JP2005342705A - 包括固定化微生物担体の製造方法及び包括固定化微生物担体並びに廃水処理装置 - Google Patents

包括固定化微生物担体の製造方法及び包括固定化微生物担体並びに廃水処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養期間を短縮化することができ、しかも試験室等において予め嫌気性アンモニア酸化細菌を高濃度に培養した汚泥を種菌として使用する必要がないので、各廃水処理施設に固定化微生物担体を容易に供給することができる。
【解決手段】嫌気性アンモニア酸化細菌を優占繁殖させた固定化微生物担体を液状化する液状化工程と、液状化した固定化微生物担体を固定化材料に包括固定化する包括固定化工程とで、包括固定化微生物担体を製造する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、包括固定化微生物担体の製造方法及び包括固定化微生物担体並びに廃水処理装置に係り、特に嫌気性アンモニア酸化法を利用した廃水処理装置が立ち上がるまでの期間を短縮化するために有用な包括固定化微生物担体の製造に関する。
下水や産業廃水に含有する窒素成分は、湖沼の富栄養化の原因になること、河川の溶存酸素の低下原因になること等の理由から、窒素成分を除去する必要がある。下水や産業廃水に含有する窒素成分は、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素、有機性窒素が主たる窒素成分である。
従来、この種の廃水は、窒素濃度が低濃度であれば、イオン交換法での除去や塩素、オゾンによる酸化も用いられているが、中高濃度の場合には生物処理が採用されており、一般的には以下の条件で運転されている。
生物処理では好気硝化と嫌気脱窒による硝化・脱窒処理が行われており、好気硝化では、アンモニア酸化細菌(Nitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira 属,Nitrosolobus 属など)と亜硝酸酸化細菌(Nitrobactor 属,Nitrospina 属,Nitrococcus属,Nitrospira 属など)によるアンモニア性窒素や亜硝酸性窒素の酸化が行われる一方、嫌気脱窒では、従属栄養細菌(Pseudomonas 属、Achromobactor 属、Alcaligenes 属、Batillus属、Micrococcus 属など)による脱窒が行われる。
また、好気硝化を行う硝化槽は負荷0.2〜0.3kg−N/m3 /日の範囲で運転され、嫌気脱窒の脱窒槽は負荷0.2〜0.4kg−N/m3 /日の範囲で運転される。下水の総窒素濃度50〜60mg/Lを処理するには、硝化槽で6〜8時間の滞留時間、脱窒槽で5〜8時間が必要であり、大規模な処理槽が必要であった。また無機質だけを含有する産業廃水では、硝化槽や脱窒槽は先と同様の負荷で設計されるが、脱窒に有機物が必要で、窒素濃度の3〜4倍濃度のメタノールを添加していた。このためイニシャルコストばかりでなく、多大なランニングコストを要するという問題もある。
これに対し、最近、嫌気性アンモニア酸化法による窒素除去方法が注目されている(例えば特許文献1)。この嫌気性アンモニア酸化法は、アンモニアを水素供与体とし、亜硝酸を水素受容体として、嫌気性アンモニア酸化細菌によりアンモニアと亜硝酸とを以下の反応式により同時脱窒する方法である。
(化1)
NH4 + + NO2 - =N 2 +2H 2 O
この方法によれば、アンモニアを水素供与体とするため、脱窒で使用するメタノール等の使用量を大幅に削減できることや、汚泥の発生量を削減できる等のメリットがあり,今後の窒素除去方法として有効な方法であると考えられている。
