JP2004298841A - 窒素含有排水の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硝化槽内の残留アンモニア性窒素濃度が50mg−N/L以上となるように調節すると共に、硝化槽内の溶存酸素濃度が所定値以下となるように曝気風量を調節する。硝化槽内の溶存酸素濃度は、アンモニア酸化細菌が生物膜の形で保持されている硝化槽では1.5mg/L以下、アンモニア酸化細菌が浮遊菌の形で保持されている硝化槽では1.0mg/L以下とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒素含有排水をアンモニア酸化細菌の存在下に曝気して硝化する方法に係り、特に、この硝化槽において、長期に亘り、安定かつ効率的な亜硝酸型硝化を行う窒素含有排水の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
排水中に含まれるアンモニア性窒素は河川、湖沼及び海洋などにおける富栄養化の原因物質の一つであり、排液処理工程で効率的に除去する必要がある。一般に、排水中のアンモニア性窒素は、アンモニア性窒素をアンモニア酸化細菌により亜硝酸性窒素に酸化し、更にこの亜硝酸性窒素を亜硝酸酸化細菌により硝酸性窒素に酸化する硝化工程と、これらの亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を従属栄養性細菌である脱窒菌により、有機物を電子供与体(酸素受容体)として利用して窒素ガスにまで分解する脱窒工程との2段階の生物反応を経て窒素ガスにまで分解される。電子供与体である有機物としては、メタノール、酢酸などの生分解性有機物を人為的に添加する場合と、排水中に含まれるBOD成分を利用する場合とがある。
【0003】
このような硝化脱窒処理では、アンモニア性窒素を酸化するために必要な曝気動力が運転コストのうちの大部分を占めている。
【0004】
曝気のためのコストを低減する方法として、硝酸性窒素を生成させず、亜硝酸性窒素を生成させ、亜硝酸性窒素を脱窒する方法が考えられるが、従来においては、硝化工程において安定的に亜硝酸性窒素を生成させる亜硝酸型硝化を行うことが困難であった。即ち、硝化工程における硝化細菌を含む活性汚泥は、通常、アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化する細菌類(Nitrosomonas sp.)と、亜硝酸性窒素を硝酸性窒素に酸化する細菌類(Nitrobacter sp.)とが混在しているため、アンモニア性窒素を選択的に亜硝酸性窒素に酸化することは非常に難しい。
【0005】
一方、近年、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体とする独立栄養性微生物(以下「ANAMMOX菌」と称す場合がある。)を利用し、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させて脱窒する方法が提案された。この方法であれば、有機物の添加は不要であるため、従属栄養性の脱窒菌を利用する方法と比べて、コストを低減することができる。また、独立栄養性の微生物は収率が低く、汚泥の発生量が従属栄養性微生物と比較すると著しく少ないので、余剰汚泥の発生量を抑えることができる。更に、従来の硝化脱窒法で観察されるN2Oの発生がなく、環境に対する負荷を低減できるといった特長もある。
【0006】
このANAMMOX菌を利用する生物脱窒プロセスは、Strous, M, et al., Appl. Microbiol. Biotecnol., 50, p.589−596 (1998)に報告されており、以下のような反応でアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素が反応して窒素ガスに分解されると考えられている。
【0007】
【化1】
【0008】
このANAMMOX菌を利用する生物脱窒方法において処理対象となる原水は、アンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を含む水である。この原水はアンモニア性窒素を含む液と亜硝酸性窒素を含む液を混合したものであってもよい。例えば、アンモニア性窒素を含む排水をアンモニア酸化細菌の存在下に曝気して好気性処理を行い、アンモニア性窒素の一部、好ましくはその1/2を亜硝酸性窒素に部分酸化したものを原水とすることができる。更には、アンモニア性窒素を含む排水の一部をアンモニア酸化細菌の存在下に曝気して好気性処理を行い、アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化し、アンモニア性窒素を含む排水の残部と混合したものを原水としても良い。
