JP4581410B2 - 殺虫性油剤 - Google Patents
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即ち、本発明は、
1.蒸留性状の50%留出温度が350℃以上550℃以下の範囲である石油系炭化水素油(以下、本石油系炭化水素油と記すこともある。)、当該石油系炭化水素油の乳化に適するノニオン性界面活性剤(以下、本ノニオン性界面活性剤と記すこともある。)及び殺虫性糸状菌を含有することを特徴とする殺虫性油剤(以下、本発明油剤と記すこともある。);
2.石油系炭化水素油が蒸留性状の50%留出温度が400℃以上500℃以下の範囲である石油系炭化水素油で有り、かつ、ノニオン性界面活性剤がポリオキシエチレン脂肪酸エステル若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテルであることを特徴とする前項1記載の殺虫性油剤;
3.石油系炭化水素油が、その成分配合量のうち50〜100重量%がパラフィン炭化水素である石油系炭化水素油であることを特徴とする前項1又は2記載の殺虫性油剤;
4.石油系炭化水素油が、その成分配合量のうち60〜90重量%がパラフィン炭化水素で有り、かつ、3重量%以下が芳香族炭化水素である石油系炭化水素油であることを特徴とする前項1又は2記載の殺虫性油剤;
5.ノニオン性界面活性剤が、石油系炭化水素油の成分配合量のうち50〜100重量%がパラフィン炭化水素である石油系炭化水素油の乳化に適する範囲であるHLBを有するノニオン性界面活性剤であることを特徴とする前項3記載の殺虫性油剤;
6.殺虫性糸状菌が、ペーシロマイセス属、ボーベリア属、メタリジウム属、ノムラエア属、バーティシリウム属、ヒルステラ属、クリシノミセス属、ソロスポレラ属及びトリポクラディウム属からなる群から選択されるいずれかの一つ以上の属から構成される一種以上の糸状菌であることを特徴とする前項1〜5のいずれかの前項記載の殺虫性油剤;
7.殺虫性糸状菌が下記のいずれかの糸状菌であることを特徴とする前項1〜5記載のいずれかの前項記載の殺虫性油剤
(1)ペーシロマイセス属の糸状菌
(2)核の5.8SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号1で示される塩基配列を有し、かつ、核の28SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号2で示される塩基配列を有する糸状菌
(3)ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)に属する糸状菌
(4)独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7861として寄託されているペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1菌株である糸状菌;
8.前項1〜7のいずれかの前項記載の殺虫性油剤を、害虫、害虫の生育場所又は害虫から保護するべき植物に施用することを特徴とする殺虫方法;
9.蒸留性状の50%留出温度が350℃以上550℃以下の範囲である石油系炭化水素油、当該石油系炭化水素油の乳化に適するノニオン性界面活性剤及び殺虫性糸状菌を混合する工程を有することを特徴とする殺虫性油剤の製造方法;
等を提供するものである。
本発明油剤において用いられる殺虫性糸状菌としては、例えば、ペーシロマイセス(Paecilomyces)属、ボーベリア(Beauveria)属、メタリジウム(Metarhizium)属、ノムラエア(Nomuraea)属、バーティシリウム(Verticillium)属、ヒルステラ(Hirsutella)属、クリシノミセス(Culicinomyces)属、ソロスポレラ(Sorosporella)属及びトリポクラディウム(Tolypocladium)属からなる群から選択されるいずれかの一つ以上の属から構成される一種以上の糸状菌等を挙げることができる。
ペーシロマイセス属に属する殺虫性糸状菌としては、例えば、ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)に属する糸状菌、ペーシロマイセス・フモソロセウス(Paecilomyces fumosoroseus)に属する糸状菌、ペーシロマイセス・ファリノーサス(Paecilomyces farinosus)に属する糸状菌等を挙げることができる。具体的には、ペーシロマイセス・テヌイペス T1株、ペーシロマイセス・テヌイペス ATCC44818、ペーシロマイセス・フモソロセウス IFO8555、ペーシロマイセス・フモソロセウス IFO7072等を挙げることができる。ボーベリア属に属する殺虫性糸状菌としては、例えば、ボーベリア・バッシアナ(Beauveria bassiana)、ボーベリア・ブロングニアティー(Beauveria brongniartii)に属する糸状菌等を挙げることができる。