JP2018151253A - 脱進機、時計用ムーブメント及び時計 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】伝達される動力によって回転するがんぎ車40と、相対変位可能に互いに連結され、てんぷ30の回転に基づいて回動する衝撃アンクルユニット52及び停止アンクルユニット54とを備え、停止アンクルユニットは少なくとも1つ以上のアンクル53で構成されると共に、がんぎ車のがんぎ歯車42に対して係脱可能とされた停止爪石62、63を有し、衝撃アンクルユニットは少なくとも1つ以上のアンクル51で構成されると共に、停止爪石の非係合時にがんぎ歯車に対して接触可能とされた第1衝撃爪石60を備え、てんぷには第1衝撃爪石の非接触時に、がんぎ歯車に対して接触可能とされた第2衝撃爪石61が取り付けられている脱進機13を提供する。
【選択図】図4
Description
特に、この脱進機は機械式時計の主流を占めているクラブトゥース・レバー脱進機とは異なり、衝撃時にがんぎ車の歯先のすべりが少なくなるように設計されている。これにより、がんぎ車の歯先の摩耗を抑制することができ、耐久性を高めている。また、てんぷに対して直接的な衝撃を行う場合には、他の時計部品を介在せずにがんぎ車からてんぷに対して衝撃を伝達することができる。これにより、高効率化を図っている。
第1衝撃爪石は、アンクルの回動に伴って第1がんぎ歯車の歯先に対して接触可能とされている。第2衝撃爪石は、てんぷの回転に伴って第2がんぎ歯車の歯先に対して接触可能とされている。第1停止爪石及び第2停止爪石は、アンクルの回動に伴って第2がんぎ歯車の歯先に対して係脱可能とされている。
従って、間接的な動力伝達と直接的な動力伝達とを交互に行いながら、がんぎ車に伝わった動力をてんぷに伝えることが可能とされている。
この脱進機では、第1停止爪石及び第2停止爪石ががんぎ歯車に対して係脱可能とされ、さらに同じがんぎ歯車に対して、第1衝撃爪石及び第2衝撃爪石が接触可能とされている。
しかしながら、例えば停止の作用に着目した場合には、アンクルの回動中心ががんぎ歯車の歯先から離間するほど、がんぎ歯車の歯先が停止爪石から離脱するまでに停止爪石上を摺動する摺動距離が大きくなってしまう。そのため、がんぎ車の停止解除に必要なエネルギーが増大してしまい、動力の伝達効率の低下を招いてしまうものであった。
このように、直接的な動力伝達と間接的な動力伝達とを交互に行いながら(切換えながら)、がんぎ車に伝わった動力をてんぷに伝えることができると共に、てんぷに対応した一定の振動でがんぎ車の回転を制御することができる。
さらに、がんぎ車の回転中心と衝撃アンクルユニットを構成するアンクルの回動中心との間の中心間距離や、がんぎ車の回転中心と停止アンクルユニットを構成するアンクルの回動中心との間の中心間距離を、衝撃の作用及び停止の作用を考慮して最適な距離にそれぞれ設定することができる。従って、1つの共通するアンクルに衝撃爪石及び停止爪石が組み込まれていた従来の脱進機とは異なり、がんぎ車の停止解除に必要なエネルギーが増大することを抑制でき、動力の伝達効率の向上化に繋げることができる。
(4)本発明に係る時計は、上記時計用ムーブメントと、前記脱進機及び前記調速機により調速された回転速度で回転する指針と、を備えている。
以下、本発明に係る第1実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、時計の一例として機械式時計を例に挙げて説明する。また、各図面において、各部品を視認可能な大きさとするために、必要に応じて各部品の縮尺を適宜変更している。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。
時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側(すなわち、文字板のある方の側)をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側(すなわち、文字板と反対の側)をムーブメントの「表側」と称する。
なお、本実施形態では、文字板からケース裏蓋に向かう方向を上方、その反対側を下方と定義して説明する。
