JP2003055049A - 酸化インジウム焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲット - Google Patents

酸化インジウム焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲット

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JP2003055049A
JP2003055049A JP2001251326A JP2001251326A JP2003055049A JP 2003055049 A JP2003055049 A JP 2003055049A JP 2001251326 A JP2001251326 A JP 2001251326A JP 2001251326 A JP2001251326 A JP 2001251326A JP 2003055049 A JP2003055049 A JP 2003055049A
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Takayuki Abe
能之 阿部
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Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 太陽電池や液晶表示素子などの透明導電膜の
材料として広範に使用でき、長時間電力を投入してスパ
ッタリングした場合でも、アーキングが発生せず膜の特
性が劣化しにくく、かつ最後まで使い切ることのできる
酸化インジウム焼結体、その製造方法及びそれを用いた
スパッタリングターゲットの提供。 【解決手段】 実質的に酸化インジウム及びゲルマニウ
ムからなる焼結体であって、相対密度が97%以上であ
り、かつ表面粗さ(Rmax)が3.0μm以下である
ことを特徴とする酸化インジウム焼結体によって提供。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化インジウム焼
結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングタ
ーゲットに関し、更に詳しくは、太陽電池や液晶表示素
子などの透明導電膜の材料として広範に使用でき、長時
間電力を投入してスパッタリングした場合でも、アーキ
ングが発生せず膜の特性が劣化しにくく、かつ最後まで
使い切ることのできる酸化インジウム焼結体、その製造
方法及びそれを用いたスパッタリングターゲットに関す
る。
【0002】
【従来の技術】透明導電膜は、高い導電性と可視光領域
での高い透過率とを有する薄膜であり、太陽電池や液晶
表示素子、その他各種受光素子の電極などに利用され、
また、自動車や建築用の熱線反射膜、帯電防止膜、冷凍
ショーケースなど各種の防曇用の透明発熱体としても利
用されている。透明導電膜には、アンチモンやフッ素を
ドーパントとして含む酸化錫(SnO )や、アルミニ
ウムやガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛(Zn
O)や、錫をドーパントとして含む酸化インジウム(I
)などが知られている。中でも、錫をドーパン
トとして含む酸化インジウム膜、すなわちIn
Sn系膜はITO(Indium tin oxid
e)膜と称され、特に低抵抗の膜が容易に得られること
から、これまで良く用いられてきた。
【0003】これらの透明導電膜を製造するには、スプ
レー法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッ
タリング法などの方法が知られている。スパッタリング
法は、蒸気圧の低い材料の成膜や精密な膜厚制御を必要
とする際に有効な手法であり、操作が非常に簡便である
ため、工業的に広範に利用されている。一般に、約10
Pa以下のガス圧のもとで、基板を陽極、ターゲット
(原料)を陰極として、これらの間にグロー放電を起こ
してアルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴ
ン陽イオンを陰極のターゲットに衝突させ、これによっ
て弾き飛ばされるターゲット成分の粒子を基板上に堆積
させて膜を形成する。この方法は、アルゴンプラズマの
発生方法により分類され、高周波プラズマを用いる高周
波スパッタリング法、直流プラズマを用いる直流スパッ
タリング法に大別されている。また、ターゲットの裏側
にマグネットを配置してアルゴンプラズマをターゲット
直上に集中させ、アルゴンイオンの衝突効率を上げて低
ガス圧でも成膜可能としたマグネトロンスパッタ法があ
る。ITO焼結体では、密度7.02g/cm以上
(相対密度で98%相当以上)、ばらつきが±1%程度
であるITO焼結体の製造方法が提案されている(特開
2000−144393号公報)。しかし、これをター
ゲットとしてスパッタリングすると、末期が近づくに従
って、ターゲット表面に黒色の突起物(ノジュールとい
われる)が発生し、異常放電等を惹起し、性能(スパッ
タレート)を低下させていた。
【0004】近年、Sn以外の添加物を含むIn
系透明導電膜が検討され、Sn添加In材料には
ない特徴を持つ材料がいくつか見出されている。特開平
9−50711号公報には、ガリウムを含有したIn
からなる透明導電膜が提案され、特開平11−32
2333号公報、特開平11−323531号公報、及
び特開平11−329085号公報には、ゲルマニウム
を添加したIn薄膜が提案されている。さらに特
開平7−235219号公報には、In及びZnを含有
する非晶質酸化物からなり、第3元素として、Al、S
b、Ga、Geからなる群から選択された少なくとも1
種を含有した透明導電膜が記載されている。
【0005】ゲルマニウムを添加したIn膜は、
Sn添加Inと同等の導電性を有するだけでな
く、酸による膜のエッチング速度がSn添加In
膜と比べて速い利点をもつことから、様々なデバイスを
製造する際に有用といえる。また、低温スパッタ成膜で
表面平滑性に優れたアモルファス膜を安定して作製でき
る利点を併せもち、LCDなど各種表示デバイスへの応
用に向けて研究が進められている。これまで、この膜を
スパッタリング法で作製するには、酸化インジウム焼結
体がターゲットとして用いられており、このターゲット
は、粉末焼結法、即ち実質的にインジウム酸化物やゲル
マニウム(酸化物)を所望の組成に配合し、加圧成形し
た後、1400℃以上の温度で焼結する方法により製造
されている。
【0006】しかしながら、このようなGe添加In
焼結体をターゲットとしてスパッタリングする場
合、長時間電力を投入して成膜を続けると、ターゲット
表面に黒色の突起物が発生し始め、投入した総電力量が
増加するにつれて突起物の発生量を増加させていた。こ
のような状態になると、スパッタリング中にアーキング
が発生して、成膜速度が低下し、膜の比抵抗が増加し
て、光透過率が低下する等の問題を生じることになる。
そのため、ターゲットが完全に消費されない時点で、早
めにターゲットを交換したり、ターゲット表面の黒色突
起物を機械的に削って除去せざるを得なかった。そし
て、これが大量、かつ安価に透明導電膜を製造する上で
大きな障害となっていた。
【0007】ゲルマニウムを添加した酸化インジウム系
透明導電膜として、特開平11−322333号公報、
特開平11−323531号公報、及び特開平11−3
29085号公報、特開7−235219号公報を挙げ
たが、これらのいずれにも、当該問題を解決し得る手段
は開示されていない。また、一枚のターゲットから安定
して製造できる透明導電膜の数を増大できれば、電子部
品のコストを低減できる訳であるが、このようなターゲ
ットは現状では市場に見当たらない。
【0008】このような状況にあって、酸化インジウム
系焼結体ターゲットを用いたスパッタリングにおいて、
ノジュールの発生を抑制し、スパッタリング初期から末
期まで成膜速度を低下させず、最後まで使い切ることの
できる高密度な焼結体の開発が切望されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、前述
