JP4959863B2 - 発泡性スチレン系樹脂粒子 - Google Patents

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Description

この発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、粒子のべたつきがなく、粒子移送が容易であり、配管に被覆した薬剤が剥離することなく、食品容器とした場合に、強度及び印刷性能等に優れると共に、該容器内に収容した内容物が外部へ浸透する性質を極めて良好に抑制することを可能とする発泡性スチレン系樹脂粒子ならびにこれを用いた予備発泡粒子およびその発泡成形体に関する。
この発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、各種の成形体の材料として用いられるが、油脂成分を含有する飲食品、例えば、即席麺、フライドチキン、脂肪含有食品、レギュラーコーヒーや、特に発泡成形体に対する浸透性が高いカレー等の容器の発泡成形材料として用いるのが好適である。その他、家庭用エアーコンディショナー等に用いられるドレンパン(受け皿)、携帯用アイスボックス等の発泡成形材料としても有用である。
発泡性スチレン系樹脂粒子は、水蒸気や熱風等により加熱すると、粒子内に多数の気泡が生成し、予備発泡粒子となる。この予備発泡粒子を所望の形状を有する金型内に充填し蒸気により加熱すると、上記予備発泡粒子が互いに融着し発泡成形体を得ることができる。
このようにして得られた発泡体は粒子同士が融着して金型通りの形状を形作っているが、粒子同士が完全に一体化しているわけではないため、粒子融着面に微細な毛細管が存在している。よって、例えば成形体を容器として使用するにつき、収容される内容物として特に油脂分の多い、例えば、油脂分30%以上の内容物に用いる場合、内容物の成分が成形体の外壁あるいは成形体の内部に浸透してくる恐れがある。
従来、食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子及びこれを用いた食品容器が提供されている。すなわち、スチレンモノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該樹脂粒子100重量部に対し、0.01〜0.5重量部の脂肪酸アマイド、又は脂肪酸ビスアマイドを被覆してなる食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子である(特許文献1)。また該樹脂粒子にさらに脂肪酸金属塩を0.2〜0.5重量部を被覆してなる食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子も提供されている(特許文献1)。これにより、油脂などの浸透力の強い内容物の浸透を実質的に防止できるとされている。
特開2003−201360号公報
また、発泡性スチレン系樹脂粒子、およびこれを用いた予備発泡粒子、発泡成形体が提供されている。すなわち、易揮発性発泡剤を含有し、スチレン系モノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子が、該樹脂粒子100重量部に対して、脂肪酸アマイドまたは脂肪酸ビスアマイドの少なくとも一種を0.01重量部以上0.5重量部以下と、脂肪酸金属塩0.2重量部以上1.0重量部以下とで被覆されており、かつ脂肪酸アマイドおよび脂肪酸ビスアマイドのアミン価が1以下である発泡性スチレン系樹脂粒子が提供されている(特許文献2)。これにより、油脂分の多い内容物の浸透を防止すると共に、金型汚染および金型腐食を防止することができるとされている。
特開2004−315806号公報
また、発泡性スチレン系樹脂粒子が提供されている。すなわち、スチレン系樹脂の粒子から成り、その中には該樹脂の軟化点より低い沸点を有する飽和または不飽和の脂肪酸炭化水素を1〜15%含み、その粒子表面には脂肪酸アマイドが0.005〜0.5重量%被覆されている発泡性スチレン系樹脂粒子である(特許文献3)。これにより、発泡粒子がよく発泡し、互いによく融着する。
特公昭47−10540号公報
また、発泡性熱可塑性樹脂粒子ならびこれを用いた予備発泡粒子および発泡成形体が提供されている。すなわち、含フッ素ブロック共重合体および融着促進剤(脂肪酸アマイド)を被覆または含有させてなる発泡性熱可塑性樹脂粒子である(特許文献4)。これにより油脂成分の浸透を防ぎ、予備発泡後の粒子輸送時のべとつきをなくすことができる。
特開平11−322995号公報
また、発泡容器を成型するための熱可塑性樹脂粒子用のコーティング組成物が提供されている。すなわち、熱可塑性樹脂粒子に対して、200〜800の範囲にある分子量のポリエチレングリコールを0.01重量%よりも多い量を含み、0.01重量%よりも多いポリオレフィンワックス、0.01重量%より多い高級脂肪酸の金属塩、約900〜10000の分子量を有するポリエチレングリコールを0.01重量%より多い量、0.01重量%より多い脂肪酸ビスアミドをコーティングする熱可塑性樹脂粒子を使用した容器である。これにより、液体および/または油性および脂肪性食品によって生じる漏れおよび/または汚れに対し透過性が少ないとされている。
特表2006−518795号公報
また、発泡性スチレン系樹脂粒子、および発泡成形体が提供されている。すなわち発泡剤の必須成分として発泡性樹脂粒子100重量%に対しペンタンを3〜6重量%、プロパンを0.01〜1重量%含有していることを特徴とし、そのペンタンの組成が重量比でイソペンタン:ノルマルペンタン=30:70〜70:30である(特許文献6)。これによりカップ等の発泡成形体を上下に圧縮する際の強度を得ることができるとされている。
特開2003−82149号公報
