JP2003010883A - アンモニア性窒素含有水の硝化方法 - Google Patents

アンモニア性窒素含有水の硝化方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アンモニア性窒素含有水をアンモニア酸化細
菌の存在下に曝気して硝化するにあたり、曝気風量を的
確に制御して硝化槽内のDO濃度を低く保ち、長期にわ
たり安定な亜硝酸型硝化を行う。 【解決手段】 硝化槽1内の硝化液又は硝化槽1から流
出する硝化液中のアンモニア濃度を測定し、この測定値
が20mg/L以上となるように曝気風量を調節して亜
硝酸型硝化を行うアンモニア性窒素含有水の硝化方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アンモニア性窒素
含有水をアンモニア酸化細菌の存在下に曝気して硝化す
る方法に係り、特に、この硝化処理における曝気風量を
的確に制御して硝化槽内の溶存酸素(DO)濃度を低く
保ち、亜硝酸型硝化を行うアンモニア性窒素含有水の硝
化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】排液中に含まれるアンモニア性窒素は河
川、湖沼及び海洋などにおける富栄養化の原因物質の一
つであり、排液処理工程で効率的に除去する必要があ
る。一般に、排水中のアンモニア性窒素は、アンモニア
性窒素をアンモニア酸化細菌により亜硝酸性窒素に酸化
し、更にこの亜硝酸性窒素を亜硝酸酸化細菌により硝酸
性窒素に酸化する硝化工程と、これらの亜硝酸性窒素及
び硝酸性窒素を従属栄養性細菌である脱窒菌により、有
機物を電子供与体として利用して窒素ガスにまで分解す
る脱窒工程との2段階の生物反応を経て窒素ガスにまで
分解される。
【0003】しかし、このような従来の硝化脱窒法で
は、脱窒工程において電子供与体としてメタノールなど
の有機物を多量に必要とし、また硝化工程では多量の酸
素が必要であるため、ランニングコストが高いという欠
点がある。
【0004】これに対して、近年、アンモニア性窒素を
電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体とする独立
栄養性微生物(以下「ANAMMOX菌」と称す場合が
ある。)を利用し、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素と
を反応させて脱窒する方法が提案された。この方法であ
れば、有機物の添加は不要であるため、従属栄養性の脱
窒菌を利用する方法と比べて、コストを低減することが
できる。また、独立栄養性の微生物は収率が低く、汚泥
の発生量が従属栄養性微生物と比較すると著しく少ない
ので、余剰汚泥の発生量を抑えることができる。更に、
従来の硝化脱窒法で観察されるNOの発生がなく、環
境に対する負荷を低減できるといった特長もある。
【0005】このANAMMOX菌を利用する生物脱窒
プロセスは、Strous, M, et al., Appl. Microbiol. Bi
otecnol., 50, p.589-596 (1998) に報告されており、
以下のような反応でアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素が
反応して窒素ガスに分解されると考えられている。
【0006】
【化1】
【0007】このANAMMOX菌を利用する生物脱窒
方法において処理対象となる原水は、アンモニア性窒素
及び亜硝酸性窒素を含む水である。この原水はアンモニ
ア性窒素を含む液と亜硝酸性窒素を含む液を混合したも
のであってもよい。例えば、アンモニア性窒素を含む排
水をアンモニア酸化細菌の存在下に曝気して好気性処理
を行い、アンモニア性窒素の一部、好ましくはその1/
2を亜硝酸に部分酸化したものを原水とすることができ
る。更には、アンモニア性窒素を含む排水の一部をアン
モニア酸化細菌の存在下に曝気して好気性処理を行い、
アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化し、アンモニア性窒素
を含む排水の残部と混合したものを原水としても良い。
【0008】従って、ANAMMOX菌を利用した生物
脱窒処理を行うためには、排水中のアンモニア性窒素を
アンモニア酸化細菌により処理するにあたり、硝酸にま
で酸化することなく、酸化を亜硝酸で止める亜硝酸型硝
化を行う必要がある。
【0009】一般に、アンモニア性窒素の硝化反応は、
DO濃度を低く制御することにより亜硝酸型となり、亜
硝酸を蓄積させることができることが知られている。す
なわち、アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素にするに必要
な量だけの酸素を供給し、亜硝酸性窒素から硝酸性窒素
への酸化反応を抑制することにより亜硝酸型硝化を行う
ものである。この場合には、例えばDOセンサにより反
応槽内のDO濃度を計測しつつ、この値に基いて曝気風
量を制御すれば良い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、容積の小さな
実験装置では、DO濃度の正確な制御が可能であり、亜
硝酸型硝化を実現することができるが、実際の水処理装
置では曝気が行われている反応槽内においてDO濃度に
分布が生じ、一方でDOセンサは一般に精密な連続計測
が困難である。このため実装置におけるDO濃度の制御
では、反応槽内のDO濃度を長期にわたり、例えば0.
