JP4581410B2 - 殺虫性油剤 - Google Patents

殺虫性油剤 Download PDF

Info

Publication number
JP4581410B2
JP4581410B2 JP2004012921A JP2004012921A JP4581410B2 JP 4581410 B2 JP4581410 B2 JP 4581410B2 JP 2004012921 A JP2004012921 A JP 2004012921A JP 2004012921 A JP2004012921 A JP 2004012921A JP 4581410 B2 JP4581410 B2 JP 4581410B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oil
insecticidal
weight
petroleum hydrocarbon
hydrocarbon oil
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004012921A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005206486A (ja
JP2005206486A5 (ja
Inventor
賢司 松村
喜樹 高島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Chemical Co Ltd filed Critical Sumitomo Chemical Co Ltd
Priority to JP2004012921A priority Critical patent/JP4581410B2/ja
Publication of JP2005206486A publication Critical patent/JP2005206486A/ja
Publication of JP2005206486A5 publication Critical patent/JP2005206486A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4581410B2 publication Critical patent/JP4581410B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

本発明は、殺虫性油剤等に関するものである。
化学合成化合物を有効成分として使用しない害虫防除方法のひとつとして、殺虫性糸状菌の利用が注目されており、いくつかの殺虫性糸状菌を利用した殺虫性糸状菌製剤が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このような殺虫性糸状菌製剤の殺虫活性を向上させる一つの方法として、例えば、殺虫性糸状菌と植物油や鉱物油等の油との混合物を散布することが知られている。(例えば、特許文献3、非特許文献1〜6参照)。
米国特許第5730973号 米国特許第6030924号 国際公開第95/10597号パンフレット J.Invert.Pathol. 52, 66−72(1988) Ann.appl.Biol. 122, 145−152(1993) Pestic.Sci. 46, 299−306(1996) Phytoparasitica 25, 93S−100S(1997) 日本応用動物昆虫学会誌 44 4, 241−243(2000) Biocontrol Science and Technology 12, 337−348(2002) 平成12年度 生物農薬連絡試験成績 社団法人日本植物防疫協会 編 93(2000) 平成13年度 生物農薬連絡試験成績 社団法人日本植物防疫協会 編 198(2001)
しかしながら、殺虫性糸状菌は単独では生存安定性の高くないものが有り、このような殺虫性糸状菌を用いた殺虫性糸状菌製剤の場合において殺虫性糸状菌と植物油や鉱物油等の油との混合物を散布して使用する際での、当該混合物の組み合わせや配合量等の選択等が必ずしも容易ではなく、また殺虫性糸状菌の生存安定性を重視ししすぎた製剤処方になるために当該製剤がうまく乳化せず不均一状態になり、殺虫効果が安定せず、かつ、植物に対して薬害が発生するというような問題(例えば、非特許文献7、非特許文献8参照)が発生することがあった。
このような状況下において、本発明者らは鋭意検討した結果、殺虫性糸状菌に特定の蒸留性状を有する石油系炭化水素油と特定の極性を有する界面活性剤とを組み合わせて用いることによって、殺虫性糸状菌の生存安定性を維持したままで、製剤の植物に対する薬害軽減性や殺虫効果が向上することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.蒸留性状の50%留出温度が350℃以上550℃以下の範囲である石油系炭化水素油(以下、本石油系炭化水素油と記すこともある。)、当該石油系炭化水素油の乳化に適するノニオン性界面活性剤(以下、本ノニオン性界面活性剤と記すこともある。)及び殺虫性糸状菌を含有することを特徴とする殺虫性油剤(以下、本発明油剤と記すこともある。);
2.石油系炭化水素油が蒸留性状の50%留出温度が400℃以上500℃以下の範囲である石油系炭化水素油で有り、かつ、ノニオン性界面活性剤がポリオキシエチレン脂肪酸エステル若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテルであることを特徴とする前項1記載の殺虫性油剤;
3.石油系炭化水素油が、その成分配合量のうち50〜100重量%がパラフィン炭化水素である石油系炭化水素油であることを特徴とする前項1又は2記載の殺虫性油剤;
4.石油系炭化水素油が、その成分配合量のうち60〜90重量%がパラフィン炭化水素で有り、かつ、3重量%以下が芳香族炭化水素である石油系炭化水素油であることを特徴とする前項1又は2記載の殺虫性油剤;
5.ノニオン性界面活性剤が、石油系炭化水素油の成分配合量のうち50〜100重量%がパラフィン炭化水素である石油系炭化水素油の乳化に適する範囲であるHLBを有するノニオン性界面活性剤であることを特徴とする前項3記載の殺虫性油剤;
6.殺虫性糸状菌が、ペーシロマイセス属、ボーベリア属、メタリジウム属、ノムラエア属、バーティシリウム属、ヒルステラ属、クリシノミセス属、ソロスポレラ属及びトリポクラディウム属からなる群から選択されるいずれかの一つ以上の属から構成される一種以上の糸状菌であることを特徴とする前項1〜5のいずれかの前項記載の殺虫性油剤;
7.殺虫性糸状菌が下記のいずれかの糸状菌であることを特徴とする前項1〜5記載のいずれかの前項記載の殺虫性油剤
(1)ペーシロマイセス属の糸状菌
(2)核の5.8SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号1で示される塩基配列を有し、かつ、核の28SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号2で示される塩基配列を有する糸状菌