しかし、前記した方法を用いれば、油脂の浸透を抑制することを可能とする粒子がべたつき、粒子の移送の時間がかかる、表面に被覆した薬剤が移送の配管中にコレステロール状に蓄積し、最終的には閉塞したりするトラブルがあった。また、薬剤がはがれることにより、油脂分30%以上の内容物に用いる場合、内容物の成分が成形体の外壁あるいは成形体の内部に浸透してくる恐れがあった。
特許文献1及び特許文献2は、脂肪酸アマイドまたは脂肪酸ビスアマイドを0.01〜0.5重量部被覆、さらに実施例においてすべてにポリエチレングリコール0.1重量部を被覆している。
しかしながら脂肪酸アマイドは多量に用いると、予備発泡時のブロッキングが多く発生し製品となる効率が落ち、コスト的に好ましくない。さらにポリエチレングリコールを多量に用いると予備発泡粒子の流動性が低下し、充填不良となり不良な成形体が得られるときがある。
特許文献3は、粒子表面には脂肪酸アマイドが融着促進剤として熱可塑性樹脂の粒子表面に被覆する方法が提案されている。しかし、容器に収容された油脂の浸透を防止することは記載されていない。
特許文献4は、フッ素系高分子と脂肪酸アマイドを熱可塑性樹脂に被覆、または含有させてなる方法が提案されている。フッ素系高分子を使用すれば、油脂の浸透を抑制することが可能であるが、こうしたフッ素系高分子は非常に高価であるためコスト的に嫌われる。
特許文献5は、実施例において液体のポリエチレングリコールの分子量400を使用している。しかし分子量400のポリエチレングリコールを使用すると、ビーズ輸送時に粉体のコーティング剤がはがれて、油脂成分の漏れ防止が不十分であった。
特許文献6は、実施例においてペンタンの組成が重量比でイソペンタン:ノルマルペンタン=30:70〜70:30である。しかし、これでは、油脂成分の漏れ防止が不十分であった。
本発明の目的は、前記問題点をすべて解決しようとするもので、予備発泡時にブロッキングがなく、発泡粒子の流動性に優れ、被覆した薬剤の剥離が抑えられ、融着良好で、油分の漏れのない発泡性スチレン系樹脂粒子を提供するところにある。
本発明の発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、
スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させてなる発泡性スチレン系樹脂粒子であって、発泡性スチレン系樹脂粒子は該樹脂粒子表面を組成物によって被覆されており、
当該組成物は、当該樹脂粒子表面を被覆する分子量が400よりも小さいポリエチレングリコールAと、当該樹脂粒子100重量部に対して0.003〜0.04重量部の脂肪酸アマイド又は脂肪酸ビスアマイドと、当該樹脂粒子100重量部に対して0.2〜0.8重量部の脂肪酸金属塩と、分子量が400よりも小さいポリエチレングリコールBからなり、
上記ポリエチレングリコールA、Bは、当該樹脂粒子100重量部に対して0.02〜0.08重量部含有し、2回に分けて被覆されてなることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子である。
これにより、予備発泡時にブロッキングがなく、発泡粒子の流動性に優れ、被覆した薬剤の剥離が少なく、融着良好で、油分の漏れがなく、さらに、ポリエチレングリコールを2回に別けて被覆することで、樹脂を移送するときに表面に被覆した薬剤が剥離し辛く、薬剤の展着効果が向上できる。
以下、本発明の実施の形態をより詳細に説明する。
(スチレン系樹脂粒子)
本発明におけるスチレン系樹脂粒子は、一般に知られているスチレン系樹脂の粒状物で、スチレンを主成分とするものであり、スチレンの単独重合体でも、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル、あるいはジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体との共重合体でもよい。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体を併用してもよい。重量平均分子量は一般に発泡ポリスチレンとして使用可能な15万〜40万、好ましくは25万〜35万のものを使用することができる。
また、本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の粒子径は、200〜600μmの間にあることが好ましい。200μm未満では易揮発性発泡剤の逸散速度が速過ぎてビーズライフが短くなり、600μmより大きいと一般的な食品容器の肉厚が2mm前後と薄いことから金型への充填性が悪くなる。200〜600μmの粒子を得る方法としては、通常の懸濁重合法で得られた粒子を分級してもよいし、前述の懸濁シード重合法を用いてもよい。懸濁シード重合法を用いる方がより高い収率が得られるため好ましい。
(易揮発性発泡剤)
本発明において使用される易揮発性発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素などが挙げられるが、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明における易揮発性発泡剤の使用量は、3〜6重量%である。好ましくは3.3〜5重量%、さらに好ましくは3.8〜4.5重量%である。3重量%より少ないと、成形時の融着率が低下する傾向を有するため好ましくなく、6重量%を越えると、成形体の粒子間隙が多くなり表面美麗性を損なう傾向を有する上に、成形サイクルが長くなるため好ましくない。これらの発泡剤は発泡性スチレン系樹脂粒子の重合工程中に添加しても良いし、重合工程終了後に添加してもよい。
また、プロパンについては、0.01〜1重量%含有している方が好ましい。より好ましくは0.03〜0.8重量%含有している。0.01重量%未満であると成形体の粒子間隙が多くなり表面美麗性を損なう傾向を有し、逆に1重量%よりも多い量は過剰である。
