JP2003055335A - 4−フタロニトリル誘導体の製造方法および4−フタロニトリル誘導体 - Google Patents

4−フタロニトリル誘導体の製造方法および4−フタロニトリル誘導体

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JP2003055335A JP2001248227A JP2001248227A JP2003055335A JP 2003055335 A JP2003055335 A JP 2003055335A JP 2001248227 A JP2001248227 A JP 2001248227A JP 2001248227 A JP2001248227 A JP 2001248227A JP 2003055335 A JP2003055335 A JP 2003055335A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】4−フタロニトリル誘導体を、容易かつ高い収
率で得ること(合成すること)ができる製造方法、およ
び、この製造方法により製造された4−フタロニトリル
誘導体を提供すること。 【解決手段】本発明の4−フタロニトリル誘導体の製造
方法は、下記化21に示すように、式(I)の4−フタ
ロニトリル誘導体から、式(II)、式(IV)あるいは式
(VI)の4−フタロニトリル誘導体を得るものである。
経路によれば、酸またはアルカリの存在下で、加水分
解することにより式(II)を、経路によれば、式(II
I)のアルカリと反応させることにより式(IV)を、経
路によれば、式(V)のアルカリと反応させることに
より式(VI)を、それぞれ得ることができる。 【化21】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、4−フタロニトリ
ル誘導体の製造方法および4−フタロニトリル誘導体に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、プリンター用インク材料や、光情
報記録媒体における記録材料等としてフタロシアニン化
合物が、広く用いられている。
【0003】このフタロシアニン化合物は、通常、フタ
ロニトリル誘導体、無水フタル酸誘導体や1,3−ジイ
ミノイソインドリン誘導体等を用いて、その合成(製
造)が行なわれている。
【0004】そして、フタロシアニン化合物において
は、例えば、近赤外線吸収能、各種有機溶媒への溶解
性、耐候性等の特性を向上させる観点から、フタロシア
ニン骨格のベンゼン環に対して置換基を導入することが
行なわれている。この場合、フタロニトリルや無水フタ
ル酸のベンゼン環に対して置換基を導入しておき、かか
るフタロニトリル誘導体や無水フタル酸誘導体を用い
て、対応するフタロシアニン化合物が合成されている。
【0005】このようなフタロニトリル誘導体や無水フ
タル酸誘導体を合成する場合には、例えば、フタロニト
リルのニトロ化体を出発物質として使用し、アミノ基の
ジアゾ化反応等を経由して置換基を導入する方法や、無
水フタル酸を濃硫酸によりスルホン化体とし、かかる無
水フタル酸のスルホン化体を経由する方法等が用いられ
ている。
【0006】しかしながら、フタロニトリルのニトロ化
体を出発物質(合成中間体)とする製造方法では、製造
工程数が多く、目的とする置換基を位置選択的に導入す
ることが容易ではなく、収率も低い。また、無水フタル
酸のスルホン化体を経由する製造方法では、濃硫酸によ
るスルホン化の工程において、位置選択的にスルホン基
を導入することができず、すなわち、異性体が混在して
しまい、純度が低くなる。したがって、最終的に得られ
るフタロシアニン化合物も、収率が低かったり、異性体
の混合物となってしまったりする。
【0007】フタロシアニン化合物において、異性体が
混在した場合、分子同士の積層が効率よくなされず、特
に、近赤外線吸収能の向上を図ることができないという
問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、フタロシ
アニン化合物の前記特性(特に、近赤外線吸収能)を向
上させるためには、フタロシアニン骨格の対称的な位置
に置換基を導入するのが有効であると考え、種々の検討
を重ねた結果、特に、4−フタロニトリル誘導体から得
られたフタロシアニン化合物が、近赤外線吸収能、各種
有機溶媒への溶解性および耐候性に優れることを見い出
した。
【0009】しかしながら、前述したように、従来の製
造方法では、4−フタロニトリル誘導体、すなわち、位
置選択的に置換基を有するフタロニトリル誘導体を、合
成(製造)することが極めて困難である。
【0010】本発明の目的は、4−フタロニトリル誘導
体を、容易かつ高い収率で得ること(合成すること)が
できる製造方法、および、この製造方法により製造され
た4−フタロニトリル誘導体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(23)の本発明により達成される。
【0012】(1) 下記式(I)
【化11】 [式(I)中、Xは、ハロゲン原子を表す。]で示され
る4−フタロニトリル誘導体を、酸またはアルカリの存
在下で、加水分解することにより、下記式(II)
【化12】 で示される4−フタロニトリル誘導体を得ることを特徴
とする4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
【0013】(2) 前記式(I)で示される4−フタ
ロニトリル誘導体の加水分解反応における温度は、−5
〜70℃である上記(1)に記載の4−フタロニトリル
誘導体の製造方法。
【0014】(3) 前記式(I)で示される4−フタ
ロニトリル誘導体の加水分解反応における時間は、20
分〜5時間である上記(1)または(2)に記載の4−
フタロニトリル誘導体の製造方法。
【0015】(4) 下記式(I)
【化13】 [式(I)中、Xは、ハロゲン原子を表す。]で示され
る4−フタロニトリル誘導体と、下記式(III)で示さ
れるアルカリとを反応させ、下記式(IV)で示される4
−フタロニトリル誘導体を得ることを特徴とする4−フ
タロニトリル誘導体の製造方法。
【化14】
【化15】 [式(III)、式(IV)中、Qは、アルカリ金属原子、
アルカリ土類金属原子または第4アンモニウムを表し、
nは、Qの価数を表す。]
【0016】(5) 前記式(I)で示される4−フタ
ロニトリル誘導体と、前記式(III)で示されるアルカ
リとの反応温度は、−5〜70℃である上記(4)に記
載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
【0017】(6) 前記式(I)で示される4−フタ
ロニトリル誘導体と、前記式(III)で示されるアルカ
リとの反応時間は、0.5〜7時間である上記(4)ま
たは(5)に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方
法。
【0018】(7) 前記式(I)で示される4−フタ
ロニトリル誘導体と、前記式(III)で示されるアルカ
リとの反応は、水の存在下で行なわれる上記(4)ない
し(6)のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体
の製造方法。
【0019】(8) 下記式(I)
【化16】 [式(I)中、Xは、ハロゲン原子を表す。]で示され
る4−フタロニトリル誘導体と、下記式(V)で示され
るアルカリとを反応させ、下記式(VI)で示される4−
フタロニトリル誘導体を得ることを特徴とする4−フタ
ロニトリル誘導体の製造方法。
【化17】
【化18】 [式(V)、式(VI)中、LおよびLは、それぞれ
独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を
表す。]
【0020】(9) 前記式(I)で示される4−フタ
ロニトリル誘導体と、前記式(V)で示されるアルカリ
との反応温度は、−5〜70℃である上記(8)に記載
の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
【0021】(10) 前記式(I)で示される4−フ
タロニトリル誘導体と、前記式(V)で示されるアルカ
リとの反応時間は、1〜24時間である上記(8)また
は(9)に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方
法。
【0022】(11) 前記ハロゲン原子は、塩素原子
である上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の4
−フタロニトリル誘導体の製造方法。
【0023】(12) 前記式(I)で示される4−フ
タロニトリル誘導体は、酸水溶液中または酸を含む含水
有機溶媒中で、下記式(VII)
【化19】 [式(VII)中、Rは、水素原子または炭素数1〜4の
アルキル基を表す。]で示される4−フタロニトリル誘
導体と、ハロゲン分子とを接触させることにより反応さ
せ、これにより得られたものである上記(1)ないし
