JP2003048367A - 液体組成物、インクセット及び被記録媒体に着色部を形成する方法 - Google Patents

液体組成物、インクセット及び被記録媒体に着色部を形成する方法

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JP2003048367A JP2002134853A JP2002134853A JP2003048367A JP 2003048367 A JP2003048367 A JP 2003048367A JP 2002134853 A JP2002134853 A JP 2002134853A JP 2002134853 A JP2002134853 A JP 2002134853A JP 2003048367 A JP2003048367 A JP 2003048367A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 より広い色再現範囲を有し、色の均一性に優
れた高品質なインクジェット記録物を得るための、印字
における信頼性(長期間の保存安定性、吐出ヘッドの目
詰まりや吸引回復時のワイピングによるヘッド表面の耐
久性)にも優れる液体組成物、これを用いたインクセッ
ト、着色部形成方法、記録装置の提供。 【解決手段】 色材を含むインクと共に被記録媒体に付
与されて被記録媒体上に着色部を形成するのに用いられ
る液体組成物であって、少なくとも溶媒と上記色材と反
応性を有する微粒子を少なくとも含み、且つ微粒子の、
動的光散乱法により測定される液体組成物中での平均粒
子径が30〜200nmの範囲にあり、及び散乱強度の
10%累積値が10nm以上で、90%累積値が300
nm以下である液体組成物、インクセット、着色部形成
方法、インクジェット記録装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カラー画像の形成
において発色性と色の均一性に優れた画像を得る技術に
関し、とりわけ、インクジェット記録方式を利用した画
像形成に最適に使用できる液体組成物、これを用いたイ
ンクセット、被記録媒体に着色部を形成する方法、及び
インクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録方法は、インクを飛
翔させ、紙等の被記録媒体にインクを付着させて記録を
行うものである。例えば、特公昭61−59911号公
報、特公昭61−59912号公報及び特公昭61−5
9914号公報において開示されている、吐出エネルギ
ー供給手段として電気熱変換体を用い、熱エネルギーを
インクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出
させる方式のインクジェット記録方法によれば、記録ヘ
ッドの高密度マルチオリフィス化を容易に実現すること
ができ、高解像度及び高品位の画像を高速で記録するこ
とができる。
【0003】ところで、従来のインクジェット記録方法
に用いられるインクは、水及び色材を主成分とし、これ
にノズル内でのインクの乾燥防止、ノズルの目詰まり防
止等の目的でグリコール等の水溶性高沸点溶剤を含有し
ているものが一般的である。そのため、このようなイン
クを用いて被記録媒体に記録を行った場合には、十分な
定着性が得られなかったり、被記録媒体としての記録紙
表面における填料やサイズ剤の不均一な分布によると推
定される不均一画像の発生等の問題を生じる場合があ
る。一方、近年は、インクジェット記録物に対しても、
銀塩写真と同レベルの高い画質を求める要求が強くなっ
ており、インクジェット記録画像の画像濃度を高めるこ
と、色再現領域を広げること、更には、記録物の色の均
一性を向上させること、に対する技術的な要求は非常に
高くなっている。
【0004】このような状況のもとで、インクジェット
記録方法の安定化、そしてインクジェット記録方法によ
る記録物の品質向上を図るために、これまでにも種々の
提案がなされてきている。被記録媒体に関する提案のう
ちの一つとして、被記録媒体の基紙表面に、充填材やサ
イズ剤を塗工する方法が提案されている。例えば、充填
材として色材を吸着する多孔質微粒子を基紙に塗工し、
この多孔質微粒子よってインク受容層を形成する技術が
開示されている。これらの技術を用いた被記録媒体とし
て、インクジェット用コート紙等が市販されている。
【0005】このような状況のもとで、インクジェット
記録方法の安定化、そして、インクジェット記録方法に
よる記録物の品質向上を図るために、これまでにも種々
の提案がなされてきている。以下に、その代表的なもの
の幾つかを分類してまとめた。
【0006】(1)インクに揮発性溶剤や浸透溶剤を内
添する方法;被記録媒体へのインクの定着性を早める手
段として特開昭55−65269号公報に、インク中に
界面活性剤等の浸透性を高める化合物を添加する方法が
開示されている。また、特開昭55−66976号公報
には、揮発性溶剤を主体としたインクを用いることが開
示されている。
【0007】(2)インクと反応する液体組成物を被記
録媒体上で混合する方法;画像濃度の向上、耐水性の向
上、更にはブリーディングの抑制を目的として、記録画
像を形成するためのインクの噴射に先立ち、或いは噴射
後に、被記録媒体上に画像を良好にせしめる液体組成物
を付与する方法が提案されている。例えば、特開昭63
−60783号公報には、塩基性ポリマーを含有する液
体組成物を被記録媒体に付着させた後、アニオン染料を
含有したインクによって記録する方法が開示されてお
り、特開昭63−22681号公報には、反応性化学種
を含む第1の液体組成物と該反応性化学種と反応を起こ
す化合物を含む第2の液体組成物を被記録媒体上で混合
する記録方法が開示されており、更に、特開昭63−2
99971号公報には、1分子当たり2個以上のカチオ
ン性基を有する有機化合物を含有する液体組成物を被記
録媒体上に付与した後、アニオン染料を含有するインク
で記録する方法が開示されている。また、特開昭64−
9279号公報には、コハク酸等を含有した酸性液体組
成物を被記録媒体上に付与した後、アニオン染料を含有
したインクで記録する方法が開示されている。
【0008】また、特開昭64−63185号公報に
は、インクの付与に先立って、染料を不溶化させる液体
組成物を紙に付与するという方法が開示されている。更
に、特開平8−224955号公報には、分子量分布領
域の異なるカチオン性物質を含む液体組成物を、アニオ
ン性化合物を含むインクと共に用いる方法が開示され、
また、特開平8−72393号公報には、カチオン性物
質と微粉砕セルロースを含む液体組成物をインクと共に
用いる方法が開示されており、何れも画像濃度が高く、
印字品位、耐水性が良好で、色再現性、ブリーディング
においても良好な画像が得られることが記載されてい
る。また、特開昭55−150396号公報には、被記
録媒体上に染料インクで記録した後に、染料とレーキを
形成する耐水化剤を付与する方法が開示され、記録画像
の耐水性を付与することが提案されている。
【0009】(3)インクと微粒子含有液体組成物とを
被記録媒体上で混合する方法;特開平4−259590
号公報に、無機物質からなる無色の微粒子を含有する無
色液体を被記録媒体上に付与した後、非水系記録液を付
着させる方法が開示され、特開平6−92010号公報
には、微粒子を含む溶液、又は微粒子及びバインダーポ
リマーを含む溶液を被記録媒体上に付与した後、顔料、
水溶性樹脂、水溶性溶剤及び水を含むインクを付着させ
る方法が開示され、特開2000−34432公報に
は、水不溶性微粒子からなる液体組成物とインクとを含
む記録材料が開示されており、何れも、紙種によらず印
字品位や発色性の良好な画像が得られることが記載され
ている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記し
たような各種のインクジェット記録技術について検討を
重ねた結果、各々の技術課題に対しては優れた効果を確
認できるものの、それと引き換えに、他のインクジェッ
ト記録特性が低下してしまう場合があることを見出し
た。
【0011】例えば、被記録媒体の基紙表面に充填材や
サイズ剤を塗工して得られる被記録媒体(以降コート紙
という)は、高品質な画像を形成することができる技術
として認知されている。一般に、高彩度の画像を得るた
めには、色材を凝集させずに単分子状態で被記録媒体の
表面に残すことが必要であることは知られているが、コ
ート紙の多孔質微粒子には、このような機能がある。し
かしながら、より高い画像濃度と画像彩度を得るために
は、与えられたインク中の色材に対して、多量の多孔質
微粒子で、基紙を覆い隠すような厚いインク受容層の形
成が不可欠となるため、結果として、コート紙において
は、基紙の質感が失われてしまうという別の問題が生じ
る。本発明者らは、このように基紙の質感を失う程のイ
ンク受容層が必要となるのは、色材が、多孔質微粒子に
効率的に吸着していないことに起因するためであると推
測した。
【0012】一層のインク受容層を有するコート紙を想
定して、以下に説明する。図9は、コート紙表面付近の
断面を模式的に示したものである。同図において、90
1は基紙であり、903はインク受容層を示す。一般
に、インク受容層903は、多孔質微粒子905とそれ
らを固定化する接着剤907を有する。インクが付与さ
れると、インクは多孔質微粒子905間の空隙を毛管現
象によって浸透し、インク浸透部909を形成する。同
図に示したように、インク受容層での多孔質微粒子90
5は局所的には密度が異なるため、この毛管現象による
インクの浸透の仕方は場所によって異なる。このため、
インクの浸透過程において、色材は多孔質微粒子表面に
均一には接触できず、色材が効率的に多孔質微粒子に吸
着されない。
【0013】更に、接着剤907によってインクの浸透
が阻害される部分も生じており、インク受容層903内
にはインクが浸透できない部分が存在し、発色には寄与
しない部分が発生する。即ち、従来のコート紙において
は、上記のような理由により、多孔質微粒子の量に対し
て効率的に色材を単分子状態で吸着することができず、
この結果、高品質の画像を得るためには多量の多孔質微
粒子905が必要となり、基紙の質感を損なうこととな
っていた。
【0014】更に、本発明者らの検討によれば、前記し
た(1)の技術を採用することで、インクの被記録媒体
への定着性は向上するものの、画像濃度の低下や、普通
紙への記録やカラー画像の記録に重要とされる色再現範
囲が低下してしまう場合があることがわかった。また、
本発明者らの検討によれば、前記した(2)の技術によ
れば、インク中の色材を被記録媒体表面に留めることが
できるため、高い画像濃度の記録物を得ることができる
が、色材を被記録媒体の表面で凝集させているためか、
色の再現範囲や彩度が十分に得られない場合があった。
また、前記の(3)で説明した従来技術では、微粒子を
含む溶液の付与により被記録媒体の表面状態の改質は得
られたものの、コート紙と同等レベルの高精彩な画像は
得られていない。更に特に、非水系記録液に関しては、
色材の選択性や記録付与方法等の制限もあり、その自由
度に課題が残る。このように、従来の方法には何れも課
題が残されているため、本発明者らは、近年において求
められているより一層の高品位なインクジェット記録物
に対しては、新たなインクジェット記録技術の開発が必
要であるとの認識を持つに至った。本発明は、これらの
認識に基づきためされたものである。
【0015】従って、本発明の目的は、より一層広い色
再現範囲を有し、色の均一性にも優れた高品質なインク
ジェット記録物を得るために用いられる液体組成物を提
供すると共に、印字における信頼性、具体的には、低温
や高温環境での長期間の保存安定性、吐出ヘッドの目詰
まりや吸引回復時のワイピングによるヘッド表面の耐久
性にも優れる液体組成物を提供することにある。また、
本発明の他の目的は、より一層広い色再現範囲を有し、
色の均一性にも優れ、更に、ベタ部のスジムラが少ない
優れたインクジェット記録物を普通紙に対しても形成す
ることができると共に、印字における信頼性、具体的に
は低温や高温環境での長期間の保存安定性、吐出ヘッド
の目詰まりや吸引回復時のワイピングによるヘッド表面
の耐久性にも優れる被記録媒体に着色部を形成する方法
を提供することにある。
【0016】また、本発明の他の目的は、より一層色再
現範囲が広く、色の均一性にも優れ、ベタ部のスジムラ
の発生が良好な状態に抑制されたインクジェット記録物
を形成することができると共に、印字における信頼性、
具体的には、低温や高温環境での長期間の保存安定性、
吐出ヘッドの目詰まりや吸引回復時のワイピングによる
ヘッド表面の耐久性にも優れる液体組成物、該液体組成
物とインクとを組み合わせたインクセット、被記録媒体
に着色部を形成する方法、及びインクジェット記録装置
を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的は、下記の本発
明によって達成することができる。即ち、本発明は、色
材を含むインクと共に被記録媒体に付与されて該被記録
媒体上に着色部を形成するのに用いられる液体組成物で
あって、該液体組成物が、少なくとも溶媒と上記色材と
反応性を有する微粒子を少なくとも含み、且つ該微粒子
の、動的光散乱法により測定される液体組成物中での平
均粒子径が30〜200nmの範囲にあり、及び散乱強
度の10%累積値が10nm以上で、90%累積値が3
00nm以下であることを特徴とする液体組成物、ま
た、本発明は、色材を含むインクと、該色材と反応性を
有する微粒子を含む液体組成物とを少なくとも独立に備
えているインクセットであって、該液体組成物が、上記
の液体組成物であることを特徴とするインクセットであ
る。
【0018】また、本発明は、(i)色材を含むインク
を被記録媒体に付与する工程と、(ii)上記の液体組成
物を被記録媒体に付与する工程とを少なくとも有するこ
とを特徴とする被記録媒体に着色部を形成する方法であ
る。更に、本発明は、色材を含むインクを収容したイン
ク収容部と、該インクを吐出させるためのインクジェッ
トヘッドを備えた第1の記録ユニットと、上記の液体組
成物を収容した液体組成物収容部と、該液体組成物を吐
出させるためのインクジェットヘッドを備えた第2の記
録ユニットとを備えていることを特徴とするインクジェ
ット記録装置、また、色材を含むインクを収容したイン
ク収容部と、上記の液体組成物を収容した液体組成物収
容部と、上記インク収容部に収容されているインク、及
び上記液体組成物収容部に収容されている液体組成物を
各々独立に吐出させるためのインクジェットヘッドとを
備えていることを特徴とするインクジェット記録装置で
ある。
【0019】また、本発明は、色材を含むアニオン性又
はカチオン性のインクと共に被記録媒体に付与され、該
被記録媒体上に着色部を形成するのに用いられる請求項
1に記載の液体組成物であって、上記着色部の形成が、
上記液体組成物と上記インクとが液体の状態で接触し、
且つ液体組成物の微粒子表面に、インク中の色材がイン
ク中で有している分子状態と実質的に同等の分子状態を
保持しつつ吸着若しくは結合してなされることを特徴と
する液体組成物である。
【0020】本発明者らは、前記した従来技術の課題を
解決すべく鋭意検討の結果、色材を単分子状態で吸着す
る作用を有する微粒子を用い、且つ、該微粒子に効率的
に色材を吸着若しくは結合させるために該微粒子を溶媒
中に分散させ、インクと共に液体状態で用いることによ
り、色材と微粒子とを液−液状態で反応させることが可
能となり、その結果として、画像の濃度や彩度を向上さ
せることができることを見出して、本発明を為すに至っ
た。尚、本明細書において「色材と反応性を有する微粒
子」或いは「色材と微粒子との反応」における「反応」
とは、色材と微粒子との共有結合の他、イオン的結合、
物理的・化学的吸着、吸収、付着、その他の両者の相互
作用を意味するものとする。
【0021】
【発明の実施の形態】次に、好ましい実施の形態を挙げ
て本発明を更に詳しく説明する。本発明の一実施態様に
かかる液体組成物は、前記した通りの、色材を含むイン
クと共に被記録媒体に付与されて該被記録媒体上に着色
部を形成するのに用いられる液体組成物であって、該液
体組成物が、少なくとも溶媒と上記色材と反応性を有す
る微粒子とを含み、且つ該微粒子の、動的光散乱法によ
り測定される液体組成物中での平均粒子径が30〜20
0nmの範囲にあり、及び散乱強度の10%累積値が1
0nm以上で、90%累積値が300nm以下である。
そして、かかる液体組成物を用いて被記録媒体上に着色
部を形成する方法の好ましい実施態様としては、(i)
色材を含むインクを被記録媒体に付与する工程、及び
(ii)上記の液体組成物を被記録媒体に付与する工程と
を有し、且つ、上記被記録媒体の表面において、インク
と液体組成物とが互いに液体状態で接するように付与さ
れるように構成することが挙げられる。
【0022】更に、前記した本発明の目的を達成するこ
とのできるインクセットの一実施態様としては、色材を
含むインク及び上記構成を有する本発明にかかる液体組
成物とを組み合わせたものが挙げられる。かかる実施態
様を採用することによって、液体組成物は、優れた保存
安定性を示すと同時に、これを画像形成に用いること
で、一層広い色再現領域を有し、色の均一性にも優れ、
更にベタ部のスジムラが少ないインクジェット記録物を
安定して得ることを可能とする。
【0023】この際の記録に用いられるインクや液体組
成物自体は、上記したように、その構成が極めてシンプ
ルであり、加えて、本発明では、液体組成物に含有され
るインク中の色材と反応性を有する微粒子として、特定
の粒度分布を有するものが使用されているため、インク
は勿論、かかるインクと併用させる液体組成物の保存性
も優れたものとなる。更に、これらを用いて画像を形成
した場合には、吐出ヘッドの目詰まりが極めて有効に抑
制され、また、ワイピングによるヘッド表面(オリフィ
ス面)のキズの発生等が極めて有効に抑制され、優れた
画像耐久性が達成される。上記の結果、本発明によれ
ば、高品質且つ高信頼性のインクジェット記録を安定し
て行なうことができるという効果が得られる。
【0024】本発明によって上記したような優れた効果
が奏される理由は、明確ではないが、本発明者らは以下
の理由によるものと考えている。本発明者らは、これま
で、色材を含むインクと、該色材との反応性を有する微
粒子を含む液体組成物とからなるインクセットを用いた
画像形成方法において、これらが被記録媒体上で混ざり
合う際に、微粒子凝集物が被記録媒体表面、或いは被記
録媒体表面とその近傍に形成されるメカニズムについて
検討してている。
【0025】先ず、上記メカニズムについて、図13及
び図14に従って説明する。尚、ここでは、インクとし
てアニオン性基を有する水溶性染料(アニオン性染料)
を含む水性インクを用い、これと組み合わせる液体組成
物として、表面がカチオン性に帯電している微粒子が分
散状態で含まれている水性の液体組成物を用いた場合を
例に採って説明する。
【0026】説明に先立ち、言葉の定義を行う。ここで
「単分子状態」とは、染料や顔料等の色材が、インク中
で溶解若しくは分散した状態をほぼ保っていることを指
している。このとき、色材が多少の凝集を引き起こした
としても、彩度が低下しない範囲であれば、この「単分
子状態」に含まれることとする。例えば、染料の場合、
単分子であることが好ましいと考えられるため、便宜上
染料以外の色材についても「単分子状態」と呼ぶことと
する。
【0027】図13は、上記メカニズムに基づき形成さ
れた記録画像の着色部Iが、主画像部IMと、その周辺
部ISとから成り立っている状態を模式的に示した概略
断面図である。図13において、1301は被記録媒
体、1302は被記録媒体の繊維間に生じる空隙を示
す。また、1303は、色材1305が化学的に吸着す
る微粒子を模式的に示したものである。図13に示した
ように、本発明のインクジェット記録画像では、主画像
部IMは、色材1305が単分子状態或いはこれに近い
状態(以降これらを「単分子状態」と呼ぶ)で均一に表
面に吸着した微粒子1303と、かかる色材の単分子状
態を保持した微粒子の凝集物1307とで構成されてい
る。1309は、主画像部IM内の被記録媒体繊維近傍
に存在する、微粒子同士の凝集物である。このような主
画像部IMは、被記録媒体繊維に微粒子1303が物理
的又は化学的に吸着する過程と、色材1305と微粒子
1303とが液−液状態で吸着する過程とによって形成
される。そのため、色材自体の発色特性が損なわれるこ
とが少なく、しかも、普通紙等のインクの沈み込み易い
被記録媒体においても画像濃度や彩度が高く、コート紙
並みの色再現範囲の広い画像の形成が可能となる。
【0028】一方、微粒子表面1303に吸着されず、
