JP2003009573A - 車両用同期機の制御装置 - Google Patents

車両用同期機の制御装置

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Hiroya Tsuji
浩也 辻
Seiji Inoue
誠司 井上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】回転数情報に基づいて正確なモータロック検出
が可能な車両用同期機の制御装置を提供すること。 【解決手段】コントローラ10は、電流センサ5、6の
出力信号に基づいて同期機3の各相電流の少なくとも一
相が所定値以上で、かつ、回転数が所定値以下の場合
に、ロック状態と判定してインバータ12に電流遮断を
指令する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用同期機の制
御装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】発電電
動機により走行動力を発生したり、回生する電気自動
車、ハイブリッド車、燃料電池車において、この発電電
動機として高効率で簡素な構造をもつ同期機を用いるの
が通常である。
【0003】この同期機は、回転位置検出センサにより
そのロータ回転位置をコントローラに出力し、コントロ
ーラは、電流位相がロータ回転位置に対して所定値を保
つように、かつ、入力トルク指令に応じたトルクが出力
されるように、インバータのスイッチング素子をPWM
(パルス幅変調)により断続制御する。
【0004】回転位置検出センサとしては、アナログ
(正弦波電圧や余弦波電圧)を出力するレゾルバなどの
アナログ式回転位置検出センサや、パルス電圧を出力す
るパルス式回転位置検出センサが知られている。
【0005】しかしながら、上記した車両用の同期機で
は、電動トルクを発生しているにもかかわらず回転がで
きない場合、電機子巻線の逆起電力が生じないために大
電流が流れる現象(以下、モータロックとも呼ぶ)が発
生し、インバータのスイッチング素子が過熱損傷する可
能性があった。
【0006】このスイッチング素子の過熱損傷を防止す
るためには、従来、スイッチング素子の温度を検出又は
推定し、それに基づいてスイッチング素子が過熱すると
予測した場合にそれを緊急遮断していた。しかし、この
方法によれば、スイッチング素子から温度センサまでの
伝熱遅れによる検出遅延時間が存在するために、上記モ
ータロック時には電流遮断が手遅れとなってしまう可能
性があった。
【0007】また、スイッチング素子自体の電流を検出
することも考えられるが、従来、上記車両用同期機の制
御装置では、電流センサは同期機の相電流検出のために
設けられ、この相電流は、スイッチング素子と逆並列に
接続されたフライホイルダイオードの電流も含むため
に、スイッチング素子のみの正確な電流を検出すること
ができなかった。
【0008】そこで、本発明者らは、同期機の回転数に
よりモータロックを直接検出することを考えたが、従来
の回転位置検出センサではその検出精度の不足により、
回転停止状態にもかかわらず回転中と誤検出する場合
や、モータロック状態以外の略停止状態においてモータ
制御ができなくなるという問題が生じることがわかっ
た。
【0009】本発明は上記問題点に鑑みなされたもので
あり、検出した回転数情報に基づいて正確なモータロッ
ク検出が可能な車両用同期機の制御装置を提供すること
を、その目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の車両用同
期機の制御装置は、車両走行動力を発生する多相の同期
機の回転位置を検出する回転位置検出センサと、前記同
期機の相電流に相関を有する信号を検出する電流センサ
と、前記センサからの回転位置信号に基づいて前記同期
機の電流をPWM制御するスイッチング素子を有するイ
ンバータと、前記インバータを制御する制御部とを備え
る車両用同期機の制御装置において、前記制御部が、前
記電流センサの前記信号に基づいて前記同期機の各相電
流の少なくとも一相が所定値以上で、かつ、回転数が所
定値以下の場合に、ロック状態と判定して前記インバー
タに電流遮断を指令することを特徴としている。
【0011】モータロック状態では、電機子巻線の各相