地板11の表側には、表輪列(本発明に係る輪列)12と、表輪列12の回転を制御する脱進機13と、脱進機13を調速する調速機14と、を備えている。
てんぷ30は、てん真31、てん輪32及び図示しないひげぜんまいを備え、地板11と図示しないてんぷ受との間に軸支されている。てんぷ30は、ひげぜんまいを動力源として、回転軸線O1回りに、香箱車20の出力トルクに応じた定常振幅(振り角)で往復回転(正逆回転)する。
なお、図示の例では、回転軸線O1を中心として90度の間隔をあけて4つのアーム部33が配置されたてん輪32としているが、アーム部33の数、配置や形状はこの場合に限定されるものではなく、自由に変更して構わない。
振り座35は、大つば36、及び大つば36よりも下方(地板11側)に位置する小つば37を有している。大つば36には、ルビー等の人工宝石から形成された振り石38が例えば圧入固定されている。
振り石38は、平面視で半円形状に形成され、大つば36から下方に向けて延びるように形成されている。振り石38は、てんぷ30に伴って回転軸線O1回りに往復回転し、その途中で後述するアンクルハコ74に対して離脱可能に係合する。
なお、図3以外の各図面では、図面を見易くするために、振り座35のうち小つば37及び振り石38を主に図示している。
図4に示すように、脱進機13は、上述した振り座35と、ぜんまいから伝達される動力によって回転するがんぎ車40と、アンクルチェーン50と、第1衝撃爪石(本発明に係る衝撃爪石)60及び第2衝撃爪石(本発明に係る衝撃爪石)61と、第1停止爪石(本発明に係る停止爪石)62及び第2停止爪石(本発明に係る停止爪石)63と、を備えている。
なお、振り座35は、上述したようにてんぷ30及び調速機14を構成する構成部品であると共に、脱進機13を構成する構成部品とされている。
図示の例では、がんぎ歯43の歯数は8歯とされている。ただし、この場合に限定されるものではなく、がんぎ歯43の歯数は適宜変更して構わない。例えば6歯、10歯、12歯のがんぎ歯43を有するがんぎ歯車42としても構わない。
なお、図4において回転軸線O2を中心として時計回りに回転する方向を第1回転方向M1、その反対方向を第2回転方向M2と称している。さらに、がんぎ車40の回転に伴ってがんぎ歯43の歯先が描く回転軌跡Rを、単にがんぎ歯車42の回転軌跡Rという。
ただし、がんぎ車40の材料や製造方法は、上述した場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。また、がんぎ車40の性能や剛性等に影響を与えない範囲で、がんぎ車40に肉抜き孔や薄肉部を適宜設けて軽量化を図っても構わない。図示の例では、がんぎ車40に肉抜き孔を複数形成している。
具体的には、アンクルチェーン50は、衝撃アンクル51を有する衝撃アンクルユニット52と、停止アンクル53を有する停止アンクルユニット54と、を備えている。衝撃アンクルユニット52と停止アンクルユニット54とは互いに相対変位可能に連結されている。つまり、衝撃アンクル51と停止アンクル53とが相対変位可能に互いに連結され、これにより、衝撃アンクル51及び停止アンクル53は一列状に繋がるように連結されている。
第1衝撃爪石60及び第2衝撃爪石61のうち、第1衝撃爪石60は衝撃アンクル51に取り付けられ、第2衝撃爪石61はてんぷ30に固定された振り座35に取り付けられている。
図4〜図6に示すように、衝撃アンクル51は、回動軸であるアンクル真70、アンクル体71及びアンクルアーム72を備えている。そして、衝撃アンクル51は、てんぷ30の往復回転に基づいて回動軸線O3回りに回動する。
なお、がんぎ車40と同様に、アンクル体71及びアンクルアーム72に肉抜き孔や薄肉部を適宜設けて軽量化を図っても構わない。図示の例では、アンクル体71に肉抜き孔を複数形成している。
剣先75は、アンクル体71の先端部に対して下方から例えば圧入等によって固定されている。剣先75は、平面視で一対のクワガタ73間に位置(すなわちアンクルハコ74の内側に位置)すると共に、クワガタ73よりもてん真31側に突出するように延びている。なお、剣先75は、振り石38よりも下方に位置し、且つがんぎ車40よりも上方に位置するように固定されている。
