JP2003194963A - 定力装置 - Google Patents

定力装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 真に一定のトルクを時計の調速器に伝達する
ための定力装置を提供することにある。 【解決手段】 本発明による定力装置は、ストップ車ピ
ニオン(12a)に取付けられたストップ車(12)と、ガンギ
車シャフトに取付けられたガンギ車(6)と、引張りリン
グピニオンに取付けられた引張りリングと、ガンギ車シ
ャフト(9)に取付けられたカム(5)と、を有する。ガンギ
車(6)の運動は、第1アンカー(4)のパレットによって阻
止又は解放され、ストップ車(12)の運動は、第2アンカ
ー(11)のパレット(11a,11b)によって阻止又は解放され
る。第2アンカー(11)は、カム(5)と係合するフォーク
形状部分(11c)によって制御される。定力装置は、更
に、駆動エネルギーを供給するゼンマイ(10)の引張り損
失を補償することによって、時計の調速器への一定トル
クの伝達を確保する力バランス機構を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械式時計のガン
ギ車から調速器までの力の均一な伝達による、機械式時
計ムーブメントの正確な調速のための定力装置に関し、
この定力装置は、ツールビヨン機構に組込まれるように
なっている。
【0002】
【従来の技術】定力装置が長い間一般的に知られてお
り、多くの場合、定力装置は、任意の所定の時点におけ
る主ゼンマイの引張りの弱まりによって生じる時計のム
ーブメントの可変駆動を補償する或る量の予備引張りを
有し、或る一定量だけ周期的に予備引張りされる追加の
ゼンマイによって認識されている。時計の調速器の振動
を維持するために、主ゼンマイの引張りを消費している
間、伝達される力は、主ゼンマイだけによって駆動され
る調速器の場合よりもずっと一定であると考えられる。
【0003】Messrs Y. DrozとJ. Floresとによって書
かれた論文「平等のリューズと時計内の定力」は、上に説
明した種類の定力装置を有する時計を論じている。この
場合、一般的にアンカー式脱進機と共に行われるよう
に、第1アンカーによって制御されるガンギ車は、周期
的に解放される。ガンギ車が、ピニオンを介していわゆ
る一定ホイールと噛合い、ルロー(Reuleaux)
カムを介して、追加的に、ストップ車と噛合っている第
2アンカーを制御する。このストップ車と、ほぼ一定の
トルクを調速器に伝達する一定ホイールとは同心であ
り、ストップ車と一定ホイールとの間に、予備引張り螺
旋形スプリング即ちひげゼンマイが配置され、このひげ
ゼンマイは、ストップ車と一定ホイールとの相互の角度
方向移動によって、周期的な予備引張りを受ける。この
引張りは、調速器の振動を維持するためにガンギ車及び
ピニオンを介して及ぼされる第1アンカーの制御の下で
消費され、第2アンカーによって決定される時間に回復
される。しかしながら、ほぼ一定のトルクを伝達するホ
イールに対してストップ車が同心に配置されているの
で、設計と機能の両方に対する困難さを生じさせる。
【0004】スイス特許第 120,028号は、予備引張りさ
れた追加のゼンマイがストップ車とこのストップ車と同
心であるガンギ車との間に見られる定力装置を概略的に
示している。この場合、ガンギ車は、ほぼ一定のトルク
を調速器に再伝達する。本装置は上述の装置と概念的に
相違し、関連したアンカーの構成も異なっているにもか
かわらず、上述の設計と本質的に同じ原理に基づいて、
ほぼ一定のトルクが伝達される。この種類の在来の定力
装置は、もはやムーブメントの慣性によって影響を受け
ない脱進機、適当な設計を使用するときの完全な秒のリ
ズムでムーブメントを鳴らす又は動かす性能、特に、比
較的一定のトルクの伝達等、一定の改善を提供するけれ
ども、種々の不利益がなおも存在する。第1に、これら
の在来の定力装置は、トルクがほぼ一定に伝達されるに
過ぎず、追加のゼンマイの引張りが弱まり、この効果に
対する補正が前記装置に設けられていない範囲におい
て、完全には一定でない不利益を有する。従って、周期
