JP4959863B2 - 発泡性スチレン系樹脂粒子 - Google Patents
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Description
発泡性スチレン系樹脂粒子は、水蒸気や熱風等により加熱すると、粒子内に多数の気泡が生成し、予備発泡粒子となる。この予備発泡粒子を所望の形状を有する金型内に充填し蒸気により加熱すると、上記予備発泡粒子が互いに融着し発泡成形体を得ることができる。
このようにして得られた発泡体は粒子同士が融着して金型通りの形状を形作っているが、粒子同士が完全に一体化しているわけではないため、粒子融着面に微細な毛細管が存在している。よって、例えば成形体を容器として使用するにつき、収容される内容物として特に油脂分の多い、例えば、油脂分30%以上の内容物に用いる場合、内容物の成分が成形体の外壁あるいは成形体の内部に浸透してくる恐れがある。
しかしながら脂肪酸アマイドは多量に用いると、予備発泡時のブロッキングが多く発生し製品となる効率が落ち、コスト的に好ましくない。さらにポリエチレングリコールを多量に用いると予備発泡粒子の流動性が低下し、充填不良となり不良な成形体が得られるときがある。
特許文献3は、粒子表面には脂肪酸アマイドが融着促進剤として熱可塑性樹脂の粒子表面に被覆する方法が提案されている。しかし、容器に収容された油脂の浸透を防止することは記載されていない。
特許文献4は、フッ素系高分子と脂肪酸アマイドを熱可塑性樹脂に被覆、または含有させてなる方法が提案されている。フッ素系高分子を使用すれば、油脂の浸透を抑制することが可能であるが、こうしたフッ素系高分子は非常に高価であるためコスト的に嫌われる。
特許文献5は、実施例において液体のポリエチレングリコールの分子量400を使用している。しかし分子量400のポリエチレングリコールを使用すると、ビーズ輸送時に粉体のコーティング剤がはがれて、油脂成分の漏れ防止が不十分であった。
特許文献6は、実施例においてペンタンの組成が重量比でイソペンタン:ノルマルペンタン=30:70〜70:30である。しかし、これでは、油脂成分の漏れ防止が不十分であった。
スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させてなる発泡性スチレン系樹脂粒子であって、発泡性スチレン系樹脂粒子は該樹脂粒子表面を組成物によって被覆されており、
当該組成物は、当該樹脂粒子表面を被覆する分子量が400よりも小さいポリエチレングリコールAと、当該樹脂粒子100重量部に対して0.003〜0.04重量部の脂肪酸アマイド又は脂肪酸ビスアマイドと、当該樹脂粒子100重量部に対して0.2〜0.8重量部の脂肪酸金属塩と、分子量が400よりも小さいポリエチレングリコールBからなり、
上記ポリエチレングリコールA、Bは、当該樹脂粒子100重量部に対して0.02〜0.08重量部含有し、2回に分けて被覆されてなることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子である。
(スチレン系樹脂粒子)
本発明におけるスチレン系樹脂粒子は、一般に知られているスチレン系樹脂の粒状物で、スチレンを主成分とするものであり、スチレンの単独重合体でも、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル、あるいはジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体との共重合体でもよい。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体を併用してもよい。重量平均分子量は一般に発泡ポリスチレンとして使用可能な15万〜40万、好ましくは25万〜35万のものを使用することができる。
本発明において使用される易揮発性発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素などが挙げられるが、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明における易揮発性発泡剤の使用量は、3〜6重量%である。好ましくは3.3〜5重量%、さらに好ましくは3.8〜4.5重量%である。3重量%より少ないと、成形時の融着率が低下する傾向を有するため好ましくなく、6重量%を越えると、成形体の粒子間隙が多くなり表面美麗性を損なう傾向を有する上に、成形サイクルが長くなるため好ましくない。これらの発泡剤は発泡性スチレン系樹脂粒子の重合工程中に添加しても良いし、重合工程終了後に添加してもよい。
また、プロパンについては、0.01〜1重量%含有している方が好ましい。より好ましくは0.03〜0.8重量%含有している。0.01重量%未満であると成形体の粒子間隙が多くなり表面美麗性を損なう傾向を有し、逆に1重量%よりも多い量は過剰である。
また、ペンタンの組成については、重量比でイソペンタンの割合が10重量%〜30重量%未満である。10重量%未満では、成形体の粒子間隙が多くなり表面美麗性を損なう傾向を有し、30重量%以上では油脂成分の漏れ防止が不十分となる。
本発明においては、一般式1で示される脂肪酸アマイド及び/又は一般式2で示される脂肪酸ビスアマイドが用いられる。
(R1は飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基)
脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウムなどが挙げられるが、これらの内ステアリン酸亜鉛を用いるのが好ましい。通常、市販されているステアリン酸亜鉛を構成する脂肪酸は、主成分となるステアリン酸と、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸などとの混合物であり、本発明におけるステアリン酸亜鉛もこのような市販品を使用することができる。
帯電防止剤として一般に使用されるポリエチレングリコールを本発明では、2回使用することで展着効果を付与している。
式1:ポリエチレングリコールの平均分子量=56106/水酸基価×2
56106:水酸化カリウムの分子量による係数
すなわち、ポリエチレングリコールを2回に亘り被覆させ、ポリエチレングリコール1回目の被覆の後に、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩を添加し被覆させ、その後にポリエチレングリコール2回目の被覆を行うことを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法である。