1mg/L単位で低濃度にむらなく制御して、亜硝酸型
硝化を確実に行うことはできず、過剰曝気により亜硝酸
の一部が硝酸にまで酸化されてしまう。
【0011】本発明は上記従来の問題点を解決し、アン
モニア性窒素含有水をアンモニア酸化細菌の存在下に曝
気して硝化するにあたり、曝気風量を的確に制御して硝
化槽内のDO濃度を低く保ち、長期にわたり安定な亜硝
酸型硝化を行うアンモニア性窒素含有水の硝化方法を提
供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明のアンモニア性窒
素含有水の硝化方法は、アンモニア性窒素含有水をアン
モニア酸化細菌の存在下に曝気して硝化する硝化槽に導
入して硝化する方法であって、該硝化槽の曝気風量を調
節して硝化を制御するアンモニア性窒素含有水の硝化方
法において、該硝化槽内の硝化液又は硝化槽から流出す
る硝化液中のアンモニア性窒素濃度を測定し、この測定
値に基いて曝気風量を調節することを特徴とする。
【0013】本発明によれば、硝化槽内又は硝化槽から
流出する硝化槽中に残留するアンモニア性窒素濃度に基
いて曝気風量を調節することにより、好ましくは、この
残留アンモニア性窒素濃度が20mg/L以上となるよ
うに曝気風量を調節することにより、亜硝酸型硝化を安
定かつ確実に行うことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に図面を参照して本発明の実
施の形態を詳細に説明する。
【0015】図1は本発明のアンモニア性窒素含有水の
硝化方法の実施の形態を示す系統図である。
【0016】図1(a),(b)において、1は硝化槽
(曝気槽)でありブロワ3から供給される空気を曝気す
る散気管2が設けられている。
【0017】図1(a)では、硝化槽1の処理水が導入
される処理水槽4にNH−N濃度測定装置5が設けら
れ、図1(b)では、硝化槽1にNH−N濃度測定装
置5が設けられている。いずれの場合も、NH−N濃
度測定装置5の測定結果に基いて、ブロワ3の曝気風量
が制御されるように構成されている。
【0018】このNH−N濃度測定装置5としては、
隔膜型イオン電極等を用いることができる。
【0019】本発明においては、図1(a)に示す如
く、硝化槽1の処理水のNH−N濃度の測定結果、又
は、図1(b)に示す如く、硝化槽1中の硝化液のNH
−N濃度の測定結果に基いて、硝化槽1の曝気風量を
調節する。
【0020】この曝気風量の調節は、目的とする硝化反
応の程度に応じて適宜決定されるが、例えば、硝化を亜
硝酸性窒素で止め、硝酸性窒素の生成を抑えて亜硝酸型
硝化を行う場合には、NH−N濃度の測定値が20m
g/L以上となるように曝気風量を調節するのが好まし
い。NH−N濃度の測定値が20mg/L未満である
と硝酸性窒素が生成するようになり、亜硝酸型硝化を行
えなくなる。
【0021】このNH−N濃度の上限には特に制限は
なく、処理する原水のNH−N濃度や処理目的等に応
じて適宜決定される。
【0022】亜硝酸型硝化を行って、原水中のアンモニ
ア性窒素を高い転換率で亜硝酸性窒素に酸化する場合に
は、硝化槽中の硝化液又は処理水中のNH−N濃度が
20〜100mg/L、特に20〜50mg/Lとなる
ように曝気風量を調節するのが好ましい。
【0023】このようにして得られる亜硝酸性窒素濃度
の高い処理水は、所定の割合でアンモニア性窒素を含有
する排水と混合して、前述のANAMMOX菌による生
物脱窒処理の原水とすることができる。
【0024】また、原水中のアンモニア性窒素をある程
度残留させて、そのまま前述のANAMMOX菌による
生物脱窒処理の原水とすることができるような処理水を
得る場合には、硝化槽中の硝化液又は処理水中のNH
−N濃度が20mg/L以上であって、原水のNH
N濃度の約1/2程度となるように曝気風量を調整すれ
ば良い。
【0025】なお、本発明において、硝化槽の形式には
特に制限はなく、汚泥懸濁式、固定床、流動床、グラニ
ュール法、スポンジなどの担体添加法など、いずれの形
式のものも採用することができる。
【0026】本発明においては、アンモニア性窒素濃度
に基く曝気風量の調節で、亜硝酸型硝化を安定かつ確実
に行うことができるため、硝化処理条件としては、亜硝
酸型硝化のための厳密な制限を行う必要はないが、好ま
しくは、アンモニア酸化細菌の活性を高く維持し、かつ
亜硝酸酸化細菌の活性が低くなるように、硝化槽内の液
pHは5〜9、特に7〜8、亜硝酸イオン濃度が50〜
10000mg−N/L、特に200〜3000mg−