(11)のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体
の製造方法。
【0024】(13) 前記ハロゲン分子を前記酸水溶
液中または前記酸を含む含水有機溶媒中に添加しつつ、
前記式(VII)で示される4−フタロニトリル誘導体と
接触させる上記(12)に記載の4−フタロニトリル誘
導体の製造方法。
【0025】(14) 前記酸は、酢酸、プロピオン酸
のうちの少なくとも1種である上記(12)または(1
3)に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
【0026】(15) 前記酸を含む含水有機溶媒に用
いられる有機溶媒は、メタノール、エタノール、クロロ
ホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジオキサンのうち
の少なくとも1種である上記(12)ないし(14)の
いずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方
法。
【0027】(16) 前記式(VII)で示される4−
フタロニトリル誘導体は、アルカリ存在下で、4−ブロ
モフタロニトリルと、下記式(VIII)で示されるベンジ
ルメルカプタン誘導体とを反応させることにより得られ
たものである上記(12)ないし(15)のいずれかに
記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
【化20】 [式(VIII)中、Rは、前記式(VII)と同様の置換基
を表す。]
【0028】(17) 前記ベンジルメルカプタン誘導
体は、置換基Rをベンゼン環の4位の位置に有する上記
(16)に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方
法。
【0029】(18) 前記アルカリは、炭酸カリウ
ム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウム、ピリジン、
1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセ
ン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネ
ンのうちの少なくとも1種である上記(16)または
(17)に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方
法。
【0030】(19) 前記4−ブロモフタロニトリル
は、4−ブロモ無水フタル酸から得られたものである上
記(16)ないし(18)のいずれかに記載の4−フタ
ロニトリル誘導体の製造方法。
【0031】(20) 前記4−ブロモフタロニトリル
は、4−ブロモ無水フタル酸とアミド化合物とを反応さ
せ、4−ブロモフタルイミドを得、次いで、前記4−ブ
ロモフタルイミドとアンモニアとを反応させ、4−ブロ
モフタルアミドを得、その後、前記4−ブロモフタルア
ミドを脱水剤で処理することにより得られたものである
上記(16)ないし(19)のいずれかに記載の4−フ
タロニトリル誘導体の製造方法。
【0032】(21) 前記アミド化合物は、ホルムア
ミドである上記(20)に記載の4−フタロニトリル誘
導体の製造方法。
【0033】(22) 前記脱水剤は、塩化チオニル、
五酸化リン、オキシ塩化リン、ポリリン酸エステル、ト
リフェニルホスフィン、ホスゲンのうちの少なくとも1
種である上記(20)または(21)に記載の4−フタ
ロニトリル誘導体の製造方法。
【0034】(23) 上記(1)ないし(22)のい
ずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法に
より製造されたことを特徴とする4−フタロニトリル誘
導体。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の4−フタロニトリ
ル誘導体の製造方法および4−フタロニトリル誘導体の
好適な実施形態について詳細に説明する。
【0036】式(II)、式(IV)および式(VI)の4−
フタロニトリル誘導体は、それぞれ、例えば、下記化2
1に示すような各経路〜により、式(I)の4−フ
タロニトリル誘導体、すなわち、4−ハロゲン化スルホ
ニルフタロニトリルから合成(製造)される。
【0037】
【化21】
【0038】[0] まず、4−ハロゲン化スルホニル
フタロニトリル(式(I)の4−フタロニトリル誘導
体)を用意する。
【0039】ここで、4−ハロゲン化スルホニルフタロ
ニトリルの製造方法の一例について説明する。
【0040】この4−ハロゲン化スルホニルフタロニト
リルは、例えば、下記化22に示すように、式(IX)の
4−ブロモフタロニトリルから、式(VII)の4−フタ
ロニトリル誘導体を経由して製造することができる。
【0041】
【化22】
【0042】[0−1] まず、アルカリ存在下で、式
(IX)の4−ブロモフタロニトリルと、式(VIII)のベ
ンジルメルカプタン誘導体とを反応させることにより、
式(VII)の4−フタロニトリル誘導体を得る。
【0043】式(VII)の4−フタロニトリル誘導体の
合成に際し、その出発物質としては、4−ブロモフタロ
ニトリルの他に、例えば、4−フルオロフタロニトリ
ル、4−クロロフタロニトリル、4−ヨードフタロニト
リル等の4−ハロゲン化フタロニトリルを用いることが
できる。
【0044】4−ブロモフタロニトリルは、4−ハロゲ
ン化フタロニトリルの中でも、極めて反応性の高いフル
オロ基やクロル基を導入したもの、あるいは、極めて反
応性の低いヨード基を導入したものに比べて、合成反応
を制御しやすいものである。
【0045】このため、出発物質として、4−ブロモフ
タロニトリルを用いることにより、式(VII)および式
(I)の4−フタロニトリル誘導体の合成(フタロニト
リル誘導体への誘導)、延いては、式(II)、式(IV)
あるいは式(VI)の4−フタロニトリル誘導体の合成
を、より容易かつより高い収率で行なうことができる。
【0046】なお、4−ブロモフタロニトリルの合成
(製造)方法については、式(II)、式(IV)および式
(VI)の4−フタロニトリル誘導体の製造方法の説明を
終えた後に詳述する。
【0047】前記式(VIII)で示されるベンジルメルカ
プタン誘導体において、置換基Rは、水素原子または炭
素数1〜4のアルキル基を表す。
【0048】なお、炭素数3、4のアルキル基として
は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。
【0049】また、置換基Rがアルキル基の場合、置換
基Rは、ベンゼン環の2〜6位のいずれに導入されてい
てもよいが、特に、4位に導入されているのが好まし
い。すなわち、この場合、式(VIII)のベンジルメルカ
プタン誘導体としては、4−ベンジルメルカプタン誘導
体を用いるのが好ましい。
【0050】このようなRが水素原子であるベンジルメ
ルカプタンや4−ベンジルメルカプタン誘導体を用いる
ことにより、得られる式(VII)の4−フタロニトリル
誘導体と、後述するハロゲン分子との反応性をより向上
させることができる。
【0051】本工程[0−1]において、アルカリは、
反応を促進させるために添加されるものであり、例え
ば、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウ
ム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナト
リウム、水酸化カルシウム、水素化ナトリウム、水素化
リチウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムリチ
ウムのような無機塩基、トリエチルアミン、トリプロピ
ルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピペリジン、
ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、
ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノオクタ
ン、トリエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ
[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−
ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)
のような有機塩基等が挙げられ、これらの中でも、特
に、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウ
ム、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]
−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,
0]−5−ノネンを用いるのが好ましい。また、これら
のアルカリは、1種または2種以上を組み合わせて用い
ることができる。
【0052】アルカリの使用量としては、特に限定され
