JP2002365194A - 高周波パルス走査トンネル顕微鏡 - Google Patents
高周波パルス走査トンネル顕微鏡Info
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- JP2002365194A JP2002365194A JP2001177564A JP2001177564A JP2002365194A JP 2002365194 A JP2002365194 A JP 2002365194A JP 2001177564 A JP2001177564 A JP 2001177564A JP 2001177564 A JP2001177564 A JP 2001177564A JP 2002365194 A JP2002365194 A JP 2002365194A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 絶縁体試料表面の原子構造観察を可能とする
高周波パルス走査トンネル顕微鏡を提案し、顕微鏡とし
て装置化することである。 【解決手段】 探針8先端と絶縁体試料9の間隔を極め
て接近させ、探針と試料間に印加したバイアス電圧によ
ってトンネル電流を生じさせ、このトンネル電流を一定
に維持する条件でフィードバック信号を駆動系6に与え
て探針と試料を相対的に走査し、試料表面の原子オーダ
ー像を観察する走査トンネル顕微鏡であって、前記探針
と試料間に、高周波短パルスの交流バイアス電圧を印加
するとともに、探針と試料間のトンネル抵抗と浮遊容量
で決する時定数と、電流アンプ11の入力インピーダン
スで決する時定数を略一致させて、トンネル電流成分だ
けを検出し整流してフィードバック信号とする。
高周波パルス走査トンネル顕微鏡を提案し、顕微鏡とし
て装置化することである。 【解決手段】 探針8先端と絶縁体試料9の間隔を極め
て接近させ、探針と試料間に印加したバイアス電圧によ
ってトンネル電流を生じさせ、このトンネル電流を一定
に維持する条件でフィードバック信号を駆動系6に与え
て探針と試料を相対的に走査し、試料表面の原子オーダ
ー像を観察する走査トンネル顕微鏡であって、前記探針
と試料間に、高周波短パルスの交流バイアス電圧を印加
するとともに、探針と試料間のトンネル抵抗と浮遊容量
で決する時定数と、電流アンプ11の入力インピーダン
スで決する時定数を略一致させて、トンネル電流成分だ
けを検出し整流してフィードバック信号とする。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、絶縁体あるいはワ
イドバンドギャップの半導体表面の原子スケールの幾何
学的構造を観察可能な高周波パルス走査トンネル顕微鏡
に関するものである。
イドバンドギャップの半導体表面の原子スケールの幾何
学的構造を観察可能な高周波パルス走査トンネル顕微鏡
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】走査トンネル顕微鏡(Scanning Tunnelin
g Microscopy;STM)の開発以来、固体表面の原子構造
を実空間で観察することが可能となっている。しかし、
STMはトンネル電流を利用するために、電流が流れる
導体もしくは半導体の原子構造の観察はできるが、絶縁
体では不可能である。ところが、表面の原子配列を問題
とする機能を持つ表面たとえば、光学レンズ・ミラー等
の光学素子の多くは絶縁体であり、また半導体デバイス
には多くの絶縁材料が用いられているため、絶縁体表面
の原子構造の観察が強く望まれている。
g Microscopy;STM)の開発以来、固体表面の原子構造
を実空間で観察することが可能となっている。しかし、
STMはトンネル電流を利用するために、電流が流れる
導体もしくは半導体の原子構造の観察はできるが、絶縁
体では不可能である。ところが、表面の原子配列を問題
とする機能を持つ表面たとえば、光学レンズ・ミラー等
の光学素子の多くは絶縁体であり、また半導体デバイス
には多くの絶縁材料が用いられているため、絶縁体表面
の原子構造の観察が強く望まれている。
【0003】これまで、絶縁体表面を観察するために、
Si表面上の薄い酸化膜に対する探針―試料間の高バイア
ス電圧によるSTMや、マイクロ波領域の高周波を印加
したSTM、電子線および紫外線励起型のSTMが提案
されている。Si表面上の酸化膜は、5V程度のバイアス
電圧でSTM観察されている(渡部等Applied Physics
Letters, Vol.72,No.16(1998)p1987)。しかし、原子サ
イズの分解能が得られておらず、酸化膜厚も数nm以下
に限られる。また、高周波STMに関しては、マイクロ
波帯のバイアス電圧を印加してトンネルギャップ部で発
生する非線形効果の高周波成分でフィードバック制御
し、直流成分を用いずに絶縁体薄膜がSTM観察されて
いる(G.P.Kochanski Physical Review Letters,Vol.62
(1989)p2285)。それに続いて、マイクロ波共振器の最
大電場位置に探針を配置したSSHM(Scanning Surfac
e Harmonic Microscopy) (W.Seifert等 Ultramicrosco
py,Vol.42-44(1992)p379およびB.Micheal等 Rev.Sci.In
strum.,Vol.63,No.9(1992)p4080)が開発され、またKバ
ンド帯での試みもある。一方、励起型STMに関して
は、電子線・紫外線等を絶縁体に照射し、このエネルギ
ーによって絶縁体中に電子−正孔対からなるキャリアを
励起して導電性を持たせることで絶縁体表面をSTM観
察することも提案されている(和田等 Applied Physics
Letters, Vol.64(1994)p1100)。
Si表面上の薄い酸化膜に対する探針―試料間の高バイア
ス電圧によるSTMや、マイクロ波領域の高周波を印加
したSTM、電子線および紫外線励起型のSTMが提案
されている。Si表面上の酸化膜は、5V程度のバイアス
電圧でSTM観察されている(渡部等Applied Physics
Letters, Vol.72,No.16(1998)p1987)。しかし、原子サ
イズの分解能が得られておらず、酸化膜厚も数nm以下
に限られる。また、高周波STMに関しては、マイクロ
波帯のバイアス電圧を印加してトンネルギャップ部で発
生する非線形効果の高周波成分でフィードバック制御
し、直流成分を用いずに絶縁体薄膜がSTM観察されて
いる(G.P.Kochanski Physical Review Letters,Vol.62
(1989)p2285)。それに続いて、マイクロ波共振器の最
大電場位置に探針を配置したSSHM(Scanning Surfac
e Harmonic Microscopy) (W.Seifert等 Ultramicrosco
py,Vol.42-44(1992)p379およびB.Micheal等 Rev.Sci.In
strum.,Vol.63,No.9(1992)p4080)が開発され、またKバ
ンド帯での試みもある。一方、励起型STMに関して
