JP2003040609A - 赤燐粒子の製造方法及び安定化赤燐の製造方法 - Google Patents

赤燐粒子の製造方法及び安定化赤燐の製造方法

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JP2003040609A
JP2003040609A JP2001356921A JP2001356921A JP2003040609A JP 2003040609 A JP2003040609 A JP 2003040609A JP 2001356921 A JP2001356921 A JP 2001356921A JP 2001356921 A JP2001356921 A JP 2001356921A JP 2003040609 A JP2003040609 A JP 2003040609A
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particles
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Ryohei Imamura
良平 今村
Yutaka Konose
豊 木ノ瀬
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Nippon Chemical Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、電気信頼性が要求される分野への
適用を可能とすることができる赤燐系難燃剤で用いる赤
燐粒子の製造方法、および該赤燐粒子を用いた耐食性に
優れた安定化赤燐の製造方法を提供する。 【解決手段】 赤燐粒子を、酸で洗浄することを特徴と
する赤燐粒子の製造方法。更に、前記で処理した赤燐粒
子を用いて該赤燐粒子の表面を無機物で被覆処理した
後、次いで熱硬化性樹脂で被覆処理することを特徴とす
る安定化赤燐の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、赤燐粒子から溶出
するリンのオキソ酸の溶出を低減することができる赤燐
系難燃剤に用いる赤燐粒子の製造方法およびこの赤燐粒
子を用いた、耐食性に優れた安定化赤燐の製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】封止材は半導体ICを空気中の湿気やホ
コリ等から保護し、半導体ICの取り扱いを容易にする
ものであり、現在はエポキシ樹脂封止材がほとんどを占
めている。
【0003】従来、エポキシ樹脂封止材の難燃剤として
は、ハロゲン化エポキシ樹脂またはハロゲン化エポキシ
樹脂と三酸化アンチモンの併用使用が行われていた。と
ころが最近、地球環境汚染の問題や健康被害が浮上する
とともに、難燃剤についてもノンハロゲン化への要求が
高まり、塩素、臭素などのハロゲン化合物や三酸化アン
チモンは使用されなくなる傾向にある。ノンハロゲン系
の難燃剤として、赤燐は有力な難燃剤であるが、赤燐を
使用する場合は赤燐と空気中の水分との反応により微量
のホスフィンガスが発生する問題や、赤燐表面からのリ
ンのオキソ酸が溶出するという問題を抱えていた。
【0004】赤燐表面から溶出したリンのオキソ酸は、
例えば半導体IC回路に接触した場合、アルミの配線を
腐食して信頼性低下の原因となり、これらの溶出イオン
の低減は赤燐系難燃剤をエポキシ樹脂封止材に適用する
場合の大きい問題であり、また、その他の電気信頼性が
要求される分野への赤燐の使用を困難なものとしている
一つの要因である。
【0005】赤燐からのホスフィン発生の問題について
は、過去に多くの検討がなされており、赤燐表面をアル
ミニウム、チタニウムなどの無機金属水酸化物で被覆処
理をおこなったり、フェノール樹脂やメラミン樹脂など
の有機化合物で被覆処理したり、あるいは、無機化合物
と有機化合物の2重被覆処理方法などを行なうことによ
り、ホスフィン発生量を低減する方法等が提案されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記し
た被覆処理した赤燐にいたっても、赤燐表面からのリン
のオキソ酸が溶出してくるため、積層板や半導体封止材
等を初めとする電気信頼性が要求される分野に対して、
適用することが困難であった。例えば、半導体封止用の
エポキシ樹脂に赤燐系難燃剤を使用した場合に、封止材
の信頼性試験において、赤燐から溶出するリンのオキソ
酸により、IC回路が腐食され、信頼性が低下するとい
う問題がある。赤燐からリンのオキソ酸が溶出する一つ
の原因として、赤燐表面の被覆処理方法が良好な場合で
も、エポキシ樹脂封止材を製造する際に、赤燐が他の材
料、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、シ
リカフィラー等と一緒に混合、混練する際に、赤燐粒子
が機械的な摩擦力やせん断力を受けて、赤燐の被覆層が
剥離し、この剥離した個所から赤燐と水とが直接接触し
てリンのオキソ酸が溶出するものと考えられる。この場
合、封止材の信頼性試験では不合格となる場合が多い。
【0007】半導体封止用エポキシ樹脂の赤燐系難燃剤
としては、例えば、ポリリン酸メラミンと、表面をフェ
ノール樹脂で被覆した後、更にエポキシシランカップリ
ング剤及びアミノシランカップリング剤で被覆した赤燐
を併用する方法(特開平10−182940号公報)、
表面層がTixy (x、yは正数で、x:y=1:2
〜1:4)である赤燐系難燃剤を用いる方法(特開平7
−173372号公報)、赤燐の表面を水酸化アルミニ
ウムで被覆した後、更にその表面をフェノール樹脂で被
覆したもので、平均粒子径が2〜8μm、最大粒子径が
20μm以下である赤燐系難燃剤を用いる方法(特開平
10−152599号公報)、表面層がSixy
(X、Yは正数で、X:Y=1:2〜1:4)である赤
燐系難燃剤を用いる方法(特開平7−157542号公
報)等が提案されている。また、被覆処理した赤燐系難
燃剤とBiOX (OH)Y (NO3Z (X=0.9〜
1.1、Y=0.6〜0.8、Z=0.2〜0.4)や