ないが、ベンジルメルカプタン誘導体1モルに対して、
例えば、1〜10モル程度とするのが好ましく、1〜5
モル程度とするのがより好ましい。このようなアルカリ
の使用量範囲において、4−ブロモフタロニトリルとベ
ンジルメルカプタン誘導体とを、より効率よく反応させ
ることができる。
【0053】なお、アルカリとして、有機塩基を使用す
る場合には、前記範囲を超えた過剰量を用いて、アルカ
リ自体に反応溶媒を兼ねさせることもできる。
【0054】また、反応溶媒としては、前記有機塩基を
用いることができる他、例えば、塩化メチレン、クロロ
ホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テ
トラクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、n−
ヘキサン、石油エーテル、トルエン、ベンゼン、キシレ
ンのような炭化水素類、アセトン、メチルエチルケト
ン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エ
チル、酢酸メチルのようなエステル類、ジエチルエーテ
ル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジ
オキサンのようなエーテル類、アセトニトリル、プロピ
オニトリルのようなニトリル類、ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリア
ミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシ
エタン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2
−イミダゾリジノン等の各種有機溶媒が挙げられ、これ
らのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるこ
とができる。
【0055】反応温度としては、特に限定されないが、
例えば、30〜120℃程度とするのが好ましく、60
〜90℃程度とするのがより好ましい。このような温度
範囲において、式(VII)の4−フタロニトリル誘導体
の収量を増大させることができる。
【0056】また、反応時間も、アルカリの使用量、反
応温度等により若干異なるが、通常、0.5〜8時間程
度とするのが好ましく、1〜5時間程度とするのがより
好ましい。このような時間範囲において、式(VII)の
4−フタロニトリル誘導体の収量を増大させることがで
きる。
【0057】[0−2] 次に、酸水溶液中または酸を
含む含水有機溶媒中で、式(VII)の4−フタロニトリ
ル誘導体と、ハロゲン分子とを接触させることにより反
応させ、これにより、4−ハロゲン化スルホニルフタロ
ニトリル(式(I)の4−フタロニトリル誘導体)を得
る。
【0058】ハロゲン分子は、例えば、塩素分子、フッ
素分子、臭素分子、ヨウ素分子等を単独で、あるいは、
これらの少なくとも1種を含む混合物として用いること
ができる。
【0059】特に、ハロゲン分子としては、塩素分子を
用いるのが好ましい。塩素分子は、常温で気体(ガス
状)であり、反応性が高く、かつ、比較的安価である。
【0060】塩素ガスを用いて得られる式(I)中、X
が塩素原子である4−クロロスルホニルフタロニトリル
は、4−ハロゲン化スルホニルフタロニトリルの中で
も、特に優れた反応性を有している。このため、4−ク
ロロスルホニルフタロニトリルを用いることにより、後
述する工程[1]において、式(II)、式(IV)あるい
は式(VI)の4−フタロニトリル誘導体を、より容易か
つより高い収率で得ることができる。
【0061】また、ハロゲン分子は、前記酸水溶液中ま
たは前記酸を含む含水有機溶媒中に導入(添加)しつ
つ、式(VII)の4−フタロニトリル誘導体に接触させ
るようにするのが好ましい。これにより、4−ハロゲン
化スルホニルフタロニトリルの収量を増大させることが
できる。
【0062】ハロゲン分子の使用量としては、式(VI
I)の4−フタロニトリル誘導体やハロゲン分子の種類
等により適宜設定されるものであり、特に限定されない
が、式(VII)の4−フタロニトリル誘導体1モルに対
して、通常、1〜50モル程度とするのが好ましく、2
〜20モル程度とするのがより好ましい。このようなハ
ロゲン分子の使用量範囲において、式(VII)の4−フ
タロニトリル誘導体から4−ハロゲン化スルホニルフタ
ロニトリルへの変換を、より効率よく行なうことができ
る。
【0063】酸水溶液または酸を含む含水有機溶媒に用
いる酸としては、例えば、酢酸、硝酸、プロピオン酸の
他、前記ハロゲン分子の種類に対応したハロゲン化水素
等が挙げられ、これらの中でも、特に、酢酸、プロピオ
ン酸のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。こ
れらの酸を用いることにより、式(VII)の4−フタロ
ニトリル誘導体やハロゲン分子の酸水溶液中または酸を
含む含水有機溶媒中への溶解度を向上させることがで
き、その結果、4−ハロゲン化スルホニルフタロニトリ
ルの収量を増大させることができる。
【0064】この酸と水または含水有機溶媒との混合比
としては、容積比(容量比)で、例えば、1:1〜1
0:1程度とするのが好ましく、3:1〜7:1程度と
するのがより好ましい。これらの配合比を前記範囲とす
ることにより、式(I)の4−フタロニトリル誘導体や
ハロゲン分子の酸水溶液中または酸を含む含水有機溶媒
中への溶解度をより向上させることができる。
【0065】このような酸水溶液または酸を含む含水有
機溶媒に用いられる水としては、例えば、蒸留水、イオ
ン交換水、超純水、RO水等が挙げられるが、この中で
も、蒸留水またはイオン交換水が好適に使用される。
【0066】また、含水有機溶媒に用いられる有機溶媒
としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノ
ールのようなアルコール類、クロロホルム、塩化メチレ
ン、四塩化炭素のようなハロゲン化水素類、ジエチルエ
ーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサンのようなエーテル類等が挙げられ、これ
らの中でも、特に、メタノール、エタノール、クロロホ
ルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジオキサンの1種ま
たは2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0067】本工程[0−2]では、前記水を、式(VI
I)の4−フタロニトリル誘導体1モルに対して、例え
ば、2モル以上程度となるように使用するのが好まし
く、3〜25モル程度となるように使用するのがより好
ましい。水の使用量が少なすぎると、未反応の式(VI
I)の4−フタロニトリル誘導体が多く残存する場合が
ある。一方、水の使用量を、前記上限値を超えて多くし
ても、使用する酸水溶液または酸を含む含水有機溶媒の
全体量が増大するだけで、それ以上、4−ハロゲン化ス
ルホニルフタロニトリルの収量の増大は見込めない。
【0068】反応温度としては、ハロゲン分子の種類等
により適宜設定され、特に限定されないが、例えば、−
10〜60℃程度とするのが好ましく、0〜40℃程度
とするのがより好ましい。このような温度範囲におい
て、4−ハロゲン化スルホニルフタロニトリルの収量を
増大させることができる。
【0069】また、反応時間(ハロゲン分子の前記酸水
溶液中または前記酸を含む含水有機溶媒中への導入時
間)も、ハロゲン分子の使用量、反応温度等により若干
異なるが、通常、20分〜5時間程度とするのが好まし
く、0.5〜3時間程度とするのがより好ましい。この
ような時間範囲において、4−ハロゲン化スルホニルフ
タロニトリルの収量を増大させることができる。
【0070】[1] 次に、4−ハロゲン化スルホニル
フタロニトリルから、各経路〜により、式(II)、
式(IV)および式(VI)の4−フタロニトリル誘導体
を、それぞれ得る。
【0071】4−ハロゲン化スルホニルフタロニトリル
(式(I)の4−フタロニトリル誘導体)において、ハ
ロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原
子、ヨウ素原子等のいずれでもよいが、特に塩素原子で
あるのが好ましい。これにより、前述したように、本工
程[1]において、式(II)、式(IV)あるいは式(V
I)の4−フタロニトリル誘導体の収量を増大させるこ
とができる。
【0072】以下、各経路〜ごとに、それぞれ説明
する。 [経路]経路では、4−ハロゲン化スルホニルフタ
ロニトリル(式(I)の4−フタロニトリル誘導体)
を、酸またはアルカリの存在下で、加水分解することに
より、式(II)の4−フタロニトリル誘導体を得る。
【0073】本経路の反応において、酸またはアルカ
リは、触媒として使用されるものであり、その使用量と
しては、特に限定されないが、4−ハロゲン化スルホニ
ルフタロニトリル1モルに対して、通常、0.001〜
0.2モル程度とするのが好ましく、0.005〜0.