また、ペンタンの組成については、重量比でイソペンタンの割合が10重量%〜30重量%未満である。10重量%未満では、成形体の粒子間隙が多くなり表面美麗性を損なう傾向を有し、30重量%以上では油脂成分の漏れ防止が不十分となる。
(脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイド)
本発明においては、一般式1で示される脂肪酸アマイド及び/又は一般式2で示される脂肪酸ビスアマイドが用いられる。
Figure 0004959863

(R1は飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基)
Figure 0004959863

(R2、R3は飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基、R4は脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基、ただしR2、R3は同じでも異なっていても良い)
脂肪酸アマイドとしては、例えば、カプリル酸アマイド、カプリン酸アマイド、ラウリン酸アマイド、ミリスチン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、アラキン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、リグノセリン酸アマイド、12−ヒドロキシステアリン酸アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールベヘン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド、が挙げられる。本発明における脂肪酸ビスアマイドとは、ジアミンと脂肪酸のジアマイドのことであり、2つのアマイド結合を形成する2つの脂肪酸は同じものでも異なるものでもよい。すなわち、一般式2中の脂肪族炭化水素基R2、R3は同じものでも異なるものでもよい。
一般に市販されている脂肪酸ビスアマイドは、使用されている脂肪酸の炭素数が一定ではなく分布を持つため、実質的にR2、R3が同一のビスアマイドとR2とR3が異なるジアマイドの混合物となっている。本発明で使用可能な脂肪酸ビスアマイドとしては、例えば、エチレンビスカプリル酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスエルカ酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、メチレンビスラウリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、キシリレンビスステアリン酸アマイドなどが挙げられる。本発明においてはこれらから選ばれる1種もしくは2種以上の混合物が使用できる。
一般式1及び2に示される飽和もしくは不飽和炭化水素基R1、R2、R3の炭素数としては7〜23が好ましく、15〜21がさらに好ましく、17(ステアリン酸)が特に好ましい。一般式2に示される脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基R4の炭素数としては、1〜8が好ましい。また、脂肪酸ビスアマイドよりも脂肪酸アマイドを使用するのが好ましい。上記したアマイドの中でも、ステアリン酸アマイド及び/又はエチレンビスステアリン酸アマイドを用いるのが好ましく、その内でもステアリン酸アマイドを単独で用いるのが最も好ましい。
本発明における脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの使用量は、発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.003〜0.04重量部で、好ましくは0.003〜0.009重量部、更に好ましくは0.003〜0.006重量部である。0.003重量部より少ないと、粒子同士の融着促進効果が薄く成形サイクルが長くなるため好ましくない。0.04重量部を越えると予備発泡時のブロッキングの量が多く発生し、予備発泡粒子の成形機金型への充填性が悪くなる。
(脂肪酸金属塩)
脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウムなどが挙げられるが、これらの内ステアリン酸亜鉛を用いるのが好ましい。通常、市販されているステアリン酸亜鉛を構成する脂肪酸は、主成分となるステアリン酸と、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸などとの混合物であり、本発明におけるステアリン酸亜鉛もこのような市販品を使用することができる。
また、ステアリン酸亜鉛については、複数の粒子が凝集した凝集体が使用される。凝集体の平均最大長は0.5〜30μmであり、30μmよりも大きい場合は、発泡性スチレン系樹脂粒子表面に凝集体が偏在して被覆されやすくなるために、結果として漏れ防止が低下するので好ましくない。また0.5μmよりも小さいと凝集体になっていない脂肪酸金属塩が多く存在しやすくなるために、結果として漏れ防止効果が低下するために好ましくない。
また、ステアリン酸亜鉛の使用量は発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.2〜0.8重量部が好ましく、0.3〜0.7重量部がさらに好ましく、0.5〜0.7重量部が特に好ましい。0.2重量部より少ないと油脂など食品容器内容物の浸透防止効果が小さくなる。0.8重量部を超えると粒子移送中の被覆した薬剤の剥離が多くなる、または成形時の融着が悪化する。
(ポリエチレングリコール)
帯電防止剤として一般に使用されるポリエチレングリコールを本発明では、2回使用することで展着効果を付与している。
