JP2002371031A - スクラレオライドの製造方法 - Google Patents

スクラレオライドの製造方法

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JP2002371031A
JP2002371031A JP2001183872A JP2001183872A JP2002371031A JP 2002371031 A JP2002371031 A JP 2002371031A JP 2001183872 A JP2001183872 A JP 2001183872A JP 2001183872 A JP2001183872 A JP 2001183872A JP 2002371031 A JP2002371031 A JP 2002371031A
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JP2001183872A
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English (en)
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Kenichiro Adachi
謙一郎 足立
Hiroyuki Matsuda
洋幸 松田
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Takasago International Corp
Original Assignee
Takasago International Corp
Takasago Perfumery Industry Co
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Abstract

(57)【要約】 【課 題】 本発明の目的は、スクラレオールを出発
原料にし、一段階で環境に悪影響を与えるハロゲン系溶
媒を使用せずに、反応時間および反応成績体処理時間を
含めた製造時間の短縮されたスクラレオライドおよび/
またはその等価体の製造方法を提供することにある。 【解決手段】 一段階酸化反応により、スクラレオール
から、スクラレオライドおよび/またはその等価体を製
造する方法において、アルカリ性物質、ルテニウム触
媒、次亜塩素酸塩、相間移動触媒および環状炭化水素溶
媒の存在下に酸化反応を行うことを特徴とするスクラレ
オライドおよび/またはその等価体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スクラレオールの
酸化反応による香料の中間体として使用されるスクラレ
オライドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】スクラレオライド(化学名:3a,6,
6,9a−テトラメチルデカヒドロナフト[2,1−b]
フラン2(1H)−オン)は、煙草の喫味改良剤として
快適な木様の香を与えるものとして重要であり(米国特
許第2,905,576号)、また、アンバー系調合香
料の素材として優れた役割を果たす化合物として知られ
ている1−アンブロックス(化学名:3a,6,6,9
a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラ
ン)の合成中間物としても知られている。
【0003】立体的、化学的に天然品と同一であるスク
ラレオライド(2)を合成するためには、クラリーセー
ジの抽出物に含まれているスクラレオール(1)を出発
原料にし、側鎖部分を酸化解裂することでスクラレオラ
イド(2)およびその等価体(3)(すなわちスクラレ
オライドの開環体)へ変換する方法が一般的に知られて
いるが、近年に至り、さらにいくつかの方法が提案され
公知となっている。
【化4】
【0004】米国特許第3,050,532号には、ス
クラレオール(1)をまずアルカリ性条件下過マンガン
酸カリウムで酸化した後、次に酢酸酸性条件下再び過マ
ンガン酸カリウムで酸化する二段階ルートでスクラレオ
ライドの等価体であるアセトキシカルボン酸(6)を主
生成物とするスクラレオライド混合物を得る方法が記載
開示されている。しかしこの方法では、過マンガン酸カ
リウムを化学量論的に必要とするため、環境保護上問題
となる過マンガン酸カリウム廃液を多量に排出するこ
と、および二段階目の反応時間として20時間程度を要
する等工業生産において改良すべき問題点が多い。
【0005】また、米国特許第5,247,100号お
よび日本特許第3,020,272号では、前法の問題
点を改良して、一段階目をメチレンクロリド中アルカリ
性条件下触媒量のルテニウム触媒と次亜塩素酸ナトリウ
ム系で酸化した後、塩酸処理によりエノールエーテル