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、回転攪拌式予備発泡装置で、水蒸気を用いて加熱することにより、予備発泡粒子を得ることができる。また、得られた予備発泡粒子を所望の形状の金型内に充填し、水蒸気等を用いて加熱することにより発泡成形体とすることができる。
本発明の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡及び成形して得られた食品容器は、油脂を始めとした浸透力の強い内容物の浸透を実質的に抑制することが可能であるため、即席麺、カレー、シチュー、マヨネーズ、マーガリン、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、コーヒー等に利用することが可能である。
撹拌装置を備えたステンレス製の内容量100リットルのオートクレーブ内にイオン交換水40kgを供給し、このイオン交換水中に該イオン交換水を攪拌しながらスチレンモノマー40kg、リン酸三カルシウム(ブーデンハイム社製 商品名「C13−09」)40g、過硫酸カリウム0.5g、純度75重量%のベンゾイルパーオキサイド140g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート30gを供給して懸濁液を作製した。
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)の変わりにエチレンビスステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「カオーワックスEB−EF」)とした以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例3)
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.02重量部の変わりにステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.005重量部、ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部にの変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.01重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.03重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.02重量部の変わりにステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.04重量部、ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.03重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.01重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
ステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.50重量部の変わりにステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.20重量部、
ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.03重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.03重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
ステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.50重量部の変わりにステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.80重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.03重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.04重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
分子量300のポリエチレングリコールの変わりに分子量200のポリエチレングリコール(日本油脂社製「PEG200」)を、ポリエチレングリコールA及びポリエチレングリコールBに使用したこと以外は実施例1と同様に行った。
揮発性発泡剤として、プロパン400g、n−ペンタン1600g及びi−ペンタン400gを使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.02重量部の変わりにステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.001重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.02重量部の変わりにステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.05重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
ステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.50重量部の変わりにステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)1.00重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
ステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.50重量部の変わりにステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.10重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.005重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.005重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.1重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.1重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
