JP2003201360A - 食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子及びこれを用いた食品容器 - Google Patents

食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子及びこれを用いた食品容器

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JP2003201360A JP2002307345A JP2002307345A JP2003201360A JP 2003201360 A JP2003201360 A JP 2003201360A JP 2002307345 A JP2002307345 A JP 2002307345A JP 2002307345 A JP2002307345 A JP 2002307345A JP 2003201360 A JP2003201360 A JP 2003201360A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡・成形
して得られる食品容器に収容された油脂を始めとした浸
透性の高い内容物の容器外壁もしくは容器内部への浸透
を抑制する。 【解決手段】 スチレン系モノマーの含有量が1000
ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重
量部の脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイド、
更に好ましくは脂肪酸金属塩の0.2〜0.5重量部を
併用して粒子表面を被覆してなる食品容器用発泡性スチ
レン系樹脂粒子を提供する。更に、こうして得られた食
品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、成形
して食品容器を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品容器用発泡性
スチレン系樹脂粒子に関するものである。更に詳しく
は、予備発泡し、成形して食品容器とした場合に、強度
及び印刷性能等に優れると共に、該容器内に収容した内
容物が外部へ浸透する性質を極めて良好に抑制すること
を可能とする食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、発泡性スチレン系樹脂粒子から
造られた発泡成形体は、経済性、軽量性、断熱性、強
度、衛生性に優れ、食品容器、緩衝材、断熱材等に利用
されている。本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、即
席麺、フライドチキン、カレー、コーヒーなどの食品容
器として好適に用いられる。
【0003】発泡性スチレン系樹脂粒子は、水蒸気や熱
風等により加熱すると、粒子内に多数の気泡が生成し、
予備発泡粒子となる。この予備発泡粒子を所望の形状を
有する金型内に充填し蒸気により加熱すると、上記予備
発泡粒子が互いに融着し発泡成形体を得ることができ
る。
【0004】このようにして得られた発泡体は粒子同士
が融着して金型通りの形状を形作っているが、粒子同士
が完全に一体化しているわけではないため、粒子融着面
に微細な毛細管が存在している。よって、例えば成形体
を容器として使用するにつき、収容される内容物として
特に油脂分の多い、例えば、油脂分30%以上の内容物
に用いる場合、内容物の成分が成形体の外壁あるいは成
形体の内部に浸透してくる恐れがある。
【0005】この浸透を防止する方法として、特許文献
1では発泡剤にイソペンタンを用いる方法が、特許文献
2では高吸水性樹脂で発泡性スチレン系樹脂粒子の表面
を被覆する方法が提案されている。しかし、これらの方
法では多くの油脂成分を含むカレールウのような浸透力
の強い内容物を収容した際、こうした内容物の浸透を防
止することは困難であった。
【0006】また、特許文献3では、油脂又はレギュラ
ーコーヒーの浸透防止策として粒子径が10μm以下に
90%以上あるステアリン酸亜鉛で発泡性熱可塑性樹脂
粒子表面を被覆する方法が提案されている。しかし、特
許文献3の実施例に示されているように、該ステアリン
酸亜鉛のみを被覆する方法では油脂分を大量に含むカレ
ールウの洩れを実用的に抑制することは不可能であり、
非イオン性セルロースエーテルを併用することによりカ
レールウの洩れ抑制性能は向上するものの、成形時の融
着性に影響を及ぼす恐れがあり実用上実施できるレベル
とは言い難かった。
【0007】さらに、特許文献4、特許文献5、特許文
献6、特許文献7では、油脂など浸透力の強い内容物の
浸透を防止する方法として、フッ素系高分子で発泡性ス
チレン系樹脂粒子表面を被覆する方法が提案されてい
る。
【0008】また、特許文献8、特許文献9、特許文献
10、特許文献11、特許文献12等では、脂肪酸アマ
イド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを予備発泡時のブロ
ッキング防止剤や融着促進剤として発泡性スチレン系樹
