JP4501426B2 - 殺虫性糸状菌製剤 - Google Patents
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Description
しかしながら、殺虫性糸状菌は単独では生存安定性の高くないものがあり、このような殺虫性糸状菌を用いた殺虫性糸状菌製剤の場合必ずしも十分な生存安定性を有していないことが多かった。そのため、製剤中における殺虫性糸状菌の生存安定性を向上させた製剤が求められていた。
即ち、本発明は、
1.ペーシロマイセス(Paecilomyces)属に属する殺虫性糸状菌、ポリカルボン酸型界面活性剤、及び、水に溶解するか若しくは水により糊化するデンプンを含有することを特徴とする殺虫性糸状菌製剤(以下、本発明製剤と記すこともある。);
2.製剤の全重量に対して、ポリカルボン酸型界面活性剤を5重量%以上30重量%以下、及び、水に溶解するか若しくは水により糊化するデンプンを20重量%以上65重量%未満含有することを特徴とする前項1記載の殺虫性糸状菌製剤;
3.殺虫性糸状菌が下記のいずれかの糸状菌であることを特徴とする前項1記載の殺虫性糸状菌製剤
(1)核の5.8SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号1で示される塩基配列を有し、かつ、核の28SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号2で示される塩基配列を有する糸状菌
(2)ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)に属する糸状菌
(3)独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7861として寄託されているペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1菌株である糸状菌
4.ポリカルボン酸型界面活性剤が、(a)イソブチレン若しくはジイソブチレンと(b)マレイン酸との共重合物又はその塩からなるポリカルボン酸型界面活性剤であることを特徴とする前項1〜3のいずれか記載の殺虫性糸状菌製剤;
5.前項1〜3のいずれか記載の製剤を、害虫、害虫の生育場所又は害虫から保護するべき植物に施用することを特徴とする殺虫方法;
6.ポリカルボン酸型界面活性剤及び水に溶解するか若しくは水により糊化するデンプンと、ペーシロマイセス(Paecilomyces)属に属する殺虫性糸状菌とを混合する工程を有することを特徴とする殺虫性糸状菌製剤の製造方法;
等を提供するものである。
本発明製剤において用いられる殺虫性糸状菌は、ペーシロマイセス(Paecilomyces)属に属する糸状菌であり、例えば、ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)に属する糸状菌、ペーシロマイセス・フモソロセウス(Paecilomyces fumosoroseus)に属する糸状菌、ペーシロマイセス・ファリノーサス(Paecilomyces farinosus)に属する糸状菌等を挙げることができ、具体的にはペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1菌株、ペーシロマイセス・テヌイペス ATCC44818、ペーシロマイセス・フモソロセウス ATCC20874、ペーシロマイセス・フモソロセウス ATCC42188、ペーシロマイセス・フモソロセウス NRBC8555等を挙げることができる。
天然から分離する場合には、まず、体が硬化し、体からキノコ状のものが生えている死亡虫を野外から採取する。当該死亡虫に形成されている分生子を白金耳で触れ、SDY培地(組成:ペプトン 1%(W/V)、酵母エキス 1%(W/V)、ブドウ糖 2%(W/V)、寒天 1.5%(W/V))やCzapek培地(組成:NaNO3 0.3%(W/V)、K2HPO4 0.1%(W/V)、MgSO4・7H2O 0.05%(W/V)、KCl 0.05%(W/V)、FeSO4・7H2O 0.001%(W/V)、ショ糖 3%(W/V)、寒天 1.5%(W/V))等の固体培地に線を引くように擦りつける。25℃で培養し、数日後に生えてきた菌の独立したコロニーを切り取り、新しいSDY培地やCzapek培地等の固体培地に移植し、さらに25℃で培養する。生育してきた菌について、植物防疫特別増刊号No.2天敵微生物の研究手法(社団法人日本植物防疫協会発行)記載の方法等に従って、ペーシロマイセス属に属する糸状菌であるか同定を行い、ペーシロマイセス属に属する糸状菌を選抜すればよい。