ポリエチレングリコールは、当該樹脂粒子100重量部に対して0.02〜0.08重量部含有し、2回に分けて被覆されている。すなわち、ポリエチレングリコールの使用量は、1回目の被覆(ポリエチレングリコールA)は発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.01〜0.04重量部が好ましく、0.02〜0.04重量部がさらに好ましい。0.01重量部より少ないと帯電防止効果が低く使用時に静電気等により発火する危険がある、0.04重量部より多いと粒子のべとつきにより脂肪酸金属塩などの粉体の被覆が不均一になる。2回目の被覆(ポリエチレングリコールB)は発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.01〜0.04重量部が好ましく、0.02〜0.04重量部がさらに好ましい。0.01より少ないと展着効果が弱く、被覆した薬剤が移送中に多く剥離してしまう。0.04重量部より多いと、粒子がべとつき、被覆した薬剤が移送中に多く剥離してしまう。
また、使用するポリエチレングリコールの分子量はいずれも400よりも小さいことが好ましい。200〜300がより好ましい。分子量が150より小さいと、付着効果が弱く、被覆した薬剤が移送中に多く剥離してしまう。400より大きいと粘性が高くなり、粒子がべとつき、被覆した薬剤が移送中に多く剥離してしまう。
ポリエチレングリコールの分子量は以下の方法で求める。JIS K0070に基づく水酸基価を求め、式1によりポリエチレングリコールの平均分子量を算出した。
式1:ポリエチレングリコールの平均分子量=56106/水酸基価×2
56106:水酸化カリウムの分子量による係数
ポリエチレングリコールによる1回目の被覆(ポリエチレングリコールA)はヘンシェルミキサーなどの混合機内で一定時間混合しても、脱水直後から混合機までのライン内で噴霧してもよい。その後、脂肪酸金属塩や脂肪酸アマイド又は脂肪酸ビスアマイドを混合させて被覆させる。脂肪酸アマイド又は脂肪酸ビスアマイドと脂肪酸金属塩を併用する場合は、両者を混合して被覆させても別々に被覆させてもよい。最後に再度ポリエチレングリコールによる2回目の被覆(ポリエチレングリコールB)を公知のヘンシェルミキサーなどの混合機内で一定時間混合させ被覆させることが好ましい。
すなわち、ポリエチレングリコールを2回に亘り被覆させ、ポリエチレングリコール1回目の被覆の後に、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩を添加し被覆させ、その後にポリエチレングリコール2回目の被覆を行うことを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法である。
(発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡方法)
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、回転攪拌式予備発泡装置で、水蒸気を用いて加熱することにより、予備発泡粒子を得ることができる。また、得られた予備発泡粒子を所望の形状の金型内に充填し、水蒸気等を用いて加熱することにより発泡成形体とすることができる。
(成形品)
本発明の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡及び成形して得られた食品容器は、油脂を始めとした浸透力の強い内容物の浸透を実質的に抑制することが可能であるため、即席麺、カレー、シチュー、マヨネーズ、マーガリン、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、コーヒー等に利用することが可能である。
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
撹拌装置を備えたステンレス製の内容量100リットルのオートクレーブ内にイオン交換水40kgを供給し、このイオン交換水中に該イオン交換水を攪拌しながらスチレンモノマー40kg、リン酸三カルシウム(ブーデンハイム社製 商品名「C13−09」)40g、過硫酸カリウム0.5g、純度75重量%のベンゾイルパーオキサイド140g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート30gを供給して懸濁液を作製した。
次に、上記懸濁液を200RPMの攪拌速度で撹拌しながら1時間かけて90℃に昇温し、懸濁液を90℃で6時間に亘って保持して重合した後、この懸濁液にリン酸三カルシウム40g及びα−オレフィンスルホネート(ライオン社製 商品名「リポランPJ−400」)0.4gを添加した上でn−ペンタン1600g及びi−ペンタン400gを圧入して、懸濁液を130℃まで40分かけて昇温し、130℃で3時間に亘って放置した。
しかる後、上記懸濁液を冷却して懸濁液のpHが2となるまで35%の塩酸を添加してリン酸三カルシウムを分解した。続いて、懸濁液を脱水機にて10分間注水しながら洗浄、脱水した後に気流乾燥することによって発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。
得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子をJISに規定された目開きが0.600mmの篩で篩い、この篩を通過した発泡性ポリスチレン樹脂粒子を収集した。次に、この収集した発泡性ポリスチレン樹脂粒子をJISに規定された目開きが0.300mmの篩で篩い、この篩上に残った発泡性ポリスチレン樹脂粒子を収集することによって、粒子のメジアン径が0.45mmの発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。