一般的に、生物学的に廃水処理を効率的に行うには、その生物処理を行う特定微生物を生物処理槽内に高濃度に保持する必要があるが、嫌気性アンモニア酸化細菌は、他の微生物に比べて増殖速度が極めて遅く、倍化時間が約11日〜16日もかかってしまう。この為に、活性汚泥のような浮遊状態では嫌気性アンモニア酸化細菌が十分に増殖しないうちに生物処理槽外に流出してしまうので、廃水中の窒素除去性能を十分に発揮することができない。この対策としては、増殖速度が遅い硝化細菌における対策と同様に嫌気性アンモニア酸化細菌を包括固定化する方法が有効である。この包括固定化担体を生物処理槽に投入することで、浮遊汚泥のように生物処理槽外に流出しないようにでき、嫌気性アンモニア酸化細菌を生物処理槽に高濃度に保持することができるので、処理水の安定した水質向上を図ることができる。
しかし、嫌気性アンモニア酸化細菌を生物処理槽に高濃度に保持するには、包括固定化担体を生物処理槽に投入した後、担体内の嫌気性アンモニア酸化細菌を増殖させるための馴養期間が必要になる。従って、包括固定化担体を生物処理槽で実際に使用できるか否かを決定する大きな要素として、運転を開始してから処理性能が安定する定常運転に至るまでの立ち上がりが早いことが要求される。即ち、廃水の処理中において嫌気性アンモニア酸化細菌が優占繁殖するまでの時間、つまり馴養期間が短いことが要求される。
特開2001−37467号公報
しかしながら、自然界に存在する嫌気性アンモニア酸化細菌は極めて少なく、またその増殖速度は極めて遅いため、単に普通の活性汚泥を包括固定化した包括固定担体を生物処理槽に投入しても生物処理槽が立ち上がらないか、又は立ち上がったとしても長期間を要するという欠点がある。
また、活性汚泥を種菌として予め試験室等において嫌気性アンモニア酸化細菌を高濃度に培養した汚泥を包括固定化した包括固定化担体を製造することで、馴養期間を短くすることも考えられるが、その場合には、各廃水処理施設に包括固定化担体を供給し続けるために、常に培養し続けなくてはならず、多大なエネルギーと労力を必要とするため、現実的とは言えない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養期間を短縮化することができ、しかも試験室等において予め嫌気性アンモニア酸化細菌を高濃度に培養した汚泥を種菌として使用する必要がないので、各廃水処理施設に固定化微生物担体を容易に供給することのできる包括固定化微生物担体の製造方法及び包括固定化微生物担体並びに廃水処理装置に関する。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占繁殖させた固定化微生物担体を液状化する液状化工程と、前記液状化した固定化微生物担体を固定化材料に包括固定化する包括固定化工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明の請求項1によれば、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占繁殖させた固定化微生物担体を液状化し、この液状化した固定化微生物担体を固定化材料に包括固定化し、包括固定化微生物担体を製造する。このように製造された包括固定化微生物担体は、担体中の嫌気性アンモニア酸化細菌の優占比率が大きい状態から馴養を開始することができ、且つ嫌気性アンモニア酸化細菌が増殖拡散しやすい包括固定化微生物担体が形成されるので、馴養期間を大幅に短縮することができる。また、嫌気性アンモニア酸化細菌が優占繁殖した固定化微生物担体を一度製造すれば、そこから小分けすれば後はねずみ算式に本発明の包括固定化微生物担体を製造することができる。このように、本発明によれば、嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養期間を短縮化することができ、しかも試験室等において予め嫌気性アンモニア酸化細菌を高濃度に培養した汚泥を種菌として使用する必要がないので、各廃水処理施設に固定化微生物担体を容易に供給することができる。
本発明における嫌気性アンモニア酸化細菌とは、嫌気性条件下でアンモニアを電子供与体とし、亜硝酸を電子受容体として独立栄養的に脱窒する細菌、又は以下の特異的なDNA配列の何れかを有する細菌であり、16SrDNA領域に、
