JP2016170162A - 動作安定機構、ムーブメントおよび機械式時計 - Google Patents
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Abstract
Description
また、ひげぜんまいも渦巻状に形成されているので、その形状による特性上、時計が立姿勢にあるとき、重力がかかる方向によって立姿勢差を生じる。このように、機械式時計の調速機は、2つの要因によって立姿勢差を生じる。
しかしながら、上記に記載のトゥールビヨン機構は、1つの軸で回転するので、時計が平姿勢にあるときと、立姿勢にあるときとの間に生じる歩度精度の誤差(以下、平立差という)を解消することが困難である。
例えば、調速機および脱進機を、回転軸の異なる複数のキャリッジで回転させることによって、立姿勢差および平立差を同時に抑制できる技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
てんぷは、動力ぜんまいのばね力によって振動するので、動力ぜんまいの巻解けによっててんぷの振り角が低下し、てんぷの振動周期が変動してしまう。このようなてんぷの振動周期の変動は、上記に記載のトゥールビヨン機構を用いたとしても解消することが困難である。このため、歩度精度を高めるためには、調速機に一定のエネルギーを供給することが望ましい。
また、内キャリッジにてんぷが搭載されるので、てんぷに伝達される回転トルクを安定させることができる。この結果、てんぷの振り角の変動を抑制することができる。
(機械式時計)
まず、図1〜図24に基づいて、この発明の第1実施形態を説明する。
図1は、機械式時計1のムーブメント表側の平面図、図2は、機械式時計1の概略断面図である。
図1、図2に示すように、機械式時計1は、ムーブメント10と、このムーブメント10を収納する不図示のケーシングと、により構成されている。
地板11には、巻真案内穴11aが形成されており、ここに巻真12が回転自在に組み込まれている。この巻真12は、おしどり13、かんぬき14、かんぬきばね15および裏押さえ16を有する切換装置により、軸方向の位置が決められている。また、巻真12の案内軸部には、きち車17が回転自在に設けられている。
このような構成のもと、二番車25が回転すると、この二番車25に軽圧入された筒かな27が同時に回転し、この筒かな27に取り付けられた分針29aが「分」を表示する。また、筒かな27の回転に基づいて不図示の日の裏車の回転を介して筒車28が回転し、この筒車28に取り付けられた時針29bが「時」を表示する。
図3は、定力装置付トゥールビヨン30の斜視図である。
図2、図3に示すように、定力装置付トゥールビヨン30は、上述した表輪列の回転を制御する機構である。また、定力装置付トゥールビヨン30は、後述のてんぷ101の向きによる重力の影響を低減する、いわゆるトゥールビヨン機構を有している。また、定力装置付トゥールビヨン30は、後述のがんぎ車124に伝えられる回転トルクの変動を抑制するため定力装置3を備えている。
定力装置付トゥールビヨン30は、地板11の表側に取付けられた表側キャリッジ受23と、地板11の裏側に取付けられた裏側キャリッジ受24と、に回転可能に支持されている。定力装置付トゥールビヨン30は、表側キャリッジ受23の地板11側に固定されている固定車31と、表側キャリッジ受23と裏側キャリッジ受24とに回転可能に支持されている外キャリッジ32と、この外キャリッジ32の内側に、外キャリッジ32に対して回転自在に支持されている内キャリッジ33と、を備えている。
図4は、外キャリッジ32を、一方からみた斜視図、図5は、外キャリッジ32を、他方からみた斜視図、図6は、図4のA矢視図、図7は、図5のB矢視図である。
図4〜図7に示すように、外キャリッジ32は、この外キャリッジ32の外枠を構成する外フレーム34を有している。外フレーム34は、裏側に配置された円板状の裏ベース部35と、表側に配置された円板状の表ベース部36と、を備えている。
なお、以下の外キャリッジ32の説明では、各ベース部35,36の径方向を単に径方向と称し、各ベース部35,36の周方向を単に周方向と称して説明する。
一方、表ベース部36は、表側キャリッジ受23に形成されている凹部23aを介して固定車31よりも表側に位置している。そして、表ベース部36の表側には、外キャリッジかな37が設けられ、この外キャリッジかな37が三番車26の歯車部26cに噛合されている。