【0009】
従って、ANAMMOX菌を利用した生物脱窒処理を行うためには、排水中のアンモニア性窒素をアンモニア酸化細菌により処理するにあたり、硝酸性窒素にまで酸化することなく、酸化を亜硝酸性窒素で止める亜硝酸型硝化を行う必要がある。
【0010】
亜硝酸型硝化を維持するための方法として、従来より提案されている方法には、
▲1▼ 阻害剤を注入する方法(特開平04−161299)
▲2▼ アンモニア性窒素の阻害効果を用いた方法(USB4,720,344)
▲3▼ 設定温度による菌体の増殖速度の違いを利用した方法(EP−A−826639)
▲4▼ 溶存酸素(DO)濃度を調節する方法(特許第3,023,921号)
等が知られている。
【0011】
しかし、阻害剤の使用は薬品コストが高くつく上に、他の微生物に対しても悪影響を及ぼす可能性があるため、好ましくない。また、アンモニア性窒素による阻害を利用した方法では、処理水中にアンモニア性窒素が高濃度で残留するため、残留したアンモニア性窒素を後工程で硝酸にまで酸化して処理する必要があり、亜硝酸を生成させる利点が損なわれる。また、部分的にアンモニア性窒素濃度の高い領域を設けて阻害する場合でも、それ以外のアンモニア性窒素の低い領域で亜硝酸酸化細菌が増殖してしまい、亜硝酸型硝化を維持できない。
【0012】
また、アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌の増殖速度の違いを利用した方法では、反応槽の処理能力が原水中のアンモニア性窒素濃度によって規定されてしまい、高負荷をとれないという欠点があった。
【0013】
更に、DO濃度を調節する方法においては、アンモニア性窒素濃度の低い領域でDO濃度を制御しようとするため、必要量よりも少しでも余分の酸素を供給してしまうとその酸素を用いて硝酸が生成してしまうため、DO濃度の制御が非常に困難で、亜硝酸型硝化を安定的に維持するのが困難であった。
【0014】
特開2003−24987には、亜硝酸型硝化を安定に行う方法として、アンモニア酸化細菌が生物膜の形で保持されている硝化槽を用い、この硝化槽の曝気風量を調節してDO濃度を下げることにより、硝化を亜硝酸型に制御する方法が提案されている。
【0015】
特開2003−24987に記載の方法における低DO濃度での生物膜による亜硝酸型硝化の作用機構は以下の通りである。
【0016】
生物処理に用いられる微生物は本来フロックやグラニュール、生物膜を形成する能力を有し、通常の排水処理においても広く利用されている。通常の曝気槽においては曝気による剪断力が非常に強いため、微生物は数百ミクロン程度の非常に小さなフロックしか形成することができない。フロックでは、内部に基質の拡散抵抗がないという利点もあるが、微生物の密度としてはそれほど高くなく、沈降速度も10m/day程度であるため高負荷運転が困難である。
【0017】
一方、フロックを利用しない生物処理方法として、生物膜法が実用化されており、この場合には汚泥の沈降速度に関する制限は大幅に緩和される。即ち、固定床であれば沈降速度は考慮する必要がなく、グラニュール等の生物膜では高密度で沈降性が良く、沈降速度は10m/hr以上と非常に速い。そして、生物膜内部は非常に微生物濃度が高いため、表面積を確保できれば大量の排水を小容量の硝化槽で高負荷処理することが可能である。
【0018】
また、生物膜においては、基質は表面部分から消費されて行くが、微生物密度が高いために基質はグラニュールの内部深くまで到達する以前につきてしまう。この性質は微生物に与えるDOを制限する場合には非常に有効に働き、生物膜内部では常に酸素が枯渇している状態になる。特に、硝化槽内のDO濃度が1.5mg/L以下、好ましくは0.5mg/L以下においては、活性があるのは生物膜の表面近傍のみに制限される。
【0019】
この条件ではアンモニア酸化細菌のみが活動可能となり、硝化槽内には亜硝酸が蓄積されることになる。また、微生物が成育できる空間は生物膜表面のみとなり、この空間を巡っても微生物同士の競争が起こることになるが、DO濃度の低い条件では増殖の速いアンモニア酸化細菌のみが優先的に増殖できることになる。この結果、高負荷での亜硝酸型硝化が可能となる。
【0020】
しかし、この特開2003−24987記載の方法でも、長期的には硝酸型硝化へ移行する可能性が残されているため、亜硝酸型硝化を維持して運転を行う方法としては不十分である。即ち、この方法では、長期的に運転を行った場合、アンモニア性窒素が過剰に酸化され、硝化槽内の残留アンモニア性窒素濃度が低くなる可能性がある。その結果、アンモニア性窒素による亜硝酸酸化細菌の活動の阻害が効かなくなり、処理水中の硝酸性窒素濃度が上昇して、反応が亜硝酸型から硝酸型硝化へ移行してしまうという問題がある。