Mg4.3 Al2 (OH)12.6CO3 ・3.5H2 Oのイ
オン捕捉剤を併用する方法も提案されている(特開平8
−151427号公報、特開平9−227765号公
報)。
【0008】しかしながら、前記の被覆処理した赤燐系
難燃剤は、エポキシ樹脂封止材を製造する際に、赤燐粒
子が機械的な摩擦力やせん断力を受けて、赤燐の被覆層
が剥離し、この剥離した個所から赤燐と水とが直接接触
してリンのオキソ酸が溶出する。また、イオン捕捉剤を
併用する方法においても、リンのオキソ酸の捕捉能力が
低いため、なおも現実的な課題の解決には至っていな
い。
【0009】これら従来技術において、提案されている
赤燐系難燃剤は、上述したとおり、赤燐粒子表面を無機
物又は/及び熱硬化性樹脂で被覆処理するか、又はこの
被覆処理した被覆赤燐と、リンのオキソ酸を捕捉する成
分との混合物とするものであり、このような研究につい
て数多くの検討がなされているが被覆処理する前の赤燐
粒子の段階で安定化処理する方法についての知見はほと
んどないのが現状である。
【0010】従って、本発明の目的は、電気信頼性が要
求される分野への適用を可能とすることができる赤燐系
難燃剤で用いる赤燐粒子の製造方法、および該赤燐粒子
を用いた耐食性に優れた安定化赤燐の製造方法を提供す
ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる実
情において、鋭意研究を重ねた結果、赤燐粒子表面を無
機物叉は/及び熱硬化性樹脂で被覆処理する前の赤燐粒
子の段階で、酸で洗浄してリンのオキソ酸の溶出の一つ
の要因となる黄燐や、リンの分解触媒となるFe、N
i、Cu等の金属分を除去した赤燐粒子は、赤燐粒子か
ら溶出するリンのオキソ酸の溶出を低減されたものとな
ることを見出し本発明を完成するに至った。
【0012】即ち、本発明の第1の発明は、赤燐粒子
を、酸で洗浄することを特徴とする赤燐粒子の製造方法
を提供するものである。
【0013】また、本発明の第2の発明は、前記で得ら
れる赤燐粒子表面を無機物で被覆処理した後、次いで熱
硬化性樹脂で被覆処理することを特徴とする安定化赤燐
の製造方法を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。 (赤燐粒子)本発明の赤燐粒子の製造方法は、赤燐粒子
を酸で洗浄処理することを特徴とするものであり、好ま
しくは、以下の(A1)〜(A2)の工程を含むことに
より実施される。 (A1)赤燐粒子の粒度調製を行う工程 (A2)赤燐粒子を酸で洗浄処理する工程
【0015】前記(A1)工程は、赤燐粒子を用いる用
途に応じて粒度調製を行う工程であり、粒度調製を行う
赤燐粒子の形状は、特に制限はなく、破砕状、塊状、球
状の何れであってもよい。
【0016】通常、赤燐粒子の平均粒子径は、レーザー
法により求められる平均粒子径が1〜50μmの範囲に
調製を行う。この理由は、平均粒子径が1μm未満で
は、赤燐粒子を被覆するのが技術的に難しいことから実
用的でなく、一方、50μmを越えると被覆処理した赤
燐の樹脂中の分散性が悪くなり、好ましい難燃効果も得
られにくい傾向があることから好ましくない。
【0017】また、かかる赤燐粒子は、粒径1μm未満
のものが10重量%以下、好ましくは5重量%以下とな
るように粒度調製を行うことが溶出するリンのオキシ酸
の低減と好ましい難燃効果を得る上で好ましい。
【0018】また、本発明の赤燐粒子を、例えば、半導
体封止材用のエポキシ樹脂の難燃剤用として用いる場合
には、赤燐粒子はICパッケージの形態に合わせて好適
な平均粒子径と最大粒子径を調製することが好ましい。
即ち、使用されるICパッケージの形態により、それぞ
れ好適な範囲の粒子径が存在する。例えば、CSP(C
hip size package、チップサイズパッ
ケージ)やBGA(Ball grid Array、
ボールグリッドアレイ)などの液状封止材やトランスフ
ァーBGAと呼ばれる薄型パッケージに使用する場合
は、基板とICチップとの隙間(Gap)よりも大きい
粒子が存在することは好ましくなく、この場合は、レー
ザー法により求められる平均粒子径が1〜10μm、最
大粒子径が20μm以下であることが好ましい。これに
対して、DIP(Dual inlin packag
e、デュアル インラインパッケージ)やZIP(Zi
g−Zag inlin package、ジグザグ
インライン パッケージ)と呼ばれる比較的厚型のIC
パッケージに使用する場合は、レーザー法により求めら
れる平均粒子径が10〜50μm、最大粒子径が150
μm以下が好ましい。TSOP(Thin smale
outline package、薄型スモールアウ
トラインパッケージ)、TQFP(Thin quad
flat package、薄型クリッド フラット
パッケージ)とよばれる薄型ICパッケージに使用す
る場合は、この中間の粒度特性のものを使用することが
好ましく、レーザー法により求められる平均粒子径が5
〜20μm、最大粒子径が45μm以下が好ましい。
【0019】上記のような平均粒子径、最大粒子径及び
粒径が1μm未満の粒子が10重量%以下の粒度調製し
た赤燐粒子を得るには、通常、ビーズミル、ボールミル
等の湿式粉砕機を用い、粉砕することにより、平均粒子
径が1〜50μmの範囲で、且つ粒径1μmの粒子の含
有量が10重量%以下のものが得られるが、更に、分級
操作をすることにより、容易に最大粒子径を制御し所望
の粒度の赤燐粒子を得ることができる。
【0020】なお、この(A1)の赤燐粒子の粒度調製
を行う工程は、後述する(A2)工程を行う前であって
も、(A2)工程の後であってもよい。
【0021】前記(A2)工程は、赤燐粒子を酸で洗浄
処理する工程であり、本発明の赤燐粒子の製造方法にお
いて、例えば、以下の2つの方法により実施することが
好ましい。 赤燐粒子を水に分散させたスラリーとし、次いで、こ
のスラリーに酸を添加して洗浄処理する方法(以下、
「の製造方法」と呼ぶ)。 赤燐粒子を水に分散させたスラリーとし、次いで、こ
のスラリーにアルカリを添加して洗浄処理した後、この
