JP2018151252A - 脱進機、時計用ムーブメント及び時計 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、この脱進機は機械式時計の主流を占めているクラブトゥース・レバー脱進機とは異なり、衝撃時にがんぎ車の歯先のすべりが少なくなるように設計されている。これにより、がんぎ車の歯先の摩耗を抑制することができ、耐久性を高めている。また、てんぷに対して直接的な衝撃を行う場合には、他の時計部品を介在せずにがんぎ車からてんぷに対して衝撃を伝達することができる。これにより、高効率化を図っている。
そこで、外部からの衝撃によるてんぷのほぞの変形或いは破断等を防止するために、てんぷの軸受には耐振軸受が採用されている場合が多い。耐振軸受は、てんぷに衝撃が加わったときに、てんぷが軸方向及び径方向に移動することを許容した状態で、てんぷを軸支している。これにより耐振軸受は、てんぷのほぞに加わる衝撃を吸収或いは緩和させ、耐衝撃性を確保している。
特に、がんぎ車がてんぷに先行して回転した場合、がんぎ車とアンクルとの相互の位相関係によってはアンクルの停止爪石でがんぎ車の回転を停止することができない場合があり、時計が急激に進むといった歩度の急な変化を引き起こす可能性もあった。
その直後、第1アンクルの回動に伴って第2アンクルが回動し、第2衝撃爪ががんぎ車の歯先の回転軌跡上に進入する。これにより、回転を開始したがんぎ車の歯先が第2衝撃爪に接触(衝突)する。これにより、がんぎ車に伝わった動力を、第2アンクル及び第1アンクルを介しててんぷに間接的に伝えることができ、てんぷに回転エネルギーを補充することができる。
その後、てんぷは慣性によって回転し続け、振り石が第1アンクルから離れる。そして、てんぷの回転エネルギーがひげぜんまいに全て蓄えられると、てんぷは一瞬静止した後に、ひげぜんまいに蓄えられた回転エネルギーによって逆方向に回転しはじめる。
その直後、第1アンクルの回動に伴って第2アンクルが逆方向に回動すると共に、第1衝撃爪石ががんぎ車の歯先の回転軌跡上に進入する。これにより、回転を開始したがんぎ車の歯先が第1衝撃爪石に接触(衝突)する。これにより、先ほどと同様に、がんぎ車に伝わった動力を、第1アンクルを介しててんぷに間接的に伝えることができ、てんぷに回転エネルギーを補充することができる。
そのため、例えばてんぷが自由振動している最中に、何らかの外乱が入力された場合には、第1アンクルと第2アンクルとの係合部分における遊びによって、第2アンクルが振動するおそれがあった。そして、この第2アンクルの意図しない振動によって、脱進機の作動が不安定になり易かった。
このように、がんぎ車に伝わった動力を間接的にてんぷに伝えることができると共に、てんぷに対応した一定の振動でがんぎ車の回転を制御することができる。
(6)本発明に係る時計は、上記時計用ムーブメントと、前記脱進機及び前記調速機により調速された回転速度で回転する指針と、を備えている。
以下、本発明に係る第1実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、時計の一例として機械式時計を例に挙げて説明する。また、各図面において、各部品を視認可能な大きさとするために、必要に応じて各部品の縮尺を適宜変更している。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。
時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側(すなわち、文字板のある方の側)をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側(すなわち、文字板と反対の側)をムーブメントの「表側」と称する。
なお、本実施形態では、文字板からケース裏蓋に向かう方向を上方、その反対側を下方と定義して説明する。
地板11の表側には、表輪列(本発明に係る輪列)12と、表輪列12の回転を制御する脱進機13と、脱進機13を調速する調速機14と、を備えている。
てんぷ30は、てん真31、てん輪32及び図示しないひげぜんまいを備え、地板11と図示しないてんぷ受との間に軸支されている。てんぷ30は、ひげぜんまいを動力源として、回転軸線O1回りに、香箱車20の出力トルクに応じた定常振幅(振り角)で往復回転(正逆回転)する。
なお、図示の例では、回転軸線O1を中心として90度の間隔をあけて4つのアーム部33が配置されたてん輪32としているが、アーム部33の数、配置や形状はこの場合に限定されるものではなく、自由に変更して構わない。
振り座35は、大つば36、及び大つば36よりも下方(地板11側)に位置する小つば37を有している。大つば36には、ルビー等の人工宝石から形成された振り石38が例えば圧入固定されている。
振り石38は、平面視で半円形状に形成され、大つば36から下方に向けて延びるように形成されている。振り石38は、てんぷ30に伴って回転軸線O1回りに往復回転し、その途中で後述するアンクルハコ74に対して離脱可能に係合する。
なお、図3以外の各図面では、図面を見易くするために、振り座35のうち小つば37及び振り石38を主に図示している。
図4に示すように、脱進機13は、上述した振り座35と、ぜんまいから伝達される動力によって回転するがんぎ車40と、アンクルチェーン50と、第1衝撃爪石(本発明に係る衝撃爪石)60及び第2衝撃爪石(本発明に係る衝撃爪石)61と、第1停止爪石(本発明に係る停止爪石)62及び第2停止爪石(本発明に係る停止爪石)63と、第1停止爪石62及び第2停止爪石63と後述するがんぎ歯車42との係合時に、アンクルチェーン50全体の変位を規制する規制レバー(本発明に係る規制部)85と、を備えている。