剣先75の先端部は、振り石38がアンクルハコ74から離脱している状態において、小つば37の外周面のうちツキガタ39を除いた部分に対して若干の隙間をあけて径方向に対向し、且つ振り石38がアンクルハコ74に係合している状態において、ツキガタ39内に収容される。
第1衝撃爪石60は、がんぎ歯車42と同等の高さ位置に達する程度、アンクル体71よりも下方に向けて延びた状態で保持されている。そのため、第1衝撃爪石60はがんぎ歯43に対して接触(衝突)可能とされている。さらに、第1衝撃爪石60は、第1爪石保持部76よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。そして、第1衝撃爪石60の突出部分のうち、第2回転方向M2側を向いた側面は、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aが接触する第1衝撃面60aとされている。
具体的には、衝撃アンクル51は、てんぷ30の往復回転に伴って移動する振り石38によって、てんぷ30の回転方向とは反対の方向に向けて回動軸線O3回りに回動する。このとき、第1衝撃爪石60は、衝撃アンクル51の回動によってがんぎ歯車42の回転軌跡Rに対する進入と退避とを繰り返す。これにより、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aを、第1衝撃爪石60の第1衝撃面60aに対して接触(衝突)させることが可能となる。
図3及び図4に示すように、第2衝撃爪石61は、振り座35における小つば37に取り付けられている。具体的には、第2衝撃爪石61は、小つば37に形成された第2爪石保持部80によって保持されている。第2爪石保持部80は、図4においてツキガタ39よりも回転軸線O1の時計回り方向に所定の位相分ずれた位置に形成され、がんぎ車40側に向けて開口している。第2衝撃爪石61は、この開口を利用して第2爪石保持部80に保持されている。
なお、第2衝撃爪石61と振り石38との間には、回転軸線O1方向に所定の隙間が確保されており、この隙間を通して剣先75がツキガタ39に対してアプローチする。
図4〜図6に示すように、停止アンクル53は、平面視で衝撃アンクル51よりも第1回転方向M1側に配置され、回動軸であるアンクル真90及びアンクル体91を備えている。そして、停止アンクル53は、衝撃アンクル51の回転に基づいて、衝撃アンクル51の回動方向とは反対の方向に向けて回動軸線O4回りに回動する。
従って、衝撃アンクル51、停止アンクル53及びがんぎ車40の高さ関係としては、がんぎ車40及び停止アンクル53のアンクル体91が最も地板11に近い最下層に位置し、その上方に衝撃アンクル51のアンクル体71が位置する関係となる。
第1停止爪石62は、第3爪石保持部93よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。第1停止爪石62の突出した部分のうち、第2回転方向M2側を向いた側面は、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aが係合する第1係合面62aとされている。なお、第1停止爪石62は、いわゆる入爪石として機能する。
第2停止爪石63は、第4爪石保持部94よりもがんぎ車40側に突出した状態で保持されている。第2停止爪石63の突出した部分のうち、第2回転方向M2側を向いた側面は、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aが係合する第2係合面63aとされている。なお、第2停止爪石63は、いわゆる出爪石として機能する。
これにより、がんぎ歯車42におけるがんぎ歯43の作用面43aを、第1停止爪石62の第1係合面62a、或いは第2停止爪石63の第2係合面63aに対して係合させることが可能となる。
同様に、衝撃アンクル51におけるアンクルアーム72のうち、がんぎ車40を向いた外側面とは反対側に位置する外側面101は、アンクル真70よりも第1回転方向M1側に配置された他方のドテピン103に対して接触することで、衝撃アンクル51の回動を規制して位置決めする上記規制部として機能する。