1モル程度とするのがより好ましい。このような酸また
はアルカリの使用量範囲において、4−ハロゲン化スル
ホニルフタロニトリルの加水分解をより効率よく行なう
ことができる。
【0074】また、酸としては、例えば、塩酸、硫酸、
硝酸、塩素酸、臭素酸等が挙げられ、これらのうちの、
1種または2種以上を組み合わせて用いることができ
る。
【0075】一方、アルカリとしては、例えば、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸
化マグネシウム等が挙げられ、これらのうちの、1種ま
たは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】反応溶媒としては、例えば、蒸留水、イオ
ン交換水、超純水、RO水等の各種水、あるいは、この
ような水を含む有機溶媒を用いることができる。
【0077】また、水を含む有機溶媒に用いられる有機
溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロ
パノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエ
ーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロ
ロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、四塩
化炭素等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用
いることができる。
【0078】さらに、本経路では、反応溶媒中に、硫
酸水素テトラブチルアンモニウム、塩化メチルトリアル
キルアンモニウム、および、塩化テトラブチルホスホニ
ウムのような相関移動触媒を添加して反応を行うことも
できる。
【0079】また、水の使用量としては、特に限定され
ないが、4−ハロゲン化スルホニルフタロニトリル1モ
ルに対して、通常、1〜10モル程度とするのが好まし
く、2〜5モル程度とするのがより好ましい。水の使用
量が少なすぎると、未反応の4−ハロゲン化スルホニル
フタロニトリルが多く残存する場合がある。一方、水の
使用量を、前記上限値を超えて多くしても、それ以上、
式(II)の4−フタロニトリル誘導体の収量の増大が見
込めない。
【0080】なお、反応溶媒として水を用いる場合に
は、前記範囲を超えた過剰量を用いるようにすればよ
い。
【0081】加水分解反応における温度(反応温度)と
しては、酸またはアルカリの種類等により適宜設定さ
れ、特に限定されないが、例えば、−5〜70℃程度と
するのが好ましく、5〜30℃程度とするのがより好ま
しい。このような温度範囲において、式(II)の4−フ
タロニトリル誘導体の収量を増大させることができる。
【0082】また、加水分解反応における時間(反応時
間)も、酸またはアルカリの使用量、反応温度等により
若干異なるが、通常、20分〜5時間程度とするのが好
ましく、0.5〜3時間程度とするのがより好ましい。
このような時間範囲において、式(II)の4−フタロニ
トリル誘導体の収量を増大させることができる。
【0083】なお、このような加水分解反応は、常圧下
または加圧下のいずれで行なってもよい。
【0084】[経路]経路では、4−ハロゲン化ス
ルホニルフタロニトリル(式(I)の4−フタロニトリ
ル誘導体)と、式(III)のアルカリとを反応させるこ
とにより、式(IV)の4−フタロニトリル誘導体を得
る。
【0085】式(III)のアルカリおよび式(IV)の4
−フタロニトリル誘導体において、Qは、アルカリ金属
原子、アルカリ土類金属原子または第4アンモニウムを
表し、nは、Qの価数を表す。
【0086】アルカリ金属原子としては、例えば、ナト
リウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。
【0087】アルカリ土類金属原子としては、例えば、
カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
【0088】第4アンモニウムとしては、例えば、アン
モニウム、モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアン
モニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキル
アンモニウム、モノアルカノールアンモニウム、ジアル
カノールアンモニウム、トリアルカノールアンモニウ
ム、テトラアルカノールアンモニウム等が挙げられる。
【0089】各種アルキルアンモニウムにおいて、アル
キル基は、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭
素数1〜4のものとされ、複数のアルキル基を有するア
ルキルアンモニウムにおいて、アルキル基は、同一であ
っても、異なっていてもよい。また、各種アルカノール
アンモニウムにおいて、アルカノール基は、好ましくは
炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4のものとさ
れ、複数のアルカノール基を有するアルカノールアンモ
ニウムにおいて、アルカノール基は、同一であっても、
異なっていてもよい。
【0090】なお、炭素数3以上のアルキル基、アルカ
ノール基としては、直鎖状、分枝状、環状のいずれであ
ってもよい。
【0091】式(III)のアルカリの使用量としては、
特に限定されないが、4−ハロゲン化スルホニルフタロ
ニトリル1モルに対して、例えば、1〜10モル程度と
するのが好ましく、2〜7モル程度とするのがより好ま
しい。式(III)のアルカリの使用量が少なすぎると、
式(III)のアルカリの種類等によっては、未反応の4
−ハロゲン化スルホニルフタロニトリルが多く残存する
場合がある。一方、式(III)のアルカリの使用量を、
前記上限値を超えて多くしても、それ以上、式(IV)の
4−フタロニトリル誘導体の収量の増大が見込めず、式
(III)のアルカリが無駄になる場合がある。
【0092】反応溶媒としては、式(III)のアルカリ
および4−ハロゲン化スルホニルフタロニトリルを溶解
可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、メ
タノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチ
ルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエ
ーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、
トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、
トリクロロエチレン、四塩化炭素等が挙げられ、これら
のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いること
ができる。
【0093】また、本経路の反応は、水の存在下で行
なうのが好ましく、硫酸水素テトラブチルアンモニウ
ム、塩化メチルトリアルキルアンモニウム、および、塩
化テトラブチルホスホニウムのような相関移動触媒を添
加して反応を行うこともできる。これにより、4−ハロ
ゲン化スルホニルフタロニトリルと式(III)のアルカ
リとの反応がより効率よく進行し、その結果、より短時
間で式(IV)の4−フタロニトリル誘導体を合成(製
造)することができる。
【0094】反応温度としては、式(III)のアルカリ
の種類等により適宜設定され、特に限定されないが、例
えば、−5〜70℃程度とするのが好ましく、5〜40
℃程度とするのがより好ましい。このような温度範囲に
おいて、式(IV)の4−フタロニトリル誘導体の収量を
増大させることができる。
【0095】また、反応時間も、式(III)のアルカリ
の使用量、反応温度等により若干異なるが、通常、0.
5〜7時間程度とするのが好ましく、1〜5時間程度と
するのがより好ましい。このような時間範囲において、
式(IV)の4−フタロニトリル誘導体の収量を増大させ
ることができる。
【0096】[経路]経路では、4−ハロゲン化ス
ルホニルフタロニトリル(式(I)の4−フタロニトリ
ル誘導体)と、式(V)のアルカリとを反応させること
により、式(VI)の4−フタロニトリル誘導体を得る。
【0097】式(V)のアルカリおよび式(VI)の4−
