JP2018169293A - トルク発生機構、定トルク機構、時計用ムーブメント及び時計 - Google Patents

トルク発生機構、定トルク機構、時計用ムーブメント及び時計 Download PDF

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Abstract

【課題】取扱性が向上したトルク発生機構を提供する。
【解決手段】第1回転軸線O1回りに回転する第1動力車25と、第1動力車25と同軸に配置された第2動力車26と、第1動力車25と第2動力車26との間に配置され、蓄えた動力を第1動力車25及び第2動力車26を伝える渦巻き状の動力ばね27とを備え、動力ばね27の一端部27bには、第1動力車25に設けられた第1係合部46に対して離脱可能に係合され、一端部の径方向位置を規定する第2係合部47と、第1動力車25に設けられた回転規制部に対して当接し、動力ばね27の変形に伴って一端部が第1回転軸線O1回りに回転することを規制する規制部材48と、が設けられているトルク発生機構21を提供する。
【選択図】図3

Description

本発明は、トルク発生機構、定トルク機構、時計用ムーブメント及び時計に関する。
一般に機械式時計において、香箱車から脱進機に伝えられるトルク(動力)がぜんまいの巻き解けに応じて変動してしまうと、トルクの変動に対応しててんぷの振り角が変化して、時計の歩度(時計の遅れ或いは進みの度合い)の変化を招いてしまう。そこで、脱進機に伝えられるトルクの変動を抑制するため、香箱車から脱進機への動力伝達経路に定トルク機構を設けることが知られている。
この種の定トルク機構では、トルク放出に伴うトルク変動を抑制するために、大きな撓み角が確保できる動力ばね(定トルクばね)を用いることが望まれている。このような動力ばねとしては、例えば渦巻きばね或いはコイルばねが知られており、その中でも断面的な優位性、すなわち薄型化に対する優位性の観点から渦巻きバネが広く用いられている。例えば、下記特許文献1には、動力ばねとして渦巻きバネを具備する定トルク機構が開示されている。
欧州特許出願公開第2034374号明細書
しかしながら、上記従来の定トルク機構では、てんぷにおけるひげぜんまいの一般的な固定方法と同様に、渦巻きバネの外端部をひげ持に対して例えば接着や加締め等によって固定している。そのため、動力ばねによって互いに連結される、動力側の車と脱進機側の車とが、動力ばねを介して一体的に組み合わされた1つの組立部品となってしまうものであった。従って、とくにオーバーホール時には、渦巻きバネの外端部とひげ持との接着や加締め等を外さなければ、両者を分解することができないので、メンテナンス性が悪かった。また、定トルク機構の組み立て時においても、渦巻きばねを一定量巻き上げた後、その巻き量を維持しながら上記組立部品を組み付ける必要があるので、組立作業性が悪かった。さらに、渦巻きバネの外端部とひげ持とが一体に連結されているので、例えば注油等の保守作業性も行い難かった。
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、取扱性が向上した、トルク発生機構、定トルク機構、時計用ムーブメント及び時計を提供することである。
(1)本発明に係るトルク発生機構は、第1回転軸線回りに回転する第1動力車と、前記第1動力車と同軸に配置され、前記第1回転軸線回りに前記第1動力車に対して相対回転可能な第2動力車と、前記第1動力車と前記第2動力車との間に配置され、蓄えた動力を前記第1動力車及び前記第2動力車を伝える渦巻き状の動力ばねと、を備え、前記動力ばねの一端部には、前記第1動力車に設けられた第1係合部に対して離脱可能に係合され、前記一端部の径方向位置を規定する第2係合部と、前記第1動力車に設けられた回転規制部に対して当接し、前記動力ばねの変形に伴って前記一端部が前記第1回転軸線回りに回転することを規制する規制部材と、が設けられている。
本発明に係るトルク発生機構によれば、動力ばねの一端部(すなわち、動力ばねにおける一方の周端部)に設けられた第2係合部が、第1動力車に設けられた第1係合部に対して離脱可能に係合されているので、第2係合部を第1係合部から離脱させるだけの簡便な操作で、動力ばねと第1動力車とを容易に分解することができる。
従って、メンテナンス性を向上でき、オーバーホール等を容易に行うことができる。また、動力ばねと第1動力車とを容易に分解することができるので、注油等の保守作業も容易に行うことができる。
さらに、組み立てを行う場合には、第2係合部を第1係合部に対して係合させるだけで、動力ばね、第1動力車及び第2動力車を一体に組み合わせることができると共に、動力ばねの一端部の径方向位置を規定して位置決めすることができる。これにより、動力ばねの一端部を位置決めしたまま、第1動力車と第2動力車とを相対的に第1回転軸線回りの反対方向に回転させることで、動力ばねを巻き上げて動力ばねに動力(トルク)を発生させて蓄えておくことができる。従って、組立作業性を向上することができる。
しかも、動力ばねの巻き上げ時、動力ばねの一端部に設けた規制部材を回転規制部に対して当接させることができるので、例えば動力ばねの弾性復元変形に伴う回転トルクによって、一端部が第1回転軸線回りに回転することを規制することができる。これにより、動力ばねにおけるばね部同士が自己接触することを防止しながら、動力ばねを巻き上げることができる。従って、動力ばねの巻き上げ時と動力解放時とでトルク差(ヒステリシス)が生じることを防止できる。加えて、動力ばねの巻き上げ時、巻き上げに伴って規制部材が回転規制部に対して徐々に強く当接するので、動力ばねの巻き量、すなわち予負荷を一定にし易い。
(2)前記第1係合部は、前記第1回転軸線回りを周回する周方向に沿って形成されると共に、周方向の一方向側に開口したスライド孔とされ、前記第2係合部は、スライド移動によって前記第1係合部に対して係合されても良い。
この場合には、組み立てを行うときに、スライド移動によって第2係合部を第1係合部に係合させることができるので、組立作業性をさらに向上することができる。また、動力ばねに蓄えられていた動力が何らかの理由で低下した場合、すなわち予負荷が低下した場合には、第1係合部から第2係合部が離脱するので、第2係合部を第1係合部であるスライド孔内から離間させることが可能となる。これにより、第1係合部と第2係合部との相対的な位置関係の変化を視認によって速やかに把握することができると共に、動力ばねに蓄えられていた動力が低下したこと、例えば巻き量が零になったことを容易且つ確実に把握することができる。
(3)本発明に係る定トルク機構は、上記トルク発生機構と、前記第1動力車に対して前記第2動力車を間欠的に回転させ、前記動力ばねに動力を補充する周期制御機構と、を備える。
本発明に係る定トルク機構によれば、周期制御機構を備えているので、動力ばねに対して動力を補充することができる。これによって、動力ばねの動力を一定に維持することができ、例えば定トルクで脱進機を安定して作動させることができる。
特に、メンテナンス性、保守作業性や組立作業性が向上し、取扱性に優れたトルク発生機構を備えているので、同様に取扱性に優れた有用な定トルク機構とすることができる。
(4)前記周期制御機構は、前記第1動力車の回転に伴って第2回転軸線回りに回転する第1制御車と、前記第1制御車と同軸に配置されると共に、前記第2回転軸線回りに前記第1制御車に対して相対回転可能とされ、前記第2動力車に噛み合う第2制御車と、前記第1制御車と前記第2制御車との間に配置され、前記第1制御車の回転に基づいて、前記第1制御車に設けられた係合爪と前記第2制御車に設けられたストップ車とを間欠的に係脱させる遊星機構と、を備え、前記第1動力車又は前記第1制御車は、脱進機に前記動力ばねからの動力を伝え、前記第2動力車又は前記第2制御車には、前記動力源からの動力が伝えられても良い。
この場合には、第1動力車が回転することで、第1制御車を回転させることができ、第1動力車又は第1制御車を介して脱進機に動力ばねからの動力を伝えることができる。これにより、脱進機を作動させることができる。また、第1制御車と第2制御車との間に、第1制御車の回転に基づいて、係合爪とストップ車とを間欠的に係脱させる遊星機構が設けられているので、遊星機構による係脱を利用して、第1動力車に対して第2動力車を間欠的に回転させて周期制御を行える。
第2動力車及び第2制御車には、動力源から伝えられた動力と、動力ばねから伝えられた動力との差分の動力が作用するものの、係合爪とストップ車とが係合している場合には、この係合によって第2動力車及び第2制御車は回転が防止されている。そして、この状態から第1動力車の回転によって第1制御車が回転すると、係合爪とストップ車との係合が解除されるので、動力源から伝えられた動力と、動力ばねから伝えられた動力との差分の動力によって、第2動力車及び第2制御車が共に回転する。これにより、第1動力車に対して第2動力車を間欠的に回転させることができ、動力ばねに対して動力を補充することができる。これによって、動力ばねの動力を一定に維持することができ、定トルクで脱進機を作動させることができる。
なお、動力ばねへの動力の補充と共に、第2制御車の回転によって係合爪とストップ車とが再び係合する。従って、係合爪とストップ車との係脱を繰り返すことができ、第1動力車に対して第2動力車を間欠的に回転させることができる。
(5)本発明に係る時計用ムーブメントは、上記トルク発生機構を備えている。
(6)本発明に係る時計用ムーブメントは、上記定トルク機構を備えている。
(7)本発明に係る時計は、上記時計用ムーブメントを備えている。
この場合には、取扱性に優れた有用な時計用ムーブメント及び時計とすることができる。
本発明によれば、取扱性が向上した、トルク発生機構、定トルク機構、時計用ムーブメント及び時計とすることができる。
