JP2003119560A - スパッタリングターゲット - Google Patents

スパッタリングターゲット

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 真空排気時および/またはスパッタリングを
行った際に発生するターゲットの割れを抑制した、短軸
が長軸の0.7〜1.0倍である枚葉式多分割ITOス
パッタリングターゲットを提供する。 【解決手段】 焼結体のビッカース硬度を700以上8
00以下、研削方向と平行に荷重を印加して測定された
3点曲げ強度を200MPa以上250MPa以下とす
るとともに、焼結体とバッキングプレートを接合するは
んだ層の厚さを0.5mm以上1mm以下としてターゲ
ットを作製する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明導電性薄膜製
造の際に使用されるITOスパッタリングターゲット、
特に複数のターゲット部材を単一のバッキングプレート
上に接合した枚葉式スパッタリングターゲットに関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】ITO(Indium Tin Oxi
de)薄膜は高導電性、高透過率といった特徴を有し、
更に微細加工も容易に行えることから、液晶ディスプレ
イ(LCD)、PDP(Plasma Displa
y)等のフラットパネルディスプレイ用表示電極に用い
られている。ITO薄膜の製造方法はスプレー熱分解
法、CVD法等の化学的成膜法と電子ビーム蒸着法、ス
パッタリング法等の物理的成膜法に大別することができ
る。なかでもITOターゲットを用いたスパッタリング
法は、大面積化が容易で、得られる膜の抵抗値および透
過率の経時変化が少なく、また、成膜条件のコントロー
ルが容易であるため、多くの製造ラインで採用されてい
る。
【0003】ITO薄膜の製造装置としては、枚葉式
(静止対向型)とインライン式(基板通過型)の2種類
に大別される。この内、枚葉式装置は、異物(パーティ
クル)発生が少ないことから脚光を浴びている。
【0004】近年のフラットパネルディスプレイの大型
化にともない、パネル製造に使用されるガラス基板のサ
イズも大型化している。そのため、薄膜製造の際に使用
されるターゲットも基板サイズに合わせてそのサイズの
大型化が進行している。静止対向型スパッタリング装置
用ターゲットでは、ターゲットサイズを基板サイズより
一回り大きくする必要があるため、ターゲットサイズと
しては各辺が800mmを越えるようになってきてい
る。
【0005】このような大型のITOターゲットを作製
する場合、成形および焼結に必要な生産設備が従来の物
より大型となるため新たな設備投資を必要とする上、粉
末の成形性はサイズの大型化と共に悪化するため歩留ま
りが極端に低下し、結果としてターゲットの製造コスト
および生産性が悪化する。このため、長尺型のターゲッ
トでは、複数のターゲット部材をバッキングプレート上
に接合した多分割ターゲットが用いられている。
【0006】ITO焼結体をバッキングプレートに接合
するボンディング工程は、焼結体とバッキングプレート
をはんだ材の融点以上まで加熱した後、はんだ材を用い
て接合した後、冷却することにより行われる。この冷却
過程で焼結体とバッキングプレートの熱膨張率の違いか
ら反りや割れが発生するという問題が生じた。
【0007】また、出来上がったターゲットをスパッタ
リング装置に取り付けた後、真空排気を行ったときに発
生する反りやスパッタリング中に発生する熱応力によっ
ても割れが発生するという問題が生じていた。ターゲッ
トに割れが発生するとスパッタリングに供することがで
きないため、生産ラインの停止を招くなど重要な問題と
なる。
【0008】このようなターゲットの割れ問題は、ター
ゲットサイズが大きくなるのにともない顕著になってき
た。これらターゲットの割れ問題を解決するため、ター
ゲット表面の研削方向を規定し、さらに研削後の表面粗
さを5μm以下にするという提案がなされた(特開20
01−26863号公報)。この提案は、ターゲットの
反り方向が一方向であるような長尺型のインラインスパ
ッタリング装置用では有効であった。しかし、ターゲッ
トの形状が正方形に近い枚葉型のスパッタリング装置で
は、長軸、短軸の差が小さくいずれの方向にも反りが発
生するため、あまり有効ではなかった。このため、大型
の枚葉式スパッタリング装置用ターゲットに対しても有
効となる割れ防止策の開発が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、ター
ゲットの短軸が長軸の0.7〜1.0倍である枚葉式I
TOスパッタリングターゲットを装置に取り付け、真空
