JP2003095834A - 広宿主範囲を持つ昆虫病原性糸状菌 - Google Patents
広宿主範囲を持つ昆虫病原性糸状菌Info
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Abstract
来の殺虫剤を提供すること。 【解決手段】糸状菌であるペーシロマイセス・テヌイペ
ス(Paecilomyces tenuipes)に属する新菌株ペーシロ
マイセス・テヌイペスT1株(受託番号:FERM P
−18487)、ペーシロマイセス・テヌイペスT1株
の菌体を有効成分として含有することを特徴とする殺虫
剤及びペーシロマイセス・テヌイペスT1株の菌体を害
虫、害虫の生息場所又は害虫から保護すべき植物に処理
することを特徴とする殺虫方法。
Description
ペーシロマイセス(Paecilomyces)属に属する糸状菌の
新菌株、この菌株の菌体を用いた殺虫剤及び殺虫方法に
関する。
他に、微生物を起源とする殺虫剤が使用されている。そ
して、近年、昆虫病原性を有する微生物の研究が進めら
れ、いくつかの昆虫病原性糸状菌が発見されてきてい
る。
出されている昆虫病原性糸状菌は必ずしも広い殺虫スペ
クトラムを有するとは言いがたく、また、殺虫効力も充
分なものとは言えなかった。本発明は、幅広い害虫に対
して高い効力を有する微生物由来の殺虫剤を提供するこ
とを課題とする。
題を解決するため、種々の検討を行った結果、糸状菌で
あるペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces te
nuipes)T1株(受託番号:FREM P−1848
7)が昆虫病原性を有し、幅広い害虫に対して高い殺虫
活性を有することを見出し、本発明を完成した。
テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1株(以下、
本発明菌株と記す)、ペーシロマイセス・テヌイペス
(Paecilomyces tenuipes)T1株の菌体を有効成分と
して含有する殺虫剤(以下、本発明殺虫剤と記す。)及
びペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenu
ipes)T1株の菌体を害虫、害虫の生息場所又は害虫か
ら保護すべき植物に処理することを特徴とする殺虫方法
を提供する。
ついて説明する。
板培地)、25〜30mm(オートミール寒天平板培
地) (2)集落表面の色調 白色(2%マルトエキス寒天平板培地)、白色(オート
ミール寒天平板培地) (3)集落裏面の色調 白色(2%マルトエキス寒天平板培地)、白色〜明るい
黄色(オートミール寒天平板培地) (4)集落表面の組織 羊毛状〜綿毛状 (5)分生子柄 滑面、分岐して不規則な輪生となる。 (6)分生胞子 滑面、楕円形〜円筒形、連鎖する、約4μm×約2μm (7)厚膜胞子 形成せず(25℃、9日間) (8)核の5.8SリボソームRNAをコードするDN
Aの塩基配列及び核の28SリボゾームRNAをコード
するDNAの塩基配列 核の5.8SリボゾームRNAをコードするDNAの塩
基配列を配列番号1に、核の28SリボゾームRNAを
コードするDNAの塩基配列を配列番号2に示す。
索」青木襄児著1989年(全国農村協会)に基づく検
索の結果、並びに、核の5.8SリボソームRNAをコ
ードするDNAの塩基配列及び核の28SリボゾームR
NAをコードするDNAの塩基配列の相同性検索(使用
したデータベース:GENEBANK、使用したプログ
ラム:BLAST(Basic Local Alignment Search Too
l)(National Centerfor Biotechnology Informatio
n))の結果から、本発明菌株は、ペーシロマイセス・
テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)種と同定され
た。
セス・テヌイペス(Paecilomycestenuipes)T1株と命
名し、平成13年8月29日に独立行政法人産業技術総
合研究所特許生物寄託センター長に寄託した(受託番
号:FERM P−18487)。
成分として含有することを特徴とする。本発明殺虫剤に
は、本発明菌株の生菌体が用いられ、本発明菌株の生菌
体としては、例えば分生胞子、短菌糸(blastospore)
及び菌糸があげられる。本発明殺虫剤には、分生胞子、
短菌糸(blastospore)、菌糸等を単独または混合して
用いることができる。
体は、ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces
tenuipes)T1株を液体培地または固体培地を用いて培
養することにより多量に調製することができる。
培地、固体培地)は本発明菌株が増殖するものであれば
特に限定されるものではなく、微生物培養に通常使用さ
れる炭素源、窒素源、有機塩及び無機塩等を適宜含む培
地が用いられる。
機塩及び無機塩等を適宜混合することにより調製でき