つぎに、選抜されたペーシロマイセス属に属する糸状菌の殺虫活性の有無を確認する。選抜されたペーシロマイセス属に属する糸状菌をSDY培地やCzapek培地等の固体培地で25℃で培養し、形成された分生子を1×108cfu/mlとなるように滅菌水に懸濁し、分離源となった死亡虫と同種の昆虫10頭を懸濁液に30秒間浸漬する。浸漬した昆虫を25℃、湿度100%の条件下で飼育し、接種後6日後に死亡虫が観察される菌株を、ペーシロマイセス属に属する殺虫性糸状菌として選抜することができる。
(1)生育速度(25℃、7日間)
集落の直径:25〜30mm(2%マルトエキス寒天平板培地)、25〜30mm(オートミール寒天平板培地)
(2)集落表面の色調
白色(2%マルトエキス寒天平板培地)、白色(オートミール寒天平板培地)
(3)集落裏面の色調
白色(2%マルトエキス寒天平板培地)、白色〜明るい黄色(オートミール寒天平板培地)
(4)集落表面の組織
羊毛状〜綿毛状
(5)分生子柄
滑面、分岐して不規則な輪生となる。
(6)分生胞子
滑面、楕円形〜円筒形、連鎖する、約4μm×約2μm
(7)厚膜胞子
形成せず(25℃、9日間)
(8)核の5.8SリボソームRNAをコードするDNAの塩基配列及び核の28SリボゾームRNAをコードするDNAの塩基配列
核の5.8SリボゾームRNAをコードするDNAの塩基配列を配列番号1に、核の28SリボゾームRNAをコードするDNAの塩基配列を配列番号2に示す。
当該菌の培養に用いられる液体培地又は固体培地は当該菌が増殖するものであれば特に限定されるものではなく、微生物培養に通常使用される炭素源、窒素源、有機塩及び無機塩等を適宜含む培地が用いられる。
液体培地は、通常水に炭素源、窒素源、有機塩、無機塩、ビタミン類等を適宜混合することにより調製できる。
液体培地に用いられる炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール類、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動植物油及び糖蜜等が挙げられる。培地に含まれる炭素源の量は、通常0.1〜20%(w/v)である。
液体培地に用いられる窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩や硝酸塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩、尿素及びアミノ酸類が挙げられる。培地に含まれる窒素源の量は、通常0.1〜30%(w/v)である。
液体培地に用いられる有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩が挙げられ、具体的には例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸一水素カリウム及びリン酸ニ水素カリウムが挙げられる。培地に含まれる無機塩や有機塩の量は、通常0.0001〜5%(w/v)である。
ビタミン類としては、チアミン等が挙げられる。
固体培地としては、例えば、米類、麦類等の主穀類、トウモロコシ、栗、稗、コーリャン、蕎麦等の雑穀類、オガ粉、バガス、籾殻、フスマ、莢、藁、コ−ンコブ、綿実粕、オカラ、寒天、ゼラチン等を挙げることができる。また、これらの2種以上を混合して使用することもでき、さらに、前記液体培地に使用される炭素源、窒素源、有機塩、無機塩、ビタミン等を適宜混合したものが挙げられる。
即ち、液体培地を用いて培養する方法としては、例えば、試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター培養及びタンク培養が挙げられ、固体培地を用いて培養する方法としては、例えば、静置培養が挙げられ、必要に応じ切り返しを加えてもよい。
培養温度は、当該菌が生育可能な範囲で適宜変更することができるが、通常15℃〜35℃の範囲であり、培地のpHは通常約5〜7の範囲である。培養時間は培養条件により異なるが、通常約1日間〜約2ヶ月間の範囲である。
当該菌は、当該菌を培養した培養液を遠心分離する方法、当該菌を培養した固体培地上に蒸留水等を加えて表面から菌体をかきとる方法や、固体培地を乾燥させ粉砕した後、篩により分画する方法等により得ることができる。
本発明製剤に含まれるポリカルボン酸型界面活性剤の配合量は、本発明製剤の全重量に対して、通常0.5重量%以上50重量%以下、好ましくは1重量%以上30重量%以下、より好ましくは5重量%以上30重量%以下である。