インク中に残った色材1305は、被記録媒体1301
に対して横方向にも深さ方向にも浸透するため、周辺部
ISにインクは微少な滲みを形成する。このように被記
録媒体1301の表面近傍に色材が残り、且つ周辺部に
インクの微少な滲みを形成させるために、シャドウ部や
ベタ部等のインク付与量が多い画像領域においても、白
モヤや色ムラが少なく、色の均一性に優れる画像が形成
される。尚、図13に示したように、被記録媒体130
1がインクや液体組成物の浸透性を有するものである場
合には、本態様はインク成分や液体組成物成分の被記録
媒体内部への浸透は必ずしも妨げられるものではなく、
ある程度の浸透を許容するものである。
【0029】更に、液体組成物は、インク中の色材との
反応により、被記録媒体の表面近傍に存在する微粒子凝
集物1309が形成される際に、凝集物の内部に、ある
程度の大きさの細孔が形成される。前述のインク中で単
独に存在していた色材1305は、被記録媒体内部へと
インクが浸透していく際に、この微粒子凝集物1309
の細孔内部へと浸透し、細孔の入口付近や内壁に、理想
的な単分子状態で吸着されるので、色材は、より多く被
記録媒体の表面近傍に残留することになる。これによっ
て、より一層優れた発色性を有する記録物を得ることが
可能となる。
【0030】そして本発明者らは、このメカニズムにつ
いて更なる検討を重ねた結果、当該液体組成物中の微粒
子の粒度分布をより高度に制御することによって、本発
明に係る技術を実用化する上で、重要な特性の改善に大
きく寄与できることを見出した。そこで、本発明者ら
は、液体組成物中の微粒子に関して、例えば、液体組成
物の保存安定性や記録ヘッドのワイピング耐久等の特性
との有意な相関を示す粒度分布の規定方法について検討
を重ねた。その結果、動的散乱法等を用いて測定される
平均粒子径を規定するのみでは、上記した特性との有意
な相関を認めることができない場合があることがわかっ
た。この点に関し、本発明者らは、平均粒子径が、液体
組成物中の微粒子の実際の粒度分布を正確に表わしてい
ない場合があることを想定し、実際の粒度分布をより正
確に表現できるパラメータを導入することを考えた。具
体的には、動的光散乱法により得られる散乱強度を、ヒ
ストグラム法のMarquadt解析法で解析した際の頻度分布
から求まる粒度分布において、小粒径側から散乱強度を
累積していったときの10%及び90%のときの粒子径
が各々、10nm以上、300nm以下であって、且つ
平均粒子径が30〜200nmであるときに、上記特性
との有意な相関が認められることがわかった。本発明
は、かかる本発明者らの新たな知見に基づき為されたも
のである。
【0031】図14(1)〜(4)は、本発明にかかる
被記録媒体に着色部を形成する方法(以下、「着色部形
成方法」と呼ぶ)の一実施態様の着色部1400の概略
断面図、及びその形成過程を説明する模式図である。同
図において、1401は、インクと液体組成物との反応
物、例えば、色材と微粒子との反応物を主として含む部
分(以降「反応部」と略す)であり、図13の主画像部
IMに相当する部分である。1402は、液体組成物と
の反応に実質的に関与しなかったインクが、反応部14
01の辺縁に流出することによって形成された部分(以
降「インク流出部」と略す)であり、図13の周辺部I
Sに相当する。かかる着色部1400は、例えば、下記
のようにして形成される。尚、図14(1)に示した1
405は、被記録媒体の繊維間に生じている空隙を模式
的に表したものである。下記に述べるように、本発明の
液体組成物を使用する本発明にかかる着色部形成方法に
よれば、非常に高い画像濃度を有し、且つ彩度の高い記
録物が安定して得られるが、この理由は、以下に挙げる
メカニズムが奏合される結果、達成されたものと考えて
いる。
【0032】先ず、図14(1)に示したように、色材
と反応性を有する微粒子1409を有する液体組成物1
406が、液滴として被記録媒体1403に付与される
と、図14(2)に示したように、被記録媒体表面に液
体組成物の液溜り1407が形成される。該液溜り14
07内で、被記録媒体1403の繊維表面の近傍の微粒
子1409は、被記録媒体の繊維表面に物理的又は化学
的に吸着する。この時、分散状態が不安定となって微粒
子同士の凝集物1411を形成するものもあると考えら
れる。一方で、液溜り1407内の繊維より離れた部分
では、微粒子1409は、もとの均一な分散状態を保っ
ていると考えられる。
【0033】次いで、図14(2)に示したように、色
材1404を有するインク1413が、液滴として被記
録媒体1403に付与されると、先ず、インク1413
と液溜り1407の界面において、インク中の色材14
04は微粒子1409に化学的に吸着する(図14
(3)参照)。この反応は、液同士の反応(液−液反
応)であるため、図14(3)−2に示したように、色
材1404は単分子状態で、微粒子1409の表面に均
一に吸着すると考えられる。即ち、微粒子1409表面
では、色材1404同士は凝集を起こさないか、或いは
凝集しても僅かであると推測される。その結果、反応部
1401の表層部には、単分子状態で色材1404が吸
着された微粒子1409が多数形成される。この結果、
画像の発色に最も影響を与える表面層に、色材1404
が単分子状態で残存することとなるため、形成される画
像は、高い画像濃度を有し、且つ彩度の高いものとな
る。
【0034】更に、これらの色材1404が表面に吸着
した微粒子1409は、分散状態が不安定となるため、
微粒子同士で凝集するものと考えられる。ここで、形成
された凝集物1415は、図14(3)−2に示したよ
うに、その内部にも単分子状態の色材1404を保持し
たものとなる。かかる凝集物1415の存在によって、
本発明の着色部形成方法では、より高画像濃度で、且つ
高彩度の記録画像の形成が可能となる。
【0035】更に、未反応の色材1404の一部は、液
溜り1407内を拡散し、未反応の微粒子1409の表
面に吸着する。このように、液溜り1407内部で、色
材1404と微粒子1409との反応が更に進行するた
め、より高濃度で彩度の高い画像が形成される。一方、
先に説明した被記録媒体1403の繊維表面に形成され
た微粒子の凝集物1411には、液溜り1407の液相
が被記録媒体内への浸透を抑制する役割があると考えら
れる。このため、液溜り1407では、浸透が抑制され
た液体組成物中の微粒子1409と色材1404とがよ
り多く混在することが可能となる結果、色材1404と
微粒子1409との接触確率が高められ、反応が比較的
均一に、且つ充分に進行する。この結果、より均一で、
画像の濃度と彩度とに優れた画像の形成が可能となる。
【0036】また、図14(1)に示した液体組成物1
406が被記録媒体1403に付与された際や、図14
(2)に示した液体組成物の液溜り1407にインク1
413が付与された際には、微粒子1409を分散させ
ている分散媒が変化することによって微粒子1409の
分散が不安定となり、色材1404が吸着する前に微粒
子1409間で凝集を起こすものも存在する。ここでい
う分散媒の変化とは、2種若しくはそれ以上の異種の液
体が混合したときに一般的に観察される変化、例えば、
液相のpHや固形分濃度、液媒体(溶剤)組成、溶存イ
オン濃度等の物性変化を指し、液体組成物が被記録媒体
やインクと接触した際にこれらの変化が、急激且つ複合
的に生じて微粒子の分散安定性を破壊し、凝集物141
5を生成するものと考えられる。これらの凝集物141
5は、繊維間の空隙を埋める効果や、色材1404を吸
着した微粒子1409を、より被記録媒体1403の表
面近傍に残存させる効果をもたらすと推測される。
【0037】また、これら液溜り1407内で形成され
た凝集物1415は、被記録媒体1403に吸着してい
るものもあれば、液相内を動ける(流動性を有する)も
のも存在するが、流動性を有するものは、前述した色材
1404と微粒子1409との反応過程と同様に、微粒
子凝集物1415表面に色材が単分子状態で吸着し、よ
り大きな凝集塊を形成するが、これが発色性の向上に寄
与しているものと考えられる。即ち、この大きな凝集塊
は、液相が繊維に沿って浸透する際に液相と共に移動
し、空隙を埋めて被記録媒体1403の表面を平滑化
し、より均一で高濃度の画像の形成に寄与するものと考
えられる。
【0038】本発明によって、非常に高濃度且つ高発色
の画像が得られることは後述する結果により明らかであ
るが、以上、説明したように、これは、インクと、本発
明の液体組成物とが共に液−液状態で接触するように被
記録媒体に付与されると、インク中の色材1404が、
液体組成物の構成成分である微粒子1409若しくは微
粒子凝集物1415に、単分子状態で吸着され、その状
態で被記録媒体1403の表面近傍に残るためであると
考えられる。更に、色材が単分子状態で吸着し、被記録
媒体の表面近傍に残った微粒子は、この状態で被記録媒
体の表面に定着するので、形成される画像の耐擦過性等
の堅牢性も向上する。
【0039】尚、上記では、液体組成物及びインクの順
で、被記録媒体に付与した場合について説明したが、イ
ンクと液体組成物との液−液反応が達成されれば、イン
クと液体組成物との被記録媒体への付与順序は何ら限ら
れるものでない。従って、インクを付与し、次いで液体
組成物を付与する順であってもよい。
【0040】更に、図14(2)にも示した通り、被記
録媒体に付与された液体組成物中の微粒子1409の少
なくとも一部は、液体組成物の構成成分である液媒体の
被記録媒体内部への浸透に伴って、被記録媒体1403
内部に浸透していると考えられる。他方、図14(4)
に明示したように、色材1404が、先に浸透している
微粒子1409に、単分子状態で吸着若しくは結合する
ことも十分に想定し得ることである。このように、被記
録媒体内部において、色材1404が単分子状態で吸着
若しくは結合している微粒子1409も、発色性の向上
に寄与していると考えられる。更に、このような液媒体
の浸透によって、インクの定着性も向上すると考えられ
る。
【0041】また、本発明の液体組成物を用いることに
よって、前述の被記録媒体の表面近傍に存在する微粒子
凝集物1411が形成される際に、凝集物の内部に、あ
る程度の大きさの細孔が形成される。液溜り1407の
中で、微粒子1409に吸着しきれなかった色材140
4は、被記録媒体1403内部へと浸透していく際に、
液媒体成分と共に、細孔を通って微粒子凝集物1411
の内部へと浸透するものもある。その際、色材1404
は、微粒子凝集物内の細孔の入口付近や細孔内壁に吸着
し、溶媒成分のみが被記録媒体1403内部へと浸透し
ていくことによって、色材をより多く微粒子凝集物14
11の表面や内部に効率よく吸着させ、被記録媒体の表
面近傍に残留させることができる。更に、色材1404
が染料の場合、微粒子凝集物1411の細孔直径は、色
材1404のインク中で存在している分子サイズの1〜
数倍程度であるために、細孔内部に吸着した色材140
4は、色材同士の凝集を極めて起こし難く、理想的な単
分子状態を形成できる。このことが、発色性の更なる向
上に大きく寄与し、より一層広い色再現範囲を有する記
録物を得ることを可能とする。
【0042】そして、前記したように、液体組成物中の
微粒子の平均粒子径並びに粒度分布を特定の範囲内に制
御することにより、上記微粒子凝集物の細孔がより均一
に形成され、粗大粒子による光散乱も少なくなるため
に、より一層、白モヤやベタの色ムラが少なく、優れた
色再現範囲を有する記録物を得ることが可能となること
がわかった。また、同時に、かかる場合には、液体組成
物が均一な微粒子分散体となるため、微粒子の凝集やチ
クソトロピーが起こり難くなり、低温や高温環境におい
ても、長期間の保存安定性や吐出ヘッドの目詰まり抑制
に優れ、更に、吸引回復時のヘッド表面のワイピングに
よるキズも抑制され、優れた耐久性及び信頼性をも有す
る画像形成が可能となることを見出した。
【0043】尚、本発明者らは、微粒子凝集物1411
の細孔物性は、液体組成物1406中に含まれる微粒子
1409だけでなく、液体組成物やインクを構成してい
る液媒体組成等によっても影響されることを見出した。
即ち、液体組成物から微粒子凝集物を形成し、この微粒
子凝集物の、ある特定の細孔半径領域において測定した
細孔容積は、被記録媒体上で形成される画像形成能と非
常に相関性が高く、本発明の構成においても、液体組成
物に、所定の前処理を施すことで得られる微粒子凝集物
の細孔半径及び細孔容積が、後述する特定の範囲内とな
るように制御することが、より好ましい態様の一つとな
る。
【0044】また、本発明者らの検討によれば、先に説
明したように、本発明の好ましい形態では、被記録媒体
表面で、液体組成物中の微粒子と、インク中の色材とを
液相で反応させるように構成しているため、例えば、イ
ンクをアニオン性若しくはカチオン性の水性インクと
し、且つ、これと併用する液体組成物を、かかる水性イ
ンクに対して逆極性に表面が帯電している微粒子を分散
状態で含む水性の液体組成物とした場合に、特に良好な
結果が得られることがわかった。即ち、例えば、インク
中の色材がアニオン性であるときは、液体組成物中の微
粒子としてカチオン性のものを使用すれば、極めて効率
的に、液体組成物中の微粒子表面に色材が吸着すること
となる。これに対し、インクジェット用コート紙を用い
ることによって本発明と同程度の色材吸着を達成しよう
とすると、多量のカチオン性多孔質微粒子が必要とな
り、基紙を覆い隠すような厚いインク受容層の形成が不
可欠となる。このため、コート紙を用いた場合には、基
紙の質感を損ねる結果に繋がる。この場合と比較し、本
発明の液体組成物を用いての2液型の画像形成では、液
体組成物を構成する微粒子の量は少なくてすむため、被
記録媒体の質感を損ねることなく、印字部と未印字部で
質感において違和感のない良好な画像形成が可能とな
る。
【0045】更に、前述した(1)の従来技術のよう
に、色材自体の被記録媒体表面での残存量が十分でなか
ったり、前述した(2)の従来技術のように、色材の被
記録媒体表面での残存量が十分であっても、色材同士の
凝集により色の再現範囲や彩度が十分得られなかったり
したのに対し、先に述べたように、本発明の構成によっ
て得られるメカニズムでは、微粒子表面に吸着した色材
が、微粒子と共に被記録媒体表面に残り、しかも、それ
らの色材が単分子状態を保持しているため、高発色な画
像を得ることが可能となる。
【0046】また、本発明は、微粒子を含む液体組成物
と、色材を有するインクとを被記録媒体の表面に付与し
て画像を形成するという点において、前記した従来技術
において(3)に挙げて説明した、インクに微粒子含有
液体組成物を外添する方法と一見類似しているかのよう
に見える。しかし、前記したように、本発明では、液体
組成物と色材とを積極的に反応させ、液体組成物中の微
粒子を色材の凝集(レーキ)を抑える手段として用いて
いるのに対し、先に(3)で説明した従来技術では、微
粒子を含む溶液の付与の目的は、被記録媒体の表面状態
の改質であり、全く異なる。即ち、従来技術において
は、液体組成物中の微粒子とインク中の色材との間で化
学的な反応を生じさせる本発明の技術的な思想は、何ら
開示されていない。そして、そのメカニズムの差異に基
づくと推測される、これらの従来の記録技術にかかる記
録物と、本発明によって得られる記録物との品質の差異
は明白なものであり、本発明によれば、画像の濃度と彩
度とに非常に優れ、しかも定着性等の画像特性にも優れ
た画像が得られる。
【0047】以下、本発明の液体組成物の構成成分、こ
れと共に用いるインクの構成成分、及び本発明で使用す
る測定方法について詳細に説明する。先ず、本明細書に
おけるカチオン性のインク若しくはアニオン性のインク
の定義について述べる。インクのイオン特性について言
うとき、インク自体は荷電されておらず、それ自体では
中性であることは、当該技術分野においてよく知られて
いることである。ここでいうアニオン性のインク若しく
はカチオン性のインクとは、インク中の成分、例えば、
色材がアニオン性基若しくはカチオン性基を有し、イン
ク中において、これらの基がアニオン性基又はカチオン
性基として挙動するように調整されているインクを指す
ものである。また、アニオン性又はカチオン性の液体組
成物に関しても、その意味は上記と同様である。
【0048】<液体組成物> 先ず、本発明の液体組成物について説明する。 (微粒子凝集物)先に記録のメカニズムで述べたが、本
発明の液体組成物を画像形成に用いた場合においては、
含有されている特定の微粒子によって被記録媒体の表面
近傍に微粒子凝集物が形成されるが、かかる凝集物の内
部には、ある程度の大きさの細孔が形成される。する
と、インク中で単独に存在していた色材は、被記録媒体
内部へとインクが浸透していく際に、この微粒子凝集物
の細孔内部へと浸透し、細孔の入口付近や内壁に、理想
的な単分子状態で吸着されるので、色材は、より多く被
記録媒体の表面近傍に残留することになり、これによっ
て、より一層優れた発色性を有する記録物を得ることが
可能となる。
【0049】従って、本発明の液体組成物は、画像形成
の際に、微粒子凝集物内に適度な細孔が形成されるよう
に構成することが好ましい。ここで、液体組成物中に含
有される微粒子によって形成される細孔は、下記の方法
で測定することができる。即ち、少なくとも微粒子と溶
媒を含む液体組成物から得られる微粒子凝集物につい
て、下記の方法で、ある特定の細孔半径領域における細
孔容積を測定し、かかる値が好適な範囲内となるように
構成することによって、上記した記録のメカニズムが実
行され、良好な画像形成が可能となる。これらの微粒子
凝集物の物性を測定するにあたっては、先ず、測定対象
である液体組成物を以下の手順で前処理する。
【0050】(1)微粒子が含有されている液体組成物
を大気雰囲気下120℃で10時間乾燥して、ほぼ溶媒
分を蒸発させて乾燥する。 (2)上記乾燥物を120℃から700℃まで1時間で
昇温させた後、700℃で3時間焼成する。 (3)焼成後、上記焼成物を徐々に常温に戻し、例えば
メノウ乳鉢等を用いて焼成物を粉体化する。 ここで、上記前処理を施す理由は、乾燥によって液体組
成物から微粒子凝集物を形成させ、焼成によって液体組
成物中の溶媒成分を完全に除去して、凝集物の内部の細
孔を空にして空隙を形成するためである。
【0051】本発明では、微粒子凝集物の細孔の細孔半
径と細孔容積の測定方法として、窒素吸着脱離法を好適
に用いる。そして、特に、このような方法で測定した微
粒子凝集物の細孔のサイズが、細孔半径が3〜30nm
の領域における細孔容積が0.4ml/g以上で、細孔
半径が30nmを超える領域での細孔容積が0.1ml
/g以下となるように構成した場合に、凝集物の細孔内
部への色材や溶媒成分の浸透により、色材の吸着が好適
に生じ、且つ、発色性も良好に保たれるため、良好な画
像形成が可能となることがわかった。
【0052】従って、上記のような前処理を測定対象の
液体組成物に行った場合に形成される微粒子凝集物につ
いて、細孔半径が3〜30nmの領域と、30nmを超
える領域での細孔容積を測定することが、液体組成物を
用いて形成した形成画像の発色性能の測定方法として効
果的である。この領域における細孔物性の測定方法とし
ては、窒素吸着脱離法による方法が最も好ましい。細孔
半径と細孔容積は、上記した前処理した液体組成物試料
を120℃で8時間真空脱気した後、窒素吸着脱離法よ
りBarrettらの方法(J.Am.Chem.Soc.,Vol73,373,19
51)から求めることができる。更に好ましい測定方法
は、微粒子凝集物に形成された細孔について、細孔半径
が3〜20nmの領域と、20nmを超える領域での細
孔容積を測定することである。この範囲では、色材が染
料である場合に、特に、より一層の発色性の向上が得ら
れるため、かかる発色性能を測定するうえで好ましい。
【0053】(微粒子凝集物の細孔半径及び細孔容積)
微粒子凝集物の細孔半径は、前述の如く、色材の速やか
な浸透と細孔入口付近や内壁への吸着及び細孔内部での
色材の凝集を防ぐ観点から、3〜30nmの範囲である
ことが好ましいと考えられる。また、発色性の向上に寄
与するだけの色材を内部に取り込むためには、同時に、
ある程度の容量が必要である。また、細孔容積が増すこ
とで微粒子凝集物内の細孔の数も増加すると考えられ、
細孔内部への色材の吸着量だけでなく、細孔の入口付近
での吸着量も増加すると考えられる。
【0054】よって、これらの観点から、本発明に好適
に用いられる液体組成物は、前記したような方法で微粒
子凝集物内の細孔を測定した場合に、細孔半径が3〜3
0nmの範囲における細孔容積が0.4ml/g以上
で、細孔半径が30nmを超える領域での細孔容積が
0.1ml/g以下であるものが好ましい。即ち、本発
明の液体組成物を構成する際に、微粒子凝集物内の細孔