裏ベース部35と表ベース部36との間には、これら裏ベース部35と表ベース部36とに跨るように4つの縦フレーム39が一体成形されている。縦フレーム39は、各ベース部35,36から湾曲しながら径方向外側に向かって延びる一対の湾曲部39aと、これら湾曲部39aから径方向外側に向かって延びる一対の径方向延出部39bと、これら径方向延出部39bの先端同士を連結する軸方向延出部39cと、が一体成形されたものである。
また、4つの縦フレーム39は、2つずつが回転軸線L1を中心に点対称となるように配置されている。換言すれば、4つの縦フレーム39は、周方向の間隔が広い広間隔部K1と、これら広間隔部K1と比較して周方向の間隔が狭い狭間隔部K2とが2つずつ形成されるように、かつ広間隔部K1と狭間隔部K2とが交互に形成されるように配置されている。
軸受座44の径方向中央には、内キャリッジ33を回転自在に支持するための穴石45が設けられている。穴石45の中心軸L2は、外キャリッジ32の回転軸線L1と直交、つまり、外キャリッジ32の径方向に沿っている。
玉軸受52は、その中心軸L3が内キャリッジ軸受部42に設けられた穴石45の中心軸L2と同軸上となるように配置されている。また、玉軸受52には、回転プレート53が回転自在に支持されている。回転プレート53は、略円板状のプレート本体53aと、プレート本体53aの径方向中央から突出する支軸53bと、が一体成形されたものである。この支軸53bが、玉軸受52に回転自在に支持されている。
定力ばね59は、外キャリッジ32に対して内キャリッジ33に回転力を付与するためのものであって、渦巻状に形成されている。定力ばね59の内端部は、ひげ玉152を介して内キャリッジ33に固定されている。
ストップ車軸受部61は、円板状の軸受座63と、軸受座63の径方向中心を挟んで両側から横フレーム41の延在方向に沿って延出する一対の脚部64と、が一体成形されたものである。軸受座63の径方向中央には、穴石65が設けられている。
そして、横フレーム41とストップ車軸受部61との間にストップ車駆動車68およびストップ車69が配置され、これらストップ車駆動車68およびストップ車69が2つの穴石65,67によって回転自在に支持されている。このように、ストップ車駆動車68およびストップ車69の回転軸線L4は、定力ばね巻き上げ車54の回転軸線(玉軸受52の中心軸L3)に対して直交、つまり外キャリッジ32の径方向に沿っている。
ここで、ストップ車駆動車68のピッチ円直径は、定力ばね巻き上げ車54のピッチ円直径と同一に設定されている。また、ストップ車駆動車68の歯部68aの歯数は、定力ばね巻き上げ車54の歯部54aの歯数と同一に設定されている。
同図に示すように、ストップ車駆動車68と定力ばね巻き上げ車54は、それぞれの回転軸線(L4,L3)が直交した状態で固定車31に噛合されている。また、ストップ車駆動車68と定力ばね巻き上げ車54は、それぞれ外フレーム34に取り付けられているので、外フレーム34が回転軸線L1回りに回転すると、同時に、かつ同回転速度で回転する。つまり、ストップ車駆動車68の歯数と定力ばね巻き上げ車54の歯数は、それぞれ同一数に設定されている。
このような構成のもと、ストップ車69には、ストッパ73が係合、解除される。
図9、図10に示すように、ストッパ73は、裏側からみた平面視で略L字状のストッパアンクル74を有している。より具体的には、ストッパアンクル74は、ストップ車駆動車68側に配置されたストッパアンクル体75と、定力ばね巻き上げ車54側に配置されたフォーク部76と、これらストッパアンクル体75とフォーク部76とを連結する連結部77と、が一体成形されたものである。
また、アーム部76bの基端には貫通孔76cが形成されており、この貫通孔76cにストッパアンクル真79が圧入されている。ストッパアンクル真79の両端には、それぞれほぞ部79aが一体成形されている。
軸受部80は、横フレーム41に一体成形され、横フレーム41の延在方向と直交する方向に沿って延在する台座部81と、この台座部81にねじ82を介して締結固定される支持部83と、を備えている。