本発明製剤において用いられる水に溶解するか若しくは水により糊化するデンプンとしては、例えば、α化デンプン、デキストリン、アミロース及びアミロペクチンの分解物、酸化デンプン及び酸処理デンプン等の加工デンプンを挙げることができ、具体的には例えば、マツノリン500、マツノリンM、マツノリンM−22(以上、松谷化学工業製)、アミコールNo.1、アミコールW、キプロガムF−500、ペトロサイズJ(以上、日澱化学製)等が挙げられる。
これらの副資材を添加する場合、その添加量は合計で、本発明製剤の全重量に対して、通常0.1重量%以上90重量%以下、好ましくは0.5重量%以上75重量%以下である。
本発明製剤の製造方法には、通常の農薬製剤の製造方法を適用することができる。本発明製剤が粉末製剤の場合には、例えば、前述の方法により得られた殺虫性糸状菌と、ポリカルボン酸型界面活性剤及び水に溶解するか若しくは水により糊化するデンプンとを、さらに必要に応じて他構成成分若しくは残部として、副資材を、混合することにより製造することができる。混合の際には、乳鉢・乳棒、薬さじ等を用いて混合することもできるし、例えば、リボンミキサー、ナウタミキサー等の混合機を用いて混合することもできる。
本発明製剤が造粒型製剤の場合には、例えば、乾式造粒法、湿式押し出し造粒法、噴霧乾燥法、流動層造粒法等の通常の造粒方法で製造することができる。
鱗翅目害虫:ニカメイガ(Chilo suppressalis)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)等のメイガ類、ヨトウガ(Mamestra brasicae)、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)、タマナギンウワバ(Autographa nigrisigna)等のヤガ類、モンシロチョウ(Pieris rapae)等のシロチョウ類、コナガ(Plutella xylostella)等のスガ類、ドクガ(Euproctis taiwana)、マイマイガ(Lymantria dispar)、モンシロドクガ(Euproctis similis)等のドクガ類、ヒメクロイラガ(Scopelodes contracus)等のイラガ類、マツカレハ(Dendrolimus spectabilis)等のカレハガ類
半翅目害虫:ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ニセダイコンアブラムシ(Lipaphis pserudobrassicae)等のアブラムシ類、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolli)等のコナジラミ類等
双翅目害虫:イエバエ(Musca domestica)等のイエバエ類、アカイエカ(Culex pipiens pallens)等のイエカ類等
アザミウマ目害虫:ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)等
シロアリ目害虫:ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)等。
本発明製剤を害虫、害虫の生息場所又は害虫から保護すべき植物等に施用する際、その施用量は、通常1000m2あたり本発明製剤で用いられる殺虫性糸状菌株の菌体の量として、105〜1019CFU、好ましくは107〜1017CFUである。水和剤、顆粒水和剤等は通常、前記菌体の量として、その濃度が103〜1012CFU/mlとなるように水で希釈して使用すればよく、粉剤、粒剤等は通常、そのままで使用すればよい。
体が硬化し、体からキノコ状のものが生えている死亡虫を野外から採取する。当該死亡虫に形成されている分生子を白金耳で触れ、SDY培地に線を引くように擦りつける。25℃で培養し、数日後に生えてきた菌の独立したコロニーを切り取り、新しいSDY培地に移植し、さらに25℃で培養する。
得られた菌株のうち、以下のア)〜ク)に記載された性質をもつ菌株を、ペーシロマイセス属に属する糸状菌として選抜する。
ア)栄養菌糸が隔壁を持つ
イ)有性生殖が認められない。
ウ)分生子は分生子殻と呼ばれる壺上の器官の中に作られるのではなく、外生する。
エ)分生子はフィアライド頂端にフィアロ型に形成され、乾燥し連鎖状をなす。
オ)分生子柄は先端に小のうを持たない。
カ)フィアライドは分生子柄束上に柵状に配列されない。
キ)分生子の連鎖は束をなさない。
ク)フィアライドは頸部が明瞭、不規則あるいは緩く輪生である。
選抜されたペーシロマイセス属に属する糸状菌をSDY培地で25℃で培養し、形成された分生子を1×108CFU/mlとなるように滅菌水に懸濁し、分離源となった死亡虫と同種の昆虫10頭を懸濁液に30秒間浸漬する。浸漬した昆虫を25℃、湿度100%の条件下で飼育し、接種後6日後に死亡虫が観察されるものを、ペーシロマイセス属に属する殺虫性糸状菌として選抜する。