排気時および/またはスパッタリングを行った際に発生
するターゲットの割れを効果的に抑制できるITOスパ
ッタリングターゲットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、短軸が長
軸の0.7〜1.0倍である枚葉式ITOスパッタリン
グターゲットにおけるターゲットの割れを防止する検討
を行った。その結果、ITO焼結体の強度を高める、
ターゲットにかかる応力を吸収できるようなターゲッ
ト構造とする、ことにより上記問題における割れの発生
を抑制できるとの知見を得た。具体的には、ビッカース
硬度、3点曲げ強度が所定の範囲内の値を有する焼結体
を用いるとともに、焼結体とバッキングプレートを接合
するはんだ層の厚さを適切な厚さとすることにより上記
問題を解決できることを見いだし本発明を完成した。
【0011】即ち、本発明は実質的にインジウム、スズ
および酸素からなる複数の焼結体を単一のバッキングプ
レート上に接合した多分割ターゲットであって、ターゲ
ットの短軸が長軸の0.7〜1.0倍である枚葉式スパ
ッタリングターゲットにおいて、前記焼結体のビッカー
ス硬度を700以上800以下、焼結体のスパッタ面と
なる面に施した研削加工の研削方向と平行に荷重を印加
して測定された3点曲げ強度を200MPa以上250
MPa以下とするとともに、焼結体とバッキングプレー
トを接合するはんだ層の厚さを0.5mm以上1mm以
下としたことを特徴とするスパッタリングターゲットに
関する。
【0012】なお、研削加工の研削方向とは、研削時の
刃先の移動方向であり、具体的には、例えば、焼結体表
面に形成された筋状の研削痕の方向である。また、3点
曲げ強度の測定において、研削方向と平行に荷重を印加
して測定するとは、前記研削方向に平行に3点曲げ試験
の力点を添わせること、すなわち、3点曲げ試験におけ
る3つの力点を結ぶ直線が前記研削方向に平行であるこ
とを意味する。
【0013】本発明が対象とするような枚葉式ターゲッ
トは、一般に長方形あるいは長方形に準ずる形となって
いる。長方形に準ずる形とは、長方形の各角部にR加工
を施した場合も含むものとする。このような枚葉式のタ
ーゲットサイズとしては、810mm×910mmを例
示することができ、例えば図1に示すような、270m
m×455mmの焼結体を3枚ずつ2列に並べた形態で
分割されている。
【0014】以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】本発明に使用されるITO焼結体およびそ
の製造方法は、特に限定されるものではないが、例え
ば、以下のような方法で製造することができる。
【0016】始めに、酸化インジウム粉末と酸化スズ粉
末との混合粉末にバインダー等を加え、プレス法或いは
鋳込み法等の成形方法により成形してITO成形体を製
造する。成形法としては、プレス法、鋳込み法どちらも
使用可能であるが、緻密な成形体を得やすい鋳込み法が
好ましい。この際、使用する粉末の平均粒径が大きいと
焼結体の緻密化が進行しない場合があるので、使用する
粉末の平均粒径は1.5μm以下であることが望まし
く、更に好ましくは0.1〜1.5μmである。混合粉
末中の酸化スズ含有量は、スパッタリング法により薄膜
を製造した際に比抵抗が低下する5〜15重量%とする
ことが望ましい。
【0017】次に得られた成形体に必要に応じて、CI
P等の圧密化処理を行う。この際CIP圧力は充分な圧
密効果を得るため2ton/cm2以上、好ましくは2
〜3ton/cm2であることが望ましい。ここで始め
の成形を鋳込法により行った場合には、CIP後の成形
体中に残存する水分およびバインダー等の有機物を除去
する目的で脱バインダー処理を施してもよい。また、始
めの成形をプレス法により行った場合でも、成形時にバ
インダーを使用したときには、同様の脱バインダー処理
を行うことが望ましい。
【0018】このようにして得られた成形体を焼結炉内
に投入して焼結を行う。焼結方法としては、いかなる方
法でも用いることができるが、生産設備のコスト等を考
慮すると大気中焼結が望ましい。焼結条件についても適
宜選択することができるが、緻密な焼結体を得るため、
また酸化スズの蒸発を抑制するため、焼結温度が145
0〜1650℃であることが望ましい。雰囲気は、少な
くとも昇温時800℃に達した時点から焼結温度での保
持時間が終了するまでの間の焼結炉内を実質的に純酸素
ガス雰囲気とし、さらに酸素を導入する際の酸素流量
(L/min)と成形体仕込重量(kg)の比(仕込重
量/酸素流量)を1.0以下とすると、ターゲットの緻
密化が進み好ましい。また焼結時間についても充分な硬
度上昇効果を得るために5時間以上、好ましくは5〜3
0時間であることが望ましい。こうすることにより、緻
