JP2004307758A - 食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子及びこれを用いた食品容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡・成形して得られる食品容器に収容された油脂を始めとした浸透性の高い内容物の容器壁内部更には容器壁外部への浸透を抑制する。さらに、この粒子を用いた容器は強度、印刷性能等が優れることも必要である。
【解決手段】スチレン系モノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部のジアルキルケトン、更に好ましくは脂肪酸金属塩の0.2〜0.5重量部を併用して粒子表面を被覆してなる食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子を提供する。更に、こうして得られた食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、成形して食品容器を得る。
【選択図】 なし
【解決手段】スチレン系モノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部のジアルキルケトン、更に好ましくは脂肪酸金属塩の0.2〜0.5重量部を併用して粒子表面を被覆してなる食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子を提供する。更に、こうして得られた食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、成形して食品容器を得る。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子に関するものである。更に詳しくは、予備発泡し、成形して食品容器とした場合に、強度及び印刷性能等に優れると共に、該容器内に収容した内容物が外部へ浸透する性質を極めて良好に抑制することを可能とする食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、発泡性スチレン系樹脂粒子から造られた発泡成形体は、経済性、軽量性、断熱性、強度、衛生性に優れ、食品容器、緩衝材、断熱材等に利用されている。本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、即席麺、フライドチキン、カレー、コーヒーなどの食品容器として好適に用いられる。
【0003】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、水蒸気や熱風等により加熱すると、粒子内に多数の気泡が生成し、予備発泡粒子となる。この予備発泡粒子を所望の形状を有する金型内に充填し蒸気により加熱すると、上記予備発泡粒子が互いに融着し発泡成形体を得ることができる。
【0004】
このようにして得られた発泡体は粒子同士が融着して金型通りの形状を形作っているが、粒子同士が完全に一体化しているわけではないため、粒子融着面に微細な毛細管が存在している。よって、例えば成形体を容器として使用するにつき、収容される内容物として特に油脂分の多い、例えば、油脂分30%以上の内容物に用いる場合、内容物の成分が容器壁内部さらには容器壁の外にまで浸透し漏れだしてくる恐れがある。
【0005】
この浸透を防止する方法として、特許文献1では発泡剤にイソペンタンを用いる方法が、特許文献2では高吸水性樹脂で発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を被覆する方法が提案されている。しかし、これらの方法では多くの油脂成分を含むカレールウのような浸透力の強い内容物を収容した際、こうした内容物の浸透を防止することは困難であった。
【0006】
また、特許文献3では、油脂又はレギュラーコーヒーの浸透防止策として粒子径が10μm以下に90%以上あるステアリン酸亜鉛で発泡性熱可塑性樹脂粒子表面を被覆する方法が提案されている。しかし、特許文献3の実施例に示されているように、該ステアリン酸亜鉛のみを被覆する方法では油脂分を大量に含むカレールウの洩れを実用的に抑制することは不可能であり、非イオン性セルロースエーテルを併用することによりカレールウの洩れ抑制性能は向上するものの、成形時の融着性に影響を及ぼす恐れがあり実用上実施できるレベルとは言い難かった。
【0007】
さらに、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7では、油脂など浸透力の強い内容物の浸透を防止する方法として、フッ素系高分子で発泡性スチレン系樹脂粒子表面を被覆する方法が提案されている。
【0008】
また、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12等では、脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを予備発泡時のブロッキング防止剤や融着促進剤として発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を被覆する方法が提案されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第4840759号明細書(1頁−3頁)
【0010】
【特許文献2】特開平4−272942号公報(1頁−4頁)
【0011】
【特許文献3】特開昭60−26042号公報(1頁−5頁)
【0012】
【特許文献4】特開平02−88652号公報(1頁−7頁)
【0013】
【特許文献5】特開平03−72535号公報(1頁−7頁)
【0014】
【特許文献6】特開平03−190941号公報(1頁−9頁)
【0015】
【特許文献7】特開平11−322995号(1頁−12頁)
【0016】
【特許文献8】特開昭55−127441号公報(1頁−4頁)
【0017】
【特許文献9】特開昭61−157538号公報(1頁−5頁)
