JP6730538B1 - 輪列機構、ムーブメント及び時計 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、下記特許文献1には、香箱車、二番車、三番車、四番車及び分車を少なくとも具備するムーブメントが開示されている。二番車は、二番かな及び二番歯車を有し、香箱車に二番かなが噛み合っている。三番車は、三番かな及び三番歯車を有し、二番歯車に三番かなが噛み合っている。四番車は、四番かな及び四番歯車を有し、三番歯車に四番かなが噛み合っている。分車は、分歯車を有し、三番歯車に分歯車が噛み合っている。
特に、上記特許文献1に記載のムーブメントにおける二番車及び三番車のように、表輪列を構成する歯車が2つ以上、香箱車に対して平面的に重なってしまう場合には、香箱車の厚さ自体を薄くせざるを得なくなってしまう。
これにより、ぜんまいの巻き解けに伴う出力トルクを一定に維持しようとすると、ぜんまいの持続時間(巻き上げられた状態から巻き解けによって自然長に戻るまでの時間)が減少してしまう不都合を招いてしまう。また、その逆に、上記持続時間を一定に維持しようとすると、上記出力トルク自体が小さくなってしまう不都合を招いてしまう。
このように、香箱車の厚さが薄くなってしまうと、持続時間の減少或いは出力トルク自体が減少するという不都合を招いてしまう。
さらに、四番車を地板の中心軸線と同軸に配置しているので、例えば四番車に秒針を取り付けることで、いわゆる中三針の秒針ダイレクト駆動に対応した輪列機構として利用することができる。この場合であっても、二番車、三番車及び四番車のいずれもが複数の香箱アセンブリに対して平面方向に離間しており、香箱アセンブリに対して地板の厚さ方向に重なることが回避されている。従って、先に述べたように、ぜんまいの持続時間の向上化或いは出力トルクの増大化を図ることができ、二番車に対して効率良く動力を伝達することができる。
さらに、二番車よりも動力伝達の下流側に位置する三番車及び四番車を仮想面よりも地板側に寄せて配置している。特に、地板の中心軸線と同軸に配置されている四番車を地板側に寄せて配置しているので、地板の中央部分において表輪列を地板側に近い位置に配置して、高さを低く抑えることができる。
地板の中央部分は時計部品が集中し易い領域であり、特に中三針の秒針ダイレクト駆動の場合にはその傾向が顕著となる。この場合であっても、地板の中央部分において表輪列の高さを低く抑えることができるので、他の時計部品を配置し易くなるうえ、例えば中央部分が出っ張るような時計となることを防止することができる。
さらに、三番車及び四番車を仮想面よりも地板側に寄せて配置することによって確保された空間スペースを利用して、時計に何らかの機能を付加する付加機能部を配置している。これにより、時計の多機能性に貢献することが可能である。
特に、空間スペースを有効に利用して付加機能部を配置しているので、例えば時計の中央部分が出っ張ることを抑制することができ、多機能性を有しつつ、外観性、審美性に優れた時計を実現することが可能であるうえ、時計の外観が工業的なデザインになることを防止することができる。
さらに、付加機能部として自動巻機構を備えているので、回転錘による動力を利用して、自動巻輪列を介して香箱アセンブリを常に同じ方向に回転させることができる。これにより、ぜんまいを巻き上げることが可能となり、自動巻の機能を付加することができる。特に、空間スペースを利用して自動巻機構を配置しているので、先に述べたように時計の中央部分が出っ張ることを抑制することができ、自動巻機構を有しつつ、外観性、審美性に優れた自動巻式の時計を実現することが可能である。
さらに、空間スペースを利用して外輪を配置しているので、外輪の高さを確保することができる。そのため、自動巻輪列のうち回転錘かなに噛み合う歯車における車軸の長さを、該車軸にほぞ部を形成することができる分だけの長さとすることができる。これにより、ほぞ部を利用して、回転錘に噛み合う歯車を軸支(回転案内)することが可能となる。