(3)ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)に属する糸状菌
(4)独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7861として寄託されているペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1菌株である糸状菌;
8.前項1〜7のいずれかの前項記載の殺虫性油剤を、害虫、害虫の生育場所又は害虫から保護するべき植物に施用することを特徴とする殺虫方法;
9.蒸留性状の50%留出温度が350℃以上550℃以下の範囲である石油系炭化水素油、当該石油系炭化水素油の乳化に適するノニオン性界面活性剤及び殺虫性糸状菌を混合する工程を有することを特徴とする殺虫性油剤の製造方法;
等を提供するものである。
本発明によれば、殺虫性糸状菌の生存安定性を維持したままで、製剤の植物に対する薬害軽減性や殺虫効果を向上させた殺虫性油剤等を提供することができる。
以下、詳細に本発明を説明する。
本発明油剤において用いられる殺虫性糸状菌としては、例えば、ペーシロマイセス(Paecilomyces)属、ボーベリア(Beauveria)属、メタリジウム(Metarhizium)属、ノムラエア(Nomuraea)属、バーティシリウム(Verticillium)属、ヒルステラ(Hirsutella)属、クリシノミセス(Culicinomyces)属、ソロスポレラ(Sorosporella)属及びトリポクラディウム(Tolypocladium)属からなる群から選択されるいずれかの一つ以上の属から構成される一種以上の糸状菌等を挙げることができる。
ペーシロマイセス属に属する殺虫性糸状菌としては、例えば、ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)に属する糸状菌、ペーシロマイセス・フモソロセウス(Paecilomyces fumosoroseus)に属する糸状菌、ペーシロマイセス・ファリノーサス(Paecilomyces farinosus)に属する糸状菌等を挙げることができる。具体的には、ペーシロマイセス・テヌイペス T1株、ペーシロマイセス・テヌイペス ATCC44818、ペーシロマイセス・フモソロセウス IFO8555、ペーシロマイセス・フモソロセウス IFO7072等を挙げることができる。ボーベリア属に属する殺虫性糸状菌としては、例えば、ボーベリア・バッシアナ(Beauveria bassiana)、ボーベリア・ブロングニアティー(Beauveria brongniartii)に属する糸状菌等を挙げることができる。メタリジウム属に属する殺虫性糸状菌としては、例えば、メタリジウム・アニソプリエ(Metarhizium anisopliae)、メタリジウム・フラボビリデ(Metarhizium flavoviride)、メタリジウム・シリンドロスポラエ(Metarhizium cylindrosporae)に属する糸状菌等を挙げることができる。ノムラエア属に属する殺虫性糸状菌としては、例えば、ノムラエ有りレイ(Nomuraea rileyi)に属する糸状菌等を挙げることができる。バーティシリウム属に属する殺虫性糸状菌としては、例えば、バーティシリウム・レカニ(Verticillium lecanii)に属する糸状菌等を挙げることができる。
これらの殺虫性糸状菌の中で、例えば、下記のいずれかの糸状菌であることが好ましい。
(1)ペーシロマイセス属の糸状菌
(2)核の5.8SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号1で示される塩基配列を有し、かつ、核の28SリボゾームRNAをコードするDNAが配列番号2で示される塩基配列を有する糸状菌
(3)ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)に属する糸状菌
(4)独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7861として寄託されているペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1菌株である糸状菌
これらは、天然から分離してもよいし、菌株保存機関等から購入してもよい。
天然から分離する場合には、まず、体が硬化し、体からキノコ状のものが生えている死亡虫を野外から採取する。当該死亡虫に形成されている分生子を白金耳で触れ、SDY培地(組成:ペプトン 1%(W/V)、酵母エキス 1%(W/V)、ブドウ糖 2%(W/V)、寒天 1.5%(W/V))やCzapek培地(組成:NaNO3 0.3%(W/V)、K2HPO4 0.1%(W/V)、MgSO4・7H2O 0.05%(W/V)、KCl 0.05%(W/V)、FeSO4・7H2O 0.001%(W/V)、ショ糖 3%(W/V)、寒天 1.5%(W/V))等の固体培地に線を引くように擦りつける。25℃で培養し、数日後に生えてきた菌の独立したコロニーを切り取り、新しいSDY培地やCzapek培地等の固体培地に移植し、さらに25℃で培養する。生育してきた菌について、植物防疫特別増刊号No.2天敵微生物の研究手法(社団法人日本植物防疫協会発行)記載の方法等に従って、属の同定(例えば、ペーシロマイセス属に属する糸状菌であるか同定)を行い、糸状菌を選抜すればよい。
つぎに、選抜された糸状菌の殺虫活性の有無を確認する。選抜された糸状菌(例えば、ペーシロマイセス属に属する糸状菌)をSDY培地やCzapek培地等の固体培地で25℃で培養し、形成された分生子を1×10cfu/mlとなるように滅菌水に懸濁し、分離源となった死亡虫と同種の昆虫10頭を懸濁液に30秒間浸漬する。浸漬した昆虫を25℃、湿度100%の条件下で飼育し、接種後6日後に死亡虫が観察される菌株を、殺虫性糸状菌(例えば、ペーシロマイセス属に属する殺虫性糸状菌)として選抜することができる。
尚、ペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託され、FERM BP−7861(旧FERM P18487)の寄託番号が付与されている。菌学的性状は次のとおり。
(1)生育速度(25℃、7日間)
集落の直径:25〜30mm(2%マルトエキス寒天平板培地)、25〜30mm(オートミール寒天平板培地)
(2)集落表面の色調
白色(2%マルトエキス寒天平板培地)、白色(オートミール寒天平板培地)
(3)集落裏面の色調
白色(2%マルトエキス寒天平板培地)、白色〜明るい黄色(オートミール寒天平板培地)
(4)集落表面の組織
羊毛状〜綿毛状
(5)分生子柄
滑面、分岐して不規則な輪生となる。
(6)分生胞子
滑面、楕円形〜円筒形、連鎖する、約4μm×約2μm
(7)厚膜胞子
形成せず(25℃、9日間)
(8)核の5.8SリボソームRNAをコードするDNAの塩基配列及び核の28SリボゾームRNAをコードするDNAの塩基配列