電流の少なくとも一相電流は、相当大きな値となる。一
つの相電流が大きいだけではモータロックと断定するこ
とはできず、また、回転数が略0であるだけではモータ
ロックと断定することはできないが、このような大電流
を電機子巻線に通電するにもかかわらず、回転数が電動
方向にほぼ増加せず、略停止状態にあるという場合は、
モータロックと判定して間違いがない。
【0012】したがって、本構成によれば、車両走行独
力発生用の同期機のモータロックを確実かつ速やかに検
出してインバータのスイッチング素子の過熱保護を実現
することができる。
【0013】請求項2記載の構成は請求項1記載の車両
用同期機の制御装置において更に、前記回転位置検出セ
ンサが、多相の同期機の回転位置を検出してアナログ信
号電圧として出力するアナログ式回転位置検出センサか
らなり、前記制御部が、前記回転位置検出センサの出力
信号電圧(回転位置信号)を読み込む期間に前記各スイ
ッチング素子を遮断状態、又は、スイッチング禁止状態
とすることを特徴としている。
【0014】本構成によれば、インバータのスイッチン
グ素子のスイッチングにより生じるサージ電圧や電磁波
ノイズが回転位置検出センサの出力信号電圧に重畳し
て、制御部が同期機の回転位置を誤判定することを防止
することができ、この誤判定により上記モータロック動
作を誤る問題を防止することができる。
【0015】更に説明すると、本発明者らは、車両走行
動力発生用のインバータのスイッチング素子は大電流の
断続を行うために、それにより生じるサージ電圧や電磁
波ノイズが、配線を通じて又は空間的に回転位置検出セ
ンサの出力信号線に影響し、回転位置検出センサの出力
信号電圧に重畳し、これにより、制御部が認識する回転
位置が実際の回転位置からずれる場合があることを発見
した。
【0016】この問題を改善するには、回転位置検出セ
ンサの出力信号電圧をローパスフィルタで濾波したり、
電磁シールド構造を採用したりすることが考えられる
が、完全な除去は容易ではなかった。
【0017】そこで、本構成では、回転位置検出センサ
の出力信号電圧(回転位置信号)を制御部に読み込む期
間にインバータの各スイッチング素子を遮断状態、又
は、スイッチング禁止状態とするので、このスイッチン
グノイズによる回転位置の誤検出の発生を根本的に防止
することができる。したがって、同期機が停止していな
い(所定回転数以上)であるにもかかわらず略停止状態
(モータロック)と誤判定したり、同期機が停止してい
る(所定回転数未満上)であるにもかかわらず略停止状
態(モータロック)でないと誤判定するのを防止するこ
とができ、モータロック検出精度を向上することができ
る。
【0018】なお、インバータのスイッチング素子のこ
のような遮断やスイッチング禁止は、インバータが出力
する電圧波形や電流量を変化させ、同期機のトルクや出
力を目標値からずれさせるが、このようなずれは、制御
部の補正演算により容易に補償することができる。
【0019】請求項3記載の構成によれば請求項2記載
の車両用同期機の制御装置において更に、前記制御部
は、前記各スイッチング素子の前記遮断又は前記スイッ
チング禁止を、前記同期機の回転数が所定値以下で実施
することを特徴としている。
【0020】本構成によれば、モータロックが生じてい
ない高回転領域では、回転位置信号の読み取り時に上記
遮断又はスイッチング禁止を行わないので、上記補償動
作も要らず、制御を簡素化することができる。
【0021】請求項4記載の構成によれば請求項2又は
3記載の車両用同期機の制御装置において、前記制御部
は、前記各スイッチング素子の前記遮断又は前記スイッ
チング禁止を、前記同期機の各相電流の少なくとも一相
が所定値以上である場合に実施することを特徴としてい
る。
【0022】本構成によれば、モータロックが生じてい
ない高回転領域では、同期機の各相電流がすべて小さ
く、モータロックの影響が小さい場合には上記遮断又は
スイッチング禁止を行わないので、上記補償動作も要ら
ず、制御を簡素化することができる。
【0023】請求項5記載の構成は請求項1乃至4のい
ずれか記載の車両用同期機の制御装置において更に、前
記電流センサが、前記同期機の相電流に相関を有する前
記信号として、前記インバータのスイッチング素子のデ