メタリジウム属に属する殺虫性糸状菌としては、例えば、メタリジウム・アニソプリエ(Metarhizium anisopliae)、メタリジウム・フラボビリデ(Metarhizium flavoviride)、メタリジウム・シリンドロスポラエ(Metarhizium cylindrosporae)に属する糸状菌等を挙げることができる。ノムラエア属に属する殺虫性糸状菌としては、例えば、ノムラエ有りレイ(Nomuraea rileyi)に属する糸状菌等を挙げることができる。バーティシリウム属に属する殺虫性糸状菌としては、例えば、バーティシリウム・レカニ(Verticillium lecanii)に属する糸状菌等を挙げることができる。
(1)ペーシロマイセス属の糸状菌
(2)核の5.8SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号1で示される塩基配列を有し、かつ、核の28SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号2で示される塩基配列を有する糸状菌
(3)ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)に属する糸状菌
(4)独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7861として寄託されているペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1菌株である糸状菌
天然から分離する場合には、まず、体が硬化し、体からキノコ状のものが生えている死亡虫を野外から採取する。当該死亡虫に形成されている分生子を白金耳で触れ、SDY培地(組成:ペプトン 1%(W/V)、酵母エキス 1%(W/V)、ブドウ糖 2%(W/V)、寒天 1.5%(W/V))やCzapek培地(組成:NaNO3 0.3%(W/V)、K2HPO4 0.1%(W/V)、MgSO4・7H2O 0.05%(W/V)、KCl 0.05%(W/V)、FeSO4・7H2O 0.001%(W/V)、ショ糖 3%(W/V)、寒天 1.5%(W/V))等の固体培地に線を引くように擦りつける。25℃で培養し、数日後に生えてきた菌の独立したコロニーを切り取り、新しいSDY培地やCzapek培地等の固体培地に移植し、さらに25℃で培養する。生育してきた菌について、植物防疫特別増刊号No.2天敵微生物の研究手法(社団法人日本植物防疫協会発行)記載の方法等に従って、属の同定(例えば、ペーシロマイセス属に属する糸状菌であるか同定)を行い、糸状菌を選抜すればよい。
つぎに、選抜された糸状菌の殺虫活性の有無を確認する。選抜された糸状菌(例えば、ペーシロマイセス属に属する糸状菌)をSDY培地やCzapek培地等の固体培地で25℃で培養し、形成された分生子を1×108cfu/mlとなるように滅菌水に懸濁し、分離源となった死亡虫と同種の昆虫10頭を懸濁液に30秒間浸漬する。浸漬した昆虫を25℃、湿度100%の条件下で飼育し、接種後6日後に死亡虫が観察される菌株を、殺虫性糸状菌(例えば、ペーシロマイセス属に属する殺虫性糸状菌)として選抜することができる。
(1)生育速度(25℃、7日間)
集落の直径:25〜30mm(2%マルトエキス寒天平板培地)、25〜30mm(オートミール寒天平板培地)
(2)集落表面の色調
白色(2%マルトエキス寒天平板培地)、白色(オートミール寒天平板培地)
(3)集落裏面の色調
白色(2%マルトエキス寒天平板培地)、白色〜明るい黄色(オートミール寒天平板培地)
(4)集落表面の組織
羊毛状〜綿毛状
(5)分生子柄
滑面、分岐して不規則な輪生となる。
(6)分生胞子
滑面、楕円形〜円筒形、連鎖する、約4μm×約2μm
(7)厚膜胞子
形成せず(25℃、9日間)
(8)核の5.8SリボソームRNAをコードするDNAの塩基配列及び核の28SリボゾームRNAをコードするDNAの塩基配列
核の5.8SリボゾームRNAをコードするDNAの塩基配列を配列番号1に、核の28SリボゾームRNAをコードするDNAの塩基配列を配列番号2に示す。
当該菌の培養に用いられる液体培地又は固体培地は、当該菌が増殖するものであれば特に限定されるものではなく、微生物培養に通常使用される炭素源、窒素源、有機塩及び無機塩等を適宜含む培地が用いられる。
液体培地は、通常水に炭素源、窒素源、有機塩、無機塩、ビタミン類等を適宜混合することにより調製できる。
液体培地に用いられる炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール類、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動植物油及び糖蜜等が挙げられる。培地に含まれる炭素源の量は、通常0.1〜20%(w/v)である。