的に再引張りされる追加のゼンマイの在来の使用は、ム
ーブメントの改善された調速を提供するけれども、最適
な調速を提供するわけではない。更に、ストップ車と一
定トルクを伝達するホイールとを同心に配置することに
より、別の困難が生じる。同心でない構成により、スト
ップ車と一定トルクを伝達するホイールとの相対位置の
自由な選択を可能にし、しかも、定力装置がツールビヨ
ン機構に組込まれる場合、いわゆる秒針固定ホイールに
対するストップ車の位置の自由な選択を可能にし、加え
て、この秒針固定ホイールと異なる直径の第2の秒針固
定ホイールとストップ車とが係合していても良い。これ
は、更に、関連したホイール又は車が1つの軸に配置さ
れる必要がないという意味において、装置の設計を簡単
にする。最後に、ムーブメントの正確な調速を目的とす
る他の装置、例えば、ツールビヨン機構との組合わせに
より、実質的に改善された効果を生じさせるのであれ
ば、定力装置の単独の使用は不利である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
の困難に打ち勝つこと、特に、時計の調速器への真に一
定のトルクの伝達、一定トルクを伝達するホイールに対
して同心でないストップ車によって生じる利益、及び、
ツールビヨン機構への組込みによって生じる利益を得る
ことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による定力装置
は、その目的として、特許請求の範囲の請求項1に挙げ
られている特徴によって特徴付けられている。
【0007】上記目的を達成するために、本発明による
定力装置は、ストップ車ピニオンに取付けられたストッ
プ車と、ガンギ車シャフトに取付けられたガンギ車と、
引張りリングピニオンに取付けられた引張りリングと、
ガンギ車シャフトに取付けられたカムと、を有し、ガン
ギ車の運動は、第1アンカーの2つのアンカーパレット
によって阻止されたり解放されたりし、ストップ車の運
動は、第2アンカーの2つのアンカーパレットによって
阻止されたり解放されたりし、第2アンカーは、カムと
係合する第2アンカーのフォーク形状部分によって制御
される定力装置において、この定力装置は、駆動エネル
ギーを供給するゼンマイの引張り損失を補償することに
よって、時計の調速器への一定トルクの伝達を確保する
力バランス機構を有することを特徴としている。
【0008】本発明において、好ましくは、力バランス
機構は、ガンギ車と引張りリングとの間に位置し、引張
りリングは、引張りリングピニオンによってガンギ車シ
ャフトの周りに回転可能に支持され、力バランス機構
は、ひげゼンマイを有する。
【0009】本発明において、好ましくは、力バランス
偏心体が、引張りリングのガンギ車に対向する側におい
て引張りリングピニオンに取付けられ、力バランス偏心
体は、ガンギ車シャフトの軸線に対して平行にずらされ
た回転軸線を有し、力バランス偏心体に回転可能に支持
された力バランスディスクが、少なくとも2つの作用箇
所を有する。
【0010】本発明において、好ましくは、力バランス
機構のひげゼンマイは、その一端が、ガンギ車シャフト
に取付けられ且つ力バランスディスクの方向に突出する
ピンを有する固定コレットに取付けられ、その他端が、
固定コレットの周りに回転可能に支持され且つ力バラン
スディスクの方向に突出するピンを有する可動コレット
に取付けられ、これら2つのピンと力バランスディスク
の作用箇所とは、これらの作用箇所に当てられたピンに
よって作用箇所に及ぼされる力のレバーアーム長さが、
力バランス偏心体を中心に回転する力バランスディスク
の位置の関数として変化するように協働し、しかも、力
バランスディスクによって固定コレットのピンを介して
ガンギ車に伝達されるトルクが引張りリングに対する全
ての位置において一定になるように、ひげゼンマイの引
張り損失による、力バランスディスクの可動コレットの
ピンを介して及ぼされる力の減少が補償されるように協
働する。
【0011】本発明において、好ましくは、ストップ車
は、一定トルクを伝達するガンギ車と同心ではない。
【0012】本発明において、好ましくは、定力装置