【0018】
【特許文献10】特開昭56−106930号公報(1頁−4頁)
【0019】
【特許文献11】特開昭57−63336号公報(1頁−6頁)
【0020】
【特許文献12】特開昭57−16037号公報(1頁−7頁)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
前記したフッ素系高分子を用いる方法によれば、油脂の浸透を抑制することが可能であるが、こうしたフッ素系高分子は非常に高価であるためコスト的に不利となるだけでなく、一部の化合物について人体蓄積性の恐れがあるとの報告があり、フードコンタクト用途に使用するにはより安全な解決法が切望されていた。
【0022】
【課題を解決するための手段】
かかる実状に鑑み鋭意研究した結果、本発明者らは、ジアルキルケトンを用いて被覆した発泡性スチレン系樹脂粒子を、予備発泡及び成形して食品容器とすれば、油脂などの浸透力の強い内容物の浸透を実質的に防止できるという全く予想し得なかった事実を見出し、本発明を完成した。
【0023】
更に、ジアルキルケトンに加えてステアリン酸亜鉛を始めとする脂肪酸金属塩を併用すれば、油脂などの浸透防止効果が更に向上することを見出すことにより、本発明を完成した。
【0024】
かくして、本発明によれば、スチレン系モノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の下記一般式1で示されるジアルキルケトンで粒子表面を被覆してなる食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項1)、
【0025】
【化2】
【0026】
スチレン系モノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の一般式1で示されるジアルキルケトンと、0.2〜0.5重量部の脂肪酸金属塩とで粒子表面を被覆してなる食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項2)、一般式1に示される脂肪族炭化水素基R1、R2の炭素数が、7〜23である請求項1又は2に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項3)、一般式1に示される脂肪族炭化水素基R1、R2の炭素数が17である請求項3に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項4)、ジアルキルケトンが、ジステアリルケトンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項5)、脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛である請求項2〜5のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項6)、
【0027】
ステアリン酸亜鉛が、脂肪酸金属塩の製法のうち直接法により製造されたものである請求項6に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項7)、3〜6重量%の易揮発性発泡剤を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項8)、粒子径が200〜600μmである請求項1〜8のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項9)、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、成形して得られる食品容器(請求項10)、が提供される。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態をより詳細に説明する。
【0029】
本発明におけるスチレン系樹脂粒子は、一般に知られているスチレン系樹脂の粒状物で、スチレンを主成分とするものであり、スチレンの単独重合体でも、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル、あるいはジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体との共重合体でもよい。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体を併用してもよい。重量平均分子量は一般に発泡ポリスチレンとして使用可能な15万〜40万、好ましくは25万〜35万のものを使用することができる。
【0030】
本発明におけるスチレン系樹脂粒子は、通常の懸濁重合法、もしくは水性懸濁液中に分散したスチレン系樹脂種粒子にスチレン系単量体を添加して該種粒子に含浸させながら重合せしめるいわゆる懸濁シード重合法等によって製造されたものを使用することができる。懸濁シード重合法に用いる樹脂種粒子は、(1)通常の懸濁重合法、(2)重合性単量体を規則的な振動下にノズルを通すことにより液滴群として水性媒体中に分散させ、合着および付加的な分散を生じせしめることなく重合させる方法、などによって得ることができる。
【0031】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子に含まれるスチレン系モノマーの量は1000ppm以下に抑える必要がある。発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡及び成形して即席麺の容器として用いる場合は、食品衛生法の温湯容器規格により容器内に残存するスチレン系モノマーの量が1000ppm以下に規定されているからである。
【0032】