本発明の実施形態を示す時計の外観図である。 図1に示すムーブメントのブロック図である。 図2に示す定トルク機構の斜視図である。 図3に示す定トルク機構の上面図である。 図4に示すA−B線に沿った定トルク機構の断面図である。 図3に示す第2動力車の一部を示す斜視図である。 図3に示す定トルク機構の下面図である。 図3に示す第2制御車及び第2動力車の一部を示す斜視図である。 図3に示す第2動力車の一部を示す斜視図である。 図3に示す第2制御車及び遊星機構を示す斜視図である。 図10に示す係合爪石とストップ歯との係合状態を示す平面図である。 図10に示す第2制御車及びストップ車と断面図である。 図11に示す係合爪石とストップ歯との係合状態を示す平面図である。 図13に示す状態から、係合爪石がストップ歯から離脱しはじめた状態を示す平面図である。 図14に示す状態から、係合爪石がストップ歯からさらに離脱した状態を示す平面図である。 図4に示す状態から、係合爪石とストップ歯との係合が解除された状態を示す平面図である。 図4に示す状態から、ストップ車の支持部材と第2レバー片とが当接した状態を示す平面図である。 図4に示すA−C線に沿った定トルク機構の断面図である。 定トルク機構の斜視図であって、動力調整機構を説明するための図である。 係合爪石とストップ歯との係脱に伴うトルク変動を示す図である。 図3に示すトルク発生機構の組み立て前の状態を示す斜視図であって、定トルクばねが組み合わされた第2動力車の上方に第1動力車をセットした状態を示す図である。 図21に示す状態から、規定部がスライド孔の開口部分に位置するように、第1動力車と第2動力車とを重ね合わせた状態を示す図である。 図22に示す状態から、第1動力車と第2動力車とを相対的に反対方向に回転させ、規定部をスライド孔の内側に係合させた状態を示す図である。 本発明に係る変形例を示す図であって、外歯タイプの固定歯車における、係合爪石とストップ歯との係合状態を示す平面図である。 図24に示す状態から、係合爪石がストップ歯から離脱しはじめた状態を示す平面図である。 図25に示す状態から、係合爪石がストップ歯からさらに離脱した状態を示す平面図である。 本発明に係るトルク発生機構の変形例を示す斜視図である。 本発明に係るトルク発生機構の別の変形例を示す斜視図である。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、時計の一例として機械式時計を例に挙げて説明する。また、各図面において、各部品を視認可能な大きさとなるために、必要に応じて各部品の縮尺を適宜変更している。
(時計の基本構成)
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。
時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側(すなわち、文字板のある方の側)をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側(すなわち、文字板と反対の側)をムーブメントの「表側」と称する。
なお、本実施形態では、文字板からケース裏蓋に向かう方向を上方、その反対側を下方と定義して説明する。また、各回転軸線を中心として、上方から見て時計回りに回転する方向を時計方向といい、上方から見て反時計回りに回転する方向を反時計方向という。
図1に示すように、本実施形態の時計1のコンプリートは、図示しないケース裏蓋及びガラス2からなる時計ケース内に、ムーブメント(本発明に係る時計用ムーブメント)10と、少なくとも時に関する情報を示す目盛りを有する文字板3と、時針5、分針6及び秒針7を含む指針4と、を備えている。
図2に示すように、ムーブメント10は、動力源である香箱車11と、香箱車11に繋がる動力源側輪列12と、調速機13によって調速される脱進機14と、脱進機14に繋がる脱進機側輪列15と、動力源側輪列12と脱進機側輪列15との間に配置された定トルク機構20と、を備えている。
なお、本実施形態における動力源側輪列12とは、定トルク機構20から見て、定トルク機構20よりも動力源である香箱車11側に位置する輪列をいう。同様に、本実施形態における脱進機側輪列15とは、定トルク機構20から見て、定トルク機構20よりも脱進機14側に位置する輪列をいう。
また、本実施形態では、一般に表輪列を構成する三番車に相当する位置に定トルク機構20を設け、後述する第1動力車25、第2動力車26、第1制御車55及び第2制御車56の全体で三番車としての機能を果たしている。
なお、図3に示すように、第1動力車25及び第2動力車26は第1回転軸線O1回りに回転し、第1制御車55及び第2制御車56は第1回転軸線O1に対して図示しない地板の面内方向にずれた位置に配置された第2回転軸線O2回りに回転する。
図2に示すように、香箱車11は地板と図示しない香箱受との間に軸支されており、内部にぜんまい16が収容されている。ぜんまい16は、図1に示すリュウズ17に連結された図示しない巻真の回転によって巻き上げられる。香箱車11は、ぜんまい16の巻き解きに伴う動力(トルク)によって回転し、動力源側輪列12を介して該動力を定トルク機構20に伝える。
なお、本実施形態では、動力源側輪列12を介して香箱車11からの動力を定トルク機構20に伝える場合を例にして説明するが、この場合に限定されるものではなく、例えば動力源側輪列12を介さずに、直接香箱車11からの動力を定トルク機構20に伝えても良い。
動力源側輪列12は、主に二番車18を備えている。
図3及び図4に示すように、二番車18は地板と図示しない輪列受との間に軸支され、香箱車11の回転に基づいて第3回転軸線O3回りに回転する。第3回転軸線O3は、第2回転軸線O2に対して地板の面内方向にずれた位置に配置されている。
なお、二番車18が回転すると、この回転に基づいて図示しない筒かなが回転する。筒かなには、図1に示す分針6が取り付けられており、筒かなの回転によって分針6が「分」を表示する。分針6は、脱進機14及び調速機13によって調速された回転速度、すなわち1時間で1回転する。
また、二番車18が回転すると、この回転に基づいて図示しない日の裏車が回転し、さらに日の裏車の回転に基づいて図示しない筒車が回転する。なお、日の裏車及び筒車は、動力源側輪列12を構成する時計部品である。筒車には、図1に示す時針5が取り付けられており、筒車の回転によって時針5が「時」を表示する。時針5は、脱進機14及び調速機13によって調速された回転速度、例えば12時間で1回転する。
図2に示すように、脱進機側輪列15は主に四番車19を備えている。
図3及び図4に示すように、四番車19は地板と輪列受との間に軸支され、定トルク機構20の後述する第1動力車25の回転に基づいて第4回転軸線O4回りに回転する。第4回転軸線O4は、第1回転軸線O1に対して地板の面内方向にずれた位置に配置されている。四番車19には、図1に示す秒針7が取り付けられており、四番車19の回転に基づいて秒針7が「秒」を表示する。秒針7は、脱進機14及び調速機13によって調速された回転速度、例えば1分間で1回転する。
脱進機14は主に図示しないがんぎ車及び図示しないアンクルを備えている。
がんぎ車は、地板と輪列受との間に軸支され、四番車19に噛み合っている。これにより、がんぎ車には、四番車19を介して定トルク機構20における後述の定トルクばね27からの動力が伝達される。これにより、がんぎ車は定トルクばね27からの動力によって回転する。
アンクルは、地板と図示しないアンクル受との間で回動可能(揺動可能)に支持され、図示しない一対の爪石を有している。一対の爪石は、調速機13によってがんぎ車におけるがんぎ歯に対して所定の周期で交互に係脱される。これにより、がんぎ車は所定の周期で脱進可能とされる。
調速機13は、主に図示しないてんぷを備えている。
てんぷは、てん真、てん輪及びひげぜんまいを備え、地板と図示しないてんぷ受との間に軸支されている。てんぷは、ひげぜんまいを動力源として一定の振り角で往復回転(正逆回転)する。
(定トルク機構の構成)
図2〜図4に示すように、定トルク機構20は脱進機14に伝達される動力の変動(トルク変動)を抑制する機構であって、トルク発生機構21及び周期制御機構22を主に備えている。
(トルク発生機構の構成)
トルク発生機構21は、第1回転軸線O1回りに回転する第1動力車25と、第1動力車25と同軸に配置され、第1回転軸線O1回りに第1動力車25に対して相対回転可能な第2動力車26と、第1動力車25と第2動力車26との間に配置され、蓄えた動力を第1動力車25及び第2動力車26に伝える定トルクばね(本発明に係る動力ばね)27と、を備えている。
なお、第1動力車25は第2動力車26よりも上方に配置されている。
図3〜図6に示すように、第2動力車26は、地板と輪列受との間に軸支され、第1回転軸線O1に沿って延びた軸部30と、軸部30に一体に形成された連結歯車31と、連結歯車31に一体に組み合わされた第1トルク調整歯車33と、連結歯車31における連結歯32に対して離脱可能に係合するトルク調整ジャンパ34を有し、トルク調整ジャンパ34を介して連結歯車31に連係する第2動力歯車35と、を備えている。
なお第2動力車26は、定トルクばね27から伝えられる動力によって回転する。
図5に示すように、軸部30は第1動力車25よりも上方に向けて延びている。
連結歯車31は、軸部30における上下方向の中央部分と下端部との間に形成され、所定の厚みを有している。連結歯車31における上端部側の外周面には、図6に示すように該連結歯車31の周方向に間隔をあけて上記連結歯32が複数形成されている。
各連結歯32は、第1回転軸線O1を中心として反時計方向側を向いた第1係合面32aと、時計方向側を向いた第2係合面32bと、を備えている。
第1係合面32aは、第1回転軸線O1に対して直交する径方向に沿って形成されている。これに対して第2係合面32bは、連結歯車31の外周面から径方向の外側に向かうにしたがって漸次反時計方向側に向けて延びるように傾斜している。
図5に示すように、第1トルク調整歯車33は、連結歯車31を径方向の外側から囲む環状に形成され、連結歯車31のうち連結歯32よりも下方に位置する部分に対して嵌合している。これにより、第1トルク調整歯車33及び連結歯車31は、上述したように一体に組み合わされている。
図5及び図7に示すように、第1トルク調整歯車33の外周面には、後述する第2トルク調整歯車111の第2トルク調整歯111aが噛み合う第1トルク調整歯33aが全周に亘って形成されている。
図5及び図6に示すように、第2動力歯車35は、連結歯32を径方向の外側から囲む環状に形成され、第1回転軸線O1回りに回転可能に第1トルク調整歯車33上に載置されている。図示の例では、第2動力歯車35は、第1トルク調整歯車33よりも径が大きく形成されている。
第2動力歯車35の外周面には、後述する第2制御歯車62における第2制御歯62aが噛み合う第2動力歯35aが全周に亘って形成されている。
第2動力歯車35には、該第2動力歯車35を上下に貫通すると共に、連結歯32を一定の範囲に亘って露出させる開口部36が形成されている。上記トルク調整ジャンパ34は、この開口部36内に配置されるように第2動力歯車35に一体に形成されている。
詳細には、トルク調整ジャンパ34は、第2動力歯車35に基端部34aが一体に形成され、自由端とされた先端部34bが径方向に移動するように基端部34aを中心に弾性変形可能とされている。