Amx820:5'-AAAACCCCTCTACTTAGTGCCC-3'
Ban162:5'-CGGTAGCCCCAATTGCTT-3'
Kst157:5'-GTTCCGATTGCTCGAAAC-3'
Ana-F :5'-GGGATAACAACGTTCCGCAA-3'
Ana-R :5'-CGATACCGAAGCACCATGAGT-3'の何れかを有するか、又は23SrDNA領域に、Amx1900:5'-CATCTCCGGCTTGAACAA-3'を有するものをいう。
また、固定化微生物担体を液状化するとは、固定化材料である担体に付着又は包括された微生物群(水分を多量に含む汚泥状態)を、担体と一緒にホモジナイズ、粉砕、磨砕、或いは薬品で溶かして見た目が液状になるように処理することを言う。液状化方法としては、例えばホモジナイザーで磨り潰す方法、コンプレッサ等で圧縮空気を作り出し、この圧縮空気のエネルギーで固定化微生物担体同士を衝突させて粉砕する方法、回転させた回転刃で固定化微生物担体を粉砕する方法、酸化剤等の薬剤で固定化微生物担体を溶かす方法等を採用することができる。
請求項2は請求項1において、前記液状化した固定化微生物担体を前記包括固定化微生物担体に対して1容積%を超え、50容積%以下になる範囲で含有させることを特徴とする。
これは、包括固定化微生物担体に含有させる固定化微生物担体の割合が1容積%以下では馴養期間が極めて長くなるためであり、50容積%を越えると包括固定化微生物担体の構造自体が崩壊してしまうためである。従って、含有させる固定化微生物担体の割合を包括固定化微生物担体に対して1容積%を超えて50容積%以下の範囲、より好ましくは5〜30容積%の範囲にすることで、馴養期間を短縮でき、且つ強度の強い包括固定化微生物担体を製造することができる。
請求項3は請求項1又は2において、前記液状化工程において液状化する固定化微生物担体として、前記嫌気性アンモニア酸化細菌を優占繁殖させた固定化微生物担体の脱窒速度が2.5kg−N/m3 −担体/日以上の固定化微生物担体を用いることを特徴とする。
これは、嫌気性アンモニア酸化細菌をどの程度まで優占繁殖させた固定化微生物担体を種菌として包括固定化したときに、馴養期間を飛躍的に短縮できるかを示したものであり、脱窒速度が2.5kg−N/m3 −担体/日以上であることが好ましい。脱窒速度が2.5kg−N/m3 −担体/日未満では、製造された包括固定化微生物担体の馴養期間が大幅に長くなるためであり、より好ましい脱窒速度は5kg−N/m3 −担体/日以上である。
ここで、脱窒速度とは、除去量(流入全窒素量と処理水全窒素量の差)を、担体1m3 当たり且つ1日当たりに換算したものである。
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記液状化工程において、前記嫌気性アンモニア酸化細菌の中間代謝物であるヒドラジン及び/又は前記嫌気性アンモニア酸化細菌の中間代謝物であるヒドロキシルアミンを前記固定化微生物担体に添加することを特徴とする。
これは、嫌気性アンモニア酸化細菌は酸素によって活性が低下するが、嫌気性アンモニア酸化細菌の中間代謝物質であり酸素の混入を防ぐ還元剤であるヒドラジン及び/又は嫌気性アンモニア酸化細菌の中間代謝物であるヒドロキシルアミンを添加して液状化することにより、せっかく優占繁殖させた嫌気性アンモニア酸化細菌の活性度が液状化の際に低下することがない。
請求項5は請求項1〜4の何れか1において、前記包括固定化工程において硝化細菌と脱窒細菌とを混合包括固定することを特徴とする。
これは、液状化する際に酸素や有機物などの嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を低下する酸素や有機物などの阻害物が混入しても、混合工程で混合した硝化細菌によって酸素が消費され、脱窒菌によって有機物が消費されるので、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が低下することがない。しかも、嫌気性アンモニア酸化細菌の包括固定化微生物担体は、嫌気性条件下で有機物等の電子供与体が積極的に供給されない条件下で使用されるので、馴養中に硝化細菌や脱窒細菌が嫌気性アンモニア酸化細菌よりも優占して増殖することはない。これにより、混合工程において硝化細菌や脱窒細菌を添加しても、馴養時に嫌気性アンモニア酸化細菌の増殖を阻害することがない。