【0021】
【特許文献1】
特開平04−161299
【特許文献2】
USB4,720,344
【特許文献3】
EP−A−826639
【特許文献4】
特許第3,023,921号
【特許文献5】
特開2003−24987
【非特許文献1】
Strous, M, et al., Appl. Microbiol. Biotecnol., 50, p.589−596 (1998)
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の問題点を解決し、窒素含有排水をアンモニア酸化細菌の存在下に曝気して硝化する硝化槽に導入して硝化する方法において、長期に亘り亜硝酸型硝化を安定かつ効率的に行うことができる窒素含有排水の処理方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の窒素含有排水の処理方法は、窒素含有排水をアンモニア酸化細菌の存在下に曝気して硝化する硝化槽に導入して硝化する方法において、該硝化槽の曝気風量を調節すると共に、該硝化槽内の残留アンモニア性窒素濃度が50mg−N/L以上となるように調節することを特徴とする。
【0024】
本発明では、硝化槽の曝気風量を調節して硝化槽内のDO濃度を制御すると共に、硝化槽内のアンモニア性窒素濃度を50mg−N/L以上に維持することにより、亜硝酸酸化細菌の活動を確実に阻害して、長期に亘り安定かつ効率的に亜硝酸型硝化を行うことができる。即ち、同じ濃度のアンモニア性窒素が存在した場合、亜硝酸酸化細菌はアンモニア酸化細菌よりもアンモニア性窒素からの阻害を強く受ける。亜硝酸酸化細菌を阻害するための残留アンモニア性窒素濃度としては高い方が阻害効果が強いが、低DO条件では50mg−N/L程度残留させれば、亜硝酸酸化細菌の活動を十分抑えることができる。また、アンモニア酸化細菌は亜硝酸酸化細菌よりも低DO条件で反応を行うことができるため、硝化槽内は、亜硝酸型硝化が優先する低DO条件とすることが好ましい。この硝化槽のDO濃度は、アンモニア酸化細菌を生物膜の形で保持した硝化槽であれば1.5mg/L以下、アンモニア酸化細菌を浮遊菌の形で保持した硝化槽であれば1.0mg/L以下とするのが好ましい。
【0025】
本発明において、硝化槽から流出する亜硝酸性窒素を含む硝化液は、更に、ANAMMOX菌により脱窒処理することが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の窒素含有排水の処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明の実施に好適なエアリフト型曝気槽の概略的な構成を示す図であり、このエアリフト型曝気槽1は、内部に上下が開放した内筒2が同軸的に配置された二重管構造とされており、内筒2の下部に散気部3を有し、内筒2内に曝気によるエアリフトが発生するように構成されている。内筒2の上部には気液分離部4が設けられている。内筒2には、アンモニア酸化細菌の生物膜汚泥が保持されている。
【0028】
原水(窒素含有排水)は、曝気槽1の下部より曝気槽1内に導入され、散気部3からの曝気によるエアリフトで上向流で内筒2内を流れ、その間に汚泥と接触して硝化処理される。
【0029】
内筒2内の上昇流は気液分離部4で気液分離された後、沈降分離部5を経て一部が処理水として排出され、残部は内筒2と曝気槽1との間の部分を下降し、曝気槽1の下部から導入される原水と共に循環処理される。
【0030】
図1に示す方法においては、安定な亜硝酸型硝化を行うために、この曝気槽1内のDO濃度を1.5mg/L以下、好ましくは1mg/L以下、特に好ましくは0〜0.5mg/Lの低DO濃度となるように散気部3からの曝気風量を調節すると共に、曝気槽1内のアンモニア性窒素濃度が50mg−N/L以上となるように調節する。
【0031】
この曝気風量の調節は、例えば、曝気槽1内にDO計を設け、このDO計の測定結果に基いて、散気部3に空気を供給するブロワの風量を制御することにより行うことができる。曝気槽1内のDO濃度が1.5mg/Lを超えると、DOが過剰となって、硝化反応が硝酸型となり、硝酸性窒素が生成するようになるため好ましくない。
【0032】
曝気槽1内のアンモニア性窒素濃度が50mg−N/L以上となるようにするためには、曝気槽1の槽内液のアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニアイオン電極を設け、この測定値が50mg−N/L以上となるように、流入水量あるいは曝気空気量等を調整すれば良い。