(5)を主生成物とする酸化中間体混合物を得た後、二
段階目を有機過酸あるいはその塩を用いる酸性条件下で
酸化することで、二段階目の反応時間を3時間に短縮し
スクラレオライド(2)およびその等価体(3)を得る
方法も報告されている。しかしながら、この改良法にお
いても、前報同様に2種類のpHの異なる酸化条件を組
み合わせた二段階反応であり、一段階後に酸化剤の処
理、酸性化処理、抽出操作、溶媒の留去等で中間体のエ
ノールエーテル(5)あるいはヒドロキシケトン(4)
を単離するという後処理も含めた操作の煩雑さおよびそ
れに伴う処理時間の累積は、反応時間短縮の優位性を効
果的に反映できないことになる。さらに、この公知文献
の明細書中には、使用溶媒については、不活性である溶
媒、例えばメチレンクロリドおよび/またはシクロへキ
サンの記載があるが、使用量については何ら記載がな
く、実施例にはメチレンクロリドをスクラレオール重量
(g)に対する容量(ml)比4.0以上を使用した例
があるだけで、本反応が特に限定された溶媒種および濃
度範囲内において特異的に反応速度を向上させることを
全く示唆していない。ましてや、その効果により短時間
かつ一段階でスクラレオライドおよびその等価体へ変換
することが可能となることを全く暗示するものではな
い。また、この方法で使用しているメチレンクロリド等
のハロゲン系溶媒は、環境や人体などに悪影響を与える
等の問題点から工業的に用いることは好ましくない。
【0006】一方、特表平7−505405では、二段
階からなる操作の煩雑さを回避し、スクラレオール
(1)からルテニウム触媒/次亜塩素酸ナトリウム系に
より一段階の酸化条件でスクラレオライド(2)および
その等価体(3)まで変換する方法が知られている。し
かしながら、この方法では、固体粉末のスクラレオール
(1)を有機溶媒の不存在下、水溶媒中ノニオン系の乳
化剤を用いて水性分散液の形態で存在させるもので、5
時間程度のより短時間で反応を行う条件としては、さら
に超音波の適用やホモジナイザーの使用等により特に微
細な分散液の形成を促進しなければならず、工程管理が
複雑であった。
【0007】従って、スクラレオール(1)を出発原料
にし、スクラレオールの側鎖部分を酸化解裂することで
スクラレオライド(2)および/またはその等価体
(3)へ変換する合成手法において、環境に悪影響を与
えるハロゲン系溶媒を使用しないこと、一段階で酸化反
応を行うこと、反応時間だけでなく反応処理時間を含め
た製造時間の短縮が強く望まれていた。本発明のスクラ
レオライドの等価体とは、本発明条件下行うスクラレオ
ールの酸化反応において生成するスクラレオライド
(2)が開環した状態のヒドロキシカルボン酸(3)ま
たはそのナトリウム塩(3)等のアルカリ金属塩もしく
はアルカリ土類金属塩またはそれらの混合物をいう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、スク
ラレオールを出発原料にし、スクラレオールの側鎖部分
を酸化解裂することによるスクラレオライドおよび/ま
たはその等価体へ変換する方法において、環境に悪影響
を与えるハロゲン系溶媒を使用せずに、限られた範囲内
の量の特定の溶媒を使用することにより、一段階で酸化
反応が終了し、反応時間および反応処理時間を含めた製
造時間の短縮されたスクラレオライドおよび/またはそ
の等価体の製造方法を提供することにある。さらには、
煩雑な操作や特殊な装置を必要とせず、高収率で、実用
性に優れた工業的なスクラレオライドおよび/またはそ
の等価体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前述の要望
に応えるべく鋭意検討を重ねた結果、スクラレオールを
出発原料にし、次亜塩素酸ナトリウムを共酸化剤とする
ルテニウム触媒によりスクラレオールの側鎖部分を酸化
解裂することによるスクラレオライドおよび/またはそ
の等価体へ変換する方法において、適切な相間移動触媒
存在下、適切な反応温度の範囲内で、特定の溶媒を、好
ましくはスクラレオールに対してある限られた範囲内の
量を使用することにより、これまでの酸化反応によく使
用されていたが、環境問題等で工業的使用が好ましくな
いハロゲン系溶媒を使用せずに、従来の二段階の酸化反
応を行うスクラレオライドの製造方法に比べ、速い反応
速度を実現でき、一段階で酸化反応が終結し、反応時間
だけでなく反応処理時間を含めた製造時間の大幅な短縮
ができることを見いだした。さらには、従来の方法のよ
うな、第一段階酸化後の反応停止および酸性処理等で中
間体のヒドロキシケトンあるいはエノールエーテルを単
離する必要がなく、各工程間の後処理が不要となり、ま
た、本発明は、操作的にも通常の加熱攪拌だけであるた