なお、車軸の長さが短いためにほぞ部が形成できない場合には、いわゆるピン案内となることが多いが、ピンの場合には細径化に限界があるので、摩擦抵抗が大きく、動力損失が発生し易い。これに対して、上述のように車軸の長さを確保することでほぞ部を形成できるので、該ほぞ部や案内部の径を細くすることができ、摩擦抵抗を低減させて、伝達効率を向上することが可能となる。
さらには、外輪についても香箱アセンブリに対して平面方向に離間して配置されていることで、香箱アセンブリに対して地板の厚さ方向に重なることを回避している。これにより、外輪に影響されることなく、香箱車の厚さを厚くすることができると共に、香箱車及び角穴車の外径大きくすることが可能である。
このように、伝達車を具備することで、香箱アセンブリから二番車を離れた位置に配置することができ、二番かな及び二番歯車の径を制約少なく自由に選択することが可能となり、設計の自由度を向上することができる。それに加え、表輪列の増速比を大きくすることが可能である。
なお、伝達車は、香箱車又は角穴車と二番車(例えば二番かな)とに噛み合うだけであるので、一層構造の歯車とすることができる。従って、伝達車におけるほぞ部さえ香箱アセンブリに対して厚さ方向に重ならなければ、伝達車が香箱車の厚さに影響を与えてしまい難い。
特に、先に述べたように、二番歯車が三番車軸における軸方向の中央部で三番かなに噛み合っていることで、三番車は安定且つ精度良く回転する。そのため、三番車に噛み合う分車及び四番車についても例えばバックラッシュ等を抑制しながら精度良く回転させることができ、適切な運針を可能にしつつ、時刻に関する情報等の指示ずれを抑制することができる。
そのため、二番車から三番車に伝えられた動力を、三番車軸の軸方向に分散させながら、分歯車及び四番かなにバランスよく伝えることができる。
(8)本発明に係る時計は、前記ムーブメントを備えている。
なお、本実施形態の各図では、図面を見易くするために、時計用部品の一部の図示を省略している場合があると共に、各時計用部品を簡略化して図示している場合がある。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側(すなわち、文字板のある方の側)をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側(すなわち、文字板と反対の側)をムーブメントの「表側」と称する。
なお本実施形態では、文字板からケース裏蓋(表側)に向かう方向を上側、その反対側(裏側)を下側として説明する。従って、地板の厚さ方向が上下方向となる。
輪列機構12は、地板11と地板11の表側に配置された香箱受13との間に配設された複数の香箱アセンブリ20と、地板11と地板11の表側に配置された輪列受14との間に配設された表輪列15と、を主に備えている。さらに輪列機構12は、表輪列15の回転を制御する脱進機16と、脱進機16を調速する図示しない調速機と、手動巻機構17及び自動巻機構18とをさらに備えている。
なお、地板11の裏側には、後述する裏輪列等が配設されていると共に、文字板4がガラス2を通じて視認可能に配置されている。
図2及び図3に示すように、地板11の表側には2つの香箱アセンブリ20が配設されている。なお、香箱アセンブリ20の数は、2つに限定されるものではなく3つ以上であっても構わない。
2つの香箱アセンブリ20のうちの一方を第1香箱アセンブリ21といい、他方を第2香箱アセンブリ22という。第1香箱アセンブリ21及び第2香箱アセンブリ22は、地板11の中心を厚さ方向に貫く中心軸線Cに対して地板11の平面方向に離間して配置されていると共に、互いに隣り合うように配置されている。