核の5.8SリボゾームRNAをコードするDNAの塩基配列を配列番号1に、核の28SリボゾームRNAをコードするDNAの塩基配列を配列番号2に示す。
本発明油剤に用いられる殺虫性糸状菌は、液体培地又は固体培地を用いて培養することにより調製することができる。
当該菌の培養に用いられる液体培地又は固体培地は、当該菌が増殖するものであれば特に限定されるものではなく、微生物培養に通常使用される炭素源、窒素源、有機塩及び無機塩等を適宜含む培地が用いられる。
液体培地は、通常水に炭素源、窒素源、有機塩、無機塩、ビタミン類等を適宜混合することにより調製できる。
液体培地に用いられる炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール類、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動植物油及び糖蜜等が挙げられる。培地に含まれる炭素源の量は、通常0.1〜20%(w/v)である。
液体培地に用いられる窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩や硝酸塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩、尿素及びアミノ酸類が挙げられる。培地に含まれる窒素源の量は、通常0.1〜30%(w/v)である。
液体培地に用いられる有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩が挙げられ、具体的には例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸一水素カリウム及びリン酸ニ水素カリウムが挙げられる。培地に含まれる無機塩や有機塩の量は、通常0.0001〜5%(w/v)である。
ビタミン類としては、チアミン等が挙げられる。
固体培地としては、例えば、米類、麦類等の主穀類、トウモロコシ、栗、稗、コーリャン、蕎麦等の雑穀類、オガ粉、バガス、籾殻、フスマ、莢、藁、コ−ンコブ、綿実粕、オカラ、寒天、ゼラチン等を挙げることができる。また、これらの2種以上を混合して使用することもでき、さらに、前記液体培地に使用される炭素源、窒素源、有機塩、無機塩、ビタミン等を適宜混合したものが挙げられる。
殺虫性糸状菌の培養に用いられる培地の具体的例としては、液体培地として、2%マルトエキス液体培地、オートミール液体培地、ポテトデキストロース液体培地、サブロー液体培地及びL−broth液体培地等が挙げられ、固体培地として、米、大麦、フスマ、寒天培地(2%マルトエキス寒天培地、オートミール寒天培地、ポテトデキストロース寒天培地、サブロー寒天培地及びL−broth寒天培地等)等が挙げられる。
当該菌の培養は、微生物の培養に通常使用される方法を用いて行うことができる。
即ち、液体培地を用いて培養する方法としては、例えば、試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター培養及びタンク培養が挙げられ、固体培地を用いて培養する方法としては、例えば、静置培養が挙げられ、必要に応じ切り返しを加えてもよい。
培養温度は、当該菌が生育可能な範囲で適宜変更することができるが、通常15℃〜35℃の範囲で有り、培地のpHは通常約5〜7の範囲である。培養時間は培養条件により異なるが、通常約1日間〜約2ヶ月間の範囲である。
当該菌は、当該菌を培養した培養液を遠心分離する方法、当該菌を培養した固体培地上に蒸留水等を加えて表面から菌体をかきとる方法や、固体培地を乾燥させ粉砕した後、篩により分画する方法等により得ることができる。
本発明油剤に含まれる殺虫性糸状菌の配合量は、施用した場合に必要な効力が得られるように調製する限り特に限定されないが、本発明油剤1gあたり当該菌を通常103〜1013 CFU(CFU:コロニー形成単位)含有させればよい。
本発明油剤において用いられる石油系炭化水素油とは、蒸留性状の50%留出温度が350℃以上550℃以下の範囲である石油系炭化水素油で有り、好ましくは蒸留性状の50%留出温度が400℃以上500℃以下の範囲である石油系炭化水素油である。また、より好ましい本石油系炭化水素油としては、石油系炭化水素油が、その成分配合量のうち50〜100重量%(例えば、n-d-M分析、20℃)がパラフィン炭化水素である石油系炭化水素油等を挙げることができる。特に好ましい本石油系炭化水素油としては、その成分配合量のうち60〜90重量%(例えば、n-d-M分析、20℃)がパラフィン炭化水素で有り、かつ、3重量%以下(例えば、n-d-M分析、20℃)が芳香族炭化水素である石油系炭化水素油等が挙げられる。
具体的には例えば、
(1)蒸留性状の50%留出温度が419℃付近である石油系炭化水素油であって、その成分配合量のうちパラフィン炭化水素含量80重量%(n-d-M分析、20℃)かつ芳香族炭化水素含量0重量%(n-d-M分析、20℃)のもの
(2)蒸留性状の50%留出温度が472℃付近である石油系炭化水素油であって、その成分配合量のうちパラフィン炭化水素含量74重量%(n-d-M分析、20℃)かつ芳香族炭化水素含量1.3重量%(n-d-M分析、20℃)のもの
等を挙げることができる。これらの石油系炭化水素油は、例えば、日米礦油株式会社等から一般市販品(例えば、農薬オイル、農薬マシン油P等)として購入することもできる。
因みに、蒸留性状の50%留出温度の分析方法及び石油系炭化水素油組成の分析方法は、下記の公定法により決定すればよい。
(1)蒸留性状の50%留出温度の分析方法:JIS K2254(37-44頁)、「石油製品−蒸留試験方法、ガスクロマトグラフ法蒸留試験方法」
(2)石油系炭化水素油組成の分析方法(n-d-M分析):ASTM D3238-95(1-3頁)、「Standard test method for calculation of carbon distribution and structural group analysis of petroleum oils by the n-d-M」
本発明油剤に含まれる本石油系炭化水素油の製剤中での配合量としては、例えば、本発明油剤の全重量に対して、通常、30〜99重量%程度、好ましくは50〜95重量%程度等を挙げることができる。
本発明油剤において用いられるノニオン性界面活性剤とは、前記の石油系炭化水素油の乳化に適するノニオン性界面活性剤である。勿論、当該界面活性剤は、本発明油剤に含有される殺虫性糸状菌及び散布対象植物等に対して悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、具体的には例えば、ジアルキルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、多価アルコールエステル、糖アルコール誘導体、シリコーン系界面活性剤等のノニオン性界面活性剤があげられる。具体的には例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしてはペグノール14−O(東邦化学工業株式会社製)、ペグノール24−O(東邦化学工業株式会社製)等が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてはペグノールO−4(東邦化学工業株式会社製)、ペグノールO−6A(東邦化学工業株式会社製)等があげられる。好ましくは、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。