フタロニトリル誘導体において、L およびLは、そ
れぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキ
ル基を表す。
【0098】なお、炭素数3、4のアルキル基として
は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。
【0099】式(V)のアルカリの使用量としては、特
に限定されないが、4−ハロゲン化スルホニルフタロニ
トリル1モルに対して、例えば、10〜60モル程度と
するのが好ましく、20〜50モル程度とするのがより
好ましい。式(V)のアルカリの使用量が少なすぎる
と、式(V)のアルカリの種類等によっては、未反応の
4−ハロゲン化スルホニルフタロニトリルが多く残存す
る場合がある。一方、式(V)のアルカリの使用量を、
前記上限値を超えて多くしても、それ以上、式(VI)の
4−フタロニトリル誘導体の収量の増大が見込めず、式
(V)のアルカリが無駄になる場合がある。
【0100】なお、常温で液体の式(V)のアルカリを
用いる場合には、前記範囲を超えた過剰量を用いて、式
(V)のアルカリ自体に反応溶媒を兼ねさせることもで
きる。
【0101】また、反応溶媒としては、前記常温で液体
の式(V)のアルカリを用いることができる他、例え
ば、蒸留水、イオン交換水、超純水、RO水のような各
種水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセト
ン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプ
ロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベ
ンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロ
メタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素等の各種有機
溶媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を
組み合わせて用いることができる。
【0102】反応温度としては、式(V)のアルカリの
種類等により適宜設定され、特に限定されないが、例え
ば、−5〜70℃程度とするのが好ましく、5〜40℃
程度とするのがより好ましい。このような温度範囲にお
いて、式(VI)の4−フタロニトリル誘導体の収量を増
大させることができる。
【0103】また、反応時間も、式(V)のアルカリの
使用量、反応温度等により若干異なるが、通常、1〜2
4時間程度とするのが好ましく、3〜15時間程度とす
るのがより好ましい。このような時間範囲において、式
(VI)の4−フタロニトリル誘導体の収量を増大させる
ことができる。
【0104】以上のような工程[0]および[1]を経
て、式(II)、式(IV)あるいは式(VI)の4−フタロ
ニトリル誘導体が、それぞれ合成(製造)される。
【0105】なお、前記各工程[0]および[1]にお
いては、それぞれ、例えば、抽出、洗浄、再結晶等の後
処理操作により、各化合物の精製および/または単離を
行なうようにしてもよい。また、前記工程[0−1]お
よび[0−2]において得られた各化合物(合成物)
は、このような後処理操作を、必要に応じて省略し、そ
のまま次工程に供するようにしてもよい。
【0106】本発明により合成(製造)される式(I
I)、式(IV)および式(VI)の4−フタロニトリル誘
導体は、それぞれ、フタロシアニン化合物の原材料とし
て有用な化合物である。これらの4−フタロニトリル誘
導体を用いて製造されたフタロシアニン化合物(色素)
は、近赤外線吸収能、各種有機溶媒への溶解性、耐候性
等の各種特性に極めて優れるものである。このようなフ
タロシアニン化合物の特性は、特に、ベンゼン環の4位
の位置に、前述したような置換基が導入されていること
により、特徴づけられている。
【0107】また、これらの4−フタロニトリル誘導体
の用途は、これに止まらず、例えば、医薬品、液晶等の
各種化合物の原材料としても極めて有用な化合物であ
る。
【0108】さて、次に、前記式(IX)の4−ブロモフ
タロニトリルの製造方法の一例について説明する。
【0109】この4−ブロモフタロニトリルは、例え
ば、4−ブロモ無水フタル酸から、下記化23のスキー
ムに従って製造することができる。
【0110】
【化23】
【0111】この製造方法によれば、4−ブロモフタロ
ニトリルを、容易かつ高い収率で製造することができ
る。
【0112】[2−0] まず、式(X)の4−ブロモ
無水フタル酸を用意する。この4−ブロモ無水フタル酸
は、比較的容易かつ安価に入手可能な化合物である。こ
のため、4−ブロモ無水フタル酸を用いることにより、
4−ブロモフタロニトリル、延いては、式(I)、式
(II)、式(IV)、式(VI)および式(VII)の4−フ
タロニトリル誘導体も比較的安価に製造することができ
る。
【0113】[2−1] 次いで、4−ブロモ無水フタ
ル酸と、アミド化合物とを反応させることにより、式
(XI)の4−ブロモフタルイミドを得る。
【0114】ここで、4−ブロモフタルイミドは、4−
ブロモ無水フタル酸をアンモニア気流中で加熱する方法
により合成してもよいが、かかる方法では、アンモニア
ガスを用いるため、その操作が極めて煩雑となるばかり
でなく、安全に操作を進めるのに細心の注意を払わなけ
ればならない。これに比べ、アミド化合物を用いること
により、後述するように、アミド化合物自体を反応溶媒
として用いたり、アミド化合物を反応溶媒に添加(溶
解)するだけで足りるので、その操作を、より容易かつ
安全に行なうことができるという利点がある。
【0115】このようなアミド化合物としては、例え
ば、ホルムアミド、尿素、炭酸アンモニウム等が挙げら
れ、これらの中でも、特に、ホルムアミドを用いるのが
好ましい。
【0116】ホルムアミドは、常温で液体であり、それ
自体を反応溶媒として用いることができる。すなわち、
ホルムアミド中に4−ブロモ無水フタル酸を添加(溶
解)して、これらを反応させることができる。これによ
り、別途、反応溶媒を用いる必要がないので、4−ブロ
モフタロニトリルの合成(製造)における手間とコスト
の低減を図ることができるという利点がある。
【0117】アミド化合物の使用量としては、特に限定
されないが、4−ブロモ無水フタル酸1モルに対して、
例えば、1〜10モル程度とするのが好ましく、1.5
〜3モル程度とするのがより好ましい。アミド化合物の
使用量が少なすぎると、アミド化合物の種類等によって
は、未反応の4−ブロモ無水フタル酸が多く残存する場
合がある。一方、アミド化合物の使用量を、前記上限値
を超えて多くしても、それ以上、4−ブロモフタルイミ
ドの収量の増大が見込めず、アミド化合物が無駄になる
場合がある。
【0118】なお、アミド化合物自体に、反応溶媒を兼
ねさせる場合には、前記範囲を超えた過剰量を用いるよ
うにすればよい。
【0119】また、反応溶媒としては、ホルムアミド
(常温で液体のアミド化合物)を用いることができる
他、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブロモベ
ンゼンのような芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサンのようなエーテル類等が挙げられ、これ
らのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるこ
とができる。
【0120】反応温度としては、アミド化合物の種類等
により適宜設定され、特に限定されないが、例えば、6
0〜200℃程度とするのが好ましく、90〜160℃
程度とするのがより好ましい。このような温度範囲にお
いて、4−ブロモフタルイミドの収量を増大させること
ができる。
【0121】また、反応時間も、アミド化合物の使用
量、反応温度等により若干異なるが、通常、1〜8時間
程度とするのが好ましく、2〜6時間程度とするのがよ
り好ましい。このような時間範囲において、4−ブロモ
フタルイミドの収量を増大させることができる。
【0122】[2−2] 次いで、4−ブロモフタルイ
ミドと、アンモニアとを反応させることにより、式(XI
I)の4−ブロモフタルアミドを得る。
【0123】本工程の反応では、アンモニアを溶媒に溶
解したアンモニア溶液に、4−ブロモフタルイミドを添
加しつつ、これらを反応させる。