なお、振り座35は、上述したようにてんぷ30及び調速機14を構成する構成部品であると共に、脱進機13を構成する構成部品とされている。
図示の例では、がんぎ歯43の歯数は8歯とされている。ただし、この場合に限定されるものではなく、がんぎ歯43の歯数は適宜変更して構わない。例えば6歯、10歯、12歯のがんぎ歯43を有するがんぎ歯車42としても構わない。
なお、図4において回転軸線O2を中心として時計回りに回転する方向を第1回転方向M1、その反対方向を第2回転方向M2と称している。さらに、がんぎ車40の回転に伴ってがんぎ歯43の歯先が描く回転軌跡Rを、単にがんぎ車40の回転軌跡Rという。
ただし、がんぎ車40の材料や製造方法は、上述した場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。また、がんぎ車40の性能や剛性等に影響を与えない範囲で、がんぎ車40に肉抜き孔や薄肉部を適宜設けて軽量化を図っても構わない。図示の例では、がんぎ車40に肉抜き孔を複数形成している。
具体的には、アンクルチェーン50は、第1衝撃アンクル51及び第2衝撃アンクル52を有する衝撃アンクルユニット53と、停止アンクル55を有する停止アンクルユニット56と、を備えている。衝撃アンクルユニット53と停止アンクルユニット56とは互いに相対変位可能に連結されている。
つまり、第1衝撃アンクル51と第2衝撃アンクル52とが相対変位可能に互いに連結され、第1衝撃アンクル51と停止アンクル55とが相対変位可能に互いに連結されている。これにより、停止アンクル55、第1衝撃アンクル51及び第2衝撃アンクル52は、一列状に繋がるように互いに連結されている。
第1停止爪石62及び第2停止爪石63は、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aに対して係脱可能とされ、がんぎ車40の停止及びその解除を行うための爪石とされている。第1停止爪石62及び第2停止爪石63は、ともに停止アンクル55に取り付けられている。
図4〜図6に示すように、第1衝撃アンクル51は、平面視でがんぎ車40とてん真31との間に配置され、回動軸であるアンクル真70、アンクル体71及びアンクルアーム72を備えている。そして、第1衝撃アンクル51は、てんぷ30の往復回転に基づいて回動軸線O3回りに回動する。
なお、がんぎ車40と同様に、アンクル体71及びアンクルアーム72に肉抜き孔や薄肉部を適宜設けて軽量化を図っても構わない。図示の例では、アンクル体71及びアンクルアーム72に肉抜き孔を複数形成している。
剣先75は、アンクル体71の先端部に対して下方から例えば圧入等によって固定されている。剣先75は、平面視で一対のクワガタ73間に位置(すなわちアンクルハコ74の内側に位置)すると共に、クワガタ73よりもてん真31側に突出するように延びている。剣先75の先端部は、振り石38がアンクルハコ74から離脱している状態において、小つば37の外周面のうちツキガタ39を除いた部分に対して若干の隙間をあけて径方向に対向し、且つ振り石38がアンクルハコ74に係合している状態において、ツキガタ39内に収容される。
第1衝撃爪石60は、第1爪石保持部76よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。第1衝撃爪石60の突出部分のうち、第2回転方向M2側を向いた側面は、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aが接触する第1衝撃面60aとされている。
具体的には、第1衝撃アンクル51は、てんぷ30の往復回転に伴って移動する振り石38によって、てんぷ30の回転方向とは反対の方向に向けて回動軸線O3回りに回動する。このとき、第1衝撃爪石60は、第1衝撃アンクル51の回動によってがんぎ車40の回転軌跡Rに対する進入と退避とを繰り返す。これにより、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aを、第1衝撃爪石60の第1衝撃面60aに対して接触(衝突)させることが可能となる。
第2衝撃アンクル52は、平面視で第1衝撃アンクル51よりも第2回転方向M2側に配置され、回動軸であるアンクル真80及びアンクル体81を備えている。そして、第2衝撃アンクル52は、第1衝撃アンクル51の回転に基づいて、第1衝撃アンクル51の回動方向とは反対の方向に向けて回動軸線O4回りに回動する。
これにより、第1衝撃アンクル51及び第2衝撃アンクル52は、相対変位可能に互いに連結され、互いに反対方向に向けて回動する。
第2衝撃爪石61は、第2爪石保持部83よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。第2衝撃爪石61の突出した部分のうち、第2回転方向M2側を向いた側面は、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aが接触する第2衝撃面61aとされている。
なお、本実施形態では第1衝撃アンクル51と第2衝撃アンクル52とは、回動方向が反対となるように連結されているが、これに限定されず、第1衝撃アンクル51と第2衝撃アンクル52とが同方向に回動するよう連結されていてもよい。
停止アンクル55は、平面視で第1衝撃アンクル51よりも第1回転方向M1側に配置され、回動軸であるアンクル真90及びアンクル体91を備えている。そして、停止アンクル55は、第1衝撃アンクル51の回転に基づいて、第1衝撃アンクル51の回動方向とは反対の方向に向けて回動軸線O5回りに回動する。