液体培地に用いられる窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩や硝酸塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩、尿素及びアミノ酸類が挙げられる。培地に含まれる窒素源の量は、通常0.1〜30%(w/v)である。
液体培地に用いられる有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩が挙げられ、具体的には例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸一水素カリウム及びリン酸ニ水素カリウムが挙げられる。培地に含まれる無機塩や有機塩の量は、通常0.0001〜5%(w/v)である。
ビタミン類としては、チアミン等が挙げられる。
固体培地としては、例えば、米類、麦類等の主穀類、トウモロコシ、栗、稗、コーリャン、蕎麦等の雑穀類、オガ粉、バガス、籾殻、フスマ、莢、藁、コ−ンコブ、綿実粕、オカラ、寒天、ゼラチン等を挙げることができる。また、これらの2種以上を混合して使用することもでき、さらに、前記液体培地に使用される炭素源、窒素源、有機塩、無機塩、ビタミン等を適宜混合したものが挙げられる。
即ち、液体培地を用いて培養する方法としては、例えば、試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター培養及びタンク培養が挙げられ、固体培地を用いて培養する方法としては、例えば、静置培養が挙げられ、必要に応じ切り返しを加えてもよい。
培養温度は、当該菌が生育可能な範囲で適宜変更することができるが、通常15℃〜35℃の範囲で有り、培地のpHは通常約5〜7の範囲である。培養時間は培養条件により異なるが、通常約1日間〜約2ヶ月間の範囲である。
当該菌は、当該菌を培養した培養液を遠心分離する方法、当該菌を培養した固体培地上に蒸留水等を加えて表面から菌体をかきとる方法や、固体培地を乾燥させ粉砕した後、篩により分画する方法等により得ることができる。
具体的には例えば、
(1)蒸留性状の50%留出温度が419℃付近である石油系炭化水素油であって、その成分配合量のうちパラフィン炭化水素含量80重量%(n-d-M分析、20℃)かつ芳香族炭化水素含量0重量%(n-d-M分析、20℃)のもの
(2)蒸留性状の50%留出温度が472℃付近である石油系炭化水素油であって、その成分配合量のうちパラフィン炭化水素含量74重量%(n-d-M分析、20℃)かつ芳香族炭化水素含量1.3重量%(n-d-M分析、20℃)のもの
等を挙げることができる。これらの石油系炭化水素油は、例えば、日米礦油株式会社等から一般市販品(例えば、農薬オイル、農薬マシン油P等)として購入することもできる。
因みに、蒸留性状の50%留出温度の分析方法及び石油系炭化水素油組成の分析方法は、下記の公定法により決定すればよい。
(1)蒸留性状の50%留出温度の分析方法:JIS K2254(37-44頁)、「石油製品−蒸留試験方法、ガスクロマトグラフ法蒸留試験方法」
(2)石油系炭化水素油組成の分析方法(n-d-M分析):ASTM D3238-95(1-3頁)、「Standard test method for calculation of carbon distribution and structural group analysis of petroleum oils by the n-d-M」
前記の石油系炭化水素油の乳化に適するノニオン性界面活性剤の本発明により好ましく適したHLBとしては、組み合わせて用いられる石油系炭化水素油の種類や配合量によって決定されるが、一般的には例えば、7〜10の範囲を挙げることができる。
因みに、石油系炭化水素油が蒸留性状の50%留出温度が350℃以上550℃以下の範囲である石油系炭化水素油で有り、かつ、その成分配合量のうち50〜100重量%がパラフィン炭化水素である石油系炭化水素油との組み合わせで用いられるノニオン性界面活性剤が有する、乳化に適したHLBの好ましい範囲としては、7〜10、より好ましくは7〜8を挙げることができる。
本発明油剤に含まれる本ノニオン性界面活性剤の製剤中での配合量としては、例えば、本発明油剤の全重量に対して、通常、0.1〜50重量%程度、好ましくは1〜20重量%程度等を挙げることができる。
これらの副資材を添加する場合、その添加量は合計で、本発明油剤の全重量に対して、通常0.1重量%以上50重量%以下、好ましくは0.5重量%以上20重量%以下である。