発泡性スチレン系樹脂粒子中のスチレン系モノマー量は、好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下である。500ppm以下であると、臭気が少なくなるので好ましい。発泡性スチレン系樹脂粒子中に含まれる残存スチレン量を1000ppm以下に下げる方法としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5トリメチルシクロヘキサン等のいわゆる高温分解型重合開始剤を0.05部以上使用して、110℃以上の高温下で後重合を行う方法等が用いられる。
【0033】
また、本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の粒子径は、200〜600μmの間にあることが好ましい。200μm未満では易揮発性発泡剤の逸散速度が速過ぎてビーズライフが短くなり、600μmより大きいと一般的な食品容器の肉厚が2mm前後と薄いことから金型への充填性が悪くなる。200〜600μmの粒子を得る方法としては、通常の懸濁重合法で得られた粒子を分級してもよいし、前述の懸濁シード重合法を用いてもよい。懸濁シード重合法を用いる方がより高い収率が得られるため好ましい。
【0034】
本発明において使用される易揮発性発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素などが挙げられるが、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明における易揮発性発泡剤の使用量は、3〜6重量%である。好ましくは3.3〜5重量%、さらに好ましくは3.8〜4.5重量%である。3重量%より少ないと、成形時の融着率が低下する傾向を有するため好ましくなく、6重量%を越えると、成形体の粒子間隙が多くなり表面美麗性を損なう傾向を有する上に、成形サイクルが長くなるため好ましくない。これらの発泡剤は発泡性スチレン系樹脂粒子の重合工程中に添加しても良いし、重合工程終了後に添加してもよい。
【0036】
本発明においては、一般式1で示されるジアルキルケトンが用いられる。
【0037】
【化3】
【0038】
ジアルキルケトンとしては例えば、ジカプリルケトン、ジラウリルケトン、ジミリスチルケトン、ジパルミチルケトン、ジステアリルケトン、ジアラキルケトン、ジベヘニルケトン等が挙げられる。本発明においてはこれらから選ばれる1種もしくは2種以上の混合物が使用できる。一般式1に示される飽和もしくは不飽和炭化水素基R1、R2の炭素数としては7〜23が好ましく、15〜21がさらに好ましく、17(ステアリル基)が特に好ましい。上記したケトンの中でも、ジステアリルケトンを用いるのが好ましい。
【0039】
本発明におけるジアルキルケトンの使用量は、0.01〜0.5重量部で、好ましくは0.05〜0.3重量部、更に好ましくは0.1〜0.25重量部である。0.01重量部より少ないと、油脂を始めとした食品容器内容物の浸透を抑制する効果が小さく、0.5重量部を越えると粒子同士の融着が悪化し成形サイクルが長くなるため好ましくない。ジアルキルケトンを発泡性スチレン系樹脂粒子とともにヘンシェルミキサーなどの混合機内で一定時間混合することにより、発泡性スチレン系樹脂粒子表面にジアルキルケトンを被覆させることができる。
【0040】
本発明においては、ジアルキルケトンに加えて脂肪酸金属塩を併用するのが好ましい。脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウムなどが挙げられるが、これらの内ステアリン酸亜鉛またはステアリン酸マグネシウムを用いるのが好ましい。通常、市販されているステアリン酸亜鉛を構成する脂肪酸は、主成分となるステアリン酸と、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸などとの混合物であり、本発明におけるステアリン酸亜鉛もこのような市販品を使用することができる。
【0041】
また、ステアリン酸亜鉛を始めとする脂肪酸金属塩の代表的な製法として複分解法と直接法が挙げられるが、これらのうち複分解法では反応式1と反応式2で製造されることになる。そして、反応式1に示すように、脂肪酸ナトリウムが中間生成物として生成され、一部の未反応脂肪酸ナトリウムが最終製品である脂肪酸金属塩中に不純物として残留する。ステアリン酸亜鉛を使用するにつき、ステアリン酸亜鉛中に未反応脂肪酸ナトリウムが存在すると、長時間にわたって連続成形を行う場合に金型表面が黒く汚染され、伝熱不良による融着不足や離型不良を引き起こす場合がある。
【0042】
(複分解法における反応の一例)
【0043】
これに対し、直接法では脂肪酸(例えばステアリン酸)と金属酸化物(例えばZnO)もしくは金属水酸化物(例えばZn(OH)2)を直接反応させるため、製造過程において脂肪酸ナトリウムは生成されない。よって、金型汚染を抑制するためには脂肪酸ナトリウムを含有しやすい複分解法の脂肪酸金属塩よりも、脂肪酸ナトリウムを含まない直接法の脂肪酸金属塩を使用するのが好ましい。よって、脂肪酸亜鉛を使用する場合も、直接法のステアリン酸亜鉛を使用するのが最も好ましい。
【0044】
その使用量は0.2〜0.5重量部が好ましく、0.25〜0.45重量部がさらに好ましく、0.3〜0.4重量部が特に好ましい。使用量が0.2重量部を下回ると油脂など食品容器内容物の浸透防止効果が小さくなる傾向を有し、0.5重量部を超えると成形時の融着が不十分となる傾向があるので、上記範囲の添加量が好ましい。
【0045】
本発明で使用する脂肪酸金属塩、その代表例たるステアリン酸亜鉛に関しては、その粒子径は特に限定されることはない。よって、粒子径が10μm以下に90%以上あるステアリン酸亜鉛であっても良く、また、更に大きな粒子径であっても効果を発揮しうるので特に制限されることはない。
【0046】
脂肪酸金属塩を発泡性スチレン系樹脂粒子とともにヘンシェルミキサーなどの混合機内で一定時間混合することにより、発泡性スチレン系樹脂粒子表面に脂肪酸金属塩を被覆させることができる。ジアルキルケトンと脂肪酸金属塩を併用する場合は、両者を混合して被覆させても別々に被覆させても良いが、好ましくは、ジアルキルケトンを被覆させ、次いで脂肪酸金属塩を被覆させるのが良い。
【0047】