従って、第1衝撃アンクル51、第2衝撃アンクル52、停止アンクル55及びがんぎ車40の高さ関係としては、がんぎ車40が最も地板11に近い最下層に位置し、その上方に第1衝撃アンクル51のアンクル体71及び停止アンクル55のアンクル体91が位置し、さらにその上方に第2衝撃アンクル52のアンクル体81が位置する関係となる。
第1停止爪石62は、第3爪石保持部93よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。第1停止爪石62の突出した部分のうち、第2回転方向M2側を向いた側面は、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aが係合する第1係合面62aとされている。なお、第1停止爪石62は、いわゆる入爪石として機能する。
第2停止爪石63は、第4爪石保持部94よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。第2停止爪石63の突出した部分のうち、第2回転方向M2側を向いた側面は、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aが係合する第2係合面63aとされている。なお、第2停止爪石63は、いわゆる出爪石として機能する。
これにより、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aを、第1停止爪石62の第1係合面62a、或いは第2停止爪石63の第2係合面63aに対して係合させることが可能となる。
規制レバー85は、第1停止爪石62及び第2停止爪石63ががんぎ車40のがんぎ歯車42と係合したときに、第2衝撃アンクル52を位置決めしてアンクルチェーン50全体の変位を規制する。
具体的には、規制レバー85は、アンクル体81の周端部81bから、がんぎ車40から離間する方向に向けて突出するように形成されている。規制レバー85は、該規制レバー85を挟んだ両側に配置されたドテピン(本発明に係る被規制部)86、87に対して接触することで、第2衝撃アンクル52の回動を規制して位置決めすることが可能とされている。
規制レバー85は、第1停止爪石62ががんぎ車40のがんぎ歯車42と係合したときに、第2回転方向M2側に位置するドテピン86に接触して、第2衝撃アンクル52を位置決めする。また、規制レバー85は、第2停止爪石63ががんぎ車40のがんぎ歯車42と係合したときに、第1回転方向M1側に位置するドテピン87に接触して、第2衝撃アンクル52を位置決めする。
次に、上述のように構成された脱進機13の動作について説明する。
なお、以下の説明における動作開始状態では、図4に示すように、がんぎ歯43の作用面43aが第1停止爪石62の第1係合面62aに係合していると共に、規制レバー85が一方のドテピン86に対して接触して第2衝撃アンクル52が位置決めされている。これにより、がんぎ車40は回転が停止している。さらに、てんぷ30の自由振動によって振り石38が時計回りに移動し、アンクルハコ74の内側に進入している。
なお、アンクルハコ74と振り石38との係合時、小つば37と剣先75とは互いに接触することがないので、てんぷ30からの動力を第1衝撃アンクル51に効率よく伝えることができる。
すなわち、第1衝撃アンクル51が回動軸線O3を中心として反時計回りに回動し、第2衝撃アンクル52が回動軸線O4を中心として時計回りに回動し、停止アンクル55が回動軸線O5を中心として時計回りに回動する。
そして、図8に示すように、第1停止爪石62ががんぎ車40の回転軌跡Rから僅かに外れた位置まで移動することで、第1停止爪石62をがんぎ歯43から離脱させて、がんぎ歯43との係合を解除することができる。これにより、がんぎ車40の停止の解除を行うことができる。
このように、がんぎ車40を瞬間的に後退させることで、表輪列12の噛み合いをより確実にすることができ、安定且つ高い信頼性で表輪列12を作動させることができる。
ただし、がんぎ車40は第1停止爪石62によって上述のように瞬間的に後退して、第2回転方向M2に回転しているので、この段階ではがんぎ歯43と第1停止爪石62とが接触することがない。
このように、がんぎ車40に伝わった動力を、第1衝撃アンクル51を介しててんぷ30に間接的に伝えることで、てんぷ30に回転エネルギーを補充することができる。
そして、図10に示すように、第1衝撃爪石60ががんぎ車40の回転軌跡Rから僅かに外れた位置まで移動することで、上述したてんぷ30への間接的な衝撃が終了する。
そして、第1衝撃爪石60ががんぎ車40の回転軌跡Rから外れた位置まで移動した直後に、図11に示すように、がんぎ車40の回転軌跡Rに進入していた第2停止爪石63の第2係合面63aに対してがんぎ歯43の作用面43aが接触する。
これにより、図13に示すように、振り石38は、てんぷ30の反時計回りの回転に伴って第1衝撃アンクル51に向けて接近するように移動を開始する。
ただし、がんぎ車40は第2停止爪石63によって上述のように瞬間的に後退して、第2回転方向M2に回転しているので、この段階ではがんぎ歯43と第2停止爪石63とが接触することがない。
このように、がんぎ車40に伝わった動力を、第2衝撃アンクル52及び第1衝撃アンクル51を介しててんぷ30に間接的に伝えることで、てんぷ30に回転エネルギーを補充することができる。