は、ツールビヨン機構に組込まれ、このツールビヨン機
構は、ツールビヨンケージと、バランスホイールと、秒
針固定ホイール(14)とを有する。
【0013】本発明において、好ましくは、ガンギ車
は、ツールビヨンケージの縁部に回転可能に取付けら
れ、引張りリングピニオンと秒針固定ホイールとが係合
し、ストップ車は、ツールビヨンケージの縁部に、回転
可能であるがガンギ車に対して同心でなく取付けられ、
ストップ車ピニオンは、秒針固定ホイール又はこの秒針
固定ホイールと同心に取付けられた第2の秒針固定ホイ
ールと係合し、バランスホイールは、定力装置の第1ア
ンカーの運動を制御する。
【0014】本発明において、好ましくは、第2アンカ
ーの回転軸線は、ツールビヨンケージの中心に配置され
る。
【0015】更なる利点は、従属請求項に記載された特
徴及び図面を参照して本発明をより詳細に示す以下の発
明の実施の形態から明らかになろう。
【0016】添付図面は、本発明による定力装置の1つ
の実施形態を例示として示す。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発
明による定力装置の実施形態を例示として詳細に説明す
る。
【0018】図1に示すツールビヨン機構に、本発明に
よる定力装置が組込まれている。ツールビヨン機構は、
ツールビヨンケージ1を有し、その中心にバランスホイ
ール2が回転可能に取付けられている。ツールビヨン機
構は、更に、螺旋形スプリング即ちひげゼンマイ3と、
駆動ギヤ13と、秒針固定ホイール14とを有してお
り、ある場合には、更に、この秒針固定ホイールに対し
て偏心し且つ異なる歯数と異なる直径を有する第2の秒
針固定ホイール(図示せず)を有する。
【0019】秒針固定ホイール14(存在するときに
は、第2の秒針固定ホイール)は、ストップ車12と固
定連結されたストップ車ピニオン12aと噛合い、この
ストップ車ピニオン12aは、ツールビヨンケージの中
心からずらして且つツールビヨンケージ内に回転可能に
取付けられている。図示の実施形態では、このストップ
車12は、定力装置の第2アンカー11のアンカーパレ
ット11a、11bと協働する2つの歯を有しており、
第2アンカー11は、図示の実施形態では、ツールビヨ
ン機構の軸線上で枢動するように取付けられている。ア
ンカー11は、アンカーパレット11a及び11bの反
対側にあるアンカー11のフォーク形状部分11cを介
してルロー(Reuleaux)カム5によって制御さ
れ、このルローカム5は、直線ではなく円弧形をなす側
面を有するユニラテラル(一方的)な三角形の形状を有す
る。ルローカム5のこれらの3つの側面は、伝統的な方
法で、アンカー11の枢動運動を制御するようにアンカ
ー11のフォーク形状部分11cと協働する。
【0020】図2及び図3から、ルローカム5が、定力
装置の更なるユニットの部品であり、ツールビヨンケー
ジ1の中心からずらして取付けられ、特に、ストップ車
12と同心ではないことが分かる。図2及び図3におい
ては平面断面図で示し、図4乃至図6では機能図として
示すこのユニットの軸は、ツールビヨンケージ1内に回
転可能にはめ込まれたガンギ車シャフト9からなり、ガ
ンギ車シャフト9の上側部分に、ルローカム5が固定さ
れ、ルローカムの下にガンギ車6が固定されている。こ
のガンギ車6は、その目的のために普通に形状決めされ
た歯を有し、かくして、ガンギ車の運動を、第1アンカ
ー4によって阻止したり解放したりすることを可能に
し、第1アンカー4は、ツールビヨンケージ1のいちば
ん上にあるかのようにそこに着座し、バランスホイール
2によって制御され、ガンギ車6の歯と交互に噛合う2
つのアンカーパレットを有している。
【0021】ガンギ車シャフト9の下側部分には、引張
りリングピニオン8が、ガンギ車シャフト9の周りに回
転可能に取付けられ、引張りリング7がこのピニオンに
連結されている。引張りリングピニオン8は、スリーブ
26によって支持され、ストップ車ピニオン12aと同
様、秒針固定ホイール14と噛合っており、それによ
り、本発明による定力装置をツールビヨン機構に組込む
とき、引張りリングピニオン8とストップ車ピニオン1