前記の石油系炭化水素油の乳化に適するノニオン性界面活性剤の本発明により好ましく適したHLBとしては、組み合わせて用いられる石油系炭化水素油の種類や配合量によって決定されるが、一般的には例えば、7〜10の範囲を挙げることができる。
因みに、石油系炭化水素油が蒸留性状の50%留出温度が350℃以上550℃以下の範囲である石油系炭化水素油で有り、かつ、その成分配合量のうち50〜100重量%がパラフィン炭化水素である石油系炭化水素油との組み合わせで用いられるノニオン性界面活性剤が有する、乳化に適したHLBの好ましい範囲としては、7〜10、より好ましくは7〜8を挙げることができる。
本発明油剤に含まれる本ノニオン性界面活性剤の製剤中での配合量としては、例えば、本発明油剤の全重量に対して、通常、0.1〜50重量%程度、好ましくは1〜20重量%程度等を挙げることができる。
本発明油剤は、上記構成成分のほかに、さらに必要に応じて他構成成分若しくは残部として、本発明で用いられる殺虫性糸状菌の殺虫活性及び製剤特性を喪失させない範囲において、通常農薬に使用される副資材、例えば、固体担体、液体担体、液性調整剤(pH調整剤等)、拡展剤、展着剤、湿潤剤、安定化剤(防腐剤、乾燥剤、凍結防止剤、固結防止剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤)、ドリフト防止剤等を添加することができる。
これらの副資材を添加する場合、その添加量は合計で、本発明油剤の全重量に対して、通常0.1重量%以上50重量%以下、好ましくは0.5重量%以上20重量%以下である。
本発明油剤の製造方法には、通常の農薬製剤の製造方法を適用することができる。例えば、前述の方法により得られた殺虫性糸状菌の菌体と、石油系炭化水素油及びノニオン性界面活性剤とを、さらに必要に応じて他構成成分若しくは残部として副資材を混合することにより製造することができる。混合の際には、乳鉢・乳棒、薬さじ等を用いて混合することもできるし、例えば、リボンミキサー、ナウタミキサー等の混合機を用いて混合することもできる。
本発明油剤が殺虫性効力を有する害虫としては、例えば、以下の害虫が挙げられる。
半翅目害虫:ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)等のウンカ類、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、チャノミドリヒメヨコバイ(Empoasca onukii)等のヨコバイ類、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ニセダイコンアブラムシ(Lipaphis pserudobrassicae)等のアブラムシ類、カメムシ類、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)等のコナジラミ類、カイガラムシ類、グンバイムシ類、キジラミ類等。
双翅目害虫:アカイエカ(Culex pipiens pallens)等のイエカ類、ヤブカ類、ハマダラカ類、ユスリカ類、イエバエ(Musca domestica)等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、ハナバエ類、タマバエ類、ハモグリバエ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、アブ類、ブユ類、サシバエ類等。
鱗翅目害虫:ニカメイガ(Chilo suppressalis)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、ヨーロピアンコーンボーラー(Ostrinia nubilalis)、シバツトガ(Parapediasia teterrella)等のメイガ類、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、トリコプルシア属(Trichoplusia spp.)、ヘリオティス属(Heliothis spp.)、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)等のヘリコベルパ属(Helicoverpa spp.)、エ有りアス属(Earias spp.)、タマナギンウワバ(Autographa nigrisigna)等のオートグラファ属等のヤガ類、モンシロチョウ(Pieris rapae crucivora)等のシロチョウ類、コナガ(Plutella xylostella)等のスガ類、ドクガ(Euproctis taiwana)、マイマイガ(Lymantria dispar)、モンシロドクガ(Euproctis similis)等のドクガ類、ヒメクロイラガ(Scopelodes contracus)等のイラガ類、マツカレハ(Dendrolimus spectabilis)等のカレハガ類、リンゴコカクモンハマキ(Adoxophyesorana fasciata)、無しヒメシンクイ(Grapholitamolesta)、コドリングモス(Cydia pomonella)等のハマキガ類、モモシンクイガ(Carposina niponensis)等のシンクイガ類、モモハモグリガ(Lyonetia clerkella)等のチビガ類、キンモンホソガ(Phyllonorycter ringoniella)等のホソガ類、ミカンハモグリガ(Phyllocnistis citrella)等のコハモグリガ類、コナガ(Plutella xylostella)等のスガ類、ピンクボールワーム(Pectinophora gossypiella)等のキバガ類、ヒトリガ類、ヒロズコガ類等。
鞘翅目害虫:ハムシ類、コガネムシ類、ゾウムシ類、オトシブミ類、テントウムシ類、カミキリムシ類、ゴミムシダマシ類等。
アザミウマ目害虫:ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)等のスリップス属、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)等のフランクリニエラ属、チャノキイロアザミウマ(Sciltothrips dorsalis)等のシルトスリップス属等のアザミウマ類、クダアザミウマ類等。
網翅目害虫:ゴキブリ類、チャバネゴキブリ類等直翅目害虫:バッタ類、ケラ類等。
隠翅目害虫:ヒトノミ、ネコノミ等。
シラミ目害虫:ヒトジラミ等。
シロ有り目害虫:ヤマトシロ有り(Reticulitermes speratus)、イエシロ有り(Coptotermes formosanus)等。