そして、図17に示すように、第2衝撃爪石61ががんぎ車40の回転軌跡Rから僅かに外れた位置まで移動することで、上述したてんぷ30への間接的な衝撃が終了する。
このとき、規制レバー85は、第2衝撃アンクル52の反時計回りの回動に伴って一方のドテピン86に向かって移動しているが、この段階では一方のドテピン86に対して非接触とされている。
従って、いわゆる間接衝撃型の脱進機13として動作させることができ、てんぷ30に対して直接的に動力を伝達する場合に比べて、安定した動作および動力の伝達を確保することができる。
特に、がんぎ歯43に対する第1停止爪石62及び第2停止爪石63の係合と、規制レバー85による第2衝撃アンクル52の回動規制とを、アンクルチェーン50の両側で行うことができる。そのため、第1停止爪石62及び第2停止爪石63が取り付けられた停止アンクル55から、アンクルチェーン50の連結端に位置する第2衝撃アンクル52に至るまでの複数のアンクル(本実施形態の場合には、第1衝撃アンクル51、第2衝撃アンクル52及び停止アンクル55の3つのアンクル)の回動を全て規制することができ、結果的にアンクルチェーン50全体の変位を規制することができる。
図20は、がんぎ車40の回転中心(すなわち回転軸線O2)と、停止アンクル55の回動中心(すなわち回動軸線O5)と、がんぎ車40の退却角と、の関係を示す。
なお、図20では、がんぎ車40の図示を省略しているが、がんぎ歯43の歯先が描く回転軌跡Rについては図示している。よって、回転軌跡Rはがんぎ車40の外径に対応する。
これらのいずれの場合であっても、第1停止爪石62は、がんぎ歯43が係合する係合位置X1と、がんぎ車40の回転軌跡Rから外れた位置に移動して、がんぎ歯43との係合が解除される解除位置X2と、の間を停止アンクル55の回動に伴って移動する。
図20に示すように、停止アンクル55の回動中心ががんぎ車40の回転軌跡Rに対して距離L2だけ離れている状態と、停止アンクル55の回動中心ががんぎ車40の回転軌跡Rに対して距離L1だけ離れている状態と、で停止アンクル55を同じ作動角α2だけそれぞれ回動させた場合には、距離L2よりも距離L1のときの方が退却角α3を小さくすることができる。すなわち、停止アンクル55の回動中心が回転軌跡Rに近い場合の方が退却角α3を小さくすることができる。
また、停止アンクル55の作動角を最適な角度に設計すること等も可能となり、動力の伝達効率をより向上させ易い。
図21は、がんぎ車40のがんぎ歯43と第1衝撃爪石60とが接触している場合の関係を示す図である。なお、図21では、がんぎ歯43の歯先と第1衝撃爪石60とが線接触に近い状態で接触するものとして説明する。
がんぎ歯43と第1衝撃爪石60との接触によって、がんぎ車40から第1衝撃爪石60に効率良く動力を伝達する際、例えば歯部同士の噛み合いにおけるピッチ点と同様に、がんぎ歯43と第1衝撃爪石60とのピッチ点P0で動力を伝達することが好ましい。
この場合、がんぎ車40の回転中心とピッチ点P0との間の距離L3と、第1衝撃アンクル51の回動中心とピッチ点P0との間の距離L4との比率が、がんぎ車40の作動角α4と第1衝撃アンクル51の作動角α5との比率に対して略逆比となる。つまり、(L3/L4)≒(α5/α4)をほぼ満たす関係となる。
従って、本実施形態によれば、衝撃に最適なレイアウトで第1衝撃アンクル51及び第2衝撃アンクル52をそれぞれ配置することが可能であるので、いずれの衝撃アンクルであっても、がんぎ車40に伝わった動力をてんぷ30に対して効率良く伝えることができる。また、第1衝撃アンクル51及び第2衝撃アンクル52の作動角を最適な角度に設計すること等も可能となり、動力の伝達効率をより向上させ易い。
また、衝撃及び停止に最適化した設計が可能となり、動力の伝達効率に優れ、作動誤差の少ない脱進機とすることができる。
また、がんぎ歯43の作用面43aに対して、第1衝撃爪石60及び第2衝撃爪石61が接触し、第1停止爪石62及び第2停止爪石63が係合するので、がんぎ車40を単層構造にしておくことができる。従って、がんぎ車40の慣性が大きくなることを抑制することができ、これによっても動力の伝達効率を向上することができる。
次に、本発明に係る第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態では、停止アンクルユニットが1つのアンクルで構成されていたが、第2実施形態では、停止アンクルユニットが2つのアンクルで構成されている。
従って、本実施形態のアンクルチェーン105は、4つのアンクル、すなわち第1衝撃アンクル51、第2衝撃アンクル52、第1停止アンクル102及び第2停止アンクル103で構成されている。
アンクル体111の中央部分には、がんぎ車40側に向けて開口した第3爪石保持部93が設けられている。第3爪石保持部93は、この開口を利用して第1停止爪石62を保持している。
すなわち、第2衝撃アンクル52のうち、第2衝撃爪石61が取り付けられている周端部81bには複数の歯部125が設けられている。これに対応して、第2停止アンクル103のうち、第1回転方向M1側に位置する周端部121bには、第2衝撃アンクル52側の歯部125に噛み合う歯部126が形成されている。
これにより、第2衝撃アンクル52及び第2停止アンクル103は、相対変位可能に互いに連結され、互いに反対方向に向けて回動する。
従って、上記外側面121cは、アンクルチェーン105の連結端に位置する第2停止アンクル103に設けられ、がんぎ歯43と第1停止爪石62との係合時に、第2停止アンクル103を位置決めしてアンクルチェーン105全体の変位を規制する規制部として機能する。