なお本実施形態では、これら第1軸線O1及び第2軸線O2や、上記中心軸線Cを含む各軸線に関し、軸線方向から見た平面視において、軸線に交差する方向を径方向といい、軸線回りに周回する方向を周方向という。
以下、第1香箱アセンブリ21及び第2香箱アセンブリ22について詳細に説明する。
図2及び図3に示すように、第1香箱アセンブリ21は、内部にぜんまい30を収容する香箱車31と、香箱真35と、角穴車真40と、角穴車45とを備え、第1軸線O1と同軸に配置されている。
香箱本体32は、第1軸線O1を中心とする円板状に形成された底壁部32aと、底壁部32aの外周縁部から上方に向けて延びるように形成され、ぜんまい30を径方向外側から囲む周壁部32bと、を備えている。
底壁部32aの中央部分には、該底壁部32aを上下に貫通する第1嵌合孔34aが形成されている。周壁部32bの外周面には、径方向外側に向けて突出する香箱歯部32cが全周に亘って形成されている。さらに周壁部32bの内周面には、ぜんまい30の外端部が固定されている。
香箱真35における軸方向の中間部分35aは、径方向外側に向けて膨出していると共に、香箱本体32内に僅かに入り込んでいる。そして、この香箱真35の中間部分35aに、ぜんまい30の内端部が係止されている。
なお、香箱真35の中間部分35aが香箱本体32内に僅かに入り込んでいることで、香箱真35に対する香箱車31の上下移動が規制されている。また、香箱真35の上端部は、香箱蓋33よりも上方に突出するように延びている。
軸部41は、香箱真35の内側に上方から挿入されていると共に、香箱真35の内側に例えば圧入、螺着等によって一体的に固定されている。軸部41の下端部は、香箱真35よりも下方に突出している。軸部41の上端部及びフランジ42は、香箱真35よりも上方に配置されている。軸部41の上端部及び下端部には、それぞれ上ほぞ部41a及び下ほぞ部41bが形成されている。
そのため、ぜんまい30は、香箱真35に固定されている角穴車45と香箱車31との相対回転によって縮径するように弾性変形しながら巻き上げられると共に、巻き解ける際の弾性復元力により角穴車45或いは香箱車31に動力(出力トルク)を伝えて、角穴車45或いは香箱車31を第1軸線O1回りに回転させることが可能とされている。
第2香箱アセンブリ22は、上述した第1香箱アセンブリ21と同一の構成とされている。そのため、第2香箱アセンブリ22の各構成部材には、第1香箱アセンブリ21の構成部材と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
ただし、第1香箱アセンブリ21では、香箱車31の外径と角穴車45の外径とが同等とされ、香箱歯部32c及び角穴歯部45aが上下方向に重なるように配置されている。これに対して、第2香箱アセンブリ22では、香箱車31の外径よりも角穴車45の外径が小さく形成され、角穴歯部45aは香箱蓋33の上方に配置されている。
上述のように構成された第1香箱アセンブリ21及び第2香箱アセンブリ22は、先に述べたように、互いに隣り合うように配置されている。
具体的には、第1香箱アセンブリ21は、第2香箱アセンブリ22よりも巻真50に近い位置に配置されている。そして、第1香箱アセンブリ21及び第2香箱アセンブリ22は、互いの香箱歯部32c同士が噛み合った状態で隣接配置されている。さらに、第1香箱アセンブリ21における角穴車45には、巻真50の回転に伴って回転する丸穴中間車55が角穴歯部45aを介して噛合っている。
いずれにしても、きち車の回転に伴って最終的に丸穴中間車55が回転するように手動巻機構17が構成されている。
さらに、ぜんまい30の巻き解けに伴う出力トルク(動力)に関しては、第1香箱アセンブリ21については、香箱車31が回転することで、ぜんまい30の出力トルクを第2香箱アセンブリ22の香箱車31に伝達することが可能となる。これに対して、第2香箱アセンブリ22については、角穴車45が回転することで、第2香箱アセンブリ22のぜんまい30の出力トルク、及び第1香箱アセンブリ21から伝わった出力トルクを後述する伝達車110に伝えることが可能とされている。