分子量300のポリエチレングリコールAの変わりに分子量400のポリエチレングリコール(日本油脂社製「PEG400」)、分子量300のポリエチレングリコールBの変わりに分子量400のポリエチレングリコール(日本油脂社製「PEG400」)とした以外は実施例1と同様に実施した。
分子量300のポリエチレングリコールの変わりに分子量800のポリエチレングリコール(日本油脂社製「PEG800」)を、ポリエチレングリコールA及びポリエチレングリコールBとして使用したこと以外は実施例1と同様に行った。
ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールAには使用せず、ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)にのみ0.1重量部使用すること以外は実施例1と同様に行った。
ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールBには使用せず、ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)にのみ0.1重量部使用すること以外は実施例1と同様に行った。
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)0.02重量部の変わりにエチレンビスステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「カオーワックスEB−EF」)0.2重量部、ステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.50重量部の変わりにステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.40重量部、分子量300のポリエチレングリコールAの変わりに分子量400のポリエチレングリコール(日本油脂社製「PEG400」)を使用して、ポリエチレングリコールBを使用しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。
揮発性発泡剤として、プロパン400g、n−ペンタン1900g及びi−ペンタン100gを使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
揮発性発泡剤として、プロパン400g、n−ペンタン1300g及びi−ペンタン700gを使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
《発泡性ポリスチレン樹脂粒子の吸引輸送》
エムエルエンジニアリング社製の吸引輸送装置ML−5500CBを使用して発泡性ポリスチレン樹脂粒子の吸引輸送を評価した。
従って、図1のように、流通管7をできるだけ垂直となるように接続し、その流通管7のもう一方に吸引ノズル71を接続するわけであるが、ここでその吸引ノズル71、すなわちサクションノズルから各々の被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子ABの吸引輸送を行った。その後、ホッパー1から発泡性ポリスチレン樹脂粒子ABを8m落下させて、ドラム6に受けた。この吸引輸送を12回繰り返し、輸送済の発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。
輸送済の発泡性ポリスチレン樹脂粒子を、回転翼を内蔵したバッチ型予備発泡機に投入し、水蒸気で均一に加熱することで、かさ密度0.1g/mlになるように発泡させて予備発泡粒子を得た。
予備発泡粒子の結合量は、予備発泡させた予備発泡粒子を10メッシュ(1.7mm)の網を通して、網の上に残った結合した予備発泡粒子の重量を測定し、網を通す前の全体の発泡粒子の重量にて除することにより求めた。
得られた予備発泡粒子を大気中で12時間熟成・乾燥させた。次いで、予備発泡粒子をカップ形成用金型に充填し、0.22MPa(ゲージ圧)の水蒸気で6秒間加熱した後冷却し、リップ部口径95mm、底部口径68mm、高さ105mm、内容量400ml、肉厚約2mmのカップ成形品を得た。
得られたカップ成形品を5個準備し、即席麺に用いられている、カレー粉を含む調味料及びかやくを100g供給した上で、このカップ成形品をポリ塩化ビニリデン製のラップフィルムでほぼ密閉となるように全面的に包装した。次に、このカップ成形品を60℃に保持されたオーブン内に24時間に亘って放置した。
24時間後カップ成形品をオーブンから取り出し、側壁部のカレー粉による黄色色素の滲み出しを目視で観察した。滲み出しのある場合はカップ成形品の側壁部外面の全面を紙に写し取ると共に、カップ成形品の側壁部外面に滲み出したカレー粉による黄色色素部分を上記紙に写し取った。写し取ったカップ成形品の側壁部全面に対応する部分の紙の重量をW1、写し取った黄色色素部分に対応する部分の紙の重量W2として下記式により百分率を算出し、カップ成形品5個の油分滲出性の最大値を下記の基準より評価した。尚、下記の基準より評価した、表1の括弧内に油分滲出し性の値を記した。
油分滲出性(%)=100×W2 /W1
○・・・黄色色素の滲出しはあったが、油分滲出性1%未満であった。
×・・・油分滲出性が1%以上であった。
この油分滲出性試験で1%を越えると長期間常温保管した場合、内容物の油分が滲み出してカップ成形品の商品価値が失われる可能性がある。
試験シートを切込線に沿って手で二分割し、この分割断面を目視観察した。そして、試験シートの分割断面において、全部の発泡粒子の数(a)と、発泡粒子同士が熱融着界面で破断することなく発泡粒子自体が破断された発泡粒子の数(b)とを数え、下記式に基づいて熱融着率を算出し、その結果を表1に記す。
熱融着率(%)=100×b/a
発泡性ポリスチレン樹脂粒子へのステアリン酸亜鉛の付着率は吸引輸送前と吸引輸送後それぞれの発泡性ポリスチレン樹脂粒子に付着した亜鉛を定量し、その百分率により算出した。即ち、吸引輸送前の亜鉛量をW3、吸引輸送後の亜鉛量をW4とした時、ステアリン酸亜鉛の付着率を下記式により求めた。
ステアリン酸亜鉛付着率(wt%)=100×W4 /W3
このステアリン酸亜鉛の付着率は80%以下になると、内容物の油分が滲み出してカップ成形品の商品価値が失われる可能性がある。
流動性は以下の方法にて測定した。被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を直径80mm、高さ70mmの円柱の容器に入れ、容器を上げた時にできる山の高さと直径を測定し、安息角を算出した。
この流動性が20度以上になると、樹脂の流動性が悪く、粒子移送中の配管中にて被覆した薬剤の剥離による油分の滲み出し防止効果の低下が起こり、かつ粒子の移送に時間がかかるという問題が発生する。