2a位置を可能な範囲内で相対的に構成することができ
る。
【0022】特に図5から分かるように、ガンギ車6と
引張りリング7との間には、定力装置の螺旋形スプリン
グ即ちひげゼンマイ10が位置決めされ、このことは、
特定の力バランス機構によって理解される。この力バラ
ンス機構は、引張りリング7の、ガンギ車6と対向する
側に固定された力バランス偏心体20を有し、この力バ
ランス偏心体20の軸線は、ガンギ車シャフト9の軸線
からも、この軸線と同一の軸線である引張りリングピニ
オン8の回転軸線からも平行にずらされている。力バラ
ンスディスク21が、力バランス偏心体20の周りに回
転可能に支持されており、力バランス偏心体20は、種
々の形状、特に、円形である必要はない形状をなしてい
ても良いことが認識される。力バランスディスク21
は、本実施形態では、作用箇所21a、21bとして役
立つ両側に位置決めされた2つのアームを含み、この力
バランスディスク21は、もちろん、多くの異なる摩擦
的に同一な形状を有していても良い。この力バランスデ
ィスク21の上方に、ガンギ車シャフト9に固定され固
定コレット23が設けられ、固定コレット23は、ひげ
ゼンマイ10の自由端を保持している。ひげゼンマイ1
0の他方の自由端は、可動コレット22に固定されてお
り、この可動コレット22は、固定コレット23を中心
に、かくして、ガンギ車シャフト9の軸線を中心に回転
可能に取付けられている。固定コレット23及び可動コ
レット22は両方とも、各コレットの周縁に位置し且つ
ガンギ車シャフト9の軸線から同じ距離にある孔から力
バランスディスク21の方向に下方に突出するピン2
4、25を有する。これら2つのピン24、25は、力
バランスディスク21の2つのアームによって与えられ
る直線を通り且つ力バランスディスク21に対して垂直
な平面の同じ側にあるように位置決めされ、これらのア
ーム21a、21bと協働する。
【0023】概念的な構成から離れ、図面に示す実施形
態を参照しながら、この種類の装置の機能を例示の仕方
で説明する。バランスホイール2を、予備引張りされた
ひげゼンマイ10によって動かし、第2のひげゼンマイ
3によって戻す。バランスホイール2の5回目の半振動
ごとに、ツールビヨン機構のストップ車12及びツール
ビヨンケージ1を、ルローカム5及び第2アンカー11
を介して解放する。半振動の数は、ガンギ車6の歯数に
よって決定され、もちろん、異なる数を選択しても良
い。次いで、ストップ車12が、その歯数によって決定
される一定角度、本実施形態の場合には、90°にわた
って回転し、第2アンカー11のストップパレットによ
って止められる。ストップ車12及びストップ車ピニオ
ン12aがツールビヨンケージ1の上に着座し、ストッ
プ車ピニオン12aと秒針固定ホイール14(又は第2
の秒針固定ホイール)とが噛合っているので、ストップ
車12の回転は、その回転と同時に、ツールビヨンケー
ジ1の回転を引き起こし、それにより、ツールビヨンケ
ージ1の上に着座し且つ秒針固定ホイール14と係合し
ている引張りリングピニオン8の回転を引き起こす。そ
れにより生じた引張りリング7の回転は、他方、ガンギ
車6が第1アンカー4によって止められた後、ひげゼン
マイ10の再引張りを引き起こす。バランスホイール2
の5回目の半振動ごとに行われるこの一連の動作の繰返
しによって、ひげゼンマイ10を同じ量だけ周期的に引
張る。
【0024】バランスホイール2の振動を維持するため
に、ひげゼンマイ10の引張りによって貯えられたエネ
ルギーを、トルクの形態で再び伝達する。その場合、引
張りは、所望の正確さを認知できる効果を有しているけ
れども、スプリングをもう一度再引張りするまで、かか
る引張りは、僅かに緩められてしまう。従って、正確に
一定のトルクの移送を確保する特定の力バランス機構に
よって、エネルギー伝達を達成する。この目的のため
に、可動コレット22の一端に取付けられ且つ引張られ
ているひげゼンマイ10は、この可動コレット22にあ
るピン25に力を及ぼし、このピン25は、この力を力
バランスディスク21のアームの一方を介して力バラン
スディスク21にトルクとして伝達する。力バランスデ
ィスク21の他方のアームは、固定コレット23にある