一対のドテピン102、103は、例えば地板11から上方に向けて突出するように固定されている。
次に、上述のように構成された脱進機13の動作について説明する。
なお、以下の説明における動作開始状態では、図4に示すように、がんぎ歯43の作用面43aが第1停止爪石62の第1係合面62aに係合していると共に、衝撃アンクル51における外側面100が一方のドテピン102に対して接触して衝撃アンクル51が位置決めされている。これにより、がんぎ車40は回転が停止している。さらに、てんぷ30の自由振動によって振り石38が時計回りに移動し、アンクルハコ74の内側に進入している。
なお、アンクルハコ74と振り石38との係合時、小つば37と剣先75とは互いに接触することがないので、てんぷ30からの動力を衝撃アンクル51に効率よく伝えることができる。
そして、第1停止爪石62ががんぎ歯車42の回転軌跡Rから僅かに外れた位置まで移動することで、第1停止爪石62をがんぎ歯43から離脱させて、がんぎ歯43との係合を解除することができる。これにより、がんぎ車40の停止の解除を行うことができる。
このように、がんぎ車40を瞬間的に後退させることで、表輪列12の噛み合いをより確実にすることができ、安定且つ高い信頼性で表輪列12を作動させることができる。
このように、がんぎ車40に伝わった動力を、衝撃アンクル51を介しててんぷ30に間接的に伝えることで、てんぷ30に回転エネルギーを補充することができる。
そして、第1衝撃爪石60ががんぎ歯車42の回転軌跡Rから僅かに外れた位置まで移動することで、上述したてんぷ30への間接的な衝撃が終了する。
また、衝撃アンクル51の回動によって第1衝撃爪石60ががんぎ歯車42から離脱する方向に移動している際、第2停止爪石63が停止アンクル53の時計回りの回動によってがんぎ歯車42の回転軌跡Rに進入する。
このとき、衝撃アンクル51は、反時計回りの回動に伴って他方のドテピン103に向かって移動しているが、この段階では他方のドテピン103に対して非接触とされている。そのため、がんぎ歯43と第2停止爪石63とが接触したまま、衝撃アンクル51及び停止アンクル53はそれぞれ僅かに回動する。
これにより、図11に示すように、振り石38は、てんぷ30の反時計回りの回転に伴って衝撃アンクル51に向けて接近するように移動を開始する。
ただし、第2停止爪石63とがんぎ歯43とが係合し、且つ衝撃アンクル51における外側面101が他方のドテピン103に接触している段階では、第2衝撃爪石61の第2衝撃面61aとがんぎ歯43の作用面43aとの間には隙間が確保されている。これにより、がんぎ歯43は第2衝撃爪石61に対して非接触とされている。
そして、図14に示すように、第2衝撃爪石61ががんぎ歯車42の回転軌跡Rから僅かに外れた位置まで移動することで、上述したてんぷ30への直接的な衝撃が終了する。
そして、第2衝撃爪石61ががんぎ歯車42の回転軌跡Rから外れた位置まで移動した直後に、がんぎ歯車42の回転軌跡Rに進入していた第1停止爪石62の第1係合面62aに対してがんぎ歯43の作用面43aが接触する。このとき、衝撃アンクル51は、時計回りの回動に伴って一方のドテピン102に向かって移動しているが、この段階では一方のドテピン102に対して非接触とされている。そのため、がんぎ歯43と第1停止爪石62とが接触したまま、衝撃アンクル51及び停止アンクル53はそれぞれ僅かに回動する。
そのため、がんぎ車40に対する衝撃アンクルユニット52(衝撃アンクル51)の相対位置、及びがんぎ車40に対する停止アンクルユニット54(停止アンクル53)の相対位置をそれぞれ制約少なく自由に設計配置することができ、衝撃及び停止にそれぞれ最適なレイアウトで衝撃アンクルユニット52及び停止アンクルユニット54を配置することが可能である。
図16は、がんぎ車40の回転中心(すなわち回転軸線O2)と、停止アンクル53の回動中心(すなわち回動軸線O4)と、がんぎ車40の退却角と、の関係を示す。
なお、図16では、がんぎ車40の図示を省略しているが、がんぎ歯43の歯先が描く回転軌跡Rについては図示している。よって、回転軌跡Rはがんぎ歯車42の外径に対応する。