なお、外側面121cが設けられた第2停止アンクル103は、がんぎ歯43と第1停止爪石62との係合時において、がんぎ歯43に対して係合中の第1停止爪石62が設けられた第1停止アンクル102とは異なるアンクルに相当する。よって、第1停止爪石62は、外側面121cが設けられたアンクル(第2停止アンクル103)に対して、アンクルチェーン105の反対側に位置するアンクル(第1停止アンクル102)に取り付けられている。
なお、外側面111cが設けられた第1停止アンクル102は、がんぎ歯43と第2停止爪石63との係合時において、がんぎ歯43に対して係合中の第2停止爪石63が設けられた第2停止アンクル103とは、異なるアンクルに相当する。よって、第2停止爪石63は、外側面111cが設けられたアンクル(第1停止アンクル102)に対して、アンクルチェーン105の反対側に位置するアンクル(第2停止アンクル103)に取り付けられている。
上述のように構成された本実施形態の脱進機100であっても、第1実施形態と同様に、がんぎ歯43と第1停止爪石62及び第2停止爪石63との係脱を交互に繰り返し行うことができると共に、がんぎ歯43と第1衝撃爪石60及び第2衝撃爪石61との接触を利用したてんぷ30への間接的な動力の伝達を行うことができる。
つまり、がんぎ歯43に対する第1停止爪石62の係合と、ドテピン86と第2停止アンクル103の外側面121cとの接触による第2停止アンクル103の回動規制とを、アンクルチェーン105の両側で行うことができる。同様に、がんぎ歯43に対する第2停止爪石63の係合と、ドテピン87と第1停止アンクル102の外側面111cとの接触による第1停止アンクル102の回動規制とを、アンクルチェーン105の両側で行うことができる。これらのことにより、アンクルチェーン105全体の変位を規制することができる。
次に、本発明に係る第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態では、第1衝撃アンクル51がてんぷ30の振り石38に追従するように回動したが、第3実施形態では、第2衝撃アンクル52がてんぷ30の振り石38に追従して回動するように構成されている。
このように構成されている本実施形態の脱進機130の場合であっても、てんぷ30の振り石38によって第2衝撃アンクル52が最初に回動する点が第1実施形態と異なるだけで、各アンクルを第1実施形態と同様に回動させることができる。
つまり、本実施形態の脱進機130であっても、がんぎ歯43と第1停止爪石62及び第2停止爪石63との係脱を交互に繰り返し行うことができると共に、がんぎ歯43と第1衝撃爪石60及び第2衝撃爪石61との接触を利用したてんぷ30への間接的な動力の伝達を行うことができる。さらに、てんぷ30が自由振動しているときに、規制レバー85を利用してアンクルチェーン50全体の変位を規制することができるので、てんぷ30の自由振動中に何らかの外乱が入力されたとしても、アンクルチェーン50ががたつく、或いは振動してしまうことを抑制することができる。従って、脱進機130を安定して作動させることができる。
従って、例えば本実施形態の脱進機130をトゥールビヨンに適用する場合には、脱進機130を含む機構が搭載されるキャリッジユニットの小型化に貢献できる。従って、トゥールビヨンに特に適した脱進機130とすることができる。
次に、本発明に係る第4実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態では、第1衝撃アンクル51がてんぷ30の振り石38に追従するように回動したが、第4実施形態では、停止アンクル55がてんぷ30の振り石38に追従して回動するように構成されている。
これにより、第1衝撃アンクル51の係合プレート77と、停止アンクル55の係合フォーク92とは、一対の弾性部141の外周面が係合フォーク92の内面に対して押し付けられた状態で互いに連結されている。
これにより、第2衝撃アンクル52の係合ピン82と、第1衝撃アンクル51の係合フォーク78とは、係合フォーク78の内面が係合ピン82の外周面に対して押し付けられた状態で互いに連結されている。
このように構成されている本実施形態の脱進機140であっても、てんぷ30の振り石38によって停止アンクル55が最初に回動する点が第1実施形態と異なるだけで、各アンクルを第1実施形態と同様に回動させることができる。
つまり、本実施形態の脱進機140であっても、がんぎ歯43と第1停止爪石62及び第2停止爪石63との係脱を交互に繰り返し行うことができると共に、がんぎ歯43と第1衝撃爪石60及び第2衝撃爪石61との接触を利用したてんぷ30への間接的な動力の伝達を行うことができる。さらに、てんぷ30が自由振動しているときに、規制レバー85を利用してアンクルチェーン50全体の変位を規制することができるので、てんぷ30の自由振動中に何らかの外乱が入力されたとしても、アンクルチェーン50ががたつく、或いは振動してしまうことを抑制することができる。従って、脱進機140を安定して作動させることができる。
同様に、第2衝撃アンクル52の係合ピン82と第1衝撃アンクル51の係合フォーク78とが、係合フォーク78の内面が係合ピン82の外周面に対して押し付けられた状態で互いに連結されているので、係合ピン82と係合フォーク78との間に隙間が生じることを抑制することができる。これにより、第2衝撃アンクル52と第1衝撃アンクル51とをがたつき少なく互いに連結させることができる。