台座部81の横フレーム41との交差部には、穴石84が設けられている。この穴石84に、ストッパアンクル真79の一端に一体成形されたほぞ部79aが回転自在に支持される。また、台座部81の長手方向両端側には、それぞれ支持部83を締結固定するためのねじ82が螺入可能な雌ねじ部85が設けられている。
フランジ部83bには、ねじ82を挿入可能な不図示の挿入孔が形成されており、この挿入孔にねじ82が挿入され、さらに台座部81の雌ねじ部85にねじ82が螺入されることにより、台座部81に支持部83が締結固定される。
このように、ストッパアンクル真79は、その軸線L5が定力ばね巻き上げ車54の回転軸線(玉軸受52の中心軸L3)に対して平行で、かつストップ車駆動車68およびストップ車69の回転軸線L4に対して直交するように配置されている。
このような構成のもと、外キャリッジ32の回転軸線L1上に、外キャリッジ32の重心が位置している。
図11は、内キャリッジ33を、一方からみた斜視図、図12は、内キャリッジ33を、他方からみた斜視図、図13は、図11のC矢視図、図14は、図11のD矢視図である。
図11〜図14に示すように、内キャリッジ33は、この内キャリッジ33の内枠を構成する内フレーム90を有している。内フレーム90は、ベースプレート91を有している。
三角カム151は、一回転でストッパアンクル74を3往復揺動させるように形成されている。ひげ玉152には、定力ばね59の内端部が接合されている。すなわち、内キャリッジ33は、外キャリッジ32に対して回転自在に支持されていると共に、定力ばね59を介して外キャリッジ32に連結されている。
図12、図15に示すように、位相規制プレート153は円板状に形成されたものであって、その外径は、定力ばね59の無負荷時の外径よりも若干大きく設定されている。外キャリッジ32に内キャリッジ33を取り付けた状態では、位相規制プレート153は、定力ばね巻き上げ車54と内キャリッジ33の回転軸線L6方向で対向している。
このように構成された内フレーム90では、ベースプレート91の耐震軸受93とブリッジプレート155の耐震軸受158とによって、てんぷ101が回転自在に支持されている。
てんぷ101は、各耐震軸受93,158に回転自在に支持されるてん真103と、てん真103に取り付けられたてん輪104と、ひげぜんまい105と、を備え、ひげぜんまい105から伝えられた動力によって、一定の振動周期で正逆回転するようになっている。
てん真103は、軸方向略中央から軸方向両端に向かうに従って段差により漸次縮径するように形成された軸体である。てん真103の両端には、それぞれ不図示のほぞ部が軸方向外側に向かって突出形成されている。各ほぞ部が、それぞれ耐震軸受93,158に回転自在に支持されている。
なお、回転軸線L7は、内キャリッジ33と共に回転するので、回転軸線L7と回転軸線L1とが交差するということは、当然に回転軸線L7と回転軸線L1とが同一直線上になることも含まれている。
一方、ひげぜんまい105の外端部には、ひげ持109が取り付けられている。ひげ持109は、ブリッジプレート155に設けられているひげ持受110に固定されている。そして、ひげぜんまい105は、後述の脱進機構120から振り座106に伝えられた動力を蓄え、この動力をてん真103およびてん輪104に伝える役割を果たしている。
図16は、内キャリッジ33の一部を取り外した状態の斜視図である。
図11〜図13、図16に示すように、ベースプレート91には、脱進機構120が取り付けられている。
脱進機構120は、ベースプレート91に取付けられた脱進機構押え121と、この脱進機構押え121とベースプレート91とによって回転自在に支持されているがんぎ車124、およびアンクル125と、を備えている。
ベース部121aには、ベースプレート91の短手方向両側に、それぞれねじ座121bが一体成形されている。これらねじ座121bには、それぞれねじ122が挿入されている。各ねじ122は、ベースプレート91に設けられた雌ねじ部123に螺入されることによって、ベースプレート91にベース部121aを締結固定している。
軸受プレート121dは、各嵩上げ部121cからてん真103を迂回しながら第1ピラーブロック94側に向かって延出している。このため、てん真103の軸方向から脱進機構押え121をみると、この脱進機構押え121に、てん真103および振り座106を挿入可能な開口部121eが形成された状態になっている。また、軸受プレート121dは、各嵩上げ部121c上に一体成形されているので、ベースプレート91と所定の間隔をあけて対向した状態になっている。