トルク調整ジャンパ34の先端部34bは、その一部が連結歯車31側に向けて突出しており、周方向に隣り合う連結歯32の間に入り込むように配置されている。このとき、トルク調整ジャンパ34の先端部34bは、所定のばね力によって周方向に隣り合う連結歯32の間に入り込むように押し付けられている。
これにより、トルク調整ジャンパ34の先端部34bは、周方向に隣り合う連結歯32のうち、トルク調整ジャンパ34の先端部34bよりも時計方向側に位置する一方の連結歯32の第1係合面32aに係合していると共に、トルク調整ジャンパ34の先端部34bよりも反時計方向側に位置する他方の連結歯32の第2係合面32bに対して係合している。
上述したように、第1係合面32aは径方向に沿って形成され、第2係合面32bは傾斜している。そのため、連結歯車31が反時計方向に回転した場合には、トルク調整ジャンパ34の先端部34bと、トルク調整ジャンパ34の先端部34bよりも時計方向側に位置する連結歯32の第1係合面32aと、を周方向に係合させることができ、先端部34bと第1係合面32aとの係合が解除されない限りにおいて、トルク調整ジャンパ34を介して第2動力歯車35を反時計方向に共回りさせることができる。
なお、連結歯車31に対して、トルク調整ジャンパ34の先端部34bと連結歯32の第1係合面32aとの係合が解除される反時計方向へのトルクが加わった場合には、トルク調整ジャンパ34の先端部34bと第1係合面32aとの係合が解除される。これにより、連結歯32はトルク調整ジャンパ34の先端部34bを周方向に乗り越えながら反時計方向に移動する。そのため、第2動力歯車35に対して連結歯車31を相対的に反時計方向に回転させることが可能となる。
これに対して、連結歯車31が時計方向に回転した場合には、トルク調整ジャンパ34の先端部34bは、トルク調整ジャンパ34の先端部34bよりも反時計方向側に位置する連結歯32の第2係合面32bの傾斜によって、第2係合面32b上を摺動しながら径方向の外側に向けて押圧される。
これにより、トルク調整ジャンパ34の先端部34bと第2係合面32bとの係合が解除され、連結歯32はトルク調整ジャンパ34の先端部34bを周方向に乗り越えながら時計方向に移動する。そのため、第2動力歯車35に対して連結歯車31を相対的に時計方向に回転させることが可能となる。
つまり、トルク調整ジャンパ34及び連結歯32は、連結歯車31が反時計方向に回転したときに第2動力歯車35を共回りさせ、且つ連結歯車31が時計方向に回転したときに、第2動力歯車35に対する連結歯車31の相対的な回転を許容するラチェット機構として機能する。
なお、トルク調整ジャンパ34のばね力は、連結歯車31を反時計方向にトルクTjで回転させたときに、該トルク調整ジャンパ34の先端部34bと連結歯32の第1係合面32aとの係合が解除されるように設定されている。以降、トルクTjをトルク調整ジャンパ34のジャンパトルクTjと称する。
さらに、トルク調整ジャンパ34のばね力は、連結歯車31を時計方向にトルクTkで回転させたときに、該トルク調整ジャンパ34の先端部34bと連結歯32の第2係合面32bとの係合が解除されるように設定されている。以降、トルクTkをトルク調整ジャンパ34のジャンパトルクTkと称する。
図5に示すように、第2動力歯車35の上方には、トルク調整ジャンパ34の先端部34bが上方に移動することを規制する規制リング37が配置されている。
規制リング37は、連結歯車31を径方向の外側から囲む環状に形成され、第2動力歯車35に対して非接触状態で、連結歯車31のうち連結歯32よりも上方に位置する部分に対して嵌合している。
これにより、トルク調整ジャンパ34の先端部34bが上方に跳ね上がる或いは浮き上がることを規制することができ、トルク調整ジャンパ34の先端部34bと連結歯32との係合を安定させることができる。
図3〜図5に示すように、第1動力車25は、第1回転軸線O1と同軸に配置された回転筒体40と、回転筒体40に一体に連結された第1動力歯車41と、を備えている。
なお第1動力車25は、定トルクばね27から伝えられる動力によって時計方向に回転する。なお第1動力車25及び第2動力車26は、定トルクばね27から伝えられる動力によって、第1回転軸線O1回りに互いに反対方向に回転可能とされている。
回転筒体40内には、第2動力車26の軸部30が下方から挿通され、回転筒体40の上方に突出している。回転筒体40における上端部及び下端部の内側には、例えばルビー等の人工宝石から形成されたリング状の穴石42が圧入されている。第2動力車26の軸部30は、これら穴石42の内側を挿通している。これにより、第1動力車25及び第2動力車26は、がたつき少なく第1回転軸線O1回りに相対回転可能に組み合わされている。
なお、穴石42は人工宝石で形成される場合に限定されるものではなく、例えばその他の脆性材料や鉄系合金等の金属材料で形成しても構わない。
第1動力歯車41は、第1回転軸線O1を中心として周方向に間隔を配置された複数のアーム部41aと、アーム部41aの外端部に連結されたリング状の歯車本体41bと、を備えている。
図示の例では、アーム部41aは第1回転軸線O1を中心として90度の間隔をあけて4つ形成されている。ただし、アーム部41aの数、配置や形状はこの場合に限定されるものではなく、自由に変更して構わない。
歯車本体41bの外周面には、後述する第1制御歯車71における第1制御歯71cが噛み合う第1動力歯41cが全周に亘って形成されている。第1動力歯41cは、四番車19における四番かな19aに対しても噛み合っている。これにより、第1動力車25は、図2に示す矢印R1のように脱進機14に繋がる四番車19、すなわち脱進機側輪列15に対して定トルクばね27からの動力を伝えることが可能とされている。
なお、本実施形態では、脱進機側輪列15を介して定トルクばね27からの動力を脱進機14に伝える場合を例にして説明するが、この場合に限定されるものではなく、例えば脱進機側輪列15を設けず、定トルクばね27からの動力を直接脱進機14に伝達するように構成しても良い。
さらに、第1動力歯車41は第2動力歯車35と同等の直径に形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、第1動力歯車41と第2動力歯車35とを異なる直径で形成しても構わない。
定トルクばね27は、例えば鉄やニッケル等の金属や合金からなる薄板ばねであり、渦巻き状に形成されている。具体的には、定トルクばね27は、第1回転軸線O1を原点とした極座標系においてアルキメデス曲線に沿う渦巻き状に形成されている。これにより、定トルクばね27は、第1回転軸線O1方向から見て径方向に略等間隔で隣り合うように複数の巻き数で巻かれている。
図8及び図9に示すように、定トルクばね27は、一方の周端部である外端部(本発明に係る一端部)27bが第1動力車25側に連結されると共に、他方の周端部である内端部(他端部)27aが第2動力車26側に連結されている。これにより、定トルクばね27は蓄えた動力を第1動力車25及び第2動力車26にそれぞれ伝えることが可能とされている
なお、定トルクばね27のうち最外周部分の一部は、癖付け部27cを介して径方向の外側に離間すると共に、曲率半径が他の部分よりも大きく形成された円弧部とされている。この円弧部の端部が定トルクばね27の外端部27bとされている。
定トルクばね27は、内端部27aを巻出し位置として、外端部27bに向けて反時計方向に所定の巻き量で巻かれている。定トルクばね27には、巻き上げによって縮径するように弾性変形し、予負荷が加えられている。そのため、定トルクばね27にはトルクTcの動力が発生し、該動力が蓄えられている。
この蓄えられた動力は、定トルクばね27の弾性復元変形に伴って第1動力車25及び第2動力車26に伝えられる。これにより、第1動力車25が時計方向に回転可能とされ、且つ第2動力車26が反時計方向に回転可能とされている。以降、上記トルクTcを定トルクばね27の回転トルクTcと称する。
第1動力車25及び第2動力車26に対する定トルクばね27の固定構造について詳細に説明する。
図5、図8及び図9に示すように、定トルクばね27の内端部27aは、第2動力車26の軸部30に取り付けられた固定リング45に固定されている。
固定リング45は、軸部30のうち、規制リング37と第1動力車25における回転筒体40との間に位置する部分に例えば嵌合されている。定トルクばね27の内端部27aは、この固定リング45に対して例えば加締めや溶接等によって固定されている。
図3、図4、図8及び図9に示すように、定トルクばね27の外端部27bには、第1動力車25側に設けられたスライド孔(本発明に係る第1係合部)46内に離脱可能に係合され、外端部27bの径方向位置を規定する規定部(本発明に係る第2係合部)47と、第1動力車25における回転筒体(本発明に係る回転規制部)40に対して当接し、定トルクばね27の弾性復元変形に伴って外端部27bが第1回転軸線O1回りに回転することを規制する規制レバー(本発明に係る規制部材)48と、が設けられている。
スライド孔46は、第1動力歯車41におけるアーム部41aに形成されている。スライド孔46は、第1回転軸線O1回りを周回する周方向に沿って形成されると共に、反時計方向側に開口するように形成されている。
図8及び図9に示すように、規定部47は、上下に延びる円柱状に形成され、スライド孔46の内側に係合する軸体50と、軸体50の上端部に形成された頭部51と、軸体50の下端部に形成された二股状の脚部52と、を備えている。軸体50には、頭部51と脚部52との間に位置する部分に頭部51よりも拡径した拡径部53が形成されている。
定トルクばね27の外端部27bは、脚部52の内側に挿入された状態で、該脚部52に例えば接着或いは加締め等によって固定されている。これにより、定トルクばね27の外端部27bと規定部47とは一体に組み合わされている。
このように構成された規定部47は、スライド移動によってスライド孔46内に挿入されている。これにより、スライド孔46の内側に軸体50が係合している。特に、定トルクばね27の外端部27bは、定トルクばね27の弾性復元変形に伴う回転トルク(巻込トルク)によって時計方向に引っ張られる。そのため、規定部47はスライド孔46の周端壁側に引っ張られ、周端壁に軸体50が押し当たって係合している。このようにして、規定部47はスライド孔46の内側に係合し、定トルクばね27の外端部27bの径方向位置を規定している。
なお、スライド孔46が形成されたアーム部41aは、頭部51と拡径部53との間に挟まれるように配置されているので、スライド孔46の内側に係合された規定部47は上方及び下方への抜け止めがされている。