さらに、帯電防止剤として一般に使用されるグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの1種または2種以上の併用も可能である。
【0048】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、回転攪拌式予備発泡装置で、水蒸気を用いて加熱することにより、予備発泡粒子を得ることができる。また、得られた予備発泡粒子を所望の形状の金型内に充填し、水蒸気等を用いて加熱することにより発泡成形体とすることができる。
【0049】
本発明の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡及び成形して得られた食品容器は、油脂を始めとした浸透力の強い内容物の浸透を実質的に抑制することが可能であるため、即席麺、カレー、シチュー、マヨネーズ、マーガリン、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、コーヒー等に利用することが可能である。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0051】
(実施例1〜8、比較例1〜3)
攪拌機を具備した5リットル反応器に、純水1.5リットル、第三リン酸カルシウム9.7g、アルファオレフィンスルフォン酸ソーダ0.15g、塩化ナトリウム1.7g、粒子径が0.2〜0.3mmのスチレン系樹脂種粒子427gを入れ、攪拌下に反応器中の分散液を90℃に昇温した。次いで、ベンゾイルパーオキサイド3.6g、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン3.0gをスチレン単量体1280gに溶解した溶液を5時間かけて反応器中に仕込みながら重合した。単量体溶液の仕込みが終了した後、直ちに120℃に昇温して3時間後重合を行った。
【0052】
その後ペンタン77gを系内に仕込み更に3時間120℃で保持した後、冷却した。懸濁液を取り出し脱水・乾燥したところ、粒子径が0.3〜0.5mm、残存スチレンモノマー量が40ppm、発泡剤含有量が4.3重量%、重量平均分子量が30万の発泡性スチレン系樹脂粒子が得られた。更に、連続成形運転による金型汚染度のテストのため、上記5リットル反応器を1500リットルの反応器にスケールアップし、同様の処方により同一の発泡性スチレン系樹脂粒子を得て連続成形に供した。
【0053】
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子1000g(100重量部)をヘンシェルミキサーに入れ、攪拌しながら0.1重量部のポリエチレングリコール(分子量400)、表1に示すジアルキルケトン、脂肪酸金属塩を順次加え、これら添加剤で被覆された発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0054】
これを回転攪拌式予備発泡装置に投入し、約95℃の水蒸気中で嵩密度が98g/Lになるまで約6分間発泡し、予備発泡粒子を得た。
【0055】
得られた予備発泡粒子を室温で約20時間養生乾燥した後、内容積500ml、肉厚2mmのカップ状金型内に充填し、2.6kgf/cm2の水蒸気で5秒加熱し、冷却後金型よりカップ状発泡成形体を得た。
【0056】
このカップ状発泡成形体について、以下のような評価を行った。
(1)融着率:カップ状発泡成形体の側壁を手で割り、破断面に存在する全ての粒子の内、発泡粒子そのものが破断している粒子の割合を百分率で表した。
(2)表面粒子間隙:粒子間隙がほとんどないものを◎、印刷しても色飛びがほとんどなく、実用上問題のないものを○、印刷すると色飛びが認められ使用不可能なものを×とした。
【0057】
(3)界面活性剤溶液浸透試験:花王社製スコアロールコンク700を0.1重量%、エリオクロムブラックTを0.005重量%含む界面活性剤水溶液約400gをカップ状発泡成形体に入れ、カップ外壁面に界面活性剤水溶液が浸透し、水滴が現れ始める時間を測定した。30分以上が合格である。
(4)カレー試験:油脂成分の浸透抑制効果を確認するために、カレールウ200gをカップに入れ、サランラップで包装し、60℃雰囲気下に置いてカップ外壁にカレーが洩れだす時間を測定した。24時間以上が合格である。
【0058】
(5)金型汚染度評価:1500リットル反応器を使用して得られた発泡性スチレン系樹脂粒子約300kgを上記方法で予備発泡し、約1週間連続的に成形を行い、金型表面の汚染状態を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:金型表面に全く変化なし
○:金型表面が薄らと黒ずんでいる。
△:金型表面の約半分が真っ黒に変色している。
×:金型表面が全面的に真っ黒になっている。
カップ状発泡成形体の評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
スチレン系モノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部のジアルキルケトン、更に好ましくは脂肪酸金属塩を0.2〜0.5重量部を併用して粒子表面を被覆した発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡及び成形して得られた食品容器は、強度、印刷性能等が優れると共に、即席麺、カレー、シチュー、マヨネーズ、マーガリン、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、コーヒー等に利用することによって、これら油脂を始めとする油脂分の多い浸透性の高い内容物の容器壁内部更には容器壁外部へ浸透しての漏れを有効に防止することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子に関するものである。更に詳しくは、予備発泡し、成形して食品容器とした場合に、強度及び印刷性能等に優れると共に、該容器内に収容した内容物が外部へ浸透する性質を極めて良好に抑制することを可能とする食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、発泡性スチレン系樹脂粒子から造られた発泡成形体は、経済性、軽量性、断熱性、強度、衛生性に優れ、食品容器、緩衝材、断熱材等に利用されている。本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、即席麺、フライドチキン、カレー、コーヒーなどの食品容器として好適に用いられる。