請求項6は請求項1〜5で製造した包括固定化微生物担体を生物処理槽で馴養し、馴養した包括固定化微生物担体の一部を前記液状化工程での固定化微生物担体とすることを特徴とする。
請求項6は、馴養後の包括固定化微生物担体を本発明における固定化微生物担体とするようにしたものである。これにより、本発明の包括固定化微生物担体を一度製造して馴養してしまえば、その一部を次々に小分けしていくことで、後は次々に多量に本発明の包括固定化微生物担体を製造することができる。従って、各廃水処理施設に固定化微生物担体を供給するために、試験室等で嫌気性アンモニア酸化細菌を培養する必要がない。
本発明の請求項7は前記目的を達成するために、請求項1〜6の何れか1の包括固定化微生物担体の製造方法で製造されたことを特徴とする。
請求項7の包括固定化微生物担体は、本発明の製造方法によって製造されるので、馴養期間を大幅に短縮することができる。
本発明の請求項8は前記目的を達成するために、アンモニアから亜硝酸を生成する亜硝酸生成槽と、アンモニアと亜硝酸とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒する請求項7の包括固定化微生物担体を投入した嫌気性アンモニア酸化槽とを用いてアンモニア性廃水を処理することを特徴とする。
請求項8の廃水処理装置によれば、嫌気性アンモニア酸化槽に本発明の包括固定化微生物担体を投入するので、馴養期間を大幅に短縮することができる。
以上説明したように包括固定化微生物担体の製造方法及び包括固定化微生物担体並びに廃水処理装置によれば、嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養期間を短縮化することができ、しかも試験室等において予め嫌気性アンモニア酸化細菌を高濃度に培養した汚泥を種菌として使用する必要がないので、各廃水処理施設に固定化微生物担体を容易に供給することができる。
以下添付図面に従って本発明に係る包括固定化微生物担体の製造方法及び包括固定化微生物担体並びに廃水処理装置における好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明の包括固定化微生物担体の製造方法の操作手順を説明する説明図で、重合法により包括固定化微生物担体を製造する例で説明する。
図1に示すように、先ず脱窒速度が2.5kg−N/m3 −担体/日以上、より好ましくは5kg−N/m3 −担体/日以上になるまで嫌気性アンモニア酸化細菌を優占繁殖させた固定化微生物担体を製造し、これを嫌気性アンモニア酸化細菌の種菌とする。嫌気性アンモニア酸化細菌を優占繁殖させた固定化微生物担体としては、例えば不織布に嫌気性アンモニア酸化細菌を付着増殖させた不織布担体、高分子ゲルに嫌気性アンモニア酸化細菌を付着又は包括して増殖させた高分子ゲル担体、セラミックスに嫌気性アンモニア酸化細菌を付着増殖させたセラミックス担体、起毛材に嫌気性アンモニア酸化細菌を付着増殖させた起毛材担体、糸状の紐材に嫌気性アンモニア酸化細菌を付着増殖させた糸状担体等を使用することができる。
次に、固定化微生物担体に、嫌気性アンモニア酸化細菌の中間代謝物であり酸素の混入を防ぐ還元剤であるヒドラジン及び/又は嫌気性アンモニア酸化細菌の中間代謝物であるヒドロキシルアミンを添加し、ホモジナイザー等により固定化微生物担体を液状化する(液状化工程)。