ベースプレート91の第1穴石に対応する位置には、軸支持部127が設けられている。軸支持部127は、がんぎ車124の軸体131を支持するためのものであって、ベースプレート91に固定された略円環状のフランジ部127aを有している。フランジ部127aは、中央の開口部が軸受プレート121dの第1穴石と同軸上に位置するように配置されている。
がんぎ車124は、軸体131と、軸体131に外嵌固定されているがんぎ歯車部132と、を備えている。軸体131は、そのほとんどが軸支持部127に収納されている。そして、軸体131の脱進機構押え121側の端部は、軸支持部127のフランジ部127aを介して脱進機構押え121の軸受プレート121dに至るまで突出している。また、軸体131の軸方向両端には、それぞれほぞ部131aが一体成形されている。これらほぞ部131aが脱進機構押え121の第1穴石、および軸支持部127の穴石128に回転自在に支持されている。
ここで、外キャリッジ32に内キャリッジ33を取り付けた状態では、がんぎ駆動用固定車47内に、内フレーム90の第1ピラーブロック94側が挿通された状態になる。また、軸支持部127の壁部127bは、ベースプレート91から外キャリッジ32に設けられているがんぎ駆動用固定車47の径方向外側に至るまで延出されている。このため、がんぎ駆動用固定車47の歯部47aに、がんぎかな部131bが噛合される。
また、リム部134の外周縁には、特殊な鉤型状に形成された複数(この実施形態では20個)の歯部136が径方向外側に向けて突出形成されている。これら歯部136の先端に、アンクル125のつめ石140a,140bが係合、解除される。
アンクル真137は軸体であり、脱進機構押え121の第2穴石125aとベースプレート91の穴石129とによって回転自在に支持されている。
アンクル体138は、2つのアンクルビーム138a,138bが接続されて成る。アンクル体138は、2つのアンクルビーム138a,138bの接続部138cに、アンクル真137を挿通可能な挿通孔138dが形成されている。そして、2つのアンクルビーム138a,138bは、接続部138cからそれぞれ反対側に向かって延出している。また、2つのアンクルビーム138a,138bのうち、一方のアンクルビーム138bは、てん真103に設けられた振り座106に向かって延出している。
つめ石140a,140bは、略四角柱状に形成されたルビーであって、各アンクルビーム138a,138bの先端からがんぎ歯車部132の歯部136に向かって突出している。
また、一方のアンクルビーム138bの先端には、クワガタ141と、クワガタ141の間に配置された剣先142と、が設けられている。そして、クワガタ141の内側に、てんぷ101の振り石107が係脱されるアンクルハコ143が形成される。
ベースプレート91には、アンクルさお139の先端に対応する位置でアンクルさお139の短手方向両側に、それぞれドテピン144a,144bが立設されている。これらドテピン144a,144bによって、アンクル体138およびアンクルさお139の回動範囲が規制される。
このような構成のもと、内キャリッジ33の回転軸線L6上に、内キャリッジ33の重心が位置している。
次に、定力装置付トゥールビヨン30の動作について説明する。
まず、図11、図12、図16に基づいて、内キャリッジ33に搭載されているてんぷ101および脱進機構120の動作について説明する。
てんぷ101は、振り石107を介してがんぎ車124の回転力を受け、この回転力とひげぜんまい105のばね力とにより自由振動する。てんぷ101が自由振動することにより、振り石107と係脱可能になっているアンクルハコ143が、アンクル体138と共に、アンクル真137を中心にして左右に揺動する。
ここで、アンクル125は、アンクル体138に一体成形されているアンクルさお139を備えており、このアンクルさお139が、ドテピン144a,144bによって、回動範囲が規制されている。このため、外部からの衝撃等を受けてアンクル125が所定範囲以上に揺動してしまうことを防止できる。