該発泡性ポリスチレン樹脂粒子8kg(100重量部)をスーパーミキサー(内容積20リットル)に投入し、更に発泡性ポリスチレン樹脂粒子100重量部に対して、表1に示すポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部を添加して3分間撹拌した。その後、表1に示すステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.50重量部、表1に示すステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)0.02重量部を順次添加し、羽根回転数740RPMで3分間撹拌し、その後、再度表1に示すポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部を3分間撹拌し、被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。その結果を表1に示す。
なお、表皮層に表面全面が被覆されている各発泡性ポリスチレン粒子において、発泡性ポリスチレン粒子、ステアリン酸アマイド、ポリエチレングリコール及びステアリン酸亜鉛の重量割合は、スーパーミキサー中における発泡性ポリスチレン粒子、ポリエチレングリコール、ステアリン酸アマイド及びステアリン酸亜鉛の重量割合と同様の重量割合であった。
Figure 0004959863
(実施例2)
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)の変わりにエチレンビスステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「カオーワックスEB−EF」)とした以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例3)
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.02重量部の変わりにステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.005重量部、ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部にの変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.01重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.03重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例4)
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.02重量部の変わりにステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.04重量部、ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.03重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.01重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例5)
ステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.50重量部の変わりにステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.20重量部、
ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.03重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.03重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例6)
ステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.50重量部の変わりにステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.80重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例7)
ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.03重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.04重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例8)
分子量300のポリエチレングリコールの変わりに分子量200のポリエチレングリコール(日本油脂社製「PEG200」)を、ポリエチレングリコールA及びポリエチレングリコールBに使用したこと以外は実施例1と同様に行った。
(実施例9)
揮発性発泡剤として、プロパン400g、n−ペンタン1600g及びi−ペンタン400gを使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
(比較例1)
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.02重量部の変わりにステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.001重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
(比較例2)
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.02重量部の変わりにステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)を0.05重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