ピン24に作用し、かくして、トルクをこの固定コレッ
ト23並びにガンギ車6に伝達する。図6から分かるよ
うに、ガンギ車シャフト9の回転軸線と力バランス偏心
体20の周りに支持されている力バランスディスク21
の回転軸線とが互いに対して平行にずらされている限
り、力バランスディスク21の2つのアームに付与され
るトルク用のレバーアームの長さL1及びL2は可変で
ある。力バランスディスク21の種々の位置におけるレ
バーアームの長さを、そこに付与される力F1及びF2
の関数として適当に選択することによって、バレル又は
香箱とストップ車12との間の輪列全体の停止中、ひげ
ゼンマイ10の引張り損失にもかかわらず、ガンギ車6
の正確な一定トルクを達成することができる。図6に示
す実施形態では、第1レバーアームが位置2まで回転す
るとき、位置1、即ち、この位置における力バランスデ
ィスク21の一方のアームにおけるピン25の作用箇所
における第1レバーアームの長さL1が長さL1’まで
長くされており、第2レバーアームの長さL2、即ち、
力バランスディスク21の他方のアームにおけるピン2
4の作用箇所が長さL2’まで短くされていることを意
味している。これは、比L1’/L2’を増大させるの
に役立ち、ひげゼンマイ10の引張り損失のため、位置
1における力F1の減少を力F1'まで補償する。かく
して、回転中、一定力F2を達成し、その結果、ガンギ
車6に伝達されるトルクも一定になる。この条件を式 F1/F1’=(L1’*L2)/(L1*L2) によって数学的に定式化することができ、かくして、こ
の式は、必要とされるレバーアーム比またはひげゼンマ
イ10の特性を計算することを可能にし、よって、力バ
ランス機構の適当な設計を可能にする。
【0025】バランスホイール2の各半振動中、ガンギ
車6は、第1アンカー4によって解放され、引張りリン
グ7及びストップ車12を阻止している間、引張られた
ひげゼンマイ10の影響の下、固定コレット23及び力
バランスディスク21と同様、第1アンカー4の軸線ま
わりに角度aにわたって回転する。
【0026】加えて、各5回目の半振動の間、ストップ
車12及びツールビヨンケージ1は、解放される。上述
したように、これにより、引張りリング7を所定角度、
本実施例では、60°にわたって回転させ、ガンギ車6
に対する引張りリング7の初期位置を再びとり、特定量
だけひげゼンマイ10の更新された引張りを生じさせ
る。一連の動作全体を周期的に繰り返し、かくして、時
計の調速器として、一定トルクをガンギ車6からバラン
スホイール2に永久的に伝達することを可能にする。
【0027】かかる装置の利点は明白である。第1に、
上述したような装置は、在来の定力装置と対比して、特
定の力バランス機構によって駆動用ひげゼンマイの引張
り損失を補正した一定トルクを時計の調速器に供給す
る。この目的のために導入した力バランス機構は、3つ
の新しい部品だけからなり、かくして、この装置を実質
的に複雑にもせず、特に小さいスペースしか必要とせ
ず、その結果、これらの部品は、ガンギ車シャフトの周
りに容易に配置される。更に、たとえひげゼンマイの予
備引張りが一定範囲内でずれても、トルクを一定のまま
にするように本システムを調整することができる。
【0028】更に、上述したように、一定のトルクを伝
達するホイール、本実施形態においはガンギ車6に対し
てストップ車12を偏心させた構成により、種々の利点
が生じる。定力装置をツールビヨン機構に組込むとき、
ストップ車の位置さえも秒針固定ホイールの周りで自由
に選択しても良いし、秒針固定ホイールのピニオンを介
して異なる直径の第2の秒針固定ホイールと係合しても
良い。かくして、ストップ車の直径及び歯数並びにスト
ップ車ピニオンの歯数を、一定の変化範囲内で自由に選
択することが可能であり、その結果、アンカーパレット
の係合が最適化され、ストップ車の回転速度は、ガンギ
車の回転速度と異なっていても良い。これはまた、ガン
ギ車及びストップ車の一方が他方の上に配置されていな
いので脱進機への接近及び定力装置への接近が簡単化さ
れる等、構造的な利点を生じさせ、定力装置がツールビ
ヨン機構に組込まれる場合、かかる配置及びストップ車