図17〜図22は、外キャリッジ32および内キャリッジ33の動作説明図であって、各タクトの外キャリッジ32および内キャリッジ33の状態を示している。図23、図24は、ストップ車69とストッパアンクル74との噛合状態、およびストッパアンクル74の挙動を示し、それぞれの(a)は、ストップ車69を軸方向からみた図であり、(b)は、ストップ車69を径方向からみた図である。
すると、外フレーム34に設けられ、かつ固定車31の歯部31aに噛合されているストップ車駆動車68が回転しようとすると共に(図17における矢印Y2参照)、定力ばね巻き上げ車54が回転しようとする(図17における矢印Y3参照)。なお、外フレーム34は、2分(120秒)で1回転するように構成されている。
このため、「秒」を表示する構成としては、例えば、がんぎ駆動用固定車47の外周面のうちの裏側に秒針に相当するものを設けると共に、内フレーム90の秒針に対応する位置に、メモリが刻設された円板を設ける構成が挙げられる。このような構成のもと、秒針は停止したままであるが、内フレーム90の回転に伴いメモリが回転移動するので、「秒」を表示することができる。
なお、内フレーム90が1分間に1回転することにより、二番車25が1時間に1回転する。
三角カム151は、一回転でストッパアンクル74を3往復揺動させるように形成されているので、ストッパアンクル74は、1分間に3往復揺動することになる。これにより、ストップ車69の鉤部72とストッパアンクル74の爪石78a,78bは、それぞれ係合、解除を繰り返す。
まず、図17の状態から20秒経過すると、定力装置付トゥールビヨン30は、図18に示すような状態になる。さらに、20秒経過すると(図17の状態から40秒経過すると)、定力装置付トゥールビヨン30は、図19に示すような状態になる。
さらに、20秒経過すると(図17の状態から60秒経過すると)、定力装置付トゥールビヨン30は、図20に示すような状態になる。
さらに、てんぷ101は、その重心が外キャリッジ32の回転軸線L1上、および内キャリッジ33の回転軸線L6上に位置している。このため、各キャリッジ32,33が回転することによる遠心力を、てんぷ101に作用しにくくすることができる。このため、てんぷ101の動作を安定させることができる。
このため、ストップ車69の鉤部72とストッパアンクル74の爪石78a,78bとの噛合力によって、ストッパアンクル74に、ストッパアンクル真79回りの回転力が作用してしまうことを防止できる。この結果、内キャリッジ33に、三角カム151を介して余計な回転力が作用することがない。よって、内キャリッジ33を回転させるために必要な回転トルクを最小限に抑えることができる。
なお、上述の第1実施形態では、外キャリッジ32の回転軸線L1と内キャリッジ33の回転軸線L6とが直交するように構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、外キャリッジ32の回転軸線L1と内キャリッジ33の回転軸線L6とが交差するように構成されていればよい。
例えば、三角カム151の形状を変更したり、別途増幅器等を設けたりすることにより、外フレーム34を、60秒で一回転させるように構成することも可能である。外フレーム34を、60秒で一回転させるように構成した場合、外フレーム34に設けた秒針と、不図示の文字板とにより、「秒」を表示することも可能である。
同図に示すように、ストッパアンクル74のフォーク本体76aには、2つの先端のそれぞれにバランサー76dが一体成形されている。バランサー76dは、ストッパアンクル74と同一の材料で形成された錘である。バランサー76dは、先端に向かうに従って互いに対向する向きとは反対側に傾斜延出されている。さらに、バランサー76dは、先端に向かうに従って先細りとなるように形成されている。
(定力装置付トゥールビヨン)
次に、図26、図27に基づいて、この発明の第2実施形態を説明する。
図26は、第2実施形態における定力装置付トゥールビヨン230を、一方からみた斜視図、図27は、第2実施形態における定力装置付トゥールビヨン230を、他方からみた斜視図である。
この第2実施形態において、定力装置付トゥールビヨン230は、機械式時計1に組み込まれ、表輪列の回転を制御する機構である点は、上述の第1実施形態と同様である(以下の実施形態についても同様)。
ここで、第2実施形態の内キャリッジ233では、内キャリッジ233の回転軸線L26と、てんぷ101の回転軸線L7とが同一直線上に設定されている。この点、前述の第1実施形態と大きく異なる。