半径及び細孔容積を上記この範囲とすることによって、
微粒子凝集物の細孔内部への色材や溶媒成分の浸透によ
り、色材の吸着がより効率的になり、発色性のより一層
の向上を図ることができる。
【0055】更に、より好ましい範囲としては、細孔半
径が3〜20nmの範囲における細孔容積が0.4ml
/g以上で、細孔半径が20nmを超える領域での細孔
容積が0.1ml/g以下であるように構成する。細孔
が3〜20nmの半径の範囲の細孔が多く存在すること
によって、発色性は更に向上し、より一層広い色再現範
囲を有する画像が形成できる。液体組成物から形成され
る微粒子凝集物の細孔半径や細孔容積は、含まれる微粒
子の化学種や形状、大きさばかりでなく、溶剤種やその
他の添加物及びそれらの組成比等により変化し、これら
の条件を制御することによって微粒子凝集物の形成状態
をコントロールできると考えられる。
【0056】(微粒子の作用)本発明を特徴づける本発
明の液体組成物中に含まれる微粒子に望まれる作用とし
ては、下記の(1)及び(2)等が挙げられるが、これ
らの作用は、1種若しくは2種以上の微粒子によって達
成されてもよい。 (1)インクと混合した際に、色材の本来有する発色性
を損なうことなく色材を粒子表面に吸着できること。 (2)インクと混合された際、或いは被記録媒体に付与
された際に、分散安定性が低下して、被記録媒体の表面
に残存すること。
【0057】上記した(1)の作用を満たすために、微
粒子が有すると好ましい性質としては、例えば、微粒子
が、組み合わせて使用される色材と逆のイオン性を呈す
るものであることが挙げられる。かかる性質を有する微
粒子を用いれば、色材は、微粒子表面に静電的に吸着す
る。例えば、インクに用いる色材がアニオン性である場
合は、カチオン性の微粒子を用い、逆に、色材がカチオ
ン性の場合は、アニオン性の微粒子を用いればよい。上
記したイオン性以外の色材を吸着する要素としては、微
粒子のサイズや重量、或いは表面の形状が挙げられる。
例えば、表面に多数の細孔を持つ多孔質微粒子は、特有
の吸着特性を示し、細孔の大きさや形状等の複数の要素
によって、色材を良好に吸着できるものとなる。
【0058】前記した(2)の作用は、インクや被記録
媒体との相互作用によって引き起こされる。このため、
各構成により達成されればよいが、例えば、微粒子の性
質として、インク組成成分や被記録媒体構成成分と逆の
イオン性を呈することが挙げられる。また、インク中、
或いは液体組成物中に、電解質を共存させることによっ
ても微粒子の分散安定性は影響を受ける。本発明におい
ては、前記した(1)と(2)の作用の何れか一方が、
インクと液体組成物とが混合された場合に瞬時に得られ
るように構成することが望ましい。更には、前記した
(1)と(2)の両方の作用が、インクと液体組成物と
が混合された場合に瞬時に得られるように構成すること
がより好ましい。
【0059】(微粒子の平均粒子径・粒度分布)本発明
の液体組成物は、液体組成物中に分散している微粒子の
平均粒子径及び粒度分布に特徴がある。具体的には、動
的光散乱法により測定される微粒子の平均粒子径が30
〜200nmの範囲であり、且つ散乱強度の10%累積
値が10nm以上で、90%累積値が300nm以下で
あるものを用いることを特徴とする。ここでいう平均粒
子径とは、動的光散乱法により検出された微粒子に起因
する散乱強度分布を正規分布に当てはめて平均粒子径を
算出するキュムラント解析法により求めたものである。
また、粒度分布は、動的光散乱法により検出された散乱
強度を、ヒストグラム法のMarquadt解析法で解析した際
の頻度分布から求められ、小粒径側から散乱強度を累積
した際の10%と90%の時の粒子径から、微粒子の粒
度分布を求めている。これらの測定は、例えば、大塚電
子(株)製の電気泳動光散乱光度計ELS−8000等
の、動的光散乱法により粒度分布を測定できる装置を好
適に用いることができる。また、上記の解析処理は、付
属のソフトウェアにより処理することができる。
【0060】本発明にかかる液体組成物は、構成する微
粒子の平均粒子径及び粒度分布が上記範囲内にあること
により、液体組成物の分散安定性が向上し、低温及び高
温環境下で長期間保存しても微粒子の凝集や沈降、チキ
ソトロピーの発現等が起こりにくくなる。更に、本発明
の液体組成物中には300nmを超える粗大粒子が少な
いため、連続印字時や吸引回復時に行う記録ヘッド表面
のワイピングによってキズが発生するのを効果的に抑制
でき、記録ヘッドの耐久性が飛躍的に向上する。
【0061】また、本発明の液体組成物は、該組成物を
構成する微粒子の粒子サイズが揃っているために、先に
述べた被記録媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔が
均一に形成され易く、粗大粒子による光散乱も少ないた
めに、インクと共に画像形成に用いると、色材が効率よ
く吸着すると共に発色効率も高まり、より一層の広い色
再現範囲を有する記録画像を形成できる。更に、微粒子
や微粒子凝集物に対して色材の吸着状態がより均一にな
ることで、一次色だけでなく二次色等の打ち込み量の多
いベタ画像部においても、均一性や色ムラ、スジムラ等
が良好な画像が得られる。つまり、微粒子の平均粒子径
が30〜200nmの範囲にあり、且つ散乱強度の10
%累積値が10nm以上で、90%累積値が300nm
以下のものを用いることで、上記したように発色性の良
好な画像を形成するために好ましい微粒子凝集物、特に
好ましくは、細孔半径が3〜30nmの範囲における細
孔容積が0.4ml/g以上で、細孔半径が30nmを
超える領域での細孔容積が0.1ml/g以下、更に好
ましくは、細孔半径が3〜20nmの範囲における細孔
容積が0.4ml/g以上で、細孔半径が20nmを超
える領域での細孔容積が0.1ml/g以下のものが形
成されるものと考えられる。
【0062】本発明の液体組成物中に分散している微粒
子の平均粒子径及び粒度分布のより好ましい範囲として
は、微粒子の平均粒子径が50〜120nmの範囲であ
り、且つ散乱強度の10%累積値が20nm以上で、9
0%累積値が250nm以下である。この範囲では、上
記の信頼性や画像特性がより一層向上すると同時に、記
録ヘッドのノズル内での目詰まりにも優れたものとな
る。
【0063】以下、本発明にかかる液体組成物の好まし
い形態である、カチオン性或いはアニオン性のイオン性
微粒子を含有するものに関して、夫々具体的に説明す
る。 [カチオン性液体組成物]本発明にかかる液体組成物の
カチオン性のものとしては、例えば、カチオン性基を表
面に有する微粒子と酸を含み、該微粒子が安定に分散さ
れてなる液体組成物が挙げられる。本発明において好適
なカチオン性の液体組成物としては、例えば、酸を含
み、そのpHが2〜7に調整されたものや、或いは、ゼ
ータ電位が+5〜+90mVのものが挙げられる。
【0064】(pH及びゼータ電位について)ここで、
液体組成物のゼータ電位について述べる。先ず、ゼータ
電位の基本原理について説明する。一般に、固体が液体
中に分散している系において、固相の表面に遊離電荷が
ある場合、固相界面付近の液相には、反対電荷の荷電層
が電気的中性を保つように現れる。これは、電気的二重
層と呼ばれ、この電気的二重層による電位差のことをゼ
ータ電位と呼んでいる。ゼータ電位がプラスである場
合、微粒子の表面はカチオン性を示し、マイナスではア
ニオン性を示す。一般に、その絶対値が高いほど微粒子
間に働く静電的反発力が強くなり、分散性がよいと言わ
れ、同時に微粒子表面のイオン性が強いことが考えられ
る。即ち、カチオン性微粒子では、ゼータ電位が高いほ
どカチオン性が強く、インク中のアニオン性化合物を引
き付ける力が強いと言える。
【0065】更に、本発明者らは、画像形成に用いる液
体組成物のゼータ電位と、形成される画像の画質との関
係について検討した結果、ゼータ電位が+5〜+90m
Vの範囲にあるカチオン性の液体組成物を用いた場合に
は、被記録媒体上に形成してなる着色部が、特に優れた
発色特性を呈することを見出した。その理由は定かでは
ないが、おそらく、微粒子のカチオン性が適度であるた
めに、急速なアニオン性化合物(アニオン性色材)の凝
集が起こらずにアニオン性化合物が微粒子表面に薄く均
一に吸着するので、色材が巨大なレーキを形成しにく
く、その結果、色材本来の発色特性がより良好な状態で
発現されるものと考えられる。更に、本発明にかかるカ
チオン性の液体組成物では、アニオン性化合物を微粒子
表面に吸着した後も、微粒子が弱いカチオン性を呈しつ
つ分散不安定状態となることで、微粒子が凝集しなが
ら、被記録媒体中に存在するアニオン性のセルロース繊
維等の表面に容易に吸着して、被記録媒体の表面近傍に
残り易くなっていると考えられる。
【0066】この結果、以下に挙げる、優れた効果が得
られるものと考えられる。即ち、本発明にかかるカチオ
ン性の液体組成物を使用することによって、インクジェ
ット用コート紙並みの優れた発色特性と、シャドウ部や
ベタ部等のインク付与量が多い画像領域において、白モ
ヤや色ムラが少なく、色の均一性に優れたものとなる。
また、コート紙と比べて極めて効率よく微粒子表面に、
色材等のアニオン性化合物が吸着し発色するために、カ
チオン性微粒子の付与量も少なくできるので、とりわけ
普通紙に印字した場合には、紙の風合いを損なうことが
なく、良好な画像が得られる。より好ましいゼータ電位
の範囲としては、例えば、ゼータ電位が+10〜+85
mVの範囲にあるカチオン性微粒子を含む液体組成物を
使用した場合には、ベタ印字した際にドット間の境界が
目立ち難くなり、ヘッドスキャンによるスジムラのより
一層の低減を達成することができる。更に、ゼータ電位
が+15〜+65mVの範囲にあるカチオン性微粒子を
含む液体組成物を使用すると、紙種に因らず、極めて優
れた発色性を有する画像を得ることが可能となる。
【0067】本発明にかかるカチオン性の液体組成物の
pHは、保存安定性とアニオン性化合物の吸着性の観点
から、25℃付近で2〜7の範囲にあることが好まし
い。このpHの範囲内においては、アニオン性のインク
と混合した際に、アニオン性化合物の安定性を著しく低
下させることがないため、アニオン性化合物同士の強い
凝集を引き起こすことがなく、記録画像の彩度が下がっ
たり、くすんだ画像となることを有効に防止することが
できる。また、上記範囲内であるとカチオン性微粒子の
分散状態も良好となるので、液体組成物の保存安定性や
記録ヘッドからの吐出安定性を良好に維持することがで
きる。更には、インクと混合した際に、アニオン性物質
がカチオン性微粒子表面に十分に吸着されるので、被記
録媒体内部への色材の過度の浸透が抑えられ、優れた発
色性のインクジェット記録物を得られる。より好ましい
pHの範囲としては、pHが3〜6であり、この範囲で
は、長期保存による記録ヘッドの腐食を極めて有効に防
止できると共に、印字部の耐擦過性もより一層向上す
る。
【0068】(カチオン性微粒子)次に、本発明にかか
るカチオン性の液体組成物を構成する成分について述べ
る。第1の成分として挙げられるカチオン性の微粒子
は、前記した作用効果を達成するために、液体組成物中
に分散された状態において、微粒子自体の表面がカチオ
ン性を呈することを要する。表面をカチオン性とするこ
とによって、アニオン性のインクと混合した際に、アニ
オン性の色材が粒子表面に速やかに吸着し、色材の被記
録媒体内部への過度の浸透が抑えられるので、十分な画
像濃度のインクジェット記録物が得られる。これに対
し、微粒子表面がカチオン性でなく、且つ液体組成物の
中で、水溶性のカチオン性化合物と別々に存在している
ような場合には、カチオン性化合物を中心に色材が凝集
を起こし、色材自体の発色特性を損なうために、インク
ジェット用コート紙並みの発色性を達成することは困難
となる。そのため、本発明の液体組成物に用いられる微
粒子は、その表面がカチオン性である必要があるが、本
質的にカチオン性である微粒子は勿論のこと、本来は静
電的にアニオン性或いは中性である微粒子であっても、
処理によって表面がカチオン化された微粒子であれば、
本発明の液体組成物の構成材料として好適に用いること
ができる。
【0069】本発明で好適に用いられるカチオン性微粒
子としては、被記録媒体上で形成されるこれらの微粒子
による凝集物に細孔が形成されるものであれば本発明の
目的を十分に達成できるので、特に微粒子の材料種に限
定はない。一例として具体例を挙げるとすれば、例え
ば、カチオン化した、シリカ、アルミナ、アルミナ水和
物、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカボリア、セ
リア、マグネシア、シリカマグネシア、炭酸カルシウ
ム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト
等や、これらの複合微粒子や有機微粒子、無機有機複合
微粒子等が挙げられる。そして、本発明の液体組成物に
おいては、これらの中から単独で、或いは2種以上を混
合して使用することができる。
【0070】上記した中でもアルミナ水和物からなる微
粒子は、特に、粒子表面が正電荷を有しているため好ま
しく、更に、X線回折法でべーマイト構造を示すアルミ
ナ水和物を用いれば、優れた発色性や色の均一性、保存
安定性等の点で好ましい。アルミナ水和物は、下記の一
般式により定義される。Al23-n(OH)2n・mH2
O但し、上記式中、nは0〜3の整数の一つを表し、m
は0〜10、好ましくは0〜5の値を有する。mH2
の表現は、多くの場合に結晶格子の形成に関与しない脱
離可能な水相を表すものであり、そのために、mは、整
数でない値をとることもできる。但し、mとnは同時に
0とはならない。
【0071】一般に、ベーマイト構造を示すアルミナ水
和物の結晶は、その(020)面が巨大平面を形成する
層状化合物であり、X線回折図形に特有の回折ピークを
示す。完全ベーマイトの他に、擬ベーマイトと称する、
過剰な水を(020)面の層間に含んだ構造をとること
もできる。この擬ベーマイトのX線回折図形は、完全ベ
ーマイトよりもブロードな回折ピークを示す。
【0072】ベーマイトと擬ベーマイトとは、明確に区
別のできるものではないので、本発明では特に断わらな
い限り、両者を含めてベーマイト構造を示すアルミナ水
和物(以下、単にアルミナ水和物)という。(020)
面が面間隔及び(020)の結晶厚さは、回折角度2θ
が14〜15°に現れるピークを測定して、ピークの回
折角度2θと半値幅Bから、面間隔は、ブラッグ(Brag
g)の式で、結晶厚さはシェラー(Scherrer)の式を用
いて求めることができる。(020)の面間隔は、アル
ミナ水和物の親水性・疎水性の目安として用いることが
できる。本発明で用いるアルミナ水和物の製造方法とし
ては、特に限定されないが、ベーマイト構造をもつアル
ミナ水和物を製造できる方法であれば、例えば、アルミ
ニウムアルコキシドの加水分解や、アルミン酸ナトリウ
ムの加水分解等の公知の方法で製造することができる。
【0073】特開昭56−120508号公報に開示さ
れているように、X線回折的に無定形のアルミナ水和物
を、水の存在下で50℃以上で加熱処理することによっ
てベーマイト構造に変えて用いることができる。特に好
ましく用いることができる方法は、長鎖のアルミニウム
アルコキシドに対して酸を添加して加水分解・解膠を行
うことによってアルミナ水和物を得る方法である。ここ
で、長鎖のアルミニウムアルコキシドとは、例えば、炭
素数が5以上のアルコキシドであり、更に炭素数12〜
22のアルコキシドを用いると、後述するように製造過
程におけるアルコール分の除去及びアルミナ水和物の形
状制御が容易になるため好ましい。
【0074】上記において、長鎖のアルミニウムアルコ
キシドに対して添加する酸としては、有機酸及び無機酸
の中から1種又は2種以上を自由に選択して用いること
ができるが、加水分解の反応効率及び得られたアルミナ
水和物の形状制御や分散性の点で、硝酸を用いることが
最も好ましい。この工程の後に、水熱合成等を行って粒
子径を制御することも可能である。硝酸を含むアルミナ
水和物の分散液を用いて水熱合成を行うと、水溶液中の
硝酸がアルミナ水和物表面に硝酸根として取り込まれ、
該水和物の水分散性を向上させることができる。また、
水熱合成の後、アルミナ水和物スラリーに適宜酸を加え
pH調整し、濃縮することで、少量の酸濃度で極めて安
定な高固形分濃度のアルミナ水和物スラリーを調製する
ことができる。こうしたスラリーを用いた場合は後述す
る酸を別途外添する必要はなく、アルミナ水和物微粒子
の分散安定性に優れた液体組成物を作製することができ
る。
【0075】上記した長鎖のアルミニウムアルコキシド
の加水分解によるアルミナ水和物の方法は、アルミナヒ
ドロゲルやカチオン性アルミナを製造する方法と比較し
て、各種イオン等の不純物が混入し難いという利点があ
る。更に、長鎖のアルミニウムアルコキシドは、加水分
解後の長鎖のアルコールが、例えば、アルミニウムイソ
プロキシド等の短鎖のアルコキシドを用いる場合と比較
して、アルミナ水和物の脱アルコールを完全に行うこと
ができるという利点もある。上記した方法においては、
加水分解の開始時の溶液のpHを6未満に設定すること
が好ましい。pHが8を超えると、最終的に得られるア
ルミナ水和物が結晶質になるので、好ましくない。
【0076】また、本発明で用いられるアルミナ水和物
としては、X線回折法でベーマイト構造を示すものであ
れば、二酸化チタン等の金属酸化物が含有されたアルミ
ナ水和物を用いることもできる。二酸化チタン等の金属
酸化物の含有比率は、アルミナ水和物の0.01〜1.
00質量%であれば光学濃度が高くなるので好ましく、
より好ましくは0.13〜1.00質量%であり、この
ようなものを使用すれば、色材の吸着速度が速くなっ
て、滲みやビーディングが発生し難くなる。更に、上記
における二酸化チタンは、チタンの価数が+4価である
ことが必要である。二酸化チタンの含有量は、硼酸に融
解してICP法で調べることができる。また、アルミナ
水和物中の二酸化チタンの分布とチタンの価数はESC
Aを用いて分析することができる。
【0077】例えば、アルミナ水和物の表面をアルゴン
イオンで100秒及び500秒エッチングして、チタン
の含有量の変化を調べることができる。二酸化チタン
は、チタンの価数が+4価よりも小さくなると、二酸化
チタンが触媒として働くようになって、得られる印字物
の耐候性が低下したり、印字部の黄変が起こり易くなる
ことがある。
【0078】二酸化チタンの含有はアルミナ水和物の表
面近傍だけでもよく、内部まで含有していてもよい。ま
た、含有量が表面から内部にかけて変化していてもよ
い。表面のごく近傍にのみ二酸化チタンが含有されてい
ると、アルミナ水和物の電気的特性が維持され易いの
で、更に好ましい。
【0079】二酸化チタンを含有したアルミナ水和物を
製造する方法としては、例えば、学会出版センター刊
「表面の科学」第327頁(田丸謙二編、1985年)
に記載されているような、アルミニウムアルコキシドと
チタンアルコキシドの混合液を加水分解して、製造する
方法が好ましい。その他の方法としては、前記アルミニ
ウムアルコキシドとチタンアルコキシドとの混合液を加
水分解するときに、結晶成長の核としてアルミナ水和物
を添加して製造する方法が挙げられる。
【0080】二酸化チタンの代わりに、シリカ、マグネ
シウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜
鉛、硼素、ゲルマニウム、錫、鉛、ジルコニウム、イン
ジウム、燐、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、
モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、
ニッケル、及びルテニウム等の酸化物を含有させたもの
を用いることもできる。例えば、シリカを含有したアル
ミナ水和物を用いると、印字部の耐擦過性の向上に効果
がある。
【0081】本発明の液体組成物の製造に好適に用いら
れるアルミナ水和物としては、その(020)面の面間
隔が0.614〜0.626nmの範囲のものが好適に
用いられる。この範囲内では液体組成物中でのアルミナ
水和物粒子の分散安定性が良好で、保存安定性や吐出安
定性に優れた液体組成物が得られる。この理由は定かで
ないが、(020)面の面間隔が上記範囲内にあるもの
は、アルミナ水和物の疎水性及び親水性の量比率が適度
な範囲であるため、液体組成物中で粒子同士の適度な反
発による分散安定や、吐出口内部での濡れ性のバランス
が適度であることにより、液体組成物の吐出安定性が良
好になるものと推測している。
【0082】また、本発明で使用するアルミナ水和物と
しては、その(020)面の結晶厚さが4.0〜10.
0nmの範囲のものが好ましい。この範囲内であると、
透明性や色材の吸着性に優れるからである。本発明者ら
の知見によれば、(020)面の面間隔と(020)面
の結晶厚さは相関があるので、(020)面の面間隔が
上記範囲内であれば、(020)面の結晶厚さを4.0
〜10.0nmの範囲に調整することができる。
【0083】更に、上記アルミナ水和物や金属アルミニ
ウム、アルミニウム塩等をか焼等の熱処理することによ
り作製されるアルミナ(酸化アルミニウム)も同様に正
電荷を持つため、好適に用いられる。アルミナとして
は、α型、γ型、更に、δ、χ、η、ρ、β型等の結晶
状態を持つものがあり、表面がカチオン性に保たれた形
で、水中にて安定的に分散するものであれば何れも用い
ることができる。中でもγ型は、表面が活性で、色材の
吸着力が高く、比較的微粒化された安定な微粒子分散体
も形成し易いため、発色性や保存性、吐出安定性等に優
れ、好適に用いることができる。
【0084】(カチオン性微粒子の細孔物性・形状)ま
た、本発明で使用する上記したようなカチオン性微粒子
は、被記録媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔を効
率的に形成すると同時に、微粒子自体の表面に色材を効
率よく吸着させるうえにおいて、上記窒素吸着脱離法に
おける微粒子の極大細孔半径が2〜12nmで、全細孔
容積が0.3ml/g以上であるものが好ましい。より
好ましくは、微粒子の極大細孔半径が3〜10nmで、
全細孔容積が0.3ml/g以上であるものが、被記録
媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔が、目的とする
細孔半径領域において効果的に形成され易いため好まし
い。
【0085】本発明で使用する上記微粒子は、そのBE
T比表面積が70〜300m2/gの範囲内であると、
微粒子表面への色材の吸着点が十分に存在することによ
って、単分子状態で色材をより効果的に被記録媒体の表
面近傍に残し易くなり、発色性の向上に寄与できるの
で、好ましい。
【0086】また、本発明で使用する微粒子の形状は、
微粒子をイオン交換水に分散させてコロジオン膜上に滴
下して測定用試料を作製し、透過型電子顕微鏡で観察し
て求めることができる。本発明においては、被記録媒体
上で微粒子凝集物を形成させる際に凝集物内に細孔を形
成させる点で、微粒子形状が、針状や平板形状、若しく
は、球状の1次粒子が、ある方向性を持って繋がった二
次粒子を形成している、棒状やネックレス状等の非球形
状のものを好適に用いることができる。
【0087】本発明者らの検討によれば、平板状の形状
のものの方が、針状や毛状束(繊毛状)よりも水への分
散性がよく、微粒子凝集物を形成した場合に、微粒子の
配向がランダムになるために細孔容積が大きくなるの
で、より好ましい。ここで毛状束形状とは、針状の微粒
子が側面同士を接して髪の毛の束のように集まった状態
をいう。特に、本発明で好ましく用いることができるア
ルミナ水和物の中でも、擬ベーマイトには、前記文献
(Rocek J.,et.al,Applied Catalysis,74巻、29〜
36頁、1991年)に記載されたように、繊毛状とそ
れ以外の形状があることが一般に知られている。
【0088】平板形状の粒子のアスペクト比は、特公平
5−16015号公報に定義されている方法で求めるこ
とができる。アスペクト比は、粒子の厚さに対する直径
の比で示される。ここで直径とは、アルミナ水和物を、
顕微鏡又は電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積
と等しい面積を有する円の直径を示すものとする。縦横
比はアスペクト比と同じように観察して、平板面の最小
値を示す直径と最大値を示す直径の比で表わされる。ま
た、毛状束形状の場合には、アスペクト比を求める方法
は、毛状束を形成する個々の針状のアルミナ水和物粒子
を円柱として、上下の円の直径と長さをそれぞれ求め
て、その比をとって求めることができる。最も好ましい
アルミナ水和物の形状は、平板状では、平均アスペクト
比が3〜10の範囲のものが、毛状束では、平均アスペ
クト比が3〜10の範囲が好ましい。平均アスペクト比
が上記範囲内であれば、微粒子凝集物を形成したとき
に、粒子間に隙間が形成され易いため多孔質構造を容易
に形成することができる。
【0089】本発明にかかるカチオン性の液体組成物中
における上記したようなカチオン性微粒子の含有量とし
ては、使用する物質の種類により、最適な範囲を適宜決
定すればよいが、質量基準で0.1〜40%の範囲が本
発明の目的を達成するうえで好適な範囲であり、より好
ましくは1〜30%、更には3〜15%の範囲が好適で
ある。このような範囲内では、紙種に因らず、優れた発
色の画像を安定に得ることができ、また、液体組成物の
保存安定性や吐出安定性にも特に優れている。
【0090】(酸)先に述べたように、本発明にかかる
カチオン性の液体組成物は、酸を含み、pHが2〜7に
調整されたものであることが好ましいが、この第2の成
分である酸は、カチオン性微粒子表面をイオン化し、表
面電位を高めることにより、液中での微粒子の分散安定
性を向上させると共に、インク中のアニオン性化合物
(アニオン性色材)の吸着性向上や、液体組成物の粘度
調整の役割を果たす。本発明に好適に用いられる酸は、
使用するカチオン性微粒子と組み合わせて、所望のpH
やゼータ電位或いは微粒子分散性等の物性が得られるも
のであれば特に限定はなく、下記に挙げる無機酸や有機
酸等から、自由に選択して使用することができる。
【0091】具体的には、無機酸としては、例えば、塩
酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、硼酸、及び炭
酸等が挙げられ、有機酸としては、例えば、下記に挙げ
るようなカルボン酸やスルホン酸、アミノ酸等が挙げら
れる。
【0092】カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢
酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フル
オロ酢酸、トリメチル酢酸、メトキシ酢酸、メルカプト
酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カ
プロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリ
スチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、
リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、
フェニル酢酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイ
ル酸、p−トルイル酸、o−クロロ安息香酸、m−クロ
ロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香
酸、m−ブロモ安息香酸、p−ブロモ安息香酸、o−ニ
トロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香
酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジ
ピン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、フ
タル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、p
−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、m−アミノ安
息香酸、p−アミノ安息香酸、o−メトキシ安息香酸、
m−メトキシ安息香酸、及びp−メトキシ安息香酸等が
挙げられる。
【0093】また、スルホン酸としては、例えば、ベン
ゼンスルホン酸、メチルベンゼンスルホン酸、エチルベ
ンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2,
4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメ
チルベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、1−
スルホナフタレン、2−スルホナフタレン、ヘキサンス
ルホン酸、オクタンスルホン酸、及びドデカンスルホン
酸等が挙げられる。
【0094】また、アミノ酸としては、グリシン、アラ
ニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−
アラニン、タウリン、セリン、ε−アミノ−n−カプロ
ン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン等が
挙げられる。
【0095】そして、本発明の液体組成物においては、
これらを1種又は2種以上混合して使用することができ
る。これらの中でも、使用する酸の水中での一次解離定
数pkaが5以下のものは、カチオン性微粒子の分散安
定性やアニオン性化合物の吸着性に特に優れるため、特
に好適に用いることができる。このようなものとして
は、具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸、ギ
酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、及びマロ
ン酸等が挙げられる。
【0096】本発明にかかるカチオン性の液体組成物で
は、該液体組成物中におけるカチオン性微粒子(A)と
酸(B)の混合比率を、質量基準でA:B=200:1
〜5:1、より好ましくは150:1〜8:1の範囲と
なるようにすることが、カチオン性微粒子の分散安定性
の向上、及びアニオン性化合物の微粒子表面への吸着性
の向上を図るうえで好ましい。
【0097】(他の構成成分)次に、カチオン性の液体
組成物を構成するその他の成分について具体的に説明す
る。本発明にかかるカチオン性の液体組成物は、上記し
たカチオン性微粒子を必須の成分とし、好ましくは上記
したような酸を含み、その他に、通常は液媒体として水
を含むが、更に、液媒体として水溶性有機溶剤及びその
他の添加剤を含んでいてもよい。
【0098】この際に使用する水溶性有機溶剤として
は、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトア
ミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒド
ロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレング
リコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレ
ングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリ
コール、ブチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコー
ル、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等の
アルキレングリコール類、エチレングリコールメチルエ
ーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ト
リエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アル
コールの低級アルキルエーテル類、エタノール、イソプ
ロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチル
アルコール等の1価アルコール類の他、グリセリン、N
−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダ
ゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメ
チルサルホキサイド等が挙げられる。
【0099】また、保湿剤としては、例えば、尿素、チ
オ尿素、エチレン尿素、アルキル尿素、アルキルチオ尿
素、ジアルキル尿素及びジアルキルチオ尿素等の含窒素
化合物、グルシトール、マンニトール、イノシトール等
の糖類を用いることができる。上記水溶性有機溶剤及び
保湿剤の含有量については特に制限はないが、例えば、
液体組成物全質量の5〜60%、更には5〜40%が好
適な範囲である。
【0100】また、本発明にかかるカチオン性の液体組
成物には、更にこの他、必要に応じて、粘度調整剤、p
H調整剤、防腐剤、各種界面活性剤、酸化防止剤及び蒸
発促進剤、水溶性カチオン性化合物やバインダー樹脂等
の添加剤を適宜に配合しても構わない。これらの中で、
界面活性剤の選択は、液体組成物の被記録媒体への浸透
性を調整するうえで特に重要である。
【0101】界面活性剤としては、1級、2級及び3級
アミン塩型の化合物、具体的には、ラウリルアミン、ヤ
シアミン、ステアリルアミン、ロジンアミン等の塩酸
塩、酢酸塩等、第4級アンモニウム塩型の化合物、具体
的には、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、
セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルト
リブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウ
ム等;ピリジニウム塩型化合物、具体的には、セチルピ
リジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド
等;イミダゾリン型カチオン性化合物、具体的には2−
ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン等;高
級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物、具体的に
は、ジヒドロキシエチルステアリルアミン等の、陽イオ
ン性界面活性剤や、あるpH領域においてカチオン性を
示すような両性界面活性剤も用いることができる。具体
的には、例えば、アミノ酸型両性界面活性剤;R−NH
−CH2−CH2−COOH型の化合物;ベタイン型の化
合物、具体的には、ステアリルジメチルベタイン、ラウ
リルジヒドロキシエチルベタイン等のカルボン酸塩型両
性界面活性剤の他、硫酸エステル型、スルホン酸型、リ
ン酸エステル型等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0102】また、非イオン性界面活性剤としては、例
えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオ
キシエチレンアルキルエステル類、アセチレンアルコー
ル類、アセチレングリコール類等の非イオン性界面活性
剤が挙げられる。本発明においては、これらから1種又
は2種以上を適宜選択して用いることができる。上記し
た中でも、特に、アセチレンアルコール類やアセチレン
グリコール類は好適に用いられる。即ち、これらの界面
活性剤を添加すれば、該液体組成物の普通紙への浸透性
を向上させることができる一方で、液体組成物の泡立ち
を抑え、また、仮に泡だったときにもその泡を速やかに
消滅させることができる。尚、使用量は、用いる界面活
性剤の種類によっても異なるが、液体組成物全量に対し
て0.05〜5質量%が十分な浸透性を確保でき、望ま
しい。
【0103】また、水溶性カチオン性化合物は、本発明
にかかるカチオン性液体組成物の、カチオン性の更なる
付与等を目的として、本発明の作用効果を阻害しない範
囲において自由に選択し、添加できる。
【0104】更に、バインダー樹脂は、画像の耐擦過性
の向上等の目的で、被記録媒体の質感や液体組成物の保
存安定性や吐出安定性を損ねない範囲において併用する
ことができ、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチ
ン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、
カゼイン、でんぷん、カルボキシメチルセルロース等の
水溶性ポリマーやポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリ
酢酸ビニル等やその共重合体のエマルジョン、SBR、
NBR等のラテックス等から自由に選択し、使用するこ
とができる。
【0105】(液体組成物の表面張力)本発明にかかる
カチオン性の液体組成物は、無色或いは白色であること
がより好ましいが、被記録媒体の色に合わせて調色して
もよい。更に、以上のような液体組成物の各種物性の好
適な範囲としては、表面張力を10〜60mN/m(d
yn/cm)、より好ましくは10〜40mN/m(d
yn/cm)とし、粘度を1〜30mPa・s(cP)
としたものである。
【0106】[アニオン性液体組成物]次に、本発明に
かかるアニオン性の液体組成物について説明する。アニ
オン性の液体組成物では、アニオン性基を表面に有する
微粒子を構成成分とし、該微粒子が安定に分散している
ことを特徴とするが、更には塩基を含み、pHが7〜1
2に調整されているものや、ゼータ電位が−5〜−90
mVであるものが好ましい。
【0107】(pH及びゼータ電位について)本発明者
らが鋭意検討した結果、液体組成物のゼータ電位が−5
〜−90mVの範囲にあるものは、インク中のカチオン
性化合物(例えば、カチオン性色材)がアニオン性微粒
子の表面に特に効率よく吸着し、被記録媒体上において
特に優れた発色特性を呈することを見出した。その理由
は定かではないが、おそらく先に説明したカチオン性の
液体組成物の場合と同様に、微粒子のアニオン性が適度
であるために、インク中のカチオン性化合物の急速な凝
集が起こらずに、微粒子表面に薄く均一に吸着すること
で色材が巨大なレーキを形成せず、色材本来の発色特性
がよりよく発現されるものと考えられる。更に、本発明
にかかるアニオン性の液体組成物においては、カチオン
性化合物を、アニオン性微粒子表面に吸着した後に分散
不安定となり、被記録媒体上で溶媒成分が浸透する際の
濃度変化で微粒子同士が凝集して表面近傍に残り易くな
るものと考えられる。
【0108】この結果、以下に挙げる優れた効果が得ら
れるものと考えられる。即ち、インクジェット用コート
紙並みの優れた発色特性の達成と、シャドウ部やベタ部
等のインク付与量が多い画像領域において、白モヤや色
ムラの少ない、色の均一性に優れる画像が形成される。
また、コート紙と比べて極めて効率よく微粒子表面にカ
チオン性化合物が吸着し、発色するために、アニオン性
微粒子の付与量も少なくでき、とりわけ普通紙に印字し
た場合には、紙の風合いが保たれ、印字部の耐擦過性も
よくなる。より好ましいゼータ電位の範囲としては、例
えば、ゼータ電位が−10〜−85mVの範囲にあるア
ニオン性微粒子を含む液体組成物を使用した場合には、
ベタ印字した際にドット間の境界が目立ち難くなり、ヘ
ッドスキャンによるスジムラのより一層の低減を達成す
ることができ、更には、ゼータ電位が−15〜−65m
Vの範囲にあるアニオン性微粒子を含む液体組成物を使
用すると、紙種に因らず、極めて優れた発色性を有する
画像を得ることが可能となる。
【0109】本発明にかかるアニオン性の液体組成物の
pHは、保存安定性とカチオン性化合物の吸着性の観点
から、25℃付近で7〜12の範囲であることが好まし
い。このpH範囲内においては、カチオン性のインクと
混合した際に、カチオン性化合物の安定性を著しく低下
させることがないため、カチオン性化合物同士の強い凝
集を引き起こすことがなく、記録画像の彩度が下がった
り、くすんだ画像となることを有効に防止することがで
きる。また、上記のような範囲内にあれば、アニオン性
微粒子の分散性も良好であるため、液体組成物の保存安
定性や記録ヘッドからの吐出安定性を良好に維持するこ
とができる。更には、インクと混合した際に、カチオン
性物質がアニオン性微粒子表面に十分に吸着され、被記
録媒体の内部への色材の過度の浸透を抑えるため、優れ
た発色性のインクジェット記録物を得られる。より好ま
しい液体組成物のpHの範囲は、8〜11であり、pH
がこの範囲内であれば、長期保存による記録ヘッドの腐
食を極めて有効に防止できると共に、印字部の耐擦過性
もより一層向上する。
【0110】(アニオン性微粒子)次に、本発明にかか
るアニオン性の液体組成物を構成する成分について述べ
る。第1の成分として挙げられるアニオン性の微粒子
は、上記した作用効果を達成するために、液体組成物中
に分散された状態において粒子自体の表面がアニオン性
を呈するものであることが好ましい。表面をアニオン性
とすることによってカチオン性のインクと混合した際
に、カチオン性の色材を粒子表面に吸着でき、色材が被
記録媒体内部へ過度に浸透することが抑えられるので、
十分な画像濃度のインクジェット記録物を得ることがで
きる。これに対し、微粒子表面がアニオン性でなく、且
つ液体組成物の中で、水溶性のアニオン性化合物と別々
に存在している場合には、アニオン性化合物を中心に色
材が凝集を起こし、色材自体の発色特性を損なうため
に、インクジェット用コート紙並みの発色性を達成する
ことが困難となる。そのため本発明の液体組成物で用い
る微粒子は、表面がアニオン性に帯電していることが必
要であるが、本質的にアニオン性である微粒子は勿論の
こと、本来は静電的にカチオン性或いは中性の微粒子で
あっても、処理によって表面がアニオン化された微粒子
であれば用いることができる。
【0111】本発明で好適に用いられるアニオン性微粒
子は、被記録媒体上で形成されるこれらの微粒子による
凝集物に細孔が形成されるものであれば、本発明の目的
を達成するのに十分であるため、特に微粒子の材料種に
限定はない。一例として、具体例を挙げるとすれば、例
えば、アニオン化した、シリカ、チタニア、ジルコニ
ア、ボリア、シリカボリア、セリア、マグネシア、シリ
カマグネシア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及
び酸化亜鉛等やこれらの複合微粒子や有機微粒子、無機
有機複合微粒子等が挙げられる。そして、本発明の液体
組成物においては、これらを1種又は2種以上混合して
使用することができる。
【0112】(アニオン性微粒子の細孔物性・形状)ま
た、本発明で使用する上記したようなアニオン性微粒子
は、被記録媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔を効
率的に形成すると同時に、微粒子自体の表面に色材を効
率よく吸着させるうえにおいて、前記窒素吸着脱離法に
おける微粒子の極大細孔半径が2〜12nmで、全細孔
容積が0.3ml/g以上であるものが好ましい。より
好ましくは、微粒子の極大細孔半径が3〜10nmで、
全細孔容積が0.3ml/g以上であるものが被記録媒
体上で形成される微粒子凝集物の細孔が、目的とする細
孔半径領域において効果的に形成され易いため好まし
い。
【0113】更に、本発明で使用する微粒子のBET比
表面積は、70〜300m2/gの範囲内であると、微
粒子表面への色材の吸着点が十分に存在することにな
り、単分子状態で色材をより効果的に被記録媒体の表面
近傍に残し易くなるので、発色性の向上に寄与できる。
【0114】また、本発明で使用するアニオン性微粒子
の形状は、微粒子をイオン交換水に分散させてコロジオ
ン膜上に滴下して測定用試料を作製し、透過型電子顕微
鏡で観察して求めることができる。本発明においては被
記録媒体上で微粒子凝集物を形成させる際に凝集物内に
細孔を形成させる点で、微粒子の形状が、針状や平板形
状、若しくは、球状の1次粒子がある方向性を持って繋
がった二次粒子を形成している、棒状やネックレス状等
の非球形状のものを好適に用いることができる。本発明
者らの知見によれば、平板状の形状の方が、針状のもの
よりも水への分散性がよく、微粒子凝集物を形成した場
合に微粒子の配向がランダムになるために細孔容積が大
きくなるので、より好ましい。
【0115】上記したようなアニオン性微粒子の液体組
成物中の含有量としては、使用する物質の種類に応じて
最適な範囲を適宜に決定すればよいが、質量基準で0.
1〜40質量%の範囲とすることが、本発明の目的を達
成するうえで好適な範囲である。より好ましくは1〜3
0質量%、更には3〜15質量%の範囲とする。このよ
うな範囲内では、紙種に因らず、優れた発色の画像を安
定に得ることができ、また、液体組成物の保存安定性や
吐出安定性にも特に優れている。
【0116】(塩基)先に述べたように、本発明にかか
るアニオン性の液体組成物は、塩基を含み、pHが7〜
12に調整されたものであることが好ましいが、この第
2の成分である塩基は、アニオン性微粒子表面をイオン
化し、表面電位を高めることにより液中での分散安定性
を向上させると共に、インク中のカチオン性化合物(カ
チオン性色材)の吸着性向上や液体組成物の粘度調整の
役割を果たす。本発明に好適に用いられる塩基は、使用
するアニオン性微粒子と組み合わせた場合に、所望のp
H、ゼータ電位及び微粒子分散性等の物性が得られるも
のであれば特に限定はなく、下記に挙げるような無機化
合物や有機化合物等から自由に選択して、使用すること
ができる。
【0117】具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、
水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、
アンモニア、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム等、モ
ルホリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミ
ン、トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミ
ン、ノルマルブチルモノエタノールアミン、ジメチルエ
タノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジ
エタノールアミン、ノルマルブチルジエタノールアミ
ン、ジノルマルブチルエタノールアミン、モノイソプロ
パノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソ
プロパノールアミン等のアルカノールアミンを用いるこ
とができる。これらの中でも特に、塩基の水中での一次
解離定数pkbが5以下の塩基は、アニオン性微粒子の
分散安定性やカチオン性化合物(カチオン性色材)の吸
着性に特に優れるため、好適に用いられる。
【0118】本発明の液体組成物中でのアニオン性微粒
子(A)と塩基(B)の混合比率は、質量基準でA:B
=200:1〜5:1、より好ましくは、150:1〜
8:1の範囲であれば、アニオン性微粒子の分散安定性
や、該微粒子表面へのカチオン性化合物の吸着性に優れ
るため好ましい。
【0119】(他の構成成分)次に、本発明にかかるア
ニオン性の液体組成物を構成するその他の成分について
具体的に説明する。本発明にかかるアニオン性の液体組
成物は、上記したアニオン性微粒子を必須の成分とし、
好ましくは上記したような塩基を含み、その他に、通常
は液媒体として水を含むが、更に、水溶性有機溶剤及び
その他の添加剤、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防
腐剤、各種界面活性剤、酸化防止剤、蒸発促進剤、水溶
性アニオン性化合物やバインダー樹脂等の添加剤を適宜
配合してもかまわない。
【0120】界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩
類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸
エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イ
オン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル
類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキ
シエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレン
アルコール類、アセチレングリコール類等の非イオン性
界面活性剤が挙げられ、本発明においては、これらか
ら、1種又は2種以上を適宜選択して使用することがで
きる。上記した中でも、特に、アセチレンアルコール類
や、アセチレングリコール類が好ましく用いられる。即
ち、これらの界面活性剤は、液体組成物の普通紙への浸
透性を向上させることができる一方で、液体組成物を泡
立ち易くすることがなく、また、泡立ったときにも泡を
速やかに消滅させることができる。本発明にかかるアニ
オン性の液体組成物中の界面活性剤の量としては、最適
値は、使用する界面活性剤の種類によって異なるもの
の、液体組成物全質量基準で0.05〜5質量%の範囲
であれば、当該液体組成物に十分な浸透性を付与するこ
とができるため、この範囲で適宜調整することが好まし
い。
【0121】(液体組成物の表面張力)本発明にかかる
アニオン性の液体組成物は、無色或いは白色であるのが
より好ましいが、被記録媒体の色に合わせて調色しても
よい。更に、以上のような液体組成物の各種物性の好適
な範囲としては、表面張力を10〜60mN/m(dy
n/cm)、より好ましくは10〜40mN/m(dy
n/cm)とし、粘度を1〜30mPa・s(cP)と
したものである。
【0122】[液体組成物の製造方法]以上説明したよ
うな、カチオン性或いはアニオン性の微粒子を含む本発
明かかる液体組成物を製造する方法としては、一般に、
分散に用いられている方法等の中から選択して用いるこ
とができる。具体的には、液体組成物中の微粒子の平均
粒子径や粒度分布を上記範囲にするために、ロールミ
ル、サンドミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザ
ー、超高圧乳化機(例えば、ナノマイザー(商品名)
等)等の分散機を用いての分散処理や、遠心分離や限外
濾過等による分級処理等が好適に用いられ、これらの処
理手段によって液体組成物中の微粒子の分散粒子径を揃
えることができる。
【0123】<水性インク> [アニオン性インク]次に、先に説明した本発明にかか
るカチオン性の液体組成物と組み合わせて本発明のイン
クセットを構成する際に好適に使用される、水性のアニ
オン性インクについて説明する。ここでいうインクセッ
トとは、例えば、前記したカチオン性の液体組成物と、
アニオン性物質(アニオン性色材)を含有する少なくと
も1種類以上のアニオン性インクとの組み合わせをい
う。また、このインクセットから本発明の液体組成物を
除いた、少なくとも2種類のインクの組み合わせをイン
クサブセットと呼ぶ。
【0124】本発明で使用するアニオン性インクは、色
材として、アニオン性基を含有する水溶性染料を用いる
か、或いは色材として顔料を用いる場合には、アニオン
性化合物を併用させたもの(これも本発明ではアニオン
性色材に含める)を用いることが好ましい。本発明で使
用される上記のようなアニオン性インクには、更にこれ
に、水、水溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば、粘
度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止
剤等が必要に応じて含まれて構成される。以下、これら
のインクの各構成成分について説明する。
【0125】(水溶性染料)本発明で使用するアニオン
性基を有する水溶性染料としては、例えば、カラーイン
デックス(Color Index)に記載されている水溶性の酸
性染料、直接染料、反応性染料であれば特に限定されな
い。また、カラーインデックスに記載のないものでも、
アニオン性基、例えば、スルホン基、カルボキシル基等
を有するものであれば、特に限定されない。ここでいう
水溶性染料の中には、溶解度のpH依存性があるものも
含まれる。
【0126】(顔料)水性のアニオン性インクの別の形
態としては、上記のようなアニオン性基を有する水溶性
染料の代わりに、顔料及びアニオン性化合物を用い、
水、水溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば、粘度調
整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等
を必要に応じて含むインクであってもよい。ここで、ア
ニオン性化合物が顔料の分散剤であってもよいし、顔料
の分散剤がアニオン性でない場合に、分散剤とは別のア
ニオン性化合物を添加したものでもよい。勿論、分散剤
がアニオン性化合物である場合でも、更に、他のアニオ
ン性化合物を添加したものでもよい。
【0127】本発明で使用することができる顔料には特
に限定はないが、例えば、以下に説明する顔料が好適に
使用できる。先ず、ブラック顔料インクに使用されるカ
ーボンブラックとしては、ファーネス法やチャネル法で
製造されたカーボンブラックで、一次粒径が15〜40
mμ(nm)、BET法による比表面積が50〜300
2/g、DBP吸油量が、40〜150ml/100
g、揮発分が0.5〜10質量%、pH値が2〜9を有
するものが好ましい。
【0128】このようなものとしては、例えば、No.
2300、No.900、MCF88、No.40、N
o.52、MA7、MA8、No.2200B(以上、
三菱化成製)、RAVEN 1255(コロンビア
製)、REGAL 400R、REGAL 660R、
MOGUL L(以上、キヤボット製)、Color
Black FW1、Color Black FW1
8、Color Black S170、Color
Black S150、Printex 35、Pri
ntex U(以上、デグッサ製)等の市販品を使用す
ることができる。また、本発明のために新たに試作され
たものでもよい。
【0129】イエローインクに使用される顔料として
は、例えば、C.I.PigmentYellow
1、C.I.Pigment Yellow 2、C.
I.Pigment Yellow 3、C.I.Pi
gment Yellow 13、C.I.Pigme
nt Yellow 16、C.I.PigmentY
ellow 74、C.I.Pigment Yell
ow 83、C.I.Pigment Yellow
93、C.I.Pigment Yellow128、
C.I.Pigment Yellow 134、C.