脂粒子の表面を被覆する方法が提案されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第4840759号明細書(1
頁−3頁)
【0010】
【特許文献2】特開平4−272942号公報(1頁−
4頁)
【0011】
【特許文献3】特開昭60−26042号公報(1頁−
5頁)
【0012】
【特許文献4】特開平02−88652号公報(1頁−
7頁)
【0013】
【特許文献5】特開平03−72535号公報(1頁−
7頁)
【0014】
【特許文献6】特開平03−190941号公報(1頁
−9頁)
【0015】
【特許文献7】特開平11−322995号(1頁−1
2頁)
【0016】
【特許文献8】特開昭55−127441号公報(1頁
−4頁)
【0017】
【特許文献9】特開昭61−157538号公報(1頁
−5頁)
【0018】
【特許文献10】特開昭56−106930号公報(1
頁−4頁)
【0019】
【特許文献11】特開昭57−63336号公報(1頁
−6頁)
【0020】
【特許文献12】特開昭57−16037号公報(1頁
−7頁)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】前記したフッ素系高分
子を用いる方法によれば、油脂の浸透を抑制することが
可能であるが、こうしたフッ素系高分子は非常に高価で
あるためコスト的に不利となるだけでなく、一部の化合
物について人体蓄積性の恐れがあるとの報告があり、フ
ードコンタクト用途に使用するにはより安全な解決法が
切望されていた。
【0022】
【課題を解決するための手段】かかる実状に鑑み鋭意研
究した結果、本発明者らは、脂肪酸アマイド及び/又は
脂肪酸ビスアマイドを用いて被覆した発泡性スチレン系
樹脂粒子を、予備発泡及び成形して食品容器とすれば、
油脂などの浸透力の強い内容物の浸透を実質的に防止で
きるという全く予想し得なかった事実を見出し、本発明
を完成した。
【0023】更に、脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビ
スアマイドに加えてステアリン酸亜鉛を始めとする脂肪
酸金属塩を併用すれば、油脂などの浸透防止効果が更に
向上することを見出すことにより、本発明を完成した。
【0024】かくして、本発明によれば、スチレン系モ
ノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチ
レン系樹脂粒子であって、該樹脂粒子100重量部に対
して、0.01〜0.5重量部の下記一般式1で示され
る脂肪酸アマイド及び/又は下記一般式2で示される脂
肪酸ビスアマイドで粒子表面を被覆してなる食品容器用
発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項1)、
【0025】
【化3】 (R1は飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基)
【0026】
【化4】 (R2、R3は飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基、
4は脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基、た
だしR2、R3は同じでも異なっていても良い)
【0027】スチレン系モノマーの含有量が1000p
pm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該
樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量
部の一般式1で示される脂肪酸アマイド及び/又は一般
式2で示される脂肪酸ビスアマイドと、0.2〜0.5
重量部の脂肪酸金属塩とで粒子表面を被覆してなる食品
容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項2)、一般式
1及び一般式2に示される脂肪族炭化水素基R1、R2
3の炭素数が、7〜23である請求項1又は2に記載
の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項3)、
【0028】一般式1及び一般式2に示される脂肪族炭
化水素基R1、R2、R3の炭素数が17である請求項1
〜3のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン
系樹脂粒子(請求項4)、一般式2に示される脂肪族炭
化水素基もしくは芳香族炭化水素基R4の炭素数が1〜
8である請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品用発
泡性スチレン系樹脂粒子(請求項5)、脂肪酸アマイド
及び/又は脂肪酸ビスアマイドが、ステアリン酸アマイ
ド及び/又はエチレンビスステアリン酸アマイドである
請求項1〜5のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性
スチレン系樹脂粒子(請求項6)、