N/L、温度が10〜40℃、特に20〜35℃、窒素
負荷が0.1〜3kg−N/m・day、特に0.2
〜1kg−N/m・dayになるように制御するのが
好ましい。
【0027】
【実施例】以下に実験例及び実施例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明する。
【0028】実験例1 容積5Lの曝気槽に、下水汚泥由来の活性汚泥を投入
し、嫌気性硝化槽の脱離液(濃度約500mg−N/
L)を5倍希釈したもの(pH8.0,温度30℃)を
原水として供給した。このときの窒素負荷は0.7〜
1.3kg−N/m・dayである。
【0029】処理開始後、曝気槽内液中にDOが十分に
存在する場合には、硝化反応は硝酸まですすみ、亜硝酸
の蓄積は起こらなかった。
【0030】処理開始から15日後に、DO濃度を曝気
槽の散気球の上部で約0.4mg/Lとなるように曝気
風量を調整したところ、系内に亜硝酸が蓄積するように
なった。
【0031】しかし、原水の汚泥濃度が変動したため、
時折酸素が供給過剰となり、硝酸が生成された。
【0032】このときの流入原水のNH−N濃度と処
理水のNH−N濃度、NO−N濃度及びNO−N
濃度の経時変化を図2に示す。
【0033】また、各測定日のデータを、横軸に処理水
のNH−N濃度、縦軸に処理水のNO−N濃度を取
ってプロットしたものを図3に示す。
【0034】図3より、処理水中のNH−N濃度が2
0mg/L以上であれば、処理水中には硝酸が殆ど検出
されず、亜硝酸型硝化が行われていることがわかる。
【0035】実施例1 実験例1の結果から、実験例1において、処理水を受け
る処理水槽にアンモニア性窒素濃度の測定装置として隔
膜型イオン電極を設け、この測定値が20〜40mg/
Lとなるように曝気風量を調節して処理を行ったとこ
ろ、得られた処理水はNO−N濃度は80〜100m
g/L、NO−N濃度は5mg/L以下となり、長期
に亘り安定な亜硝酸型硝化を行うことができた。
【0036】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のアンモニア
性窒素含有水の硝化方法によれば、アンモニア性窒素含
有水をアンモニア酸化細菌の存在下に曝気して硝化する
にあたり、曝気風量を的確に制御して硝化槽内のDO濃
度を低く保ち、長期にわたり安定な亜硝酸型硝化を行う
ことができる。
【0037】本発明の方法で得られる、アンモニア性窒
素が亜硝酸性窒素に硝化され、硝酸性窒素濃度の低い処
理水は、ANAMMOX菌を用いる生物脱窒処理の原水
として効率的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアンモニア性窒素含有水の硝化方法の
実施の形態を示す系統図である。
【図2】実験例1における原水のNH−N濃度と処理
水水質の経時変化を示すグラフである。
【図3】実験例1における処理水のNH−N濃度とN
−N濃度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 硝化槽 2 散気管 3 ブロワ 4 処理水槽 5 NH−N濃度測定装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 今城 麗 東京都新宿区西新宿三丁目4番7号 栗田 工業株式会社内 Fターム(参考) 4D040 BB02 BB07 BB91

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アンモニア性窒素含有水をアンモニア酸
    化細菌の存在下に曝気して硝化する硝化槽に導入して硝
    化する方法であって、該硝化槽の曝気風量を調節して硝
    化を制御するアンモニア性窒素含有水の硝化方法におい
    て、 該硝化槽内の硝化液又は硝化槽から流出する硝化液中の
    アンモニア性窒素濃度を測定し、この測定値に基いて曝
    気風量を調節することを特徴とするアンモニア性窒素含
    有水の硝化方法。
  2. 【請求項2】 該硝化槽内の硝化液又は硝化槽から流出
    する硝化液中のアンモニア性窒素濃度が20mg/L以
    上となるように曝気風量を調節して亜硝酸型硝化を行う
    ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア性窒素含
    有水の硝化方法。
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