次に、液状化した固定化微生物担体と包括固定化材料であるゲル化材料とを混合すると共に、硝化細菌及び脱窒細菌をそれぞれ103 〜107 cells/mL−担体になるように混合する。ゲル化材料には、水や反応調整剤としての希硫酸が加えられる。そして、過酸化カリウム等の重合開始剤を添加して重合反応を起こすことにより、ゲル化材料をゲル化し、混合物をゲル化材料に包括固定する(包括固定化工程)。これにより、本発明の包括固定化微生物担体が製造される。この包括固定化微生物担体を2〜10mm角にカットして包括固定化微生物担体のペレットにする。従って、普通の活性汚泥から製造した包括固定化微生物担体よりも高濃度な嫌気性アンモニア酸化細菌を保持する包括固定化微生物担体を得ることができる。
尚、液状化工程と包括固定化工程との間に、液状化した固定化微生物担体に活性汚泥及び/又は水を混合する工程を設けてもよい。これにより、液状化した固定化微生物担体を希釈増量することができる。この混合する活性汚泥は、予め嫌気性条件下において内生脱窒反応を経た活性汚泥であることが好ましい。内生脱窒反応を経た活性汚泥は、活性汚泥中の有機物源が消費され、酸素が枯渇状態になっており、活性汚泥中の微生物は有機物や酸素に枯渇した状態になっている。従って、製造された包括固定化微生物担体を嫌気性アンモニア酸化槽(生物処理槽)で馴養する際に、嫌気性アンモニア酸化槽内に流入する廃水中に酸素や有機物などの嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を阻害する阻害物が混入しても、それらの阻害物は活性汚泥中の嫌気性アンモニア酸化細菌以外の微生物によって直ちに消費される。これにより、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が低下することがない。
ゲル化材料としてはモノマー材料又はプレポリマ材料を使用することができ、モノマー材料としてはアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、トリアクリルフォルマールなどがよい。プレポリマ材料としてはポリエチレングリコールジアクリレートやポリエチレングリコールメタアクリレートがよく、その誘導体を用いることができる。形状は上記した四角状に限らず、球状や筒状などの包括担体、ひも状包括担体、不織布状など凹凸が多い包括担体が接触効率がよく脱窒速度が向上する。
包括固定化時においては、そのゲル化の際の重合反応が少なからずとも微生物へ毒性を示すことが知られている。図2は、本発明の包括固定化微生物担体の製造方法において、包括固定化微生物担体に対してゲル化材料をどの程度の割合で混合するのが、脱窒速度と担体の強度に適切であるかを調べたものである。
図2の横軸は包括固定化微生物担体に対するゲル材料濃度(容積%)を示し、左縦軸は脱窒速度(kg−N/m3 −担体/日)を示し、右縦軸は包括固定化微生物担体の圧縮強度(kg/cm2 )を示している。包括固定化微生物担体に対して嫌気性アンモニア酸化汚泥をMLVSSで1.5容積%混合した一定条件下で、ゲル化材料濃度を変化させた。ゲル化材料としてはポリエチレングリコール系のゲル化材料を使用した。
その結果、図2から分かるように、ゲル化材料濃度が10容積%を超えて15容積%までの間に脱窒速度は著しく低下し、20容積%を超えると約2.5(kg−N/m3 −担体/日)で安定した。ゲル化材料濃度を20容積%以上にしても脱窒速度は変わらないが、製造コストだけが上がることとなった。また、ゲル化材料濃度は2容積%以下では包括固定化微生物担体の圧縮強度が2(kg/cm2 )を下回り、1容積%以下では包括固定化微生物担体の構造が崩壊してしまった。この図2の結果から、本発明の包括固定化微生物担体の製造方法においては、ゲル化材料濃度は包括固定化微生物担体に対して1容積%を超えて20容積%以下であることが好ましく、より好ましくは2容積%〜15容積%の範囲である。
図3は、上記の如く製造された包括固定化微生物担体の製造において、液状化した固定化微生物担体を包括固定化微生物担体に対してどの程度の混合割合で混合するのが馴養期間の短縮に適切であるかを調べたものである。