【0029】脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマ
イドが、エチレンビスステアリン酸アマイドである請求
項1〜6のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチ
レン系樹脂粒子(請求項7)、脂肪酸金属塩がステアリ
ン酸亜鉛である請求項2〜7のいずれか1項に記載の食
品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項8)、ステ
アリン酸亜鉛が、脂肪酸金属塩の製法のうち直接法によ
り製造されたものである請求項8に記載の食品容器用発
泡性スチレン系樹脂粒子(請求項9)、3〜6重量%の
易揮発性発泡剤を含有する請求項1〜9のいずれか1項
に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項
10)、粒子径が200〜600μmである請求項1〜
10のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン
系樹脂粒子(請求項11)、請求項1〜11のいずれか
1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、
成形して得られる食品容器(請求項12)、が提供され
る。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態をより
詳細に説明する。
【0031】本発明におけるスチレン系樹脂粒子は、一
般に知られているスチレン系樹脂の粒状物で、スチレン
を主成分とするものであり、スチレンの単独重合体で
も、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブ
チルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導
体、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチル
メタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタク
リレートなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステ
ル、あるいはジメチルフマレート、エチルフマレートな
どの各種単量体との共重合体でもよい。また、ジビニル
ベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の
多官能性単量体を併用してもよい。重量平均分子量は一
般に発泡ポリスチレンとして使用可能な15万〜40
万、好ましくは25万〜35万のものを使用することが
できる。
【0032】本発明におけるスチレン系樹脂粒子は、通
常の懸濁重合法、もしくは水性懸濁液中に分散したスチ
レン系樹脂種粒子にスチレン系単量体を添加して該種粒
子に含浸させながら重合せしめるいわゆる懸濁シード重
合法等によって製造されたものを使用することができ
る。懸濁シード重合法に用いる樹脂種粒子は、(1)通
常の懸濁重合法、(2)重合性単量体を規則的な振動下
にノズルを通すことにより液滴群として水性媒体中に分
散させ、合着および付加的な分散を生じせしめることな
く重合させる方法、などによって得ることができる。
【0033】本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子
に含まれるスチレン系モノマーの量は1000ppm以
下に抑える必要がある。発泡性スチレン系樹脂粒子を予
備発泡及び成形して即席麺の容器として用いる場合は、
食品衛生法の温湯容器規格により容器内に残存するスチ
レン系モノマーの量が1000ppm以下に規定されて
いるからである。発泡性スチレン系樹脂粒子中のスチレ
ン系モノマー量は、好ましくは500ppm以下、さら
に好ましくは200ppm以下である。500ppm以
下であると、臭気が少なくなるので好ましい。発泡性ス
チレン系樹脂粒子中に含まれる残存スチレン量を100
0ppm以下に下げる方法としては、1,1−ビス(t
−ブチルパーオキシ)3,3,5トリメチルシクロヘキ
サン等のいわゆる高温分解型重合開始剤を0.05部以
上使用して、110℃以上の高温下で後重合を行う方法
等が用いられる。
【0034】また、本発明における発泡性スチレン系樹
脂粒子の粒子径は、200〜600μmの間にあること
が好ましい。200μm未満では易揮発性発泡剤の逸散
速度が速過ぎてビーズライフが短くなり、600μmよ
り大きいと一般的な食品容器の肉厚が2mm前後と薄い
ことから金型への充填性が悪くなる。200〜600μ
mの粒子を得る方法としては、通常の懸濁重合法で得ら
れた粒子を分級してもよいし、前述の懸濁シード重合法
を用いてもよい。懸濁シード重合法を用いる方がより高
い収率が得られるため好ましい。
【0035】本発明において使用される易揮発性発泡剤
としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノ
ルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマ
ルヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロブタン、シク
ロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素など
が挙げられるが、これらは単独で用いても2種以上を併
用してもよい。本発明における易揮発性発泡剤の使用量
は、3〜6重量%である。好ましくは3.3〜5重量
%、さらに好ましくは3.8〜4.5重量%である。3
重量%より少ないと、成形時の融着率が低下する傾向を
有するため好ましくなく、6重量%を越えると、成形体
の粒子間隙が多くなり表面美麗性を損なう傾向を有する
上に、成形サイクルが長くなるため好ましくない。これ
らの発泡剤は発泡性スチレン系樹脂粒子の重合工程中に
添加しても良いし、重合工程終了後に添加してもよい。
【0036】本発明においては、一般式1で示される脂
肪酸アマイド及び/又は一般式2で示される脂肪酸ビス
アマイドが用いられる。
【0037】
【化5】 (R1は飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基)
【0038】
【化6】 (R2、R3は飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基、
4は脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基、た
だしR2、R3は同じでも異なっていても良い)
【0039】脂肪酸アマイドとしては例えば、カプリル
酸アマイド、カプリン酸アマイド、ラウリン酸アマイ
ド、ミリスチン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ス
テアリン酸アマイド、アラキン酸アマイド、ベヘン酸ア
マイド、リグノセリン酸アマイド、12−ヒドロキシス
テアリン酸アマイド、メチロールステアリン酸アマイ
ド、メチロールベヘン酸アマイド、オレイン酸アマイ
ド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド、が挙げ
られる。本発明における脂肪酸ビスアマイドとは、ジア
ミンと脂肪酸のジアマイドのことであり、2つのアマイ
ド結合を形成する2つの脂肪酸は同じものでも異なるも
のでもよい。すなわち、一般式2中の脂肪族炭化水素基
2、R3は同じものでも異なるものでもよい。
【0040】一般に市販されている脂肪酸ビスアマイド
は、使用されている脂肪酸の炭素数が一定ではなく分布
を持つため、実質的にR2、R3が同一のビスアマイドと
2とR3が異なるジアマイドの混合物となっている。本
発明で使用可能な脂肪酸ビスアマイドとしては、例え
ば、エチレンビスカプリル酸アマイド、エチレンビスカ
プリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、
エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソ
ステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステア
リン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキ
サメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレン
ビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスオ
レイン酸アマイド、エチレンビスエルカ酸アマイド、ヘ
キサメチレンビスオレイン酸アマイド、メチレンビスラ
ウリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイ
ド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、メ
チレンビスオレイン酸アマイド、キシリレンビスステア
リン酸アマイドなどが挙げられる。本発明においてはこ
れらから選ばれる1種もしくは2種以上の混合物が使用
できる。
【0041】一般式1及び2に示される飽和もしくは不
飽和炭化水素基R1、R2、R3の炭素数としては7〜2
3が好ましく、15〜21がさらに好ましく、17(ス
テアリン酸)が特に好ましい。一般式2に示される脂肪
族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基R4の炭素数と
しては、1〜8が好ましい。また、脂肪酸アマイドより
も脂肪酸ビスアマイドを使用するのが好ましい。上記し
たアマイドの中でも、ステアリン酸アマイド及び/又は
エチレンビスステアリン酸アマイドを用いるのが好まし
く、その内でもエチレンビスステアリン酸アマイドを単
独で用いるのが最も好ましい。
【0042】本発明における脂肪酸アマイド及び/又は
脂肪酸ビスアマイドの使用量は、0.01〜0.5重量
部で、好ましくは0.05〜0.3重量部、更に好まし