洗浄後の赤燐粒子スラリーに酸を添加して洗浄処理する
方法(以下、「の製造方法」と呼ぶ)。
【0022】前記〜の製造法で用いることができる
酸の種類としては、特に制限はなく、無機酸でも有機酸
でも用いることができる。無機酸としては、例えば、硝
酸、リン酸、硫酸、塩酸、亜硫酸、アミド硫酸、メタン
スルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、
ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエン
スルホン酸、過塩素酸、過沃素酸、オルト過沃素酸、過
マンガン酸、亜硝酸、燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、砒酸、
亜砒酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸、六フッ化燐酸、六
フッ化アンチモン酸、六フッ化砒酸、クロム酸、亜塩素
酸、次亜塩素酸、セレン酸、亜セレン酸、シアン酸、チ
オシアン酸、テルル酸、亜テルル酸、珪酸、けいフッ化
水素酸、ヘキサフルオロ珪酸、ポリ燐酸、メタ燐酸、モ
リブデン酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、
食酢、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプ
ロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプ
リン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミ
リスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデ
カン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、
イソ酪酸、ピバル酸、イソ吉草酸、イソカプロン酸、2
−エチル酪酸、3、3−ジメチル酪酸、イソカプリル
酸、2−エチルヘキサン酸、イソカプリン酸、アクリル
酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、3−
ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オク
テン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン
酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エライジ
ン酸、2−メチルクロトン酸、3−メチルクロトン酸、
チグリン酸、シナモン酸、シクロプロパンカルボン酸、
シクロブタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、
シクロヘキサンカルボン酸、トリクロロ酢酸、トリブロ
モ酢酸、トリフルオロ酢酸、フェニル酢酸、グリコール
酸、乳酸、などの脂肪族モノカルボン酸、蓚酸、マロン
酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、
スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二
酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン
酸、マレイン酸モノメチル、リンゴ酸、グルタミン酸、
酒石酸、クエン酸などの脂肪族多価カルボン酸、安息香
酸、トルイル酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、
ブチル安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、アニス酸、エト
キシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、ブトキシ安息香
酸、アミノ安息香酸、N、N−ジメチルアミノ安息香
酸、ニトロ安息香酸、フルオロ安息香酸、レゾルシン
酸、ケイ皮酸などの芳香族モノカルボン酸、フタル酸、
イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメ
シン酸、ピロメリット酸などの芳香族多価カルボン酸、
フェノール、o−フェニルフェノール、p−アミノフェ
ノール、p−ニトロフェノール、カテコール、レゾルシ
ン、β−ナフトール、2−クロロフェノールなどの石炭
酸類が挙げられる。これらの酸は1種又は2種以上で用
いることができ、この中、硝酸が洗浄効率が高いことか
ら特に好ましい。
【0023】一方、前記の製造法で用いることができ
るアルカリの種類としては、特に制限はなく、例えば、
アンモニアガス、アンモニア水、苛性ソーダ、苛性カ
リ、NaHCO3、Na2CO3、K2CO3、KHCO3
Ca(OH)2等の無機アルカリ、またはエタノールア
ミン等の有機アルカリ等が挙げられ、これらのアルカリ
は1種又は2種以上で用いることができる。
【0024】前記の製造方法は、赤燐粒子5〜50重
量部を水100重量部に分散させ赤燐粒子スラリーを調
製し、次いで、このスラリーに前記の酸を加え、スラリ
ーのpHを1.5以下、好ましくは1.0以下とし、温
度5〜100℃、好ましくは60〜90℃で、0.5時
間以上、好ましくは3時間以上酸性下で洗浄処理を行
う。
【0025】前記の製造方法は、赤燐粒子5〜50重
量部を水100重量部に分散させ赤燐粒子スラリーを調
製し、次いで、このスラリーに前記アルカリを加え、ス
ラリーのpHを9以上、好ましくは10以上とし、温度
5〜100℃、好ましくは60〜90℃で、0.5時間
以上、好ましくは3時間以上アルカリ性環境下で洗浄処
理を行い、次いで引き続き前記の製造方法に従って、
このスラリーに酸を加え、スラリーのpHを1.5以
下、好ましくは1.0以下とし、温度5〜100℃、好
ましくは60〜90℃で、0.5時間以上、好ましくは
3時間以上酸性環境下で洗浄処理を行えばよい。