図9に示すように、規制レバー48は規定部47に対して一体に組み合わされている。図示の例では、規制レバー48の基端部は、規定部47における軸部30のうち拡径部53と脚部52との間に位置する部分に組み合わされている。規制レバー48の先端部48aは、第1動力車25における回転筒体40に対して径方向の外側から当接している。
これにより、規制レバー48を利用して、定トルクばね27の弾性復元変形に伴う回転トルクによって定トルクばね27の外端部27bが第1回転軸線O1回りに回転することを規制している。
(周期制御機構の構成)
図2〜図5に示すように、周期制御機構22は、第1動力車25に対して第2動力車26を間欠的に回転させることで図2に示す矢印R2のように定トルクばね27に動力を補充する機構であって、定トルク機構20に対して平面的にずれた位置に配置されている。
周期制御機構22は、第1動力車25の回転に伴って第2回転軸線O2回りに回転する第1制御車55と、第1制御車55と同軸に配置され、第2回転軸線O2回りに第1制御車55に対して相対回転可能な第2制御車56と、第1制御車55と第2制御車56との間に配置された遊星機構57と、を備えている。
なお、第1制御車55は第2制御車56よりも上方に配置されている。
図3及び図5に示すように、第2制御車56は地板と輪列受との間に軸支され、第2回転軸線O2に沿って延びた軸部60と、軸部60に一体に形成され、二番車18に噛み合う第2制御かな61と、第2動力車26における第2動力歯35aに噛み合う第2制御歯62aを有する第2制御歯車62と、を備えている。
軸部60は、第1制御車55よりも上方に向けて延びている。
第2制御かな61は、軸部60における上下方向の中央部分と下端部との間に形成されている。第2制御かな61は、二番車18に噛み合っているので、二番車18の回転に基づいて回転する。これにより、第2制御車56は、二番車18、すなわち動力源側輪列12を介して香箱車11からの動力が伝達される。
なお、第2制御車56は第2回転軸線O2回りに反時計方向に回転する。また、第2制御車56には、香箱車11からトルクTbの動力が伝達される。以降、トルクTbを香箱車11の回転トルクTbと称する。なお、香箱車11内のぜんまい16が所定の巻き量で巻き上げられている場合、回転トルクTbは定トルクばね27の回転トルクTcよりも大きいトルクとされている。
図5、図7及び図8に示すように、第2制御歯車62は、第2回転軸線O2を中心として周方向に間隔を配置された複数のアーム部62bと、アーム部62bの外端部に連結されたリング状の歯車本体62cと、アーム部62bに一体に形成された支持プレート62dと、を備えている。
歯車本体62cの外周面には、上記第2制御歯62aが全周に亘って形成されている。これにより、第2制御車56には、反時計方向に回転する第2動力車26から、時計方向に回転するような回転トルクTcが伝達される。
このとき、第2制御車56には、上述したように回転トルクTcよりも大きく、且つ回転トルクTcとは反対方向の回転トルクTbが動力源側輪列12を介して伝達されている。そのため、第2制御車56は時計方向に回転することが防止されている。
ただし、香箱車11内のぜんまい16が巻き解かれる等して、香箱車11の回転トルクTbが定トルクばね27の回転トルクTcよりも小さくなった場合、或いは後述する動力調整機構110によって、第2トルク調整歯車111を強制的に反時計方向に回転させた場合には、第2制御車56を時計方向に回転させることが可能とされている。
図3及び図5に示すように、第1制御車55は、第2回転軸線O2と同軸に配置された回転筒体70と、回転筒体70に一体に連結された第1制御歯車71と、を備えている。
回転筒体70内には、第2制御車56の軸部60が下方から挿通され、回転筒体70の上方に突出している。回転筒体70における上端部及び下端部の内側には、上記穴石42と同様の穴石72が圧入されている。第2制御車56の軸部60はこれら穴石72の内側を挿通している。これにより、第1制御車55及び第2制御車56は、がたつき少なく第2回転軸線O2回りに相対回転可能に組み合わされている。
第1制御歯車71は、第2回転軸線O2を中心として周方向に間隔を配置された複数のアーム部71aと、アーム部71aの外端部に連結されたリングの歯車本体71bと、を備えている。
図示の例では、アーム部71aは3つ形成されている。そのうち2つのアーム部71aは、第2回転軸線O2を中心として180度の間隔をあけて形成されている。これにより、第2回転軸線O2を中心として180度の間隔をあけて配置されたアーム部71aの間には、周方向に大きく開口した開口スペース73が確保されている。
ただし、アーム部71aの数、配置や形状はこの場合に限定されるものではなく、自由に変更して構わない。
歯車本体71bの外周面には、第1動力車25における第1動力歯41cに噛み合う第1制御歯71cが全周に亘って形成されている。これにより、第1制御車55は第1動力車25の回転に基づいて、第2回転軸線O2回りを反時計方向に回転する。
なお、第1制御歯車71は第2制御歯車62と同等の直径に形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、第1制御歯車71と第2制御歯車62とを異なる直径で形成しても構わない。
遊星機構57は、第1制御車55側に設けられ、第1制御車55の回転に伴って第2回転軸線O2回りを回転する係合爪石(本発明に係る係合爪)80と、第2制御車56側に設けられ、第2制御車56の回転に伴って自転しながら第2回転軸線O2回りを公転する遊星歯車であるストップ車81と、ストップ車81を自転及び公転させるための固定歯車82と、を備え、第1制御車55の回転に基づいて、係合爪石80とストップ車81とを間欠的に係脱させる。
係合爪石80は、例えばルビー等の人工宝石から形成され、第1制御車55の回転に伴って第2回転軸線O2回りを回転する支持レバー85に取り付けられている。
なお係合爪石80は、穴石42、72と同様に人工宝石で形成される場合に限定されるものではなく、例えばその他の脆性材料や鉄系合金等の金属材料で形成しても構わない。
また、係合爪石80は支持レバー85と別体ではなく、支持レバー85と一体に形成されても構わない。
図5、図8、図10及び図11に示すように、支持レバー85は、第1制御車55における回転筒体70のうち第1制御歯車71よりも下方に位置する部分に一体に連結されている。
支持レバー85は、回転筒体70側から歯車本体71bに向けて第1制御車55の径方向に沿って延びた第1レバー片86及び第2レバー片87を備えている。第1レバー片86と第2レバー片87とは、周方向に一定の間隔をあけて配置されていると共に、平面視で上記開口スペース73の内側に収まるように配置されている。
図示の例では、第1レバー片86及び第2レバー片87は互いに同形及び同サイズとなるように形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、第1レバー片86及び第2レバー片87を異なる形状及びサイズで形成しても構わない。
ストップ車81は、第1レバー片86と第2レバー片87との間に配置されている。なお、第1レバー片86がストップ車81よりも反時計方向側に配置され、第2レバー片87がストップ車81よりも時計方向側に配置されている。
図11に示すように、第1レバー片86の外端部側には、ストップ車81側に向けて開口した爪石保持部88が設けられている。爪石保持部88は、この開口を利用して係合爪石80を保持している。係合爪石80は、爪石保持部88よりもストップ車81側に突出した状態で保持されている。係合爪石80の突出した部分のうち、径方向の内側を向いた側面は、ストップ車81における後述する作用面95aが係脱可能とされた係合面80aとされている。図示の例では、係合面80aは全面に亘って平坦に形成された平坦面とされている。
図8、図10及び図12に示すように、ストップ車81は、第1レバー片86と第2レバー片87との間において、第2制御車56における支持プレート62dと、該支持プレート62dに固定された支持部材90と、の間に軸支されている。
支持部材90は、支持プレート62d上に固定された下部プレート91と、下部プレート91から上方に向けて起立すると共にストップ車81の上方に張り出した上部プレート92と、を備えている。図示の例では、下部プレート91は固定ピンや固定ねじ等の締結手段で固定しているが、この場合に限定されるものではない。
支持プレート62d及び上部プレート92には、ルビー等の人工宝石から形成された穴石93が上下に対向し合うようにそれぞれ設けられている。なお、この穴石93についても、例えばその他の脆性材料や鉄系合金等の金属材料で形成しても構わない。
ストップ車81は、支持プレート62dと上部プレート92との間に配置されると共に、これら支持プレート62d及び上部プレート92に形成された穴石93によって軸支され、第5回転軸線O5回りに回転可能とされている。
ストップ車81は、係合爪石80の係合面80aに対して係脱可能な複数のストップ歯95を有するストップ歯車96と、ストップ歯車96よりも下方に形成され、固定歯車82に噛み合うストップかな97と、を備えている。
図5及び図10に示すように、固定歯車82は、第1制御車55と第2制御車56との間に配置され、第2回転軸線O2と同軸に配置されたリング状の歯車本体100と、歯車本体100に一体に形成され、図示しない固定部品に固定された固定アーム101と、を備えている。図示の例では、歯車本体100は第1制御歯車71及び第2制御歯車62よりも僅かに直径が小さく形成され、その内周面の全周に亘ってストップかな97が噛み合う固定歯100aが形成されている。よって、本実施形態の固定歯車82は内歯タイプとされている。
固定歯車82が内歯タイプとされているので、図11に示すように、ストップ車81は第2制御車56の反時計方向の回転に伴って、第5回転軸線O5回りを時計方向に自転しつつ、第2回転軸線O2回りを反時計方向に公転する。図10に示すように、ストップ歯車96は、固定歯車82よりも上方に配置されており、固定歯車82及び支持部材90に対して接触することなく回転可能(自転及び公転可能)とされている。
図11に示すように、ストップ歯95の歯数は12歯とされている。ただし、この場合に限定されるものではなく、歯数を適宜変更して構わない。ストップ歯95のうち、時計方向を向いた側面は、係合爪石80の係合面80aに対して係脱する作用面95aとされている。また、ストップ車81の自転に伴ってストップ歯95の歯先が描く回転軌跡Mを、ストップ歯車96の回転軌跡Mという。
上述のように構成された係合爪石80及びストップ車81は、第1制御車55の回転に基づいて間欠的に係脱し合う関係とされている。この点について詳細に説明する。