は、電子線・紫外線等を絶縁体に照射し、このエネルギ
ーによって絶縁体中に電子−正孔対からなるキャリアを
励起して導電性を持たせることで絶縁体表面をSTM観
察することも提案されている(和田等 Applied Physics
Letters, Vol.64(1994)p1100)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、いずれ
の場合にも原子像を観察する分解能には致っていない。
ここで、原子の分解能が得られない原因について考察し
てみる。高周波STMの場合は、フィードバックの制御
信号が、トンネル電流成分だけで構成されていない可能
性がある。また、励起型STMの場合は、直流成分でフ
ィードバック制御を行っているため、原理的に絶縁体部
を電子がトンネリングする薄膜の試料しか観察できず、
励起に使う電子や光の量によっては、充分にキャリアが
生成されずに帯電することが考えられる。
の場合にも原子像を観察する分解能には致っていない。
ここで、原子の分解能が得られない原因について考察し
てみる。高周波STMの場合は、フィードバックの制御
信号が、トンネル電流成分だけで構成されていない可能
性がある。また、励起型STMの場合は、直流成分でフ
ィードバック制御を行っているため、原理的に絶縁体部
を電子がトンネリングする薄膜の試料しか観察できず、
励起に使う電子や光の量によっては、充分にキャリアが
生成されずに帯電することが考えられる。
【0005】このように、絶縁体材料において分解能が
上がっていない原因としては、以下の二つの現像を挙げ
ることができる。先ず、一つ目は試料表面の帯電であ
る。前述した高周波STMにおいては、短い一周期の間
に電子が探針−試料間に行き来することを仮定している
が、探針−試料にポテンシャル障壁がある以上、探針側
から絶縁体試料側へトンネルした電子が必ず戻ってくる
とは限らない。しかも、この高周波STMの場合には絶
縁体試料の伝導帯に電子をトンネルさせるということを
強く意識はしていないので、探針側へ戻らなかった電子
は拡散できずに、探針直下で欠陥準位に捕捉されて帯電
していることが予想される。ここで簡単な見積もり計算
によると、探針直下で帯電した電子一個が、探針−試料
間距離に相当する1nmの地点に作る電界強度は、探針
−試料間に与えたバイアスにより作られる電界強度と略
同程度の大きさを持つようになる。即ち、少量の電子が
探針直下でチャージアップすることで、探針からの電子
のトンネルが妨げられることになり、フィードバック制
御の結果、探針と試料の衝突を引き起こすことになる。
また二つ目は、探針−試料間のバイアス電圧を交流で与
える場合は、トンネル電流成分が、それよりも遥かに大
きい探針−試料間その他の浮遊容量による電流成分の中
に埋もれてしまうため、三倍高調波成分等をフィードバ
ック信号として利用しているということである。理想的
には印加電圧と同じ周波数を持つ実トンネル電流成分を
検出する方が、高い空間分解能が得られると考えられる
からである。
上がっていない原因としては、以下の二つの現像を挙げ
ることができる。先ず、一つ目は試料表面の帯電であ
る。前述した高周波STMにおいては、短い一周期の間
に電子が探針−試料間に行き来することを仮定している
が、探針−試料にポテンシャル障壁がある以上、探針側
から絶縁体試料側へトンネルした電子が必ず戻ってくる
とは限らない。しかも、この高周波STMの場合には絶
縁体試料の伝導帯に電子をトンネルさせるということを
強く意識はしていないので、探針側へ戻らなかった電子
は拡散できずに、探針直下で欠陥準位に捕捉されて帯電
していることが予想される。ここで簡単な見積もり計算
によると、探針直下で帯電した電子一個が、探針−試料
間距離に相当する1nmの地点に作る電界強度は、探針
−試料間に与えたバイアスにより作られる電界強度と略
同程度の大きさを持つようになる。即ち、少量の電子が
探針直下でチャージアップすることで、探針からの電子
のトンネルが妨げられることになり、フィードバック制
御の結果、探針と試料の衝突を引き起こすことになる。
また二つ目は、探針−試料間のバイアス電圧を交流で与
える場合は、トンネル電流成分が、それよりも遥かに大
きい探針−試料間その他の浮遊容量による電流成分の中
に埋もれてしまうため、三倍高調波成分等をフィードバ
ック信号として利用しているということである。理想的
には印加電圧と同じ周波数を持つ実トンネル電流成分を
検出する方が、高い空間分解能が得られると考えられる
からである。
【0006】そこで、絶縁体表面でも原子の大きさの分
解能で観察するための条件について考えてみる。最も重
要なことは、トンネル電流成分の信号によってのみ、フ
ィードバック制御しなければならないことである。なぜ
なら、STMの高い空間分解能は、トンネル電流の物理
的性質である探針−試料間距離依存性に支配されている
からである。次に、トンネル電流は絶縁体表面の帯電の
影響を受けてはならない。また、交流での測定の場合
は、探針−試料間の浮遊容量の影響を避けなければなら
ない。以上のことを考慮すれば、絶縁体表面をSTMで
観察するために求められる要件は、次のようにまとめら
れる。 (1)試料の帯電を防ぐために、探針−試料間に交流電圧
を印加する。 (2)絶縁体試料の伝導帯に電子をトンネルさせるのに充
分なバイアス電圧を印加する。 (3)トンネル電流成分のみを検出して、それを探針−試
料表面間距離を一定にするフィードバック信号とする。 (4)探針直下の試料が帯電しないように、探針−試料間
のトンネルによる電荷の移動量をできるだけ小さくす
る。 (5)試料の欠陥準位(孤立準位)に捕捉された電子を励
起して、再びキャリアとして働かせる。
解能で観察するための条件について考えてみる。最も重
要なことは、トンネル電流成分の信号によってのみ、フ
ィードバック制御しなければならないことである。なぜ
なら、STMの高い空間分解能は、トンネル電流の物理
的性質である探針−試料間距離依存性に支配されている
からである。次に、トンネル電流は絶縁体表面の帯電の
影響を受けてはならない。また、交流での測定の場合
は、探針−試料間の浮遊容量の影響を避けなければなら
ない。以上のことを考慮すれば、絶縁体表面をSTMで
観察するために求められる要件は、次のようにまとめら
れる。 (1)試料の帯電を防ぐために、探針−試料間に交流電圧
を印加する。 (2)絶縁体試料の伝導帯に電子をトンネルさせるのに充
分なバイアス電圧を印加する。 (3)トンネル電流成分のみを検出して、それを探針−試
料表面間距離を一定にするフィードバック信号とする。 (4)探針直下の試料が帯電しないように、探針−試料間
のトンネルによる電荷の移動量をできるだけ小さくす
る。 (5)試料の欠陥準位(孤立準位)に捕捉された電子を励
起して、再びキャリアとして働かせる。
【0007】そこで、本発明の目的は、前述の各項目を
達成して、絶縁体試料表面の原子スケール構造観察を可
能とする高周波パルス走査トンネル顕微鏡を提案し、顕
微鏡として装置化することである。光学素子等の絶縁体
の極表面の欠陥を評価する技術は、電気的特性を計測す
ることができないため従来皆無であったが、本発明によ