本発明油剤は、通常、害虫、害虫の生息場所又は害虫から保護すべき植物等に施用することにより使用される。害虫から保護すべき植物に施用する場合には、通常、本発明油剤を水で希釈した後、当該希釈液を当該植物の茎葉等に
対して散布処理することにより使用することがよい。
本発明油剤を害虫、害虫の生息場所又は害虫から保護すべき植物等に施用する際には、その施用量は、通常1000m2当たり本発明油剤で用いられる殺虫性糸状菌株の菌体の量として、105〜1019CFU、好ましくは107〜1017CFUである。通常、前記菌体の量として、その濃度が103〜1012CFU/mlとなるように水で希釈して使用すればよい
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 (ペーシロマイセス属に属する殺虫性糸状菌の単離)
体が硬化し、体からキノコ状のものが生えている死亡虫を野外から採取する。当該死亡虫に形成されている分生子を白金耳で触れ、SDY培地に線を引くように擦りつける。25℃で培養し、数日後に生えてきた菌の独立したコロニーを切り取り、新しいSDY培地に移植し、さらに25℃で培養する。
得られた菌株のうち、以下のア)〜ク)に記載された性質をもつ菌株を、ペーシロマイセス属に属する糸状菌として選抜する。
ア)栄養菌糸が隔壁を持つ
イ)有性生殖が認められない。
ウ)分生子は分生子殻と呼ばれる壺上の器官の中に作られるのではなく、外生する。
エ)分生子はフィアライド頂端にフィアロ型に形成され、乾燥し連鎖状をなす。
オ)分生子柄は先端に小のうを持たない。
カ)フィアライドは分生子柄束上に柵状に配列されない。
キ)分生子の連鎖は束をなさない。
ク)フィアライドは頸部が明瞭、不規則あるいは緩く輪生である。
選抜されたペーシロマイセス属に属する糸状菌をSDY培地で25℃で培養し、形成された分生子を1×10CFU/mlとなるように滅菌水に懸濁し、分離源となった死亡虫と同種の昆虫10頭を懸濁液に30秒間浸漬する。浸漬した昆虫を25℃、湿度100%の条件下で飼育し、接種後6日後に死亡虫が観察されるものを、ペーシロマイセス属に属する殺虫性糸状菌として選抜する。
実施例2 (殺虫性糸状菌の調製)
500ml容フラスコに入れた100mlのポテトデキストロース培地(Difco Laboratories製)に予めポテトデキストロース寒天培地(Difco Laboratories製)で培養されたペーシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)T1菌株の菌体を接種し、25℃で3日間振とう培養することにより、培養液を得た。滅菌水160mlが添加された滅菌済みフスマ80gに、前記培養液20mlを接種し、25℃、湿度90%の条件下で、光(2000〜3000ルクス)を間欠照射(明条件:連続14時間/日、暗条件:連続10時間/日)しながら14日間培養した。培養後、菌体(分生子を多く含む)が形成されたフスマを乾燥させ、乾燥後のフスマ及び直径20mmの瑪瑙ボール5個を日本工業規格標準ふるい(JIS Z 8801:60メッシュのふるいを使用)に入れ、これを日本工業規格標準ふるい(JIS Z 8801:100、200メッシュのふるいを使用)と重ねて、自動ふるい振とう機(FRITSCH社)で10分間振とうすることにより、200メッシュ以下の画分に前記菌株の菌体粉末2.0gを得た。
実施例3 (本発明油剤の調製:その1)
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が419℃、成分配合量:パラフィン炭化水素80重量%、芳香族炭化水素0重量%)85.0重量%及びペグノール24−O(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れ、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、本発明油剤(1)を得た。
実施例4(本発明油剤の調製:その2)
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノール24−O(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れ、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、本発明油剤(2)を得た。
実施例5(本発明油剤の調製:その3)
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノールO−6A(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB9.6)5.0重量%を入れ、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、本発明油剤(3)を得た。
実施例6(本発明油剤の調製:その4)
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が419℃、成分配合量:パラフィン炭化水素80重量%、芳香族炭化水素0重量%)85.0重量%及びペグノールO−4(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れ、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、本発明油剤(4)を得た。
実施例7(本発明油剤の調製:その5)
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノールO−4(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れ、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、本発明油剤(5)を得た。
比較例1(比較油剤の調製:その1)
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(エクソンモービル化学有限会社製、蒸留性状の50%留出温度が289℃、パラフィン炭化水素52重量%、芳香族炭化水素0.6%、商品名エクソールD130)85.0重量%及びペグノール24−O(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(1)を得た。
比較例2(比較油剤の調製:その2)
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(エクソンモービル化学有限会社製、蒸留性状の50%留出温度が289℃、パラフィン炭化水素52重量%、芳香族炭化水素0.6%、商品名エクソールD130)85.0重量%及びペグノールO−4(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB7.9)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(2)を得た。