次に、本発明に係る第5実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第5実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態では、てんぷ30に対して間接的に動力の伝達を行う、いわゆる間接衝撃型の脱進機としたが、第5実施形態では、てんぷ30に対する直接的な動力伝達と間接的な動力伝達とを併用する、いわゆる半直接衝撃型の脱進機として構成されている。
衝撃アンクル151は、回動軸であるアンクル真160及びアンクル体161を備え、てんぷ30の往復回転に基づいて回動軸線O8回りに回動する。
なお、剣先75は、振り石38よりも下方に位置し、且つがんぎ車40よりも上方に位置するように固定されている。
なお、第1衝撃爪石60は、がんぎ歯車42と同等の高さ位置に達する程度、アンクル体161よりも下方に向けて延びた状態で保持されている。そのため、第1衝撃爪石60はがんぎ歯43に対して接触(衝突)可能とされている。
この位置決め孔165については、後に詳細に説明する。
具体的には、衝撃アンクル151は、てんぷ30の往復回転に伴って移動する振り石38によって、てんぷ30の回転方向とは反対の方向に向けて回動軸線O8回りに回動する。このとき、第1衝撃爪石60は、衝撃アンクル151の回動によってがんぎ歯車42の回転軌跡Rに対する進入と退避とを繰り返す。これにより、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aを、第1衝撃爪石60の第1衝撃面60aに対して接触(衝突)させることが可能となる。
図27及び図29に示すように、第2衝撃爪石61は、振り座35における小つば37に取り付けられている。具体的には、第2衝撃爪石61は、小つば37に形成された第2爪石保持部170によって保持されている。第2爪石保持部170は、図27においてツキガタ39よりも回転軸線O1の時計回り方向に所定の位相分ずれた位置に形成され、がんぎ車40側に向けて開口している。第2衝撃爪石61は、この開口を利用して第2爪石保持部170に保持されている。そして、第2衝撃爪石61は、小つば37の外周面よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。なお、第2衝撃爪石61の突出部分のうち、回転軸線O1の時計回り方向側を向いた側面が、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面が接触する第2衝撃面61aとされている。
また、第2衝撃爪石61は、小つば37に取り付けられる場合に限定されるものではなく、例えば大つば36或いはてん輪32に取り付けられても良い。第2衝撃爪石61の取付位置としては、例えばがんぎ歯車42との相対的な位置関係に応じて変更して構わない。いずれにしても、第2衝撃爪石61はてんぷ30に取り付けられていれば良い。
図27及び図28に示すように、本実施形態の停止アンクル153は、第1実施形態と同様の構成とされ、アンクル真90及びアンクル体91を備えている。そして、本実施形態の停止アンクル153は、平面視で衝撃アンクル151よりも第1回転方向M1側に配置され、衝撃アンクル151の回転に基づいて、衝撃アンクル151の回動方向とは反対の方向に向けて回動軸線O9回りに回動する。
従って、衝撃アンクル151、停止アンクル153及びがんぎ車40の高さ関係としては、がんぎ車40が最も地板11に近い最下層に位置し、その上方に衝撃アンクル151のアンクル体161及び停止アンクル153のアンクル体91が位置する関係となる。
位置決め孔165は、連結片163を厚さ方向に貫通すると共に、衝撃アンクル151の回動方向(すなわち回動軸線O8回りを周回する方向)に沿って延びた平面視円弧状に形成されている。回動軸線O8の周方向に沿った位置決め孔165の長さ(周長)は、第1停止爪石62とがんぎ歯車42のがんぎ歯43とが係合した状態と、第2停止爪石63とがんぎ歯車42のがんぎ歯43とが係合した状態と、の間で衝撃アンクル151が回動する回動角度(作動角)に対応している。
また、図28に示すように、第2停止爪石63とがんぎ歯43とが係合した場合には、位置決め孔165の内周面のうちアンクル体161側に位置する第2内周面165bとドテピン164とが接触する。これにより、衝撃アンクル151はドテピン164によって位置決めされる。
上述のように構成された本実施形態の脱進機150によれば、第1実施形態と同様に、がんぎ歯43と第1停止爪石62及び第2停止爪石63との係脱を交互に繰り返し行うことができる。さらに、がんぎ歯43と第1衝撃爪石60及び第2衝撃爪石61との接触を利用したてんぷ30への間接的な動力の伝達を行うことができる。
つまり、第1衝撃爪石60を利用した間接的な動力伝達と、第2衝撃爪石61を利用した間接的な動力伝達と、を交互に行いながら(切換えながら)、がんぎ車40に伝わった動力をてんぷ30に伝えることができる。
従って、直接衝撃及び間接衝撃を併用した、いわゆる半直接衝撃型の脱進機150として動作させることができ、安定した動作および動力の伝達を確保することができる。特に、半直接衝撃型の脱進機150の場合、第2衝撃爪石61を介しててんぷ30に直接的に動力を伝えることができるので、間接衝撃型に比べて動力の伝達効率を高めることができ、好ましい。
いずれの場合であっても、衝撃アンクル151は、アンクルチェーン155の連結端に相当するアンクルであるので、がんぎ歯43が第1停止爪石62或いは第2停止爪石63に係合して、がんぎ車40の回転が停止しているときに、アンクルチェーン155全体の変位を規制することができる。