り絶縁体の原子スケールの幾何学的形状及び電子状態を
測定することによる原子レベルでの表面欠陥の計測評価
を可能にする。また、半導体デバイスには、従来用いら
れなかった多くの種類の絶縁体材料が使われるようにな
ってきており、本発明は従来のSiO2を含めて半導体デバ
イスに用いられる絶縁体材料の微小領域の電子物性・電
気特性を計測評価する手段を提供する。
達成して、絶縁体試料表面の原子スケール構造観察を可
能とする高周波パルス走査トンネル顕微鏡を提案し、顕
微鏡として装置化することである。光学素子等の絶縁体
の極表面の欠陥を評価する技術は、電気的特性を計測す
ることができないため従来皆無であったが、本発明によ
り絶縁体の原子スケールの幾何学的形状及び電子状態を
測定することによる原子レベルでの表面欠陥の計測評価
を可能にする。また、半導体デバイスには、従来用いら
れなかった多くの種類の絶縁体材料が使われるようにな
ってきており、本発明は従来のSiO2を含めて半導体デバ
イスに用いられる絶縁体材料の微小領域の電子物性・電
気特性を計測評価する手段を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】これらの条件を満たすた
めに、100kHz〜10GHz程度の周期の矩形短パ
ルスバイアス電圧を印加する。更に、欠陥準位に捕捉さ
れた電子を再びキャリアに戻すのに充分でかつ、光電子
放出が発生しない程度のエネルギーを持つ光を照射す
る。
めに、100kHz〜10GHz程度の周期の矩形短パ
ルスバイアス電圧を印加する。更に、欠陥準位に捕捉さ
れた電子を再びキャリアに戻すのに充分でかつ、光電子
放出が発生しない程度のエネルギーを持つ光を照射す
る。
【0009】即ち、(1)〜(4)の要件を満たすために、伝
導体に電子を注入するのに充分で且つ絶縁体試料表面の
帯電を極力少なくする目的で、100kHz〜10GH
z程度の周期で矩形の短パルスのバイアス電圧を交流で
印加する。ここに、交流電圧を印加した場合、最も大き
な問題は探針−試料間の浮遊容量である。何の工夫もせ
ずに交流を印加すると、トンネル成分は浮遊容量によっ
て流れる電流に埋もれて検出することができない。この
場合は、単なる静電容量を一定にする制御となり、顕微
鏡としては原子の分解能を望めない。そこで、矩形のパ
ルスを印加して、しかも探針−試料間のトンネル抵抗と
浮遊容量で決まる時定数と、電流アンプの入力インピー
ダンスで決まる時定数を略一致させることにより、トン
ネル電流成分のみを検出できる。また、一般にmsec
オーダーの時間で2〜3V以上のバイアス電圧を印加す
ると、原子が移動することはよく知られている。従っ
て、msec以下の短パルスを印加することによって、
試料表面原子の移動を防ぐことも可能になる。
導体に電子を注入するのに充分で且つ絶縁体試料表面の
帯電を極力少なくする目的で、100kHz〜10GH
z程度の周期で矩形の短パルスのバイアス電圧を交流で
印加する。ここに、交流電圧を印加した場合、最も大き
な問題は探針−試料間の浮遊容量である。何の工夫もせ
ずに交流を印加すると、トンネル成分は浮遊容量によっ
て流れる電流に埋もれて検出することができない。この
場合は、単なる静電容量を一定にする制御となり、顕微
鏡としては原子の分解能を望めない。そこで、矩形のパ
ルスを印加して、しかも探針−試料間のトンネル抵抗と
浮遊容量で決まる時定数と、電流アンプの入力インピー
ダンスで決まる時定数を略一致させることにより、トン
ネル電流成分のみを検出できる。また、一般にmsec
オーダーの時間で2〜3V以上のバイアス電圧を印加す
ると、原子が移動することはよく知られている。従っ
て、msec以下の短パルスを印加することによって、
試料表面原子の移動を防ぐことも可能になる。
【0010】更に、絶縁体試料の伝導帯に電子を注入し
ても、その電子が欠陥準位に捕捉されると試料表面は帯
電してしまうので、捕捉された電子を伝導帯に戻すのに
充分で、なおかつ光電子放出しない程度のエネルギーの
光をトンネル接合部に照射すれば、欠陥準位に捕捉され
ることによる帯電を防ぐことができる。
ても、その電子が欠陥準位に捕捉されると試料表面は帯
電してしまうので、捕捉された電子を伝導帯に戻すのに
充分で、なおかつ光電子放出しない程度のエネルギーの
光をトンネル接合部に照射すれば、欠陥準位に捕捉され
ることによる帯電を防ぐことができる。
【0011】つまり、本発明は、探針先端と試料の間隔
を極めて接近させ、探針と試料間に印加したバイアス電
圧によってトンネル電流を生じさせ、このトンネル電流
を一定に維持する条件でフィードバック信号を駆動系に
与えて探針と試料を相対的に走査し、試料表面の原子ス
ケールの像を観察する走査トンネル顕微鏡であって、前
記探針と試料間に、高周波短パルスの交流バイアス電圧
を印加するとともに、探針と試料間のトンネル抵抗と浮
遊容量で決する時定数と、電流アンプの入力インピーダ
ンスで決する時定数を略一致させて、トンネル電流成分
だけを検出し整流してフィードバック信号とすることを
特徴とする高周波パルス走査トンネル顕微鏡である。
を極めて接近させ、探針と試料間に印加したバイアス電
圧によってトンネル電流を生じさせ、このトンネル電流
を一定に維持する条件でフィードバック信号を駆動系に
与えて探針と試料を相対的に走査し、試料表面の原子ス
ケールの像を観察する走査トンネル顕微鏡であって、前
記探針と試料間に、高周波短パルスの交流バイアス電圧
を印加するとともに、探針と試料間のトンネル抵抗と浮
遊容量で決する時定数と、電流アンプの入力インピーダ
ンスで決する時定数を略一致させて、トンネル電流成分
だけを検出し整流してフィードバック信号とすることを
特徴とする高周波パルス走査トンネル顕微鏡である。
【0012】ここで、前記交流バイアス電圧は、トンネ
ル電流を発生させるのに充分な電圧を有し且つ探針又は
試料表面の原子が移動しない程度の短パルス幅のバイア
スパルス部と、帯電した試料から電子を除去するための
逆電圧パルス部とを、交互に有するとともに、前記バイ
アスパルス部と逆電圧パルス部を独立にパルス幅を設定
したものである。
ル電流を発生させるのに充分な電圧を有し且つ探針又は
試料表面の原子が移動しない程度の短パルス幅のバイア
スパルス部と、帯電した試料から電子を除去するための
逆電圧パルス部とを、交互に有するとともに、前記バイ
アスパルス部と逆電圧パルス部を独立にパルス幅を設定
したものである。
【0013】更に、前記交流バイアス電圧の周波数が1
00kHz〜10GHzの範囲であり、フィードバック
信号として使用するトンネル電流が1pA〜10nAの
範囲であることが好ましい実施形態である。ここで、前
記交流バイアス電圧を変化させて、トンネル分光を行う
ようにすることも好ましい。
00kHz〜10GHzの範囲であり、フィードバック
信号として使用するトンネル電流が1pA〜10nAの
範囲であることが好ましい実施形態である。ここで、前
記交流バイアス電圧を変化させて、トンネル分光を行う
ようにすることも好ましい。
【0014】また、本発明は、光電子が発生しない波長
で且つ欠陥準位に捕捉された電子を伝導帯に励起するの