図2及び図4に示すように、表輪列15は、地板11と輪列受14との間に配置され、第1香箱アセンブリ21及び第2香箱アセンブリ22におけるぜんまい30の巻き解けに伴う出力トルクによって回転し、時針5、分針6及び秒針7を運針させる役割を果たしている。
なお、輪列受14は、香箱受13と同等の高さ位置に配置された上側輪列受14aと、上側輪列受14aよりも地板11側に位置する下側輪列受14bとを備え、高さが2段に変化する段付き形状に形成されている。
伝達車110は、第2香箱アセンブリ22における角穴車45に噛み合う伝達歯車111を備えている。これにより、伝達車110は、角穴車45の回転に伴って第3軸線O3回りを回転可能とされている。なお、伝達車110は、かなを有さずに伝達歯車111を具備する一層構造の歯車とされている。
特に伝達車110は、上ほぞ部110a及び下ほぞ部110bが形成された車軸が、第2香箱アセンブリ22に対して地板11の平面方向に離間し、上下方向に重ならないように配置されている。そして、上述のように伝達歯車111が角穴車45と同一平面内に配置されている。従って、伝達車110が香箱車31の厚さに影響を与えてしまい難い。
四番車90は、車軸91と、三番歯車72が噛み合う四番かな92と、四番歯車93とを有している。車軸91は、円筒部95内に設けられた軸受によって回転可能に支持されている。図示の例では、車軸91は上下方向に間隔をあけて配置された2箇所の軸受によって回転可能に支持されている。車軸91の上ほぞ部91aは、下側輪列受14bに保持された穴石等の軸受によって軸支されている。
これにより、四番車90は、三番車70の回転に伴って中心軸線C回りを回転可能とされている。
なお、分針6は、脱進機16及び調速機によって調速された回転速度、すなわち1時間で1回転する。また、分車80は、四番歯車93よりも下方に位置しているので、上記仮想面Vよりも下方に配置されている。
なお、日の裏車は、分車80における分かな81aにも噛み合っている。これにより、筒車100は、分車80及び日の裏車の回転に伴って中心軸線C回りを回転する。
なお、時針5は、脱進機16及び調速機によって調速された回転速度、すなわち24時間で1回転する。また、筒車100は、分歯車82よりも下方に位置しているので、上記仮想面Vよりも下方に配置されている。
自動巻機構18については、後に説明する。
図2及び図4に示すように、脱進機16は、四番車90の回転に伴って第6軸線O6回りを回転するがんぎ中間車120と、がんぎ中間車120の回転に伴って第7軸線O7回りを回転するがんぎ車130と、がんぎ車130を脱進させて規則正しく回転させる図示しないアンクルとを備え、図示しないてんぷからの規則正しい振動で表輪列15を制御する。
図2に示すように、自動巻機構18は、時計1に自動巻の機能を付加するための付加機能部として機能するものであり、図4に示す仮想面Vよりも上方に確保された空間スペースSを利用して設けられている。
具体的には、自動巻機構18は、地板11の平面視で、第1香箱アセンブリ21及び第2香箱アセンブリ22の中心同士を結ぶ第1仮想線L1上に位置し、且つ第1香箱アセンブリ21及び第2香箱アセンブリ22の中心同士の中間に位置する中間位置Pと、地板11の中心軸線Cと、を結ぶ第2仮想線L2を基準として表輪列15とは反対側に配置されている。
図2及び図4に示すように、自動巻機構18は、回転軸線を中心として回転可能とされた回転錘150と、回転錘150の回転に伴う動力を、第1香箱アセンブリ21の角穴車45に伝えて、角穴車45を一方向に回転させる自動巻輪列170と、を備えている。