ここで、固定車231の歯部231aとアイドラ車205は、それぞれの回転軸線が直交している。このため、固定車231とアイドラ車205とを、それぞれかさ歯車状に形成してもよい。この場合、アイドラ車205と、このアイドラ車205と一体となって回転し、定力ばね巻き上げ車254に噛合う外歯車を設ける必要がある。
なお、上述の第2実施形態では、外キャリッジ232の回転軸線L21と内キャリッジ233の回転軸線L26とが直交するように構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、外キャリッジ232の回転軸線L21と内キャリッジ233の回転軸線L26とが交差するように構成されていればよい。
また、上述の第2実施形態では、内キャリッジ233の回転軸線L26と、てんぷ101の回転軸線L7とが同一直線上に設定されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、内キャリッジ233と回転軸線L26と、てんぷ101の回転軸線L7とが平行であればよい。
図28、図29に示すように、内キャリッジ233には、この内キャリッジ233を外キャリッジ232に対して回転自在に支持する回転体261を有している。
つまり、ほぞ部261bの軸心が、内キャリッジ233の回転軸線L26となり、この回転軸線L26に対し、てんぷ101の回転軸線L7が傾いた状態になる。ベース部261aも、面方向が回転軸線L26に対して傾いた状態で配置される。
つまり、軸部262bの軸心が、内キャリッジ233の回転軸線L26となり、この回転軸線L26に対し、てんぷ101の回転軸線L7が傾いた状態になる。ベース部262aも、面方向が回転軸線L26に対して傾いた状態で配置される。
このため、上述の第2実施形態の変形例のように、内キャリッジ233の回転軸線L26に対し、てんぷ101の回転軸線L7を傾かせることにより、てんぷ101の向く方向を拡大することができる。この分、立姿勢差および平立差を同時に抑制できる。
(定力装置付トゥールビヨン)
次に、図30〜図32に基づいて、この発明の第3実施形態を説明する。
図30は、第3実施形態における定力装置付トゥールビヨン330を、一方からみた斜視図、図31は、第3実施形態における定力装置付トゥールビヨン330を、他方からみた斜視図、図32は、第3実施形態におけるストップ車369とストッパ373の位置関係を示す斜視図である。
また、ストッパ373のストッパアンクル374は、ストップ車369と係合、解除可能なストッパアンクル体375と、内キャリッジ33に設けられている三角カム(この第3実施形態では不図示)と係合するフォーク部376と、がそれぞれ別体で構成されている。
ストッパアンクル体375は、ストップ車369の回転軸線L4方向からみて略C字状に形成されている。より具体的には、ストッパアンクル体375は、ストッパアンクル真379からストップ車369の周方向に沿って地板11(図1、図2参照)の表裏方向に向かってそれぞれ延び、全体として約半円分延在している。ストッパアンクル体375の2つの先端部には、それぞれストップ車369の鉤部72と係合、解除可能な爪部378a,378bが一体成形されている。
この結果、内キャリッジ33に、三角カム151を介して余計な回転力が作用することがない。よって、内キャリッジ33を回転させるために必要な回転トルクを最小限に抑えることができる。
さらに、ストッパ373(ストッパアンクル374)も小型化できると共に、ストッパアンクル374をL字状に形成する必要がなくなるので、ストッパアンクル374の剛性を高めることができる。
なお、上述の第3実施形態では、ストップ車369は、外フレーム334における径方向で軸受ホルダ51よりも内側に配置され、その回転軸線が軸受ホルダ51(玉軸受52)の軸線と同一直線上となるように配置されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ストップ車369の回転軸線L4と、ストッパアンクル374の揺動軸線(ストッパアンクル真379の軸線L5)とが、略平行になるように設けられていればよい。