くは0.1〜0.25重量部である。0.01重量部よ
り少ないと、油脂を始めとした食品容器内容物の浸透を
抑制する効果が小さく、0.5重量部を越えると粒子同
士の融着が悪化し成形サイクルが長くなるため好ましく
ない。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを
発泡性スチレン系樹脂粒子とともにヘンシェルミキサー
などの混合機内で一定時間混合することにより、発泡性
スチレン系樹脂粒子表面に脂肪酸アマイド及び/又は脂
肪酸ビスアマイドを被覆させることができる。
【0043】本発明においては、脂肪酸アマイド及び/
又は脂肪酸ビスアマイドに加えて脂肪酸金属塩を併用す
るのが好ましい。脂肪酸金属塩としては、例えば、ステ
アリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸
マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸
亜鉛、ラウリン酸カルシウムなどが挙げられるが、これ
らの内ステアリン酸亜鉛を用いるのが好ましい。通常、
市販されているステアリン酸亜鉛を構成する脂肪酸は、
主成分となるステアリン酸と、パルミチン酸、ミリスチ
ン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸などとの混合
物であり、本発明におけるステアリン酸亜鉛もこのよう
な市販品を使用することができる。
【0044】また、ステアリン酸亜鉛を始めとする脂肪
酸金属塩の代表的な製法として複分解法と直接法が挙げ
られるが、これらのうち複分解法では反応式1と反応式
2で製造されることになる。そして、反応式1に示すよ
うに、脂肪酸ナトリウムが中間生成物として生成され、
一部の未反応脂肪酸ナトリウムが最終製品である脂肪酸
金属塩中に不純物として残留する。ステアリン酸亜鉛を
使用するにつき、ステアリン酸亜鉛中に未反応脂肪酸ナ
トリウムが存在すると、長時間にわたって連続成形を行
う場合に金型表面が黒く汚染され、伝熱不良による融着
不足や離型不良を引き起こす場合がある。 (複分解法における反応の一例) Cn2n+1COOH+NaOH→Cn2n+1COONa+H2O・・・反応式1 2Cn2n+1COONa+ZnCl2→(Cn2n+1COO)2Zn↓+2NaCl ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・反応式2
【0045】これに対し、直接法では脂肪酸(例えばス
テアリン酸)と金属酸化物(例えばZnO)もしくは金
属水酸化物(例えばZn(OH)2)を直接反応させる
ため、製造過程において脂肪酸ナトリウムは生成されな
い。よって、金型汚染を抑制するためには脂肪酸ナトリ
ウムを含有しやすい複分解法の脂肪酸金属塩よりも、脂
肪酸ナトリウムを含まない直接法の脂肪酸金属塩を使用
するのが好ましい。よって、ステアリン酸亜鉛を使用す
る場合も、直接法のステアリン酸亜鉛を使用するのが最
も好ましい。
【0046】その使用量は0.2〜0.5重量部が好ま
しく、0.25〜0.45重量部がさらに好ましく、
0.3〜0.4重量部が特に好ましい。使用量が0.2
重量部を下回ると油脂など食品容器内容物の浸透防止効
果が小さくなる傾向を有し、0.5重量部を超えると成
形時の融着が不十分となる傾向があるので、上記範囲の
添加量が好ましい。
【0047】本発明で使用する脂肪酸金属塩、その代表
例たるステアリン酸亜鉛に関しては、その粒子径は特に
限定されることはない。よって、粒子径が10μm以下
に90%以上あるステアリン酸亜鉛であっても良く、ま
た、更に大きな粒子径であっても効果を発揮しうるので
特に制限されることはない。
【0048】脂肪酸金属塩を発泡性スチレン系樹脂粒子
とともにヘンシェルミキサーなどの混合機内で一定時間
混合することにより、発泡性スチレン系樹脂粒子表面に
脂肪酸金属塩を被覆させることができる。脂肪酸アマイ
ド及び/又は脂肪酸ビスアマイドと脂肪酸金属塩を併用
する場合は、両者を混合して被覆させても別々に被覆さ
せてもよい。
【0049】さらに、帯電防止剤として一般に使用され
るグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレ
ングリコール、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエ
チレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エ
ステルなどの1種または2種以上の併用も可能である。
【0050】本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子
の予備発泡方法は、従来公知の方法を用いることができ
る。例えば、回転攪拌式予備発泡装置で、水蒸気を用い
て加熱することにより、予備発泡粒子を得ることができ
る。また、得られた予備発泡粒子を所望の形状の金型内
に充填し、水蒸気等を用いて加熱することにより発泡成
形体とすることができる。
【0051】本発明の食品容器用発泡性スチレン系樹脂