試験は、混合割合を0容積%、0.5容積%、1容積%、5容積%、10容積%、20容積%、30容積%、40容積%、50容積%、60容積%の場合について行った。混合割合を変えた以外は図1で説明した製造方法で包括固定化微生物担体を製造した。ヒドラジン及びヒドロキシルアミンの添加量は、固定化微生物担体に対してそれぞれ40μMになるようにした。そして、製造したそれぞれの包括固定化微生物担体について容積1.5Lの生物処理槽に充填率10%になるように充填し、水温36°Cで500日間、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素をそれぞれ35mg/Lの濃度の無機窒素合成培地内で嫌気的に回分培養試験を行い、立ち上がりまでの期間を比較した。立ち上がるまでの期間とは、運転開始時点でのアンモニア性窒素濃度及び亜硝酸性窒素濃度が同時に半量に減少するまで、即ちアンモニアと亜硝酸とを同時脱窒する嫌気性アンモニア酸化活性が確認できるまでに要した期間で表し、以下同様である。ゲル化材料としてはポリエチレングリコール系のゲル化材料を用い、ゲル化材料濃度が10容積%の一定条件下で、固定化微生物担体を上記の混合割合になるように変化させた。
図3から分かるように、混合する固定化微生物担体の混合割合が0容積%及び0.5容積%では運転開始から500日間でも立ち上げることができず、混合割合1容積%でようやく278日で立ち上げることができた。これに対し、混合割合が5容積%、10容積%、20容積%、30容積%、40容積%、50容積%では、立ち上がり期間に多少バラツキはあるものの、最大でも50日以内の極めて短期間で立ち上げることができた。混合割合が60容積%の場合は図示されていないが、これは混合割合が50容積%を越えると包括固定化微生物担体の構造が崩壊してしまった為である。この図3の結果から、固定化微生物担体の混合割合を見た場合には、最低限でも1容積%を越えることが好ましく、上限は50容積%以下であることが好ましい。
ところが、固定化微生物担体の混合割合が多い包括固定化微生物担体は、試験後の包括固定化微生物担体の構造が著しく劣化していることが分かった。そこで、図4では、固定化微生物担体の混合割合と包括固定化微生物担体の強度との関係を調べて見た。
図4の横軸は固定化微生物担体の混合割合(容積%)を示し、縦軸は包括固定化微生物担体の圧縮強度(kg/cm2 )を示す。ゲル化材料としては図3の場合と同様に、ポリエチレングリコール系のゲル化材料を用い、ゲル化材料濃度が10容積%の一定条件下で、固定化微生物担体の混合割合を変化させた。
図4から分かるように、固定化微生物担体の混合割合を増やしていくと、包括固定化微生物担体の圧縮強度が小さくなる。そして、混合割合が30容積%を越えると、包括固定化微生物担体の圧縮強度が2(kg/cm2 )を下回った。また、混合割合が50容積%を超えると、ゲル化材料が完全に重合せず、ゲル形成が不可能であった。この図3及び図4の結果から、本発明の包括固定化微生物担体の製造方法においては、液状化した固定化微生物担体を包括固定化微生物担体に対して1容積%を越えて50容積%以下で混合することが好ましく、より好ましくは5〜30容積%の範囲である。
図5は、本発明の包括固定化微生物担体の製造方法において、嫌気性アンモニア酸化細菌をどの程度まで優占繁殖させた固定化微生物担体を使用すれば、製造した包括固定化微生物担体の馴養期間を顕著に短くすることができるかを示したものである。
図5の横軸は、混合した固定化微生物担体の脱窒速度(kg−N/m3 −担体/日)を示し、縦軸は立ち上がりまでの期間を示している。固定化微生物担体の混合割合は、1容積%、10容積%、50容積%の3試験区について行った。
図5から分かるように、3試験区の何れの場合も、種菌としての固定化微生物担体の脱窒速度が大きくなるに従って立ち上がりまでの期間が急激に短くなり、急激に短くなる傾向は脱窒速度が2.5(kg−N/m3 −担体/日)から現れ始め、5(kg−N/m3 −担体/日)では確実に短くなる。特に、固定化微生物担体の混合割合が1容積%と少ない場合には立ち上がり期間の減少度合いは小さいが、混合割合が10容積%と50容積%のように多い場合には、脱窒速度が2.5(kg−N/m3 −担体/日)以上において立ち上がり期間の減少度合いは極めて大きくなる。この結果から、固定化微生物担体の脱窒速度が製造された包括固定化微生物担体の立ち上がり期間を短縮する上で重要であり、種菌である固定化微生物担体の脱窒速度は2.5kg−N/m3 −担体/日以上、好ましくは5kg−N/m3 −担体/日以上であることが好ましい。