ストップ車81の自転及び公転によって、ストップ歯95の作用面95aは係合爪石80の係合面80aに対して係合する。この係合後、支持レバー85及び係合爪石80は、第1制御車55の反時計方向への回転に伴って第2回転軸線O2回りを反時計方向に回転するので、ストップ歯車96から徐々に離脱する(すなわち、回転軌跡Mから徐々に退避する)。
そのため、図13に示すように係合の初期段階では、ストップ歯95の作用面95aは係合爪石80に深く係合し、その後、図14に示すように係合爪石80の離脱に伴ってストップ歯95の作用面95aは係合面80a上を摺動しながら係合爪石80の爪先側に移動する。これにより、ストップ歯95と係合爪石80との係合が徐々に浅くなる。そして、図15に示すように、ストップ歯95の作用面95aが係合爪石80の爪先を超えた時点で、係合が解除される。
なお、図13〜図15では、支持レバー85の図示を簡略化していると共に、第2レバー片87の図示を省略している。
ストップ歯95と係合爪石80との係合が解除されると、図16に示すように、係合爪石80及びストップ車81を介した第1制御車55と第2制御車56との連係が解除されるので、第2制御車56を第2回転軸線O2回りに反時計方向に回転させることができる。そのためストップ車81は、第2制御車56の回転に伴って第5回転軸線O5回りに時計方向に自転しながら、係合爪石80を追従するように第2回転軸線O2回りを反時計方向に回転する。これにより、次のストップ歯95の作用面95aを係合爪石80の係合面80aに対して係合させることができる。
上述した動作の繰り返しによって、係合爪石80とストップ車81とを間欠的に係脱させることができる。なお、ストップ歯95は1歯ずつ係合爪石80に係合する。
ところで支持レバー85は、図13に示すようにストップ歯95の作用面95aが係合爪石80の係合面80aに係合してから、図14及び図15に示すように係合が解除されるまでの間に、ストップ歯95が係合面80aを押圧する押圧力F1と、ストップ歯95が係合面80a上を摺動することによって生じる摩擦力F2と、の合力F3に沿った仮想線Lが第2回転軸線O2を通過するように係合爪石80を保持している。
本実施形態では、ストップ歯95が係合面80aに対して係合した図13に示す係合位置P1と、ストップ歯95が係合面80aから離脱した図15に示す離脱位置P2と、の中間に位置する図14に示す中間位置P3で、仮想線Lが第2回転軸線O2を通過するように構成されている。
なお、先に述べたように、香箱車11内のぜんまい16が巻き解かれる等して、香箱車11の回転トルクTbが定トルクばね27の回転トルクTcよりも小さくなった場合、或いは後述する動力調整機構110によって、第2トルク調整歯車111を強制的に反時計方向に回転させた場合には、第2制御車56は時計方向に回転する。
この場合、第2制御車56の回転に伴って、支持部材90の上部プレート92が支持レバー85の第2レバー片87に向けて移動するので、その後、図17に示すように第2レバー片87に対して上部プレート92が当接する。これにより、第2レバー片87を利用して、第2制御車56がそれ以上時計方向に回転することを規制することが可能とされている。
(動力調整機構の構成)
本実施形態の定トルク機構20は、図3、図4、図18及び図19に示すように、第1動力車25又は第2動力車26を介して定トルクばね27の動力を調整する動力調整機構110をさらに備えている。
なお、本実施形態では、第2動力車26を介して定トルクばね27の動力を調整する場合を例に挙げて説明する。ただし、この場合に限定されるものではなく、上述のように第1動力車25を介して定トルクばね27の動力を調整しても構わない。
動力調整機構110は、第2動力車26における第1トルク調整歯車33に対して噛み合い可能とされた第2トルク調整歯車111と、第2トルク調整歯車111と第1トルク調整歯車33とが噛み合う噛合位置P4(図19参照)と、第2トルク調整歯車111と第1トルク調整歯車33との噛み合いが解除される解除位置P5(図19参照)と、の間で第2トルク調整歯車111を移動させる揺動レバー113と、を備えている。
揺動レバー113は、地板115とトルク調整受116との間に配置され、地板115に固定された揺動ピン117を中心に揺動可能とされている。揺動レバー113の一端部には、二股状に分かれたフォーク部118が形成されている。
フォーク部118の内側には、地板115に対して回転自在に取り付けられた偏心ピン119が配置されている。フォーク部118の内周面と偏心ピン119の外周面とは、互いに摺動可能に接触している。
偏心ピン119は、トルク調整受116の外側に露出しており、その上端部には例えばマイナス溝119aが形成されている。これにより、例えばドライバー等によりマイナス溝119aを利用して偏心ピン119を任意に回転操作することが可能とされている。ただし、マイナス溝119aに限定されるものではなく、偏心ピン119を任意に回転操作できる手段が偏心ピン119の上端部に形成されていれば良い。
上述した偏心ピン119を回転させることで、図19に示すように、揺動ピン117を中心として揺動レバー113を揺動させることができ、揺動レバー113の他端部を第1トルク調整歯車33に対して接近或いは離間させることが可能とされている。
図7、図18及び図19に示すように、第2トルク調整歯車111は、下端部が揺動レバー113の他端部に固定された案内ピン112に回転可能に取り付けられている。また、第2トルク調整歯車111の外周面には、第1トルク調整歯33aに対して噛み合い可能とされた第2トルク調整歯111aが全周に亘って形成されている。
揺動レバー113の他端部に案内ピン112を介して第2トルク調整歯車111が配置されているので、揺動レバー113を揺動させることで、第2トルク調整歯車111を移動させることができる。なお、揺動レバー113の他端部が第1トルク調整歯車33に対して最も接近した位置が上記噛合位置P4とされ、第1トルク調整歯33aと第2トルク調整歯111aとを噛み合わせることができる。
これに対して、揺動レバー113の他端部が第1トルク調整歯車33に対して最も離間した位置が上記解除位置P5とされ、第1トルク調整歯33aと第2トルク調整歯111aとの噛み合いを解除できる。
案内ピン112の上端部は、図4に示すようにトルク調整受116に形成された揺動溝120内に、該揺動溝120に沿って移動自在に挿入されている。揺動溝120は、揺動レバー113の他端部の揺動方向に沿って延びるように形成されている。これにより、第2トルク調整歯車111は、案内ピン112を介してがたつき少なく安定に支持され、揺動レバー113の揺動に伴って噛合位置P4と解除位置P5との間を移動する。
図7、図18及び図19に示すように、第2トルク調整歯車111と揺動ピン117との間には、第2トルク調整歯車111を回転させる操作車121が配置されている。
操作車121は、第2トルク調整歯111aに噛み合う操作歯122aが外周面の全周に亘って形成された操作歯車122を有し、地板115とトルク調整受116との間に軸支されている。
なお、操作車121は揺動レバー113に形成された貫通孔123を上下に貫くように配置されている。貫通孔123は、揺動レバー113の揺動方向に沿って延びるように形成されている。
これにより、操作車121は、揺動レバー113の揺動に影響されることなく、地板115とトルク調整受116との間に軸支されている。なお、操作車121の操作歯122aは、第2トルク調整歯車111の位置に関係なく第2トルク調整歯111aに対して常時噛み合っている。
操作車121の上端部は、図4に示すようにトルク調整受116の上面側に露出しており、外部から回転操作可能とされている。図示の例では、操作車121の上端部にマイナス溝121aが形成されており、例えばドライバー等によりマイナス溝121aを利用して操作車121を任意に回転操作することが可能とされている。ただし、マイナス溝121aに限定されるものではなく、操作車121を任意に回転操作できる手段が操作車121の上端部に形成されていれば良い。
上述のように動力調整機構110が構成されているので、図19に示すように、第2トルク調整歯車111を噛合位置P4に移動させた後、操作車121を回転操作することで、第2トルク調整歯車111を介して第1トルク調整歯車33を回転させることができ、定トルクばね27の巻き上げ或いは巻き解きを行って、定トルクばね27の動力を任意に調整することが可能となる。
この調整については、後に詳細に説明する。
(定トルク機構の作用)
上述したように構成された定トルク機構20の作用について説明する。
なお、初期状態として、香箱車11内のぜんまい16が所定の巻き量で巻き上げられ、香箱車11から動力源側輪列12を介して第2制御車56に回転トルクTbの動力が伝達されているものとする。また、定トルクばね27が所定の巻き量で巻き上げられ、定トルクばね27から第1動力車25及び第2動力車26に、回転トルクTbよりも小さい回転トルクTcの動力が伝達されているものとする。さらに、第2トルク調整歯車111が解除位置P5に位置しており、第2動力車26における第1トルク調整歯車33と第2トルク調整歯車111との噛み合いが外れているものとする。
本実施形態の定トルク機構20によれば、図2〜図4に示すように、定トルクばね27を有しているので、定トルクばね27に蓄えた動力を第1動力車25に伝えて、第1動力車25を第1回転軸線O1回りに時計方向に回転させることができる。これにより、第1動力車25から四番車19に定トルクばね27の動力を伝えることができ、第1動力車25の回転に伴って四番車19を第4回転軸線O4回りに回転させることができる。
つまり、図2に示す矢印R1のように、第1動力車25を介して脱進機側輪列15に定トルクばね27からの動力を伝えることができ、脱進機14を作動させることができる。
また、定トルクばね27からの動力は第2動力車26にも伝わるので、該第2動力車26を回転トルクTcで第1回転軸線O1回りに反時計方向に回転させようとする。
詳細には、定トルクばね27からの動力は、固定リング45を介して軸部30及び連結歯車31に伝わる。さらに連結歯車31に伝わった動力は、トルク調整ジャンパ34を介して第2動力歯車35に伝わった後、第2制御車56の第2制御歯車62に伝わる。これにより、第2制御車56には、回転トルクTcで第2回転軸線O2回りを時計方向に回転するような動力が定トルクばね27から伝達される。
しかしながら、第2制御車56には、動力源側輪列12から第2回転軸線O2回りを反時計方向に回転するような回転トルクTb(回転トルクTcよりも大きいトルク)が伝達されている。そのため、第2制御車56は時計方向に回転することが防止されている。