【0026】通常、赤燐粒子を前記条件にて酸洗浄する
ことにより、Fe、Ni、Cu等の赤燐の分解触媒とな
る金属分の除去や、化学的に不安定で、発火性がありリ
ンのオキソ酸の溶出の一つの原因となる黄燐を除去する
ことができる。一方、赤燐粒子を前記条件にてアルカリ
洗浄することにより、黄燐を除去することができ、この
アルカリ洗浄の場合、過酸化水素、過塩素酸、過マンガ
ン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、オゾン等の酸
化剤を系内に存在させて行うことが好ましく、この酸化
剤を系内に存在させて、アルカリ洗浄を行うことによ
り、洗浄の際に発生するホスフィンを随時リンのオキソ
酸に酸化して安全に作業を進めることができる。この酸
化剤の添加量は、特に制限はないが、赤燐粒子100重
量に対して、多くの場合0.0001〜1重量部で充分
である。洗浄処理終了後、ろ過し、純水で洗浄して、所
望により乾燥して赤燐粒子製品とする。
【0027】かく洗浄処理を施した赤燐粒子は、無処理
の赤燐粒子に比べてPO4イオン、PHO3イオン、PH
22イオン等のリンのオキソ酸の溶出量が少ない赤燐粒
子となる。例えば、本発明の製造方法で得られる赤燐粒
子は、該赤燐粒子8gに水80mlを加えて、80℃で
20時間加熱した際に溶出するPO4イオン濃度が60
0ppm以下、好ましくは500ppm以下、PHO3
イオン濃度が600ppm以下、好ましくは500pp
m以下であり、PH22イオン濃度は600ppm以
下、好ましくは550ppm以下であることから、赤燐
系難燃剤用の赤燐粒子として好適に用いてリンのオキソ
酸の溶出が少ない安定化赤燐とすることができる。
【0028】(安定化赤燐)本発明の安定化赤燐の製造
方法は、前述のように酸で洗浄処理を施した赤燐粒子表
面を無機物で被覆し、次いで熱硬化性樹脂で被覆処理す
ることを特徴とするものである。
【0029】赤燐粒子の表面を被覆処理する無機物とし
ては、Zn、Al、Mg、Ti、Si、Co、Zr、S
nから選ばれる酸化物又は水酸化物の1種又は2種以上
が挙げられ、これらの被覆に用いられる無機物は、含水
物であっても無水物であってもよい。赤燐粒子表面を被
覆処理する熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール
系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリ
エステル系樹脂、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素
−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、フ
ルフリルアルコール−ホルマリン系樹脂等から選ばれる
1種又は2種以上が挙げられ、この中、フェノール樹脂
が樹脂分散性の面で特に好ましい。
【0030】本発明の安定化赤燐の製造方法は、酸処理
を施した赤燐粒子を水に分散させた赤燐粒子スラリー
に、Zn、Al、Mg、Ti、Si、Co、Zr、Sn
から選ばれる少なくとも1種以上の水溶性金属塩を添加
し、次いで該赤燐粒子の水性懸濁液にアルカリを添加し
て前記金属の酸化物又は水酸化物を赤燐粒子表面に沈殿
させる第一工程、次いで、得られる被覆赤燐スラリーに
前記熱硬化性樹脂の合成原料又はその初期縮合物を添加
し、その熱硬化性樹脂の単独重合条件で重合反応を行う
第二工程を順次行うものである。なお、本発明の安定化
赤燐の製造方法において、前記第一工程終了後、ろ過洗
浄して第一工程終了後の赤燐を10%スラリーとしたと
きの電気伝導度が1000μs/cm以下、好ましくは
500μs/cmとして次の第二工程を行うことが赤燐
を使用した材料のイオン性不純物による電気信頼性の低
下を防ぐため特に好ましい。即ち、この洗浄処理を施す
ことにより、後の最終製品の洗浄操作を赤燐粒子の被覆
を傷つけることなく容易に実施することができるように
なり、また、次の第二工程で被覆した熱硬化性樹脂中に
極力不純物が取り込まれないで済むので、その使用の最
中にこの被覆成分中に取り込まれた不純物による溶出を
抑えることができる。この洗浄を行う方法としては、特
に制限はないがリパルプ等の手段により行うことが特に
好ましい。
【0031】より具体的には、第一工程は、酸処理を施
した赤燐粒子5〜30重量部、好ましくは10〜20重
量部を水100重量部に分散させ赤燐粒子スラリーを調
製し、次いで、この赤燐粒子スラリーに、例えば、Z
n、Al、Mg、Ti、Si、Co、Zr、Snから選
ばれる少なくとも1種以上の水溶性金属塩0.05〜3
重量部、好ましくは0.2〜2重量部を添加し、アンモ
ニアガス、アンモニア水、苛性ソーダ、苛性カリ、Na
HCO3、Na2CO3、K2CO3、KHCO3、Ca(O
H)2等の無機アルカリ剤、またはエタノールアミン等
の有機アルカリ剤から選ばれた少なくとも1種以上のア
ルカリを添加し、該スラリーのpHを6〜10に調製
し、前記金属の水酸化物又は酸化物を赤燐粒子表面に沈
殿させる。次いで、所望により、放冷したのち、処理後
の赤燐を10%スラリーとしたときの電気伝導度が10
00μs/cm以下、好ましくは500μs/cm以下
となるまで無機物を被覆した赤燐をろ過洗浄する。な
お、赤燐粒子を水酸化亜鉛で被覆処理する場合には、前
記第一工程をpH6.5以上に常に維持して行うことが
特に好ましい。
【0032】第二工程は、第一工程で得られる無機物を
被覆した赤燐スラリーに、前記熱硬化性樹脂の合成原料
又はその初期縮合物を添加し、その熱硬化性樹脂の単独
重合条件で重合反応を行うことで被覆処理するものであ
る。例えば、被覆樹脂としてフェノール系樹脂を用いる
場合には、第一工程で得られた無機物を被覆した赤燐5
〜30重量部、好ましくは10〜20重量部を水100
重量部に分散させ赤燐スラリーを調製し、次いで、該赤
燐スラリーを、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアル
カリ又は塩酸、硝酸、硫酸等の酸を添加し、次いで、フ