【0033】
アンモニアイオン電極の設置場所としては、後述の図2に示すような汚泥懸濁方式の完全混合型の曝気槽10を用いた場合は、曝気槽10内であっても曝気槽10からの処理水流出配管であっても良く、この場合のアンモニアイオン電極設置部の位置には特に制限はない。図1に示すようなエアリフト型の曝気槽1の場合でも曝気槽1の流入側と流出側でアンモニア性窒素濃度に差が少ないため、イオン電極の位置に制限はないが、測定機器への影響を考慮すると気液分離部を通った後の懸濁物質の少ない水を測定に用いる方が好ましい。
【0034】
なお、曝気槽1内のアンモニア性窒素濃度は50mg−N/L以上であれば良く、これを過度に高くすることは、後段の脱窒処理がBODを用いた脱窒処理の場合には、処理できずに残留するアンモニア性窒素濃度が高くなり好ましくないが、後段にANAMMOX処理を行う場合には硝化槽の流入アンモニア性窒素濃度の1/(1+1.3)までは処理水中に残留させることができる。
【0035】
図1の曝気槽1では、原水の通水開始に先立ち、内筒2内に種汚泥となる硝化細菌を含む汚泥を投入し、アンモニア性窒素を含む原水を通水する。そして、上記DO濃度となるように曝気を行うと共に通水を継続することにより、アンモニア酸化細菌の自己造粒による生物膜のグラニュールを形成させる。この場合、曝気槽10内に予め担体を充填しておき、その担体表面に生物膜を形成させても良い。沈降分離部5の上昇流速は汚泥の増殖と剥離、系外への流出量とのバランスと、グラニュール自体の沈降速度に応じて適宜決定されるが、前述のごとく、グラニュール等の生物膜法における汚泥の沈降速度は10m/hr以上と非常に速いため、十分な生物膜が形成された後は沈降分離部5のLVは10m/hr以上、好ましくは10〜50m/hrとすることができる。
【0036】
なお、図1に示すエアリフト型曝気槽は、アンモニア酸化細菌を生物膜の形で保持する硝化槽の一例であり、本発明は何ら図示の曝気槽を用いる態様に限定されるものではない。硝化槽としては、生物膜を維持できるものであれば良く、固定床、流動床、グラニュール法、担体添加法のいずれをも採用することができる。
【0037】
図2は本発明の実施に好適な活性汚泥装置の概略的な構成を示す図である。この装置は、散気管11を有する汚泥懸濁式曝気槽10と沈殿槽12とを備え、原水(窒素含有排水)は曝気槽10に導入されて硝化処理される。この曝気槽10の流出水が沈殿槽12で固液分離され、分離汚泥は返送汚泥として曝気槽10に返送され、分離液は処理水として系外へ排出される。なお、沈殿槽12の代りに膜分離装置等の他の固液分離装置を設けても良い。
【0038】
図2に示す方法においては、安定な亜硝酸型硝化を行うために、この曝気槽10内のDO濃度を1.0mg/L以下、好ましくは0.7mg/L以下、特に好ましくは0.5mg/L以下の低DO濃度となるように散気管11からの曝気風量を調節すると共に、曝気槽10内のアンモニア性窒素濃度が50mg−N/L以上となるように調節する。
【0039】
この曝気風量の調節は、例えば、曝気槽10内にDO計を設け、このDO計の測定結果に基いて、散気管11に空気を供給するブロワの風量を制御することにより行うことができる。曝気槽10内のDO濃度が1.0mg/Lを超えると、DOが過剰となって、硝化反応が硝酸型となり、硝酸性窒素が生成するようになるため好ましくない。
【0040】
曝気槽10内のアンモニア性窒素濃度が50mg−N/L以上となるようにするためには、曝気槽10の槽内液のアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニアイオン電極を設け、この測定値が50mg−N/L以上となるように、流入水量あるいは曝気空気量等を調整すれば良い。
【0041】
なお、曝気槽10内のアンモニア性窒素濃度は50mg−N/L以上であれば良く、これを過度に高くすることは、後段の脱窒処理がBODを用いた脱窒処理の場合には、処理できずに残留するアンモニア性窒素濃度が高くなり好ましくないが、後段にANAMMOX処理を行う場合には硝化槽の流入アンモニア性窒素濃度の1/(1+1.3)までは処理水中に残留させることができる。
【0042】
なお、図2に示すアンモニア酸化細菌の浮遊菌を保持した曝気槽で硝化を行う場合、曝気槽の固形物滞留時間(SRT)が2〜100日、特に5〜50日となるように処理することが好ましい。SRTが2日未満では、十分に硝化反応を進行させることができず、100日を超えると亜硝酸酸化細菌が増殖してしまう。
【0043】