【0124】アンモニアを溶解する溶媒としては、例え
ば、蒸留水、イオン交換水、超純水、RO水のような各
種水、メタノール、エタノール、プロパノールのような
アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エ
チル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジ
メチルスルホキシドのような各種有機溶媒等が挙げら
れ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて
用いることができる。
【0125】アンモニアの使用量としては、特に限定さ
れないが、4−ブロモフタルイミド1モルに対して、例
えば、5〜50モル程度とするのが好ましく、10〜2
0モル程度とするのがより好ましい。アンモニアの使用
量が少なすぎると、未反応の4−ブロモフタルイミドが
多く残存する場合がある。一方、アンモニアの使用量
を、前記上限値を超えて多くしても、それ以上、4−ブ
ロモフタルアミドの収量の増大が見込めない。
【0126】反応温度としては、特に限定されないが、
例えば、−10〜60℃程度とするのが好ましく、0〜
20℃程度とするのがより好ましい。このような温度範
囲において、4−ブロモフタルアミドの収量を増大させ
ることができる。
【0127】また、反応時間も、アンモニアの使用量、
反応温度等により若干異なるが、通常、1〜24時間程
度とするのが好ましく、3〜10時間程度とするのがよ
り好ましい。このような時間範囲において、4−ブロモ
フタルアミドの収量を増大させることができる。
【0128】[2−3] 次いで、4−ブロモフタルア
ミドを、脱水剤で処理することにより、式(IX)の4−
ブロモフタロニトリルを得る。
【0129】この脱水剤としては、例えば、塩化チオニ
ル、五酸化リン、オキシ塩化リン、ポリリン酸エステ
ル、トリフェニルホスフィン、ホスゲン、無水酢酸、ベ
ンゼンスルホニルクロリド等が挙げられ、これらの中で
も、特に、塩化チオニル、五酸化リン、オキシ塩化リ
ン、ポリリン酸エステル、トリフェニルホスフィン、ホ
スゲンのうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。
これらの脱水剤を用いることにより、比較的温和な条件
下で、収率よく反応を行なうことができるという利点が
ある。
【0130】脱水剤の使用量としては、特に限定されな
いが、4−ブロモフタルアミド1モルに対して、例え
ば、1〜10モル程度とするのが好ましく、2〜4モル
程度とするのがより好ましい。脱水剤の使用量が少なす
ぎると、未反応の4−ブロモフタルアミドが多く残存す
る場合がある。一方、アンモニアの使用量を、前記上限
値を超えて多くしても、それ以上、4−ブロモフタロニ
トリルの収量の増大が見込めず、脱水剤が無駄になる場
合がある。
【0131】なお、常温で液体の脱水剤を用いる場合に
は、前記範囲を超えた過剰量を用いて、脱水剤自体に反
応溶媒を兼ねさせることもできる。
【0132】また、反応溶媒としては、前記常温で液体
の脱水剤を用いることができる他、例えば、塩化メチレ
ン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,
2,2−テトラクロロエタンのようなハロゲン化炭化水
素類、n−ヘキサン、石油エーテル、トルエン、ベンゼ
ン、キシレンのような炭化水素類、アセトン、メチルエ
チルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン
類、酢酸エチル、酢酸メチルのようなエステル類、ジエ
チルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロ
フラン、ジオキサンのようなエーテル類、アセトニトリ
ル、プロピオニトリルのようなニトリル類、ジメチルホ
ルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン
酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジ
メトキシエタン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメ
チル−2−イミダゾリジノン等の各種有機溶媒が挙げら
れ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて
用いることができる。
【0133】処理温度としては、特に限定されないが、
例えば、−10〜60℃程度とするのが好ましく、0〜
20℃程度とするのがより好ましい。このような温度範
囲において、4−ブロモフタロニトリルの収量を増大さ
せることができる。
【0134】なお、処理温度は、前記温度範囲内で一定
に保つようにしてもよいし、必要に応じて変化させるよ
うにしてもよい。
【0135】また、処理時間も、脱水剤の使用量、処理
温度等により若干異なるが、通常、0.5〜8時間程度
とするのが好ましく、1〜5時間程度とするのがより好
ましい。このような時間範囲において、4−ブロモフタ
ロニトリルの収量を増大させることができる。
【0136】以上のような工程[2−1]〜[2−3]
を経て、4−ブロモフタロニトリルが合成(製造)され
る。
【0137】なお、前記各工程[2−1]〜[2−3]
においては、それぞれ、例えば、抽出、洗浄、再結晶等
の後処理操作により、各化合物の精製および/または単
離を行なうようにしてもよい。また、前記各工程[2−
1]〜[2−3]において得られた各化合物(合成物)
は、このような後処理操作を、必要に応じて省略し、そ
のまま次工程に供するようにしてもよい。
【0138】以上、本発明の4−フタロニトリル誘導体
の製造方法および4−フタロニトリル誘導体の実施形態
に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるも
のではない。
【0139】例えば、本発明では、必要に応じて、任意
の工程を追加するようにしてもよい。
【0140】なお、本発明の4−フタロニトリル誘導体
の製造方法は、例えば3−フタロニトリル誘導体、複数
の位置に置換基を有するフタロニトリル誘導体等の合成
にも適用することができる。
【0141】
【実施例】次に、本発明の具体的実施例について説明す
る。
【0142】(実施例1)<0> まず、4−ブロモフ
タロニトリルを、次のようにして得た。
【0143】<0−1> 4−ブロモ無水フタル酸9
0.8g(0.4mol)を、ホルムアミド450g
(10mol)に加え、120〜130℃に保って3時
間攪拌した。
【0144】反応終了後、反応液を室温まで冷却した
後、この反応液にメタノールを400mL加え、析出し
た結晶を濾別した。得られた結晶を、少量のメタノール
で洗浄した後、一晩風乾させた。
【0145】これにより、76.9gの4−ブロモフタ
ルイミドの白色結晶を得た(mp235〜236℃)。
【0146】<0−2> 次に、この4−ブロモフタル
イミド76.9g(0.34mol)を冷却して−5〜
0℃に保ちながら、28%アンモニア水溶液400mL
に少量ずつ加えた。その後、室温下で一晩(8時間)攪
拌した。
【0147】反応終了後、析出した結晶を濾別して、蒸
留水、メタノールの順で洗浄した後、減圧下で赤外線ラ
ンプを用いて乾燥させた。
【0148】これにより、74.5gの4−ブロモフタ
ルアミドの白色固体を得た(mp209〜210℃(d
ec.))。
【0149】<0−3> 次に、氷冷下5〜10℃に保
ったジメチルホルムアミド(DMF)360mLに、塩
化チオニル91.2g(0.77mol)を30分かけ
て滴下し、同温度で1時間攪拌した。
【0150】次いで、この溶液に、4−ブロモフタルア
ミド74.5g(0.31mol)を冷却して、0〜5
℃に保ちながら、少量ずつ加えた。その後、5〜10℃
に保って1時間攪拌し、さらに室温下で2時間攪拌し
た。
【0151】反応終了後、反応液を氷水に注加し、析出
した結晶を濾別し、蒸留水で洗浄した後、室温下で風乾
した。
【0152】得られた結晶に対して、トルエン、n−ヘ
キサンからの再結晶操作を行なった。
【0153】これにより、60.0gの4−ブロモフタ
ロニトリルの白色結晶を得た(mp139〜143
℃)。
【0154】<0−4> 次に、4−ブロモフタロニト
リル33.5g(0.16mol)をジメチルホルムア
ミド(DMF)325mLに溶解した。
【0155】次いで、この溶液に、炭酸カリウム44.