図6は固定化微生物担体を液状化する際に、ヒドラジン及び/又はヒドロキシルアミンを添加することによって、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を低下する阻害物質である有機物に対してどの程度の活性低下防止効果があるかを試験したものである。活性低下防止効果は、製造した包括固定化微生物担体の立ち上がりまでの期間で確認した。
図6の横軸はRunNo. を示し、縦軸は立ち上がりまでの期間(日)を示した。ここで、Run1はヒドラジンとヒドロキシルアミンの両方を添加した場合、Run2はヒドラジンのみ添加した場合、Run3はヒドロキシルアミンのみを添加した場合、Run4は水を添加した場合である。ヒドラジンの添加量は固定化微生物担体に対して40μM、ヒドロキシルアミンの添加量は固定化微生物担体に対して40μMになるようにした。また、有機物源として、Run1から4の何れにもメタノールを固定化微生物担体に対して1mg/L添加した。固定化微生物担体の混合割合は包括固定化微生物担体に対して10容積%で行った。
図6から分かるように、水を添加したRun4は、立ち上がりまでに152日を要するのに対し、ヒドラジンを添加したRun2及びヒドロキシルアミンを添加したRun3は、立ち上がりまでが約60日に短縮された。更に、ヒドラジンとヒドロキシルアミンの両方を添加したRun1は、立ち上がりまでが22日と大幅に短縮することができた。
以上の結果から、図1で説明した製造方法で包括固定化微生物担体を製造すれば、図2〜図6で説明した効果を奏する包括固定化微生物担体を製造することができる。従って、本発明の包括固定化微生物担体を廃水処理に使用すれば、運転を開始してから処理性能が安定するまでの馴養期間を飛躍的に短縮することができる。
図7は、本発明の廃水処理装置の全体構成の一例を示す概念図である。
図7に示すように、廃水処理装置10は、原水配管12を流れるアンモニア性廃水は分配器14で分配され、アンモニア性廃水の一部は亜硝酸生成槽16に流入する。亜硝酸生成槽16に流入したアンモニア性廃水中のアンモニアは全て亜硝酸に酸化され、亜硝酸性処理水が形成される。そして、亜硝酸性処理水は、配管17を通って嫌気性アンモニア酸化槽18へ流入する一方、分配器14で分配されたアンモニア性廃水の残りは、嫌気性アンモニア酸化槽18に流入される。嫌気性アンモニア酸化槽18内には、本発明の包括固定化微生物担体20が多数投入されると共に、槽18内の廃水を攪拌して包括固定化微生物担体20を槽18内で均等に流動させる攪拌機22が設けられる。また、嫌気性アンモニア酸化槽18の処理水流出部にはスクリーン19が設けられ、包括固定化微生物担体20が処理水に同伴して流出するのを防止する。そして、嫌気性アンモニア酸化槽18に流入したアンモニアと亜硝酸とは包括固定化微生物担体20に優占する嫌気性アンモニア酸化細菌で脱窒反応により同時脱窒される。嫌気性アンモニア酸化槽18で処理された処理水には、硝酸が僅かに残るため、再脱窒槽24にてメタノール添加装置25からメタノールを添加して脱窒反応を経て固液分離槽26で固液分離され、最終処理水として系外に排出される。
嫌気性アンモニア酸化槽18内に本発明の包括固定化微生物担体20を投入することにより、馴養期間を大幅に短縮することができ、短期間で処理性能が安定した定常運転に移行することができる。この場合、嫌気性アンモニア酸化細菌は亜硝酸性窒素濃度が80mg/Lを越えると、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が阻害される性質があるので、亜硝酸性処理水を嫌気性アンモニア酸化槽18に均一に流入させて部分的に濃度が高くなることがないようにすることが重要である。これにより、嫌気性アンモニア酸化細菌を健全に馴養させることができるので、馴養期間を一層短縮することが可能である。