I.Pigment Yellow 144等が挙げら
れる。
【0130】マゼンタインクとして使用される顔料とし
ては、例えば、C.I.Pigment Red 5、
C.I.Pigment Red 7、C.I.Pig
ment Red 12、C.I.Pigment V
iolet 19、C.I.Pigment Red
48(Ca)、C.I.Pigment Red 48
(Mn)、C.I.Pigment Red 57(C
a)、C.I.Pigment Red 112、C.
I.Pigment Red 122等が挙げられる。
【0131】シアンインクとして使用される顔料として
は、例えば、C.I.Pigment Blue 1、
C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pi
gment Blue 3、C.I.Pigment
Blue 15:3、C.I.Pigment Blu
e 16、C.I.Pigment Blue 22、
C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Bl
ue 6等が挙げられる。また、上記何れの色の色材に
関しても、本発明のために新たに製造されたものでも使
用可能である。
【0132】(顔料分散剤)本発明で使用するインクに
用いることができる顔料の分散剤としては、アニオン性
基の存在によって、顔料を、水、若しくは水性媒体に安
定に分散させる機能を有する水溶性樹脂なら、どのよう
なものでも使用可能である。特に、重量平均分子量が
1,000〜30,000の範囲のものが好ましい。更
に好ましくは3,000〜15,000の範囲である。
具体的には、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニ
ルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチ
レン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等
の疎水性単量体、又はアクリル酸、アクリル酸誘導体、
マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン
酸誘導体、フマル酸及びフマル酸誘導体から選ばれる二
つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グラフト共
重合体或いはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙
げられる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に
可溶なアルカリ可溶型の樹脂である。
【0133】更に、親水性単量体からなるホモポリマー
又はそれらの塩でもよい。また、ポリビニルアルコー
ル、カルボキシメチルセルロース、ナフタレンスルホン
酸ホルムアルデヒド縮合物等の水溶性樹脂も使用するこ
とが可能である。しかし、アルカリ可溶型の樹脂を用い
た場合の方が、分散液の低粘度化が可能で、分散も容易
であるという利点がある。前記水溶性樹脂は、インク全
量に対して0.1〜5質量%の範囲で使用されることが
好ましい。
【0134】本発明で使用し得る顔料インクは、以上の
如き顔料及び水溶性樹脂を水溶性媒体中に分散又は溶解
して構成される。本発明に用い得る顔料系インクにおい
て好適な水性媒体としては、水及び水溶性有機溶剤の混
合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般
の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用する
のが好ましい。
【0135】分散剤が、アニオン性高分子ではない場
合、上述した顔料を含むインクに更にアニオン性化合物
を添加することが好ましい。本発明で好適に使用される
アニオン性化合物としては、顔料分散剤の項で説明した
アルカリ可溶性樹脂等の高分子物質の他、下記に挙げる
ような低分子量のアニオン性界面活性剤を挙げることが
できる。
【0136】低分子量のアニオン性界面活性剤の具体的
なものとしては、例えば、スルホコハク酸ラウリル二ナ
トリウム、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイ
ルエタノールアミドエステル二ナトリウム、ポリオキシ
エチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、カルボ
キシル化ポリオキシエチレンラウリルエーテルナトリウ
ム塩、カルボキシル化ポリオキシエチレントリデシルエ
ーテルナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエー
テル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエー
テル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンア
ルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウ
ム、アルキル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられる
が、これらに限定されるわけではない。以上のようなア
ニオン性物質の好適な使用量としては、インク全量に対
して、0.05〜10質量%の範囲であり、更に好適に
は0.05〜5質量%である。
【0137】(自己分散型顔料)また、アニオン性のイ
ンクに用いることのできる顔料としては、分散剤を用い
ることなしに、水若しくは水性媒体に分散させることの
できる自己分散型の顔料も使用できる。自己分散型の顔
料は、顔料表面に少なくとも1種のアニオン性親水性基
が、直接、若しくは他の原子団を介して結合されている
ものである。アニオン性の親水性基が、例えば、下記に
列挙した親水性基の中から選択される少なくとも1種で
あるもの、更に他の原子団が、炭素原子数1〜12のア
ルキレン基、置換基を有してもよいフェニレン基、又は
置換基を有してもよいナフチレン基であるもの、が挙げ
られる。−COOM、−SO3M、−SO2NH2、−P
3HM、−PO32(上記式中のMは、水素原子、ア
ルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表
わす。)
【0138】このように顔料表面への親水性基の導入に
よってアニオン性に帯電させた顔料は、イオンの反発に
よって優れた水分散性を有するため、水性インク中に含
有させた場合にも分散剤等を添加しなくても安定した分
散状態を維持する。特に、顔料がカーボンブラックであ
る場合に好ましい。
【0139】(インク中の添加成分)また、上記の成分
の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとする
ために、界面活性剤、消泡剤或いは防腐剤等をインク中
に添加することができ、更に市販の水溶性染料等を添加
することもできる。
【0140】界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級ア
ルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩
類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活
性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオ
キシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレン
ソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコー
ル、アセチレングリコール等の非イオン性界面活性剤が
あり、これらの1種又は2種以上を適宜選択して使用で
きる。上記した中でも、特に、アセチレンアルコール類
や、アセチレングリコール類が好ましい。
【0141】即ち、これらの界面活性剤を添加すれば、
普通紙への浸透性を向上させることができる一方で、液
体組成物の泡立ちを抑え、また、仮に泡だったときにも
その泡を速やかに消滅させることができる。その使用量
は、分散剤の添加量により異なるが、インク全量に対し
て、0.01〜5質量%とすることが望ましい。この
際、インクの25℃における表面張力は10mN/m
(dyne/cm)以上が好ましく、より好ましくは2
0mN/m以上、更には30mN/m以上となるよう
に、また、表面張力が70mN/m以下となるように活
性剤の添加する量を決定することが好ましい。なぜな
ら、本発明で好適に使用するインクジェット記録方式に
おいて、ノズル先端の濡れによる印字ヨレ(インク滴の
着弾点のズレ)等の発生を有効に抑えることができるか
らである。
【0142】以上で説明したような顔料系インクの作成
方法としては、はじめに、顔料分散用樹脂及び水を少な
くとも含有する水溶液に、顔料を添加して攪拌した後、
後述の分散手段を用いて分散処理を行い、必要に応じて
遠心分離処理を行って、所望の分散液を得る。次に、こ
の分散液に上記に掲げたような成分を更に加えて攪拌し
て、インクとすればよい。
【0143】また、分散剤としてアルカリ可溶型の樹脂
を使用する場合には、樹脂を溶解させるために塩基を添
加することを要する。この際、樹脂を溶解させるための
アミン或いは塩基の量は、樹脂の酸価から計算によって
求められるアミン或いは塩基量の1倍以上を添加するこ
とが必要である。アミン或いは塩基の量は、以下の式に
よって計算で求められる。
【0144】更に、顔料を含む水溶液を分散処理する前
にプレミキシングを30分間以上行うと、顔料の分散効
率がよくなるため、好ましい。このプレミキシング操作
によって、顔料表面の濡れ性が改善され、顔料表面への
分散剤の吸着を促進する。
【0145】アルカリ可溶型樹脂を使用した場合の分散
液に添加される塩基類としては、例えば、モノエタノー
ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミ
ン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機ア
ミン或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機
塩基を用いることが好ましい。
【0146】一方、顔料インクの調製に使用する分散機
は、一般に使用される分散機なら如何なるものでもよい
が、例えば、ボールミル、サンドミル等が挙げられる。
その中でも、高速型のサンドミルが好ましく、例えば、
スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジ
テータミル、グレンミル、ダイノールミル、パールミ
ル、コボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
【0147】尚、本発明で使用するインクは、上記成分
の他に必要に応じて、水溶性有機溶剤、その他の界面活
性剤、pH調整剤、防錆剤、防カビ剤、酸化防止剤、蒸
発促進剤、キレート化剤及び水溶性ポリマー等の添加剤
を添加してもよい。
【0148】本発明で用いることのできる上記色材を溶
解又は分散する液媒体としては、水と水溶性有機溶剤と
の混合物を使用することが好ましい。具体的な水溶性有
機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルア
ルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアル
コール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコ
ール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4の
アルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチ
ルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、
テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリ
エチレングリコール、ポリプロピレングコリコール等の
ポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プ
ロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレ
ングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオ
ジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリ
コール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むア
ルキレングリコール類、グリセリン、エチレングリコー
ルモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリ
コールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アル
コールの低級アルキルエーテル類、N−メチル−2−ピ
ロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、
スルホラン、ジメチルサルフォオキサイド、2−ピロリ
ドン、ε−カプロラクタム等の環状アミド化合物及びス
クシンイミド等のイミド化合物等が挙げられる。
【0149】上記水溶性有機溶剤の含有量は、一般に
は、インクの全質量に対して質量%で1〜40%が好ま
しく、より好ましくは3〜30%の範囲である。また、
インク中の水の含有量は30〜95質量%の範囲とした
場合、色材の溶解性等も良好であり、インクの粘度が高
くなることを抑えることができ、且つインクの固着特性
を十分に満足させることができる。
【0150】本発明で使用するアニオン性インクは、一
般の水性筆記用具としても使用できるが、熱エネルギー
によるインクの発泡現象によりインクを吐出させるタイ
プのインクジェット記録方法に適用する場合に特に好適
であり、吐出が極めて安定となり、サテライトドットの
発生等が生じないという特徴がある。但し、この場合に
は、熱的な物性値(例えば、比熱、熱膨張係数、熱伝導
率)を調整する場合もある。
【0151】[カチオン性インク]次に、先に説明した
アニオン性の液体組成物と組み合わせて、本発明のイン
クセットを構成するのに好適な水性のカチオン性インク
について説明する。ここでいうインクセットとは、本発
明の液体組成物とカチオン性物質(カチオン性色材)を
含有する少なくとも1種類以上のインクとの組み合わせ
をいう。また、このインクセットから本発明の液体組成
物を除いた、少なくとも2種類以上のインクの組み合わ
せをインクサブセットと呼ぶ。本発明で使用するカチオ
ン性インクは、色材として、カチオン性基を含有する水
溶性染料を用いるか、又は色材として顔料を用いる場合
には、カチオン性化合物を併用させること(本発明では
この併用もカチオン性色材という)が好ましい。本発明
で使用される上記のようなインクには、更にこれに、
水、水溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば、粘度調
整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等
が必要に応じて含まれて構成される。以下、これらのイ
ンクの各構成成分について説明する。
【0152】(水溶性染料)本発明で使用するカチオン
性基を有する水溶性染料としては、例えば、カラーイン
デックス(Color Index)に記載されている水溶性の染
料であれば特に限定はない。また、カラーインデックス
に記載のないものでも、カチオン性基を有するものであ
れば特に限定はない。尚、ここでいう水溶性染料の中に
は、溶解度のpH依存性があるものも含まれる。
【0153】(顔料)本発明で使用するインクの別の形
態としては、上記したカチオン性基を有する水溶性染料
の代わりに、顔料及びカチオン性化合物を用い、水、水
溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば、粘度調整剤、
pH調整剤、防腐剤、界面活性剤或いは酸化防止剤等を
必要に応じて含むインクであってもよい。ここで、カチ
オン性化合物が顔料の分散剤であってもよいし、顔料の
分散剤がカチオン性でない場合に、分散剤とは別のカチ
オン性化合物を添加したものでもよい。勿論、分散剤が
カチオン性化合物である場合でも、更に他のカチオン性
化合物を添加してもよい。本発明で使用することができ
る顔料としては特に限定はなく、アニオン性インクの項
で述べた顔料を好適に用いることができる。
【0154】(顔料分散剤)本発明で使用するインク中
の顔料の分散剤は、カチオン性基の存在によって顔料を
水、若しくは水性媒体に安定に分散させる機能を有する
水溶性樹脂ならどんなものでも使用可能である。具体例
としては、ビニルモノマーの重合によって得られるもの
であって、得られる重合体の少なくとも一部がカチオン
性を有するものであればよい。カチオン性の部分を構成
するためのカチオン性モノマーとしては、下記の如き第
3級アミンモノマーの塩及びこれらの4級化された化合
物が挙げられる。
【0155】N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ
ート [CH2=C(CH3)−COO−C24N(CH3)2]、
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート [CH2=CH−COO−C24N(CH3)2]、N,N
−ジメチルアミノプロピルメタクリレート [CH2=C(CH3)−COO−C36N(CH3)2]、
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート [CH2=CH−COO−C36N(CH3)2]、N,N
−ジメチルアクリルアミド [CH2=CH−CON(CH3)2]、N,N−ジメチル
メタクリルアミド [CH2=C(CH3)−CON(CH3)2]、N,N−ジメ
チルアミノエチルアクリルアミド [CH2=CH−CONHC24N(CH3)2]、N,N
−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド [CH2=C(CH3)−CONHC24N(CH3)2]、
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド [CH2=CH−CONHC36N(CH3)2]、N,N
−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド [CH2=C(CH3)−CONHC36N(CH3)2] 等が挙げられる。
【0156】第3級アミンの場合において、塩を形成す
るための化合物としては、塩酸、硫酸及び酢酸等が挙げ
られ、4級化に用いられる化合物としては、塩化メチ
ル、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、エピクロロヒ
ドリン等が挙げられる。これらの中でも、塩化メチルや
ジメチル硫酸等が本発明で使用する分散剤を調製するう
えで好ましい。以上のような第3級アミンの塩或いは第
4級アンモニウム化合物は水中ではカチオンとして振る
舞い、中和された条件では酸性が安定溶解領域である。
これらモノマーの共重合体中での含有率は20〜60質
量%の範囲が好ましい。
【0157】上記高分子分散剤の構成に用いられるその
他のモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル
メタクリレート、長鎖のエチレンオキシド鎖を側鎖に有
するアクリル酸エステル等のヒドロキシ基を有するアク
リル酸エステル、スチレン系モノマー等の疎水性モノマ
ー類及びpH7近傍の水に溶解可能な水溶性モノマーと
して、アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルピ
ロリドン類、ビニルピリジン類、ビニルオキサゾリン類
が挙げられる。疎水性モノマーとしては、スチレン、ス
チレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘
導体、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、アクリ
ロニトリル等の疎水性モノマーが用いられる。共重合に
よって得られる高分子分散剤中において水溶性モノマー
は、共重合体を水溶液中で安定に存在させるために15
〜35質量%の範囲で用い、且つ疎水性モノマーは、共
重合体の顔料に対する分散効果を高めるために20〜4
0質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0158】(自己分散型顔料)カチオン性に帯電した
顔料の場合、直接若しくは他の原子団を介して結合した
親水性基が、例えば、下記に挙げる第4級アンモニウム
基から選ばれる少なくとも1つを結合したものが挙げら
れる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0159】
【0160】上記式中、Rは炭素原子数1〜12の直鎖
状又は分岐鎖状のアルキル基、置換若しくは未置換のフ
ェニル基、又は置換若しくは未置換のナフチル基を表
す。尚、上記のカチオン性基には、カウンターイオンと
して、例えば、NO3 -やCH3COO-が存在する。
【0161】上記したような親水性基が結合されてカチ
オン性に帯電している自己分散型顔料を製造する方法と
しては、例えば、下記に示す構造のN−エチルピリジル
基を結合させる方法を例にとって説明すると、顔料を3
−アミノ−N−エチルピリジニウムブロマイドで処理す
る方法が挙げられる。
【0162】このように顔料表面への親水性基の導入に
よってカチオン性に帯電させた顔料は、イオンの反発に
よって優れた水分散性を有するため、水性インク中に含
有させた場合にも分散剤等を添加しなくても安定した分
散状態を維持する。特に上記顔料がカーボンブラックで
ある場合が好ましい。
【0163】(インク中の添加成分)また、上記の成分
の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとする
ために、界面活性剤、消泡剤或いは防腐剤等をインク中
に添加することができ、更に市販の水溶性染料等を添加
することができる。界面活性剤としては、1級、2級及
び3級アミン塩型の化合物、具体的には、ラウリルアミ
ン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミン等の
塩酸塩、酢酸塩等、第4級アンモニウム塩型の化合物、
具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライ
ド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジ
ルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコ
ニウム等;ピリジニウム塩型化合物、具体的には、セチ
ルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマ
イド等;イミダゾリン型カチオン性化合物、具体的に
は、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリ
ン等;高級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物、
具体的には、ジヒドロキシエチルステアリルアミン等の
陽イオン性界面活性剤や、あるpH領域においてカチオ
ン性を示す様な両性界面活性剤も用いることができる。
具体的には、例えば、アミノ酸型両性界面活性剤;R−
NH−CH 2−CH2−COOH型の化合物;ベタイン型
の化合物、具体的にはステアリルジメチルベタイン、ラ
ウリルジヒドロキシエチルベタイン等のカルボン酸塩型
両性界面活性剤の他、硫酸エステル型、スルホン酸型、
リン酸エステル型等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0164】また、非イオン性界面活性剤としては、例
えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオ
キシエチレンアルキルエステル類、アセチレンアルコー
ル類、アセチレングリコール類等の非イオン性界面活性
剤が挙げられ、本発明においてはこれらから1種又は2
種以上を適宜選択して用いることができる。上記した中
でも、特に、アセチレンアルコール類やアセチレングリ
コール類が好適に用いられる。即ち、これらの界面活性
剤は、該液体組成物の普通紙への浸透性を向上させるこ
とができる一方で、液体組成物の泡立ちを抑え、また、
仮に泡だったときにもその泡を速やかに消滅させること
ができる。尚、その使用量は、用いる界面活性剤によっ
ても異なるが、インク全量に対して0.05〜5質量%
が十分な浸透性を確保でき、望ましい。
【0165】(インクの表面張力及び粘度)更に、本発
明で使用するカチオン性インクは、普通紙等に記録した
場合の印字記録物のインクの浸透性と同時に、インクジ
ェット用ヘッドに対するマッチングを良好にするため
に、インク自体の物性として25℃における表面張力が
10mN/m以上が好ましく、より好ましくは20〜7
0mN/mが好ましく、更には、30〜68mN/mの
範囲が好ましい。また、粘度は、15mPa・s(c
P)以下、特には10mPa・s以下、更には5mPa
・s以下に調整されることが好ましい。
【0166】<水性インクの濃度>上記したアニオン性
及びカチオン性のインク中に含まれる色材成分の質量濃
度は、水性染料、顔料や自己分散型顔料等の色材の種類
に応じて適宜選択されるが、インクの質量に対し、0.