(比較例3)
ステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.50重量部の変わりにステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)1.00重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
(比較例4)
ステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.50重量部の変わりにステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.10重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
(比較例5)
ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.005重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.005重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
(比較例6)
ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)を0.1重量部、
ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.02重量部の変わりにポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)0.1重量部とした以外は実施例1と同様に実施した。
(比較例7)
分子量300のポリエチレングリコールAの変わりに分子量400のポリエチレングリコール(日本油脂社製「PEG400」)、分子量300のポリエチレングリコールBの変わりに分子量400のポリエチレングリコール(日本油脂社製「PEG400」)とした以外は実施例1と同様に実施した。
(比較例8)
分子量300のポリエチレングリコールの変わりに分子量800のポリエチレングリコール(日本油脂社製「PEG800」)を、ポリエチレングリコールA及びポリエチレングリコールBとして使用したこと以外は実施例1と同様に行った。
(比較例9)
ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールAには使用せず、ポリエチレングリコールB(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)にのみ0.1重量部使用すること以外は実施例1と同様に行った。
(比較例10)
ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールBには使用せず、ポリエチレングリコールA(日本油脂社製 商品名「PEG−300」、分子量300)にのみ0.1重量部使用すること以外は実施例1と同様に行った。
(比較例11)
ステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「花王アマイドT」)0.02重量部の変わりにエチレンビスステアリン酸アマイド(花王社製 商品名「カオーワックスEB−EF」)0.2重量部、ステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.50重量部の変わりにステアリン酸亜鉛(日本油脂社製 商品名「ジンクステアレートGF−200」)0.40重量部、分子量300のポリエチレングリコールAの変わりに分子量400のポリエチレングリコール(日本油脂社製「PEG400」)を使用して、ポリエチレングリコールBを使用しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。
(比較例12)
揮発性発泡剤として、プロパン400g、n−ペンタン1900g及びi−ペンタン100gを使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
(比較例13)
揮発性発泡剤として、プロパン400g、n−ペンタン1300g及びi−ペンタン700gを使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
次に、実施例及び比較例について、各種の評価を行った。
《発泡性ポリスチレン樹脂粒子の吸引輸送》
エムエルエンジニアリング社製の吸引輸送装置ML−5500CBを使用して発泡性ポリスチレン樹脂粒子の吸引輸送を評価した。
図1はエムエルエンジニアリング社製の吸引輸送装置ML−5500CBを示す概略図である。図1において、1はホッパー、2はその上部に設けられた吸引部である。ホッパー1には放出管11が設けられている。5は吸引部11から吸引エアにて吸引管3を通ってバグフィルター4を介して吸引するブロアである。6は放出管11の真下に設けられたドラムである。7は内径50mm、長さ10mのポリプロピレン製のホースからなる流通管である。流通管7の一方は吸引部2に取り付けられ、他方は吸引ノズル71を介して、前記ドラム6内にある、被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子ABを吸引輸送する。
従って、図1のように、流通管7をできるだけ垂直となるように接続し、その流通管7のもう一方に吸引ノズル71を接続するわけであるが、ここでその吸引ノズル71、すなわちサクションノズルから各々の被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子ABの吸引輸送を行った。その後、ホッパー1から発泡性ポリスチレン樹脂粒子ABを8m落下させて、ドラム6に受けた。この吸引輸送を12回繰り返し、輸送済の発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。