のより低い回転速度によって、ツールビヨンケージの慣
性モーメントを最適化することができる。更に、引張り
リング上に、微調整システムを構築することができる。
引張りリングがいかなる特定の許容差も必要としないと
き、引張りリングとガンギ車シャフトとの間の稼動嵌め
合いが選択され、その結果、実施形態で詳しく説明した
ように、ガンギ車は、ガンギ車シャフトに固定取付けさ
れる。これにより、ガンギ車の最小の稼動隙間を生じさ
せ、この隙間は、かくして、定力装置なしの標準脱進機
の隙間と一致する。ガンギ車及びストップ車が同じ軸を
持たないという事実は、一般的には、概念設計、時計の
製作及び時計の調速を簡単にする。
【0029】上述の実施形態において考慮されている、
本デザインの定力装置をツールビヨン機構に組込むこと
ができる特徴は、ムーブメントの正確な調速のためのこ
れらの2つのシステムの相補的な特性が効率的な仕方で
組み合わされる限り、非常に重要である。かくして、脱
進機は、もはや、歯車の慣性によって影響を受けない。
ストップ車が1秒毎に1回解放されるような設計であれ
ば、ツールビヨン機構は、完全な秒を示すことができ
る。ツールビヨンケージが止められたときに起こり且つ
有害な動的効果を有するツールビヨン機構に共通のビー
トが、ひげゼンマイの引張り及び力バランス機構の導入
によって著しく低減される。かくして、ツールビヨンケ
ージは、突然の停止なしに、前もって減速される。
【0030】最後に、ツールビヨンケージの中心におけ
る第2アンカーの回転軸線の配置もまた有利である。こ
のような構成においては、他の配置と比較して、ツール
ビヨンケージの慣性モーメントに及ぼす第2アンカーの
影響を回避し、システムの動力系が最適化される。
【0031】例示の仕方で示した実施形態は、一定トル
クを伝達するホイールに対するストップホイールの同心
でない位置、回転ジグの中心への第2アンカーの配置、
又は、ツールビヨン機構への組込み等、ここに示した追
加の特徴を省略しても良いし、力バランス機構の詳細な
設計のような機能的に同一の変形がなされても良いとい
う範囲において、限定では決してない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による定力装置を有するツールビヨン機
構の平面図である。
【図2】本発明による定力装置を有するツールビヨン機
構の図1の線A−Aにおける断面図である。
【図3】図1の平面図においてツールビヨンケージを省
略した、定力装置の本質的な構成要素の図である。
【図4】定力装置の主用構成部品の平面図である。
【図5】定力装置に組込まれた力バランス機構を詳細に
示すための、図4の線A−Aにおける定力装置の断面図
である。
【図6】力バランス機構の機能を示す概略図である。
【符号の説明】
1 ツールビヨンケージ 2 バランスホイール 4 第1アンカー 5 カム 6 ガンギ車 7 引張りリング 8 引張りリングピニオン 9 ガンギ車シャフト 10 ひげゼンマイ 11 第2アンカー 11a,11b アンカーパレット 11c フォーク形状部分 12 ストップ車 12a ストップ車ピニオン 14 秒針固定ホイール 20 力バランス偏心体 21 力バランスディスク 21a,21b 作用箇所 22 可動コレット 23 固定コレット 24、25 ピン

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ストップ車ピニオン(12a)に取付けら
    れたストップ車(12)と、ガンギ車シャフト(9)に取付
    けられたガンギ車(6)と、引張りリングピニオン(8)に
    取付けられた引張りリング(7)と、前記ガンギ車シャフ
    ト(9)に取付けられたカム(5)と、を有し、前記ガンギ
    車(6)の運動は、第1アンカー(4)の2つのアンカーパ
    レットによって阻止されたり解放されたりし、ストップ
    車(12)の運動は、第2アンカー(11)の2つのアンカ
    ーパレット(11a,11b)によって阻止されたり解放
    されたりし、前記第2アンカーは、前記カム(5)と係合
    する前記第2アンカーのフォーク形状部分によって制御