比較例3(比較製剤の調製:その3)
ガラス瓶に、大豆油(和光純薬工業株式会社製)85.0重量%及びペグノールS−4D(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB8.6)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(3)を得た。
比較例4(比較油剤の調製:その4)
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノールO−107(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB10.7)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(4)を得た。
比較例5(比較油剤の調製:その5)
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノール14−O(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルであるノニオン性界面活性剤、HLB11.5)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(5)を得た。
比較例6(比較油剤の調製:その6)
ガラス瓶に、石油系炭化水素油(日米礦油株式会社製、蒸留性状の50%留出温度が472℃、成分配合量:パラフィン炭化水素74重量%、芳香族炭化水素1.3重量%)85.0重量%及びペグノールHC−10(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるノニオン性界面活性剤、HLB6.4)5.0重量%を入れよく、これをよく混和した。当該混合物に実施例2で得られた菌体粉末10.0重量%を加え、さらに混和することにより、比較油剤(6)を得た。
試験例1(本発明油剤の殺虫試験)
トマト(ポンテローザ、タキイ種苗株式会社製)の種子をクレハ培土(呉羽化学株式会社製)を入れたプラスチックポットに植え、温室で第2葉期まで栽培した。生育したトマトにシルバーリーフコナジラミ成虫約100頭を放飼した。このようにして当該成虫に1日間産卵させた後のトマトから成虫を除去した後、これを25℃、湿度を制御しない条件下で光(2000〜3000ルクス)を間欠照射(明条件:連続14時間/日、暗条件:連続10時間/日)しながら8日間栽培した。8日間後、トマトの葉の幼虫数を計測した。
本発明油剤(1)〜(5)及び比較油剤(1)〜(3)をそれぞれ10mg計り取り、これを10mlの脱塩水に懸濁することにより散布液を調製した。得られた散布液を幼虫が寄生したトマトの植物体全体に1ポットあたり10ml散布した。散布後、当該植物体を25℃、湿度90%の条件下で光(2000〜3000ルクス)を間欠照射(明条件:連続14時間/日、暗条件:連続10時間/日)しながら6日間栽培した。ネガティブコントロールとして上記散布液の代わりに水を用いた同様な試験を並行して行った。6日間後にシルバーリーフコナジラミの生虫数を計測することにより、前記散布液の噴霧の前後の生虫数から下記の式より死虫率(5反復の平均値)を算出した。その結果を表1に示す。本発明油剤(1)〜(5)における死虫率は75〜78%であり、その相対向上率は129〜135%であった。
死虫率(%)=(散布前幼虫数−試験後生虫数/散布前幼虫数)×100
相対向上率(%)=(本発明油剤の死虫率−ネガティブコントロールの死虫率)×100/(比較油剤の平均死虫率−ネガティブコントロールの死虫率)
Figure 0004581410
試験例2(植物に対する薬害軽減試験)
トマト(瑞栄、タキイ種苗株式会社製)の種子をクレハ培土(呉羽化学株式会社製)にを入れたプラスチックポットに植え、25℃、湿度を制御しない条件下で光(2000〜3000ルクス)を間欠照射(明条件:連続14時間/日、暗条件:連続10時間/日)しながら22日間栽培した。22日間後、トマトの苗を直径12cmのプラスチックポットに鉢上げし、さらに8日間栽培して第6葉が展開したトマトの苗を得た。
本発明油剤(1)〜(5)及び比較油剤(1)〜(2)をそれぞれ80mg計り取り、これを40mlの脱塩水に懸濁することにより散布液を調製した。得られた散布液をトマトの植物体全体に3ポットあたり40ml散布した。散布後、当該植物体を温室で栽培した。温室の平均気温は22.3℃、平均湿度55.6%であった。散布7日後及び14日後に同様の操作により散布液を再度散布し、当該植物体を温室で栽培した。ネガティブコントロールとして上記散布液の代わりに水を用いた同様な試験を並行して行った。1回目の散布2日後、7日後、14日後、21日後及び28日後に植物体の葉及び茎を観察することにより、薬害の有無を評価した。その結果を表2に示す。
Figure 0004581410
試験例3(本発明油剤における殺虫性糸状菌の生存安定性)
本発明油剤2を20mg計り取り、これに20mlの滅菌希釈水を加えて懸濁した。この懸濁液を滅菌希釈水により適当な濃度に希釈して、得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、当該製剤中の殺虫性糸状菌の生菌数を求めた。一方、本発明油剤2をそれぞれねじ口の付いたガラス瓶に入れ密栓した後、25℃暗所で15日間保存した。保存された本発明油剤2を20mg計り取り、これに20mlの滅菌希釈水を加えて懸濁した。この懸濁液を滅菌希釈水により適当な濃度に希釈して得られた希釈液をポテトデキストロース寒天培地に100μl滴下し塗り広げ、25℃で2日間培養した。培養後、生育したコロニー数を計測することにより、保存後の当該製剤中の殺虫性糸状菌の生菌数を求めた。このようにして求めた保存の前後における当該製剤中の殺虫性糸状菌の生菌数の比を保存14日後の殺虫性糸状菌の生存率として算出した。滅菌希釈水としては0.85%(w/v)塩化ナトリウム水溶液にKF−630(信越化学工業社製、界面活性剤)及びSilwet L−77(日本ユニカ製、界面活性剤)をそれぞれ0.1%(w/v)濃度で添加し、滅菌したものを使用した。
保存14日後の本発明油剤2中の殺虫性糸状菌の生存率を表3に示す。
Figure 0004581410
試験例4(本発明油剤の乳化試験)
250mL共栓付シリンダーに硬度3度水を230ml入れた。共栓をした後、当該シリンダーを20℃恒温水槽中で30分以上静置した。これに本発明油剤(1)〜(5)及び比較油剤(4)〜(6)をそれぞれ250mg滴下し、さらに20℃の硬度3度水により250mLにメスアップした。共栓をした後、当該シリンダーを20秒間に10回転倒し、再び20℃恒温水槽中に静置した。15分間後、30分間後に当該シリンダーを恒温水槽より取り出し、乳化状態を観察した。その結果を表4に示す。
Figure 0004581410
本発明によれば、殺虫性糸状菌の生存安定性を維持したままで、製剤の植物に対する薬害軽減性や殺虫効果を向上させた殺虫性油剤等を提供することができる。