に充分なエネルギーを持つ光を試料表面に照射してなる
ものである。
で且つ欠陥準位に捕捉された電子を伝導帯に励起するの
に充分なエネルギーを持つ光を試料表面に照射してなる
ものである。
【0015】そして、前記試料の表面に照射する光の波
長を変化させて、トンネル分光を行うようになした、あ
るいは前記試料の表面に一定波長の光を照射しながら、
バイアス電圧を変化させて、トンネル分光を行うように
なしたものである。
長を変化させて、トンネル分光を行うようになした、あ
るいは前記試料の表面に一定波長の光を照射しながら、
バイアス電圧を変化させて、トンネル分光を行うように
なしたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を添付図
面に基づき更に詳細に説明する。先ず、図1(a)は本
発明に係る高周波パルス走査トンネル顕微鏡の装置構成
を示し、図1(b)は試料9に高周波矩形短パルスの交
流バイアス電圧を印加する回路図、図1(c)は探針8
に高周波矩形短パルスの交流バイアス電圧を印加する回
路図を示している。本装置は、防振台1の上にメインチ
ェンバー2を載せ、イオンポンプ3で内部を真空引きし
た該メインチェンバー2の内部に、バイトンとステンレ
ス板の積層構造からなる防振体4を固定部材5で空中に
取付け、前記防振体4の上に3次元ピエゾ駆動体6と試
料ホルダー7とを固定し、前記3次元ピエゾ駆動体6に
装着した探針8と、試料ホルダー7に装着した絶縁体試
料9とを近接させて配置した構造となっている。また、
前記3次元ピエゾ駆動体6には、高電圧アンプ10から
高電圧を印加して、探針8を3次元走査することができ
るようになっている。また、前記探針8と試料9間に流
れるトンネル電流を測定する電流アンプ11を備え、そ
のトンネル電流をフィードバック信号としてフィードバ
ック回路12へ送り、トンネル電流が一定となるように
前記高電圧アンプ10のZ方向駆動電圧を制御して探針
8をZ方向へ駆動して探針−試料間の間隔を調節するの
である。そして、図中符号13はパルスジェネレーター
であり、前記探針8と試料9間に、高周波矩形短パルス
の交流バイアス電圧を印加するのである。また、前記3
次元ピエゾ駆動体6は、XY方向へは微小ピッチで探針
8を試料9の表面に沿って走査する。つまり、3次元ピ
エゾ駆動体6に供給するXY方向駆動電圧が、試料表面
の位置座標に対応し、Z方向駆動電圧が試料表面の原子
レベルの凹凸に対応し、もって試料表面の原子像が得ら
れるのである。
面に基づき更に詳細に説明する。先ず、図1(a)は本
発明に係る高周波パルス走査トンネル顕微鏡の装置構成
を示し、図1(b)は試料9に高周波矩形短パルスの交
流バイアス電圧を印加する回路図、図1(c)は探針8
に高周波矩形短パルスの交流バイアス電圧を印加する回
路図を示している。本装置は、防振台1の上にメインチ
ェンバー2を載せ、イオンポンプ3で内部を真空引きし
た該メインチェンバー2の内部に、バイトンとステンレ
ス板の積層構造からなる防振体4を固定部材5で空中に
取付け、前記防振体4の上に3次元ピエゾ駆動体6と試
料ホルダー7とを固定し、前記3次元ピエゾ駆動体6に
装着した探針8と、試料ホルダー7に装着した絶縁体試
料9とを近接させて配置した構造となっている。また、
前記3次元ピエゾ駆動体6には、高電圧アンプ10から
高電圧を印加して、探針8を3次元走査することができ
るようになっている。また、前記探針8と試料9間に流
れるトンネル電流を測定する電流アンプ11を備え、そ
のトンネル電流をフィードバック信号としてフィードバ
ック回路12へ送り、トンネル電流が一定となるように
前記高電圧アンプ10のZ方向駆動電圧を制御して探針
8をZ方向へ駆動して探針−試料間の間隔を調節するの
である。そして、図中符号13はパルスジェネレーター
であり、前記探針8と試料9間に、高周波矩形短パルス
の交流バイアス電圧を印加するのである。また、前記3
次元ピエゾ駆動体6は、XY方向へは微小ピッチで探針
8を試料9の表面に沿って走査する。つまり、3次元ピ
エゾ駆動体6に供給するXY方向駆動電圧が、試料表面
の位置座標に対応し、Z方向駆動電圧が試料表面の原子
レベルの凹凸に対応し、もって試料表面の原子像が得ら
れるのである。
【0017】ここで、図2及び図3には、それぞれ試料
が真性半導体(Si)と絶縁体(石英ガラス)である場合
について、探針−試料表面間隔をトンネル領域となるよ
うに非常に小さくしたときのポテンシャル図であり、各
図の(a)は探針−試料間にバイアス電圧を印加しない
場合、(b)は探針−試料間にバイアス電圧を印加した
場合を模式的に表している。従来の手法でSTM像が得
られている半導体の場合は、バンドギャップが1eV程
度と小さいのに比べ、絶縁体の場合は約3eV以上と大
きく、トンネル電流を流すためには高いバイアス電圧が
必要である。しかし、一方でバイアス電圧を高くすると
試料表面の原子が移動して、元の表面状態から変化して
しまうといった問題がある。この問題に対してはバイア
ス電圧の印加時間を短くすれば、つまり短パルス化すれ
ば解決する。
が真性半導体(Si)と絶縁体(石英ガラス)である場合
について、探針−試料表面間隔をトンネル領域となるよ
うに非常に小さくしたときのポテンシャル図であり、各
図の(a)は探針−試料間にバイアス電圧を印加しない
場合、(b)は探針−試料間にバイアス電圧を印加した
場合を模式的に表している。従来の手法でSTM像が得
られている半導体の場合は、バンドギャップが1eV程
度と小さいのに比べ、絶縁体の場合は約3eV以上と大
きく、トンネル電流を流すためには高いバイアス電圧が
必要である。しかし、一方でバイアス電圧を高くすると
試料表面の原子が移動して、元の表面状態から変化して
しまうといった問題がある。この問題に対してはバイア
ス電圧の印加時間を短くすれば、つまり短パルス化すれ
ば解決する。
【0018】次に、図4に基づいて本発明の基礎概念を
説明する。図4(a)はタイムチャートであり、最上段
が探針−試料間に印加する短パルス矩形波からなるバイ
アス電圧、中段が探針−試料間に流れる電流を検出する
電流アンプの出力、最下段はフィードバック信号をそれ
ぞれ示している。タイムチャートの横軸は時間軸で、縦
軸は、バイアス電圧は電圧値、電流アンプの出力は電流
値である。ここで、バイアス電圧パルスの立上がりと立
下り時に、探針−試料間の浮遊容量による大きな電流が
流れ、その間でパルスのフラット部(直流バイアス電
圧)に相当する時にトンネル電流が流れる。このトンネ
ル電流を探針−試料間の距離を一定に保つフィードバッ
ク信号として用いるのである。
説明する。図4(a)はタイムチャートであり、最上段
が探針−試料間に印加する短パルス矩形波からなるバイ
アス電圧、中段が探針−試料間に流れる電流を検出する
電流アンプの出力、最下段はフィードバック信号をそれ
ぞれ示している。タイムチャートの横軸は時間軸で、縦
軸は、バイアス電圧は電圧値、電流アンプの出力は電流
値である。ここで、バイアス電圧パルスの立上がりと立
下り時に、探針−試料間の浮遊容量による大きな電流が
流れ、その間でパルスのフラット部(直流バイアス電
圧)に相当する時にトンネル電流が流れる。このトンネ