    される定力装置において、 この定力装置は、駆動エネルギーを供給するゼンマイ
    (10)の引張り損失を補償することによって、時計の調
    速器への一定トルクの伝達を確保する力バランス機構を
    有することを特徴とする定力装置。
  2. 【請求項2】 前記力バランス機構は、前記ガンギ車
    (6)と前記引張りリング(7)との間に位置し、前記引張
    りリングは、前記引張りリングピニオン(8)によって前
    記ガンギ車シャフト(9)の周りに回転可能に支持され、
    前記力バランス機構は、ひげゼンマイ(10)を有する、
    請求項1に記載の定力装置。
  3. 【請求項3】 力バランス偏心体(20)が、引張りリン
    グ(7)のガンギ車(6)に対向する側において引張りリン
    グピニオン(8)に取付けられ、前記力バランス偏心体
    は、前記ガンギ車シャフト(9)の軸線に対して平行にず
    らされた回転軸線を有し、前記力バランス偏心体に回転
    可能に支持された力バランスディスク(21)が、少なく
    とも2つの作用箇所(21a,21b)を有する、請求項
    2に記載の定力装置。
  4. 【請求項4】 前記力バランス機構のひげゼンマイ(1
    0)は、その一端が、前記ガンギ車シャフト(9)に取付
    けられ且つ前記力バランスディスク(21)の方向に突出
    するピン(24)を有する固定コレット(23)に取付けら
    れ、その他端が、前記固定コレット(23)の周りに回転
    可能に支持され且つ前記力バランスディスク(21)の方
    向に突出するピン(25)を有する可動コレット(22)に
    取付けられ、これら2つのピン(24,25)と前記力バ
    ランスディスク(21)の作用箇所(21a,21b)と
    は、これらの作用箇所に当てられたピン(24,25)に
    よって前記作用箇所に及ぼされる力のレバーアーム長さ
    が、前記力バランス偏心体(20)を中心に回転する力バ
    ランスディスク(21)の位置の関数として変化するよう
    に協働し、しかも、前記力バランスディスク(21)によ
    って前記固定コレット(23)のピン(24)を介して前記
    ガンギ車に伝達されるトルクが引張りリング(7)に対す
    る全ての位置において一定になるように、前記ひげゼン
    マイ(10)の引張り損失による、前記力バランスディス
    ク(21)の可動コレット(22)のピン(25)を介して及
    ぼされる力の減少が補償されるように協働する、請求項
    3に記載の定力装置。
  5. 【請求項5】 前記ストップ車(12)は、一定トルクを
    伝達する前記ガンギ車(6)と同心ではない、請求項1乃
    至4の何れか1項に記載の定力装置。
  6. 【請求項6】 前記定力装置は、ツールビヨン機構に組
    込まれ、このツールビヨン機構は、ツールビヨンケージ
    (1)と、バランスホイール(2)と、秒針固定ホイール
    (14)とを有する、請求項1乃至5の何れか1項に記載
    の定力装置。
  7. 【請求項7】 前記ガンギ車(6)は、前記ツールビヨン
    ケージ(1)の縁部に回転可能に取付けられ、前記引張り
    リングピニオン(8)と前記秒針固定ホイール(14)とが
    係合し、前記ストップ車(12)は、前記ツールビヨンケ
    ージ(1)の縁部に、回転可能であるが前記ガンギ車に対
    して同心でなく取付けられ、前記ストップ車ピニオン
    (12a)は、前記秒針固定ホイール(14)又はこの秒針
    固定ホイールと同心に取付けられた第2の秒針固定ホイ
    ールと係合し、前記バランスホイール(2)は、前記定力
    装置の第1アンカー(4)の運動を制御する、請求項6に
    記載の定力装置。
  8. 【請求項8】 前記第2アンカー(11)の回転軸線は、
    前記ツールビヨンケージ(1)の中心に配置される、請求
    項6又は7に記載の定力装置。
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