した従来技術の問題に鑑み、太陽電池や液晶表示素子な
どの透明導電膜の材料として広範に使用でき、長時間電
力を投入してスパッタリングした場合でも、アーキング
が発生せず膜の特性が劣化しにくく、かつ最後まで使い
切ることのできる酸化インジウム焼結体、その製造方法
及びそれを用いたスパッタリングターゲットを提供する
ことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決するために鋭意研究を重ねた結果、実質的に酸化イ
ンジウム及びゲルマニウムからなる焼結体であって、相
対密度を高密度とし、かつ該焼結体の表面粗さ(Rma
x)を特定値以下にすれば、スパッタリングの際にノジ
ュールが発生しにくく、膜の特性劣化を抑制できる酸化
インジウム焼結体、スパッタリングターゲットが得られ
ることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】すなわち、本発明の第1の発明によれば、
実質的に酸化インジウム及びゲルマニウムからなる焼結
体であって、相対密度が97%以上であり、かつ表面粗
さ(Rmax)が3.0μm以下であることを特徴とす
る酸化インジウム焼結体が提供される。
【0012】また、本発明の第2の発明によれば、第1
の発明において、ゲルマニウムの含有量が、インジウム
に対する原子比で0.01〜0.1であることを特徴と
する酸化インジウム焼結体が提供される。
【0013】また、本発明の第3の発明によれば、第1
又は第2の発明において、酸化インジウム、酸化ゲルマ
ニウムの粉体を原料とし、これを成形し、この表面に酸
素ガスを流通させながら焼結することを特徴とする酸化
インジウム焼結体の製造方法が提供される。
【0014】また、本発明の第4の発明によれば、第1
〜3の発明のいずれかの酸化インジウム焼結体を用い、
このエロージョン部分を盛り上がった形状に整えてなる
スパッタリングターゲットが提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の酸化インジウム焼
結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングタ
ーゲットについて詳細に説明する。
【0016】1.酸化インジウム焼結体 本発明の酸化インジウム焼結体は、(1)ゲルマニウム
を含み、(2)相対密度が97%以上であり、かつ
(3)表面粗さ(Rmax)が3.0μm以下、すなわ
ち表面の凹凸が極めて小さい焼結体である。
【0017】本発明で、酸化インジウム焼結体ターゲッ
トがGe元素を含むのは、かかるターゲットから膜を作
製すると、酸化インジウム膜中の原子価が3価であるイ
ンジウム位置に原子価4価のゲルマニウムが占有し、こ
れによってキャリア電子を放出して導電率を増加できる
からである。焼結体は、実質的に酸化インジウム及びゲ
ルマニウムからなるが、ゲルマニウムの含有量が、イン
ジウムに対する原子比で0.005〜0.5、好ましく
は0.01〜0.1であるとき、所望の透明導電膜を得
ることができる。特に、低抵抗の膜を作製するために
は、ターゲット中のゲルマニウム含有量を0.02〜
0.09とするのが好ましい。なお、焼結体には、本発
明の目的を損なわない範囲内で、酸化インジウム及びゲ
ルマニウム以外の成分が添加されても良い。
【0018】相対密度は、水を用いたアルキメデス法に
よって測定した焼結密度の数値と、空孔を全く含まない
場合の理論密度を基に、(焼結密度/理論密度)×10
0(%)の式から算出した値であり、97%以上、好ま
しくは98%以上とする。ここで、相対密度を算出する
際に用いた各組成における理論密度は、粉末X線回折で
求めた格子定数と、酸素欠陥がなく、Geが全て正規の
In位置に置換したときの単位胞の重量から算出する。
相対密度は、任意の箇所で測定して98%が好ましく、
この密度は、平面方向にわたって一様であることが望ま
しい。
【0019】表面粗さ(Rmax)とは、(1)基準長
さだけ抜き取った断面曲線の平均線に平行で、(2)こ
の断面曲線に接し、(3)この断面曲線全体を挟む二直