Claims (11)

  1. 蒸留性状の50%留出温度が350℃以上550℃以下の範囲である石油系炭化水素油、当該石油系炭化水素油の乳化に適するノニオン性界面活性剤及び殺虫性糸状菌を含有することを特徴とする殺虫性油剤。
  2. 石油系炭化水素油が蒸留性状の50%留出温度が400℃以上500℃以下の範囲である石油系炭化水素油であり、かつ、ノニオン性界面活性剤がポリオキシエチレン脂肪酸エステル若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテルであることを特徴とする請求項1記載の殺虫性油剤。
  3. 石油系炭化水素油が、その成分配合量のうち50〜100重量%がパラフィン炭化水素である石油系炭化水素油であることを特徴とする請求項1又は2記載の殺虫性油剤。
  4. 石油系炭化水素油が、その成分配合量のうち60〜90重量%がパラフィン炭化水素であり、かつ、3重量%以下が芳香族炭化水素である石油系炭化水素油であることを特徴とする請求項1又は2記載の殺虫性油剤。
  5. ノニオン性界面活性剤が、石油系炭化水素油の成分配合量のうち50〜100重量%がパラフィン炭化水素である石油系炭化水素油の乳化に適する範囲であるHLBを有するノニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項3記載の殺虫性油剤。
  6. 殺虫性糸状菌が、ペーシロマイセス属、ボーベリア属、メタリジウム属、ノムラエア属、バーティシリウム属、ヒルステラ属、クリシノミセス属、ソロスポレラ属及びトリポクラディウム属からなる群から選択されるいずれかの一つ以上の属から構成される一種以上の糸状菌であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの請求項記載の殺虫性油剤。
  7. 殺虫性糸状菌が、ペーシロマイセス属の糸状菌であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの請求項記載の殺虫性油剤。
  8. 殺虫性糸状菌がペーシロマイセス・テヌイペスに属する糸状菌であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの請求項記載の殺虫性油剤。
  9. 殺虫性糸状菌がペーシロマイセス・テヌイペス T1株(FERM BP−7861)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの請求項記載の殺虫性油剤。
  10. 請求項1〜9のいずれかの請求項記載の殺虫性油剤を、害虫、害虫の生育場所又は害虫から保護するべき植物に施用することを特徴とする殺虫方法。
  11. 蒸留性状の50%留出温度が350℃以上550℃以下の範囲である石油系炭化水素油、当該石油系炭化水素油の乳化に適するノニオン性界面活性剤及び殺虫性糸状菌を混合する工程を有することを特徴とする殺虫性油剤の製造方法。
JP2004012921A 2004-01-21 2004-01-21 殺虫性油剤 Expired - Fee Related JP4581410B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004012921A JP4581410B2 (ja) 2004-01-21 2004-01-21 殺虫性油剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004012921A JP4581410B2 (ja) 2004-01-21 2004-01-21 殺虫性油剤