8g(0.32mol)、および、下記式(VIII−1)
[式(VIII−1)中、R=H]のベンジルメルカプタ
ン20.1g(0.16mol)を加えた。
【0156】
【化24】
【0157】この混合物を加熱し、70〜80℃に保っ
て3時間攪拌した後、室温まで冷却した。
【0158】その後、反応液を氷水に注加し、析出した
結晶を濾別し、この結晶を蒸留水で洗浄した後、50℃
で送風乾燥した。さらに、得られた結晶に対して、トル
エンからの再結晶操作を行った。
【0159】これにより、下記式(VII−1)[式(VII
−1)中、R=H]の4−ベンジルチオフタロニトリ
ル34.3gを白色結晶として得た(mp139.5〜
141℃)。
【0160】
【化25】
【0161】<0−5> 次に、4−ベンジルチオフタ
ロニトリル25.0g(0.10mol)を、酢酸水溶
液250mL(酢酸210mL+水40mL)に加え、
氷水浴により5〜10℃に冷却した。
【0162】この溶液に、塩素ガス22.5g(0.3
2mol)を、同温度を維持しつつ1時間かけて導入
し、導入終了後、同温度で1時間攪拌した。この反応液
を氷水に注加し、約1時間攪拌した後、析出した結晶を
濾別した。
【0163】得られた結晶を、水、イソプロピルアルコ
ールの順で洗浄した後、40℃で送風乾燥した。
【0164】これにより、下記式(I)[式(I)中、
X=Cl]の4−クロロスルホニルフタロニトリル1
6.6gを白色結晶として得た。
【0165】
【化26】
【0166】この4−クロロスルホニルフタロニトリル
のNMRおよび質量分析による分析データを、以下に示
す。
【0167】H−NMR(CDCl):8.48
(d)、8.42(dd)、8.16(d) MS(m/e):226(M
【0168】<1> 次に、28%アンモニア水溶液4
0mLに氷冷下、5〜10℃に保って、4−クロロスル
ホニルフタロニトリル4.1g(18mmol)を、少
量ずつ加えた。添加終了後、室温下で一晩(8時間)攪
拌した。
【0169】次いで、再度、氷水下、5〜10℃に冷却
し、濃塩酸を滴下して、pHを1〜2に調整した。析出
した結晶を濾別し、蒸留水で洗浄した後、50℃で送風
乾燥した。得られた固体に対して、蒸留水からの再結晶
操作を行った。
【0170】これにより、下記式(VI)[式(VI)中、
=L=H]の4−スルホンアミドフタロニトリル
2.6gを淡黄色固体として得た(mp187〜18
8.5℃)。
【0171】
【化27】
【0172】なお、4−スルホンアミドフタロニトリル
の4−クロロスルホニルフタロニトリルからの収率は、
69%であった。
【0173】(実施例2)前記工程<1>における反応
条件を、以下に示すように変更した以外は、前記実施例
1と同様にして、4−スルホンアミドフタロニトリルを
合成した。
【0174】前記工程<1>において、アンモニア水に
4−クロロスルホニルフタロニトリルを加えた後、−5
〜0℃で16時間攪拌した。
【0175】なお、4−スルホンアミドフタロニトリル
の4−クロロスルホニルフタロニトリルからの収率は、
59%であった。
【0176】(実施例3)前記工程<0−5>におい
て、塩素ガスに代わり、臭素液を用い、臭素液を酢酸水
溶液に滴下したこと以外は、前記実施例1と同様にし
て、前記式(I)[式(I)中、X=Br]の4−ブロ
モスルホニルフタロニトリルを合成した。
【0177】この4−ブロモスルホニルフタロニトリル
を用いて、前記実施例1と同様にして、4−スルホンア
ミドフタロニトリルを合成した。
【0178】なお、4−スルホンアミドフタロニトリル
の4−ブロモスルホニルフタロニトリルからの収率は、
62%であった。
【0179】(実施例4)前記工程<0−5>におい
て、塩素ガスに代わり、ヨウ素液を用い、反応条件を以
下のように変更した以外は、前記実施例1と同様にし
て、前記式(I)[式(I)中、X=I]の4−ヨード
スルホニルフタロニトリルを合成した。
【0180】前記工程<0−5>において、4−ベンジ
ルチオフタロニトリルを、酢酸水溶液に加え、35〜4
0℃に加熱した。この溶液に、ヨウ素液を、同温度を維
持しつつ、3時間かけて滴下し、添加終了後、同温度で
1時間攪拌した。
【0181】この4−ヨードスルホニルフタロニトリル
を用いて、前記実施例1と同様にして、4−スルホンア
ミドフタロニトリルを合成した。
【0182】なお、4−スルホンアミドフタロニトリル
の4−ヨードスルホニルフタロニトリルからの収率は、
60%であった。
【0183】(実施例5)前記工程<1>において、ア
ンモニア水溶液に代わり、75%ジメチルアミン水溶液
40mLを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、
前記式(VI)[式(VI)中、L=L=CH]の4
−スルホンジメチルアミドフタロニトリルを合成した。
【0184】なお、4−スルホンジメチルアミドフタロ
ニトリルの4−クロロスルホニルフタロニトリルからの
収率は、71%であった。
【0185】(実施例6)前記実施例1と同様にして、
4−クロロスルホニルフタロニトリルを合成した。
【0186】この4−クロロスルホニルフタロニトリル
4.1g(18mmol)を、0.01M塩酸水溶液5
0mLに少量ずつ加えた。添加終了後、常圧下に5〜1
0℃で2時間攪拌した。
【0187】反応終了後、飽和塩化ナトリウム水溶液5
0mLとジクロロメタン100mLから目的物を抽出
し、有機層を減圧下濃縮した。
【0188】これにより、下記式(II)の3,4−ジシ
アノベンゼンスルホン酸2.6gを白色固体として得
た。
【0189】
【化28】
【0190】なお、3,4−ジシアノベンゼンスルホン
酸の4−クロロスルホニルフタロニトリルからの収率
は、69%であった。
【0191】(実施例7)反応条件を、以下に示すよう
に変更した以外は、前記実施例6と同様にして、3,4
−ジシアノベンゼンスルホン酸を合成した。
【0192】4−クロロスルホニルフタロニトリルを塩
酸水溶液に少量ずつ加え、添加終了後、常圧下に45〜
50℃で4時間攪拌した。
【0193】なお、3,4−ジシアノベンゼンスルホン
酸の4−クロロスルホニルフタロニトリルからの収率
は、62%であった。
【0194】(実施例8)前記実施例1と同様にして、
4−クロロスルホニルフタロニトリルを合成した。
【0195】この4−クロロスルホニルフタロニトリル
4.1g(18mmol)を、1.0M水酸化ナトリウ
ム水溶液40mLに少量ずつ加えた。添加終了後、5〜
15℃で4時間攪拌した。
【0196】反応終了後、飽和塩化ナトリウム水溶液5
0mLとジクロロメタン100mLから目的物を抽出
し、有機層を減圧下濃縮した。
【0197】これにより、下記式(IV)[式(IV)中、
Q=Na、n=1]の3,4−ジシアノベンゼンスルホ
ン酸ナトリウム2.9gを白色固体として得た。
【0198】
【化29】
【0199】なお、3,4−ジシアノベンゼンスルホン
酸ナトリウムの4−クロロスルホニルフタロニトリルか
らの収率は、73%であった。
【0200】(実施例9)反応条件を、以下に示すよう
に変更した以外は、前記実施例8と同様にして、3,4
−ジシアノベンゼンスルホン酸ナトリウムを合成した。
【0201】4−クロロスルホニルフタロニトリルを塩
酸水溶液に少量ずつ加え、添加終了後、常圧下に50〜
60℃で6時間攪拌した。
【0202】なお、3,4−ジシアノベンゼンスルホン
酸ナトリウムの4−クロロスルホニルフタロニトリルか
らの収率は、65%であった。
【0203】(実施例10)水酸化ナトリウム水溶液に
代わり、0.5M水酸化カルシウム水溶液40mLを用
いた以外は、前記実施例8と同様の操作を行なった。
【0204】これにより、前記式(IV)[式(IV)中、
Q=Ca、n=2]の3,4−ジシアノベンゼンスルホ
ン酸カルシウム2.7gを白色固体として得た。
【0205】なお、3,4−ジシアノベンゼンスルホン
酸カルシウムの4−クロロスルホニルフタロニトリルか
らの収率は、70%であった。
【0206】(実施例11)水酸化ナトリウム水溶液に
代わり、1.0M水酸化アンモニウム水溶液50mLを
用いた以外は、前記実施例8と同様の操作を行なった。
【0207】これにより、前記式(IV)[式(IV)中、
Q=NH、n=1]の3,4−ジシアノベンゼンスル
ホン酸アンモニウム2.8gを白色固体として得た。
【0208】なお、3,4−ジシアノベンゼンスルホン
酸アンモニウムの4−クロロスルホニルフタロニトリル
からの収率は、68%であった。
【0209】(実施例12)水酸化ナトリウム水溶液に
代わり、1.0M水酸化トリエチルアンモニウム水溶液
50mLを用いた以外は、前記実施例8と同様の操作を
行なった。
【0210】これにより、前記式(IV)[式(IV)中、
Q=(CHCHNH、n=1]の3,4−ジシ
アノベンゼンスルホン酸トリエチルアンモニウム3.8
gを淡黄色固体として得た。
【0211】なお、3,4−ジシアノベンゼンスルホン
酸トリエチルアンモニウムの4−クロロスルホニルフタ
ロニトリルからの収率は、71%であった。
【0212】(実施例13)水酸化ナトリウム水溶液に
代わり、1.0M水酸化トリエタノールアンモニウム水
溶液50mLを用いた以外は、前記実施例8と同様の操
作を行なった。
【0213】これにより、前記式(IV)[式(IV)中、
Q=(HOCHCHNH、n=1]の3,4−
ジシアノベンゼンスルホン酸トリエタノールアンモニウ
ム4.5gを淡黄色固体として得た。
【0214】なお、3,4−ジシアノベンゼンスルホン
酸トリエタノールアンモニウムの4−クロロスルホニル
フタロニトリルからの収率は、73%であった。
【0215】(比較例1)前記工程<1>において、4
−クロロスルホニルフタロニトリルに代わり、下記式
(XIII−1)の4−メシルフタロニトリルを用いた以外
は、前記実施例1と同様にして、4−スルホンアミドフ
タロニトリルの合成を試みたが、4−スルホンアミドフ
タロニトリルは、得られなかった。