ューティ比を検出することを特徴としている。
【0024】すなわち、スイッチング素子の過熱を招く
モータロック状態において、インバータのスイッチング
素子の少なくとも一つは大きなPWMデューティ比をも
つ。もちろん、一つのスイッチング素子のデューティ比
が単に大きいだけではモータロックと断定することはで
きず、また、回転数が略0であるだけではモータロック
と断定することはできないが、このようなスイッチング
素子のデューティ比を大きく設定したにもかかわらず、
回転数が電動方向にほぼ増加せず、略停止状態にあると
いう場合は、モータロックと判定して間違いがない。
【0025】したがって、本構成によれば、車両用同期
機のモータロックを、簡素な回路構成で確実かつ速やか
に検出してインバータのスイッチング素子の過熱保護を
実現することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の車両走行動力発生用同期
機の制御装置の好適な態様を以下の実施例により詳細に
説明する。
【0027】(構成)車両走行動力発生用同期機装置の
ブロック回路図を図1に示す。
【0028】1は制御装置、2はバッテリ、3は車両走
行動力の発生や回生を行う三相磁石式同期機(本発明で
言う同期機)、4はレゾルバ(本発明で言う回転位置検
出センサ)5、6は電流センサである。制御装置1は、
コントローラ10、平滑コンデンサ11、インバータ1
2を有している。
【0029】インバータ12は、いわゆる三相インバー
タであり、合計6つのスイッチング素子121と、各ス
イッチング素子121と個別に逆並列接続されたフライ
ホイルダイオード(図示省略)とからなる。
【0030】マイコン内蔵のコントローラ(本発明で言
う制御部)10は、レゾルバ4から入力される同期機3
の信号電圧に基づいて同期機3の回転位置及び回転数を
決定し、電流センサ5、6から受け取る電流信号に基づ
いて同期機3の各相電流を決定し、上記相電流及び回転
数から演算した出力トルクと外部から入力されるトルク
指令値との偏差を0とするようにインバータ12の各ス
イッチング素子の制御電極に印加する制御電圧のデュー
ティ比を決定し、インバータ12が必要な振幅と位相と
を有する三相交流電流を発生するように制御している。
また、コントローラ10の制御をもっと簡単な形式に簡
略化することもできる。
【0031】上記説明した車両走行動力発生用同期機装
置の構成や基本動作自体はもはや周知であるので、更に
詳細な説明は省略する。
【0032】(モータロック回避制御)次に、この実施
例の特徴をなすモータロック回避制御動作について図2
に示すフローチャートを参照して以下に詳細に説明す
る。コントローラ10は、上記説明したインバータ制御
を行うメインルーチンに対してこの制御動作を所定定時
間ごとに割り込み実施する。なお、同期機3の高速回転
時には、図2の制御動作を一定回数休止してもよい。
【0033】まず、ステップS100にて、電流センサ
5、6からV、W相電流を読み込み、V、W相電流から
U相電流を演算し、各相電流の任意の一つが所定の電流
しきい値Ithを超えたかどうかを調べ(ステップS10
2)、YESならステップS104へ進み,NOならメ
インルーチンへリターンする。なお、この場合の電流は
高精度の値でなくてもよいので、たとえば、同期機3の
平均相間電圧が所定しきい値を超えたかどうかを検出し
ても良く、インバータ12の任意のスイッチング素子1
21のオン期間(オンデューティ比)が所定しきい値を
超えたかどうかを検出しても良い。
【0034】ステップS104では、前回検出した回転
位置検出センサ4の出力値と前々回のそれとの差から回
転数を算出し、回転数が所定の回転数しきい値nthを超
えたかどうかを調べ(ステップS106)、YESなら
ステップS108へ進み,NOならメインルーチンへリ
ターンする。
【0035】ステップS108では、インバータ12の
各スイッチング素子121を所定サンプリング期間だけ
すべてオフするか、もしくは、現在の状態を上記サンプ
リング期間だけ維持することを指令する。
【0036】次のステップS110では、回転位置検出
センサすなわちレゾルバ4のアナログ信号電圧をサンプ
リングし、次に、回転位置を演算し、今回の回転位置と
前回の回転位置との差をこのルーチンの実行周期(カウ
ンタで計時してもよい)で割って今回の回転数を求め
る。
【0037】次のステップS112では、今回の回転数
が所定の最低回転数しきい値nth未満かどうかを判定
し、YESならモータロック状態と判定してインバータ
12の各ステップS21を遮断し(S114)、NOな
らメインルーチンへリターンする。
【0038】(実施例効果)上記説明したこの実施例の
同期機制御装置では、車両用同期機のモータロックを確
実かつ速やかに検出してインバータのスイッチング素子
の過熱保護を実現することができ、インバータのスイッ
チング素子のスイッチングにより生じるサージ電圧や電
磁波ノイズが回転位置検出センサの出力信号電圧に重畳
して、制御部が同期機の回転位置を誤判定することを防
止することができ、この誤判定により上記モータロック
動作を誤る問題を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を適用した車両走行動力発生
用同期機装置のブロック回路図である。
【図2】図1のコントローラの制御動作を示すフローチ
ャートである。
【符号の説明】
3 三相磁石式同期機(本発明で言う同期機) 4 レゾルバ(本発明で言う回転位置検出センサ) 5、6 電流センサ 10 コントローラ(本発明で言う制御部) 12 インバータ 121 スイッチング素子
フロントページの続き Fターム(参考) 5H115 PA08 PC06 PG04 PI16 PI29 PU10 PU11 PV09 QN02 QN04 RB22 TO04 TO12 TO30 TR04 TU20 TW10 TZ04 5H560 AA08 BB04 BB12 DA10 DC12 EB01 JJ02 JJ04 JJ06 JJ07 RR10 SS02 TT15 UA02 XA02 XA05

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車両走行動力を発生する多相の同期機の回
    転位置を検出する回転位置検出センサと、 前記同期機の相電流に相関を有する信号を検出する電流
    センサと、 前記センサからの回転位置信号に基づいて前記同期機の
    電流をPWM制御するスイッチング素子を有するインバ
    ータと、 前記インバータを制御する制御部と、 を備える車両用同期機の制御装置において、 前記制御部は、前記電流センサの前記信号に基づいて前
    記同期機の各相電流の少なくとも一相が所定値以上で、
    かつ、回転数が所定値以下の場合に、ロック状態と判定
    して前記インバータに電流遮断を指令することを特徴と
    する車両用同期機の制御装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の車両用同期機の制御装置に
    おいて、 前記回転位置検出センサは、多相の同期機の回転位置を
    検出してアナログ信号電圧として出力するアナログ式回
    転位置検出センサからなり、 前記制御部は、前記回転位置検出センサの出力信号電圧
    (回転位置信号)を読み込む期間に前記各スイッチング
    素子を遮断状態、又は、スイッチング禁止状態とするこ
    とを特徴とする車両用同期機の制御装置。
  3. 【請求項3】請求項2記載の車両用同期機の制御装置に
    おいて、 前記制御部は、前記各スイッチング素子の前記遮断又は
    前記スイッチング禁止を、前記同期機の回転数が所定値
    以下で実施することを特徴とする車両用同期機の制御装
    置。
  4. 【請求項4】請求項2又は3記載の車両用同期機の制御
    装置において、 前記制御部は、前記各スイッチング素子の前記遮断又は
    前記スイッチング禁止を、前記同期機の各相電流の少な
    くとも一相が所定値以上である場合に実施することを特
    徴とする車両用同期機の制御装置。
  5. 【請求項5】請求項1乃至4のいずれか記載の車両用同
    期機の制御装置において、 前記電流センサは、前記同期機の相電流に相関を有する
    前記信号として、前記インバータのスイッチング素子の
    デューティ比を検出することを特徴とする車両用同期機
    の制御装置。
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