ただし、この場合に限定されるものではなく、例えば回転錘150が中心軸線Cを中心として一方向にのみ回転し、自動巻輪列170が回転錘150の回転に伴う動力を角穴車45に対して伝える構成としても構わない。いずれにしても、回転錘150の回転に伴う動力を、自動巻機構18を利用して角穴車45に伝えて、角穴車45を常に一方向に回転させることができれば、自動巻輪列170の構成を適宜変更して構わない。
具体的には、回転錘150は第1自動巻受180に形成された収容凹部182内に収容された状態で中心軸線C回りに回転可能に支持されている。なお、収容凹部182内には、上方に向けて起立した軸部材183が中心軸線Cと同軸に形成されている。自動巻輪列170は、第1自動巻受180と第2自動巻受181との間に配置された状態で回転可能に支持されている。
具体的には、図5及び図7に示すように、回転錘150は、ボールベアリング(本発明に係る軸受)151と、回転重錘160とを備え、使用者の腕の動き等に応じて中心軸線Cを中心として、時計方向及び反時計方向の双方向に回転する。
なお、図5及び図6では、一番切換車210及び二番切換車220の図示を省略している。
車軸は、第1自動巻受180及び第2自動巻受181の間に軸支されている。一番下段車211は、二番仲介歯車201に噛み合っている。これにより、一番下段車211は、二番仲介車200の回転に伴って第8軸線O8回りを回転可能とされている。
例えば一番切換伝え車212は、一番下段車211が第8軸線O8を中心に時計方向に回転したときに同方向に回転し、一番下段車211が反時計方向に回転したときに空転するように構成されている。
車軸は、第1自動巻受180及び第2自動巻受181の間に軸支されている。二番下段車221は、一番下段車211に噛み合っている。これにより、二番下段車221は、一番下段車211の回転に伴って第9軸線O9回りを回転可能とされている。
例えば二番切換伝え車222は、二番下段車221が第9軸線O9を中心に時計方向に回転したときに同方向に回転し、二番下段車221が反時計方向に回転したときに空転するように構成されている。
その反対に、回転錘150の回転によって、一番下段車211が第8軸線O8を中心に反時計方向に回転した場合には、一番切換伝え車212は空転する。そして二番下段車221が、一番下段車211の回転に伴って第9軸線O9を中心に時計方向に回転するので、二番切換伝え車222が第9軸線O9を中心に時計方向に回転する。従って、一番伝え車230は二番切換伝え車222の回転に伴って反時計方向に回転する。
このように、一番伝え車230は、回転錘150の回転方向に関係なく、常に一方向(上述の場合には反時計方向)に回転するように構成されている。
次に、上述のように構成された輪列機構12、ムーブメント10、時計1の作用について説明する。はじめに、秒針7、分針6及び時針5の運針について簡単に説明する。
この場合には、巻真50を0段位置に位置させた状態で巻真50を回転操作する。これにより、丸穴中間車55を介して第1香箱アセンブリ21の角穴車45を第1軸線O1回りに回転させることができ、第1香箱アセンブリ21におけるぜんまい30を巻き上げることができる。
また、上記ぜんまい30の巻き上げに伴って第1香箱アセンブリ21の香箱車31が第1軸線O1回りに回転することで、第2香箱アセンブリ22の香箱車31が第2軸線O2回りに回転するので、該香箱車31の回転によって、第2香箱アセンブリ22におけるぜんまい30を巻き上げることができる。
この場合には、回転錘150が例えば使用者の腕の動きに応じて中心軸線Cを中心として二方向に適宜回転する。回転錘150が回転することで、その動力は一番仲介車190及び二番仲介車200を介して、一番切換車210の一番下段車211及び二番切換車220の二番下段車221に伝えることができるので、一番下段車211を第8軸線O8回りに回転させることができると共に、二番下段車221を第9軸線O9回りに回転させることができる。