特に第1実施形態とは異なり、ドテピン164が1つだけで良いうえ、衝撃アンクル151の平面スペース内にドテピン164を配置できるので、第1実施形態において一対のドテピン86、87が占有していたスペースを省略或いは有効利用することができる。
次に、本発明に係る第6実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第6実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態では、衝撃爪石及び停止爪石を異なるアンクルに取り付けたが、第6実施形態では、第1衝撃爪石60、第1停止爪石62及び第2停止爪石63を共通のアンクルに取り付けた脱進機として構成されている。さらに、第1実施形態では、がんぎ車40が単層構造とされていたが、第6実施形態では、がんぎ車40が二層構造とされている。
なお、がんぎ車40の回転に伴って第1がんぎ歯46の歯先が描く回転軌跡R1を、単に第1がんぎ歯車45の回転軌跡R1という。
ただし、第2がんぎ歯48の歯数は、第1がんぎ歯46の歯数と同数であれば良く、8歯に限定されるものではない。よって、第1がんぎ歯46の歯数を例えば6歯、10歯、12歯とした場合には、これに対応して第2がんぎ歯48の歯数を変更すれば良い。
作動アンクル181は、回動軸であるアンクル真190及びアンクル体191を備え、てんぷ30の往復回転に基づいて回動軸線O10回りに回動する。
アンクル真190は、回動軸線O10と同軸に配置され、地板11と図示しない輪列受との間に軸支されている。アンクル真190は、アンクル体191に対して、例えば下方から圧入され、一体に固定されている。
アンクル体191は、例えば電鋳加工やMEMS技術によって板状に形成されている。図示の例では、アンクル体191はがんぎ車40の周方向に沿って延びるように平面視円弧状に形成されている。なお、アンクル体191に肉抜き孔や薄肉部を適宜設けて軽量化を図っても構わない。
第1停止爪石62は、第3爪石保持部93よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。第1停止爪石62は、第1がんぎ歯車45と同等の高さ位置に達する程度、アンクル体191よりも下方に向けて延びている。そのため、第1停止爪石62は、第1がんぎ歯46に係脱可能とされている。
また、第1停止爪石62の突出した部分のうち、第1回転方向M1側を向いた側面が第1係合面62aとされ、第1がんぎ歯46の第1作用面46aが係合可能とされている。
第2停止爪石63は、第4爪石保持部94よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。第2停止爪石63は、第1停止爪石62と同様に、第1がんぎ歯車45と同等の高さ位置に達する程度、アンクル体191よりも下方に向けて延びている。そのため、第2停止爪石63は、第1がんぎ歯46に係脱可能とされている。
また、第2停止爪石63の突出した部分のうち、第1回転方向M1側を向いた側面が第2係合面63aとされ、第1がんぎ歯46の第1作用面46aが係合可能とされている。
第1衝撃爪石60は、第1爪石保持部76よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。第1衝撃爪石60の突出部分のうち、第1回転方向M1側を向いた側面は、第2がんぎ歯48の第2作用面48aが接触する第1衝撃面60aとされている。なお、第1衝撃爪石60は、第1がんぎ歯車45に対しては非接触とされている。
ただし、この場合に限定されるものではなく、例えば第1爪石保持部76を第1がんぎ歯車45よりも径方向の外側に配置し、第1爪石保持部76からの第1衝撃爪石60の突出量を大きくして、第1衝撃爪石60だけを第1がんぎ歯46の上方に位置させても構わない。
さらに、アンクル体191の周端部191bには、第2回転方向M2側に向けて突出すると共に、回動軸線O10の周方向に分岐した二股状の係合フォーク193が一体に形成されている。
具体的には、作動アンクル181は、てんぷ30の往復回転に伴って移動する振り石38によって、てんぷ30の回転方向とは反対の方向に向けて回動軸線O10回りに回動する。このとき、第1停止爪石62及び第2停止爪石63は、作動アンクル181の回動によって第1がんぎ歯車45の回転軌跡R1に対する進入と退避とを交互に繰り返す。
これにより、第1がんぎ歯車45における第1がんぎ歯46の第1作用面46aを、第1停止爪石62の第1係合面62a、或いは第2停止爪石63の第2係合面63aに対して係合させることが可能となる。
なお、第1衝撃爪石60は、第1停止爪石62及び第2停止爪石63の非係合時に、第2がんぎ歯48に対して接触する。
衝撃アンクル183は、平面視で作動アンクル181よりも第2回転方向M2側に配置され、回動軸であるアンクル真200及びアンクル体201を備えている。そして、衝撃アンクル183は、作動アンクル181の回転に基づいて、作動アンクル181の回動方向とは反対の方向に向けて回動軸線O11回りに回動する。
アンクル体201には、第1回転方向M1側に向けて係合プレート202が突設されている。図示の例では、係合プレート202は、アンクル体201と同等の厚みで且つ平面視円形状に形成されている。
係合プレート202は、作動アンクル181における係合フォーク193の内側に係合している。係合プレート202の外周面と係合フォーク193の内面とは、互いに摺動可能に係合している。これにより、作動アンクル181及び衝撃アンクル183は、相対変位可能に互いに連結され、互いに反対方向に向けて回動する。