線の間隔の値である。ここで、基準長さとは、JIS規
格に基づいて定められた値であり、Rmaxの値によっ
て6種類の値が決められている。例えば、Rmaxが
0.8〜6.3μmであれば基準長さは0.8mmであ
り、Rmaxが6.3〜25μmであれば2.5mmと
なる。また、平均線とは、抜き取った断面曲線におい
て、被測定面の幾何学的形状をもつ線(直線または曲
線)で、かつその線から該断面曲線までの偏差の二乗和
が最小になるように設定した線である。
【0020】これまでの透明導電性薄膜作製用の焼結体
ターゲットは、焼結体密度が低くなってから長時間スパ
ッタリングすると、エロージョン近傍にノジュールが発
生して成膜中にアーキングが起きやすく、このような状
態で成膜すると低抵抗の膜が得られなかった。本発明者
の実験によると、ノジュールの生じやすさは、焼結体の
密度とスパッタ面の表面粗さに関連があり、相対密度を
97%以上にしてスパッタ面の表面粗さ(Rmax)を
3.0μmにすることが、ノジュール、アーキングを抑
制する必須条件であることが究明された。
【0021】2.焼結体の製造方法 本発明の酸化インジウム焼結体は、例えば粉末焼結法に
よって製造できるが、これ以外の方法も採用でき、特に
限定されない。粉末焼結法は、原料粉末から成形体を形
成する工程と、該成形体を炉に入れて焼結させる工程か
らなる製造方法である。原料粉末から成形体を形成する
工程では、酸化インジウム、ゲルマニウムからなる原料
粉末を混合し、これを成形する。焼結工程は、こうして
得られた成形体を、炉内の炉床板、セッター上に載置
し、酸素雰囲気下に焼結する工程である。
【0022】原料粉末である酸化インジウムと酸化ゲル
マニウムは、所望の重量比で混合する。酸化インジウ
ム、酸化ゲルマニウムは、いずれも平均粒径が3μm以
下、好ましくは1μm以下の粉末を用いる。原料粉末は
公知の装置を用いて混合、撹拌すればよいが、特に、ジ
ルコニア製ボールなどを用いた湿式ボールミルで、10
〜20時間混合するのが好ましい。ろ過、乾燥後、必要
により、バインダーとしてポリビニルアルコール(PV
A)などを添加して造粒した後、10〜100μm、好
ましくは30〜50μmの範囲に整える。こうして得た
顆粒は、例えば1000kg/cm以上で加圧成形し
て成形体とする。
【0023】本発明の焼結工程においては、予め、該成
形体の下面と炉床板との間及び該成形体の上面と天井板
との間に、酸素ガスが流通するに十分な間隔を設けてお
き、次いで、1000℃以上の温度で、該成形体の表面
に酸素ガスを流通させることにより、該炉内の酸素雰囲
気を置換しながら、1400℃以上の焼結温度に保持
し、3〜10時間かけて焼結させる。
【0024】本発明で使用する焼結炉の種類は特に限定
されないが、通常、加熱雰囲気を制御し易い電気炉が採
用される。炉の上部、下部には炉床板、天井板が配置さ
れ、該炉床板にはセッター、敷き粉を介して成形体が載
るように構成されている。敷き粉は、特に限定されない
が、成形体がセッターに融着するのを防ぐ材料であっ
て、焼結温度でも溶融しない無機物質が使用される。敷
き粉は微細な粉末状態のままセッター上へ均等に分散さ
せるか、または均一な厚みに成形したシートを用いるの
が好ましい。
【0025】成形体を炉内に設置する際に、炉床から成
形体の下面、また、成形体の上側から天井板を一定間隔
あけて、成形体へ十分に酸素の流れを取り込むようにす
るのが好ましい。間隔が狭いと、成形体の表面に酸素ガ
スが均等に流れにくく、密度むらが生じ、また、成形体
が炉床や天井板と接近しすぎても、成形体内の外周部と
中央部で加熱むらが発生しやすい。逆に、成形体の表面
から炉床や天井板までの間隔があきすぎると、炉内に成
形体を設置する空間に無駄ができ、酸素も多量に消費す
るので経済的ではない。
【0026】炉内の温度を0.5〜3℃/分で昇温し、
1000℃になったところで、常圧において、成形体の
上部及び下部の表面に酸素ガスの流通を開始し、炉内の
酸素雰囲気を置換させつつ、1400℃を超えたら、焼
結温度で3時間以上、好ましくは5時間以上保持する。
その後、酸素ガスの流通を実質的に止めて、最後に冷却