【0003】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、水蒸気や熱風等により加熱すると、粒子内に多数の気泡が生成し、予備発泡粒子となる。この予備発泡粒子を所望の形状を有する金型内に充填し蒸気により加熱すると、上記予備発泡粒子が互いに融着し発泡成形体を得ることができる。
【0004】
このようにして得られた発泡体は粒子同士が融着して金型通りの形状を形作っているが、粒子同士が完全に一体化しているわけではないため、粒子融着面に微細な毛細管が存在している。よって、例えば成形体を容器として使用するにつき、収容される内容物として特に油脂分の多い、例えば、油脂分30%以上の内容物に用いる場合、内容物の成分が容器壁内部さらには容器壁の外にまで浸透し漏れだしてくる恐れがある。
【0005】
この浸透を防止する方法として、特許文献1では発泡剤にイソペンタンを用いる方法が、特許文献2では高吸水性樹脂で発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を被覆する方法が提案されている。しかし、これらの方法では多くの油脂成分を含むカレールウのような浸透力の強い内容物を収容した際、こうした内容物の浸透を防止することは困難であった。
【0006】
また、特許文献3では、油脂又はレギュラーコーヒーの浸透防止策として粒子径が10μm以下に90%以上あるステアリン酸亜鉛で発泡性熱可塑性樹脂粒子表面を被覆する方法が提案されている。しかし、特許文献3の実施例に示されているように、該ステアリン酸亜鉛のみを被覆する方法では油脂分を大量に含むカレールウの洩れを実用的に抑制することは不可能であり、非イオン性セルロースエーテルを併用することによりカレールウの洩れ抑制性能は向上するものの、成形時の融着性に影響を及ぼす恐れがあり実用上実施できるレベルとは言い難かった。
【0007】
さらに、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7では、油脂など浸透力の強い内容物の浸透を防止する方法として、フッ素系高分子で発泡性スチレン系樹脂粒子表面を被覆する方法が提案されている。
【0008】
また、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12等では、脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを予備発泡時のブロッキング防止剤や融着促進剤として発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を被覆する方法が提案されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第4840759号明細書(1頁−3頁)
【0010】
【特許文献2】特開平4−272942号公報(1頁−4頁)
【0011】
【特許文献3】特開昭60−26042号公報(1頁−5頁)
【0012】
【特許文献4】特開平02−88652号公報(1頁−7頁)
【0013】
【特許文献5】特開平03−72535号公報(1頁−7頁)
【0014】
【特許文献6】特開平03−190941号公報(1頁−9頁)
【0015】
【特許文献7】特開平11−322995号(1頁−12頁)
【0016】
【特許文献8】特開昭55−127441号公報(1頁−4頁)
【0017】
【特許文献9】特開昭61−157538号公報(1頁−5頁)
【0018】
【特許文献10】特開昭56−106930号公報(1頁−4頁)
【0019】
【特許文献11】特開昭57−63336号公報(1頁−6頁)
【0020】
【特許文献12】特開昭57−16037号公報(1頁−7頁)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
前記したフッ素系高分子を用いる方法によれば、油脂の浸透を抑制することが可能であるが、こうしたフッ素系高分子は非常に高価であるためコスト的に不利となるだけでなく、一部の化合物について人体蓄積性の恐れがあるとの報告があり、フードコンタクト用途に使用するにはより安全な解決法が切望されていた。
【0022】
【課題を解決するための手段】
かかる実状に鑑み鋭意研究した結果、本発明者らは、ジアルキルケトンを用いて被覆した発泡性スチレン系樹脂粒子を、予備発泡及び成形して食品容器とすれば、油脂などの浸透力の強い内容物の浸透を実質的に防止できるという全く予想し得なかった事実を見出し、本発明を完成した。
【0023】
更に、ジアルキルケトンに加えてステアリン酸亜鉛を始めとする脂肪酸金属塩を併用すれば、油脂などの浸透防止効果が更に向上することを見出すことにより、本発明を完成した。
【0024】
かくして、本発明によれば、スチレン系モノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の下記一般式1で示されるジアルキルケトンで粒子表面を被覆してなる食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項1)、
【0025】
【化2】
【0026】