粒子を予備発泡及び成形して得られた食品容器は、油脂
を始めとした浸透力の強い内容物の浸透を実質的に抑制
することが可能であるため、即席麺、カレー、シチュ
ー、マヨネーズ、マーガリン、ドーナツ、ハンバーガ
ー、フライドチキン、コーヒー等に利用することが可能
である。
【0052】
【実施例】以下、実施例により更に詳細に説明するが、
本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0053】(実施例1〜16、比較例1〜3)攪拌機
を具備した5リットル反応器に、純水1.5リットル、
第三リン酸カルシウム9.7g、アルファオレフィンス
ルフォン酸ソーダ0.15g、塩化ナトリウム1.7
g、粒子径が0.2〜0.3mmのスチレン系樹脂種粒
子427gを入れ、攪拌下に反応器中の分散液を90℃
に昇温した。次いで、ベンゾイルパーオキサイド3.6
g、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−
トリメチルシクロヘキサン3.0gをスチレン単量体1
280gに溶解した溶液を5時間かけて反応器中に仕込
みながら重合した。単量体溶液の仕込みが終了した後、
直ちに120℃に昇温して3時間後重合を行った。その
後ペンタン77gを系内に仕込み更に3時間120℃で
保持した後、冷却した。懸濁液を取り出し脱水・乾燥し
たところ、粒子径が0.3〜0.5mm、残存スチレン
モノマー量が40ppm、発泡剤含有量が4.3重量
%、重量平均分子量が30万の発泡性スチレン系樹脂粒
子が得られた。更に、連続成形運転による金型汚染度の
テストのため、上記5リットル反応器を1500リット
ルの反応器にスケールアップし、同様の処方により同一
の発泡性スチレン系樹脂粒子を得て連続成形に供した。
【0054】得られた発泡性スチレン系樹脂粒子100
0g(100重量部)をヘンシェルミキサーに入れ、攪
拌しながら0.1重量部のポリエチレングリコール(分
子量400)、表1に示す脂肪酸アマイド及び/又は脂
肪酸ビスアマイド、脂肪酸金属塩を順次加え、これら添
加剤で被覆された発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0055】これを回転攪拌式予備発泡装置に投入し、
約95℃の水蒸気中で嵩密度が98g/Lになるまで約
6分間発泡し、予備発泡粒子を得た。
【0056】得られた予備発泡粒子を室温で約20時間
養生乾燥した後、内容積500ml、肉厚2mmのカッ
プ状金型内に充填し、2.6kgf/cm2の水蒸気で
5秒加熱し、冷却後金型よりカップ状発泡成形体を得
た。
【0057】
【表1】
【0058】このカップ状発泡成形体について、以下の
ような評価を行った。 (1)融着率:カップ状発泡成形体の側壁を手で割り、
破断面に存在する全ての粒子の内、発泡粒子そのものが
破断している粒子の割合を百分率で表した。 (2)表面粒子間隙:粒子間隙がほとんどないものを
◎、印刷しても色飛びがほとんどなく、実用上問題のな
いものを○、印刷すると色飛びが認められ使用不可能な
ものを×とした。 (3)界面活性剤溶液浸透試験:花王社製スコアロール
コンク700を0.1重量%、エリオクロムブラックT
を0.005重量%含む界面活性剤水溶液約400gを
カップ状発泡成形体に入れ、カップ外壁面に界面活性剤
水溶液が浸透し、水滴が現れ始める時間を測定した。3
0分以上が合格である。 (4)カレー試験:油脂成分の浸透抑制効果を確認する
ために、カレールウ200gをカップに入れ、サランラ
ップで包装し、60℃雰囲気下に置いてカップ外壁にカ
レーが洩れだす時間を測定した。24時間以上が合格であ
る。 (5)金型汚染度評価:1500リットル反応器を使用
して得られた発泡性スチレン系樹脂粒子約300kgを
上記方法で予備発泡し、約1週間連続的に成形を行い、
金型表面の汚染状態を評価した。評価基準は以下の通り
である。 ◎:金型表面に全く変化なし ○:金型表面が薄らと黒ずんでいる。 △:金型表面の約半分が真っ黒に変色している。 ×:金型表面が全面的に真っ黒になっている。 カップ状発泡成形体の評価結果を表1に示す。
【0059】
【発明の効果】スチレン系モノマーの含有量が1000
ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重
量部の脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイド、
更に好ましくは脂肪酸金属塩を0.2〜0.5重量部を
併用して粒子表面を被覆した発泡性スチレン系樹脂粒子
を予備発泡及び成形して得られた食品容器は、強度、印
刷性能等が優れると共に、即席麺、カレー、シチュー、
マヨネーズ、マーガリン、ドーナツ、ハンバーガー、フ
ライドチキン、コーヒー等に利用することによって、こ
れら内容物の容器外壁もしくは容器内部への浸透を防止
することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F074 AA13 AB01 AD13 BA35 BA36 BA37 BA38 BA39 BA40 CA34 CA35 CA38 CA45 CA46 CA48 CA49 CE16 CE24 CE35 CE38 CE86 CE96 DA34