する。このように本発明の焼結工程は、予備焼結工程、
本焼結工程、及び冷却工程からなり、必要により更に再
焼結工程を付加してもよい。
【0027】本焼結工程は、1400℃以上において、
酸素ガスを成形体の上部及び下部の表面に流通させて、
焼結温度で1時間以上保持する工程であるが、焼結温度
を1450〜1550℃に設定するのであれば、保持時
間は3〜10時間を目安とすればよい。焼結中、成形体
内部は、温度のばらつきを±20℃以下に抑えるため
に、成形体の表面で温度ばらつきが±10℃以下となる
ように注意する。上記のように、成形体上面から天井
板、炉床から成形体下面の間隔を一定に調整したが、こ
れは温度の安定化にも効果がある。
【0028】酸素ガスは、例えば炉内容積0.1m
たり1〜10リットル/分、好ましくは3〜8リットル
/分の割合で導入し、流通させるのが好ましい。流通量
が小さすぎると、成形体の密度を上げ難くなるばかり
か、組成ずれを起こし易くなる。また、流通量が多過ぎ
ると、酸素気流によって焼結体の表面が過冷却され、温
度むら、密度むらが生じて、焼結体の反り量が増大して
しまう。
【0029】流通時間は、小型の焼結体であれば30分
未満でもよいが、近年、特に大型化しているターゲッ
ト、例えば、焼結体サイズが300mm×300mm×
6mm程度、特に400×500mm×10mm程度
と、ターゲットが大型で厚くなるほど、全体の温度分布
が制御しにくくなるので、好ましくは60分以上かけ保
持させる。これにより、平面方向、厚み方向がおおむね
均一に加熱され、焼結密度や表面粗さがばらつくのを大
幅に低減でき、更には焼結収縮時、加熱が不均一になっ
て発生した反りも、焼結体の自重によって軽減される。
【0030】本焼結工程の後、加熱をやめ、実質的に酸
素ガスの流通を止めて冷却工程に移る。冷却工程は、3
〜15℃/分の速度で降温する工程である。再焼結工程
は、冷却工程を終えてから、再度、焼結温度にして焼結
体を加熱する工程である。本焼成工程と同様に、30分
以上保持すればよい。焼結温度が1450〜1550℃
であれば、保持時間は30分〜2時間を目安とすればよ
い。この工程を付加することにより、炉内全体の温度が
均一になり、結果的に焼結体の均熱性が向上し、結晶の
平均粒径、焼結体の表面粗さを一定の範囲内に制御でき
る。再焼結工程は冷却工程の後で行ってもよい。
【0031】3.スパッタリングターゲット 上記の方法で製造された焼結体は、平面研削等により加
工し、所定の寸法にしてから、バッキングプレートに貼
り付けることにより、本発明のスパッタリングターゲッ
トとすることができる。カップ砥石を用いた平面研削等
により消耗量の多い部分、すなわちエロージョン部分を
盛り上がった形状に整え、仕上げることも有用である。
こうして焼結体ターゲットにおけるエロージョン部分の
材料を予め増加させておくことで、ターゲット材料の利
用効率を上げることができる。また、必要により数枚の
タイルを分割形状にならべても良い。
【0032】本発明者は、種々の相対密度と表面粗さを
もつGe添加酸化インジウム系焼結体ターゲットを用
い、ガス圧、成膜ガスの種類、ターゲット−基板間距
離、成膜パワーを一定にして、連続スパッタ実験および
評価試験を実施した。この結果、ターゲット表面の黒色
突起物の発生量や、アーキングの発生・成膜速度の低下
が始まる積算投入電力は、ターゲットの相対密度と表面
粗さに大きく依存することが分かった。すなわち、相対
密度が高く、表面粗さが小さいほど、黒色突起物の発生
量は少なく、アーキングの発生・成膜速度の低下が始ま
る積算投入電力値は大きいことが把握できた。
【0033】この理由は次のように説明できる。相対密
度が低い(90〜95%)場合には、スパッタによって
表面が削り取られると、ターゲット中に存在していた空
孔が表面に出て、この空孔が表面の凹部を形成する。表
面の凹部では、スパッタされた粒子が凹部の壁に付着し
て堆積し、成長して突起物が形成される。また、ターゲ
ット表面が粗い場合は、既に凹部が表面にできている状
態なので、この場合でも同様の機構で突起物が形成され