スチレン系モノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の一般式1で示されるジアルキルケトンと、0.2〜0.5重量部の脂肪酸金属塩とで粒子表面を被覆してなる食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項2)、一般式1に示される脂肪族炭化水素基R1、R2の炭素数が、7〜23である請求項1又は2に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項3)、一般式1に示される脂肪族炭化水素基R1、R2の炭素数が17である請求項3に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項4)、ジアルキルケトンが、ジステアリルケトンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項5)、脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛である請求項2〜5のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項6)、
【0027】
ステアリン酸亜鉛が、脂肪酸金属塩の製法のうち直接法により製造されたものである請求項6に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項7)、3〜6重量%の易揮発性発泡剤を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項8)、粒子径が200〜600μmである請求項1〜8のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子(請求項9)、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、成形して得られる食品容器(請求項10)、が提供される。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態をより詳細に説明する。
【0029】
本発明におけるスチレン系樹脂粒子は、一般に知られているスチレン系樹脂の粒状物で、スチレンを主成分とするものであり、スチレンの単独重合体でも、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル、あるいはジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体との共重合体でもよい。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体を併用してもよい。重量平均分子量は一般に発泡ポリスチレンとして使用可能な15万〜40万、好ましくは25万〜35万のものを使用することができる。
【0030】
本発明におけるスチレン系樹脂粒子は、通常の懸濁重合法、もしくは水性懸濁液中に分散したスチレン系樹脂種粒子にスチレン系単量体を添加して該種粒子に含浸させながら重合せしめるいわゆる懸濁シード重合法等によって製造されたものを使用することができる。懸濁シード重合法に用いる樹脂種粒子は、(1)通常の懸濁重合法、(2)重合性単量体を規則的な振動下にノズルを通すことにより液滴群として水性媒体中に分散させ、合着および付加的な分散を生じせしめることなく重合させる方法、などによって得ることができる。
【0031】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子に含まれるスチレン系モノマーの量は1000ppm以下に抑える必要がある。発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡及び成形して即席麺の容器として用いる場合は、食品衛生法の温湯容器規格により容器内に残存するスチレン系モノマーの量が1000ppm以下に規定されているからである。
【0032】
発泡性スチレン系樹脂粒子中のスチレン系モノマー量は、好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下である。500ppm以下であると、臭気が少なくなるので好ましい。発泡性スチレン系樹脂粒子中に含まれる残存スチレン量を1000ppm以下に下げる方法としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5トリメチルシクロヘキサン等のいわゆる高温分解型重合開始剤を0.05部以上使用して、110℃以上の高温下で後重合を行う方法等が用いられる。
【0033】
また、本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の粒子径は、200〜600μmの間にあることが好ましい。200μm未満では易揮発性発泡剤の逸散速度が速過ぎてビーズライフが短くなり、600μmより大きいと一般的な食品容器の肉厚が2mm前後と薄いことから金型への充填性が悪くなる。200〜600μmの粒子を得る方法としては、通常の懸濁重合法で得られた粒子を分級してもよいし、前述の懸濁シード重合法を用いてもよい。懸濁シード重合法を用いる方がより高い収率が得られるため好ましい。
【0034】
本発明において使用される易揮発性発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素などが挙げられるが、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明における易揮発性発泡剤の使用量は、3〜6重量%である。好ましくは3.3〜5重量%、さらに好ましくは3.8〜4.5重量%である。3重量%より少ないと、成形時の融着率が低下する傾向を有するため好ましくなく、6重量%を越えると、成形体の粒子間隙が多くなり表面美麗性を損なう傾向を有する上に、成形サイクルが長くなるため好ましくない。これらの発泡剤は発泡性スチレン系樹脂粒子の重合工程中に添加しても良いし、重合工程終了後に添加してもよい。
【0036】
本発明においては、一般式1で示されるジアルキルケトンが用いられる。
【0037】
【化3】
【0038】