ル電流を探針−試料間の距離を一定に保つフィードバッ
ク信号として用いるのである。
【0019】ここで用いるバイアス電圧の大きさ、パル
ス幅に関しては、次のように決める。まず、パルス幅の
大きさを設定する必要がある。これは、浮遊容量に流れ
る電流とトンネル電流とが分離できるようにパルス幅を
大きくしなければならないという条件と、試料が帯電し
ないように且つ原子が移動しないようにパルス幅を小さ
くするという条件の二つを満たす最適なパルス幅であ
る。最後に、パルスの大きさであるが、探針から絶縁体
表面に電子を送り込む場合は、伝導帯に流れる程度の電
圧にしなければならない。また、逆の場合は、必ずしも
同じ絶対値の逆電圧を印可する必要はなく、逆電圧の値
とパルス幅については、試料表面の帯電を防ぐことがで
きるように調整する。つまり、前記交流バイアス電圧
は、トンネル電流を発生させるのに充分な電圧を有し且
つ探針又は試料表面の原子が移動しない程度の短パルス
幅のバイアスパルス部と、帯電した試料から電子を除去
するための逆電圧パルス部とを、交互に有するものであ
る。
ス幅に関しては、次のように決める。まず、パルス幅の
大きさを設定する必要がある。これは、浮遊容量に流れ
る電流とトンネル電流とが分離できるようにパルス幅を
大きくしなければならないという条件と、試料が帯電し
ないように且つ原子が移動しないようにパルス幅を小さ
くするという条件の二つを満たす最適なパルス幅であ
る。最後に、パルスの大きさであるが、探針から絶縁体
表面に電子を送り込む場合は、伝導帯に流れる程度の電
圧にしなければならない。また、逆の場合は、必ずしも
同じ絶対値の逆電圧を印可する必要はなく、逆電圧の値
とパルス幅については、試料表面の帯電を防ぐことがで
きるように調整する。つまり、前記交流バイアス電圧
は、トンネル電流を発生させるのに充分な電圧を有し且
つ探針又は試料表面の原子が移動しない程度の短パルス
幅のバイアスパルス部と、帯電した試料から電子を除去
するための逆電圧パルス部とを、交互に有するものであ
る。
【0020】また、図4(b)は、上記バイアス電圧波
形の各時点での探針−試料間に生ずる現像を図解したも
のである。図中(1)では短パルスバイアス電圧をかけ
ると電子がトンネルして、絶縁体の伝導帯に流れる様子
を示す。(2)ではトンネルした電子の一部は、探針直
下の試料表面に残り、試料表面が帯電する様子を示す。
(3)では逆電圧をかけて帯電した電子を抜き取る様子
を示す。(4)では帯電した電子がほぼなくなり、次に
バイアス電圧をかけたときに、電子のトンネルを妨げな
い状態を示す。図4(a)のように短パルスバイアス電
圧を探針にかけると、理想的には電子がトンネルして電
流が検出されるが、試料が絶縁体である場合には、トン
ネル電流は非常に小さいので、浮遊容量による電流成分
やノイズに隠れてしまうので、単純にはフィードバック
信号が得られない。
形の各時点での探針−試料間に生ずる現像を図解したも
のである。図中(1)では短パルスバイアス電圧をかけ
ると電子がトンネルして、絶縁体の伝導帯に流れる様子
を示す。(2)ではトンネルした電子の一部は、探針直
下の試料表面に残り、試料表面が帯電する様子を示す。
(3)では逆電圧をかけて帯電した電子を抜き取る様子
を示す。(4)では帯電した電子がほぼなくなり、次に
バイアス電圧をかけたときに、電子のトンネルを妨げな
い状態を示す。図4(a)のように短パルスバイアス電
圧を探針にかけると、理想的には電子がトンネルして電
流が検出されるが、試料が絶縁体である場合には、トン
ネル電流は非常に小さいので、浮遊容量による電流成分
やノイズに隠れてしまうので、単純にはフィードバック
信号が得られない。
【0021】実際に、試料を観察する場合の模式図は図
5(a)のようになる。図中符号Gは、バイアス電圧を
探針−試料間に印加するパルスジェネレータである。探
針8と試料9の間には、空間がある。等価回路として表
すと、トンネル抵抗RTと探針−試料間容量C1が並列に
存在していると考えられる。これを回路図で表すと図5
(b)のようになる。また、パルスバイアス電圧の立ち
上がり時と立ち下がり時に流れる探針−試料間容量C1
による電流成分を消去する目的で、電流アンプの入力抵
抗RCに並列にコンデンサC2を設けたトンネル電流検出
回路を構成し、その出力I2,I4,VCのシミュレ−シ
ョンを行った。
5(a)のようになる。図中符号Gは、バイアス電圧を
探針−試料間に印加するパルスジェネレータである。探
針8と試料9の間には、空間がある。等価回路として表
すと、トンネル抵抗RTと探針−試料間容量C1が並列に
存在していると考えられる。これを回路図で表すと図5
(b)のようになる。また、パルスバイアス電圧の立ち
上がり時と立ち下がり時に流れる探針−試料間容量C1
による電流成分を消去する目的で、電流アンプの入力抵
抗RCに並列にコンデンサC2を設けたトンネル電流検出
回路を構成し、その出力I2,I4,VCのシミュレ−シ
ョンを行った。
【0022】探針−試料間の抵抗RTとその浮遊容量C1
をかけた値を時定数T1、電流アンプの入力抵抗RCとそ
れに平行につないだコンデンサC2の積を時定数T2と設
定する。そして、C1=0.1pF、RT=1GΩ、C2
=200pF、RC=5ΩでT1=0.1μsec、T2=1
nsecの場合のシミュレ−ション結果を図6(a)に示
し、C1=0.1fF、RT=5GΩ、C2=100n
F、RC=5ΩでT1=T2=0.5μsecの場合のシミュ
レ−ション結果を図6(b)に示す。この結果は、トン
ネル電流検出回路のT2を調節してT1=T2となるよう
にすれば、パルスバイアス電圧の立ち上がり時と立ち下
がり時に流れる探針−試料間容量C1による電流成分が
電流アンプ11で検出されず、RCに流れる電流波形が
RTに流れる電流波形と同じになる、即ちトンネル電流
のみを検出できる可能性を示している。
をかけた値を時定数T1、電流アンプの入力抵抗RCとそ
れに平行につないだコンデンサC2の積を時定数T2と設
定する。そして、C1=0.1pF、RT=1GΩ、C2
=200pF、RC=5ΩでT1=0.1μsec、T2=1
nsecの場合のシミュレ−ション結果を図6(a)に示
し、C1=0.1fF、RT=5GΩ、C2=100n
F、RC=5ΩでT1=T2=0.5μsecの場合のシミュ
レ−ション結果を図6(b)に示す。この結果は、トン
ネル電流検出回路のT2を調節してT1=T2となるよう
にすれば、パルスバイアス電圧の立ち上がり時と立ち下
がり時に流れる探針−試料間容量C1による電流成分が
電流アンプ11で検出されず、RCに流れる電流波形が
RTに流れる電流波形と同じになる、即ちトンネル電流
のみを検出できる可能性を示している。
【0023】実際に、絶縁体を観察する場合には、探針
と試料の間に空間と絶縁体が存在している。回路的に
は、トンネル抵抗RTと探針−試料間容量C1が並列に存
在し、その前に(探針にバイアス電圧を印加する時はそ
の後ろに)絶縁体、即ちコンデンサがあると考えられる
(図5(b)参照)。この場合のシミュレ−ション結果
も前述の場合と同様に時定数が一致した時(T1=
T2)、RCとRTに流れる電流が略同じ波形になること