なお、第2制御車56には、動力源側輪列12から伝えられた回転トルクTbと、定トルクばね27から伝えられた回転トルクTcとの差分の動力(回転トルクTb−回転トルクTc)が作用する。ところが、ストップ車81と係合爪石80とが係合しているので、この係合によって第2制御車56と第1制御車55とを連係させることができ、第2制御車56が第2回転軸線O2回りを反時計方向に回転することが防止されている。
以上のことから、ストップ車81と係合爪石80とが係合している段階では、第2制御車56は第2回転軸線O2回りに回転することが防止されている。従って、第2動力車26についても、第1回転軸線O1回りに回転することが防止されている。
なお、第2制御車56には、上述した差分の動力が作用するので、ストップ車81のストップ歯95の作用面95aが係合爪石80の係合面80aに対して強く押し当たった状態で係合する。
また、定トルクばね27からの動力によって第1動力車25が回転すると、これに伴って第1制御車55が第2回転軸線O2回りを反時計方向に回転する。第1制御車55が回転すると、これに伴って支持レバー85が第2回転軸線O2回りを反時計方向に回転するので、係合爪石80をストップ歯車96の回転軌跡Mから退避させるように、ストップ歯車96から徐々に離脱させることができる。
これにより、図13に示す状態から図14に示すように、係合爪石80の離脱に伴ってストップ歯95の作用面95aが係合面80a上を摺動しながら係合爪石80の爪先側に移動する。そして、図15に示すように、ストップ歯95の作用面95aが係合爪石80の爪先を超えた時点で、ストップ歯95と係合爪石80との係合が解除される。これにより、係合爪石80及びストップ車81を介した第1制御車55と第2制御車56との連係が解除される。
従って、第2制御車56は、動力源側輪列12から伝えられた回転トルクTbと、定トルクばね27から伝えられた回転トルクTcとの差分の動力(回転トルクTb−回転トルクTc)によって、図16に示すように第2回転軸線O2回りを反時計方向に回転する。
第2制御車56が回転することで、第2動力歯車35を第1回転軸線O1回りに時計方向に回転させることができる。第2動力歯車35は、図6に示すように、トルク調整ジャンパ34と連結歯32との係合を介して連結歯車31に連係しているので、時計方向に回転することで、連結歯32における第1係合面32aが相対的にトルク調整ジャンパ34の先端部34b側に移動して、該先端部34bを乗り越えようとする。
しかしながら、第2動力歯車35に作用する動力は、上述のように動力源側輪列12から伝えられた回転トルクTbと、定トルクばね27から伝えられた回転トルクTcとの差分の動力(回転トルクTb−回転トルクTc)であるので、トルク調整ジャンパ34のジャンパトルクTjよりも小さい。従って、トルク調整ジャンパ34の先端部34bと連結歯32における第1係合面32aとの係合状態を維持することができる。
その結果、第2動力歯車35に伝わった動力を、トルク調整ジャンパ34を介して連結歯車31に伝えることができる。これにより、連結歯車31及び軸部30を第1回転軸線O1回りに時計方向に回転させることができる。
従って、軸部30に固定された固定リング45を介して、定トルクばね27を巻き上げることができ、定トルクばね27に動力を補充することができる。つまり、第1動力車25に動力を伝えることで失った動力の損失分を、図2に示す矢印R2で示すように、動力源である香箱車11側から伝えられた動力を利用して補充することができる。これにより、定トルクばね27の動力を一定に維持することができ、定トルクで脱進機14を作動させることができる。
なお、定トルクばね27に対する動力の補充を行っている場合であっても、第1動力車25は定トルクばね27からの動力によって回転し、脱進機側輪列15に定トルクばね27からの動力を伝えている。
また、上述した定トルクばね27に対する動力の補充が行われている際、図16に示すように、第2制御車56の回転に伴って、ストップ車81が第5回転軸線O5回りを時計方向に自転しながら、第2回転軸線O2回りを反時計方向に公転して、係合爪石80を追従する。そして、ストップ歯95の1歯分だけストップ車81が自転することで係合爪石80に追いつき、ストップ歯95の作用面95aが係合爪石80の係合面80aに再び係合する。
これにより、第1制御車55と第2制御車56とが再び連係するので、第2制御車56及び第2動力車26の回転が防止され、定トルクばね27への動力の補充が終了する。
以上を繰り返すことで、ストップ車81と係合爪石80との係脱を間欠的に行うことができる。すなわち、第1動力車25及び第1制御車55の回転に基づいて、遊星機構57がストップ車81と係合爪石80との係脱を間欠的に行い、第1動力車25に対して第2動力車26を間欠的に回転させることができる。これにより、間欠的に定トルクばね27への動力の補充を行うことができる。
以上説明したように、本実施形態の定トルク機構20によれば、定トルクばね27に蓄えられた動力を利用して、脱進機14を作動させることができると共に、間欠的に定トルクばね27に対して、香箱車11側から伝えられた動力を補充することができる。従って、定トルクばね27の動力を一定に維持することができ、定トルク性を維持でき、トルク変動を抑制した状態で脱進機14を作動させることができる。
また、本実施形態の定トルク機構20では、遊星機構57を利用して周期制御を行っているので、従来のカム方式のものとは異なり、いわゆる過解放の現象が定トルクばね27に生じるおそれがない。
また、図3及び図4に示すように、トルク発生機構21及び周期制御機構22を平面的にずらして配置しているので、従来の遊星車方式に比べて定トルク機構20全体の厚みを抑制することができる。しかも、第1動力車25と第2動力車26との間に定トルクばね27を配置し、且つ第1制御車55と第2制御車56との間に遊星機構57を配置している。従って、平面的な広がりを抑制することができ、従来の遊星車方式に比べて、小さな平面スペースで定トルク機構20を配置することができる。
従って、時計1の平面方向及び厚さ方向のいずれにおいても、コンパクト化及び省スペース化を図ることができる定トルク機構20とすることができ、より小型化及び薄型化を図り易いムーブメント10及び時計1とすることができる。
さらに、本実施形態の定トルク機構20では、支持レバー85が、図13に示すようにストップ歯95の作用面95aが係合爪石80の係合面80aに係合してから、図15に示すように係合が解除されるまでの間に、ストップ歯95が係合面80aを押圧する押圧力F1と、ストップ歯95が係合面80a上を摺動することによって生じる摩擦力F2と、の合力F3に沿った仮想線Lが第2回転軸線O2を通過するように係合爪石80を保持している。
従って、ストップ歯95と係合爪石80とが係合してから、その係合が解除されるまでを1サイクルとしたときに、図20に示すように、支持レバー85に生じる回転トルクに着目すると、1サイクルでの平均トルクを一定に維持することができる。
先に述べたように、図13に示すように係合の初期段階では、ストップ歯95の作用面95aは係合爪石80に深く係合し、その後、図14に示すように係合爪石80の離脱に伴ってストップ歯95の作用面95aは係合面80a上を摺動しながら係合爪石80の爪先側に移動する。そして、図15に示すように、ストップ歯95の作用面95aが係合爪石80の爪先を超えた時点で、係合が解除される。この一連の1サイクルにおいて、ストップ歯95に対する係合面80aの角度が僅かに変化するので、それに伴って上記合力F3の向きが変化する。
このとき、合力F3に沿った向きが、図14に示すように第2回転軸線O2を通過した瞬間では、支持レバー85に生じる回転トルクが発生しない状態となる。これに対して、合力F3に沿った向きが、図13及び図15に示すように第2回転軸線O2からずれた場合には、そのずれ量に応じて回転トルクが発生する。
特に、合力F3に沿った向きが第2回転軸線O2を通過する前後では、逆向きの回転トルクが発生する。すなわち、図13に示すように支持レバー85をストップ車81側に引き寄せるような回転トルクTが支持レバー85に発生すると共に、図15に示すように支持レバー85をストップ車81から引き離すような回転トルクTが支持レバー85に発生する。
従って、図20に示すように、1サイクルで見たときに支持レバー85のトルク変動はあるものの、1サイクルでの平均トルクを一定にすることができる。その結果、定トルク性を確保することができる。
しかも本実施形態では、ストップ歯95が係合面80aに対して係合した図13に示す係合位置P1と、ストップ歯95が係合面80aから離脱した図15に示す離脱位置P2と、の中間に位置する図14に示す中間位置P3で、仮想線Lが第2回転軸線O2を通過するように構成されている。これにより、上述した1サイクルでの平均トルクを、より安定的に一定に維持することができ、定トルク性をさらに安定して確保することができる。
さらに本実施形態の定トルク機構20は、図19に示すように、動力調整機構110を備えているので、必要に応じて定トルクばね27の動力を調整することができる。
例えば、定トルクばね27を巻き上げて、動力を増大させる場合について説明する。
この場合には、まず偏心ピン119を回転させることで揺動レバー113を揺動ピン117回りに揺動させて、第2トルク調整歯車111を解除位置P5から噛合位置P4に移動させる。これにより、第1トルク調整歯車33の第1トルク調整歯33aと第2トルク調整歯車111の第2トルク調整歯111aとを噛み合わせることができる。
次いで、操作車121を時計方向に回転させる。このとき、定トルクばね27の回転トルクTcとトルク調整ジャンパ34のジャンパトルクTkとを加算したトルクよりも高い入力トルクで、操作車121を回転させる。これにより、第2トルク調整歯車111を反時計方向に回転させることができると共に、第1回転軸線O1回りを時計方向に回転させるような動力を、第2トルク調整歯車111を介して第1トルク調整歯車33に伝えることができる。
第1トルク調整歯車33は連結歯車31に一体に組み合わされているので、第1回転軸線O1回りを時計方向に回転させるような動力が連結歯車31に伝わる。このとき、連結歯車31に伝わった動力は上記入力トルクであるので、図6に示す連結歯車31は第2動力歯車35に対して相対的に時計方向に回転する。すなわち、トルク調整ジャンパ34の先端部34bと連結歯32の第2係合面32bとの係合を解除することができ、トルク調整ジャンパ34による回転規制を解除しながら連結歯車31を時計方向に回転させることができる。
なお、連結歯32は、連結歯車31の回転に伴ってトルク調整ジャンパ34の先端部34bを周方向に次々と乗り越えながら移動する。