ジアルキルケトンとしては例えば、ジカプリルケトン、ジラウリルケトン、ジミリスチルケトン、ジパルミチルケトン、ジステアリルケトン、ジアラキルケトン、ジベヘニルケトン等が挙げられる。本発明においてはこれらから選ばれる1種もしくは2種以上の混合物が使用できる。一般式1に示される飽和もしくは不飽和炭化水素基R1、R2の炭素数としては7〜23が好ましく、15〜21がさらに好ましく、17(ステアリル基)が特に好ましい。上記したケトンの中でも、ジステアリルケトンを用いるのが好ましい。
【0039】
本発明におけるジアルキルケトンの使用量は、0.01〜0.5重量部で、好ましくは0.05〜0.3重量部、更に好ましくは0.1〜0.25重量部である。0.01重量部より少ないと、油脂を始めとした食品容器内容物の浸透を抑制する効果が小さく、0.5重量部を越えると粒子同士の融着が悪化し成形サイクルが長くなるため好ましくない。ジアルキルケトンを発泡性スチレン系樹脂粒子とともにヘンシェルミキサーなどの混合機内で一定時間混合することにより、発泡性スチレン系樹脂粒子表面にジアルキルケトンを被覆させることができる。
【0040】
本発明においては、ジアルキルケトンに加えて脂肪酸金属塩を併用するのが好ましい。脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウムなどが挙げられるが、これらの内ステアリン酸亜鉛またはステアリン酸マグネシウムを用いるのが好ましい。通常、市販されているステアリン酸亜鉛を構成する脂肪酸は、主成分となるステアリン酸と、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸などとの混合物であり、本発明におけるステアリン酸亜鉛もこのような市販品を使用することができる。
【0041】
また、ステアリン酸亜鉛を始めとする脂肪酸金属塩の代表的な製法として複分解法と直接法が挙げられるが、これらのうち複分解法では反応式1と反応式2で製造されることになる。そして、反応式1に示すように、脂肪酸ナトリウムが中間生成物として生成され、一部の未反応脂肪酸ナトリウムが最終製品である脂肪酸金属塩中に不純物として残留する。ステアリン酸亜鉛を使用するにつき、ステアリン酸亜鉛中に未反応脂肪酸ナトリウムが存在すると、長時間にわたって連続成形を行う場合に金型表面が黒く汚染され、伝熱不良による融着不足や離型不良を引き起こす場合がある。
【0042】
(複分解法における反応の一例)
【0043】
これに対し、直接法では脂肪酸(例えばステアリン酸)と金属酸化物(例えばZnO)もしくは金属水酸化物(例えばZn(OH)2)を直接反応させるため、製造過程において脂肪酸ナトリウムは生成されない。よって、金型汚染を抑制するためには脂肪酸ナトリウムを含有しやすい複分解法の脂肪酸金属塩よりも、脂肪酸ナトリウムを含まない直接法の脂肪酸金属塩を使用するのが好ましい。よって、脂肪酸亜鉛を使用する場合も、直接法のステアリン酸亜鉛を使用するのが最も好ましい。
【0044】
その使用量は0.2〜0.5重量部が好ましく、0.25〜0.45重量部がさらに好ましく、0.3〜0.4重量部が特に好ましい。使用量が0.2重量部を下回ると油脂など食品容器内容物の浸透防止効果が小さくなる傾向を有し、0.5重量部を超えると成形時の融着が不十分となる傾向があるので、上記範囲の添加量が好ましい。
【0045】
本発明で使用する脂肪酸金属塩、その代表例たるステアリン酸亜鉛に関しては、その粒子径は特に限定されることはない。よって、粒子径が10μm以下に90%以上あるステアリン酸亜鉛であっても良く、また、更に大きな粒子径であっても効果を発揮しうるので特に制限されることはない。
【0046】
脂肪酸金属塩を発泡性スチレン系樹脂粒子とともにヘンシェルミキサーなどの混合機内で一定時間混合することにより、発泡性スチレン系樹脂粒子表面に脂肪酸金属塩を被覆させることができる。ジアルキルケトンと脂肪酸金属塩を併用する場合は、両者を混合して被覆させても別々に被覆させても良いが、好ましくは、ジアルキルケトンを被覆させ、次いで脂肪酸金属塩を被覆させるのが良い。
【0047】
さらに、帯電防止剤として一般に使用されるグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの1種または2種以上の併用も可能である。
【0048】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、回転攪拌式予備発泡装置で、水蒸気を用いて加熱することにより、予備発泡粒子を得ることができる。また、得られた予備発泡粒子を所望の形状の金型内に充填し、水蒸気等を用いて加熱することにより発泡成形体とすることができる。
【0049】
本発明の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡及び成形して得られた食品容器は、油脂を始めとした浸透力の強い内容物の浸透を実質的に抑制することが可能であるため、即席麺、カレー、シチュー、マヨネーズ、マーガリン、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、コーヒー等に利用することが可能である。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0051】
(実施例1〜8、比較例1〜3)
攪拌機を具備した5リットル反応器に、純水1.5リットル、第三リン酸カルシウム9.7g、アルファオレフィンスルフォン酸ソーダ0.15g、塩化ナトリウム1.7g、粒子径が0.2〜0.3mmのスチレン系樹脂種粒子427gを入れ、攪拌下に反応器中の分散液を90℃に昇温した。次いで、ベンゾイルパーオキサイド3.6g、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン3.0gをスチレン単量体1280gに溶解した溶液を5時間かけて反応器中に仕込みながら重合した。単量体溶液の仕込みが終了した後、直ちに120℃に昇温して3時間後重合を行った。
【0052】