本発明においては、アンモニア性窒素濃度及びDO濃度の制御で、亜硝酸型硝化を安定かつ確実に行うことができるため、硝化処理条件としては、亜硝酸型硝化のための厳密な制限を行う必要はないが、好ましくは、アンモニア酸化細菌の活性を高く維持し、かつ亜硝酸酸化細菌の活性が低くなるように、硝化槽内の液pHは5〜9、特に7〜8、亜硝酸イオン濃度が50〜10000mg−N/L、特に200〜3000mg−N/L、温度が10〜40℃、特に20〜35℃、窒素負荷が0.1〜3kg−N/m3・day、特に0.2〜1kg−N/m3・dayになるように制御するのが好ましい。
【0044】
本発明において、このような硝化槽で亜硝酸型硝化を行って得られた亜硝酸性窒素を含む硝化液は、ANAMMOX菌による脱窒処理に好適であり、従って、この硝化液は次いでANAMMOX菌による脱窒処理を行うことが好ましい。この場合、硝化液中のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度との比が前述のANAMMOX反応当量から外れる場合には、適宜アンモニア性窒素を含む原水を混合するなどして、アンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度との比を調節すれば良い。
【0045】
ANAMMOX菌による脱窒槽の反応槽の型式には特に制限はなく、汚泥懸濁方式の他、固定床、流動床、グラニュール法、担体添加法等の生物膜法によるものであっても良い。ANAMMOX脱窒槽の後段には、沈殿槽、膜分離装置などの固液分離装置を設けても良く、また、ANAMMOX脱窒槽は図1に示すエアリフト型曝気槽のエアの代りに窒素ガスを用いたガスリフト型反応槽であっても良い。また、ANAMMOX菌のグラニュール汚泥床を形成したUSB(Upflow Sludge Bed;上向流汚泥床)反応槽であっても良い。このような反応槽であれば、後段の沈殿槽を省略することができる。
【0046】
ANAMMOX菌による脱窒槽の好適な反応条件は次の通りである。
pH :6〜9、特に6.5〜8.0
DO濃度 :0〜2.5mg/L、特に0〜0.2mg/L
温度 :10〜40℃、特に20〜35℃
BOD濃度:0〜50mg/L、特に0〜20mg/L
窒素負荷 :0.1〜10kg−N/m3・day、特に0.2〜5kg−N/m3・day
【0047】
本発明において、硝化槽からの亜硝酸性窒素を含む硝化液は、上述の如く、ANAMMOX菌により脱窒処理することが好ましいが、これに限らず、触媒を用いる脱窒処理を行っても良い。
【0048】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0049】
実施例1
図1に示すエアリフト型曝気槽(容積3L)を用いてアンモニア性窒素濃度約250〜600mg/Lの合成排水を原水として20L/dayの条件で通水して処理した。原水のアンモニア性窒素源としては硫安((NH4)2SO4)を用い、硫安以外の成分としては、表1に示す組成の合成培地を用いた。
【0050】
【表1】
【0051】
通水開始に先立ち、エアリフト型曝気槽に、直径0.3〜0.5mm程度の硝化菌のグラニュールを約250mL投入した。また、槽内のDO濃度が1.5mg/L以下となるように曝気風量を調整した。また、槽内のNH4−N濃度は50mg−N/L以上を維持するように、原水への硫安添加量を適宜調整した。槽内pHは7.5、槽内温度は30℃とした。
【0052】
運転開始から30日後、60日後及び90日後に得られた処理水の水質は表2に示す通りであった。
【0053】
【表2】
【0054】
比較例1
実施例1において、曝気槽内の曝気風量の制御を行わず、槽内DO濃度3.0mg/L以上で処理したこと以外は同様にして処理を行ったところ、運転開始から30日後、60日後及び90日後に得られた処理水の水質は表3に示す通りであった。
【0055】
【表3】
【0056】
比較例2
実施例1において、曝気槽内のNH4−N濃度を30mg/L以下としたこと以外は同様にして処理を行ったところ、運転開始から30日後、60日後及び90日後に得られた処理水の水質は表4に示す通りであった。
【0057】
【表4】
【0058】
上記実施例1及び比較例1,2の結果から次のことが明らかである。即ち、NH4−N濃度のみを制御した比較例1では、亜硝酸型硝化は行われず、また、DOのみを制御した比較例2では運転開始初期では亜硝酸型硝化が行われたが、運転開始から60日後及び90日後にはNO3−N濃度が上昇しており、亜硝酸型硝化から硝酸型硝化へ移行する傾向が認められる。これに対して、NH4−N濃度とDO濃度を制御した実施例1では、運転開始から90日後でも処理水のNO3−N濃度は5mg−N/L以下を維持し、長期間安定した亜硝酸型硝化を行うことができた。