ェノール樹脂の初期縮合物(固形分として)0.25〜
3重量部、好ましくは0.5〜2重量部を添加して、6
0〜90℃で1〜3時間攪拌しながら重合反応を行えば
よい。この重合反応は、塩化アンモニウム等の緩衝剤の
存在下に行うことが好ましい。また、この第二工程で、
無機物を被覆した赤燐として水酸化亜鉛で被覆処理した
赤燐粒子を用いる場合には、pH6.5以上で熱硬化性
樹脂の重合反応を行うことが特に好ましい。また、この
第二工程において、所望により、例えば、粒径が2μm
以下、好ましくは0.2〜1μmのZnO、ZnC
3、Zn2SiO4、Al23、ZrO2、TiO2及び
SnO2から選ばれる少なくと1種の金属化合物を0.
25〜20重量部の範囲で反応系内に添加し、重合反応
を行ってもよい。
【0033】反応終了後、濾過、洗浄、乾燥、更に所望
により粒度調製を行って製品とするが、通常この洗浄に
より、塩素イオン、臭素イオン、PO4イオン、PHO3
イオン、PH22イオン、SO4イオン、NH4イオン、
Naイオン、Kイオン等のイオン性化合物が除去され
る。本発明において、この洗浄により得られる安定化赤
燐の10%スラリーとした時の電気伝導度を所望の値ま
で低減したものを製品として用いることが好ましい。通
常この電気伝導度を1000μs/cm以下とすること
により、建築材料、塗料、家庭用品等の汎用品の難燃剤
として用いることができ、好ましくは50〜300μs
/cmとしたものは、その他、例えば、電線、フェノー
ル樹脂成形材料、合板用接着剤、発泡ポリエチレン等の
難燃剤として用いることができる。更にこの電気伝導度
を30μs/cm以下、好ましくは10〜25μs/c
mとしたものは、例えば、封止材、積層板、プリント配
線板、フラットケーブル、コイルボビン、スイッチ、ト
ランス部材、コネクタ等の特に厳しい電気信頼性が要求
される電子部品の難燃剤として用いることができる。本
発明において、この赤燐を洗浄する方法としては、特に
制限はないがリパルプ等の手段により行うことが特に好
ましい。
【0034】かくして、得られる安定化赤燐は、リンの
オキソ酸の溶出が極めて少ない赤燐系難燃剤として各種
樹脂に配合し用いることができる。この場合、安定化赤
燐中のP含有量が65〜97重量%、好ましくは75〜
95重量%であることが優れた難燃効果を得る上で好ま
しい。
【0035】用いることができる樹脂としては、特に限
定はなく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポ
リウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン
樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、不飽
和ポリエステル樹脂、ジアリールフタレート樹脂等の硬
化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチ
レンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート、ポリフェ
ニレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン
6、ナイロン66、ナイロン12、ポリアセタール、ポ
リエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリア
クリロニトリル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレ
ート、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキ
シド、熱可塑性ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリア
ミド、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−
ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン
共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチ
レン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢
酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン
/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ポリエス
テルポリエーテルエラストマー、ポリテトラフルオロエ
チレン及びこれらの変性物等が挙げられる。これらの樹
脂は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよ
く、2種類以上の混合物であってもよい。ここで、硬化
性樹脂とは、熱、触媒、あるいは紫外線などの作用によ
り化学変化をおこして架橋構造が発達し、分子量が増大
して三次元網状構造を有して、硬化して半永久的に不溶
性・不融性となる合成樹脂を示す。また、熱可塑性樹脂
とは、加熱により流動性を示し、これにより賦形が可能
である樹脂のことを表す。
【0036】本発明の安定化赤燐の各種樹脂に対する配
合割合は、樹脂100重量部に対して、1〜20重量
部、好ましくは2〜15重量部である。
【0037】また、本発明の安定化赤燐は、他の難燃剤
と併用し用いることができる。併用することが出来る他
の難燃剤としては、水和金属化合物、リン系難燃剤、含
窒素系難燃剤等が挙げられる。
【0038】水和金属化合物としては、吸熱反応による
燃焼抑制作用のあるMmn ・xH 2 O(Mは金属、
m、nは金属の原子価によって定まる1以上の整数、x
は含有結晶水を示す。)で表わされる化合物または該化
合物を含む複塩であり、具体的には、水酸化カルシウ
ム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水