500ml容フラスコに入れた100mlのポテトデキストロース培地(Difco Laboratories製)に予めポテトデキストロース寒天培地(Difco Laboratories製)で培養されたペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1菌株の菌体を接種し、25℃で3日間振とう培養することにより、培養液を得た。滅菌水160mlが添加された滅菌済みフスマ80gに、前記培養液20mlを接種し、25℃、湿度90%の条件下で、光(2000〜3000ルクス)を間欠照射(明条件:連続14時間/日、暗条件:連続10時間/日)しながら14日間培養した。培養後、菌体(分生子を多く含む)が形成されたフスマを乾燥させ、乾燥後のフスマ及び直径20mmの瑪瑙ボール5個を日本工業規格標準ふるい(JIS Z 8801:60メッシュのふるいを使用)に入れ、これを日本工業規格標準ふるい(JIS Z 8801:100、200メッシュのふるいを使用)と重ねて、自動ふるい振とう機(FRITSCH社)で10分間振とうすることにより、200メッシュ以下の画分に前記菌株の菌体粉末2.0gを得た。
プラスチックカップにGEROPON T/36(ローディア日華製)18.4重量%、マツノリン500(松谷化学工業製)37.6重量%、カープレックス#80(塩野義製薬製)8.8重量%、勝光山SPクレー(勝光山鉱業所製)12.8重量%及びプロピレングリコール(関東化学製)2.4重量%を入れ、薬さじでよく混和した。これに実施例2で得られた菌体粉末20.0重量%を加え、さらに薬さじで混和することにより、本発明製剤1を得た。
GEROPON T/36に代えて、GEROPON SC213(ローディア日華製)(本発明製剤2)又はデモールEP(花王製)(本発明製剤3)を用いること以外は実施例3と同様にして調製することにより、本発明製剤2及び本発明製剤3を得た。
本発明製剤1〜3をそれぞれ100mg計り取り、これを10mlの滅菌水に懸濁した。この懸濁液を適当な濃度に希釈して、得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、当該製剤中の生菌数を求めた。一方、本発明製剤1〜3をそれぞれねじ口の付いたガラス瓶に入れ密栓した後、25℃暗所で15日間保存した。保存された本発明製剤1〜3をそれぞれ100mg計り取り、これを10mlの滅菌水に懸濁した。この懸濁液を適当な濃度に希釈して得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、保存後の当該製剤中の生菌数を求めた。このようにして求めた保存の前後における当該製剤中の生菌数の比を保存15日後の生存率として算出した。
本発明製剤1を100mg計り取り、これを10mlの滅菌水に懸濁した。この懸濁液を適当な濃度に希釈して、得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、当該製剤中の生菌数を求めた。一方、本発明製剤1をねじ口の付いたガラス瓶に入れ密栓した後、25℃暗所で28日間保存した。保存された本発明製剤1を100mg計り取り、これを10mlの滅菌水に懸濁した。この懸濁液を適当な濃度に希釈して得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、保存後の当該製剤中の生菌数を求めた。このようにして求めた保存の前後における当該製剤中の生菌数の比を保存28日後の生存率として算出した。
GEROPON T/36に代えて、リグニンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業製)(比較製剤1)又はソルポール5060(東邦化学工業製)(比較製剤2)を用いること以外は実施例3と同様にして調製することにより、比較製剤1及び比較製剤2を得た。
比較製剤1及び比較製剤2をそれぞれ100mg計り取り、これを10mlの滅菌水に懸濁した。この懸濁液を適当な濃度に希釈して、得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、当該製剤中の生菌数を求めた。一方、比較製剤1及び比較製剤2をそれぞれねじ口の付いたガラス瓶に入れ密栓した後、25℃暗所で15日間保存した。保存された比較製剤1及び比較製剤2をそれぞれ100mg計り取り、これを10mlの滅菌水に懸濁した。この懸濁液を適当な濃度に希釈して得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、保存後の当該製剤中の生菌数を求めた。このようにして求めた保存の前後における当該製剤中の生菌数の比を保存15日後の生存率として算出した。