同図に示すように、ストッパアンクル374のフォーク部376には、ストッパアンクル真379を挟んで反対側に、バランサー380が一体成形されている。バランサー380は、フォーク部376と同一材料で形成された錘であって、フォーク部376のアーム部376b、およびストッパアンクル真379の軸線L5と直交する方向に沿って延出形成されている。また、バランサー380は、ストッパアンクル真379を挟んで両側にそれぞれ配置された2つの錘本体380aを有している。これら錘本体380aは、ストッパアンクル真379の軸線L5方向からみて1/4円状に形成されている。
また、フォーク部376に代えて、ストッパアンクル374のストッパアンクル体375にバランサー380を設けてもよい。すなわち、バランサー380によって、ストッパアンクル374全体として、重心がストッパアンクル真79の軸線L5上に位置するように構成されていればよい。
(定力装置付トゥールビヨン)
次に、図34、図35に基づいて、この発明の第4実施形態を説明する。
図34は、第4実施形態における定力装置付トゥールビヨン430を一方からみた斜視図、図35は、第4実施形態における定力装置付トゥールビヨン430を他方からみた斜視図である。なお、第4実施形態において、前述の第2実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する。
図34、図35に示すように、第4実施形態における定力装置付トゥールビヨン430は、前述の第2実施形態における定力装置付トゥールビヨン230に、さらに第3キャリッジ404を追加した構成になっている。
すなわち、第3フレーム406は、裏ベース部35、表ベース部36、これら裏ベース部35と表ベース部36とに跨るように設けられた縦フレーム39、および横フレーム41を主構成としている。裏ベース部35には、ほぞ部35aが設けられている。一方、表ベース部36には、第3キャリッジかな437と、この第3キャリッジかな437から突出するほぞ部437aが設けられている。
しかしながら、この第4実施形態のように、前述の第2実施形態の2つのキャリッジ232,233に加えてさらに第3キャリッジ404を設け、この第3キャリッジ404の回転軸線L8と、外キャリッジ232の回転軸線L21とを直交させるように構成することにより、てんぷ101をあらゆる全ての方向に向かせることができる。
例えば、上述の第1〜第4実施形態(各実施形態の変形例も含む)の構成を、任意に組み合わせてもよい。
しかしながら、これらに限られるものではなく、4つ以上のキャリッジで構成してもよい。この場合であっても、少なくとも隣り合う2つのキャリッジの間に、定力ばね59を設けると共に、少なくとも2つのキャリッジの回転軸線が交差していればよい。
3…定力装置
10…ムーブメント
22…香箱車(輪列)
25…二番車(輪列)
26…三番車(輪列)
30,230,330,430…定力装置付トゥールビヨン(動作安定機構)
31…固定車
32,232,332…外キャリッジ
33,233…内キャリッジ
54,254…定力ばね巻き上げ車
56…係合ピン
59…定力ばね
68…ストップ車駆動車
69,369…ストップ車
73,373…ストッパ
74,374…ストッパアンクル(アーム)
76d,380…バランサー
78a,78b…爪石(爪部)
101…てんぷ
120…脱進機構(脱進調速機構)
124…がんぎ車
153…位相規制プレート(規制板)
378a,378b…爪部
404…第3キャリッジ(キャリッジ)
F1,F31…荷重のベクトル(噛合力のベクトル)
L1,L6,L7,L8,L21,L26…回転軸線
L5…軸線(揺動軸線)
Claims (17)
- 多重に配置され、互いに回転可能に設けられた複数のキャリッジと、
前記複数のキャリッジのうち、隣り合う2つの前記キャリッジの間に設けられ、該2つのキャリッジのうちの一方の前記キャリッジに対し、他方の前記キャリッジが回転するように、前記他方のキャリッジに回転力を付与する定力ばねと、
前記一方のキャリッジに設けられるストップ車と、
前記他方のキャリッジの回転を受け、前記ストップ車に対して係合、解除動作を行うストッパと、
を備え、
前記複数のキャリッジのうち、少なくとも2つの前記キャリッジのそれぞれの回転軸線が交差していることを特徴とする動作安定機構。 - 前記一方のキャリッジに、前記ストッパおよび脱進調速機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動作安定機構。
- 前記キャリッジを2つ備え、