め、特に微細な分散液の形成のために超音波あるいはホ
モジナイザー等の使用も不要であり、煩雑な操作を必要
としない。また、単一容器中において反応を行うため、
特に特殊な装置を必要とせず、現実的な装置で、簡単な
操作により、高収率で、スクラレオライドおよび/また
はその等価体の製造が実現できることを見出し、さらに
検討を重ね、本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明は、スクラレオールを、
環状炭化水素溶媒、アルカリ性物質、ルテニウム触媒、
相間移動触媒、および共酸化剤として、好ましくは次亜
塩素酸ナトリウムの存在下、数時間程度、加熱攪拌する
ことにより、スクラレオライドおよび/またはその等価
体を、環境に悪影響を与えるハロゲン系溶媒を使用せず
に、一段階の酸化反応で、短時間で製造する方法を提供
するものである。
【0011】すなわち、本発明は、[1] 一段階酸化反
応により、式(1)
【化5】 で表されるスクラレオールから、式(2)
【化6】 で表されるスクラレオライドおよび/または式(3)
【化7】 (式中、Rは、Hまたはアルカリ金属またはアルカリ土
類金属を表す。)で表されるその等価体を製造する方法
において、アルカリ性物質、ルテニウム触媒、次亜塩素
酸塩、相間移動触媒および環状炭化水素溶媒の存在下に
酸化反応を行うことを特徴とする式(2)で表されるス
クラレオライドおよび/または式(3)で表されるその
等価体の製造方法、[2] 環状炭化水素溶媒のスクラレ
オール重量(g)に対する容量(ml)比が、0.5〜
4.0であることを特徴とする前記[1]に記載のスクラ
レオライドおよび/またはその等価体の製造方法、[3]
相間移動触媒が、テトラアルキルアンモニウム塩であ
ることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のスクラ
レオライドおよび/またはその等価体の製造方法、[4]
ルテニウム触媒が、塩化ルテニウムであることを特徴
とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のスクラレオラ
イドおよび/またはその等価体の製造方法、[5] アル
カリ性物質が、水酸化ナトリウムであることを特徴とす
る前記[1]〜[4]のいずれかに記載のスクラレオライド
および/またはその等価体の製造方法、[6] 式(3)
中、Rがナトリウムであって、酸化反応が加熱下に行わ
れることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載
のスクラレオライドおよび/またはその等価体の製造方
法、[7] 環状炭化水素溶媒が、トルエンであることを
特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載のスクラレ
オライドおよび/またはその等価体の製造方法、[8]
環状炭化水素溶媒が、シクロヘキサンであることを特徴
とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載のスクラレオラ
イドおよび/またはその等価体の製造方法、[9] トル
エンのスクラレオール重量(g)に対する容量(ml)
比が、0.75〜1.75の範囲であることを特徴とす
る前記[7]に記載のスクラレオライドおよび/またはそ
の等価体の製造方法、[10] シクロへキサンのスクラ
レオール重量(g)に対する容量(ml)比が、0.7
5〜3.75の範囲であることを特徴とする前記[8]に
記載のスクラレオライドおよび/またはその等価体の製
造方法、[11] 反応温度が、30〜50℃の範囲であ
ることを特徴とする前記[1]〜[10]のいずれかに記載
のスクラレオライドおよび/またはその等価体の製造方
法、[12] 酸化反応時間が、2〜4時間の範囲である
ことを特徴とする前記[1]〜[11]のいずれかに記載の
スクラレオライドおよび/またはその等価体の製造方
法、に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に係るスクラレオライドの
製造方法は、下図に示した反応工程に従い行われるが、
以下に本発明の内容について詳細に述べる。なお、%は
特に断りのない限り、重量%を表す。
【化8】
【0013】本発明の好ましい態様によれば、スクラレ
オール(1)を、環状炭化水素溶媒中にて触媒量のルテ
ニウム触媒、触媒量の相間移動触媒およびアルカリ性物
質の存在下、反応温度を約30〜50℃程度の範囲内で
共酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを使用して酸化反
応を行うことにより、単一反応容器中において短時間で
スクラレオライド(2)を高収率で製造することができ