も確かめている。また、トンネル接合部を模擬した電気
回路によって、浮遊容量C1の影響を受けずにトンネル
電流が検出できることを実験的にも確かめた。尚、時定
数T1と時定数T2とは完全に一致させなくても、ある許
容範囲内でT1≒T2であれば、つまりトンネル電流に一
部浮遊容量による電流成分が含まれても原子像が観察で
きることを確認している。このことは、実際に未知の容
量を持つ絶縁体試料のSTM観察において非常に興味深
い現象である。
と試料の間に空間と絶縁体が存在している。回路的に
は、トンネル抵抗RTと探針−試料間容量C1が並列に存
在し、その前に(探針にバイアス電圧を印加する時はそ
の後ろに)絶縁体、即ちコンデンサがあると考えられる
(図5(b)参照)。この場合のシミュレ−ション結果
も前述の場合と同様に時定数が一致した時(T1=
T2)、RCとRTに流れる電流が略同じ波形になること
も確かめている。また、トンネル接合部を模擬した電気
回路によって、浮遊容量C1の影響を受けずにトンネル
電流が検出できることを実験的にも確かめた。尚、時定
数T1と時定数T2とは完全に一致させなくても、ある許
容範囲内でT1≒T2であれば、つまりトンネル電流に一
部浮遊容量による電流成分が含まれても原子像が観察で
きることを確認している。このことは、実際に未知の容
量を持つ絶縁体試料のSTM観察において非常に興味深
い現象である。
【0024】次に、実際に作成したSTMを用いて、矩
形パルス交流バイアス電圧を印加し、ダイオードで整流
した信号をフィードバックすることによってSTM観察
するシステムを構築した。図7にその回路図を示す。こ
こで、C1とRTは、図1に示した実際のSTM装置のト
ンネル抵抗と浮遊容量である。試料として先ず導電材料
であるHOPGを用い、T1<T2、T1≒T2、T1>T2
の場合について測定した。ここで、前記電流アンプと直
列に可変抵抗RVを設け、検出回路系の時定数T2を調節
した。矩形パルス交流バイアス電圧を20kHzとした
場合の測定結果を図8に示している。図中左のオシログ
ラフは、パルスジェネレータGで発生させたバイアス電
圧波形であり、右側のオシログラフは、電流アンプで検
出した電流波形である。この結果、パルスバイアス電圧
の周波数が低い場合ではあるが、時定数が略一致した時
(T1=T2)、RCとRTに流れる電流が略同じ波形にな
り、トンネル電流のみが検出できた。この時に得られた
STM像を図10に示している。図10(a)は10n
m四方の範囲の観察結果、図10(b)は5nm四方の
範囲の観察結果である。また、図11(a)は、矩形パ
ルス交流バイアス電圧を100kHzとした場合のHO
PGのSTM像、図11(b)は矩形パルス交流バイア
ス電圧を200kHzとした場合のHOPGのSTM像
であり、それぞれ5nm四方の範囲の観察結果である。
ここで、200kHzの場合の解像度が悪いのは、整流
回路(ダイオード)の応答速度が低いためと思われる。
この観察結果は、パルスバイアス電圧を印加してトンネ
ル電流成分のみを検出し、それをフィードバック信号と
して使用し、STM像を観察することができる基本的な
システムができたことを意味し、半導体はもとより絶縁
体表面のSTM像の観察が原理的に可能であることを示
している。
形パルス交流バイアス電圧を印加し、ダイオードで整流
した信号をフィードバックすることによってSTM観察
するシステムを構築した。図7にその回路図を示す。こ
こで、C1とRTは、図1に示した実際のSTM装置のト
ンネル抵抗と浮遊容量である。試料として先ず導電材料
であるHOPGを用い、T1<T2、T1≒T2、T1>T2
の場合について測定した。ここで、前記電流アンプと直
列に可変抵抗RVを設け、検出回路系の時定数T2を調節
した。矩形パルス交流バイアス電圧を20kHzとした
場合の測定結果を図8に示している。図中左のオシログ
ラフは、パルスジェネレータGで発生させたバイアス電
圧波形であり、右側のオシログラフは、電流アンプで検
出した電流波形である。この結果、パルスバイアス電圧
の周波数が低い場合ではあるが、時定数が略一致した時
(T1=T2)、RCとRTに流れる電流が略同じ波形にな
り、トンネル電流のみが検出できた。この時に得られた
STM像を図10に示している。図10(a)は10n
m四方の範囲の観察結果、図10(b)は5nm四方の
範囲の観察結果である。また、図11(a)は、矩形パ
ルス交流バイアス電圧を100kHzとした場合のHO
PGのSTM像、図11(b)は矩形パルス交流バイア
ス電圧を200kHzとした場合のHOPGのSTM像
であり、それぞれ5nm四方の範囲の観察結果である。
ここで、200kHzの場合の解像度が悪いのは、整流
回路(ダイオード)の応答速度が低いためと思われる。
この観察結果は、パルスバイアス電圧を印加してトンネ
ル電流成分のみを検出し、それをフィードバック信号と
して使用し、STM像を観察することができる基本的な
システムができたことを意味し、半導体はもとより絶縁
体表面のSTM像の観察が原理的に可能であることを示
している。
【0025】次に、試料を半導体(Siウェーハ水素終端
化表面)とした場合の前記同様な測定結果を図9に示し
ている。この場合も時定数が略一致した時(T1=
T2)、R CとRTに流れる電流が略同じ波形になり、RC
に流れる電流がトンネル電流を反映しフィードバック信
号として充分に使用できることを示している。このSiウ
ェーハに関しては、電流アンプのS/Nの関係と試料の
前処理の影響から、原子スケールの像の観察には致って
いない。
化表面)とした場合の前記同様な測定結果を図9に示し
ている。この場合も時定数が略一致した時(T1=
T2)、R CとRTに流れる電流が略同じ波形になり、RC
に流れる電流がトンネル電流を反映しフィードバック信
号として充分に使用できることを示している。このSiウ
ェーハに関しては、電流アンプのS/Nの関係と試料の
前処理の影響から、原子スケールの像の観察には致って
いない。
【0026】また、試料が絶縁体の場合には、バイアス
電圧のパルス幅をもっと短くし、感度が高く且つ高い周
波数電流の検出が可能な電流アンプを用いる必要があ
る。つまり、前記交流バイアス電圧の周波数を100k
Hz〜10GHzの範囲に設定し、電流アンプもその周
波数に対応でき、フィードバック信号として使用するト
ンネル電流が1pA〜10nAの範囲も検出できるよう
にすれば、絶縁体のSTM像を充分に得ることができ
る。ここで、自然酸化膜SiO2で覆われたSiを試料とし
て、矩形パルス交流バイアス電圧の周波数が100kH
zでフィードバック制御が動作することを確認してい
る。
電圧のパルス幅をもっと短くし、感度が高く且つ高い周
波数電流の検出が可能な電流アンプを用いる必要があ
る。つまり、前記交流バイアス電圧の周波数を100k
Hz〜10GHzの範囲に設定し、電流アンプもその周
波数に対応でき、フィードバック信号として使用するト
ンネル電流が1pA〜10nAの範囲も検出できるよう
にすれば、絶縁体のSTM像を充分に得ることができ
る。ここで、自然酸化膜SiO2で覆われたSiを試料とし
て、矩形パルス交流バイアス電圧の周波数が100kH