る。ターゲットの相対密度が低いほど、また表面粗さが
大きいほど、表面に凹部が多く形成されるため、突起物
が多く形成される。これがターゲット表面に形成される
前述の黒色突起物である。そして、この突起物が成長す
ると、放電中にプラズマが集中し、アーキングの発生・
成膜速度の低下が始まって、膜特性の悪化につながる。
本発明者は、ターゲット表面の黒色突起物の発生量が少
なくて、アーキングの発生・成膜速度の低下といった問
題を生じないターゲットの条件は、(1)相対密度が9
7%以上、(2)スパッタ面の表面粗さ(Rmax)が
3.0μm以下であることを究明した。
【0034】このようなスパッタリングターゲット、す
なわち相対密度が高く、表面粗さが小さい焼結体を採用
したターゲットであれば、スパッタリングが進み、一定
のエロージョン深さに達しても、異常放電回数を急激に
増加させないので、成膜する際にパワーを上げたり、タ
ーゲットの表面をクリーニングする等の処理が不用にな
る。従って、本発明の焼結体ターゲットを用いれば、ノ
ジュールを効果的に抑制できるので、ターゲットを掘り
きるまで使え、安定的に低抵抗の透明導電膜を製造する
ことができる。焼結体は、表面部よりも内部の方で空孔
数が増加しやすいとされているが、最もエロージョンが
深い厚み付近になっても安定してスパッタリングするに
は、特に相対密度が98%以上で、表面粗さが、2.9
μm以下であるターゲットを採用すればよい。
【0035】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるも
のではない。
【0036】[実施例1]平均粒径が1μm以下のIn
粉末、および平均粒径が1μm以下のGeO
末を原料粉末として用い、このIn粉末、GeO
粉末を樹脂製ポットに入れ、湿式ボールミルで混合し
た。この際、硬質ZrOボールを用い、混合時間を1
8時間とした。混合後にスラリーを取り出し、濾過、乾
燥、造粒した。次に、この造粒物に冷間静水圧プレスで
3ton/cmの圧力を掛けて成形した。最後に、
成形体を次のようにして焼結した。炉内容積0.1m
当たり5リットル/分の割合で、焼結炉内の大気に酸素
を導入する雰囲気中、1500℃で5時間焼結した。こ
の際、1℃/分で昇温し、焼結後の冷却の際は酸素導入
を止め、1100℃まで10℃/分で降温した。焼結体
を直径152mm、厚み5mmの大きさの円柱状に加工
し、スパッタ面をカップ砥石で磨いて、エロージョン部
分が盛り上がった形状にした。これを無酸素銅製のバッ
キングプレートに金属インジウムを用いてボンディング
し、Ge/In原子比が0.05であるゲルマニウム含
有酸化インジウム焼結体ターゲットを製造した。
【0037】製造された焼結体ターゲットについて、焼
結密度およびスパッタ面表面粗さ(Rmax)を測定し
た。その結果、ターゲットは相対密度が99%、Rma
xが1.6μmであった(表1)。直流マグネトロンス
パッタリング装置の非磁性体ターゲット用カソードに、
この焼結体ターゲットを取り付けた。そして、直流プラ
ズマを発生させて、連続スパッタリングを開始してから
アーキングが発生し始めるまでの積算投入電力、および
アーキングが発生し始めた時のエロージョンの最深深さ
(スパッタ面の反対面からの距離)を測定するため、タ
ーゲット−基板間距離を70mmとし、純度99.99
99重量%のArガスを導入して、ガス圧を0.5Pa
とし、DC500Wでスパッタリングを実施した(アー
キング試験)。その結果、積算投入電力が増加して連続
スパッタ終了時点になっても、アーキングがなく、黒色
突起物が表面に発生せず、そのため、このターゲットを
最後まで使い切ることができた。この結果を表1に示
す。また、成膜の初期と終期において、(1)成膜速
度、(2)膜の比抵抗、(3)膜の透過率特性(波長:
1000nm)を測定した(成膜速度試験・膜特性試
験)。その結果、上記(1)〜(3)のいずれも、積算
投入電力が増大しても成膜初期の頃と比べて変化がな
く、望ましい低抵抗値および高透過率を有していた。
【0038】[実施例2、3]実施例1と異なる相対密
度をもつ焼結体を得るために、焼結の際、炉内容積0.