る。この際に、スクラレオライド(2)の他にヒドロキ
シカルボン酸またはそのナトリウム塩、カリウム塩
(3)等のアルカリ金属塩もしくはカルシウム塩、マグ
ネシウム塩等のアルカリ土類金属塩が反応系中に生成す
るが、これらは常法に従い、例えば塩酸、硫酸等の鉱酸
の存在下にトルエン溶媒還流下、数時間水抜きなどを行
い環化反応を行うことで容易にスクラレオライド(2)
に変換することができる。以下、具体的に本発明を説明
していく。
【0014】本反応において使用されるルテニウム触媒
としては、例えばRuCl3、RuCl3水和物等のルテ
ニウム塩化物、例えばRuO等のルテニウム酸化物、
例えばK3RuCl6等のクロロルテニウム酸塩、例えば
2RuO4等のルテニウム酸の塩、例えばRuBr3
RuBr3水和物等のルテニウム臭化物、例えばRuI
等のルテニウム沃化物、ルテニウムアセチルアセトナ
ート、例えばRu3(CO)12等のルテニウムカルボニ
ル錯体、例えばRu3O(OCOCH37水和物、例え
ばRu(NO)Cl3等のルテニウムニトロシル錯体等
の化合物などがあげられる。特に好ましいルテニウム触
媒としては、塩化ルテニウム、二酸化ルテニウム等が挙
げられる。中でも、さらに好ましいものは、塩化ルテニ
ウムである。触媒量としては、スクラレオールに対して
約0.1〜30モル%程度、好ましくは約0.5〜10
モル%程度である。
【0015】相間移動触媒としては、臭化セチルトリメ
チルアンモニウム(CTMAB);ジベンゾ−18−ク
ラウン−6(DB−18−c−6);ジシクロヘキサノ
−18−クラウン−6(DC−18−c−6);18−
クラウン−6(18−c−6);臭化セチルピリジニウ
ム(NCPB);臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム
(TBAB);塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム
(TBAC);水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム
(TBAH);硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウ
ム(TBAHS);ヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニ
ウム(TBAI);塩化テトラ−エチルアンモニウム水
和物(TEAC);臭化ベンジルトリブチルアンモニウ
ム(TBBAB);臭化ヘキサデシルトリブチルホスホ
ニウム(TBHDPB);臭化ベンジルトリエチルアン
モニウム(TEBAB);塩化ベンジルトリエチルアン
モニウム(TEBA);塩化ヘキサデシルトリエチルア
ンモニウム(TEHDAC);塩化テトラメチルアンモ
ニウム(TMAC);塩化ヘキサデシルトリメチルアン
モニウム(TMHDAC);および塩化トリオクチルメ
チルアンモニウム(TOMAC)などが知られており、
本発明方法で使用されうるが、本発明では、テトラアル
キルアンモニウム塩がより好ましく用いられる。例え
ば、硫酸水素テトラブチルアンモニウム塩、塩化トリオ
クチルメチルアンモニウム塩、臭化テトラブチルアンモ
ニウム塩など、各種4級アンモニウム塩が好ましい。触
媒量としては、スクラレオールに対して、約0.1〜3
0モル%程度、好ましくは約0.5〜10モル%程度で
ある。
【0016】アルカリ性物質としては、アルカリ金属
(Li、Na、K等)、アルカリ土類金属(Mg、C
a、Ba等)の水酸化物や炭酸塩およびそれらの混合物
の水溶液が挙げられるが、水酸化ナトリウムが好まし
い。アルカリ水溶液の使用量としては、スクラレオール
に対して、約50〜1000モル%程度、好ましくは約
300〜800モル%程度である。
【0017】環状炭化水素溶媒としては、アルキル化さ
れていてもよいシクロアルカン類、例えば、シクロペン
タン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタ
ン、メチルシクロへキサン等が挙げられる。また、アル
キル化されていてもよいベンゼン類、例えば、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等が挙げ
られる。環状炭化水素は、好ましくは炭素数5〜10程
度である。この中でも特にトルエン、シクロへキサンが
好ましい。これらの環状炭化水素溶媒は、単独で使用し
ても、混合溶媒として使用してもよい。溶媒量として
は、環状炭化水素溶媒のスクラレオール重量(g)に対
する容量(ml)比が、約0.5〜4.0程度が好まし
い。特に、トルエンの場合には、好ましくは約0.6〜
2.5程度の範囲内、より好ましくは約0.75〜1.