1〜20質量%、特には0.1〜12質量%の範囲が好
ましい。また、色材成分の質量濃度が0.3〜7質量%
の範囲では、液体組成物中の微粒子の濃度とインク中の
色材の濃度との関係に関して、質量基準で、該微粒子1
に対して色材が1.2以下、特には1.0以下とした場
合、通常の2液系の記録条件の下で形成される画像の発
色性は特に優れたものとなる。
【0167】<被記録媒体に着色部を形成する方法>次
に、本発明の着色部形成方法について説明する。本発明
の着色部形成方法は、色材を含むインクを被記録媒体に
付与する工程(i)と、先に説明した本発明にかかる液
体組成物を被記録媒体に付与する工程(ii)とを少なく
とも有することを特徴とするが、その好ましい形態とし
ては、上記で使用するインクが、アニオン性若しくはカ
チオン性の水性インクであり、且つ液体組成物が、上記
インクとは逆の極性に表面が帯電している微粒子が分散
状態で含まれている水性の液体組成物であるものが挙げ
られる。以下、上述したように構成されている液体組成
物及び水性インクを被記録媒体上に付与する方法につい
て説明する。
【0168】本発明の着色部形成方法は、先に説明した
ような本発明にかかる液体組成物を被記録媒体上に付与
する工程(ii)と、色材を含む、例えば、アニオン性若
しくはカチオン性の水性インクを被記録媒体に付与する
工程(i)を含むが、その際に、被記録媒体の着色部形
成領域、又は着色部形成領域とその近傍に液体組成物を
付与して、水性インクと液体組成物とが互いに液体状態
で接するように付与することが好ましい。ここでいう着
色部形成領域とは、インクのドットが付着する領域のこ
とであり、着色部形成領域の近傍とは、インクのドット
が付着する領域の外側の1〜5ドット程度離れた領域の
ことを指す。
【0169】本発明の着色部形成方法では、液体組成物
と水性インクとが被記録媒体上で互いに液体状態で接す
るようになれば、これらを何れの方法で付与させてもよ
い。従って、液体組成物とインクの何れを先に被記録媒
体上に付与するかは問題ではない。例えば、工程(ii)
を行なった後に工程(i)を行なってもよいし、工程
(i)を行なった後に工程(ii)を行なてもよい。ま
た、工程(i)を行なった後に、工程(ii)を行ない、
その後に再び工程(i)を行なうことも好ましい形態で
ある。また、インクに先立って、被記録媒体上に液体組
成物を付与させる場合に、液体組成物を被記録媒体に付
与してから、インクを被記録媒体上に付与させるまでの
時間については特に制限されるものではないが、互いに
液体状態で接するようにするためには、ほぼ同時或いは
数秒以内にインクを被記録媒体上に付与させることが好
ましい。
【0170】(被記録媒体)上記した本発明の着色部形
成方法に使用される被記録媒体は、特に限定されるもの
ではなく、従来から使用されている、コピー用紙やボン
ド紙等のいわゆる普通紙が好適に使用される。勿論、イ
ンクジェット記録用に特別に作製されたコート紙やOH
P用透明フィルムも好適に使用される。更に、一般の上
質紙や光沢紙にも好適に使用することができる。
【0171】(液体組成物の付与方法)工程(ii)にお
いて、本発明の液体組成物を被記録媒体上に付与せしめ
る方法としては、例えば、スプレーやローラー等によっ
て被記録媒体の全面に付与せしめる方法も考えられる。
しかし、更に好ましくは、インクを付与する着色部形成
領域或いは着色部形成領域とその着色部形成領域の近傍
にのみに、選択的且つ均一に液体組成物を付与せしめる
ことのできるインクジェット方式により行うのが好まし
い。また、この際には、種々のインクジェット記録方式
を用いることができるが、特に好ましいのは、熱エネル
ギーによって発生した気泡を用いて液滴を吐出する方式
である。
【0172】<インクジェット記録装置>次いで、本発
明のインクジェット記録装置について説明する。本発明
のインクジェット記録装置は、色材を含むインクを収容
したインク収容部と、該インクを吐出させるためのイン
クジェットヘッドを備えた第1の記録ユニットと、本発
明にかかる液体組成物を収容した液体組成物収容部と、
該液体組成物を吐出させるためのインクジェットヘッド
を備えた第2の記録ユニットとを備えていることを特徴
とする。かかる形態のインクジェット記録装置として
は、例えば、色材を含む、アニオン性若しくはカチオン
性の水性インクを収容したインク収容部と、該インクを
吐出させるインクジェットヘッドを備えた第1の記録ユ
ニットと、本発明にかかる液体組成物、好ましくは、上
記水性インクとは逆の極性に表面が帯電している微粒子
が分散状態で含まれている液体組成物を収容した液体組
成物収容部と、該液体組成物を吐出させるインクジェッ
トヘッドを備えた第2の記録ユニットとを備えているも
のが挙げられる。
【0173】以下、かかる装置について説明する。図1
は、本発明を適用したインクジェットプリント装置の概
略構成の一例を示す模式的斜視図である。図1におい
て、1はインクを吐出してプリントを行うためのプリン
トヘッドを構成するカートリッジであり、2は液体組成
物を吐出するための液体組成物吐出ヘッドを構成するカ
ートリッジである。図示の例では、異なる色のインクを
用いる4個のプリント用カートリッジ1と、1個の液体
組成物吐出用カートリッジ2が使用されている。そし
て、プリント用の各カートリッジ1は、その上部にイン
クタンク部、下部にインク吐出部(プリント部)を設け
た構造をしている。液体組成物用のカートリッジ2は、
その上部に液体組成物タンク部、下部に液体組成物吐出
部を設けた構造をしている。更に、これらカートリッジ
1及び2には、駆動信号等を受信するためのコネクタが
設けられている。3はキャリッジである。
【0174】キャリッジ3上には、それぞれ異なる色の
インクでプリントするための4個のプリント用ヘッドカ
ートリッジ(プリントヘッド)1と、1個の液体組成物
吐出用ヘッドカートリッジ(液体組成物吐出ヘッド)2
が位置決め搭載されている。また、かかるキャリッジ3
には、各プリントヘッド1及び液体組成物吐出ヘッド2
を駆動するための信号等を伝達するためのコネクタホル
ダーが設けられており、該コネクタホルダーを介して、
各ヘッドカートリッジ1及び2に電気的に接続されてい
る。
【0175】各プリントヘッド1は、それぞれ異なった
色のインク、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ
(M)、シアン(C)、及びブラック(B)のインクを
収納している。本図では、図示左から、イエロー、マゼ
ンタ、シアン、ブラックの各インクのプリント用ヘッド
カートリッジ(プリントヘッド)1Y、1M、1C、1
Bが搭載され、そして右端には、本発明にかかる液体組
成物を収納した液体組成物吐出ヘッドカートリッジ(液
体組成物吐出ヘッド)2が搭載されている。
【0176】図1において、4は、キャリッジ3の主走
査方向に延在し、該キャリッジを摺動自在に支持する走
査レール、5は、キャリッジ3を往復動させるための駆
動力を伝達する駆動ベルトである。また、6、7及び
8、9は、それぞれ、プリントヘッドによるプリント位
置の前後に配置されて被記録媒体10の挟持搬送を行う
ための搬送ローラ対である。紙等の被記録媒体10は、
プリント位置の部分で、プリント面を平坦に規制するた
めのプラテン(不図示)に圧接状態で案内支持されてい
る。この時、キャリッジ3に搭載された各ヘッドカート
リッジ(ヘッド)1及び2の吐出口形成面は、該キャリ
ッジ3から下方へ突出して被記録媒体搬送用ローラ7及
び9間に位置し、プラテン(不図示)の案内面に圧接さ
れた被記録媒体10に平行に対向するようになってい
る。
【0177】本図のインクジェットプリント装置のプリ
ント領域を外れた左側に設定されたホームポジションの
近傍には、回復ユニット11が配設されている。回復ユ
ニット11には、4個のプリントヘッド(ヘッドカート
リッジ)1Y、1M、1C、1Bに対応する4個のキャ
ップ12と、1個の液体組成物吐出ヘッド(ヘッドカー
トリッジ)2に対応する1個のキャップ13が、上下方
向に昇降可能に設けられている。そして、キャリッジ3
がホームポジションにあるときには、各ヘッド1及び2
の吐出口形成面に対して対応するキャップ12及び13
とが圧接接合されることにより、各ヘッド1及び2の吐
出口が密封(キャッピング)される。キャッピングする
ことにより、吐出口内のインク溶剤の蒸発によるインク
の増粘・固着が防止され、吐出不良の発生が防止されて
いる。
【0178】また、回復ユニット11は、各キャップ1
2に連通した吸引ポンプ14と、キャップ13に連通し
た吸引ポンプ15とを備えている。これらのポンプ14
及び15は、プリントヘッド1や液体組成物吐出ヘッド
2に吐出不良が生じた場合に、それらの吐出口形成面を
キャップ12及び13でキャッピングして吸引回復処理
を実行するのに使用される。更に、回復ユニット11に
は、ゴム等の弾性部材からなる2個のワイピング部材
(ブレード)16及び17が設けられている。ブレード
16はブレードホルダー18によって保持され、ブレー
ド17はブレードホルダー19によって保持されてい
る。
【0179】本発明の概略図においては、前記ブレード
ホルダー18及び19は、それぞれ、キャリッジ3の移
動を利用して駆動されるブレード昇降機構(不図示)に
より昇降され、それによって、前記ブレード16及び1
7は、ヘッド(カートリッジ)1及び2の吐出口形成面
に付着したインクや異物をワイピングすべく、突出(上
昇)した位置(ワイピング位置)と、吐出口形成面に接
触しない後退(下降)した位置(待機位置)との間で昇
降する。この場合、プリントヘッド1をワイピングする
ブレード16と液体組成物吐出ヘッド2をワイピングす
るブレード17は、互いに独立して、個別に昇降できる
ように構成されている。
【0180】そして、キャリッジ3が図1中右側(プリ
ント領域側)からホームポジション側へ移動するとき、
或いはホームポジション側からプリント領域側へ移動す
るときに、ブレード16が各プリントヘッド1の吐出口
形成面と当接し、ブレード17が液体組成物吐出ヘッド
2の吐出口形成面と当接し、相対移動によってそれらの
吐出口形成面の拭き取り(ワイピング)動作が行われ
る。
【0181】図2は、インク吐出部とインクタンクを一
体化した構造のプリントヘッド(カートリッジ)1を示
す模式的斜視図である。尚、液体組成物吐出ヘッド2
は、貯蔵及び使用する液体が液体組成物である点を除
き、プリントヘッド1と実質上同じ構成をしている。図
2において、プリントヘッド1は、上部にインクタンク
部21を、下部にインク吐出部(プリントヘッド部)2
2を有しており、更に、インク吐出部22を駆動するた
めの信号等を受信するとともに、インク残量検知信号を
出力するためのヘッド側コネクタ23を有している。こ
のコネクタ23はインクタンク部21に並ぶ位置に設け
られている。また、プリントヘッド1は、図2中底面側
(被記録媒体10側)に吐出口形成面81を有し、該吐
出口形成面81には複数の吐出口が形成されている。各
吐出口に通じる液路部分に、インクを吐出するのに必要
なエネルギーを発生する、吐出エネルギー発生素子が配
置されている。
【0182】上記プリントヘッド(ヘッドカートリッ
ジ)1は、インクを吐出してプリントを行うインクジェ
ットプリント手段であり、インク吐出部22とインクタ
ンク部21を一体化した交換可能なインクジェットカー
トリッジで構成されている。このプリントヘッド1は、
熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェッ
トプリント手段であって、熱エネルギーを発生するため
の電気熱変換体を備えたものである。このプリントヘッ
ド1は、上記電気熱変換体によって印加される熱エネル
ギーにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によっ
て生じる圧力変化を利用して、吐出口よりインクを吐出
させ、プリントを行なうものである。
【0183】図3は、プリントヘッド1(液体組成物吐
出ヘッド2)のインク吐出部22(液体組成物吐出部2
2A)の構造を模式的に示す部分斜視図である。図3に
おいて、図1中に示した被記録媒体(プリント用紙等)
10と所定の隙間(例えば、約0.5〜2.0mm程
度)をおいて対面する吐出口形成面81には、所定のピ
ッチで複数の吐出口82が形成され、共通液室83と各
吐出口82とを連通する各液路84の壁面に沿ってイン
ク吐出用のエネルギーを発生するための電気熱変換体
(発熱抵抗体等)85が配設されている。また、複数の
吐出口82は、プリントヘッド1の移動方向(主走査方
向)と交叉する方向に並ぶような位置関係で配列されて
いる。こうして、画像信号又は吐出信号に基づいて対応
する電気熱変換体85を駆動(通電)して、液路84内
のインクを膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって
吐出口82からインクを吐出させるプリントヘッド1が
構成されている。
【0184】ここで、プリント用ヘッドカートリッジ1
及び2が備えている、インクを保持しているインクタン
ク並びに液体組成物を保持しているタンク(説明の簡略
化のため、このタンクもインクタンクと呼ぶ)を構成す
る部材としては、インクや液体組成物と接触するため、
耐薬品性に優れる材料からなるものが好ましく用いられ
る。その要件を満たし、一般に入手し易い材料として
は、例えば、ポリオレフィン系樹脂や、ポリ塩化ビニ
ル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン樹脂、エチレン−
酢酸ビニル共重合体、ABS樹脂、ポリアセタール、ナ
イロン、不飽和ポリエステル樹脂、PET、アラミド樹
脂等の樹脂材料や、スチレンブタジエンゴム(SB
R)、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴ
ム、ブチルゴム、EPDM、ウレタンゴム、シリコーン
ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素
ゴム等の合成ゴム材料が挙げられる。これらの樹脂や合
成ゴムは、それ自身を構成する化学物質以外に、安定剤
やUV吸収剤、酸化防止剤等、多くの添加助剤が目的に
応じて適当量添加されている。
【0185】このため、これらの添加剤成分がインクや
液体組成物中へ溶出し、該溶出成分がインクや液体組成
物の組成分と反応して不溶物を生成する場合がある。例
えば、脂肪酸や脂肪酸誘導体類がインクや液体組成物中
へ溶出して、温度等の環境変化により再び析出し不溶物
を作ったり、また、インクや液体組成物中に含まれてい
る溶存イオンと溶出物が反応して脂肪酸塩の不溶物を生
成したりして、フィルターや吐出口をつまらせ、インク
の流れを妨げることがある。従って、このような部材か
らの溶出物自体の析出や、溶出物とインクや液体組成物
中の成分との反応による析出を抑制し、上記した問題の
発生を防ぐために、例えば、インクタンクを形成する樹
脂成分中の添加剤含有量を少なくしたり、溶出し難い材
料の選択、インク及び液体組成物の溶剤組成の変更、イ
ンクや液体組成物中の反応成分の含有量を少なくする等
の対策を講じることが、好ましい。
【0186】図4〜図6は、以上のインクジェットプリ
ント装置のワイピング動作を示す模式図である。図4
は、キャリッジ3がプリント領域側からホームポジショ
ン側へ移動する場合を示す。図4において、(A)のよ
うにキャリッジ4上のプリントヘッド1及び液体組成物
吐出ヘッド2が右側(プリント領域側)よりホームポジ
ションに向かって移動してくる。そうすると、(B)の
ように、先ず、インク用のキャップ12と液体組成物用
のキャップ13との間にあるインク用のブレード16が
上昇し、キャリッジ3の移動に伴って各プリントヘッド
1Y、1M、1C、及び1Bを順次ワイピングしてい
く。
【0187】更に、図4の(C)のように、各プリント
ヘッド1が液体組成物用のブレード17上を通過した
後、この液体組成物用のブレード17を上昇させて
(D)のように液体組成物吐出ヘッド2の吐出口形成面
を同時にワイピングする。インク用のブレード16が4
個目のプリントヘッド1をワイピングし、更に、液体組
成物路用のブレード17が液体組成物吐出ヘッド2をワ
イピングし終わった後、それぞれのブレード16及び1
7は下降し、待機位置で待機する。図4では、キャリッ
ジ3が図1中の右側(プリント領域)から回復ユニット
11のあるホームポジション側へ移動するときにブレー
ド16及び17によるワイピングが実行されるように構
成したが、ワイピング方向はこれに限定されるものでは
なく、図5のように、キャリッジ3がホームポジション
側から右側(プリント領域側)へ移動する際にワイピン
グを行うように構成してもよい。
【0188】図5において、(A)では、インク用のブ
レード16と液体組成物用のブレード17を同時に上昇
させ、キャリッジ3を右方向へ(プリント領域側へ)移
動させることにより、プリントヘッド1と液体組成物吐
出ヘッド2を同時にワイピングし(B)、液体組成物吐
出ヘッド2のワイピングが終了すると同時に液体組成物
用のブレード17のみを下降させて待機させ、インク用
のブレード17はそのまま残りのプリントヘッド1のワ
イピングを行う(C)。最後に、図5の(D)のよう
に、全てのプリントヘッド1のワイピングが終了したと
ころで、インク用のブレード16を下降させて一連のワ
イピング動作を終了する。図5で説明したようなワイピ
ング方向を採用することにより、ワイピングにより除去
されてブレード16及び17に付着した液滴が、これら
のブレードの弾性によって被記録媒体10の搬送部へ飛
散し、被記録媒体10を不用意に汚す危険性を無くすこ
とができる。
【0189】更に、図6に示すように、プリントヘッド
1のワイピング方向と液体組成物吐出ヘッド2のワイピ
ング方向を異ならせてもよい。図6において、例えば
(A)及び(B)に示すように、キャリッジ3がホーム
ポジション側から右側(プリント領域側)へ移動すると
きにインク用のブレード16でプリントヘッド1をワイ
ピングし、(C)及び(D)に示すように、キャリッジ
3がプリント領域側からホームポジション側へ移動する
ときに液体組成物用のブレード17で液体組成物吐出ヘ
ッド2のみをワイピングするようにしてもよい。このよ
うなワイピング方向を採ることにより、ブレード16の
弾性力によって飛散するインクが液体組成物吐出ヘッド
2に付着したり、逆に、ブレード17の弾性力によって
飛散した液体組成物がプリントヘッド1に付着するとい
う不都合(危険性)を無くすか、大幅に減少させること
ができる。
【0190】また、図1においては、プリントヘッド1
用のキャップ12と液体組成物吐出ヘッド2用のキャッ
プ13とを別々にして互いに独立させ(専用にし)、更
に、これらのキャップ12、13に接続される吸引ポン
プ14、15もプリントヘッド1用と液体組成物吐出ヘ
ッド2用とに独立させて別々(専用)にした。これによ
り、キャップ12、13及びポンプ14、15内におい
て、インクと該インクと反応性を有する液体組成物とを
接触させることなく、これらの廃液を処理することがで
き、高い信頼性を維持することが可能になる。
【0191】図7は、ポンプ14及び15から排出され
るインク及び液体組成物を廃インクタンク内へ回収する
ための回収系統を示す模式図である。図7において、キ
ャップ12に連通した吸引ポンプ14によりプリントヘ
ッド1から吸引された廃インク、並びにキャップ13に
連通した吸引ポンプ15により液体組成物吐出ヘッド2
から吸引された廃液は、プリント装置外へ漏れ出さない
ように、それぞれ独立した経路を通して廃液タンク24
内に回収され、収納される。
【0192】前記廃液タンク24は、その内部に多孔質
の吸収体25が充填され、該吸収体25に廃液を吸収保
持するように構成されている。この廃液タンク24は、
プリント装置本体内に設けられている。図7では、プリ
ントヘッド1用の吸引ポンプ14からの廃インク導管2
6と、液体組成物吐出ヘッド2用の吸引ポンプ15から
の廃液導管27とは、図示のように、廃液タンク24の
両端の互いに離れた位置に接続されている。こうするこ
とにより、廃液タンク24内の液体組成物とインクは、
吸収体25内に液が充分に吸収された状態ではじめて接
触するようになるため、多孔質吸収体25が吸収保持で
きる液の量を充分に確保することができる。
【0193】図8は、図7の廃液回収系統において、廃
液タンク24内の吸収体25を上下2段に配置し、下段
の吸収体25Aにインクを吸収させ、上段の吸収体25
Bに液体組成物を吸収させるように構成した廃液回収系
統を示す模式図である。図8の構成によれば、下段のイ
ンク吸収体25Aが溢れた場合でも、上段の吸収体25
Bとそこに吸収されている液体組成物により、インク中
の染料は上段の吸収体25Bで反応し固定化されるた
め、該インクが漏れ出してプリント装置内外を汚すこと
はない。
【0194】また、本発明における別の形態のインクジ
ェット記録装置は、色材を含むインクを収容したインク
収容部と、本発明にかかる液体組成物を収容した液体組
成物収容部と、上記インク収容部に収容されているイン
ク、及び上記液体組成物収容部に収容されている液体組
成物を各々独立に吐出させるためのインクジェットヘッ
ドとを備えていることを特徴とする。かかる形態のイン
クジェット記録装置としては、色材を含む、例えば、ア
ニオン性若しくはカチオン性の水性インクを収容したイ
ンク収容部と、本発明にかかる液体組成物、好ましく
は、上記水性インクとは逆の極性に表面が帯電している
微粒子が分散状態で含まれている液体組成物を収容した
液体組成物収容部と、上記インク収容部に収容されてい
る水性インクと上記液体組成物収容部に収容されている
液体組成物とを各々独立に吐出させるためのインクジェ
ットヘッドとを備えているものが挙げられる。以下、か
かる装置について説明する。
【0195】図10は、そのようなカートリッジ100
1の一例を示すものであるが、図中の1003は、イン
クが収容されているインク収容部、1005は、液体組
成物が収容されている液体組成物収容部である。該カー
トリッジは、図11に示すように、インク及び液体組成
物の各々を吐出せしめる記録ヘッド1101に着脱可能
に構成されてなると共に、カートリッジ1001を記録
ヘッド1101に装着した状態では、液体組成物及びイ
ンクが、記録ヘッド1101に供給されるように構成さ
れているものである。
【0196】本発明で使用されるインクジェット記録装
置としては、前記の如きヘッドとインクカートリッジと
が別体となったものに限らず、図15に示す如きそれら
が一体となったものも好適に用いられる。
【0197】図15において、1500は記録ユニット
であって、この中にインクを収容したインク収容部、例
えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸
収体中のインクが複数のオリフィスを有するヘッド部1
501からインク滴として吐出される構成になってい
る。インク吸収体の材料としては、例えば、ポリプロピ