これらのいずれの場合であっても、第1停止爪石62は、がんぎ歯43が係合する係合位置X1と、がんぎ歯車42の回転軌跡Rから外れた位置に移動して、がんぎ歯43との係合が解除される解除位置X2と、の間を停止アンクル53の回動に伴って移動する。
図16に示すように、停止アンクル53の回動中心ががんぎ歯車42の回転軌跡Rに対して距離L2だけ離れている状態と、停止アンクル53の回動中心ががんぎ歯車42の回転軌跡Rに対して距離L1だけ離れている状態と、で停止アンクル53を同じ作動角α2だけそれぞれ回動させた場合には、距離L2よりも距離L1のときの方が退却角α3を小さくすることができる。すなわち、停止アンクル53の回動中心が回転軌跡Rに近い場合の方が退却角α3を小さくすることができる。
従って、本実施形態によれば、がんぎ車40の停止解除に必要なエネルギーを小さくして、動力の伝達効率を向上させると共に、作動誤差を少なくすることができる。
図17は、がんぎ歯車42のがんぎ歯43と第1衝撃爪石60とが接触している場合の関係を示す図である。なお、図17では、がんぎ歯43の歯先と第1衝撃爪石60とが線接触に近い状態で接触するものとして説明する。
がんぎ歯43と第1衝撃爪石60との接触によって、がんぎ車40から第1衝撃爪石60に効率良く動力を伝達する際、例えば歯部同士の噛み合いにおけるピッチ点と同様に、がんぎ歯43と第1衝撃爪石60とのピッチ点P0で動力を伝達することが好ましい。
この場合、がんぎ車40の回転中心とピッチ点P0との間の距離L3と、衝撃アンクル51の回動中心とピッチ点P0との間の距離L4との比率が、がんぎ車40の作動角α4と衝撃アンクル51の作動角α5との比率に対して略逆比となる。つまり、(L3/L4)≒(α5/α4)をほぼ満たす関係となる。
本実施形態によれば、衝撃アンクル51に、停止用の爪石が取り付けられておらず、衝撃用の爪石である第1衝撃爪石60だけが取り付けられている。そのため、衝撃の作用だけに着目して、衝撃アンクル51の作動角を最適な角度に設定することが可能である。従って、がんぎ車40に伝わった動力をてんぷ30に対して効率良く間接的に伝えることができる。
また、がんぎ歯43の作用面43aに対して、第1衝撃爪石60及び第2衝撃爪石61が接触し、第1停止爪石62及び第2停止爪石63が係合するので、がんぎ車40を単層構造にしておくことができる。従って、がんぎ車40の慣性が大きくなることを抑制することができ、これによっても動力の伝達効率を向上することができる。
次に、本発明に係る第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態では、一対のドテピン102、103を利用して衝撃アンクル51を位置決めしたが、第2実施形態では、1つのドテピンを利用して衝撃アンクル51を位置決めしている。さらに第1実施形態では、停止アンクル53が衝撃アンクル51よりも下方に配置されていたが、第2実施形態では、衝撃アンクル51及び停止アンクル53が同一平面上に配置されるように構成されている。
衝撃アンクル51には、アンクル体71と第1爪石保持部76との間に、これらアンクル体71及び第1爪石保持部76を連結する連結片113が一体に形成されている。上記位置決め孔112は連結片113に形成されている。
具体的には、位置決め孔112は、連結片113を厚さ方向に貫通すると共に、衝撃アンクル51の回動方向(すなわち回動軸線O3回りを周回する方向)に沿って延びた平面視円弧状に形成されている。回動軸線O3の周方向に沿った位置決め孔112の長さ(周長)は、第1停止爪石62とがんぎ歯車42のがんぎ歯43とが係合した状態と、第2停止爪石63とがんぎ歯車42のがんぎ歯43とが係合した状態と、の間で衝撃アンクル51が回動する回動角度(作動角)に対応している。
また、図19に示すように、第2停止爪石63とがんぎ歯43とが係合した場合には、位置決め孔112の内周面のうちアンクル体71側に位置する第2内周面112bとドテピン111とが接触する。これにより、衝撃アンクル51はドテピン111によって位置決めされる。
係合プレート115は、一対の弾性部116で構成されている。一対の弾性部116は、それぞれ平面視半円形状に形成され、図18及び図19に示す矢印のように互いに離間し合うように付勢されている。