75程度の範囲内である。また、シクロヘキサンの場合
には、好ましくは約0.6〜4.0程度の範囲内、より
好ましくは約0.75〜3.75程度の範囲内である。
上記のように、本発明における原料に対する溶媒の好ま
しい使用量の範囲は、化学者の一般常識に反して狭いの
であるが、これは下記実験例から明らかなように、この
範囲で格別優れた本発明特有の効果を奏することができ
るという本発明者らによって初めて見出された予想外の
新知見に基づくものである。
【0018】次亜塩素酸塩としては、例えば次亜塩素酸
ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等のアルカリ金属塩も
しくは例えば次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネ
シウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。なかで
も、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。次亜塩素酸ナト
リウムの濃度としては、約5〜20%程度、好ましくは
約10〜15%程度である。通常、水溶液で用いられ
る。次亜塩素酸ナトリウムの使用量としては、スクラレ
オールに対して有効塩素濃度として約5〜30倍モル程
度、好ましくは約10〜20倍モル程度である。
【0019】反応温度としては、約30〜50℃程度の
範囲において可能であるが、反応の収率および反応時間
の関係から特に約35〜45℃程度が好ましい。反応時
間としては、諸条件により異なるが、良好な転化率およ
び操作性等から好ましくは約2〜4時間程度である。
【0020】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるも
のではない。
【0021】〔実施例1〕 スクラレオールの酸化によるスクラレオライドの合成 2000ml 4つ口フラスコに塩化ルテニウム(0.
25g、1.21mmol)、テトラブチル硫酸水素ア
ンモニウム(0.3g、0.884mmol)、および
50%水酸化ナトリウム水溶液(42.0g、525m
mol)を量り込み、15分間攪拌後、トルエン(30
ml)、次いでスクラレオール(30.0g、97.2
mmol)を投入した。これに、氷冷により35〜45
℃を保ちながら次亜塩素酸ナトリウム水溶液(726
g、有効塩素濃度11.6%)を90分かけて滴下し
た。滴下終了後30分前後で反応はほぼ終了し、40℃
前後を保ちながらさらに1時間攪拌し、原料および中間
体の消失を確認後、反応を完結させた。その後定法に従
い、20%亜硫酸ナトリウム水溶液で残存する酸化剤を
処理した後、硫酸水で酸性化後静置・分液し、有機相を
水抜き還流することで混在するスクラレオライドの加水
分解物を脱水環化させた。有機相を水洗後、溶媒回収、
真空乾燥して粗製のスクラレオライド26.1gを得
た。なお、収率は、ヘキサデカンを内標物質として用
い、ガスクロマトグラフィーによる内標定量法により決
定した(内標収率、75.0%)。
【0022】〔実施例2〕 反応溶媒の検討 溶媒を表1に示すように変更し、実施例1と同様な方法
でスクラレオライドを合成し、反応溶媒の種類の影響を
ヘキサデカンを内標に用いて比較実験を行った。その結
果を表1に示す。
【0023】
【表1】 表1より、環状炭化水素溶媒であるトルエンまたはシク
ロヘキサンを使用すると、スクラレオライドの収率が高
い数値を示した。
【0024】〔実施例3〕 溶媒(ml)/基質(スクラレオール、g)比の検討 表2に示した溶媒/基質(スクラレオール)比のトルエ
ンおよびシクロヘキサンを使用して、実施例1と同様の
方法でスクラレオライドを合成し、トルエンおよびシク
ロヘキサンにおける基質濃度と収率の関係を、ヘキサデ
カンを内標に用いて検討を行った。その結果を表2およ
び図1に示す。
【0025】
【表2】
【0026】日本特許第3,020,272号に記載の
方法では、実施例において、スクラレオール(g)に対
する溶媒(メチレンクロリド)の容量(ml)比が約4
で酸化反応を行っているが、本発明の実施例1では、基
質であるスクラレオール(g)に対する溶媒量(ml)
の比を1.0という濃度の濃い条件で酸化反応を行っ
た。その結果、日本特許第3,020,272号に記載
の方法では、酸化反応は二段階であり、後処理を含めな
い酸化第一段階および酸化第二段階の反応時間はそれぞ
れ約3時間づつを必要としたが、本発明では、酸化反応
は一段階で終了し、酸化反応時間が3時間に短縮でき
た。また、内標収率75.0%と高収率でスクラレオラ
イドが製造できた。
【0027】図1より、トルエンを使用した場合は、溶
媒/基質比(ml/g)が、0.75〜1.75の範囲
であるとき、また、シクロヘキサンを使用した場合は、
溶媒/基質比(ml/g)が0.75〜3.75の範囲
であるときに、スクラレオライドの収率が高かった。
【0028】
【発明の効果】本発明の製造法は、酸化反応が一段階で
終了し、環境問題等で工業的使用に好ましくないハロゲ
ン系溶媒を用いる必要もなく、反応時間だけでなく反応
処理時間も含めた製造に要する時間を大幅に短縮するこ
とを可能とした。さらには、従来の製造方法のように酸
化反応を複数の工程に分けて行う必要がなく、第一段階
酸化後の反応停止および酸性処理等で中間体のヒドロキ
シケトンあるいはエノールエーテルを単離する必要がな
いため、各工程間の後処理が不要となり、また、操作的
にも通常の加熱攪拌だけで、特に微細な分散液の形成の
ために超音波あるいはホモジナイザーなどを使用する煩
雑な操作も不要である。また、単一容器中において反応