《予備発泡、カップ成形》
輸送済の発泡性ポリスチレン樹脂粒子を、回転翼を内蔵したバッチ型予備発泡機に投入し、水蒸気で均一に加熱することで、かさ密度0.1g/mlになるように発泡させて予備発泡粒子を得た。
予備発泡粒子の結合量は、予備発泡させた予備発泡粒子を10メッシュ(1.7mm)の網を通して、網の上に残った結合した予備発泡粒子の重量を測定し、網を通す前の全体の発泡粒子の重量にて除することにより求めた。
得られた予備発泡粒子を大気中で12時間熟成・乾燥させた。次いで、予備発泡粒子をカップ形成用金型に充填し、0.22MPa(ゲージ圧)の水蒸気で6秒間加熱した後冷却し、リップ部口径95mm、底部口径68mm、高さ105mm、内容量400ml、肉厚約2mmのカップ成形品を得た。
《油分滲出性試験》
得られたカップ成形品を5個準備し、即席麺に用いられている、カレー粉を含む調味料及びかやくを100g供給した上で、このカップ成形品をポリ塩化ビニリデン製のラップフィルムでほぼ密閉となるように全面的に包装した。次に、このカップ成形品を60℃に保持されたオーブン内に24時間に亘って放置した。
24時間後カップ成形品をオーブンから取り出し、側壁部のカレー粉による黄色色素の滲み出しを目視で観察した。滲み出しのある場合はカップ成形品の側壁部外面の全面を紙に写し取ると共に、カップ成形品の側壁部外面に滲み出したカレー粉による黄色色素部分を上記紙に写し取った。写し取ったカップ成形品の側壁部全面に対応する部分の紙の重量をW1、写し取った黄色色素部分に対応する部分の紙の重量W2として下記式により百分率を算出し、カップ成形品5個の油分滲出性の最大値を下記の基準より評価した。尚、下記の基準より評価した、表1の括弧内に油分滲出し性の値を記した。
油分滲出性(%)=100×W2 /W1
○・・・黄色色素の滲出しはあったが、油分滲出性1%未満であった。
×・・・油分滲出性が1%以上であった。
この油分滲出性試験で1%を越えると長期間常温保管した場合、内容物の油分が滲み出してカップ成形品の商品価値が失われる可能性がある。
《融着》
試験シートを切込線に沿って手で二分割し、この分割断面を目視観察した。そして、試験シートの分割断面において、全部の発泡粒子の数(a)と、発泡粒子同士が熱融着界面で破断することなく発泡粒子自体が破断された発泡粒子の数(b)とを数え、下記式に基づいて熱融着率を算出し、その結果を表1に記す。
熱融着率(%)=100×b/a
《ステアリン酸亜鉛の付着率測定》
発泡性ポリスチレン樹脂粒子へのステアリン酸亜鉛の付着率は吸引輸送前と吸引輸送後それぞれの発泡性ポリスチレン樹脂粒子に付着した亜鉛を定量し、その百分率により算出した。即ち、吸引輸送前の亜鉛量をW3、吸引輸送後の亜鉛量をW4とした時、ステアリン酸亜鉛の付着率を下記式により求めた。
ステアリン酸亜鉛付着率(wt%)=100×W4 /W3
亜鉛は以下の方法で定量した。ステアリン酸亜鉛が被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を1.5g精秤し450℃、3時間で灰化した後、濃塩酸2mlを加え、ろ過せずに蒸留水で25mlにメスアップし測定試料とした。この測定試料をセイコー電子工業社製 ICP発光分光分析装置 SPS−4000を用いて、測光高さ10.0mm、高周波出力1.30kw、キャリア流量1.0リットル/分、プラズマ流量16.0リットル/分、補助流量0.5リットル/分として亜鉛を定量した。
このステアリン酸亜鉛の付着率は80%以下になると、内容物の油分が滲み出してカップ成形品の商品価値が失われる可能性がある。
《流動性の測定》
流動性は以下の方法にて測定した。被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を直径80mm、高さ70mmの円柱の容器に入れ、容器を上げた時にできる山の高さと直径を測定し、安息角を算出した。
この流動性が20度以上になると、樹脂の流動性が悪く、粒子移送中の配管中にて被覆した薬剤の剥離による油分の滲み出し防止効果の低下が起こり、かつ粒子の移送に時間がかかるという問題が発生する。
《含有ガス量の測定》
試料である発泡性スチレン系樹脂粒子(製造後20℃にて24時間保管したもの)10〜20mgを20ml専用ガラスバイアルに精秤密封し、パーキンスエルマー社製ヘッドスペースサンプラーTurboMatrixHS40にセットし、160℃で30分間加熱後、パーキンスエルマー社製ガスクロマトグラフClarus500GC(検出器:FID)を用いて定量した。ヘッドスペースサンプラーにおける測定条件は、ニードル温度160℃、試料導入時間0.08分、トランスファーライン温度160℃、ガスクロマトグラフにおける測定条件は、カラムをJ&W社製DB−1(0.25mmΦ×60m、膜厚1μm、カラム温度:50℃で10分間、20℃/分で270℃まで昇温、270℃で1分間)、キャリアガスをヘリウム(導入条件:18pslで10分間、0.5psl/分で24pslまで増量)、注入口温度(200℃)とした。測定値を樹脂重量100質量部に対する値に換算した。
[評価]
1.いずれの実施例も、比較例に比して、発泡性ポリスチレン樹脂粒子の吸引輸送、予備発泡粒子の結合量、油分滲出性、発泡粒子の熱融着率、ステアリン酸亜鉛の付着率、樹脂の流動性の点で良好な結果となっている。
2.これに対して、分子量が300または400のポリエチレングリコールAのみを被覆しポリエチレングリコールBを被覆しなかった比較例10、11は、ステアリン酸亜鉛の付着率が悪く剥離が大でカレー粉による黄色色素に相当する油分の漏れが著しい。また反対に、分子量が300のポリエチレングリコールBのみを被覆しポリエチレングリコールAを被覆しなかった比較例9についても、ステアリン酸亜鉛の付着率が悪く剥離が大でカレー粉による黄色色素に相当する油分の漏れが著しい。
