1と同一の鋼板を用い、連続焼鈍ラ
インにおいて同様にして処理し、表3に示すように粒子
径の異なる樹脂エマルジョンを複合、或いは単独使用し
た絶縁被膜剤を乾燥後質量で1.5g/m2塗布し、3
30℃で焼付け処理を行った。
し、実施例1と同様に被膜性能の評価を行った。結果を
表4に示す。
した材料は高速コーティング試験において、何れも非常
に良好な塗れ性を示し、極めて光沢の優れる均一な絶縁
被膜を形成した。被膜特性においても、良好な耐食性、
溶接性、打ち抜き性が得られ、特に、粒子径0.10μ
mの樹脂を全樹脂中の50質量%以上用いた場合には塗
れ性、耐蝕性が極めて良好であった。又、超微粒樹脂に
粗粒子エマルジョンを複合した場合、溶接性が改善され
る傾向で極めて良好な結果が得られた。
ンでは、従来の粗粒子樹脂エマルジョンに比較して遜色
なく良好であった。一方、比較例の粗粒子エマルジョン
の場合は、エッジ部に斑点の発生が多く見られ、絶縁被
膜の均一性、光沢度等の外観が本発明に比しかなり劣る
結果となった。 (実施例3)実施例1と同一の鋼板を用い、連続焼鈍ラ
インにおいて同様にして処理し、表5に示すように樹脂
の粒子径とTgを変更した絶縁被膜剤を乾燥後質量で
1.0g/m2塗布し、330℃で焼付け処理を行っ
た。この試験においては本発明1,2と比較例1の溶液
については均一な塗布条件を得られる限界の付着量とラ
インスピードの関係を調査した。
し、被膜性能の評価を行った。ここで、スティッキング
性は、3×4cmに切断した鋼板を図1(a)に示すよ
うに積層し、締め付け圧3.9MPaで締め付け、75
0℃×2Hr,N2中で焼鈍の後,図1(b)の方法で
剥離力を測定した。またブロッキング性は、スティッキ
ング試験と同様にサンプル切り出し、積層、締め付けの
後、100℃×24Hr,大気中で加熱し、スティッキ
ング試験と同様に剥離力を測定した。結果を表6に示
す。
した材料は高速コーティング試験において、何れも非常
に良好な塗れ性を示し、極めて光沢の優れる均一な絶縁
被膜を形成した。被膜特性においても、良好な耐食性、
溶接性、打ち抜き性が得られた。しかしながら樹脂のT
gが0℃と低い場合にはブロッキング性、スティッキン
グ性がやや劣る傾向となった。一方、比較例のエマルジ
ョン粒子径0.35μmの場合は、エッジ部に斑点の発
生が多く見られ、絶縁被膜の均一性、光沢度等の外観が
本発明に比しかなり劣る結果となった。
て、ラインスピード180m/min.の条件で塗布性
限界を調査した結果を図3に示す。本発明の超微粒樹脂
エマルジョンでは付着量0.5g/m2程度の薄塗りで
もほぼ均一に塗布が可能であった。これに対し、比較例
の粒子径の大きい従来のエマルジョンの場合、付着量を
かなり増加しないと外観の良い絶縁被膜が形成されなか
った。この傾向はラインスピードを低下した場合には緩
和される傾向であるものの、超微粒樹脂エマルジョンと
の差異は歴然としており、工業生産での塗れ性の差異は
カバーできるものでないことが確認された。又、活性剤
を添加する方法も試みたが、抜本的な解決にはならなか
った。
機樹脂エマルジョンによる半有機の絶縁被膜において、
樹脂エマルジョンの粒子径を超微粒化することにより、
鋼板へ塗布性の向上を得、高速ラインにおいて、均一で
極めて優れた被膜性能を有する絶縁被膜を得る。これに
より、薄塗り被膜での外観、耐食性、溶接性、打ち抜き
性等の優れた無方向性電磁鋼板の製造が可能となる。
を示す図である。
脂エマルジョンと比較例の0.25μmの粗粒樹脂エマ
ルジョンを用いた場合の鋼板表面形状を顕微鏡観察した
結果を示す図である。
の得られる塗布量を調査した結果を示す図である。
Claims (11)
- 【請求項1】 粒子径0.04〜0.19μmの超微粒
樹脂を含有し、クロム酸を主体とする絶縁被膜剤により
処理され、絶縁被膜成分中の有機物成分を有機Cとして
2.5〜25.0%を含有し、膜厚0.5〜10.0μ
mの絶縁被膜を有することを特徴とする被膜性能の優れ
る無方向性電磁鋼板。 - 【請求項2】 絶縁被膜が、クロム酸として100質量
部に対し、粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂
を含む樹脂エマルジョンを固形分として5〜50質量部
含有することを特徴とする請求項1記載の被膜性能の優
れる無方向性電磁鋼板。 - 【請求項3】 樹脂中の粒子径0.04〜0.19μm
の超微粒樹脂が、質量で樹脂固形分の30%以上、残部
が粒子径0.35〜0.50μmの樹脂であることを特
徴とする請求項2記載の被膜性能の優れる無方向性電磁
鋼板。 - 【請求項4】 樹脂がTg:20〜100のアクリル、
スチレン、酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレ
ン、ポリアミド、ポリカーボネート、メラミン、ポリウ
レタン、アルキド、イソシアネート、エポキシ樹脂の1
種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1〜3
のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板の絶縁被膜剤。 - 【請求項5】 表面粗度Ra値が0.1〜1.0μm、
光沢度70以上を有することを特徴とする請求項1ない
し4のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。ただし、光
沢度:L方向、光源入射角(θ):45度で測定。 - 【請求項6】 クロム酸100質量部に対し、硼酸、硼
酸塩の1種又は2種以上を硼酸として10〜45質量
部、MgO,CaO,ZnO,Al2O3の中から選ばれ
る1種又は2種以上を10〜35質量部、還元剤として
グリセリン、アジピン酸、コハク酸の1種又は2種以上
を10〜30質量部、および粒子径0.04〜0.19
μmの超微粒樹脂を含む樹脂エマルジョンを固形分とし
て5〜50質量部配合することを特徴とする無方向性電
磁鋼板の絶縁被膜剤。 - 【請求項7】 樹脂エマルジョン中の粒子径0.04〜
0.19μmの超微粒樹脂が、質量で樹脂固形分の30
%以上、残部が粒子径0.35〜0.50μmの樹脂で
あることを特徴とする請求項6記載の無方向性電磁鋼板
の絶縁被膜剤。 - 【請求項8】 樹脂エマルジョンがTg:20〜100
のアクリル、スチレン、酢酸ビニル、ポリスチレン、ポ
リプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、メラミ
ン、ポリウレタン、アルキド、イソシアネート、エポキ
シ樹脂の1種又は2種以上からなり、エマルジョン中の
界面活性剤の量が質量で樹脂固形分の1〜7%であるこ
とを特徴とする請求項6もしくは7記載の無方向性電磁
鋼板の絶縁被膜剤。 - 【請求項9】 界面活性剤としてポリオキシエチレンノ
ニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフ
ェノールエーテル、ドデシルベンゼルスルホン酸Na、
ポリオキシエチレンオレールエーテルサルフェートN
a、ポリオキシエチレンノニエルフェノールエーテルサ
ルフェートNH4、スルホコハク酸ジナトリウムのエト
キシ化アルコール、スルホコハク酸ジナトリウムのエト
キシ化ノニルフェノール半エステル、モノドデシルジフ
ェニルオキシドジスルホン酸Na、ジドデシルジフェニ
ルオキシドジスルホン酸Na、アセチレンジオールのE
O付加物の1種又は2種以上を用いることを特徴とする
請求項8記載の無方向性電磁鋼板の絶縁被膜剤。 - 【請求項10】 溶液の表面接触角が15度以下である
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の無方
向性電磁鋼板の絶縁被膜剤。 - 【請求項11】 請求項6〜10のいずれかに記載の無
方向性電磁鋼板の絶縁被膜剤を仕上げ焼鈍後の無方向性
電磁鋼板表面に、乾燥後の付着量で0.5〜10g/m
2となるよう塗布し、180℃〜400℃で焼付け処理
して、絶縁被膜成分中に有機成分を有機Cとして2.5
〜25.0%にすることを特徴とする無方向性電磁鋼板
の絶縁被膜処理方法。
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