特に、衝撃アンクル51の係合プレート115と、停止アンクル53の係合フォーク92とは、一対の弾性部116の外周面が係合フォーク92の内面に対して押し付けられた状態で互いに連結されている。
このように構成されている本実施形態の脱進機110であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
つまり、本実施形態の脱進機110であっても、がんぎ歯43と第1停止爪石62及び第2停止爪石63との係脱を交互に繰り返し行うことができると共に、第1衝撃爪石60を利用した間接的な動力伝達と第2衝撃爪石61を利用した間接的な動力伝達とを交互に行いながら、がんぎ車40に伝わった動力をてんぷ30に伝えることができる。
いずれの場合であっても、衝撃アンクル51は、アンクルチェーン50の連結端に相当するアンクルであるので、がんぎ歯43が第1停止爪石62或いは第2停止爪石63に係合して、がんぎ車40の回転が停止しているときに、アンクルチェーン50全体の変位を規制することができる。
特に第1実施形態とは異なり、ドテピン111が1つだけで良いうえ、衝撃アンクル51の平面スペース内にドテピン111を配置できるので、第1実施形態において一対のドテピン102、103が占有していたスペースを省略或いは有効利用することができる。
従って、衝撃アンクル51と停止アンクル53との間との間に、バックラッシュが発生することを効果的に抑制することができ、衝撃アンクル51及び停止アンクル53を、反応良く回動させることができる。これにより、脱進機110をよりスムーズに作動させることができ、作動性能をさらに向上させることができる。
同様に、上記各実施形態では、停止アンクルユニットを1つのアンクルで構成したが、この場合に限定されるものではなく、例えば2つ以上のアンクルで構成し、そのうちの2つのアンクルに停止爪石をそれぞれ取り付けても構わない。
従って、例えば第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。ただし、上記各実施形態のように、単層構造のがんぎ車とした場合には、二層構造の場合に比べてがんぎ車の慣性が大きくなることを抑制することができるので、動力の伝達効率を向上させ易くなる。
4…指針
10…ムーブメント(時計用ムーブメント)
12…表輪列(輪列)
13、110、120…脱進機
14…調速機
40…がんぎ車
51…衝撃アンクル(アンクル)
52…衝撃アンクルユニット
53…停止アンクル(アンクル)
54…停止アンクルユニット
60…第1衝撃爪石
61…第2衝撃爪石
62…第1停止爪石(停止爪石)
63…第2停止爪石(停止爪石)
Claims (4)
- 伝達される動力によって回転するがんぎ車と、
相対変位可能に互いに連結され、てんぷの回転に基づいて回動する衝撃アンクルユニット及び停止アンクルユニットと、を備え、
前記停止アンクルユニットは、少なくとも1つ以上のアンクルで構成されると共に、前記がんぎ車のがんぎ歯車に対して係脱可能とされた停止爪石を有し、
前記衝撃アンクルユニットは、少なくとも1つ以上のアンクルで構成されると共に、前記停止爪石の非係合時に前記がんぎ歯車に対して接触可能とされた第1衝撃爪石を備え、
前記てんぷには、前記第1衝撃爪石の非接触時に、前記がんぎ歯車に対して接触可能とされた第2衝撃爪石が取り付けられている、脱進機。 - 請求項1に記載の脱進機において、
前記衝撃アンクルユニットは、前記第1衝撃爪石を有する衝撃アンクルを有し、
前記停止アンクルユニットは、前記停止爪石を2つ有すると共に前記衝撃アンクルに相対変位可能に連結された停止アンクルを有し、
2つの前記停止爪石は、前記停止アンクルの回動に伴って前記がんぎ歯車に対して交互に係脱される、脱進機。 - 請求項1又は2に記載の脱進機と、
前記てんぷを有する調速機と、
前記がんぎ車に動力を伝える輪列と、を備えている、時計用ムーブメント。 - 請求項3に記載の時計用ムーブメントと、
前記脱進機及び前記調速機により調速された回転速度で回転する指針と、を備えている、時計。
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