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スチレン系モノマーの含有量が1000
    ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
    該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重
    量部の下記一般式1で示される脂肪酸アマイド及び/又
    は下記一般式2で示される脂肪酸ビスアマイドで粒子表
    面を被覆してなる食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒
    子。 【化1】 (R1は飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基) 【化2】 (R2、R3は飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基、
    4は脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基、た
    だしR2、R3は同じでも異なっていても良い)
  2. 【請求項2】 スチレン系モノマーの含有量が1000
    ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
    該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重
    量部の一般式1で示される脂肪酸アマイド及び/又は一
    般式2で示される脂肪酸ビスアマイドと、0.2〜0.
    5重量部の脂肪酸金属塩とで粒子表面を被覆してなる食
    品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子。
  3. 【請求項3】 一般式1及び一般式2に示される脂肪族
    炭化水素基R1、R2、R3の炭素数が、7〜23である
    請求項1又は2に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹
    脂粒子。
  4. 【請求項4】 一般式1及び一般式2に示される脂肪族
    炭化水素基R1、R2、R3の炭素数が17である請求項
    1〜3のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレ
    ン系樹脂粒子。
  5. 【請求項5】 一般式2に示される炭化水素基R4の炭
    素数が1〜8である請求項1〜4のいずれか1項に記載
    の食品用発泡性スチレン系樹脂粒子。
  6. 【請求項6】 脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスア
    マイドが、ステアリン酸アマイド及び/又はエチレンビ
    スステアリン酸アマイドである請求項1〜5のいずれか
    1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子。
  7. 【請求項7】 脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスア
    マイドが、エチレンビスステアリン酸アマイドである請
    求項1〜6のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性ス
    チレン系樹脂粒子。
  8. 【請求項8】 脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛である
    請求項2〜7のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性
    スチレン系樹脂粒子。
  9. 【請求項9】 ステアリン酸亜鉛が、脂肪酸金属塩の製
    法のうち直接法により製造されたものである請求項8に
    記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子。
  10. 【請求項10】 3〜6重量%の易揮発性発泡剤を含有
    する請求項1〜9のいずれか1項に記載の食品容器用発
    泡性スチレン系樹脂粒子。
  11. 【請求項11】 粒子径が200〜600μmである請
    求項1〜10のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性
    スチレン系樹脂粒子。
  12. 【請求項12】 請求項1〜11のいずれか1項に記載
    の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、成形して得
    られる食品容器。
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