半翅目害虫:ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)等のウンカ類、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、チャノミドリヒメヨコバイ(Empoasca onukii)等のヨコバイ類、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ニセダイコンアブラムシ(Lipaphis pserudobrassicae)等のアブラムシ類、カメムシ類、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)等のコナジラミ類、カイガラムシ類、グンバイムシ類、キジラミ類等。
双翅目害虫:アカイエカ(Culex pipiens pallens)等のイエカ類、ヤブカ類、ハマダラカ類、ユスリカ類、イエバエ(Musca domestica)等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、ハナバエ類、タマバエ類、ハモグリバエ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、アブ類、ブユ類、サシバエ類等。
鱗翅目害虫:ニカメイガ(Chilo suppressalis)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、ヨーロピアンコーンボーラー(Ostrinia nubilalis)、シバツトガ(Parapediasia teterrella)等のメイガ類、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、トリコプルシア属(Trichoplusia spp.)、ヘリオティス属(Heliothis spp.)、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)等のヘリコベルパ属(Helicoverpa spp.)、エ有りアス属(Earias spp.)、タマナギンウワバ(Autographa nigrisigna)等のオートグラファ属等のヤガ類、モンシロチョウ(Pieris rapae crucivora)等のシロチョウ類、コナガ(Plutella xylostella)等のスガ類、ドクガ(Euproctis taiwana)、マイマイガ(Lymantria dispar)、モンシロドクガ(Euproctis similis)等のドクガ類、ヒメクロイラガ(Scopelodes contracus)等のイラガ類、マツカレハ(Dendrolimus spectabilis)等のカレハガ類、リンゴコカクモンハマキ(Adoxophyesorana fasciata)、無しヒメシンクイ(Grapholitamolesta)、コドリングモス(Cydia pomonella)等のハマキガ類、モモシンクイガ(Carposina niponensis)等のシンクイガ類、モモハモグリガ(Lyonetia clerkella)等のチビガ類、キンモンホソガ(Phyllonorycter ringoniella)等のホソガ類、ミカンハモグリガ(Phyllocnistis citrella)等のコハモグリガ類、コナガ(Plutella xylostella)等のスガ類、ピンクボールワーム(Pectinophora gossypiella)等のキバガ類、ヒトリガ類、ヒロズコガ類等。
鞘翅目害虫:ハムシ類、コガネムシ類、ゾウムシ類、オトシブミ類、テントウムシ類、カミキリムシ類、ゴミムシダマシ類等。
アザミウマ目害虫:ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)等のスリップス属、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)等のフランクリニエラ属、チャノキイロアザミウマ(Sciltothrips dorsalis)等のシルトスリップス属等のアザミウマ類、クダアザミウマ類等。
網翅目害虫:ゴキブリ類、チャバネゴキブリ類等直翅目害虫:バッタ類、ケラ類等。
隠翅目害虫:ヒトノミ、ネコノミ等。
シラミ目害虫:ヒトジラミ等。
シロ有り目害虫:ヤマトシロ有り(Reticulitermes speratus)、イエシロ有り(Coptotermes formosanus)等。
対して散布処理することにより使用することがよい。
本発明油剤を害虫、害虫の生息場所又は害虫から保護すべき植物等に施用する際には、その施用量は、通常1000m2当たり本発明油剤で用いられる殺虫性糸状菌株の菌体の量として、105〜1019CFU、好ましくは107〜1017CFUである。通常、前記菌体の量として、その濃度が103〜1012CFU/mlとなるように水で希釈して使用すればよい。
体が硬化し、体からキノコ状のものが生えている死亡虫を野外から採取する。当該死亡虫に形成されている分生子を白金耳で触れ、SDY培地に線を引くように擦りつける。25℃で培養し、数日後に生えてきた菌の独立したコロニーを切り取り、新しいSDY培地に移植し、さらに25℃で培養する。