従って、回転錘150の回転方向に関係なく、一番伝え車230を常に一方向に回転させることができる。これにより、一番伝え車230の回転に伴って二番伝え車240及び三番伝え車250を回転させることができ、三番伝え車250を介して第1香箱アセンブリ21の角穴車45を第1軸線O1回りに回転させることができる。その結果、上述した手動巻機構17の場合と同様に、第1香箱アセンブリ21におけるぜんまい30を巻き上げることができると共に、続けて2香箱アセンブリ20におけるぜんまい30を巻き上げることができる。
従って、この輪列機構12を具備しているムーブメント10及び時計1については、作動の信頼性が高いムーブメント及び時計とすることができる。
例えば、二番車60における二番歯車62の歯部や、三番車70における三番歯車72の歯部が、香箱歯部32cや角穴歯部45aに対して噛み合うことで、平面的に重なる場合があるが、この点に関しては本発明が意図するものではない。この場合であっても、二番歯車62の歯部或いは三番歯車72の歯部が、例えば香箱本体32に対して上下方向への重なり合いが回避されていれば、先に述べたように香箱車31の厚さを厚くすることが可能である。
この際、例えば、第2香箱アセンブリ22の角穴車45と二番車60とを、二番かな61を介して直接的に噛合わせた場合には、第2香箱アセンブリ22との干渉等を回避するために二番歯車62を小径化させる必要がある。しかしながら本実施形態では、伝達車110を具備しているので、二番かな61の位置を第2香箱アセンブリ22から遠ざけることができる。そのため、二番歯車62を大径化することが可能となり、表輪列15全体の増速比の増大化に貢献することができる。
なお、伝達車110は、先に述べたように伝達歯車111が角穴車45と同一平面内に配置されているうえ、上ほぞ部110a及び下ほぞ部110bが形成された車軸が第2香箱アセンブリ22に対して離れた位置に配置されている。従って、伝達車110が第2香箱アセンブリ22に厚さに影響を与えてしまい難い。
それに加え、伝達歯車111から上ほぞ部110a及び下ほぞ部110bまでの距離が略均等になるように伝達車110の車軸の長さを調整することが可能であるので、上ほぞ部110a及び下ほぞ部110bに対して均等に負荷を分散させ易く、どちらか一方のほぞ部に負荷が集中してしまうことを抑制することができる。
従って、どちらか一方のほぞ部が早期に摩耗してしまうことを抑制することができるうえ、ほぞ部の径を大きくする必要がないので、伝達車110の耐久性の向上化に繋げることができると共に、出力トルクの伝達効率の向上化に貢献することができる。
通常運針時、二番歯車62と三番かな71との噛み合いによって、二番車60からの出力トルクを三番車70に伝えているので、二番歯車62と三番かな71との噛み合い部分には大きな負荷が作用する。この場合であっても、二番歯車62は、三番車軸73の軸方向の中央部付近で三番かな71に噛み合っているので、三番車70における上ほぞ部70a及び下ほぞ部70bに対して均等に負荷を分散させ易い。従って、どちらか一方のほぞ部に負荷が集中してしまうことを抑制することができ、どちらか一方のほぞ部が早期に摩耗してしまうことを抑制できる。そのため、三番車70及び表輪列15全体の耐久性の向上化に繋げることができると共に、三番車70を安定且つ精度良く回転させることができる。
しかも、分歯車82と三番かな71との噛み合い位置、二番歯車62と三番かな71との噛み合い位置、三番歯車72と四番かな92との噛み合い位置を、地板11側からこの順番で並ぶように配置している。そのため、二番車60から三番車70に伝えられた動力を、三番車軸73の軸方向に分散させながら、分歯車82及び四番かな92にバランスよく伝えることができる。
特に、空間スペースSを有効に利用して自動巻機構18を配置しているので、時計1の中央部分が出っ張ることを抑制することができ、多機能性を有しつつ、外観性、審美性に優れた自動巻式の時計1を実現することが可能であるうえ、時計1の外観が工業的なデザインになることを防止することができる。