【0216】
【化30】
【0217】(比較例2)前記工程<1>において、4
−クロロスルホニルフタロニトリルに代わり、下記式
(XIII−2)の4−トシルフタロニトリルを用いた以外
は、前記実施例1と同様にして、4−スルホンアミドフ
タロニトリルの合成を試みたが、4−スルホンアミドフ
タロニトリルは、得られなかった。
【0218】
【化31】
【0219】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、4
−フタロニトリル誘導体を、容易かつ高い収率で製造す
ることができる。
【0220】また、反応に用いる出発物質等の種類、反
応温度や反応時間を、適宜選択することにより、4−フ
タロニトリル誘導体の収率をより向上させることができ
る。
【0221】さらに、出発物質である式(I)で示され
る4−フタロニトリル誘導体(4−ハロゲン化スルホニ
ルフタロニトリル)を、4−ブロモフタロニトリルから
合成(製造)することや、さらに、この4−ブロモフタ
ロニトリルを4−ブロモ無水フタル酸から合成(製造)
することにより、前記効果をさらに向上させることがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(I) 【化1】 [式(I)中、Xは、ハロゲン原子を表す。]で示され
    る4−フタロニトリル誘導体を、酸またはアルカリの存
    在下で、加水分解することにより、下記式(II) 【化2】 で示される4−フタロニトリル誘導体を得ることを特徴
    とする4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記式(I)で示される4−フタロニト
    リル誘導体の加水分解反応における温度は、−5〜70
    ℃である請求項1に記載の4−フタロニトリル誘導体の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 前記式(I)で示される4−フタロニト
    リル誘導体の加水分解反応における時間は、20分〜5
    時間である請求項1または2に記載の4−フタロニトリ
    ル誘導体の製造方法。
  4. 【請求項4】 下記式(I) 【化3】 [式(I)中、Xは、ハロゲン原子を表す。]で示され
    る4−フタロニトリル誘導体と、下記式(III)で示さ
    れるアルカリとを反応させ、下記式(IV)で示される4
    −フタロニトリル誘導体を得ることを特徴とする4−フ
    タロニトリル誘導体の製造方法。 【化4】 【化5】 [式(III)、式(IV)中、Qは、アルカリ金属原子、
    アルカリ土類金属原子または第4アンモニウムを表し、
    nは、Qの価数を表す。]
  5. 【請求項5】 前記式(I)で示される4−フタロニト
    リル誘導体と、前記式(III)で示されるアルカリとの
    反応温度は、−5〜70℃である請求項4に記載の4−
    フタロニトリル誘導体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記式(I)で示される4−フタロニト
    リル誘導体と、前記式(III)で示されるアルカリとの
    反応時間は、0.5〜7時間である請求項4または5に
    記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記式(I)で示される4−フタロニト
    リル誘導体と、前記式(III)で示されるアルカリとの
    反応は、水の存在下で行なわれる請求項4ないし6のい
    ずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
  8. 【請求項8】 下記式(I) 【化6】 [式(I)中、Xは、ハロゲン原子を表す。]で示され
    る4−フタロニトリル誘導体と、下記式(V)で示され
    るアルカリとを反応させ、下記式(VI)で示される4−
    フタロニトリル誘導体を得ることを特徴とする4−フタ
    ロニトリル誘導体の製造方法。 【化7】 【化8】 [式(V)、式(VI)中、LおよびLは、それぞれ
    独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を
    表す。]
  9. 【請求項9】 前記式(I)で示される4−フタロニト
    リル誘導体と、前記式(V)で示されるアルカリとの反
    応温度は、−5〜70℃である請求項8に記載の4−フ
    タロニトリル誘導体の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記式(I)で示される4−フタロニ
    トリル誘導体と、前記式(V)で示されるアルカリとの
    反応時間は、1〜24時間である請求項8または9に記
    載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記ハロゲン原子は、塩素原子である
    請求項1ないし10のいずれかに記載の4−フタロニト
    リル誘導体の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記式(I)で示される4−フタロニ
    トリル誘導体は、酸水溶液中または酸を含む含水有機溶
    媒中で、下記式(VII) 【化9】 [式(VII)中、Rは、水素原子または炭素数1〜4の
    アルキル基を表す。]で示される4−フタロニトリル誘
    導体と、ハロゲン分子とを接触させることにより反応さ
    せ、これにより得られたものである請求項1ないし11
    のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方
    法。
  13. 【請求項13】 前記ハロゲン分子を前記酸水溶液中ま
    たは前記酸を含む含水有機溶媒中に添加しつつ、前記式
    (VII)で示される4−フタロニトリル誘導体と接触さ
    せる請求項12に記載の4−フタロニトリル誘導体の製
    造方法。
  14. 【請求項14】 前記酸は、酢酸、プロピオン酸のうち
    の少なくとも1種である請求項12または13に記載の
    4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記酸を含む含水有機溶媒に用いられ
    る有機溶媒は、メタノール、エタノール、クロロホル
    ム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジオキサンのうちの少
    なくとも1種である請求項12ないし14のいずれかに
    記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記式(VII)で示される4−フタロ
    ニトリル誘導体は、アルカリ存在下で、4−ブロモフタ
    ロニトリルと、下記式(VIII)で示されるベンジルメル
    カプタン誘導体とを反応させることにより得られたもの
    である請求項12ないし15のいずれかに記載の4−フ
    タロニトリル誘導体の製造方法。 【化10】 [式(VIII)中、Rは、前記式(VII)と同様の置換基
    を表す。]
  17. 【請求項17】 前記ベンジルメルカプタン誘導体は、
    置換基Rをベンゼン環の4位の位置に有する請求項16
    に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。
  18. 【請求項18】 前記アルカリは、炭酸カリウム、炭酸
    ナトリウム、水素化ナトリウム、ピリジン、1,8−ジ
    アザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5
    −ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネンのうちの
    少なくとも1種である請求項16または17に記載の4
    −フタロニトリル誘導体の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記4−ブロモフタロニトリルは、4
    −ブロモ無水フタル酸から得られたものである請求項1
    6ないし18のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘
    導体の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記4−ブロモフタロニトリルは、4
    −ブロモ無水フタル酸とアミド化合物とを反応させ、4
    −ブロモフタルイミドを得、次いで、前記4−ブロモフ
    タルイミドとアンモニアとを反応させ、4−ブロモフタ
    ルアミドを得、その後、前記4−ブロモフタルアミドを
    脱水剤で処理することにより得られたものである請求項
    16ないし19のいずれかに記載の4−フタロニトリル
    誘導体の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記アミド化合物は、ホルムアミドで
    ある請求項20に記載の4−フタロニトリル誘導体の製
    造方法。
  22. 【請求項22】 前記脱水剤は、塩化チオニル、五酸化
    リン、オキシ塩化リン、ポリリン酸エステル、トリフェ
    ニルホスフィン、ホスゲンのうちの少なくとも1種であ
    る請求項20または21に記載の4−フタロニトリル誘
    導体の製造方法。
  23. 【請求項23】 請求項1ないし22のいずれかに記載
    の4−フタロニトリル誘導体の製造方法により製造され
    たことを特徴とする4−フタロニトリル誘導体。
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