密なITO焼結体を得ることができる。このようにして
得られたITO焼結体のビッカース硬度は、700以上
800以下となる。
【0019】次に、得られたITO焼結体を所定の形状
に加工して多分割ITOターゲットを構成する個々のタ
ーゲット部材を作製する。各部材のサイズおよび形状は
特に限定されるものではない。
【0020】次に、各部材の厚さを調整するために平面
研削加工を行う。平面研削の際には、分割された各部材
表面の研削方向がターゲットとして組み上げられた多分
割ターゲットの長い方の辺あるいは短い方の辺から±1
0度以内の方向となるように行う。好ましくは、±5度
以内、特に好ましくは±1度以内である。ここで、研削
方向とは、平面研削盤によって焼結体表面に筋状の研削
痕が形成されるが、この研削痕の方向を示している。こ
うすることにより、割れに対する強度が向上する。ま
た、スパッタリング面の表面粗さRaを0.1μm以下
に調整する。焼結体表面を平面研削加工した場合、焼結
体の3点曲げ強度は、研削後の表面粗さに依存する。ビ
ッカース硬度700以上の焼結体の加工後の表面粗さR
aを0.1μm以下とすることにより、研削方向と平行
に荷重を印加して測定された3点曲げ強度を200MP
a以上250MPa以下とすることが可能となる。
【0021】得られた複数枚のターゲット部材を1枚の
無酸素銅などからなるバッキングプレート上の所定の位
置に配置し、インジウムはんだ等を用いて接合する。こ
の際、はんだ層の厚さを0.5mm以上、1.0mm以
下に調整する。はんだ層の厚さを0.5mm以上にする
とターゲットにかかる応力をはんだ層で吸収することが
可能となり、割れの発生率が低下する。しかし、1.0
mmをこえるとターゲット全体の厚さが厚くなりすぎる
ため好ましくない。はんだ層の厚さを0.5mm〜1.
0mmに制御する方法としては、例えば、はんだ層中に
厚さ0.5mm〜1.0mmの介在物を挿入する方法を
あげることができる。
【0022】このようにして作製されたターゲットの短
軸が長軸の0.7〜1.0倍である枚葉式スパッタリン
グターゲットは、真空装置に取り付け後の、真空排気時
および/またはスパッタリング時に発生するターゲット
の割れを効果的に抑制することができる。
【0023】なお、本発明でいうビッカース硬度の定義
および測定方法は、JIS−R1610−1991に、
3点曲げ強度の定義および測定方法はJIS−R160
1−1991に、表面粗さの定義および測定方法はJI
S B0601−1994に記載の通りである。
【0024】
【実施例】以下本発明の実施例を述べるが、本発明はこ
れらに限定されるものではない。また、実施例および比
較例において、ビッカース硬度、3点曲げ強度はあらか
じめ少し大きめに作製された成形体からテストピースを
切り出して測定を実施した。
【0025】実施例1 平均粒径1.3μmの酸化インジウム粉末90重量部と
平均粒径0.7μmの酸化スズ粉末10重量部に分散
剤、バインダおよびイオン交換水を鉄心入りナイロンボ
ールが入ったポットに入れ5時間混合してスラリーを調
整した。得られたスラリーを充分脱泡した後、樹脂型を
用いた加圧鋳込み成形を行い成形体を得た。この成形体
を3ton/cm2の圧力でCIPによる緻密化処理を
行った。次にこの成形体を純酸素雰囲気焼結炉内に設置
して、以下の条件で焼結した。 (焼結条件) 焼成温度:1500℃、昇温速度:30℃/Hr、焼結
時間:15時間、雰囲気:昇温時800℃から降温時4
00℃まで純酸素ガスを炉内に、(仕込重量/酸素流
量)=0.8で導入 得られた焼結体のビッカース硬度を測定したところ72
0であった。得られた焼結体を図1示すような455m
m×270mmの長方形状に加工して各ターゲット部材
を作製した。このとき、各焼結体のスパッタリング面
に、図1の下端に両矢印で示す方向に#800の砥石を
用いて研削加工を施した。得られた焼結体の表面粗さR
aを測定したところ0.07μmであった。この時の、
研削方向と平行に荷重を印加して測定された3点曲げ強
度は210MPaであった。
【0026】このようにして得られた各ターゲット部材
とバッキングプレートを160℃まで加熱した後、それ
ぞれの接合面にインジウム半田を塗布した。この際バッ
キングプレート上に直径0.5mmのニッケル製のワイ
ヤーを配置し、このワイヤーを挟む形で焼結体とバッキ
ングプレートを接合することにより、はんだ層の厚さを
0.5mmに調整した。このようにして順次6枚の焼結
体をバッキングプレート上の図1に示すような所定の位
置に配置した後、室温まで冷却しターゲットとした。
【0027】このようにして得られたターゲット2枚に
ついて、各々、真空装置内に設置し、真空排気した後、
アルゴンガスと酸素ガスの導入下でスパッタリングを実