この場合には、例えば丸穴中間車55及び三番伝え車250を、第1香箱アセンブリ21の香箱車31に噛み合うように構成し、伝達車110を、第2香箱アセンブリ22の香箱車31に噛み合うように構成すれば良い。このようにすることで、同様の作用効果を奏功することができる。
さらに、上記実施形態では、四番車90に秒針7を直接的に取り付けた、秒針ダイレクト駆動の場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、四番車90から他の時計用部品を経由して、地板11の中心軸線Cに対してオフセットした位置に設けた秒針7を駆動するように構成しても構わない。さらには、四番車90から他の時計用部品に動力を伝える構成としても構わない。
例えば、図8に示すように、上述した自動巻機構18を具備しない輪列機構301を備えた時計300としても構わない。特に、この場合には、図9に示すように仮想面Vの上方側に確保された空間スペースSを空けることができるので、該空間スペースSを有効的に利用して、自動巻機構18に代わる何等かの付加機能部を設けても構わない。例えばぜんまい30の巻き上げ量に関する情報(パワーリザーブ量)を明示するためのパワーリザーブ輪列を含むパワーリザーブ機構等を設けても構わない。
P…中間位置
S…空間スペース
V…仮想面
L1…第1仮想線
L2…第2仮想線
1…時計、300
10…ムーブメント
11…地板
12、301…輪列機構
15…表輪列
18…自動巻機構(付加機能部)
20…香箱アセンブリ
30…ぜんまい
31…香箱車
33…香箱蓋
45…角穴車
60…二番車
62…二番歯車
70…三番車
71…三番かな
72…三番歯車
73…三番車軸
80…分車
82…分歯車
90…四番車
92…四番かな
110…伝達車
150…回転錘
151…ボールベアリング(軸受)
153…外輪
153a…回転錘かな
170…自動巻輪列
Claims (8)
- 内部にぜんまいを収容すると共に、前記ぜんまいの巻き解けに伴って軸線回りに回転可能とされた香箱車と、前記ぜんまいの巻き解けに伴って、前記香箱車に対して前記軸線回りに相対回転可能とされた角穴車と、を有する複数の香箱アセンブリと、
地板の表側に配置され、前記ぜんまいの巻き解けに伴う動力によって回転する表輪列と、を備え、
複数の前記香箱アセンブリは、互いに噛み合った状態で前記地板の表側に、前記地板の平面方向に離間して配置され、
複数の前記香箱アセンブリのそれぞれは、前記表輪列に対して前記平面方向に離間して配置されていることで、前記表輪列に対する前記地板の厚さ方向への重なり合いが回避され、
前記表輪列は、
前記ぜんまいの巻き解けに伴う動力によって回転する二番車と、
前記二番車の回転に伴って回転する三番車と、
前記三番車の回転に伴って回転する四番車と、を少なくとも有し、
前記四番車は、複数の前記香箱アセンブリに対して前記平面方向に離間した状態で前記地板の中心軸線と同軸に配置され、
前記二番車及び前記三番車は、複数の前記香箱アセンブリに対して前記平面方向に離間した状態で、前記中心軸線から前記平面方向にずれた位置に配置され、
前記三番車及び前記四番車は、前記香箱車における香箱蓋に平行な仮想面よりも前記地板側に配置され、
前記地板の前記厚さ方向において、前記仮想面を基準として前記地板の反対側には空間スペースが確保され、
前記空間スペースには、付加機能部が配置され、
前記付加機能部は、
回転軸線を中心として回転可能とされた回転錘と、
前記回転錘の回転に伴う動力を、複数の前記香箱アセンブリのいずれか1つに伝えると共に、該香箱アセンブリを一方向に回転させる自動巻輪列と、を備えた自動巻機構とされ、
前記回転錘は、前記回転軸線と同軸に配置され、前記自動巻輪列が噛み合う回転錘かなが形成された外輪を有する軸受を備え、