1m当たりの導入酸素の割合および焼結温度(最高到
達温度)を変え、4〜5リットル/分、1450℃の条
件とした。また、種々のスパッタ面表面粗さ(Rma
x)をもつ焼結体を得るために、焼結体を磨く際に用い
るカップ砥石の種類を変えた。これら以外は実施例1と
同様に試験した。相対密度およびスパッタ面表面粗さ
(Rmax)を表1に示す。アーキング試験の結果は、
いずれも実施例1と同様で、表1に示すとおりであっ
た。また、成膜速度試験および膜特性試験の結果、いず
れも、積算投入電力が増大しても成膜初期の頃と比べて
変化がなく、望ましい低抵抗値および高透過率を有して
いた。
【0039】[比較例1〜8]種々の相対密度をもつ焼
結体を得るために、焼結の際に、導入酸素の割合および
焼結温度(最高到達温度)を変え、3〜4リットル/
分、1200〜1300℃の条件とした。また、種々の
スパッタ面表面粗さ(Rmax)をもつ焼結体を得るた
めに、焼結体を磨く際に用いるカップ砥石の種類を変え
て磨いた。これら以外は実施例1と同様に試験した。相
対密度およびスパッタ面表面粗さ(Rmax)を表1に
示す。アーキング試験の結果、いずれも、積算投入電力
が増加するとアーキングが発生し、黒色突起物が大量に
発生し、これらのターゲットをそのまま使うことができ
なくなり、表1に示すとおりであった。また、このよう
な相対密度及びスパッタ面表面粗さ(Rmax)を有す
るが、エロージョン部を盛り上げた形状に加工したター
ゲットを用いて、同様の試験を実施したが、積算投入電
力の増加とともにアーキングが発生し、黒色の突起物が
大量に発生した。
【0040】
【表1】
【0041】このように、ターゲットの相対密度が高
く、かつ表面粗さ(Rmax)が小さいと、長時間スパ
ッタリングしてもアーキングが発生しにくいことが分か
る。アーキングが多発し始めたときには、ターゲットの
エロージョン近傍にはノジュールが大量に発生してお
り、この膜の比抵抗と可視光透過率は、アーキングを発
生させずに作製した膜と比べて、大幅に悪化していた。
本発明に従った相対密度97%以上、スパッタ面の表面
粗さ(Rmax)3.0μm以下のターゲットを用いれ
ば、アーキングを発生させることなく最後まで使用する
ことができ、また、これを用いて透明導電膜を成膜すれ
ば、膜の比抵抗や可視光領域の光透過率を最後まで良好
に保つことができた。
【0042】
【発明の効果】本発明の酸化インジウム焼結体ターゲッ
トによれば、積算投入電力が増加してもアーキングが発
生しないため、ノジュールの発生を抑制でき、最後まで
使い切ることができる。言い換えれば、一枚のターゲッ
トから安定して製造できる透明導電膜の数を増大できる
ため、電子部品のコストを低減でき、その工業的価値は
極めて大きい。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的に酸化インジウム及びゲルマニウ
    ムからなる焼結体であって、相対密度が97%以上であ
    り、かつ表面粗さ(Rmax)が3.0μm以下である
    ことを特徴とする酸化インジウム焼結体。
  2. 【請求項2】 ゲルマニウムの含有量が、インジウムに
    対する原子比で0.01〜0.1であることを特徴とす
    る請求項1に記載の酸化インジウム焼結体。
  3. 【請求項3】 酸化インジウム、酸化ゲルマニウムの粉
    体を原料とし、これを成形し、この表面に酸素ガスを流
    通させながら焼結することを特徴とする請求項1又は2
    に記載の酸化インジウム焼結体の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項1又は2に記載の酸化インジウム焼
    結体を用い、このエロージョン部分を盛り上がった形状
    に整えてなるスパッタリングターゲット。
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