酸化アルミニウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウ
ム、ドーソナイト、スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、ホウ酸ア
ルミニウム、塩基性炭酸亜鉛、ホウ砂、モリブデン酸亜
鉛、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、ハイドロタルサ
イト、ハイドロカルマイト、カオリン、タルク、セリサ
イト、パイロフィライト、ベントナイト、カオリナイ
ト、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0039】含窒素系難燃剤としては、メラミン、メラ
ミンシアヌレート、メチロール化メラミン、(イソ)シ
アヌール酸、メラム、メレム、メロン、サクシノグアミ
ン、硫酸メラミン、硫酸アセトグアナミン、硫酸メラ
ム、硫酸グアニルメラミン、メラミン樹脂、BTレジ
ン、シアヌール酸、イソシアヌール酸、イソシアヌール
酸誘導体、メラミンイソシアヌレート、ベンゾグアナミ
ン、アセトグアナミン等のメラミン誘導体、グアニジン
系化合物等が挙げられる。
【0040】リン系難燃剤としては、例えば、リン酸ト
リエチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、
リン酸クレジルフェニル、リン酸オクチルジフェニル、
ジエチレンリン酸エチルエステル、ジヒドロキシプロピ
レンリン酸ブチルエステル、エチレンリン酸ジナトリウ
ムエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメ
チル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、
プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチル―
プロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−
ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェ
ニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジ
メチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチ
ルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオ
クチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチル
フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス
(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸、リン酸アンモ
ニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、リ
ン酸グアニル尿素、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニ
ジン、エチレンジアミンリン酸塩、ホスファゼン、メチ
ルホスホン酸メラミン塩等が挙げられる。
【0041】前記した他の難燃剤は1種又は2種以上で
用いられ、これらの中、水和金属化合物が好ましい。ま
た、上記の他の難燃剤の添加量は、樹脂100重量部に
対して1〜150重量部、好ましくは1〜100重量で
ある。
【0042】さらに、本発明の製造方法で得られる安定
化赤燐は、所望によりリン酸成分と反応して不溶性又は
難溶性のリン酸塩として固定する他の金属酸化物、金属
水酸化物、金属炭酸塩又は金属リン酸塩や無機イオン交
換体を併用して樹脂に配合することが出来る。
【0043】他の金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸
塩又は金属リン酸塩としては、例えば、Zn、Mg、T
i、Ca、Al、Co、Zr、Snから選ばれる酸化
物、水酸化物、炭酸塩又はリン酸塩の1種又は2種以上
が挙げられる。具体的には、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、オ
ルト珪酸亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウ
ム、酸化チタン、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、
炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、第三リン酸カルシ
ウム、ヒドロキシアパタイト、珪酸カルシウム、酸化ア
ルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化コバルト、水酸
化コバルト、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、
酸化スズ、水酸化スズ、活性アルミナ等が挙げられ、こ
れらは1種又は2種以上で用いられる。これらは含水物
であっても無水物でもあってもよいが含水物の場合は、
樹脂と混練成型する際に、成型温度により水分が発生
し、この水分が赤燐と反応してホスフィンを発生するな
ど不具合が生じる傾向があることから無水物の方が好ま
しく、この中、活性アルミナが特に好ましい。用いるこ
とができる活性アルミナは、BET比表面積が50m2
/g以上、好ましくは70〜400m2/gのものが好
ましく、また、微細なものが樹脂との均一分散及び溶出
するリンのオキソ酸との反応性の面で好ましく、通常レ
ーザー法により求められる平均粒径が15μm以下、好
ましくは0.5〜10μmのものが好ましい。
【0044】無機イオン交換体としては、ハイドロカル
マイト系無機アニオン交換体、ハイドロタルサイト系無
機アニオン交換体、BiOX (OH)Y (NO3Z
(X=0.9〜1.1、Y=0.6〜0.8、Z=0.