る。液体培地に含まれる炭素源としては、例えばグルコ
ース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセ
ロール等の糖アルコール類、フマル酸、クエン酸、ピル
ビン酸等の有機酸、動植物油及び糖蜜が挙げられる。培
地に含まれる炭素源の量は、通常0.1〜20%(w/
v)である。
ば肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆
粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquo
r)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素
源、硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウ
ム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩や
硝酸塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム
等の有機酸のアンモニウム塩、尿素及びアミノ酸類が挙
げられる。培地に含まれる窒素源の量は、通常0.1〜
30%(w/v)である。
は、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、
鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢
酸塩、炭酸塩、リン酸塩が挙げられ、具体的には例え
ば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウ
ム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜
鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナ
トリウム、リン酸一水素カリウム及びリン酸ニ水素カリ
ウムが挙げられる。培地に含まれる無機塩や有機塩の量
は通常0.0001〜5%(w/v)である。
主穀類、トウモロコシ、栗、稗、コーリャン、蕎麦等の
雑穀類の一種又は二種以上を混合したもの;オガ粉、バ
ガス、籾殻、莢、藁、コ−ンコブ、綿実粕等を主原料と
し、これに必要に応じて、米糠、トウモロコシヌカ(コ
ーンブラン)、コーンステープリカー、酵母粉末、フス
マ、アミノ酸類、大豆ミール、小麦粉、オカラ、グルコ
ース、マルトエキス、ミネラル(リン酸一カリウム、炭
酸石灰、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等)、ビタ
ミン(チアミン等)等を配合したもの;及び粘土鉱物等
の多孔質、寒天、ゼラチン等の天然高分子等の基材に前
記液体培地に使用されるる炭素源、窒素源、有機塩及び
無機塩等を含むものが挙げられる。
的例としては、液体培地として、2%マルトエキス液体
培地、オートミール液体培地、ポテトデキストロース液
体培地、サブロー液体培地及びL−broth液体培地
が挙げられ、固体培地として、2%マルトエキス寒天培
地、オートミール寒天培地、ポテトデキストロース寒天
培地、サブロー寒天培地及びL−broth寒天培地が
挙げられる。
使用される方法に準じて行うことができる。即ち、液体
培地を用いて培養する方法としては、例えば試験管振盪
式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター培養及
びタンク培養が挙げられ、固体培地を用いて培養する方
法としては、例えば静置培養が挙げられる。培養温度
は、微生物が生育可能な範囲で適宜変更することができ
るが、通常15〜35℃の範囲であり、培地のpHは通
常約5〜約7の範囲である。培養時間は培養条件により
異なるが、通常約1日間〜約2ヶ月間の範囲である。
た培養液を遠心分離する、本発明菌株を培養した固体培
地上に蒸留水等を加えて表面から菌体をかきとる等の方
法で得ることができる。
ま用いることもできるが通常は、さらに固体担体、液体
担体等、必要により界面活性剤や保水剤等の製剤用補助
剤を含有し、粉剤、粒剤、水和剤等の固形製剤、乳剤、
フロアブル剤、油剤等の液体製剤に製剤化されたもので
ある。これらの製剤には、製剤1gあたり本発明菌株の
菌体を通常103〜1015CFU(CFU:コロニー形成単
位)含有する。
は、例えば、粘土類(セライト、カオリンクレー、珪藻
土、合成含水酸化珪素、ベントナイト、フバサミクレ
ー、酸性白土等)、タルク類、セラミック、その他の無
機鉱物、ピートモス、パルプ、寒天、ふすま等の有機物
が挙げられる。液体担体としては、例えば、水、脂肪族
炭化水素類(ヘキサン、灯油、軽油等)、農園芸油(マ
シン油等)、植物油(大豆油、綿実油等)が挙げられ
る。
エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリール
スルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキル
アリールエーテル類のポリオキシエチレンアルキルエー
テル、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレ
ンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェ
ニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニル
エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポ
リオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエ
チレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル
類、及び糖アルコール誘導体があげられる。
ギーナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カ
ルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロー
スナトリウム等)、粘性合成水溶性ポリマー(ポリアク
リル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリビニルア
ルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリド
ン等)、粘性動物系高分子(コンドロイチン硫酸ナトリ
ウム、カゼイン、ゼラチン等)、多価アルコール類(グ
リセリン、エチレングリコール等)が挙げられる。
例えば、以下の害虫が挙げられる。 鱗翅目害虫:ニカメイガ(Chilo suppressalis)、コブ
ノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)などのメイガ
類、ヨトウガ(Mamestra brasicae)、オオタバコガ(H
elicoverpa armigera)、タマナギンウワバ(Autograph
a nigrisigna)などのヤガ類、モンシロチョウ(Pieris
rapae)などのシロチョウ類、コナガ(Plutella xylos
tella)などのスガ類、ドクガ(Euproctis taiwana)、
マイマイガ(Lymantria dispar)、モンシロドクガ(Eu
proctis similis)などのドクガ類、ヒメクロイラガ(S
copelodes contracus)などのイラガ類、マツカレハ(D
endrolimus spectabilis)などのカレハガ類 半翅目害虫:ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモ
アカアブラムシ(Myzus persicae)、ニセダイコンアブ
ラムシ(Lipaphis pserudobrassicae)等のアブラムシ
類、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporarioru
m)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバー
リーフコナジラミ(Bemisia argentifolli)等のコナジ
ラミ類等 双翅目害虫:イエバエ(Musca domestica)などのイエ
バエ類、アカイエカ(Culex pipiens pallens)などの
イエカ類等 アザミウマ目害虫:ミナミキイロアザミウマ(Thrips p
almi)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occi
dentalis)等 シロアリ目害虫:ヤマトシロアリ(Reticulitermes spe
ratus)、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)
等。
を、害虫、害虫の生息場所、害虫から保護すべき植物等
に施用することにより行われる。本発明殺虫剤を害虫等
に施用する際、その施用量は通常1000m2あたり1
05〜1019CFU、好ましくは107〜1017CFUで
ある。乳剤、水和剤、フロアブル剤等は通常、本発明菌
体の濃度が103〜1012CFU/mlとなるように水で希
釈して施用し、粒剤等は通常、そのまま施用する。
虫から保護すべき作物等の植物に対して茎葉処理するこ
とにより使用することができ、作物の苗を植える前の苗
床や植付後の株元に処理することにより使用することも
できる。
く説明するが、本発明はこれらの例に限定されるもので
はない。
約10mm)に予めポテトデキストロース寒天培地で培
養したペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces
tenuipes)T1株を接種し、25℃で蛍光灯の光を14
時間/日照射しながら14日間静置培養した。寒天培地