得られた菌株のうち、以下のア)〜ク)に記載された性質をもつ菌株を、ペーシロマイセス属に属する糸状菌として選抜する。
ア)栄養菌糸が隔壁を持つ
イ)有性生殖が認められない。
ウ)分生子は分生子殻と呼ばれる壺上の器官の中に作られるのではなく、外生する。
エ)分生子はフィアライド頂端にフィアロ型に形成され、乾燥し連鎖状をなす。
オ)分生子柄は先端に小のうを持たない。
カ)フィアライドは分生子柄束上に柵状に配列されない。
キ)分生子の連鎖は束をなさない。
ク)フィアライドは頸部が明瞭、不規則あるいは緩く輪生である。
選抜されたペーシロマイセス属に属する糸状菌をSDY培地で25℃で培養し、形成された分生子を1×108CFU/mlとなるように滅菌水に懸濁し、分離源となった死亡虫と同種の昆虫10頭を懸濁液に30秒間浸漬する。浸漬した昆虫を25℃、湿度100%の条件下で飼育し、接種後6日後に死亡虫が観察されるものを、ペーシロマイセス属に属する殺虫性糸状菌として選抜する。
500ml容フラスコに入れた100mlのポテトデキストロース培地(Difco Laboratories製)に予めポテトデキストロース寒天培地(Difco Laboratories製)で培養されたペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1菌株の菌体を接種し、25℃で3日間振とう培養することにより、培養液を得た。滅菌水160mlが添加された滅菌済みフスマ80gに、前記培養液20mlを接種し、25℃、湿度90%の条件下で、光(2000〜3000ルクス)を間欠照射(明条件:連続14時間/日、暗条件:連続10時間/日)しながら14日間培養した。培養後、菌体(分生子を多く含む)が形成されたフスマを乾燥させ、乾燥後のフスマ及び直径20mmの瑪瑙ボール5個を日本工業規格標準ふるい(JIS Z 8801:60メッシュのふるいを使用)に入れ、これを日本工業規格標準ふるい(JIS Z 8801:100、200メッシュのふるいを使用)と重ねて、自動ふるい振とう機(FRITSCH社)で10分間振とうすることにより、200メッシュ以下の画分に前記菌株の菌体粉末2.0gを得た。
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が419℃、成分配合量:パラフィン炭化水素80重量%、芳香族炭化水素0重量%)85.0重量%及びペグノール24−O(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れ、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、本発明油剤(1)を得た。
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノール24−O(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れ、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、本発明油剤(2)を得た。
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノールO−6A(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB9.6)5.0重量%を入れ、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、本発明油剤(3)を得た。
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が419℃、成分配合量:パラフィン炭化水素80重量%、芳香族炭化水素0重量%)85.0重量%及びペグノールO−4(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れ、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、本発明油剤(4)を得た。
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノールO−4(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れ、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、本発明油剤(5)を得た。
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(エクソンモービル化学有限会社製、蒸留性状の50%留出温度が289℃、パラフィン炭化水素52重量%、芳香族炭化水素0.6%、商品名エクソールD130)85.0重量%及びペグノール24−O(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(1)を得た。