また、嫌気性アンモニア酸化槽18で馴養した包括固定化微生物担体20の一部を小分けし、小分けした包括固定化微生物担体20を種菌として図1で説明した製造方法で包括固定化微生物担体を製造する。そして、製造した包括固定化微生物担体を別の嫌気性アンモニア酸化槽に投入する。この場合、嫌気性アンモニア酸化槽18に、小分けするための包括固定化微生物担体を多めに投入しておくとよい。これにより、複数の廃水処理施設に固定化微生物担体を供給するために、試験室等で嫌気性アンモニア酸化細菌を培養する必要がない。
本発明の包括固定化微生物担体の製造方法の操作手順を説明する説明図 包括固定化微生物担体を製造する際のゲル化材料の混合濃度と、製造された担体の脱窒速度及び強度との関係を説明する説明図 固定化微生物担体を包括固定化微生物担体に対して混合する混合割合と立ち上がりまでの期間との関係を説明する説明図 固定化微生物担体を包括固定化微生物担体に対して混合する混合割合と包括固定化微生物担体の強度との関係を説明する説明図 種菌としての固定化微生物担体の脱窒速度と立ち上がりまでの期間との関係を説明する説明図 固定化微生物担体を液状化する際のヒドラジン及び/又はヒドロキシルアミンの添加と立ち上がりまでの期間との関係を説明する説明図 本発明の廃水処理装置の全体構成の一例を示す概念図
符号の説明
10…廃水処理装置、12…原水配管、14…分配器、16…亜硝酸生成槽、17…配管、18…嫌気性アンモニア酸化槽、19…スクリーン、20…包括固定化微生物担体、22…攪拌機、24…再脱窒槽、25…メタノール添加装置、26…固液分離槽

Claims (8)

  1. 嫌気性アンモニア酸化細菌を優占繁殖させた固定化微生物担体を液状化する液状化工程と、
    前記液状化した固定化微生物担体を固定化材料に包括固定化する包括固定化工程と、を備えたことを特徴とする包括固定化微生物担体の製造方法。
  2. 前記液状化した固定化微生物担体を前記包括固定化微生物担体に対して1容積%を超え、50容積%以下になる範囲で含有させることを特徴とする請求項1の包括固定化微生物担体の製造方法。
  3. 前記液状化工程において液状化する固定化微生物担体として、前記嫌気性アンモニア酸化細菌を優占繁殖させた固定化微生物担体の脱窒速度が2.5kg−N/m3 −担体/日以上の固定化微生物担体を用いることを特徴とする請求項1又は2の包括固定化微生物担体の製造方法。
  4. 前記液状化工程において、前記嫌気性アンモニア酸化細菌の中間代謝物であるヒドラジン及び/又は前記嫌気性アンモニア酸化細菌の中間代謝物であるヒドロキシルアミンを前記固定化微生物担体に添加することを特徴とする請求項1〜3の何れか1の包括固定化微生物担体の製造方法。
  5. 前記包括固定化工程において硝化細菌と脱窒細菌とを混合包括固定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1の包括固定化微生物担体の製造方法。
  6. 請求項1〜5で製造した包括固定化微生物担体を生物処理槽で馴養し、馴養した包括固定化微生物担体の一部を前記液状化工程での固定化微生物担体として使用することを特徴とする包括固定化微生物担体の製造方法。
  7. 請求項1〜6の何れか1の包括固定化微生物担体の製造方法で製造されたことを特徴とする包括固定化微生物担体。
  8. アンモニアから亜硝酸を生成する亜硝酸生成槽と、アンモニアと亜硝酸とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒する請求項7の包括固定化微生物担体を投入した嫌気性アンモニア酸化槽とを用いてアンモニア性廃水を処理することを特徴とする廃水処理装置。
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