レンやポリウレタンを用いることができる。1502
は、記録ユニット内部を大気に連通させるための大気連
通口である。
【0198】更に、本発明で使用する記録ユニットの他
の実施態様として、インクと液体組成物とを、1個のイ
ンクタンク内の各々の収納部に収納し、且つインク及び
液体組成物の各々を吐出させるための記録ヘッドを一体
的に備えた記録ユニット、具体的には、例えば、図12
に示すように、液体組成物を収容部1201Lに、ブラ
ックインクを収容部1201Bkに、また、イエロー、
シアン及びマゼンタのカラーインクを各々カラーインク
収納部1201Y、1201M及び1201Cに収納
し、更に各々のインクを各々個別に吐出させることがで
きるように、インク流路を分けて構成した記録ヘッド1
203を備えているような記録ユニット1201が挙げ
られる。
【0199】図16は、本発明にかかるインクジェット
プリント装置の他の実施態様の概略構成を示す模式的な
一部破断斜視図である。図16において、4は、キャリ
ッジ3の主走査方向に延在し該キャリッジを摺動自在に
支持する走査レール、5は、キャリッジ3を往復動させ
るための駆動力を伝達する駆動ベルトである。また、
6、7及び8、9は、それぞれ、プリントヘッドによる
プリント位置の前後に配置されて被プリント材10(被
記録媒体10)の挟持搬送を行うための搬送ローラ対で
ある。紙等の被プリント材10は、プリント位置の部分
で、プリント面を平坦に規制するためのプラテン(不図
示)に圧接状態で案内支持されている。この時、キャリ
ッジ3に搭載された各ヘッドカートリッジ(ヘッド)1
及び2の吐出口形成面は、該キャリッジ3から下方へ突
出して被記録媒体搬送用ローラ7及び9間に位置し、プ
ラテン(不図示)の案内面に圧接された被記録媒体10
に平行に対向するようになっている。
【0200】図16において、キャリッジ3上には合計
6個のヘッドカートリッジが位置決め搭載されており、
図示した例では、キャリッジ3上の図示左端から右側へ
向けて、イエローのプリントヘッド1Y、マゼンタのプ
リントヘッド1M、シアンのプリントヘッド1C、ブラ
ックのプリントヘッド1B、液体組成物吐出ヘッド2、
及び第2のブラックのプリントヘッド1BBの順に配置
されている。液体組成物吐出ヘッド2は、インク中の色
材と反応性を有する液体組成物を被記録媒体10へ吐出
するものである。また、右端の第2のブラックのプリン
トヘッド1BBは、往復プリントでの副走査プリント時
等に使用されるブラックインクを用いるプリントヘッド
である。つまり、前述の各実施例におけるブラックプリ
ントヘッド1Bの次に(右隣に)液体組成物吐出ヘッド
2を配置し、更にその次に(右端)に、前記ブラックの
プリントヘッド1BBを配置する構成が採られている。
【0201】図16において、プリント領域の左側には
回復ユニット11が配設され、該回復ユニット11にお
いては、前記ヘッドカートリッジ1及び2の配置に対応
して、左から右へ、プリントヘッド1Y、1M、1C、
及び1Bをキャッピングするキャップ12が順次配置さ
れ、その次に(右隣に)液体組成物吐出ヘッド2をキャ
ッピングするキャップ13が配置され、更にその右隣
(右端)には、第2のブラックプリントヘッド1BBを
キャッピングするキャップ12が配置されている。そし
て各々のキャップは、上下方向に昇降可能に設けられて
おり、キャリッジ3がホームポジションにあるときに
は、各ヘッド1及び2の吐出口形成面に対して対応する
キャップ12及び13が各々圧接されることにより、各
ヘッド1及び2の吐出口が密封(キャッピング)され、
これによって吐出口内のインク溶剤の蒸発によるインク
の増粘や、固着が防止され、吐出不良の発生が防止され
ている。
【0202】また、回復ユニット11は、各キャップ1
及び2に連通した吸引ポンプ14とキャップ13に連通
した吸引ポンプ15を備えている。これらのポンプ14
及び15は、プリントヘッド1や液体組成物吐出ヘッド
2に吐出不良が生じた場合に、それらの吐出口形成面を
キャップ12及び13でキャッピングして、吸引回復処
理を実行するのに使用される。更に左端から5番目の液
体組成物用のキャップ13と6番目(右端)のブラック
インク用のキャップ12との間には、液体組成物吐出ヘ
ッド2用のブレード17が配置され、右端のキャップ1
2の右側(プリント領域側)に各プリントヘッド1用の
ブレード16が配置されている。そして、ブレード17
はブレードホルダー19によって保持され、ブレード1
6はブレードホルダーによって保持されている。この態
様においては、ブレードホルダー19は、各々キャリッ
ジ3の移動を利用して駆動されるブレード昇降機構(不
図示)により昇降され、それによってブレード16及び
17は、ヘッド1及び2の吐出口形成面に付着したイン
クや異物をワイピングすべく突出した位置(ワイピング
位置)と、吐出口形成面に接触しない後退した位置(待
機位置)との間で昇降する。この場合、プリントヘッド
1をワイピングするブレード16と液体組成物吐出ヘッ
ド2をワイピングするブレード17とは、互いに独立し
て個別に昇降できるように構成されている。
【0203】図17は、図16のインクジェットプリン
ト装置のワイピング動作を示す模式図である。図16に
おいて、(A)に示すように、プリントヘッド用のブレ
ード16が突出(上昇)した後、キャリッジ3に搭載さ
れた各ヘッドが右側(プリント領域側)からホームポジ
ションに向かって移動してくる。上昇したプリントヘッ
ド用のブレード16は、(B)に示すように、キャリッ
ジ3の左向き移動に伴いプリントヘッド1を順次ワイピ
ングしていく。そして、(C)に示すように、液体組成
物吐出ヘッド2がプリントヘッド用のブレード16の手
前(右隣)にきた時点で該ブレード16が待機位置まで
後退(下降)し、該ブレード16と液体組成物吐出ヘッ
ド2との接触が防止される。
【0204】更に、キャリッジ3が左向きに移動して液
体組成物吐出ヘッド2がプリントヘッド用ブレード16
を通過した時点で、(D)に示すように、プリントヘッ
ド用ブレード16及び液体組成物吐出ヘッド用ブレード
17の両方を突出(上昇)させる。そして、キャリッジ
3の左向き移動に伴って、(E)に示すように、ブレー
ド17による液体組成物吐出ヘッド2のワイピングとブ
レード16による右端のプリントヘッド1BBのワイピ
ングを同時に行う。全てのヘッド1及び2のワイピング
が終了した後、(F)に示すように、両方のブレード1
6及び17を後退(下降)させ、待機位置で待機させ
る。
【0205】図16及び図17の実施例では、キャリッ
ジ3がプリント領域側(右側)から回復ユニット11の
あるホームポジション側へ移動するときにブレード16
及び17によるワイピングを行うようにしたが、ワイピ
ング方向はこれに限定されるものではなく、ホームポジ
ション側から右側(プリント領域側)へ移動する際にワ
イピングするようにしてもよい。
【0206】図16のインクジェットプリント装置で
は、液体組成物吐出ヘッド2から、インク中の色材と反
応性を有するような本発明にかかる液体組成物を、被記
録媒体10に吐出させて、各プリントヘッド1から吐出
されたインクと被記録媒体10上で接触させ、記録物を
形成可能なように構成されている。被記録媒体10上で
は、インク中の色材が液体組成物と反応することによっ
て、インク中の色材が単分子状態で微粒子表面に吸着
し、その微粒子によって画像の形成がなされるため、発
色性や色の均一性に優れた画像が得られる。
【0207】尚、本発明にかかる記録装置において、上
記の説明では、インク及び液体組成物に熱エネルギーを
作用させてインク液滴を吐出するインクジェット記録装
置を例に挙げたが、その他、圧電素子を使用するピエゾ
方式のインクジェット記録装置でも同様に利用できる。
ところで、本発明にかかるインクジェット記録装置は、
上記した構成を有するインクジェット記録装置に限定さ
れず、例えば、特開平10−146991号公報に開示
されているような構成を有し、ヘッドのワイピングブレ
ードの動作方向が、上記したインクジェット記録装置と
異なっているインクジェット記録装置であってもよい。
【0208】
【実施例】次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更
に具体的に説明する。尚、文中、「部」及び「%」とあ
るのは特に断りのない限り、質量基準である。
【0209】先ず、本発明の液体組成物の作製について
説明する。以下に示す各成分を混合溶解した後、ポアサ
イズが1μmのメンブレンフィルター(商品名、フロロ
ポアフィルター、住友電工(株)製)にて加圧濾過し、
本発明の液体組成物A〜Dを得た。
【0210】(アルミナ水和物の合成例)米国特許明細
書第4,242,271号に記載の方法でアルミニウム
ドデキシドを製造した。次に、米国特許明細書第4,2
02,870号に記載された方法で、前記アルミニウム
ドデキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造し
た。このアルミナスラリーをアルミナ水和物の固形分が
8.2%になるまで水を加えた。アルミナスラリーのp
Hは9.7であった。3.9%の硝酸溶液を加えてpH
を調整し、表1に示した熟成条件でコロイダルゾルを得
た。このコロイダルゾルを83℃でスプレードライする
ことによって、A〜Dのアルミナ水和物を作製した。こ
のアルミナ水和物A〜Dは何れも水中で表面がプラスに
帯電し、カチオン性を示した。また、これらのアルミナ
水和物A〜Dをイオン交換水に分散させてコロジオン膜
上に滴下して測定用試料を作製し、透過型電子顕微鏡で
観察したところ、すべて平板形状の微粒子であった。
【0211】
【0212】<液体組成物Aの組成> ・グリセリン 7.5部 ・ジエチレングリコール 7.5部 ・アルミナ水和物A 10.0部 ・硝酸 0.3部 ・水 74.7部 上記成分を乳化分散機TKロボミックス(特殊機化工業
(株)製)にて3,000rpmで30分間混合した
後、超音波ホモジナイザーUS−600T((株)日本
精機製作所製)にて10分間分散処理を行った。更に、
遠心分離処理(4,000rpm、15分間)を行い、
粗大粒子を除去して液体組成物Aとした。
【0213】<液体組成物Bの組成> ・1.5−ペンタンジオール 10.0部 ・エチレングリコール 7.5部 ・アルミナ水和物B 10.0部 ・硝酸 0.6部 ・水 71.9部 上記成分を乳化分散機TKロボミックス(特殊機化工業
(株)製)にて3,000rpmで30分間混合した
後、超音波ホモジナイザーUS−600T((株)日本
精機製作所製)にて30分間分散処理を行った。更に、
遠心分離処理(4,000rpm、15分間)を行い、
粗大粒子を除去して液体組成物Bとした。
【0214】<液体組成物Cの組成> ・グリセリン 7.5部 ・プロピレングリコール 7.5部 ・アルミナ水和物C 10.0部 ・硝酸 0.5部 ・水 74.5部 上記成分を乳化分散機TKロボミックス(特殊機化工業
(株)製)にて3,000rpmで30分間混合した
後、超音波ホモジナイザーUS−600T((株)日本
精機製作所製)にて20分間分散処理を行った。更に、
遠心分離処理(4,000rpm、15分間)を行い、
粗大粒子を除去して液体組成物Cとした。
【0215】<液体組成物Dの組成> ・2−ピロリドン 7.5部 ・エチレン尿素 7.5部 ・アルミナ水和物D 10.0部 ・硝酸 0.5部 ・水 74.5部 上記成分を乳化分散機TKロボミックス(特殊機化工業
(株)製)にて3,000rpmで30分間混合した
後、超音波ホモジナイザーUS−600T((株)日本
精機製作所製)にて15分間分散処理を行った。更に、
遠心分離処理(4,000rpm、15分間)を行い、
粗大粒子を除去して液体組成物Dとした。
【0216】上記で得られた液体組成物A〜Dについ
て、表2に、下記の方法で測定した物性値と、下記の評
価方法及び評価基準で評価した価結果を夫々示した。
【0217】(1)微粒子の平均粒子径・粒度分布 微粒子の固形分濃度が0.1%になるように、液体組成
物をイオン交換水で希釈した後、超音波洗浄機にて5分
間分散させて、電気泳動光散乱光度計(大塚電子(株)
社製、ELS−8000、液温25℃、石英セル使用)
を用いて散乱強度を測定した。平均粒子径は、付属のソ
フトウェアを用い、散乱強度からキュムラント解析法に
よって求めた。また、粒度分布は同様に、散乱強度か
ら、ヒストグラム法のMarquadt解析法により散乱強度の
頻度分布を求め、小粒径側から散乱強度を累積した際の
10%と90%の時の粒子径を求めた。
【0218】(2)pH 各液体組成物に対し、液温25℃でpHメーター計(堀
場製作所(株)製、カスタニーpHメーターD−14)
を用いて測定した。
【0219】(3)ゼータ電位 微粒子の固形分濃度が0.1%になるように、液体組成
物をイオン交換水で分散させた後に、ゼータ電位測定機
(ブルックヘブン社製、BI−ZETAplus、液温20℃、ア
クリルセル使用)で測定した。
【0220】(4)タンク保存性 各液体組成物を、それぞれキヤノン製BJF8500用
インクタンク(BCI−8WF)と同型のインクタンク
に詰めた後、5℃及び60℃の恒温槽に1ヶ月間静置保
存して、タンク内の液体組成物の液物性の変化、及び該
インクタンクをキヤノン製プリンターBJF8500に
装着した際の記録ヘッドからの吐出性を、下記の基準で
評価した。 ○:いずれの場合においてもタンク内でチクソ性が発現
せず、流動性があり、吐出安定性も良好。 ×:少なくともいずれかの場合において、タンク内でチ
クソ性が発現し、吐出性も不安定。
【0221】(5)沈降率 液体組成物をキヤノン製BJF8500用インクタンク
(BCI−8WF)と同型のインクタンクに詰めた後、
60℃の恒温槽に1ヶ月間静置保存してタンク容量の5
%をタンクの上下から各々抜き出し、微粒子濃度を、I
CPによるアルミニウムの定量分析により求め、下記式
より沈降率を求めた。
【0222】(6)ワイピング耐久 図1と同様の装置を用い、図1中の記録ヘッド2に各液
体組成物を詰めたインクタンクを装着し、該記録ヘッド
2のワイピング耐久試験を行い、下記の基準で評価し
た。具体的には、キヤノン製プリンターBJF8500
の改造機を用い、該プリンター用インクタンク(BCI
−8WF)と同型のインクタンクに各液体組成物を詰め
て該プリンターに装着し、記録ヘッドのワイピング耐久
試験を行なった。 ◎:20,000回以上のワイピング回数でも印字のヨ
レやカスレがなく、吐出安定性に優れていた。 ○:15,000回以上のワイピング回数でも印字のヨ
レやカスレがなく、吐出安定性に優れていた。 △:10,000回以上のワイピング回数でも印字のヨ
レやカスレがなく、吐出安定性は良好であった。 ×:10,000回未満のワイピング回数で印字のヨレ
やカスレが発生し、吐出が不安定になった。
【0223】(7)目詰まり 液体組成物を詰めたインクタンクを装着した図3と同様
の記録ヘッドを図1と同様の記録装置から外して、35
℃/Dryの恒温槽に2週間放置した。具体的には、キ
ヤノン製BJF8500用インクタンク(BCI−8W
F)と同型のインクタンクに各液体組成物を詰め、該プ
リンターに装着し、全てのノズルが印字可能であること
を確認後、該インクタンクを装着したまま記録ヘッドを
プリンター本体からはずして、上記条件下で放置した。
そして、再度記録装置に記録ヘッドを装着して、記録ヘ
ッドの目詰まりが解消されるまでの吸引回復回数で評価
した。 ◎:吸引回復回数が2回以内で、記録ヘッドの目詰まり
が解消された。 ○:吸引回復回数が3〜4回の間で、記録ヘッドの目詰
まりが解消された。 ×:吸引回復回数が5回以上でも記録ヘッドの目詰まり
が解消されなかった。
【0224】(8)微粒子凝集物の細孔半径及び細孔容
積 下記の手順に従って、各液体組成物を処理した後、得ら
れた粉体試料をセルに入れ、120℃で8時間真空脱気
して、カンタクローム社製のオムニソープ1を用いて窒
素吸着脱離法により測定した。 (i)液体組成物A〜Dを大気雰囲気下120℃で10
時間乾燥して、ほぼ溶媒分を蒸発させて乾燥する。 (ii)上記乾燥物を120〜700℃まで1時間で昇温
させた後、700℃で3時間焼成する。 (iii)焼成後、得られた焼成物を徐々に常温に戻し、
焼成物をメノウ乳鉢を用いて粉体化する。
【0225】
【0226】次に、本発明の実施例及び比較例で使用す
るインクサブセット1及び2の作製について説明する。 <インクサブセット1の作製>下記に示す各成分を混合
し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズが0.45μmの
フロロポアフィルター(商品名、住友電工(株)製)に
て加圧濾過し、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシア
ンの各色の染料インク、Bk1、Y1、M1及びC1を
得、これらの染料インクからなる組み合わせをインクサ
ブセット1とした。
【0227】[ブラックインクBk1] ・C.I.ダイレクトブラック195 2.5部 ・2−ピロリドン 10部 ・グリセリン 5部 ・イソプロピルアルコール 4部 ・水酸化ナトリウム 0.4部 ・水 78.1部
【0228】[イエローインクY1] ・Projet Fast Yellow 2(Zeneca社製) 2部 ・C.I.ダイレクトイエロー86 1部 ・チオジグリコール 8部 ・エチレングリコール 8部 ・アセチレノールEH (川研ケミカルス社製) 0.2部 ・イソプロピルアルコール 4部 ・水 76.8部
【0229】[マゼンタインクM1] ・Projet Fast Magenta 2(Zeneca社製) 3部 ・グリセリン 7部 ・尿素 7部 ・アセチレノールEH (川研ケミカルス社製) 0.2部 ・イソプロピルアルコール 4部 ・水 78.8部
【0230】[シアンインクC1] ・C.I.ダイレクトブルー199 3部 ・エチレングリコール 7部 ・ジエチレングリコール 10部 ・アセチレノールEH(川研ケミカルス社製)0.3部 ・水 79.7部
【0231】<インクサブセット2の作製>下記に示す
各成分によって顔料分散液を調製し、これを用いてブラ
ックインクBk2を作製した。更に、色材を代えた以外
は上記と同様にして得られた各色の顔料分散液を用い
て、イエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料インクY
2、M2及びC2を得た。そして、これらの顔料インク
Bk2、Y2、M2及びC2からなる組み合わせをイン
クサブセット2とした。
【0232】[ブラックインクBk2] (顔料分散液の作製) ・スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体 (酸価140、重量平均分子量5,000)1.5部 ・モノエタノールアミン 1.0部 ・ジエチレングリコール 5.0部 ・イオン交換水 81.5部
【0233】上記成分を混合し、ウォーターバスで70
℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。この溶液に新
たに試作されたカーボンブラック(MCF88、三菱化
成製)10部、イソプロピルアルコール1部を加え、3
0分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処
理を行った。 ・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製) ・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径 ・粉砕メディアの充填率:50%(体積比) ・粉砕時間:3時間 更に、遠心分離処理(12,000rpm.、20分
間)を行い、粗大粒子を除去して顔料分散液とした。
【0234】(ブラックインクBk2の作製)上記の顔
料分散液を使用し、下記の組成比を有する成分を混合
し、顔料を含有するインクを作製し、これをブラックイ
ンクBk2とした。 ・上記顔料分散液 30.0部 ・グリセリン 10.0部 ・エチレングリコール 5.0部 ・N−メチルピロリドン 5.0部 ・エチルアルコール 2.0部 ・イオン交換水 48.0部
【0235】[イエローインクY2]ブラックインクB
k2の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF8
8、三菱化成製)10部を、ピグメントイエロー74に
代えたこと以外はブラックインクBk2の調製と同様に
して、顔料含有イエローインクY2を調製した。
【0236】[マゼンタインクM2]ブラックインクB
k2の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF8
8、三菱化成製)10部を、ピグメントレッド7に代え
たこと以外はブラックインクBk2の調製と同様にし
て、顔料含有マゼンタインクM2を調製した。
【0237】[シアンインクC2]ブラックインクBk
2の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF8
8、三菱化成製)10部を、ピグメントブルー15に代
えたこと以外はブラックインクBk2の調製と同様にし
て、顔料含有シアンインクC2を調製した。
【0238】(実施例1〜8)上記のようにして得られ
た本発明の液体組成物A〜Dと、インクサブセット1
(Bk1、Y1、M1及びC1)、及びインクサブセッ
ト2(Bk2、Y2、M2及びC2)の各インクセット
を用いて、下記の表3の組み合わせで、印字を行った。
これを本発明の実施例1〜8とした。
【0239】
【0240】上記のようにして、液体組成物A〜Dとイ
ンクサブセット1及び2を組み合わせて使用する実施例
1〜8の着色部形成方法では、PPC用紙(キヤノン
製)に記録を行った。また、その際に使用したインクジ
ェット記録装置としては、図1に示したのと同様の記録
装置を用い、図3に示した記録ヘッドを5つ用いてカラ
ー画像を形成した。具体的には、キヤノン製プリンター
BJF800の改造機を用い、普通紙耐水強化剤のイン
クタンク内に液体組成物を詰め、各インクは夫々の色に
対応するインクタンクに詰めて画像形成を行なった。こ
の際、液体組成物を先打ちして先ず記録紙上に付着さ
せ、その後、インクを付着させた。
【0241】具体的には、印字領域を3回の走査で印字
する3パスファイン印字を行った。このとき、液体組成
物は、各パス毎にイエロー、マゼンタ、シアン及びブラ
ックの何れかのインクが印字される画素位置に印字を行
った。即ち、各パス毎のイエロー、マゼンタ、シアン及
びブラックの印字データの論理和を液体組成物の印字デ
ータとして用いた。尚、該ファイン印字時のファインマ
スクの種類には、特に制限はなく、公知の技術が利用可
能であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0242】ここで用いた記録ヘッドは、600dpi
の記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数9.