zでフィードバック制御が動作することを確認してい
る。
【0027】更に、絶縁体の場合には、表面に多くの欠
陥準位が存在し、その欠陥準位に捕捉された電子に外部
からエネルギーを与えて伝導帯に励起することによっ
て、更に鮮明なSTM像を得ることができる。その励起
手段としては、光電子が発生しない波長で且つ欠陥準位
に捕捉された電子を伝導帯に励起するのに充分なエネル
ギーを持つ光を試料表面に照射する。この場合は、特に
光励起型高周波パルスSTMと呼ぶことにする。この光
励起型高周波パルスSTMの配置図を図12に示してい
る。図12に示したレーザー照射機構は、チャンバーの
外に配置した図示しないレーザー光源からのレーザー光
を対物レンズを通してファイバー14に導き、チャンバ
ー内に配したファイバー14の先端を角度を微調節でき
るレーザー台15に固定し、試料ホルダー7に固定され
た試料8にレーザー光を照射するようにしている。本実
施形態では、試料8に対して入射角5°でレーザー光を
照射するように設定している。また、レーザー光の入射
側とは反対側にCCDカメラ16を配置して、観察領域
に対して正確にレーザー光を照射するためのモニターと
している。
陥準位が存在し、その欠陥準位に捕捉された電子に外部
からエネルギーを与えて伝導帯に励起することによっ
て、更に鮮明なSTM像を得ることができる。その励起
手段としては、光電子が発生しない波長で且つ欠陥準位
に捕捉された電子を伝導帯に励起するのに充分なエネル
ギーを持つ光を試料表面に照射する。この場合は、特に
光励起型高周波パルスSTMと呼ぶことにする。この光
励起型高周波パルスSTMの配置図を図12に示してい
る。図12に示したレーザー照射機構は、チャンバーの
外に配置した図示しないレーザー光源からのレーザー光
を対物レンズを通してファイバー14に導き、チャンバ
ー内に配したファイバー14の先端を角度を微調節でき
るレーザー台15に固定し、試料ホルダー7に固定され
た試料8にレーザー光を照射するようにしている。本実
施形態では、試料8に対して入射角5°でレーザー光を
照射するように設定している。また、レーザー光の入射
側とは反対側にCCDカメラ16を配置して、観察領域
に対して正確にレーザー光を照射するためのモニターと
している。
【0028】絶縁体試料が常温では導電性を持たない
1.1eVのバンドギャップを持つ真性半導体Siであれ
ば、欠陥準位に捕捉された電子を伝導帯に励起するに
は、例えば波長λ=820nmの赤外線を照射すればよ
い。ここで、波長λ=820nm(1.51eV)、光
量100mW、照射面積0.16mm2の赤外線照射
は、周波数100kHzの1パルス(10μsec)で1原子当
たり2.6個の電子を励起できる光量である。この真性
半導体Siを試料として、矩形パルス交流バイアス電圧の
周波数が100kHzでSTM観察する場合に、光(λ
=820nm)照射をすることによって初めてフィード
バック制御が可能であることを実験的に確認し、絶縁体
試料での光照射の効果を明らかにした。また、絶縁体試
料がSi上の自然酸化膜SiO2であれば、波長可変レーザー
を用いて、4eV程度のエネルギーを持つ励起光源を用
いる。その手段としては、前述のようにレーザー光をフ
ァイバーに入射して、探針直下の試料表面に照射する励
起光源を用いることが好ましい。他のレーザー光源とし
ては、半導体レーザー及び可視域の気体放電レーザーを
用いる。また、より高いエネルギーの光を照射する必要
がある場合には、真空紫外線を照射する。
1.1eVのバンドギャップを持つ真性半導体Siであれ
ば、欠陥準位に捕捉された電子を伝導帯に励起するに
は、例えば波長λ=820nmの赤外線を照射すればよ
い。ここで、波長λ=820nm(1.51eV)、光
量100mW、照射面積0.16mm2の赤外線照射
は、周波数100kHzの1パルス(10μsec)で1原子当
たり2.6個の電子を励起できる光量である。この真性
半導体Siを試料として、矩形パルス交流バイアス電圧の
周波数が100kHzでSTM観察する場合に、光(λ
=820nm)照射をすることによって初めてフィード
バック制御が可能であることを実験的に確認し、絶縁体
試料での光照射の効果を明らかにした。また、絶縁体試
料がSi上の自然酸化膜SiO2であれば、波長可変レーザー
を用いて、4eV程度のエネルギーを持つ励起光源を用
いる。その手段としては、前述のようにレーザー光をフ
ァイバーに入射して、探針直下の試料表面に照射する励
起光源を用いることが好ましい。他のレーザー光源とし
ては、半導体レーザー及び可視域の気体放電レーザーを
用いる。また、より高いエネルギーの光を照射する必要
がある場合には、真空紫外線を照射する。
【0029】また、本発明のSTM装置は、単に試料表
面のSTM像を観察することに止まらず、探針−試料間
の電流−電圧特性(I−V特性)を測定し、微分コンダ
クタンスとコンダクタンスの比を演算することにより、
試料表面の局所状態密度を得ることができる。
面のSTM像を観察することに止まらず、探針−試料間
の電流−電圧特性(I−V特性)を測定し、微分コンダ
クタンスとコンダクタンスの比を演算することにより、
試料表面の局所状態密度を得ることができる。
【0030】STMで得られる表面凹凸像は、各サイト
でのトンネル電流の相対値を反映しているため、探針−
試料間に印加するバイアス電圧の大きさやその極性等の
測定条件によって変化する。トンネル現像を起こす電子
は、バイアス電圧に規定された、限られたエネルギー範
囲の電子のみである。このような特徴を生かしてバイア
ス電圧を変化させ、電流−電圧特性を測定すると、エネ
ルギーを関数とした局所的な状態密度のスペクトルを得
ることができる。これが、走査トンネル分光法(ST
S;Scanning Tunneling Spectroscopy)である。ま
た、STSにも、各走査線を正負2極性の電圧で2度走
査する両極性トンネル電子映像法(DPTI;Dual-Pol
arity Tunneling Imaging)と、各画素でフィードバッ
ク信号を一時ホールドして探針のZ方向の動きを止め、
この間に探針−試料間のバイアス電圧を掃引して電流−
電圧特性を測定・記録した後、再びSTM動作に戻る一
連の動作を走査範囲のすべての画素で繰り返す、電流映
像型トンネル電子分光法(CITS;Current Imaging
Tunneling Spectroscopy)とがある。DPTI法では電
流方向により状態密度を反映したSTM像が得られ、C
ITS法ではSTM像と同時に各画素での局所状態密度
を知ることができる。
でのトンネル電流の相対値を反映しているため、探針−
試料間に印加するバイアス電圧の大きさやその極性等の
測定条件によって変化する。トンネル現像を起こす電子
は、バイアス電圧に規定された、限られたエネルギー範
囲の電子のみである。このような特徴を生かしてバイア
ス電圧を変化させ、電流−電圧特性を測定すると、エネ
ルギーを関数とした局所的な状態密度のスペクトルを得
ることができる。これが、走査トンネル分光法(ST
S;Scanning Tunneling Spectroscopy)である。ま
た、STSにも、各走査線を正負2極性の電圧で2度走