上に形成した菌体(分生胞子を多く含む)を展着剤(特
製リノー:日本農薬株式会社製)0.03%を含む水
(以下、0.03%展着液と記す。)10mlを用いて
かきとることによって集め、さらに0.03%展着液で
希釈して所定菌体濃度の試験液を調製した。
es)ATCC−44818株、イザリア・ジャポニカ
(Isaria japonica)IFO−30367株及びイザリ
ア・ジャポニカ(Isaria japonica)IFO−3116
1株を用いて、上記製造例と同様にして、それぞれの菌
株の所定菌体濃度の試験液を調製した。なお、イザリア
・ジャポニカ種はペーシロマイセス・テヌイペス種に含
まれるとされている種である。(例えば、社団法人日本
植物防疫協会発行、植物防疫特別増刊号No.2「天敵
微生物の研究手法」p74)
径5cmの濾紙を入れ、ここに、製造例1に記載した方
法で調製したペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilom
yces tenuipes)T1株の所定菌体濃度の試験液0.6
mlを加えた。さらにショ糖0.5g及びイエバエ成虫
10頭を入れて蓋をして密閉した。4日間放置した後、
供試虫の生死を観察して、死虫率を求めた(3反復)。
また、比較対照として参考製造例に記載の方法で調製し
た試験液を用いて同様に試験した。結果を表1に示す。
た。このキャベツに製造例1に記載した方法で調製した
ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomycestenuipe
s)T1株の所定菌体濃度の試験液を散布処理した(1
0ml/ポット)。これを風乾した後、コナガ3齢幼虫
を1ポットあたり10頭放した。5日間放置した後、供
試虫の生死を観察して死虫率を求めた(3反復)。ま
た、比較対照として参考製造例に記載の方法で調製した
試験液を用いて同様に試験した。結果を表2に示す。
テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1株の所定菌
体濃度の試験液にオオタバコガ3齢幼虫を10秒間浸漬
処理した。直径6cm×高さ3cmのプラスチックカッ
プに直径5cmの濾紙を入れ、ここに上記供試虫を1頭
とキャベツの葉とを入れ、蓋をして密閉した。7日間放
置後、供試虫の生死を観察して死虫率を求めた(10反
復)。また、比較対照として参考製造例に記載の方法で
調製した試験液を用いて同様に試験した。結果を表3に
示す。
た後、ワタアブラムシ雌成虫を1ポットあたり5頭放し
た。このキュウリに製造例1に記載した方法で調製した
ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuip
es)T1株の所定菌体濃度の試験液を1ポットあたり1
0ml散布処理した。8日間放置後、供試虫の生死を観
察して下式により補正密度指数を求めた。また、比較対
照として参考製造例に記載の方法で調製した試験液を用
いて同様に試験した。 補正密度指数={(A×b)/(B×a)}×100 A:処理直前の無処理区の生存虫数 a:処理8日後の無処理区の生存虫数 B:処理直前の薬剤処理区の生存虫数 b:処理8日後の薬剤処理区の生存虫数 結果を表4に示す。
テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1株の所定菌
体濃度の試験液1.5mlにイエシロアリ(職蟻)10
頭を10秒間浸漬した。このイエシロアリを試験液ごと
直径82mmの濾紙を置いた丸型シャーレ(直径90m
m、高さ15mm)の中に流し込んだ。これを7日間放
置し、供試虫の生死を調査して、死虫率を求めた(3反
復)。また、比較対照として参考製造例に記載の方法で
調製した試験液を用いて同様に試験した。結果を表5に
示す。
ヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1株は広い殺虫
スペクトルと高い殺虫効力を有することから、広い殺虫
スペクトルと高い殺虫効力を有する本発明菌株の菌体を
有効成分として含有する微生物殺虫剤が提供される。
Claims (3)
- 【請求項1】ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilom
yces tenuipes)T1株(受託番号:FERM P−1
8487) - 【請求項2】ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilom
yces tenuipes)T1株の菌体を有効成分として含有す
ることを特徴とする殺虫剤。 - 【請求項3】ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilom
yces tenuipes)T1株の菌体を害虫、害虫の生息場所
又は害虫から保護すべき植物に処理することを特徴とす
る殺虫方法。
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