6kHzとした。600dpiのヘッドを使用したとき
の1ドット当たりの吐出量は、イエロー、マゼンタ、シ
アンインク及び液体組成物については、それぞれ15n
g、ブラックインクについては1ドット当たり30ng
のヘッドを使用した。尚、これらの記録条件は、実施例
及び比較例を通じて同一である。
【0243】(比較例1及び2)実施例で使用したイン
クサブセット1及び2のみを用いて、下記の表4のよう
にして印字を行った。
【0244】上記インクサブセット1及びインクサブセ
ット2のみを用いての記録(比較例1及び2)において
は、記録ヘッドは600dpiの記録密度を有し、駆動
条件としては、駆動周波数9.6kHzとした。600
dpiの記録ヘッドを使用したときの1ドット当たりの
吐出量は、イエロー、マゼンタ及びシアンインクについ
ては夫々約15ng、ブラックインクについては1ドッ
ト当たり約30ngのヘッドを使用し、実施例1〜8の
場合と同条件で記録を行った。
【0245】[評価方法及び評価基準]上記の実施例1
〜8及び比較例1、2で得られた夫々の記録画像につい
て、下記の評価方法及び評価基準で評価を行った。表5
に、その結果をまとめて示した。
【0246】(記録画像の評価方法) (1)発色性 高精細XYZ・CIELAB・RGB標準画像(SHI
PP)(監修:高精細標準画像作成委員会、発行:画像
電子学会)のRGBカラーチャートをプリンタを用いて
印字し、それらのカラーチャートを測色した。発色性の
評価は、同技術解説書に記載されている方法で、色彩分
布の3次元的な広がり(以下、文中では色域体積と呼
ぶ)の計算を行い、比較した。その際、印字画像を形成
する際の画像処理は同一条件とし、測色は、印字後24
時間経過後、GRETAGスペクトロリノで光源:D5
0、視野:2°の条件で測定した。その評価基準を以下
に示した。この際、インクサブセットのみの印字画像
(比較例1及び2)に対しての色域体積の比を、評価基
準とした。
【0247】AAA:色域体積比が1.7倍以上。 AA:色域体積比が1.5〜1.7倍未満。 A:色域体積比が1.4〜1.5倍未満。 BB:色域体積比が1.2〜1.4倍未満。 B:色域体積比が1.0〜1.2倍未満。 C:色域体積比が1.0倍未満。
【0248】尚、これとは別に、インクジェット用コー
ト紙(商品名:カラーBJ用紙LC−101、キヤノン
(株)製)を用いてインクサブセット1で印字して画像
を形成し、上記の比較例1の印字物との色域体積の比を
求めたところ、1.3倍であった。
【0249】(2)均一性 前記したプリンターを用いて、二次色のレッド、ブルー
及びグリーンのベタ画像を印字した後、目視にて、白モ
ヤと色ムラに関して色の均一性を評価した。その際、特
に均一性の悪い色を評価対象とした。評価基準は以下の
通りである。 A:白モヤや色ムラは殆ど発生しない。 B:若干紙の繊維に沿って白モヤや色ムラが見えるが、
実質上問題のないレベルである。 C:紙の繊維に沿って著しく白モヤや色ムラが見える。
【0250】(3)スジムラ 前記したプリンターを用いて、二次色のレッド、ブルー
及びグリーンのベタ画像を印字した後、目視にて、スジ
ムラを評価した。この際、特にスジムラの悪い色を評価
対象とした。評価基準は以下の通りである。 A:スジムラは殆ど発生しない。 B:若干ヘッドスキャン毎のスジムラが見えるが、実質
上問題のないレベルである。 C:著しくヘッドスキャン毎の白いスジムラが見える。
【0251】(4)風合い 前記したプリンターを用いて、イエロー、マゼンタ、シ
アン及びブラック各色のインクのベタ画像を印字した
後、目視にて被記録媒体の風合いを評価した。評価基準
は、以下の通りである。 A:印字部及び未印字部が共に違和感がなく普通紙の風
合いを残している。 B:印字部と未印字部で風合いが異なる、又は記録媒体
全体が普通紙の風合いと大きく異なる。
【0252】
【0253】(実施例9〜15)使用する被記録媒体の
種類による画像品質への影響を調べるため、上記で作成
した液体組成物Bとインクサブセット1とを用いて、下
記1)〜7)の商品名で広く流通している7種類の「普
通紙」を用い、これらの普通紙上で、インクサブセット
1を構成する4色のインク各々と、該液体組成物Bとを
上記実施例と同様に印字して実施例9〜15の記録画像
を形成した。この画像を、上記した評価基準に基づき評
価した。得られた結果を表6に示した。
【0254】被記録媒体 1)キヤノン社製:PB用紙 2)キヤノン社製:Brilliant White paper 3)Union Camp社製:Great White Inkjet 4)ハンマーミル(Hammermill)社製:Jet Print 5)ゼロックス(Xerox)社製:Xerox4024 6)ヒューレットパッカード(Hewlett Packard)社製 :Bright White Inkjet Paper 7)Aussdat Ray社製:RayJet
【0255】
【0256】以上の結果、実施例9〜15の着色部の形
成方法においては、表6に示されているように、被記録
媒体被記録媒体の種類によらず、発色性、均一性、スジ
ムラ及び風合いの何れにおいても満足できる画像が得ら
れることが確認できた。
【0257】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
特に、普通紙の風合いを残しながらインクジェット用コ
ート紙並みの優れた発色性と色の均一性を得ることがで
き、ベタ画像部のスジムラが少ないインクジェット記録
画像が得られ、且つ、保存性や記録ヘッドの耐久性等の
信頼性にも優れる液体組成物、インクセット、着色部形
成方法及びインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したインクジェットプリント装置
を模式的に示す一部破断斜視図である。
【図2】図1中のヘッドカートリッジの模式的斜視図で
ある。
【図3】図1中のヘッドカートリッジのインク吐出部の
構造を模式的に示す部分斜視図である。
【図4】図1のインクジェットプリント装置のワイピン
グ動作を示す模式図であり、(A)は各ヘッドのプリン
ト領域側からホームポジションへの移動とインク用ブレ
ードの上昇、(B)はプリントヘッドのワイピング、
(C)は液体組成物吐出ヘッドのワイピング、(D)は
各ブレードの下降をそれぞれ示す図である。
【図5】図1のインクジェットプリント装置のワイピン
グ動作を示す模式図であり、(A)は各ブレードの上
昇、(B)は各ヘッドのホームポジションからプリント
領域側への移動、(C)は液体組成物用ブレードの下
降、(D)はプリントヘッドのワイピングとインク用ブ
レードの下降をそれぞれ示す図である。
【図6】図1のインクジェットプリント装置のワイピン
グ動作を示す模式図であり、(A)はインク用ブレード
の上昇、(B)は各ヘッドのホームポジション側からプ
リント領域側への移動とプリントヘッドのワイピング、
(C)は各ヘッドのプリント領域側からホームポジショ
ン側への移動とインク用ブレードの待機と液体組成物用
ブレードの上昇、(D)各ヘッドのホームポジション側
への移動と液体組成物吐出ヘッドのワイピングをそれぞ
れ示す図である。
【図7】図1のインクジェットプリント装置の廃液回収
系統を示す模式図である。
【図8】図7の廃液回収系統の一部変更例を示す模式図
である。
【図9】コート紙にインクジェット記録を行なったとき
の着色部の状態を説明する模式的断面図である。
【図10】本発明にかかるインクカートリッジの一実施
態様を示す概略図である。
【図11】図10のインクカートリッジを装着した記録
ヘッドの概略図である。
【図12】本発明にかかる記録ユニットの一実施態様を
示す概略図である。
【図13】本発明にかかるインクジェット画像の着色部
の状態を説明する模式的断面図である。
【図14】本発明にかかるインクジェット記録画像の着
色部の形成工程を示す概略工程図である。
【図15】記録ユニットの斜視図である。
【図16】本発明にかかるインクジェットプリント装置
の一つの実施態様を模式的に示す一部破断斜視図であ
る。
【図17】図16のインクジェットプリント装置のワイ
ピング動作を示す模式図であり、(A)はインク用ブレ
ードの上昇、(B)はプリントヘッドのワイピング、
(C)はインク用ブレードの下降、(D)は液体組成物
が適正位置についた後の両ブレードの上昇、(E)は液
体組成物と第2のブラックインク用ヘッドのワイピン
グ、(F)は両ブレードの下降をそれぞれ示す図であ
る。
【符号の説明】
1:プリントヘッド(インク吐出ヘッドカートリッジ) 2:液体組成物吐出ヘッド(液体組成物吐出ヘッドカー
トリッジ) 3:キャリッジ 4:ガイド軸(走査レール) 5:駆動ベルト 6,7:搬送ローラ 8,9:搬送ローラ 10:被記録媒体 11:回復ユニット 12:キャップ(プリントヘッド用) 13:キャップ(液体組成物吐出ヘッド用) 14:吸引ポンプ(インク用) 15:吸引ポンプ(液体組成物用) 16:ブレード(プリントヘッド用) 17:ブレード(液体組成物吐出ヘッド用) 18:ブレードホルダー(プリントヘッドブレード用) 19:ブレードホルダー(液体組成物吐出ヘッドブレー
ド用) 21:インクタンク部 22:(インク)吐出部 22A:(液体組成物)吐出部 23:ヘッド側コネクタ 24:廃液タンク 25:吸収体 25A:インク吸収体 25B:液体組成物吸収体 26:廃インク導管 27:廃液導管 81:吐出口形成面 82:吐出口 83:共通液室 84:液路 85:電気熱変換体(発熱抵抗体等) 901:基紙 903:インク受容層 905:多孔質微粒子 907:接着剤 909:インク浸透部 1001:カートリッジ 1003:インク収容部 1005:液体組成物収容部 1101:記録ヘッド 1201:記録ユニット 1201Y:イエローインク収容部 1201M:マゼンタインク収容部 1201C:シアンインク収容部 1201L:液体組成物収容部 1201Bk:ブラックインク収容部 1203:記録ヘッド 1301:被記録媒体 1302:被記録媒体の繊維間の空隙 1303:微粒子 1305:色材 1307:(色材を保持する)微粒子の凝集物 1309:(被記録媒体の繊維付近の)微粒子の凝集物 I:着色部 IM:主画像部 IS:周辺部 1400:着色部 1401:反応部 1402:インク流出部 1403:被記録媒体 1404:色材 1405:被記録媒体の繊維間の空隙 1406:液体組成物 1407:液溜り 1409:微粒子 1411:微粒子同士の集まり 1413:インク 1415:色材が付着した微粒子の凝集物 1500:記録ユニット 1501:ヘッド部 1502:大気連通口
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年10月17日(2002.10.
17)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】 液体組成物、インクセット及び被記録
媒体に着色部を形成する方
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【請求項】 そのゼータ電位が、−5〜−90mVで
ある請求項1〜5の何れか1項に記載の液体組成物。
【請求項】 更に水中での一次解離定数pKbが、5
以下である塩基を含み、そのpHが7〜12に調整され
ている請求項1〜5及び8の何れか1項に記載の液体組
成物。
【請求項1】 色材を含むインクと、該色材と反応性
を有する微粒子を含む液体組成物とを少なくとも独立に
備えているインクセットであって、該液体組成物が、請
求項1又は2に記載の液体組成物であることを特徴とす
るインクセット。
【請求項1】 インクが、アニオン性若しくはカチオ
ン性の水性インクであり、且つ液体組成物が、該水性イ
ンクに対して逆極性に表面が帯電している微粒子を分散
状態で含む水性の液体組成物である請求項1に記載の
インクセット。
【請求項1】 インクが、イエローインク、マゼンタ
インク、シアンインク、ブラックインク、レッドイン
ク、ブルーインク及びグリーンインクからなる群から選
ばれる少なくとも1つである請求項10又は11に記載
のインクセット。
【請求項1】 インクが、アニオン性であり、且つ液
体組成物のゼータ電位が、+5〜+90mVである請求
項1〜1の何れか1項に記載のインクセット。
【請求項1】 インクが、アニオン性であり、且つ液
体組成物が、水中での一次解離定数pKaが、5以下の
酸を含み、pHが2〜7に調整されている請求項1
の何れか1項に記載のインクセット。
【請求項15】 インクが、カチオン性であり、且つ液
体組成物のゼータ電位が、−5〜−90mVである請求
項1〜1の何れか1項に記載のインクセット。
【請求項16】 インクが、カチオン性であり、且つ液
体組成物が、水中での一次解離定数pKbが、5以下の
塩基を含み、pHが7〜12に調整されている請求項1
〜12及び15の何れか1項に記載のインクセット。
【請求項17インクが、下記i)〜iii)の何れか
を含有する請求項10〜14の何れか1項に記載のイン
クセットi)アニオン性基を有する水溶性染料、 ii)顔料と該顔料の分散剤であるアニオン性化合物、 iii)顔料表面にアニオン性基が直接若しくは他の原子
団を介して結合されている顔料
【請求項18前記インク及び前記液体組成物がイン
クジェット記録用である請求項1〜1の何れか1項
に記載のインクセット。
【請求項19】 色材を含むインクを被記録媒体に付与
する工程(i)と、液体組成物を被記録媒体に付与する
工程(ii)とを少なくとも有する被記録媒体に着色部を
形成する方法であって、該インクと液体組成物の各々が
請求項10〜18の何れか1項に記載のインクセットを
構成しているインクと液体組成物であることを特徴とす
る被記録媒体に着色部を形成する方法。
【請求項20】 工程(i)における被記録媒体へのイ
ンクの付与及び工程(ii)における液体組成物の被記録
媒体への付与の少なくとも一方、記録信号に応じてオ
リフィスから吐出させて行なうインクジェット記録方法
によって行う請求項19に記載の被記録媒体に着色部を
形成する方法。
【請求項21】 色材を含むアニオン性又はカチオン性
のインクと共に被記録媒体に付与され、該被記録媒体上
に着色部を形成するのに用いられる請求項1に記載の液
体組成物であって、上記着色部の形成が、上記液体組成
物と上記インクとが液体の状態で接触し、且つ液体組成
物の微粒子表面に、インク中の色材がインク中で有して
いる分子状態と実質的に同等の分子状態を保持しつつ吸
着若しくは結合してなされることを特徴とする液体組成
物。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正内容】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カラー画像の形成
において発色性と色の均一性に優れた画像を得る技術に
関し、とりわけ、インクジェット記録方式を利用した画
像形成に最適に使用できる液体組成物、これを用いたイ
ンクセット及び被記録媒体に着色部を形成する方法に
する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】また、本発明の他の目的は、より一層色再
現範囲が広く、色の均一性にも優れ、ベタ部のスジムラ
の発生が良好な状態に抑制されたインクジェット記録物
を形成することができると共に、印字における信頼性、
具体的には、低温や高温環境での長期間の保存安定性、
吐出ヘッドの目詰まりや吸引回復時のワイピングによる
ヘッド表面の耐久性にも優れる液体組成物、該液体組成
物とインクとを組み合わせたインクセット及び被記録媒
体に着色部を形成する方法を提供することにある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的は、下記の本発
明によって達成することができる。即ち、本発明は、色
材を含むインクと共に被記録媒体に付与されて該被記録
媒体上に着色部を形成するのに用いられる液体組成物で
あって、該液体組成物が、少なくとも溶媒と上記色材と
反応性を有する微粒子を含み、且つ該微粒子の、動的光
散乱法により測定される液体組成物中での平均粒子径が
30〜200nmの範囲にあり、及び散乱強度の10%
累積値が10nm以上で、90%累積値が300nm以
下であることを特徴とする液体組成物、また、本発明
は、色材を含むインクと、該色材と反応性を有する微粒
子を含む液体組成物とを少なくとも独立に備えているイ
ンクセットであって、該液体組成物が、上記の液体組成
物であることを特徴とするインクセットである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】また、本発明は、(i)色材を含むインク
を被記録媒体に付与する工程と、(ii)液体組成物を被
記録媒体に付与する工程とを少なくとも有する被記録媒
体に着色部を形成する方法であって、該インクと液体組
成物の各々が上記に記載のインクセットを構成している
インクと液体組成物であることを特徴とする被記録媒体
に着色部を形成する方法である。本発明の被記録媒体に
着色部を形成する方法の好ましい実施形態は、上記にお
いて、 1)工程(ii)を行なった後に、工程(i)を行なう被
記録媒体に着色部を形成する方法 2)工程(i)を行なった後に、工程(ii)を行なう被
記録媒体に着色部を形成する方法 が挙げられる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】また、本発明は、色材を含むアニオン性又
はカチオン性のインクと共に被記録媒体に付与され、該
被記録媒体上に着色部を形成するのに用いられる上記
記載の液体組成物であって、上記着色部の形成が、上記
液体組成物と上記インクとが液体の状態で接触し、且つ
液体組成物の微粒子表面に、インク中の色材がインク中
で有している分子状態と実質的に同等の分子状態を保持
しつつ吸着若しくは結合してなされることを特徴とする
液体組成物である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 真夫 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 倉林 豊 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2C056 EA04 EA13 EA21 EE17 FA03 FC02 HA01 2H086 BA05 BA53 BA55 BA59 BA60 4J039 BE01 BE22 CA03 CA06 EA15 EA16 EA17 EA19 EA20 EA44 GA24

Claims (40)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 色材を含むインクと共に被記録媒体に付
    与されて該被記録媒体上に着色部を形成するのに用いら
    れる液体組成物であって、該液体組成物が、少なくとも
    溶媒と上記色材と反応性を有する微粒子とを含み、且つ
    該微粒子の、動的光散乱法により測定される液体組成物
    中での平均粒子径が30〜200nmの範囲にあり、及
    び散乱強度の10%累積値が10nm以上で、90%累
    積値が300nm以下であることを特徴とする液体組成
    物。
  2. 【請求項2】 微粒子の、動的光散乱法により測定され
    る液体組成物中での平均粒子径が50〜120nmの範
    囲であり、且つ散乱強度の10%累積値が20nm以上
    で、90%累積値が250nm以下である請求項1に記
    載の液体組成物。
  3. 【請求項3】 インクが、アニオン性若しくはカチオン
    性の水性インクであり、且つ液体組成物が、水性であっ
    て、上記水性インクに対して逆極性に表面が帯電してい
    る微粒子を分散状態で含む請求項1又は2に記載の液体
    組成物。
  4. 【請求項4】 微粒子が、着色部を形成する際にインク
    中の色材の凝集を防ぎつつ該微粒子表面に色材を吸着す
    る微粒子である請求項1に記載の液体組成物。
  5. 【請求項5】 微粒子が、着色部を形成する際に、該微
    粒子表面にインク中の色材を単分子状態で吸着する機能
    を有する請求項1に記載の液体組成物。
  6. 【請求項6】 そのゼータ電位が、+5〜+90mVで
    ある請求項1に記載の液体組成物。
  7. 【請求項7】 更に酸を含み、そのpHが2〜7に調整
    されている請求項1に記載の液体組成物。
  8. 【請求項8】 酸の水中での一次解離定数pKaが、5
    以下である請求項7に記載の液体組成物。
  9. 【請求項9】 そのゼータ電位が、−5〜−90mVで
    ある請求項1に記載の液体組成物。
  10. 【請求項10】 更に塩基を含み、そのpHが7〜12
    に調整されている請求項1に記載の液体組成物。
  11. 【請求項11】 塩基の水中での一次解離定数pKb
    が、5以下である請求項10に記載の液体組成物。
  12. 【請求項12】 色材を含むインクと、該色材と反応性
    を有する微粒子を含む液体組成物とを少なくとも独立に
    備えているインクセットであって、該液体組成物が、請
    求項1に記載の液体組成物であることを特徴とするイン
    クセット。
  13. 【請求項13】 インクが、アニオン性若しくはカチオ
    ン性の水性インクであり、且つ液体組成物が、該水性イ
    ンクに対して逆極性に表面が帯電している微粒子を分散
    状態で含む水性の液体組成物である請求項12に記載の
    インクセット。
  14. 【請求項14】 インクが、イエローインク、マゼンタ
    インク、シアンインク、ブラックインク、レッドイン
    ク、ブルーインク及びグリーンインクからなる群から選
    ばれる少なくとも1つである請求項12に記載のインク
    セット。
  15. 【請求項15】 インクが、各々別々にイエローイン
    ク、マゼンタインク及びシアンインクを含んでいる請求
    項12に記載のインクセット。
  16. 【請求項16】 インクが、各々別々にイエローイン
    ク、マゼンタインク、シアンインク及びブラックインク
    を含んでいる請求項12に記載のインクセット。
  17. 【請求項17】 インクが、アニオン性であり、且つ液
    体組成物のゼータ電位が、+5〜+90mVである請求
    項12〜16の何れか1項に記載のインクセット。
  18. 【請求項18】 インクが、アニオン性であり、且つ液
    体組成物が、酸を含み、そのpHが2〜7に調整されて
    いる請求項12〜16の何れか1項に記載のインクセッ
    ト。
  19. 【請求項19】 液体組成物に含有させる酸が、水中で
    の一次解離定数pKaが5以下のものである請求項18
    に記載のインクセット。
  20. 【請求項20】 インクが、カチオン性であり、且つ液
    体組成物のゼータ電位が、−5〜−90mVである請求
    項12〜16の何れか1項に記載のインクセット。
  21. 【請求項21】 インクが、カチオン性であり、且つ液
    体組成物が、塩基を含み、そのpHが7〜12に調整さ
    れている請求項12〜16の何れか1項に記載のインク
    セット。
  22. 【請求項22】 液体組成物に含有させる塩基が、水中
    での一次解離定数pKbが5以下のものである請求項2
    1に記載のインクセット。
  23. 【請求項23】 インクがアニオン性であり、且つイン
    ク中にアニオン性化合物を含む請求項12〜19の何れ
    か1項に記載のインクセット。
  24. 【請求項24】 アニオン性化合物が、アニオン性基を
    有する水溶性染料を含む請求項23に記載のインクセッ
    ト。
  25. 【請求項25】 アニオン性化合物が、表面にアニオン
    性基を有する顔料を含む請求項23に記載のインクセッ
    ト。
  26. 【請求項26】 インクが、顔料と、該顔料の分散剤で
    あるアニオン性化合物とを含む請求項23に記載のイン
    クセット。
  27. 【請求項27】 インクが、カチオン性であり、且つカ
    チオン性化合物を含んでいる請求項12〜16及び請求
    項20〜22の何れか1項に記載のインクセット。
  28. 【請求項28】 色材を含むインクを被記録媒体に付与
    する工程(i)と、請求項1に記載の液体組成物を被記
    録媒体に付与する工程(ii)とを少なくとも有すること
    を特徴とする被記録媒体に着色部を形成する方法。
  29. 【請求項29】 インクが、アニオン性若しくはカチオ
    ン性の水性インクであり、且つ液体組成物が、上記イン
    クとは逆の極性に表面が帯電している微粒子が分散状態
    で含まれている水性の液体組成物である請求項28に記
    載の被記録媒体に着色部を形成する方法。
  30. 【請求項30】 工程(ii)を行なった後に、工程
    (i)を行なう請求項28又は29に記載の被記録媒体
    に着色部を形成する方法。
  31. 【請求項31】 工程(i)を行なった後に、工程(i
    i)を行なう請求項28又は29に記載の被記録媒体に
    着色部を形成する方法。
  32. 【請求項32】 工程(i)を行なった後に、工程(i
    i)を行ない、その後に再び工程(i)を行なう請求項
    28又は29に記載の被記録媒体に着色部を形成する方
    法。
  33. 【請求項33】 工程(i)における被記録媒体へのイ
    ンクの付与を、該インクを記録信号に応じてオリフィス
    から吐出させて行なうインクジェット記録方法によって
    行う請求項28〜32の何れか1項に記載の被記録媒体
    に着色部を形成する方法。
  34. 【請求項34】 インクジェット記録方法が、インクに
    熱エネルギーを作用させて吐出させる方法である請求項
    33に記載の被記録媒体に着色部を形成する方法。
  35. 【請求項35】 工程(ii)における被記録媒体への液
    体組成物の付与を、該液体組成物を記録信号に応じてオ
    リフィスから吐出させて行うインクジェット記録方法に
    よって行なう請求項28〜34の何れか1項に記載の被
    記録媒体に着色部を形成する方法。
  36. 【請求項36】 インクジェット記録方法が、液体組成
    物に熱エネルギーを作用させて吐出させる方法である請
    求項35に記載の被記録媒体に着色部を形成する方法。
  37. 【請求項37】 色材を含むインクを収容したインク収
    容部と、該インクを吐出させるためのインクジェットヘ
    ッドを備えた第1の記録ユニットと、請求項1に記載の
    液体組成物を収容した液体組成物収容部と、該液体組成
    物を吐出させるためのインクジェットヘッドを備えた第
    2の記録ユニットとを備えていることを特徴とするイン
    クジェット記録装置。
  38. 【請求項38】 色材を含むインクを収容したインク収
    容部と、請求項1に記載の液体組成物を収容した液体組
    成物収容部と、上記インク収容部に収容されているイン
    ク、及び上記液体組成物収容部に収容されている液体組
    成物を各々独立に吐出させるためのインクジェットヘッ
    ドとを備えていることを特徴とするインクジェット記録
    装置。
  39. 【請求項39】 インクジェットヘッドが、熱エネルギ
    ーを作用させて液体を吐出させるサーマルインクジェッ
    トヘッドである請求項37又は38に記載のインクジェ
    ット記録装置。
  40. 【請求項40】 色材を含むアニオン性又はカチオン性
    のインクと共に被記録媒体に付与され、該被記録媒体上
    に着色部を形成するのに用いられる請求項1に記載の液
    体組成物であって、上記着色部の形成が、上記液体組成
    物と上記インクとが液体の状態で接触し、且つ液体組成
    物の微粒子表面に、インク中の色材がインク中で有して
    いる分子状態と実質的に同等の分子状態を保持しつつ吸
    着若しくは結合してなされることを特徴とする液体組成
    物。
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