第2衝撃爪石61は、第2爪石保持部83よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。第2衝撃爪石61は、第1がんぎ歯車45と同等の高さ位置に達する程度、アンクル体201よりも下方に向けて延びた状態で保持されている。そのため、第2衝撃爪石61は第1がんぎ歯46に対して接触(衝突)可能とされている。
第2衝撃爪石61の突出した部分のうち、第1回転方向M1側を向いた側面が、第1がんぎ歯46の第1作用面46aが接触する第2衝撃面61aとされている。
これにより、第1衝撃爪石60が第2がんぎ歯車47に対して接触するときに第2衝撃爪石61が第1がんぎ歯車45から離脱し、第1衝撃爪石60が第2がんぎ歯車47から離脱したときに第2衝撃爪石61が第1がんぎ歯車45に接触する。
規制レバー85は、図30に示すように第1停止爪石62が第1がんぎ歯車45と係合したときに、一方のドテピン86に接触して衝撃アンクル183の回動を規制し、図31に示すように第2停止爪石63が第1がんぎ歯車45と係合したときに、他方のドテピン87に接触して衝撃アンクル183の回動を規制する。
上述のように構成された本実施形態の脱進機150によれば、第1実施形態と同様に、第1がんぎ歯46と第1停止爪石62及び第2停止爪石63との係脱を交互に繰り返し行うことができる。また、第2がんぎ歯48と第1衝撃爪石60との接触、及び第1がんぎ歯46と第2衝撃爪石61との接触を利用したてんぷ30への間接的な動力の伝達を行うことができる。
従って、いわゆる間接衝撃型の脱進機180として動作させることができ、てんぷ30に対して直接的に動力を伝達する場合に比べて、安定した動作および動力の伝達を確保することができる。
従って、がんぎ車40の回転が停止して、てんぷ30が自由振動している最中に、例えば何らかの外乱が入力されたとしても、アンクルチェーン185ががたつく、或いは振動してしまうことを抑制することができる。これにより、脱進機180を安定して作動させることができる。
なお、衝撃アンクルユニットを1つのアンクルで構成する場合には、例えばアンクルをがんぎ車の周方向に沿って延びる円弧状に形成し、且つ周方向の両端部ががんぎ車を挟んで径方向の反対側に位置するように形成しても良い。そして、アンクルの両端部に衝撃爪石をそれぞれ取り付ければ良い。
このように構成することで、1つのアンクルの回動であっても、アンクルの両端部に取り付けた衝撃爪石を交互にがんぎ車に接触(衝突)させることができるので、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することが可能となる。
4…指針
10…ムーブメント(時計用ムーブメント)
12…表輪列(輪列)
13、100、130、140、150、180…脱進機
14…調速機
40…がんぎ車
50、105、155、185…アンクルチェーン
51…第1衝撃アンクル(アンクル)
52…第2衝撃アンクル(アンクル)
55、153…停止アンクル(アンクル)
60…第1衝撃爪石(衝撃爪石)
61…第2衝撃爪石(衝撃爪石)
62…第1停止爪石(停止爪石)
63…第2停止爪石(停止爪石)
85…規制レバー(規制部)
86、87、164…ドテピン(被規制部)
102…第1停止アンクル(アンクル)
103…第2停止アンクル(アンクル)
111c、121c…外側面(規制部)
151、183…衝撃アンクル(アンクル)
165a…位置決め孔の第1内周面(規制部)
165b…位置決め孔の第2内周面(規制部)
181…作動アンクル(アンクル)
Claims (6)
- 伝達される動力によって回転するがんぎ車と、
複数のアンクルが一列状に繋がるように、相対変位可能に互いに連結し合ったアンクルチェーンと、
前記がんぎ車のがんぎ歯車に対して係脱可能とされた停止爪石と、
前記がんぎ歯車と前記停止爪石との非係合時に、前記がんぎ歯車に対して接触可能とされた衝撃爪石と、を備え、
前記アンクルチェーンは、てんぷの回転に基づいて複数の前記アンクルを各別に回動させるように変位し、
前記停止爪石及び前記衝撃爪石は、複数の前記アンクルのうちの少なくとも1つ以上のアンクルにそれぞれ取り付けられ、
複数の前記アンクルのうち、前記アンクルチェーンの連結端に位置するアンクルには、前記停止爪石と前記がんぎ歯車との係合時に、該アンクルの回動を規制して前記アンクルチェーン全体の変位を規制する規制部が設けられている、脱進機。 - 請求項1に記載の脱進機において、
前記停止爪石は、複数の前記アンクルのうち、前記アンクルチェーンの連結端に位置し、且つ前記規制部が設けられたアンクルに対して前記アンクルチェーンの反対側に位置するアンクルに取り付けられている、脱進機。 - 請求項1又は2に記載の脱進機において、
前記衝撃爪石は、複数の前記アンクルのうち、前記停止爪石が取り付けられたアンクルとは異なるアンクルに取り付けられている、脱進機。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の脱進機において、
前記規制部は、被規制部に対して接触することで回動を規制する、脱進機。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載の脱進機と、
前記てんぷを有する調速機と、
前記がんぎ車に動力を伝える輪列と、を備えている、時計用ムーブメント。 - 請求項5に記載の時計用ムーブメントと、
前記脱進機及び前記調速機により調速された回転速度で回転する指針と、を備えている、時計。
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