試料である発泡性スチレン系樹脂粒子(製造後20℃にて24時間保管したもの)10〜20mgを20ml専用ガラスバイアルに精秤密封し、パーキンスエルマー社製ヘッドスペースサンプラーTurboMatrixHS40にセットし、160℃で30分間加熱後、パーキンスエルマー社製ガスクロマトグラフClarus500GC(検出器:FID)を用いて定量した。ヘッドスペースサンプラーにおける測定条件は、ニードル温度160℃、試料導入時間0.08分、トランスファーライン温度160℃、ガスクロマトグラフにおける測定条件は、カラムをJ&W社製DB−1(0.25mmΦ×60m、膜厚1μm、カラム温度:50℃で10分間、20℃/分で270℃まで昇温、270℃で1分間)、キャリアガスをヘリウム(導入条件:18pslで10分間、0.5psl/分で24pslまで増量)、注入口温度(200℃)とした。測定値を樹脂重量100質量部に対する値に換算した。
1.いずれの実施例も、比較例に比して、発泡性ポリスチレン樹脂粒子の吸引輸送、予備発泡粒子の結合量、油分滲出性、発泡粒子の熱融着率、ステアリン酸亜鉛の付着率、樹脂の流動性の点で良好な結果となっている。
2.これに対して、分子量が300または400のポリエチレングリコールAのみを被覆しポリエチレングリコールBを被覆しなかった比較例10、11は、ステアリン酸亜鉛の付着率が悪く剥離が大でカレー粉による黄色色素に相当する油分の漏れが著しい。また反対に、分子量が300のポリエチレングリコールBのみを被覆しポリエチレングリコールAを被覆しなかった比較例9についても、ステアリン酸亜鉛の付着率が悪く剥離が大でカレー粉による黄色色素に相当する油分の漏れが著しい。
3.また分子量が400であるポリエチレングリコールを2回に分けて使用した比較例7は、ステアリン酸亜鉛の付着率が悪く剥離が大で油分の漏れが著しい。また予備発泡時の結合量も低い。また分子量が800であるポリエチレングリコールを2回に分けて使用した比較例8は、ステアリン酸亜鉛の付着率が悪く剥離が大で油分の漏れが著しい。
4.また分子量300のポリエチレングリコールA及び分子量300のポリエチレングリコールBであってもその含有量が0.005重量部である比較例5は、ステアリン酸亜鉛の付着率が悪く、剥離が大きく、油分の漏れが著しい。
また分子量300のポリエチレングリコールA及び分子量300のポリエチレングリコールBであってもその含有量が0.1重量部である比較例6は、加えて、樹脂の流動性が低下し、充填不良が発生する。
5.ステアリン酸アマイドが0.001重量部の比較例1の場合、発泡粒子の熱融着率が低下し、油分の漏れが生じやすい。反対に、ステアリン酸アマイドが0.05重量部の比較例2の場合、発泡粒子の熱融着率は良好であり、油分の漏れが生じないが、予備発泡時のブロッキングが多く発生し製品となる効率が落ちる。実施例3、4よりステアリン酸アマイドは0.003〜0.04重量部が良好である。また実施例5、6よりステアリン酸亜鉛は0.2〜0.8重量部が良好である。ステアリン酸亜鉛が1重量部の比較例3の場合、剥離が大で、融着不良が生じるが、ステアリン酸亜鉛が0.1重量部の比較例4の場合、樹脂の流動性が低下し、充填不良が発生する。
特に食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡及び成形して得られた食品容器は、油脂を始めとした浸透力の強い内容物の浸透を実質的に抑制することが可能であるため、即席麺、カレー、シチュー、マヨネーズ、マーガリン、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、コーヒー等に利用することが可能である。
Claims (7)
- スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させてなる発泡性スチレン系樹脂粒子であって、発泡性スチレン系樹脂粒子は該樹脂粒子表面を組成物によって被覆されており、
当該組成物は、当該樹脂粒子表面を被覆する分子量が400よりも小さいポリエチレングリコールAと、当該樹脂粒子100重量部に対して0.003〜0.04重量部の脂肪酸アマイド又は脂肪酸ビスアマイドと、当該樹脂粒子100重量部に対して0.2〜0.8重量部の脂肪酸金属塩と、分子量が400よりも小さいポリエチレングリコールBからなり、
上記ポリエチレングリコールA、Bは、当該樹脂粒子100重量部に対して0.02〜0.08重量部含有し、2回に分けて被覆させ、ポリエチレングリコール1回目の被覆の後に、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩を添加し被覆させ、その後にポリエチレングリコール2回目の被覆を行ってなり、
発泡性スチレン系樹脂粒子を製造後、20℃で24時間経過した発泡性スチレン系樹脂粒子中の易揮発性発泡剤の必須成分として、発泡性スチレン系樹脂粒子100重量%に対しペンタンを3〜6重量%、プロパンを0.01〜1重量%含有し、ペンタンは、イソペンタン及びノルマルペンタンの全量に対する重量比でイソペンタンが10重量%〜30重量%未満である発泡性スチレン系樹脂粒子であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。 - 上記ポリエチレングリコールAは、当該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜0.04重量部、上記ポリエチレングリコールBは、0.01〜0.04重量部含有する請求項1記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 脂肪酸アマイドがステアリン酸アマイドであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 脂肪酸金属塩をステアリン酸亜鉛であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
- ステアリン酸亜鉛が複数個集まった凝集体であり、その凝集体の平均最大径が0.5〜30μmであることを特徴とする請求項4記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
ポリエチレングリコールを2回に亘り被覆させ、ポリエチレングリコール1回目の被覆の後に、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩を添加し被覆させ、その後にポリエチレングリコール2回目の被覆を行うことを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、成形して得られる成形品。
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