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(エクソンモービル化学有限会社製、蒸留性状の50%留出温度が289℃、パラフィン炭化水素52重量%、芳香族炭化水素0.6%、商品名エクソールD130)85.0重量%及びペグノールO−4(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(2)を得た。
ガラス瓶に、大豆油(和光純薬工業株式会社製)85.0重量%及びペグノールS−4D(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB8.6)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(3)を得た。
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノールO−107(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB10.7)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(4)を得た。
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノール14−O(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルであるノニオン性界面活性剤、HLB11.5)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(5)を得た。
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノールHC−10(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB6.4)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(6)を得た。
トマト(ポンテローザ、タキイ種苗株式会社製)の種子をクレハ培土(呉羽化学株式会社製)を入れたプラスチックポットに植え、温室で第2葉期まで栽培した。生育したトマトにシルバーリーフコナジラミ成虫約100頭を放飼した。このようにして当該成虫に1日間産卵させた後のトマトから成虫を除去した後、これを25℃、湿度を制御しない条件下で光(2000〜3000ルクス)を間欠照射(明条件:連続14時間/日、暗条件:連続10時間/日)しながら8日間栽培した。8日間後、トマトの葉の幼虫数を計測した。
本発明油剤(1)〜(5)及び比較油剤(1)〜(3)をそれぞれ10mg計り取り、これを10mlの脱塩水に懸濁することにより散布液を調製した。得られた散布液を幼虫が寄生したトマトの植物体全体に1ポットあたり10ml散布した。散布後、当該植物体を25℃、湿度90%の条件下で光(2000〜3000ルクス)を間欠照射(明条件:連続14時間/日、暗条件:連続10時間/日)しながら6日間栽培した。ネガティブコントロールとして上記散布液の代わりに水を用いた同様な試験を並行して行った。6日間後にシルバーリーフコナジラミの生虫数を計測することにより、前記散布液の噴霧の前後の生虫数から下記の式より死虫率(5反復の平均値)を算出した。その結果を表1に示す。本発明油剤(1)〜(5)における死虫率は75〜78%であり、その相対向上率は129〜135%であった。
死虫率(%)=(散布前幼虫数−試験後生虫数/散布前幼虫数)×100
相対向上率(%)=(本発明油剤の死虫率−ネガティブコントロールの死虫率)×100/(比較油剤の平均死虫率−ネガティブコントロールの死虫率)
トマト(瑞栄、タキイ種苗株式会社製)の種子をクレハ培土(呉羽化学株式会社製)にを入れたプラスチックポットに植え、25℃、湿度を制御しない条件下で光(2000〜3000ルクス)を間欠照射(明条件:連続14時間/日、暗条件:連続10時間/日)しながら22日間栽培した。22日間後、トマトの苗を直径12cmのプラスチックポットに鉢上げし、さらに8日間栽培して第6葉が展開したトマトの苗を得た。
本発明油剤(1)〜(5)及び比較油剤(1)〜(2)をそれぞれ80mg計り取り、これを40mlの脱塩水に懸濁することにより散布液を調製した。得られた散布液をトマトの植物体全体に3ポットあたり40ml散布した。散布後、当該植物体を温室で栽培した。温室の平均気温は22.3℃、平均湿度55.6%であった。散布7日後及び14日後に同様の操作により散布液を再度散布し、当該植物体を温室で栽培した。ネガティブコントロールとして上記散布液の代わりに水を用いた同様な試験を並行して行った。1回目の散布2日後、7日後、14日後、21日後及び28日後に植物体の葉及び茎を観察することにより、薬害の有無を評価した。その結果を表2に示す。