3.また分子量が400であるポリエチレングリコールを2回に分けて使用した比較例7は、ステアリン酸亜鉛の付着率が悪く剥離が大で油分の漏れが著しい。また予備発泡時の結合量も低い。また分子量が800であるポリエチレングリコールを2回に分けて使用した比較例8は、ステアリン酸亜鉛の付着率が悪く剥離が大で油分の漏れが著しい。
4.また分子量300のポリエチレングリコールA及び分子量300のポリエチレングリコールBであってもその含有量が0.005重量部である比較例5は、ステアリン酸亜鉛の付着率が悪く、剥離が大きく、油分の漏れが著しい。
また分子量300のポリエチレングリコールA及び分子量300のポリエチレングリコールBであってもその含有量が0.1重量部である比較例6は、加えて、樹脂の流動性が低下し、充填不良が発生する。
5.ステアリン酸アマイドが0.001重量部の比較例1の場合、発泡粒子の熱融着率が低下し、油分の漏れが生じやすい。反対に、ステアリン酸アマイドが0.05重量部の比較例2の場合、発泡粒子の熱融着率は良好であり、油分の漏れが生じないが、予備発泡時のブロッキングが多く発生し製品となる効率が落ちる。実施例3、4よりステアリン酸アマイドは0.003〜0.04重量部が良好である。また実施例5、6よりステアリン酸亜鉛は0.2〜0.8重量部が良好である。ステアリン酸亜鉛が1重量部の比較例3の場合、剥離が大で、融着不良が生じるが、ステアリン酸亜鉛が0.1重量部の比較例4の場合、樹脂の流動性が低下し、充填不良が発生する。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、予備発泡時にブロッキングがなく、発泡粒子の流動性に優れ、被覆した薬剤の剥離が少なく、融着良好で、油分の漏れがなく、さらに、ポリエチレングリコールを2回に別けて被覆することで、樹脂を移送するときに表面に被覆した薬剤が剥離し辛く、薬剤の展着効果が向上できる。
特に食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡及び成形して得られた食品容器は、油脂を始めとした浸透力の強い内容物の浸透を実質的に抑制することが可能であるため、即席麺、カレー、シチュー、マヨネーズ、マーガリン、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、コーヒー等に利用することが可能である。
発泡性ポリスチレン樹脂粒子の吸引輸送装置を示す概略図である。

Claims (7)

  1. スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させてなる発泡性スチレン系樹脂粒子であって、発泡性スチレン系樹脂粒子は該樹脂粒子表面を組成物によって被覆されており、
    当該組成物は、当該樹脂粒子表面を被覆する分子量が400よりも小さいポリエチレングリコールAと、当該樹脂粒子100重量部に対して0.003〜0.04重量部の脂肪酸アマイド又は脂肪酸ビスアマイドと、当該樹脂粒子100重量部に対して0.2〜0.8重量部の脂肪酸金属塩と、分子量が400よりも小さいポリエチレングリコールBからなり、
    上記ポリエチレングリコールA、Bは、当該樹脂粒子100重量部に対して0.02〜0.08重量部含有し、2回に分けて被覆させ、ポリエチレングリコール1回目の被覆の後に、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩を添加し被覆させ、その後にポリエチレングリコール2回目の被覆を行ってなり、
    発泡性スチレン系樹脂粒子を製造後、20℃で24時間経過した発泡性スチレン系樹脂粒子中の易揮発性発泡剤の必須成分として、発泡性スチレン系樹脂粒子100重量%に対しペンタンを3〜6重量%、プロパンを0.01〜1重量%含有し、ペンタンは、イソペンタン及びノルマルペンタンの全量に対する重量比でイソペンタンが10重量%〜30重量%未満である発泡性スチレン系樹脂粒子であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。
  2. 上記ポリエチレングリコールAは、当該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜0.04重量部、上記ポリエチレングリコールBは、0.01〜0.04重量部含有する請求項1記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
  3. 脂肪酸アマイドがステアリン酸アマイドであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
  4. 脂肪酸金属塩をステアリン酸亜鉛であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
  5. ステアリン酸亜鉛が複数個集まった凝集体であり、その凝集体の平均最大径が0.5〜30μmであることを特徴とする請求項4記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
    ポリエチレングリコールを2回に亘り被覆させ、ポリエチレングリコール1回目の被覆の後に、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩を添加し被覆させ、その後にポリエチレングリコール2回目の被覆を行うことを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、成形して得られる成形品。

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