外側に配置された外キャリッジに輪列の駆動力が伝達されるように構成されていると共に、前記外キャリッジに前記ストップ車が設けられ、
内側に配置された内キャリッジに、前記ストッパおよび前記脱進調速機構が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の動作安定機構。 - 前記脱進調速機構は、
前記内キャリッジの回転に伴って、該内キャリッジ上で回転するがんぎ車と、
前記がんぎ車の回転に伴って、前記内キャリッジ上で回転振動するてんぷと、
を備え、
前記てんぷの回転軸線と前記外キャリッジの回転軸線とが交差するように、前記てんぷが配置されていることを特徴とする請求項3に記載の動作安定機構。 - 前記内キャリッジの回転軸線と、前記てんぷの回転軸線とが交差していることを特徴とする請求項4に記載の動作安定機構。
- 前記内キャリッジの回転軸線、および前記外キャリッジの回転軸線の少なくとも何れか一方の回転軸線上に、前記てんぷの重心が位置していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の動作安定機構。
- 前記内キャリッジの回転軸線上に、前記内キャリッジの重心が位置していることを特徴とする請求項3〜請求項6の何れか1項に記載の動作安定機構。
- 前記外キャリッジの回転軸線上に、前記外キャリッジの重心が位置していることを特徴とする請求項3〜請求項7の何れか1項に記載の動作安定機構。
- 前記ストッパは、
前記外キャリッジに対して揺動可能に設けられ、前記内キャリッジの回転を受けて揺動するアームと、
前記アームに設けられ、前記ストップ車と係脱可能な爪部と、
を備え、
前記アームの揺動軸線は、前記ストップ車の回転軸線に対して交差する方向に設定されており、
前記ストップ車と前記爪部とが係合した際に生じる噛合力のベクトルが、前記アームの揺動軸線の方向に沿うように設定されていることを特徴とする請求項3〜請求項8の何れか1項に記載の動作安定機構。 - 前記ストッパは、
前記外キャリッジに対して揺動可能に設けられ、前記内キャリッジの回転を受けて揺動するアームと、
前記アームに設けられ、前記ストップ車と係脱可能な爪部と、
を備え、
前記アームの揺動軸線は、前記ストップ車の回転軸線の方向に沿うように設定されており、
前記ストップ車と前記爪部とが係合した際に生じる噛合力のベクトルが、前記アームの揺動軸線上を通るように設定されていることを特徴とする請求項3〜請求項8の何れか1項に記載の動作安定機構。 - 前記アームは、バランサーを備え、
前記アームの揺動軸線上に、前記アームの重心が位置していることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の動作安定機構。 - 前記定力ばねによって連結されている2つの前記キャリッジの相対回転量を規制する規制部を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項11の何れか1項に記載の動作安定機構。
- 前記定力ばねによって連結されている2つの前記キャリッジのうち、外側の前記キャリッジに、前記定力ばねを巻き上げるための定力ばね巻き上げ車を設け、
該定力ばね巻き上げ車に規制板を設ける一方、
前記定力ばねによって連結されている2つの前記キャリッジのうち、内側の前記キャリッジに、前記規制板に係合可能な係合ピンを設け、
前記規制板および前記係合ピンを、前記規制部として構成したことを特徴とする請求項12に記載の動作安定機構。 - 前記複数のキャリッジは、各々の回転周期が互いに割り切れない数に設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項13の何れか1項に記載の動作安定機構。
- 前記複数のキャリッジとは別に設けられた固定車と、
前記ストップ車に一体的に固定されていると共に、前記固定車に噛合されているストップ車駆動車と、
を備え、
前記固定車の歯数と、前記ストップ車駆動車の歯数は、互いに割り切れない数に設定されていることを特徴とする請求項14に記載の動作安定機構。 - 請求項1〜請求項15の何れか1項に記載の動作安定機構を備えたことを特徴とするムーブメント。
- 請求項16に記載のムーブメントを備えたことを特徴とする機械式時計。
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