本発明油剤2を20mg計り取り、これに20mlの滅菌希釈水を加えて懸濁した。この懸濁液を滅菌希釈水により適当な濃度に希釈して、得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、当該製剤中の殺虫性糸状菌の生菌数を求めた。一方、本発明油剤2をそれぞれねじ口の付いたガラス瓶に入れ密栓した後、25℃暗所で15日間保存した。保存された本発明油剤2を20mg計り取り、これに20mlの滅菌希釈水を加えて懸濁した。この懸濁液を滅菌希釈水により適当な濃度に希釈して得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、保存後の当該製剤中の殺虫性糸状菌の生菌数を求めた。このようにして求めた保存の前後における当該製剤中の殺虫性糸状菌の生菌数の比を保存14日後の殺虫性糸状菌の生存率として算出した。滅菌希釈水としては0.85%(w/v)塩化ナトリウム水溶液にKF−630(信越化学工業社製、界面活性剤)及びSilwet L−77(日本ユニカ製、界面活性剤)をそれぞれ0.1%(w/v)濃度で添加し、滅菌したものを使用した。
250mL共栓付シリンダーに硬度3度水を230ml入れた。共栓をした後、当該シリンダーを20℃恒温水槽中で30分以上静置した。これに本発明油剤(1)〜(5)及び比較油剤(4)〜(6)をそれぞれ250mg滴下し、さらに20℃の硬度3度水により250mLにメスアップした。共栓をした後、当該シリンダーを20秒間に10回転倒し、再び20℃恒温水槽中に静置した。15分間後、30分間後に当該シリンダーを恒温水槽より取り出し、乳化状態を観察した。その結果を表4に示す。
Claims (11)
- 蒸留性状の50%留出温度が350℃以上550℃以下の範囲である石油系炭化水素油、当該石油系炭化水素油の乳化に適するノニオン性界面活性剤及び殺虫性糸状菌を含有することを特徴とする殺虫性油剤。
- 石油系炭化水素油が蒸留性状の50%留出温度が400℃以上500℃以下の範囲である石油系炭化水素油であり、かつ、ノニオン性界面活性剤がポリオキシエチレン脂肪酸エステル若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテルであることを特徴とする請求項1記載の殺虫性油剤。
- 石油系炭化水素油が、その成分配合量のうち50〜100重量%がパラフィン炭化水素である石油系炭化水素油であることを特徴とする請求項1又は2記載の殺虫性油剤。
- 石油系炭化水素油が、その成分配合量のうち60〜90重量%がパラフィン炭化水素であり、かつ、3重量%以下が芳香族炭化水素である石油系炭化水素油であることを特徴とする請求項1又は2記載の殺虫性油剤。
- ノニオン性界面活性剤が、石油系炭化水素油の成分配合量のうち50〜100重量%がパラフィン炭化水素である石油系炭化水素油の乳化に適する範囲であるHLBを有するノニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項3記載の殺虫性油剤。
- 殺虫性糸状菌が、ペーシロマイセス属、ボーベリア属、メタリジウム属、ノムラエア属、バーティシリウム属、ヒルステラ属、クリシノミセス属、ソロスポレラ属及びトリポクラディウム属からなる群から選択されるいずれかの一つ以上の属から構成される一種以上の糸状菌であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの請求項記載の殺虫性油剤。
- 殺虫性糸状菌が、ペーシロマイセス属の糸状菌であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの請求項記載の殺虫性油剤。
- 殺虫性糸状菌がペーシロマイセス・テヌイペスに属する糸状菌であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの請求項記載の殺虫性油剤。
- 殺虫性糸状菌がペーシロマイセス・テヌイペス T1株(FERM BP−7861)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの請求項記載の殺虫性油剤。
- 請求項1〜9のいずれかの請求項記載の殺虫性油剤を、害虫、害虫の生育場所又は害虫から保護するべき植物に施用することを特徴とする殺虫方法。
- 蒸留性状の50%留出温度が350℃以上550℃以下の範囲である石油系炭化水素油、当該石油系炭化水素油の乳化に適するノニオン性界面活性剤及び殺虫性糸状菌を混合する工程を有することを特徴とする殺虫性油剤の製造方法。
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