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2005206486A JP2005206486A (ja) 2005-08-04
JP2005206486A5 JP2005206486A5 (ja) 2007-02-01
JP4581410B2 true JP4581410B2 (ja) 2010-11-17

Family

ID=34899153

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004012921A Expired - Fee Related JP4581410B2 (ja) 2004-01-21 2004-01-21 殺虫性油剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4581410B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20190101901A (ko) 2018-02-23 2019-09-02 주식회사 엘지화학 온도 안정성을 갖는 해충 방제용 조성물 및 이를 이용한 해충 방제 방법

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4692023B2 (ja) * 2005-02-28 2011-06-01 住友化学株式会社 有害生物防除方法
JP2006265226A (ja) * 2005-02-28 2006-10-05 Sumitomo Chemical Co Ltd 殺虫性糸状菌を含有する殺虫性油系製剤
JP5200425B2 (ja) * 2006-06-23 2013-06-05 住友化学株式会社 農薬活性微生物製剤
JP5416911B2 (ja) * 2007-03-20 2014-02-12 住友化学株式会社 微生物含有製剤の施用方法
EP2266394A1 (en) * 2009-06-17 2010-12-29 Cognis IP Management GmbH Non-aqueous agricultural compositions
WO2011117891A2 (en) 2010-03-25 2011-09-29 Indian Oil Corporation Ltd. Carrier oil composition for spray of fungicides on rubber plantation and other crops
MX350520B (es) 2011-05-27 2017-09-08 Bayer Cropscience Biologics Gmbh Preparación líquida para protección biológica de plantas, procedimiento para su producción y uso de la misma.
CN107410367B (zh) * 2017-09-01 2020-04-17 江西省科学院微生物研究所 一种玫烟色拟青霉油剂及其制备方法和一种杀虫剂

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS55154910A (en) * 1979-05-23 1980-12-02 Idemitsu Kosan Co Ltd Machine oil emulsion for controlling damage of vegetable and flowing plant by blight and insect
JPS63307808A (ja) * 1987-06-09 1988-12-15 Idemitsu Kosan Co Ltd 病虫害防除用マシン油乳剤用基油
JPH09506592A (ja) * 1993-10-12 1997-06-30 マイコテク・コーポレーシヨン 生物学的殺虫剤として使用するための昆虫病原性真菌類の組成物
JP2003095834A (ja) * 2001-09-26 2003-04-03 Sumitomo Chem Co Ltd 広宿主範囲を持つ昆虫病原性糸状菌

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS55154910A (en) * 1979-05-23 1980-12-02 Idemitsu Kosan Co Ltd Machine oil emulsion for controlling damage of vegetable and flowing plant by blight and insect
JPS63307808A (ja) * 1987-06-09 1988-12-15 Idemitsu Kosan Co Ltd 病虫害防除用マシン油乳剤用基油
JPH09506592A (ja) * 1993-10-12 1997-06-30 マイコテク・コーポレーシヨン 生物学的殺虫剤として使用するための昆虫病原性真菌類の組成物
JP2003095834A (ja) * 2001-09-26 2003-04-03 Sumitomo Chem Co Ltd 広宿主範囲を持つ昆虫病原性糸状菌

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20190101901A (ko) 2018-02-23 2019-09-02 주식회사 엘지화학 온도 안정성을 갖는 해충 방제용 조성물 및 이를 이용한 해충 방제 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005206486A (ja) 2005-08-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2017254880B2 (en) Fungal endophytes for improved crop yields and protection from pests
Jackson et al. Ecological considerations in producing and formulating fungal entomopathogens for use in insect biocontrol
JP2006265226A (ja) 殺虫性糸状菌を含有する殺虫性油系製剤
Prabhukarthikeyan et al. Combination of endophytic Bacillus and Beauveria for the management of Fusarium wilt and fruit borer in tomato
WO2006121350A1 (en) Entomopathogenic fungi and uses thereof
JP5200425B2 (ja) 農薬活性微生物製剤
Kim et al. Correlation of the aphicidal activity of Beauveria bassiana SFB-205 supernatant with enzymes
JP4581410B2 (ja) 殺虫性油剤
JP4792685B2 (ja) 広宿主範囲を持つ昆虫病原性糸状菌
Mantzoukas et al. Entomopathogenic fungi tested in planta on pepper and in field on sorghum, to control commercially important species of aphids
TWI444141B (zh) (LECANICILLIUM MUSCARIUM) V-5 strain, a pest control method using the same, and a microorganism pesticide containing the same
KR100914451B1 (ko) 곤충병원성 레카니실리움 어테뉴에이튬 cnu-23, 및 이를이용한 복숭아혹진딧물 방제제 및 방제방법
Zulfiana et al. Production of Conidia by Entomopathogenic Fungi and Their Pathogenicity Against Coptotermes sp.
JP4692023B2 (ja) 有害生物防除方法
US20140079670A1 (en) Uses, Methods and Biological Compositions of the Genus Paecilomyces in the Control, Prevention and Eradication of Plant Parasites in Solanaceae Cultures
JP4501426B2 (ja) 殺虫性糸状菌製剤
JPH06247822A (ja) 生菌含有製剤及びその製造方法
KR102207732B1 (ko) 메타리지움 아니소플리애 ft319 균주 또는 이를 함유하는 배추좀나방 유충 방제용 미생물제제
Ranjan et al. Beauveria bassiana as a potent biopesticide for control of locust: A review
JP4448731B2 (ja) 新規微生物及びその利用
US20210274790A1 (en) Methods of multi-species insect pest control
KR102145620B1 (ko) 이사리아 푸모소로세아 ft337 균주 또는 이를 함유하는 배추좀나방 유충 방제용 미생물제제
Ghising CHARACTERIZATION OF METARHIZIUM ANISOPLIAE ISOLATED FROM ORGANIC FARMS AND ITS EFFICACY AGAINST THE INSECT PESTS UNDER LABORATORY CONTROLLED CONDITION
JANET COLLEGE OF NATURAL SCIENCES DEPARTMENT OF ZOOLOGY, ENTOMOLOGY AND FISHERIES SCIENCES
Desai et al. Harnessing Entomopathogenic Fungi for Enhanced Farm Productivity and Profitability

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20061208

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061208

RD05 Notification of revocation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425

Effective date: 20080130

RD05 Notification of revocation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425

Effective date: 20080513

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100225

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100309

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100629

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100630

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20100630

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100803

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100816

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4581410

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130910

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees