JP2003001292A - 生物脱窒方法 - Google Patents
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Abstract
独立栄養性脱窒微生物の作用により生物脱窒する方法に
おいて、汚泥(独立栄養性脱窒微生物)の増殖を効果的
に促進させて、生物脱窒装置を短時間で立ち上げる。 【解決手段】 アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を含有
する原水を、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝
酸性窒素を電子受容体とする独立栄養性脱窒微生物の作
用により生物脱窒する方法において、ヒドロキシルアミ
ン、ヒドラジン、二価の鉄イオン及びメタノールからな
る群から選ばれる1又は2以上の増殖促進剤を共存させ
て前記独立栄養性脱窒微生物を増殖させる。
Description
を亜硝酸性窒素の共存下で嫌気的に生物脱窒する方法に
係り、特に、この生物脱窒反応の立ち上げに際して、反
応に関与する独立栄養性脱窒微生物を効果的に増殖させ
て効率的な生物脱窒を行う方法に関する。
川、湖沼及び海洋などにおける富栄養化の原因物質の一
つであり、排液処理工程で効率的に除去する必要があ
る。一般に、排水中のアンモニア性窒素は、アンモニア
性窒素をアンモニア酸化細菌により亜硝酸性窒素に酸化
し、更にこの亜硝酸性窒素を亜硝酸酸化細菌により硝酸
性窒素に酸化する硝化工程と、これらの亜硝酸性窒素及
び硝酸性窒素を従属栄養性細菌である脱窒菌により、有
機物を電子供与体として利用して窒素ガスにまで分解す
る脱窒工程との2段階の生物反応を経て窒素ガスにまで
分解される。
は、脱窒工程において電子供与体としてメタノールなど
の有機物を多量に必要とし、また硝化工程では多量の酸
素が必要であるため、ランニングコストが高いという欠
点がある。
電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体とする独立
栄養性微生物を利用し、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒
素とを反応させて脱窒する方法が提案された。この方法
であれば、有機物の添加は不要であるため、従属栄養性
の脱窒菌を利用する方法と比べて、コストを低減するこ
とができる。また、独立栄養性の微生物は収率が低く、
汚泥の発生量が従属栄養性微生物と比較すると著しく少
ないので、余剰汚泥の発生量を抑えることができる。更
に、従来の硝化脱窒法で観察されるN2Oの発生がな
く、環境に対する負荷を低減できるといった特長もあ
る。
脱窒プロセスは、Strous, M, et al., Appl. Microbio
l. Biotecnol., 50, p.589-596 (1998) に報告されてお
り、以下のような反応でアンモニア性窒素と亜硝酸性窒
素が反応して窒素ガスに分解されると考えられている。
いては、Van de Graaf, et al., Microbiology, 143,
p.2415-2421 (1997) に報告されており、ヒドロキシル
アミンやヒドラジンが脱窒反応の中間物と考えられてい
る。事実、これらの中間物を上記微生物に与えると、一
時的に脱窒速度が高くなることが回分実験で確かめられ
ている (Strous, M. et al., Appl. Environ. Microbio
l., 65(7), 3248-3250 (1990)) 。
法では、反応に関与する独立栄養性脱窒微生物がその収
率が低い分、増殖速度が遅く、反応の立ち上げに長時間
を要するという欠点があった。
に関与すると考えられている独立栄養性脱窒微生物のPl
anctmycete (Strous, M. et al., Nature, 400, p.446-
449(1999)) は、上記反応式のように、アンモニア性窒
素と亜硝酸性窒素をエネルギー源とし、炭酸根を炭素源
として増殖する。しかし、このような基質でこのバクテ
リアを育生させた場合、増殖速度は非常に遅く、汚泥量
が2倍になるまでに最短でも10日の日数を必要とす
る。
存在することが知られている(今城麗,第35回水環境
学会年回要項集,p78(2001))が、上述の如く
増殖速度が遅い上に活性汚泥中に存在する割合は極めて
少ないものと予想され、このため、アンモニア性窒素と
亜硝酸性窒素を適切に与えても、この微生物による脱窒
反応の生起が認められるまでに100日以上の日数を要
する。
物を利用した上記生物脱窒プロセスの実施に当っては、
装置の立ち上げに長時間を要し、また、短時間で立ち上
げるためには、予め大量の種汚泥を準備する必要があ
る。しかし、この種汚泥の準備にも長時間を要する。
く、装置の立ち上げに長時間を要することが、従来にお
いて、独立栄養性脱窒微生物を利用した生物脱窒の実用
化の障害となっていた。
うな独立栄養性脱窒微生物による脱窒反応の中間物とし
てのヒドロキシルアミンやヒドラジンを脱窒反応系に添
加すると、脱窒速度が一時的に高められることが実験的
に確認されているが、この実験は、脱窒反応系内の脱窒
速度、即ち、既に立ち上げられた装置における脱窒速度
だけに注目しており、これらの成分が、脱窒反応に関与
する独立栄養性脱窒微生物の増殖に基質となって関与す
るか否かは明らかにされていない。まして、これらの成
分が増殖速度の向上に寄与するか否かについては全く考
えられていない。
ンモニア性窒素を亜硝酸性窒素の共存下で独立栄養性脱
窒微生物の作用により生物脱窒する方法において、汚泥
(独立栄養性脱窒微生物)の増殖を効果的に促進させ
て、生物脱窒装置を短時間で立ち上げることを可能とす
る生物脱窒方法を提供することを目的とする。
は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を含有する原水
を、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素
を電子受容体とする独立栄養性脱窒微生物の作用により
生物脱窒する方法において、ヒドロキシルアミン、ヒド
ラジン、二価の鉄イオン及びメタノールからなる群から
選ばれる1又は2以上の増殖促進剤を共存させて前記独
立栄養性脱窒微生物を増殖させることを特徴とする。
鉄イオン及びメタノールの1種又は2種以上を共存させ
ることにより、生物脱窒に関与する独立栄養性脱窒微生
物の増殖を効率的に促進させることができる。
ロキシルアミンを用いるのが好適である。
施の形態を詳細に説明する。
水を、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒
素を電子受容体として脱窒する独立栄養性脱窒微生物
は、植種汚泥に、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を含
み、有機物及び酸素を実質的に含まない液を供給して嫌
気状態に維持することにより、自然発生的に増殖させる
ことができる。即ち、このような系では有機物を分解す
る有機物分解菌や、亜硝酸を硝酸化する硝酸生成菌、或
いは硝酸と有機物を反応させて脱窒する従属栄養性の脱
窒菌は増殖せず、上記の独立栄養性脱窒微生物が優勢と
なる。
養性脱窒微生物(汚泥)を増殖させるに際し、系内に、
ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、二価の鉄イオン及び
メタノールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の
増殖促進剤を共存させることにより増殖を促進させる。
く、2種以上を併用しても良い。
おける上記増殖促進剤の濃度やアンモニア性窒素及び亜
硝酸性窒素の濃度の好適範囲は、用いる増殖促進剤の種
類や温度、pH、培地の組成、窒素負荷等により影響さ
れるため、これらの条件に応じて適宜調整することが好
ましいが、一般的には、培地における増殖促進剤の濃度
が0.1〜10mg/Lとなるように増殖促進剤を添加
すると共に、アンモニア性窒素濃度が1〜100mg/
L、亜硝酸性窒素濃度が1〜50mg/Lとなるように
培地を調整するのが好ましい。
ヒドロキシルアミン又はヒドラジン或いは、ヒドロキシ
ルアミンとヒドラジン、二価の鉄イオン及びメタノール
の1種又は2種以上とを用いるのが好ましく、この場合
において、ヒドロキシルアミン単独添加の場合には、培
地のヒドロキシルアミン濃度が1〜10mg/L、特に
2〜3mg/Lとなるように添加するのが好ましく、ヒ
ドロキシルアミンとのその他の増殖促進剤とを併用する
場合には、ヒドロキシルアミンが1〜10mg/L、特
に2〜3mg/Lで増殖促進剤の合計濃度として10〜
20mg/L、特に15〜20mg/Lとなるように添
加するのが好ましい。特に、ヒドラジンは高濃度で共存
すると、毒性を示す場合があるため、ヒドラジンを添加
する場合には、その濃度が0.9mg/L以下となるよ
うにするのが好ましい。
と汚泥の増殖促進効果が十分でなく、上記範囲を超えて
も添加量に見合う効果は望めず、薬剤コストが高くつ
き、好ましくない。
鉄、硫酸第一鉄等の第一鉄塩を用いることができる。
限はなく、一般的には上記独立栄養性脱窒微生物により
生物脱窒を行っている他の処理設備から採取した汚泥
や、硝化脱窒法による排水処理設備から採取した汚泥が
用いられるが、本発明では、増殖促進剤により増殖速度
を十分に高めることができることから、このような独立
栄養性脱窒微生物の存在量が少ないとされている活性汚
泥を植種汚泥とした場合でも、高い増殖速度で汚泥を効
率的に増殖させることができる。
は、当該生物脱窒の原水となるアンモニア性窒素及び亜
硝酸性窒素を含有する排水が一般的に用いられるが、培
地には必ずしもアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とが同
時に存在する必要はなく、本発明の増殖促進剤を共存さ
せることにより、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素との
いずれか一方のみでも汚泥を増殖させることが可能であ
る。
毒性を示すため、亜硝酸性窒素は特に100mg/L以
下となるようにするのが好ましい。
栄養性脱窒微生物の順化の進行に従って変化するため、
系内から定期的に汚泥を採取して増殖状況を調べ、増殖
促進剤やアンモニア性窒素、亜硝酸性窒素等の濃度を適
宜調整することが好ましい。
く、連続式で行っても良い。また、原水の生物脱窒処理
に用いる反応槽で汚泥を培養しても良く、この反応槽と
は別の専用の培養槽で汚泥を培養し、増殖した汚泥を反
応槽に移送しても良い。汚泥を増殖させる槽の形式には
特に制限はなく、汚泥を懸濁状態で反応槽に保持するも
のであっても良く、また、汚泥を自己造粒させてグラニ
ュールを形成するものであっても良い。
ではグラニュール形成に期間を要するので、核となる物
質を添加し、その核の周りに独立栄養性脱窒微生物の生
物膜を形成させることが望ましい。この場合、核とし
て、例えば微生物グラニュールや非生物的な単体を挙げ
ることができる。
しては、メタン菌グラニュール等の嫌気性微生物や従属
栄養性脱窒菌グラニュール等を挙げることができる。メ
タン菌グラニュールは、UASB(Upflow An
aerobic Sludge Blanket;上向
流嫌気性スラッジブランケット)法もしくはEGSB
(Expanded Granular Sludge
Bed;膨張粒状汚泥床)法でメタン発酵が行われて
いるメタン発酵槽で使用されているものを適用できる。
また、従属栄養性脱窒グラニュールは、UASB又はE
GSB等の通常の脱窒槽で利用されるものを適用でき
る。これらのグラニュールはそのままの状態で、又はそ
の破砕物として用いることができる。独立栄養性脱窒微
生物はこのような微生物グラニュールに付着しやすく、
グラニュールの形成に要する時間が短縮される。また、
核として非生物的な材料を用いる場合よりも経済的であ
る。
は、例えば、活性炭、ゼオライト、ケイ砂、ケイソウ
土、焼成セラミック、イオン交換樹脂等、好ましくは活
性炭、ゼオライト等よりなる、粒径50〜200μm、
好ましくは50〜100μmで、平均比重1.01〜
2.5、好ましくは1.1〜2.0の担体を挙げること
ができる。
微生物のグラニュールは、平均粒径が0.25〜3m
m、好ましくは0.25〜2mm程度、平均比重が1.
01〜2.5、好ましくは1.1〜2.0であることが
望ましい。グラニュールの粒度が小さいほど比表面積が
大きくなるので、高い汚泥濃度を維持し、脱窒処理を効
率よく行う点で好ましい。
の条件を採用するのが好ましく、例えば槽内液の温度が
10〜40℃、特に20〜35℃、pHが5〜9、特に
6〜8、溶存酸素濃度が0〜2.5mg/L、特に0〜
0.2mg/L、BOD濃度が0〜50mg/L、特に
0〜20mg/L、窒素負荷が0.1〜5kg−N/m
3・day、特に0.2〜2kg−N/m3・dayの
範囲とするのが好ましい。
なる原水は、アンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を含む
水であり、有機物及び有機性窒素を含むものであっても
よいが、これらは脱窒処理前に予めアンモニア性窒素に
なる程度まで分解しておくことが好ましく、また、溶存
酸素濃度が高い場合には、必要に応じて溶存酸素を除去
しておくことが好ましい。原水は無機物を含んでいても
よい。また、原水はアンモニア性窒素を含む液と亜硝酸
性窒素を含む液を混合したものであってもよい。例え
ば、アンモニア性窒素を含む排水をアンモニア酸化微生
物の存在下に好気性処理を行い、アンモニア性窒素の一
部、好ましくはその1/2を亜硝酸に部分酸化したもの
を原水とすることができる。更には、アンモニア性窒素
を含む排水の一部をアンモニア酸微生物の存在下に好気
性処理を行い、アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化し、ア