2〜0.4)、Mg4.3 Al2(OH)12.6CO3
3.5H2 O、Sb25 ・2H2 O、SbSiv Bi
wx (OH)y(NO3z・nH2O(V=0.1〜
0.3、w=1.5〜1.9、x=4.1〜4.5、y
=1.2〜1.6、z=0.2〜0.3、n=1〜2)
の無機アニオン交換体等を例示することが出来る。
【0045】これらの金属酸化物、金属水酸化物、金属
炭酸塩又は金属リン酸塩や無機イオン交換体の配合割合
は、安定化赤燐100重量部に対して、通常1〜20重
量部、好ましくは5〜20重量部とすることが好まし
い。
【0046】また、樹脂に配合するその他の成分とし
て、りん系、イオン系、ヒンダードフェノール系などの
酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、
染料、顔料を含む着色剤、架橋剤、軟化剤、分散剤等の
通常の添加剤と併用することができる。また、必要に応
じて、繊維状、および/または粒状の充填剤を添加し
て、樹脂の剛性を大幅に向上させることができる。この
ような充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊
維、金属繊維、アラミド樹脂、アスベスト、チタン酸カ
リウムウイスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガ
ラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウ
ム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、溶融
シリカ、結晶性シリカ、マグネシア、酸化アルミニウム
が挙げられる。前記した樹脂に配合するその他の成分や
充填剤は、通常用いられる樹脂の種類や樹脂の用途に応
じた配合割合でよい。
【0047】なお、本発明の安定化赤燐は、樹脂に混合
する方法は、特に制限されるものではなく、予め必要に
応じて前記の他の難燃剤、他の配合剤を混合した後、要
すれば加熱しながら混合した後、他の成分と混合するマ
スターバッチ法や、そのまま配合して混合する方法が挙
げられるが、いずれの方法をとるかは、工業的に有利な
方法を適宜選択すればよい。なお、例えば、フェノール
樹脂を用いてマスターバッチとする場合は、本発明の安
定化赤燐を20〜40重量%、好ましくは25〜35重
量%として配合することが特に好ましい。
【0048】本発明の安定化赤燐の製造方法は、赤燐粒
子を酸で洗浄したものを用いるものであり、この酸洗浄
処理により、赤燐粒子の不安定なリン分は酸化され、F
e、Ni、Cu等のリンの分解触媒となる金属分も除去
することができる。更に、一部不安定なリン分はオキソ
酸として赤燐粒子から除去されるだけでなく、この不安
定なリンの一部は、―P―O-の構造に変化し、このよ
うな赤燐粒子を、例えば、水酸化アルミニウムを用いて
被覆処理する場合、水酸化アルミニウムが―P―O-
造に化学的に結合し、−P−O−Al−OHの構造が形
成されるため、リンのオキソ酸の溶出が低減されるもの
と考えられる。
【0049】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明する
が本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】<赤燐粒子の調製>塊状の赤燐を湿式ボー
ルミル装置により粉砕後、更に湿式ビーズミル装置で粉
砕したスラリーを625メッシュの篩にかけ、分級し、
平均粒子径5.5μm、最大粒子径20μm、粒径1μ
m未満の粒子の含有量が2重量%の赤燐粒子を得た。
【0051】実施例1 上記で調製した赤燐粒子210gを水525gを加え、
赤燐スラリーとし、硝酸水溶液でスラリーのpHを1に
調製し、80℃で4時間保持し、ろ過、純水で洗浄し
て、赤燐粒子を得た。
【0052】実施例2 上記で調製した赤燐原料210gに水525gを加えて
赤燐スラリーとし、過酸化水素水溶液を0.7ml加え
た。次いで、水酸化ナトリウム水溶液でpHを10に調
製し、80℃で6時間保持した。次いで、硝酸を加え、
pHを1に調製した後、80℃で4時間処理した後、ろ
過し、スラリーのpHが8となるまで水で洗浄を行っ
た。
【0053】参考例1 上記で調製した赤燐粒子210gに水525gを加え、
赤燐スラリーとし、30%過酸化水素水溶液を0.7m
lを加えた。次いで、水酸化ナトリウム水溶液でスラリ
ーのpHを10とした後、80℃で6時間保持し、ろ
過、純水で洗浄して、赤燐粒子を得た。
【0054】<溶出試験>実施例1〜2及び参考例1で
得られた赤燐粒子及び実施例1〜2及び参考例1で用い
た酸又はアルカリ処理する前の無処理の赤燐粒子(比較
例1)8gを水100mlのポリプロピレン製ビンに採
取し、蒸留水80mlを加えて密栓する。送風低温乾燥
機にて80℃で20時間加熱、抽出後、乾燥機より取り
出し、10分以内に常温まで冷却し、上澄み液をろ過し
た後、ろ液中の溶出PO4イオン、PHO3イオン及びP
22イオンの濃度をイオンクロマトグラフで測定し
た。その結果を表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】表1の結果より、本発明の製造方法で得ら