を行うため、特に特殊な装置も必要とせず、高収率で、
実用性に優れた簡単な操作でスクラレオライドおよび/
またはその等価体の製造法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 基質に対して溶媒を変化させた時に得られる
スクラレオライドの収率の変化をプロットした図であ
る。図中、黒マルはトルエンを、黒シカクはシクロヘキ
サンを表し、斜字はシクロヘキサンを溶媒に用いた時の
収率を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07M 7:00 C07M 7:00 Fターム(参考) 4C037 XA02 4H006 AA02 AC46 AC47 AC81 BA23 BA37 BA65 BB11 BC10 BC19 BC35 BE04 BE10 BJ30 BN20 BS10 BS70 4H039 CA65 CG90

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一段階酸化反応により、式(1) 【化1】 で表されるスクラレオールから、式(2) 【化2】 で表されるスクラレオライドおよび/または式(3) 【化3】 (式中、Rは、Hまたはアルカリ金属またはアルカリ土
    類金属を表す。)で表されるその等価体を製造する方法
    において、アルカリ性物質、ルテニウム触媒、次亜塩素
    酸塩、相間移動触媒および環状炭化水素溶媒の存在下に
    酸化反応を行うことを特徴とする式(2)で表されるス
    クラレオライドおよび/または式(3)で表されるその
    等価体の製造方法。
  2. 【請求項2】 環状炭化水素溶媒のスクラレオール重量
    (g)に対する容量(ml)比が、0.5〜4.0であ
    ることを特徴とする請求項1に記載のスクラレオライド
    および/またはその等価体の製造方法。
  3. 【請求項3】 相間移動触媒が、テトラアルキルアンモ
    ニウム塩であることを特徴とする請求項1または2に記
    載のスクラレオライドおよび/またはその等価体の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 ルテニウム触媒が、塩化ルテニウムであ
    ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のス
    クラレオライドおよび/またはその等価体の製造方法。
  5. 【請求項5】 アルカリ性物質が、水酸化ナトリウムで
    あることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の
    スクラレオライドおよび/またはその等価体の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 式(3)中、Rがナトリウムであって、
    酸化反応が加熱下に行われることを特徴とする請求項1
    〜5のいずれかに記載のスクラレオライドおよび/また
    はその等価体の製造方法。
  7. 【請求項7】 環状炭化水素溶媒が、トルエンであるこ
    とを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスクラ
    レオライドおよび/またはその等価体の製造方法。
  8. 【請求項8】 環状炭化水素溶媒が、シクロヘキサンで
    あることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の
    スクラレオライドおよび/またはその等価体の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 トルエンのスクラレオール重量(g)に
    対する容量(ml)比が、0.75〜1.75の範囲で
    あることを特徴とする請求項7に記載のスクラレオライ
    ドおよび/またはその等価体の製造方法。
  10. 【請求項10】 シクロへキサンのスクラレオール重量
    (g)に対する容量(ml)比が、0.75〜3.75
    の範囲であることを特徴とする請求項8に記載のスクラ
    レオライドおよび/またはその等価体の製造方法。
  11. 【請求項11】 反応温度が、30〜50℃の範囲であ
    ることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の
    スクラレオライドおよび/またはその等価体の製造方
    法。
  12. 【請求項12】 酸化反応時間が、2〜4時間の範囲で
    あることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載
    のスクラレオライドおよび/またはその等価体の製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102766123A (zh) * 2011-05-04 2012-11-07 焦作市馨之源科技有限公司 一种由香紫苏醇合成香紫苏内酯的生产工艺
JP2014527051A (ja) * 2011-08-05 2014-10-09 カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ C−9位に酸素が官能化されたラブダン誘導体
CN112973725A (zh) * 2021-03-08 2021-06-18 重庆化工职业学院 用于香紫苏醇氧化合成香紫苏内酯的催化剂

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