マツノリン500(松谷化学工業製)に代えて、馬鈴薯デンプン(和光純薬工業製)(比較製剤3)を用いること以外は実施例3と同様にして調製することにより、比較製剤3を得た。
本発明製剤1及び比較製剤3を200mg計り取り、これを250ml容のメスシリンダーに入った250mlの3度硬水に懸濁した。懸濁した直後の懸濁液の中間層から5mlの懸濁液を採取し、濁度OD660を測定した。一方、懸濁後10分間静置した後、最下層の10mlを残して上層の懸濁液を取り除き、沈殿物を最下層の10ml懸濁液に懸濁して回収し、該回収液の濁度OD660を測定した。
本発明製剤1を水に1000倍(W/V)に希釈して試験液とした。シルバーリーフコナジラミの幼虫が寄生しているトマト幼苗(播種から3〜4週間経過したもの)を準備し、寄生しているシルバーリーフコナジラミの幼虫の数を計測した。当該トマト幼苗に前述の試験液10mlを噴霧し、25℃、湿度100%の条件下で光(2000〜3000ルクス)を間欠照射(明条件:連続14時間/日、暗条件:連続10時間/日)しながら、当該試験液が噴霧されたトマト幼苗を6日間栽培した。栽培後、トマト幼苗に寄生しているシルバーリーフコナジラミの幼虫の数を計測することにより、当該試験液の噴霧の前後の幼虫数から死虫率を算出した。その結果、死虫率は95.0%であった。
500ml容フラスコに入れた100mlのポテトデキストロース培地(Difco Laboratories製)に予めポテトデキストロース寒天培地(Difco Laboratories製)で培養されたペーシロマイセス・フモソロセウス(Paecilomyces fumosoroseus )NRBC8555株の菌体を接種し、25℃で3日間振とう培養することにより、培養液を得た。滅菌水160mlが添加された滅菌済みフスマ80gに、前記培養液20mlを接種し、25℃、湿度90%の条件下で、光(2000〜3000ルクス)を間欠照射(明条件:連続14時間/日、暗条件:連続10時間/日)しながら14日間培養した。培養後、菌体(分生子を多く含む)が形成されたフスマを乾燥させ、乾燥後のフスマ及び直径20mmの瑪瑙ボール5個を日本工業規格標準ふるい(JIS Z 8801:60メッシュのふるいを使用)に入れ、これを日本工業規格標準ふるい(JIS Z 8801:100、200メッシュのふるいを使用)と重ねて、自動ふるい振とう機(FRITSCH社)で10分間振とうすることにより、200メッシュ以下の画分に前記菌株の菌体粉末0.6gを得た。
予めポテトデキストロース寒天培地(Difco Laboratories製)で培養されたペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)ATCC44818菌株の菌体を、直径90mmのシャーレのポテトデキストロース寒天培地(Difco Laboratories製)20枚に接種し、25℃で1ヶ月培養した。培養後、ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)ATCC44818菌株の菌体をスパチュラで掻き取り、掻き取った菌体及び直径20mmの瑪瑙ボール5個を日本工業規格標準ふるい(JIS Z 8801:60メッシュのふるいを使用)に入れ、これを日本工業規格標準ふるい(JIS Z 8801:100、200メッシュのふるいを使用)と重ねて、自動ふるい振とう機(FRITSCH社)で10分間振とうすることにより、200メッシュ以下の画分に前記菌株の菌体粉末0.4gを得た。
プラスチックカップにGEROPON T/36(ローディア日華製)18.4重量%、マツノリン500(松谷化学工業製)37.6重量%、カープレックス#80(塩野義製薬製)8.8重量%、勝光山SPクレー(勝光山鉱業所製)12.8重量%及びプロピレングリコール(関東化学製)2.4重量%を入れ、薬さじでよく混和した。これに実施例9又は実施例10で得られた菌体粉末20.0重量%を加え、さらに薬さじで混和することにより、本発明製剤4又は本発明製剤5を得た。
本発明製剤4及び本発明製剤5をそれぞれ10mg計り取り、これを10mlの0.1%のL−77(日本ユニカー製)および0.1%のKF−630(信越化学工業製)を添加した滅菌水に懸濁した。この懸濁液を適当な濃度に希釈して、得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、当該製剤中の生菌数を求めた。一方、本発明製剤4又は本発明製剤5をそれぞれねじ口の付いたガラス瓶に入れ密栓した後、25℃暗所で15日間保存した。保存された本発明製剤4又は本発明製剤5をそれぞれ10mg計り取り、これを10mlの0.1%のL−77(日本ユニカー製)および0.1%のKF−630(信越化学工業製)を添加した滅菌水に懸濁した。この懸濁液を適当な濃度に希釈して得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、保存後の当該製剤中の生菌数を求めた。このようにして求めた保存の前後における当該製剤中の生菌数の比を保存15日後の生存率として算出した。