このように連結歯車31を回転させることができるので、軸部30に固定された固定リング45を時計方向に回転させることができ、定トルクばね27の内端部27aを時計方向に回転することができる。これにより、定トルクばね27の巻き上げを行うことができ、定トルクばね27の予負荷を増大させて、回転トルクTcが増大するように調整することができる。
なお、上述した調整の間、第2動力歯車35は回転しないものの、第2動力歯車35には、該第2動力歯車35を時計方向に回転させるような動力が伝わる。このときの動力は、ジャンパトルクTk以上の回転トルクとされている。そして、この動力は第2制御車56に伝わり、第2制御車56を、第2回転軸線O2回りに反時計方向に回転するように作用する。このとき、先に述べたように、第2制御車56には動力源側輪列12から回転トルクTbで第2回転軸線O2回りを反時計方向に回転するような動力が伝達されている。
従って、第2制御車56には、第2動力歯車35から伝わった動力と、動力源側輪列12から伝わった動力とが加算された動力が作用する。これにより、ストップ車81のストップ歯95の作用面95aが係合爪石80の係合面80aに対してさらに強く押し当たった状態で係合する。これにより、第2動力歯車35が回転することを適切に防止でき、定トルクばね27の巻き上げを反応良く速やかに行うことができる。
次に、定トルクばね27を巻き解き、動力を低下させる場合について説明する。
この場合には、図19に示す操作車121を反時計方向に回転させる。このとき、トルク調整ジャンパ34のジャンパトルクTjと、定トルクばね27の回転トルクTcとの差分(Tj−Tc)よりも小さい入力トルクで、操作車121を回転させる。
これにより、第2トルク調整歯車111を時計方向に回転させることができると共に、第1回転軸線O1回りを反時計方向に回転させるような動力を、第2トルク調整歯車111を介して第1トルク調整歯車33に伝えることができる。
これにより、第1回転軸線O1回りを反時計方向に回転させるような動力が連結歯車31に伝わる。このとき、連結歯車31に伝わった動力は上記入力トルクであるので、図6に示すトルク調整ジャンパ34の先端部34bと連結歯32の第1係合面32aとの係合を維持したまま、連結歯車31及び第2動力歯車35を反時計方向に共回りさせることができる。
すると、これに伴って第2制御車56が第2回転軸線O2回りを時計方向に回転する。そのため、第2制御車56の回転に伴って、支持部材90の上部プレート92が支持レバー85の第2レバー片87に向けて移動した後、図17に示すように第2レバー片87に対して上部プレート92が当接する。
これにより、第2レバー片87を利用して、第2制御車56がそれ以上時計方向に回転することを規制することが可能とされている。
次いで、上述のように時計方向への第2制御車56の回転規制を行った後、さらに操作車121をトルク調整ジャンパ34のジャンパトルクTjと、定トルクばね27の回転トルクTcとの差分(Tj−Tc)よりも大きな入力トルクで、反時計方向に回転させる。このとき、第2制御車56及び第2動力車26の回転が規制されているため、図6に示す連結歯車31は第2動力歯車35に対して相対的に反時計方向に回転する。すなわち、トルク調整ジャンパ34の先端部34bと連結歯32の第1係合面32aとの係合を解除することができ、トルク調整ジャンパ34による回転規制を解除しながら連結歯車31を反時計方向に回転させることができる。
なお、連結歯32は、連結歯車31の回転に伴ってトルク調整ジャンパ34の先端部34bを周方向に次々と乗り越えながら移動する。
以上のように連結歯車31を回転させることができるので、軸部30に固定された固定リング45を反時計方向に回転させることができ、定トルクばね27の内端部27aを反時計方向に回転することができる。これにより、定トルクばね27を巻き解くことができ、定トルクばね27の予負荷を低下させて、回転トルクTcが低下するように調整することができる。
なお、動力の調整の場合に限られず、例えば香箱車11内のぜんまい16が巻き解かれる等して、香箱車11の回転トルクTbが定トルクばね27の回転トルクTcよりも小さくなった場合であっても、上述した場合と同様に第2制御車56の時計方向への過度な回転を規制できるので、定トルクばね27が完全に解けてしまうことを防止できる。
以上述べたように、動力調整機構110を備えているので、必要に応じて定トルクばね27の動力を調整でき、より安定して定トルクで脱進機14を作動させることができる。また、後述するトルク発生機構21の組み立てを行った後に、定トルクばね27に動力を付与することができるので、組立性を向上することができる。さらに、第2動力車26が周期制御機構22とは平面的にずれた位置に配置されているので、周期制御機構22を気にすることなく動力調整機構110を設けることができ、動力調整機構110を容易に設置し易い。
加えて、操作車121を介した第2トルク調整歯車111の回転によって、定トルクばね27の動力を調整できるので、該調整を微細且つ直感的に行うことができ、調整作業を行い易い。さらに、第2トルク調整歯車111を解除位置P5に位置させておくことで、動力調整を行わない場合に、第2動力車26に余分な回転負荷がかかることを防止することができる。
さらに、本実施形態の定トルク機構20によれば、トルク発生機構21を具備しているのでさらに以下の作用効果を奏功することができる。
すなわち、図3及び図4に示すように、定トルクばね27の外端部27bに設けられた規定部47が、第1動力車25に設けられたスライド孔46に対して離脱可能に係合されているので、規定部47をスライド孔46内から離脱させるだけの簡便な操作で、定トルクばね27と第1動力車25とを容易に分解することができる。
従って、トルク発生機構21のメンテナンス性を向上でき、オーバーホール等を容易に行うことができる。また、定トルクばね27と第1動力車25とを容易に分解することができるので、注油等の保守作業も容易に行うことができる。
また、トルク発生機構21の組み立てを行う場合には、規定部47をスライド孔46内に係合させるだけで、定トルクばね27、第1動力車25及び第2動力車26を一体に組み合わせることができると共に、定トルクばね27の外端部27bの径方向位置を規定して、適切に位置決めすることができる。
詳細には、図21に示すように、定トルクばね27が組み合わされた第2動力車26の上方に、第1動力車25をセットする。なお、この段階では、定トルクばね27は弾性変形していない状態である。次いで、図22に示すように、規定部47がスライド孔46の開口部分に位置するように、第1動力車25と第2動力車26とを重ね合わせる。次いで、図23に示すように、スライド孔46内に規定部47が入りこむように、第1動力車25と第2動力車26とを第1回転軸線O1回りに相対的に反対方向に回転させる。これにより、スライド移動によって規定部47をスライド孔46内に容易に進入させることができ、図3及び図4に示すように、規定部47をスライド孔46の内側に係合させることができる。
これにより、第1動力車25、第2動力車26及び定トルクばね27を一体に組立てることができると共に、定トルクばね27の外端部27bの径方向位置を規定して位置決めすることができる。
次いで、定トルクばね27の外端部27bを位置決めしたまま、第1動力車25と第2動力車26とを第1回転軸線O1回りに、相対的に反対方向にさらに回転させることで、定トルクばね27を巻き上げて定トルクばね27に予負荷を与えることができ、動力を蓄えることができる。この場合、例えば上述した動力調整機構110による定トルクばね27の巻き上げを行っても良い。
以上のことから、トルク発生機構21を容易に組み立てることができ、組立作業性を向上することができる。
しかも、定トルクばね27の巻き上げ時、定トルクばね27の外端部27bに設けた規制レバー48を第1動力車25の回転筒体40に対して当接させることができるので、定トルクばね27の弾性復元変形に伴う回転トルクによって、外端部27bが第1回転軸線O1回りに回転することを規制することができる。これにより、定トルクばね27におけるばね部同士が自己接触することを防止しながら、定トルクばね27を巻き上げることができる。
従って、定トルクばね27の巻き上げ時と動力解放時とでトルク差(ヒステリシス)が生じることを防止できる。加えて、定トルクばね27の巻き上げ時、巻き上げに伴って規制レバー48が回転筒体40に対して徐々に強く当接するので、定トルクばね27の巻き量、すなわち予負荷を一定にし易い。
また、定トルクばね27に蓄えられていた動力が何らかの理由で低下した場合、すなわち予負荷が低下した場合には、スライド孔46内から規定部47を離脱させて、規定部47をスライド孔46内から離間させることが可能となる。これにより、スライド孔46と規定部47との相対的な位置関係の変化を視認によって速やかに把握することができると共に、定トルクばね27に蓄えられていた動力が低下したこと、例えば巻き量が零になったことを容易且つ確実に把握することができる。
以上述べたように、メンテナンス性、保守作業性や組立作業性が向上し、取扱性に優れたトルク発生機構21とすることができる。従って、同様に取扱性に優れた有用な定トルク機構20、ムーブメント10及び時計1とすることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
例えば上記実施形態では、香箱車11内に収容されたぜんまい16の動力を定トルク機構20に伝達する構成を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば香箱車11以外に設けられたぜんまい16から、定トルク機構20に動力が伝達されるように構成されても構わない。
また、上記実施形態では、リュウズ17を利用してぜんまい16を手動で巻き上げる手巻き式のムーブメント10としたが、この場合に限定されるものではなく、例えば回転錘を備えた自動巻き式のムーブメントとしても構わない。
また、上記実施形態では、香箱車11からの動力を、動力源側輪列12を介して第2制御車56に伝え、定トルクばね27からの動力を第1動力車25から脱進機側輪列15を介して脱進機14に伝えたが、この場合に限定されるものではない。例えば、香箱車11からの動力を、動力源側輪列12を介して第2動力車26に伝え、定トルクばね27からの動力を、第1動力車25を介して第1制御車55に伝え、第1制御車55から脱進機側輪列15を介して脱進機14に伝えても良い。
いずれにしても、香箱車11からの動力が第2制御車56又は第2動力車26に伝えられ、定トルクばね27からの動力を、第1動力車25又は第1制御車55から脱進機14に伝わるように構成されていれば良い。