ンモニア性窒素を含む排水の残部と混合したものを原水
としても良い。
液等のアンモニア性窒素、有機性窒素及び有機物を含む
排水が処理対象となる場合が多いが、この場合、これら
を好気性又は嫌気性処理して有機物を分解し、有機性窒
素をアンモニア性窒素に分解し、さらに部分亜硝酸化或
いは、一部についての亜硝酸化を行った液を原水とする
ことが好ましい。
割合はモル比でアンモニア性窒素1に対して亜硝酸性窒
素0.5〜2、特に1〜1.5とするのが好ましい。原
水中のアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素の濃度はそれ
ぞれ5〜1000mg/L、5〜200mg/Lである
ことが好ましいが、処理水を循環して希釈すればこの限
りではない。
同程度とするのが好ましい。
り具体的に説明する。
採取した汚泥を添加し、温度30℃、pH7、BOD濃
度20mg/L以下、嫌気条件下(溶存酸素濃度0.2
mg/L以下)に、アンモニア性窒素100mg−N/
L及び亜硝酸性窒素10mg−N/Lを含む合成培地を
通水して連続培養を行った。この合成培地の組成はVan
dc Graaf, et al., Microbiology, 142, p.2187-2196
(1996) に従い、表1に示す通りとした。窒素負荷は、
0.1〜3kg−N/m3・dayとした。
ニア除去速度(脱窒速度)を調べ、結果を図2に示し
た。
去速度(脱窒速度)は、培養開始30日まで極めて低
く、それ以降で次第に上昇した。実用的なアンモニア除
去速度である1.0kg−N/m3・dayの値が得ら
れるまでに要した時間は100日であった。
l., 23, p.93-106 (2000) で報告された塩基配列を用い
た定量PCR(Polymerase Chain Reaction)法によっ
て培地のPlanctmyceteの細菌数を経時的に
計数したところ、細菌数はアンモニア除去速度とほぼ対
応しており、100日後には初発細菌数の約1,000
倍まで増殖したことが確かめられた。
イオン(Fe2+として塩化第一鉄を添加した)及びメ
タノールをそれぞれ10mg/L添加したこと以外は、
比較例1と同様の条件で連続培養を行って、アンモニア
の除去速度(脱窒速度)を調べ、結果を図1に示した。
去速度(脱窒速度)は、比較例1の場合より早期に立ち
上がり、培養開始55日後に実用可能なアンモニア除去
速度1.0kg−N/m3・dayとなった。この値は
更に上昇し、培養開始65日後には比較例1の2倍以上
の高い値が得られた。
地のPlanctmyceteの細菌数を計数したとこ
ろ、比較例1と同様に本実施例でもアンモニア除去速度
と細菌数とがほぼ対応していた。
で反応に関与する微生物の増殖速度が無添加の場合より
も高くなることが確かめられた。
たこと以外は実施例1と同様にして連続培養を行い(た
だし、実施例6では合成培地にアンモニア性窒素を含ま
ず、実施例7では亜硝酸性窒素を含まない。)、培養開
始30日後のPlanctmyceteの細菌数を定量
PCR法により計数し、比較例1における培養開始30
日後のPlanctmyceteの細菌数を1.0とし
た相対値で評価し、結果を表2に示した。なお、表2に
は実施例1について同様に評価した結果も併記した。
を添加することにより、良好な汚泥増殖促進効果が得ら
れることがわかる。
法によれば、アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素の共存下
で独立栄養性脱窒微生物の作用により生物脱窒する方法
において、汚泥(独立栄養性脱窒微生物)の増殖を効果
的に促進させて、生物脱窒装置を短時間で立ち上げるこ
とが可能となる。
変化を示すグラフである。
変化を示すグラフである。
Claims (2)
- 【請求項1】 アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を含有
する原水を、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝
酸性窒素を電子受容体とする独立栄養性脱窒微生物の作
用により生物脱窒する方法において、 ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、二価の鉄イオン及び
メタノールからなる群から選ばれる1又は2以上の増殖
促進剤を共存させて前記独立栄養性脱窒微生物を増殖さ
せることを特徴とする生物脱窒方法。 - 【請求項2】 増殖促進剤がヒドロキシルアミンである
ことを特徴とする請求項1に記載の生物脱窒方法。
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