施した。2枚のターゲットのいずれを用いた場合にも、
ターゲットの割れは認められなかった。
【0028】実施例2 焼成温度を1600℃とした以外は実施例1と同じ条件
でITO焼結体を作製した。得られた焼結体のビッカー
ス硬度を測定したところ760であった。得られた焼結
体を実施例1と同様の方法で加工した。Raは0.06
μm、同様にして測定された3点曲げ強度は230MP
aであった。
【0029】次に実施例1と同様の方法で、はんだ層厚
さ0.5mmのITOターゲットを作製した。得られた
ターゲット2枚について、各々実施例1と同じ方法でス
パッタリングしたが、いずれもターゲットに割れは発生
しなかった。
【0030】実施例3 はんだ層厚さを0.8mm、とした以外は実施例2と同
じ方法でITOターゲットを作製した。得られたターゲ
ット2枚について、各々実施例1と同じ方法でスパッタ
リングしたが、いずれもターゲットに割れは発生しなか
った。
【0031】比較例1 実施例1と同じ条件でITO焼結体を作製した。得られ
た焼結体のビッカース硬度を測定したところ760であ
った。得られた焼結体を所望の形状に加工したのち、#
400砥石を使用した以外は、実施例1と同様の方法で
研削加工した。得られた焼結体のRaは0.6μm、研
削方向と平行に荷重を印加して測定された3点曲げ強度
は190MPaであった。
【0032】次に実施例1と同じ方法で、はんだ層厚さ
0.5mmのITOターゲットを作製した。得られたタ
ーゲット2枚について、各々実施例1と同じ方法でスパ
ッタリングしたところ、スパッタリング開始から1時間
で2枚とも割れてしまった。
【0033】比較例2 焼成時、炉内に導入する酸素量を(仕込重量/酸素流
量)=1.2とした以外は実施例1と同じ条件でITO
焼結体を作製した。得られた焼結体のビッカース硬度を
測定したところ690であった。得られた焼結体を実施
例1と同様の方法で加工した。Raは0.09μm、同
様にして測定された3点曲げ強度は190MPaであっ
た。
【0034】次に実施例1と同じ方法で、はんだ層厚さ
0.5mmのITOターゲットを作製した。得られたタ
ーゲット2枚を順次、実施例1と同じ方法でスパッタリ
ングしたところ、スパッタリング開始から1時間で2枚
とも割れてしまった。
【0035】比較例3 実施例1と同じ条件でITO焼結体を作製した。得られ
た焼結体のビッカース硬度を測定したところ760であ
った。得られた焼結体を実施例1と同様の方法で加工し
た。Raは0.07μm、同様にして測定された3点曲
げ強度は210MPaであった。
【0036】次にはんだ層の厚さを0.3mmとした以
外は、実施例1と同じ方法でITOターゲットを作製し
た。得られたターゲット2枚を順次、実施例1と同じ方
法でスパッタリングしたところ、スパッタリング開始か
ら1時間で2枚とも割れてしまった。
【0037】
【発明の効果】ターゲットの短軸が長軸の0.7〜1.
0倍である枚葉式スパッタリングターゲットにおいて、
本発明の焼結体のビッカース硬度を700以上800以
下、研削方向と平行に荷重を印加して測定された3点曲
げ強度を200MPa以上250MPa以下とするとと
もに、焼結体とバッキングプレートを接合するはんだ層
の厚さを0.5mm以上1mm以下のITOスパッタリ
ングターゲットを用いることにより、真空排気時あるい
はスパッタリング時に発生する割れを効果的に抑制する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】枚葉式の多分割ターゲットの形態の一例を示す
図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的にインジウム、スズおよび酸素か
    らなる複数の焼結体を単一のバッキングプレート上に接
    合した多分割ターゲットであって、ターゲットの短軸が
    長軸の0.7〜1.0倍である枚葉式スパッタリングタ
    ーゲットにおいて、前記焼結体のビッカース硬度を70
    0以上800以下、焼結体のスパッタ面となる面に施し
    た研削加工の研削方向と平行に荷重を印加して測定され
    た3点曲げ強度を200MPa以上250MPa以下と
    するとともに、焼結体とバッキングプレートを接合する
    はんだ層の厚さを0.5mm以上1mm以下としたこと
    を特徴とするスパッタリングターゲット。
  2. 【請求項2】 長軸の長さが800mm以上であること
    を特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲッ
    ト。
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