【0059】
実施例2
実施例1で得られた処理水を、NH4−N120mg/Lの原水と50:50(容量比)で混合して、ANAMMOX菌を保持した脱窒槽に導入して脱窒処理したところ、得られた処理水中のNO2−N濃度は5mg/L以下、NH4−N濃度は10mg/L以下、全窒素濃度は25mg/L以下であり、良好な処理水が得られた。
【0060】
実施例3
図1に示す活性汚泥装置を用いて原水の処理を行った。この活性汚泥装置の曝気槽には種汚泥として硝酸型硝化を行っていた硝化槽から引き抜いた活性汚泥を投入し、汚泥濃度1500〜2000mg/L、pH7.5(NaOHを用いて調整)、温度30℃、SRT20日の条件で処理した。
【0061】
原水のアンモニア性窒素源としては硫安((NH4)2SO4)を用い、硫安以外の成分としては、前述の表1に示す組成の合成培地を用いた。曝気槽内のアンモニア性窒素濃度を維持するために、原水への硫安添加量は適宜調整した。
【0062】
曝気槽内のDO濃度が1.0mg/L以下となるように曝気風量を制御すると共に、槽内のNH4−N濃度は50mg−N/L以上を維持するように適宜原水のアンモニア性窒素濃度を調整したところ、処理水の水質の経時変化は図3に示す通りであり、硝酸型硝化から亜硝酸型硝化へ移行した。
【0063】
比較例3
実施例3において、曝気槽内のDO濃度の制御を行わず、槽内DO濃度2.0mg/L以上で処理したこと以外は同様にして処理を行ったところ、得られた処理水の水質の経時変化は図4に示す通りであり、硝酸型硝化から亜硝酸型硝化へは移行しなかった。
【0064】
比較例4
実施例3において、曝気槽内のNH4−N濃度を10mg/L以下としたこと以外は同様にして処理を行ったところ、得られた処理水の水質の経時変化は図5に示す通りであり、運転開始初期にはアンモニア性窒素の残留で硝酸型硝化から亜硝酸型硝化に移行する傾向がみられたが、更に運転を継続すると、再び硝酸型硝化に移行した。
【0065】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の窒素含有排水の処理方法によれば、硝化槽内のアンモニア性窒素濃度とDO濃度を制御することにより、硝化槽において、長期に亘り安定かつ効率的に亜硝酸型硝化を行うことができる。この硝化槽で得られた亜硝酸性窒素を含む硝化液は、特に、ANAMMOX菌による脱窒処理に適しており、硝化液をANAMMOX菌で脱窒処理することにより、残留窒素濃度が著しく低減された高水質処理水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒素含有排水の処理方法に好適なエアリフト型曝気槽の一例を示す概略的な構成図である。
【図2】本発明の窒素含有排水の処理方法に好適な活性汚泥装置の一例を示す概略的な構成図である。
【図3】実施例3における硝化処理水の水質の経時変化を示すグラフである。
【図4】比較例3における硝化処理水の水質の経時変化を示すグラフである。
【図5】比較例4における硝化処理水の水質の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 エアリフト型曝気槽
2 内筒
3 散気部
4 気液分離部
5 沈降分離部
10 曝気槽
11 散気管
12 沈殿槽
Claims (4)
- 窒素含有排水をアンモニア酸化細菌の存在下に曝気して硝化する硝化槽に導入して硝化する方法において、
該硝化槽の曝気風量を調節すると共に、該硝化槽内の残留アンモニア性窒素濃度が50mg−N/L以上となるように調節することを特徴とする窒素含有排水の処理方法。 - 請求項1において、該アンモニア酸化細菌が生物膜の形で該硝化槽内に保持されており、該硝化槽内の溶存酸素濃度が1.5mg/L以下となるように曝気風量を調節することを特徴とする窒素含有排水の処理方法。
- 請求項1において、該アンモニア酸化細菌が浮遊菌の形で該硝化槽内に保持されており、該硝化槽内の溶存酸素濃度が1.0mg/L以下となるように曝気風量を調節することを特徴とする窒素含有排水の処理方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、該硝化槽から流出する硝化液を、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体とする脱窒細菌の作用により脱窒することを特徴とする窒素含有排水の処理方法。
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