その後ペンタン77gを系内に仕込み更に3時間120℃で保持した後、冷却した。懸濁液を取り出し脱水・乾燥したところ、粒子径が0.3〜0.5mm、残存スチレンモノマー量が40ppm、発泡剤含有量が4.3重量%、重量平均分子量が30万の発泡性スチレン系樹脂粒子が得られた。更に、連続成形運転による金型汚染度のテストのため、上記5リットル反応器を1500リットルの反応器にスケールアップし、同様の処方により同一の発泡性スチレン系樹脂粒子を得て連続成形に供した。
【0053】
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子1000g(100重量部)をヘンシェルミキサーに入れ、攪拌しながら0.1重量部のポリエチレングリコール(分子量400)、表1に示すジアルキルケトン、脂肪酸金属塩を順次加え、これら添加剤で被覆された発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0054】
これを回転攪拌式予備発泡装置に投入し、約95℃の水蒸気中で嵩密度が98g/Lになるまで約6分間発泡し、予備発泡粒子を得た。
【0055】
得られた予備発泡粒子を室温で約20時間養生乾燥した後、内容積500ml、肉厚2mmのカップ状金型内に充填し、2.6kgf/cm2の水蒸気で5秒加熱し、冷却後金型よりカップ状発泡成形体を得た。
【0056】
このカップ状発泡成形体について、以下のような評価を行った。
(1)融着率:カップ状発泡成形体の側壁を手で割り、破断面に存在する全ての粒子の内、発泡粒子そのものが破断している粒子の割合を百分率で表した。
(2)表面粒子間隙:粒子間隙がほとんどないものを◎、印刷しても色飛びがほとんどなく、実用上問題のないものを○、印刷すると色飛びが認められ使用不可能なものを×とした。
【0057】
(3)界面活性剤溶液浸透試験:花王社製スコアロールコンク700を0.1重量%、エリオクロムブラックTを0.005重量%含む界面活性剤水溶液約400gをカップ状発泡成形体に入れ、カップ外壁面に界面活性剤水溶液が浸透し、水滴が現れ始める時間を測定した。30分以上が合格である。
(4)カレー試験:油脂成分の浸透抑制効果を確認するために、カレールウ200gをカップに入れ、サランラップで包装し、60℃雰囲気下に置いてカップ外壁にカレーが洩れだす時間を測定した。24時間以上が合格である。
【0058】
(5)金型汚染度評価:1500リットル反応器を使用して得られた発泡性スチレン系樹脂粒子約300kgを上記方法で予備発泡し、約1週間連続的に成形を行い、金型表面の汚染状態を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:金型表面に全く変化なし
○:金型表面が薄らと黒ずんでいる。
△:金型表面の約半分が真っ黒に変色している。
×:金型表面が全面的に真っ黒になっている。
カップ状発泡成形体の評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
スチレン系モノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部のジアルキルケトン、更に好ましくは脂肪酸金属塩を0.2〜0.5重量部を併用して粒子表面を被覆した発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡及び成形して得られた食品容器は、強度、印刷性能等が優れると共に、即席麺、カレー、シチュー、マヨネーズ、マーガリン、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、コーヒー等に利用することによって、これら油脂を始めとする油脂分の多い浸透性の高い内容物の容器壁内部更には容器壁外部へ浸透しての漏れを有効に防止することができる。
Claims (10)
- スチレン系モノマーの含有量が1000ppm以下である発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の一般式1で示されるジアルキルケトンと、0.2〜0.5重量部の脂肪酸金属塩とで粒子表面を被覆してなる食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 一般式1に示される脂肪族炭化水素基R1、R2の炭素数が、7〜23である請求項1又は2に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 一般式1に示される脂肪族炭化水素基R1、R2の炭素数が17である請求項3に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子。
- ジアルキルケトンが、ジステアリルケトンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛である請求項2〜5のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子。
- ステアリン酸亜鉛が、脂肪酸金属塩の製法のうち直接法により製造されたものである請求項6に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 3〜6重量%の易揮発性発泡剤を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 粒子径が200〜600μmである請求項1〜8のいずれか1項に記載の食品容器用発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、成形して得られる食品容器。
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- 2003-04-10 JP JP2003106847A patent/JP2004307758A/ja not_active Withdrawn
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