また、上記実施形態では、三番車に相当する位置に定トルク機構20を設けたが、この場合に限定されるものではなく、例えば二番車18や四番車19に相当する位置に設けても構わない。いずれにしても、香箱車11と脱進機14との間に定トルク機構20を設ければ良い。この際、香箱車11と脱進機14とを直列に繋ぐ直列輪列に含まれるように定トルク機構20を配置しても構わないし、直列輪列から外れた位置であっても動力の伝達が可能な動力伝達経路であれば定トルク機構20を自由に配置して構わない。
また、上記実施形態では、トルク調整ジャンパ34を利用して連結歯車31と第2動力歯車35とを連係させたが、この場合に限定されるものではなく、例えば摩擦スリップ構造を利用して連結歯車31と第2動力歯車35とを連係させても構わない。
また、上記実施形態では内歯タイプの固定歯車82を利用して、ストップ車81を自転及び公転させたが、この場合に限定されるものではなく、外歯タイプの固定歯車82としても構わない。
この場合には、図24〜図26に示すように、ストップ車81を第5回転軸線O5回りに反時計方向に自転させながら、第2回転軸線O2回りに時計方向に公転させることができる。この場合であっても、ストップ車81の自転方向が上記実施形態と反対になるだけであって、同様の作用効果を奏功することができる。なお、この場合には、係合爪石80の係合面80aは径方向の外側を向く。
すなわち、図24に示すように係合の初期段階では、ストップ歯95の作用面95aは係合爪石80に深く係合し、その後、図25に示すように係合爪石80の離脱に伴ってストップ歯95の作用面95aは係合面80a上を摺動しながら係合爪石80の爪先側に移動する。そして、図26に示すように、ストップ歯95の作用面95aが係合爪石80の爪先を超えた時点で、係合が解除される。
このとき、支持レバー85が、ストップ歯95が係合面80aを押圧する押圧力F1と、ストップ歯95が係合面80a上を摺動することによって生じる摩擦力F2と、の合力F3に沿った仮想線Lが第2回転軸線O2を通過するように係合爪石80を保持している。なお、外歯タイプの固定歯車82の場合には、ストップ車81の自転方向が上記実施形態と反対になるので、上記合力F3が第2回転軸線O2方向を向く。
外歯タイプの固定歯車82の場合であっても、合力F3に沿った向きが、図25に示すように第2回転軸線O2を通過した瞬間では、支持レバー85に生じる回転トルクが発生しない状態となる。また合力F3に沿った向きが、図24及び図26に示すように第2回転軸線O2からずれた場合には、そのずれ量に応じて回転トルクが発生する。
特に、合力F3に沿った向きが第2回転軸線O2を通過する前後では、逆向きの回転トルクが発生する。すなわち、図26に示すように支持レバー85をストップ車81側に引き寄せるような回転トルクTが支持レバー85に発生すると共に、図24に示すように支持レバー85をストップ車81から引き離すような回転トルクTが支持レバー85に発生する。
従って、外歯タイプの固定歯車82の場合であっても、ストップ歯車96と係合爪石80とが係合してから、その係合が解除されるまでを1サイクルとしたときに、支持レバー85に生じる回転トルクにおける1サイクルでの平均トルクを一定に維持することができる。
また、上記実施形態では、第1動力車25における回転筒体40に対して規制レバー48の先端部48aを当接させたが、この場合に限定されるものではない。例えば図27に示すように、規制レバー48の先端部48aに上方に向けて突出する規制ピン130を設け、この規制ピン130を第1動力歯車41における開口部の内壁面(本発明に係る回転規制部)131に対して当接させても構わない。この場合であっても同様の作用効果を奏功することができる。
さらには、図28に示すように、規制レバー48の先端部48aを、第1動力車25におけるアーム部41aから下方に向けて突出させた規制ピン(本発明に係る回転規制部)135に対して当接させても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。
なお、図28では、アーム部41aに、平面視で第1回転軸線O1の径方向に直交する方向に延びた長孔状の貫通孔(本発明に係る第1係合部)136が形成されている。そして、規定部47の頭部51は、貫通孔136に対応して平面視長方形状に形成されると共に、軸体50の中心軸線回りに回転可能とされている。これにより、頭部51を貫通孔136に挿通させた後に回転させることで、貫通孔136の内側に規定部47を係合させることができると共に、貫通孔136からの規定部47の抜け止めを行うことができる。
従って、この場合であっても、定トルクばね27の外端部27bの径方向位置を規定することができ、同様の作用効果を奏功することができる。
また、上記実施形態では、定トルクばね27の内端部27aを、固定リング45を介して第2動力車26に固定し、定トルクばね27の外端部27bに、外端部27bの径方向位置を規定する規定部47、及び定トルクばね27の弾性復元変形に伴って外端部27bが第1回転軸線O1回りに回転することを規制する規制レバー48を設けたが、この場合に限定されるものではない。
例えば、定トルクばね27の外端部27bを、例えばひげ持等を介して第1動力車25に固定し、定トルクばね27の内端部27aに、内端部27aの径方向位置を規定する規定部、及び定トルクばね27の弾性復元変形に伴って内端部27aが第1回転軸線O1回りに回転することを規制する規制レバーを設けても構わない。
このように構成した場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。
また、上記実施形態では、トルク発生機構21による巻き上げ動作によって定トルクばね27を巻き上げる(すなわち巻き数を増加させる)場合を説明したが、この場合に限定されるものではなく、巻き上げ動作によって定トルクばね27を巻き緩める(すなわち巻き数を減少させる)ように構成しても構わない。
この場合には、例えば定トルクばね27を上記実施形態とは逆向きに取り付けるだけで良く、スライド孔46、規定部47、規制レバー48等の各構成を変更する必要はなく、さらに第1動力車25および第2動力車26に対する定トルクばね27の位置関係等についても変更する必要がない。
いずれにしても、本発明に係るトルク発生機構21は、巻き上げ動作による巻き上げ或いは巻き緩みを行ういずれの場合であっても適用することができ、定トルクばね27に弾性エネルギーを蓄えることができる。なお、定トルクばね27の弾性エネルギーを減少させることを、いわゆる巻き解きという。
さらに、上記実施形態では周期制御機構の一例として、第1制御車55、第2制御車56、及び遊星機構57を具備する周期制御機構22を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。
例えば、周期制御機構としては、特許6040063号公報に開示されるものを適用してもよい。具体的には脱進機側輪列に接続されたカムに係合すると共にカムの回転に対応して揺動するフォロア或いはフォークを有し、フォロア或いはフォークに設けられた係脱爪を動力源側輪列に接続された脱進車に周期的に係脱させることで係脱周期を制御し、動力源側輪列と脱進機側輪列との間の定トルクばねを巻き上げる周期制御機構を適用しても良い。
O1…第1回転軸線
O2…第2回転軸線
1…時計(機械式時計)
10…ムーブメント(時計用ムーブメント)
11…香箱車(動力源)
12…動力源側輪列
14…脱進機
15…脱進機側輪列
20…定トルク機構
21…トルク発生機構
22…周期制御機構
25…第1動力車
26…第2動力車
27…定トルクばね(動力ばね)
27b…定トルクばねの外端部(動力ばねの一端部)
40…回転筒体(回転規制部)
46…スライド孔(第1係合部)
47…規定部(第2係合部)
48…規制レバー(規制部材)
55…第1制御車
56…第2制御車
57…遊星機構
80…係合爪石(係合爪)
81…ストップ車
96…ストップ歯車
113…揺動レバー(移動部材)
131…内壁面(回転規制部)
135…規制ピン(回転規制部)
136…貫通孔(第1係合部)

Claims (7)

  1. 第1回転軸線回りに回転する第1動力車と、
    前記第1動力車と同軸に配置され、前記第1回転軸線回りに前記第1動力車に対して相対回転可能な第2動力車と、
    前記第1動力車と前記第2動力車との間に配置され、蓄えた動力を前記第1動力車及び前記第2動力車を伝える渦巻き状の動力ばねと、を備え、
    前記動力ばねの一端部には、
    前記第1動力車に設けられた第1係合部に対して離脱可能に係合され、前記一端部の径方向位置を規定する第2係合部と、
    前記第1動力車に設けられた回転規制部に対して当接し、前記動力ばねの変形に伴って前記一端部が前記第1回転軸線回りに回転することを規制する規制部材と、が設けられている、トルク発生機構。
  2. 請求項1に記載のトルク発生機構において、
    前記第1係合部は、前記第1回転軸線回りを周回する周方向に沿って形成されると共に、周方向の一方向側に開口したスライド孔とされ、
    前記第2係合部は、スライド移動によって前記第1係合部に対して係合される、トルク発生機構。
  3. 請求項1又は2に記載のトルク発生機構と、
    前記第1動力車に対して前記第2動力車を間欠的に回転させ、前記動力ばねに動力を補充する周期制御機構と、を備える、定トルク機構。
  4. 請求項3に記載の定トルク機構において、
    前記周期制御機構は、
    前記第1動力車の回転に伴って第2回転軸線回りに回転する第1制御車と、
    前記第1制御車と同軸に配置されると共に、前記第2回転軸線回りに前記第1制御車に対して相対回転可能とされ、前記第2動力車に噛み合う第2制御車と、
    前記第1制御車と前記第2制御車との間に配置され、前記第1制御車の回転に基づいて、前記第1制御車に設けられた係合爪と前記第2制御車に設けられたストップ車とを間欠的に係脱させる遊星機構と、を備え、
    前記第1動力車又は前記第1制御車は、脱進機に前記動力ばねからの動力を伝え、
    前記第2動力車又は前記第2制御車には、前記動力源からの動力が伝えられる、定トルク機構。
  5. 請求項1又は2に記載のトルク発生機構を備えている、時計用ムーブメント。
  6. 請求項3又は4に記載の定トルク機構を備えている、時計用ムーブメント。
  7. 請求項5又は6に記載の時計用ムーブメントを備えている、時計。
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