前記外輪は、前記香箱アセンブリに対して前記平面方向に離間して配置されていることで、前記香箱アセンブリに対する前記厚さ方向への重なり合いが回避されていることを特徴とする輪列機構。 - 内部にぜんまいを収容すると共に、前記ぜんまいの巻き解けに伴って軸線回りに回転可能とされた香箱車と、前記ぜんまいの巻き解けに伴って、前記香箱車に対して前記軸線回りに相対回転可能とされた角穴車と、を有する複数の香箱アセンブリと、
地板の表側に配置され、前記ぜんまいの巻き解けに伴う動力によって回転する表輪列と、を備え、
複数の前記香箱アセンブリは、互いに噛み合った状態で前記地板の表側に、前記地板の平面方向に離間して配置され、
複数の前記香箱アセンブリのそれぞれは、前記表輪列に対して前記平面方向に離間して配置されていることで、前記表輪列に対する前記地板の厚さ方向への重なり合いが回避され、
前記表輪列は、
前記ぜんまいの巻き解けに伴う動力によって回転する二番車と、
前記二番車の回転に伴って回転する三番車と、
前記三番車の回転に伴って回転する四番車と、を少なくとも有し、
前記四番車は、複数の前記香箱アセンブリに対して前記平面方向に離間した状態で前記地板の中心軸線と同軸に配置され、
前記二番車及び前記三番車は、複数の前記香箱アセンブリに対して前記平面方向に離間した状態で、前記中心軸線から前記平面方向にずれた位置に配置され、
前記三番車及び前記四番車は、前記香箱車における香箱蓋に平行な仮想面よりも前記地板側に配置され、
前記地板の前記厚さ方向において、前記仮想面を基準として前記地板の反対側には空間スペースが確保され、
前記空間スペースには、付加機能部が配置され、
前記香箱アセンブリを2つ備え、
前記付加機能部は、前記地板の平面視で、2つの前記香箱アセンブリの中心同士を結ぶ第1仮想線上に位置し、且つ前記香箱アセンブリの中心同士の中間に位置する中間位置と、前記地板の前記中心軸線と、を結ぶ第2仮想線を基準として前記表輪列とは反対側に配置されていることを特徴とする輪列機構。 - 請求項1又は2に記載の輪列機構において、
複数の前記香箱アセンブリのいずれか1つと前記二番車との間には、前記香箱車又は前記角穴車と、前記二番車とに噛み合うと共に、前記ぜんまいの巻き解けに伴う動力を前記二番車に伝える伝達車が配置されている、輪列機構。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の輪列機構において、
前記三番車は、
上ほぞ部及び下ほぞ部を有する三番車軸と、
前記三番車軸に形成され、前記二番車における二番歯車が噛み合う三番かなと、を備え、
前記二番歯車は、前記三番車軸における軸方向の中央部で前記三番かなに噛み合っている、輪列機構。 - 請求項4に記載の輪列機構において、
前記地板の中心軸線と同軸に配置され、前記三番かなに噛み合う分歯車を有する分車を備え、
前記三番車は、前記三番車軸に形成され、前記四番車における四番かなに噛み合う三番歯車を備え、
前記三番かなに噛み合う前記二番歯車よりも、前記地板側で前記分歯車と前記三番かなとが噛み合うと共に、前記二番歯車よりも前記地板から離れた位置で前記三番歯車と前記四番かなとが噛み合っている、輪列機構。 - 請求項1に記載の輪列機構において、
前記香箱アセンブリを2つ備え、
前記付加機能部は、前記地板の平面視で、2つの前記香箱アセンブリの中心同士を結ぶ第1仮想線上に位置し、且つ前記香箱アセンブリの中心同士の中間に位置する中間位置と、前記地板の前記中心軸線と、を結ぶ第2仮想線を基準として前記表輪列とは反対側に配置されている、輪列機構。 - 請求項1から6のいずれか1項に記載の輪列機構を備えている、ムーブメント。
- 請求項7に記載のムーブメントを備えている、時計。
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