Claims (8)
- ペーシロマイセス(Paecilomyces)属に属する殺虫性糸状菌、ポリカルボン酸型界面活性剤、及び、水に溶解するか若しくは水により糊化するデンプンを含有することを特徴とする殺虫性糸状菌製剤。
- 製剤の全重量に対して、ポリカルボン酸型界面活性剤を5重量%以上30重量%以下、及び、水に溶解するか若しくは水により糊化するデンプンを20重量%以上65重量%未満含有することを特徴とする請求項1記載の殺虫性糸状菌製剤。
- 殺虫性糸状菌が下記のいずれかの糸状菌であることを特徴とする請求項1記載の殺虫性糸状菌製剤。
(1)核の5.8SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号1で示される塩基配列を有し、かつ、核の28SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号2で示される塩基配列を有する糸状菌。
(2)ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)に属する糸状菌。
(3)独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7861として寄託されているペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1菌株である糸状菌。 - ペーシロマイセス(Paecilomyces)属に属する殺虫性糸状菌が、次の〔殺虫性糸状菌確認方法〕により選抜できるペーシロマイセス(Paecilomyces)属に属する糸状菌である請求項1又は2記載の殺虫性糸状菌製剤。
〔殺虫性糸状菌確認方法〕
1.ペーシロマイセス属に属する糸状菌を固体培地で25℃で培養する。
2.形成された分生子を1×10 8 cfu/mlとなるように滅菌水に懸濁する。
3.該ペーシロマイセス属に属する糸状菌の分離源となった死亡虫と同種の昆虫10頭を懸濁液に30秒間浸漬する。
4.浸漬した昆虫を25℃、湿度100%の条件下で飼育し、接種後6日後に死亡虫が観察される菌株を、ペーシロマイセス属に属する殺虫性糸状菌として選抜する。 - ペーシロマイセス(Paecilomyces)属に属する糸状菌が、次の〔糸状菌選抜方法〕により選抜されるペーシロマイセス(Paecilomyces)属に属する糸状菌である請求項4記載の殺虫性糸状菌製剤。
〔糸状菌選抜方法〕
1.体が硬化し、体からキノコ状のものが生えている死亡虫を野外から採取する。
2.当該死亡虫に形成されている分生子を白金耳で触れ、固体培地に線を引くように擦りつける。
3.25℃で培養し、数日後に生えてきた菌の独立したコロニーを切り取り、新しい固体培地に移植し、さらに25℃で培養する。
4.生育してきた菌について、以下のア)〜ク)に記載された性質をもつ菌株を、ペーシロマイセス属に属する糸状菌として選抜する。
ア)栄養菌糸が隔壁を持つ
イ)有性生殖が認められない。
ウ)分生子は分生子殻と呼ばれる壺上の器官の中に作られるのではなく、外生する。
エ)分生子はフィアライド頂端にフィアロ型に形成され、乾燥し連鎖状をなす。
オ)分生子柄は先端に小のうを持たない。
カ)フィアライドは分生子柄束上に柵状に配列されない。
キ)分生子の連鎖は束をなさない。
ク)フィアライドは頸部が明瞭、不規則あるいは緩く輪生である。 - ポリカルボン酸型界面活性剤が、(a)イソブチレン若しくはジイソブチレンと(b)マレイン酸との共重合物又はその塩からなるポリカルボン酸型界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の殺虫性糸状菌製剤。
- 請求項1〜6のいずれか記載の製剤を、害虫、害虫の生育場所又は害虫から保護するべき植物に施用することを特徴とする殺虫方法。
- ポリカルボン酸型界面活性剤及び水に溶解するか若しくは水により糊化するデンプンと、ペーシロマイセス(Paecilomyces)属に属する殺虫性糸状菌とを混合する工程を有することを特徴とする殺虫性糸状菌製剤の製造方法。
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