れる赤燐粒子は、無処理あるいはアルカリ処理のみのも
のと比べて、溶出するPH2O2イオン、PHO3イオン及びPO4
イオンの濃度が低減されていることが分かる。
【0057】実施例3〜4、参考例2及び比較例2 実施例1〜2、参考例1及び比較例1で調製した赤燐粒
子をそれぞれ10%スラリーとし、このスラリー300
gに硫酸アルミニウム1.2gを加え、攪拌しながら
2.9%アンモニア水でpH8に調製し、80℃で3時
間熟成を行った。放冷した後、10%スラリーの電気伝
導度が1000μs/cm以下となるまで洗浄を行っ
た。次いで、この洗浄後の赤燐を再び10%スラリーと
し、29%アンモニア水でpH10として、フェノール
樹脂(大日本インキ社製、初期縮合物、フェノライトT
D2388;固形分25%)を6g加えた。次いで、塩
酸を用いてpHを6.5に調製し、緩衝剤として塩化ア
ンモニウム0.6gを加えた。次に90℃で1時間硬化
反応を行った。放冷した後、十分にスラリーをろ過、洗
浄し、ろ過ケーキは減圧下に乾燥した後、140℃で1
時間硬化処理を行い、放冷後100メッシュの篩を通過
させて安定化赤燐試料を得た。得られた安定化赤燐の諸
物性を表2に示す。
【0058】<粒径の測定>上記で調製した安定化赤燐
をレーザー法で、マイクロトラック(X100型)粒度
分布測定装置により、平均粒径を測定した。また、分析
用フルイにて最大粒径を測定した。その結果を表2に示
す。
【0059】
【表2】
【0060】注)表2中の電気伝導度は赤燐粒子を10
%スラリーとした時の20℃での電気伝導度を示す。
【0061】<溶出試験>実施例3〜4、参考例2及び
比較例2で得られた安定化赤燐8gを水100mlのポ
リプロピレン製ビンに採取し、蒸留水80mlを加えて
密栓する。送風低温乾燥機にて80℃で20時間加熱、
抽出後、乾燥機より取り出し、10分以内に常温まで冷
却し、上澄み液をろ過した後、ろ液中の溶出PO4イオ
ン、PHO3イオン及びPH22イオンの濃度をイオン
クロマトグラフで測定した。その結果を表3に示した。
【0062】
【表3】
【0063】表3の結果より、本発明の赤燐粒子を用い
て被覆処理を行った安定化赤燐は、溶出するPH3Oイオン濃
度、PHO3イオン濃度、PO4イオン濃度が低減され、特にPHO3
オン濃度とPO4イオン濃度が大幅に低減されていること
が分かる。
【0064】
【発明の効果】上記したとおり、本発明の赤燐粒子の製
造方法によれば、赤燐粒子から溶出するリンのオキソ酸
の量を低減させることができ、また、この赤燐粒子を用
いて、無機物を被覆処理し、次いで熱硬化性樹脂を被覆
処理して得られる本発明の安定化赤燐は、溶出するリン
のオキソ酸の量が極めて少ないことから赤燐系難燃剤の
新たな展開として、電気信頼性が強く要求される分野で
の難燃剤としての使用が期待できる。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 赤燐粒子を、酸で洗浄することを特徴と
    する赤燐粒子の製造方法。
  2. 【請求項2】 下記の(A1)〜(A2)の工程を含む
    ことを特徴とする赤燐粒子の製造方法。 (A1)赤燐粒子の粒度調製を行う工程 (A2)赤燐粒子を酸で洗浄処理する工程
  3. 【請求項3】 前記(A1)の工程は、平均粒子径が1
    〜50μmの粒度に調製するものである請求項2記載の
    赤燐粒子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記(A1)の工程は、平均粒子径が1
    〜10μmで、最大粒子径が20μm以下の粒度に調製
    するものである請求項3記載の赤燐粒子の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記(A1)の工程は、粒径1μm未満
    の粒子が10重量%以下の粒度に調製するものである請
    求項3又は4記載の赤燐粒子の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記酸の洗浄は、pH1.5以下で行う
    請求項1乃至5記載の赤燐粒子の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記酸は、硝酸である請求項1乃至6記
    載の赤燐粒子の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記(A2)工程の前にアルカリ洗浄を
    行う請求項1乃至7記載の赤燐粒子の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記アルカリ洗浄は、酸化剤の存在下に
    行う請求項8記載の赤燐粒子の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1乃至9のいずれか1項に記載
    の製造方法で得られる赤燐粒子表面を無機物で被覆処理
    した後、次いで熱硬化性樹脂で被覆処理することを特徴
    とする安定化赤燐の製造方法。
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