査する両極性トンネル電子映像法(DPTI;Dual-Pol
arity Tunneling Imaging)と、各画素でフィードバッ
ク信号を一時ホールドして探針のZ方向の動きを止め、
この間に探針−試料間のバイアス電圧を掃引して電流−
電圧特性を測定・記録した後、再びSTM動作に戻る一
連の動作を走査範囲のすべての画素で繰り返す、電流映
像型トンネル電子分光法(CITS;Current Imaging
Tunneling Spectroscopy)とがある。DPTI法では電
流方向により状態密度を反映したSTM像が得られ、C
ITS法ではSTM像と同時に各画素での局所状態密度
を知ることができる。
【0031】更に具体的には、本発明のSTM装置を用
いることにより、Siウェーハ表面に吸着した金属原子の
元素分析を行うことができる。即ち、STM/STSで
金属原子が吸着している位置の局所状態密度(Local Den
sity of States;LDOS)を測定し、第一原理分子動力
学に基づくLDOSの計算結果との比較から、吸着元素
の同定を行なうものである。STM/STSが原子レベ
ルの空間分解能を有するため、原理的には吸着原子1個
の元素分析が可能な究極の感度を持つ表面元素分析法に
なる。また、究極の表面加工法であるEEM(Elastic E
mission Machining)やプラズマCVM(Chemical Vapori
zation Machining)で超精密加工された絶縁体試料表面
を光励起型高周波パルスSTMで観察することにより、
その加工の評価を原子レベルで行うことができる。その
他の用途は枚挙に暇が無いので割愛する。
いることにより、Siウェーハ表面に吸着した金属原子の
元素分析を行うことができる。即ち、STM/STSで
金属原子が吸着している位置の局所状態密度(Local Den
sity of States;LDOS)を測定し、第一原理分子動力
学に基づくLDOSの計算結果との比較から、吸着元素
の同定を行なうものである。STM/STSが原子レベ
ルの空間分解能を有するため、原理的には吸着原子1個
の元素分析が可能な究極の感度を持つ表面元素分析法に
なる。また、究極の表面加工法であるEEM(Elastic E
mission Machining)やプラズマCVM(Chemical Vapori
zation Machining)で超精密加工された絶縁体試料表面
を光励起型高周波パルスSTMで観察することにより、
その加工の評価を原子レベルで行うことができる。その
他の用途は枚挙に暇が無いので割愛する。
【0032】
【発明の効果】以上にしてなる本発明に係る高周波パル
ス走査トンネル顕微鏡は、探針先端と試料の間隔を極め
て接近させ、探針と試料間に印加したバイアス電圧によ
ってトンネル電流を生じさせ、このトンネル電流を一定
に維持する条件でフィードバック信号を駆動系に与えて
探針と試料を相対的に走査し、試料表面の原子スケール
の像を観察する走査トンネル顕微鏡であって、前記探針
と試料間に、高周波短パルスの交流バイアス電圧を印加
するとともに、探針と試料間のトンネル抵抗と浮遊容量
で決する時定数と、電流アンプの入力インピーダンスで
決する時定数を略一致させて、トンネル電流成分だけを
検出し整流してフィードバック信号とするので、絶縁体
表面の原子像の観察ができ、他に例が見られないもので
ある。勿論、半導体、導体の観察も可能である。
ス走査トンネル顕微鏡は、探針先端と試料の間隔を極め
て接近させ、探針と試料間に印加したバイアス電圧によ
ってトンネル電流を生じさせ、このトンネル電流を一定
に維持する条件でフィードバック信号を駆動系に与えて
探針と試料を相対的に走査し、試料表面の原子スケール
の像を観察する走査トンネル顕微鏡であって、前記探針
と試料間に、高周波短パルスの交流バイアス電圧を印加
するとともに、探針と試料間のトンネル抵抗と浮遊容量
で決する時定数と、電流アンプの入力インピーダンスで
決する時定数を略一致させて、トンネル電流成分だけを
検出し整流してフィードバック信号とするので、絶縁体
表面の原子像の観察ができ、他に例が見られないもので
ある。勿論、半導体、導体の観察も可能である。
【0033】また、高周波パルス走査トンネル顕微鏡や
光励起型高周波パルス走査トンネル顕微鏡により、これ
まで導体・半導体表面に限られていた原子スケールの分
解能で幾何学的構造と電子状態の計測が、絶縁体表面に
まで広がることになり、表面科学の分野に大きく貢献で
きる。
光励起型高周波パルス走査トンネル顕微鏡により、これ
まで導体・半導体表面に限られていた原子スケールの分
解能で幾何学的構造と電子状態の計測が、絶縁体表面に
まで広がることになり、表面科学の分野に大きく貢献で
きる。
【0034】更に、バイアス電圧や励起光の波長を変化
させ、トンネル分光を行なえば、絶縁体の電子状態も知
ることでき、表面科学の進歩に大きく貢献できることは
言うまでもなく、多くの絶縁体表面の機能を計測評価で
き、産業にも貢献することができる。
させ、トンネル分光を行なえば、絶縁体の電子状態も知
ることでき、表面科学の進歩に大きく貢献できることは
言うまでもなく、多くの絶縁体表面の機能を計測評価で
き、産業にも貢献することができる。
【0035】本装置は、従来のSTMに高周波パルスを
発生するファンクションジェネレータと簡単な検出回路
を含む高速・低ノイズ電流アンプ、励起用光源を組込め
ばシステムとして完成する。従って、従来のSTMに付
加的な改造を加えるだけで実用化か達成される。これ
は、これまで提案されているマイクロ波を用いた高周波
STMが、バイアス電圧の印加方法に始り、アンプを含
めて高周波信号の取扱いが全く異なってくるのとは、実
用化の困難さが大きく違う。但し、励起用光源に関して
は、観察する材料によって励起光の波長を選択し、欠陥
密度によって光量を調整しなければならない。
発生するファンクションジェネレータと簡単な検出回路
を含む高速・低ノイズ電流アンプ、励起用光源を組込め
ばシステムとして完成する。従って、従来のSTMに付
加的な改造を加えるだけで実用化か達成される。これ
は、これまで提案されているマイクロ波を用いた高周波
STMが、バイアス電圧の印加方法に始り、アンプを含
めて高周波信号の取扱いが全く異なってくるのとは、実
用化の困難さが大きく違う。但し、励起用光源に関して
は、観察する材料によって励起光の波長を選択し、欠陥
密度によって光量を調整しなければならない。
【0036】また、光励起型高周波パルスSTMよっ
て、これまで電気を流さないことから、計測法が制限さ
れていた絶縁体表面に関する表面科学の研究の道が拓か
れる。特に、表面原子構造のみならず、従来帯電のため
にほとんど不可能であった詳細な絶縁体の価電子構造の
計測や欠陥準位の同定等が導体と同様に可能になる。更
に、価電子分光のパラメータにトンネルバイアス電圧と
励起光波長を使えることは、自由度が高いため、計測法
としての可能性が大きい。
て、これまで電気を流さないことから、計測法が制限さ
れていた絶縁体表面に関する表面科学の研究の道が拓か
れる。特に、表面原子構造のみならず、従来帯電のため
にほとんど不可能であった詳細な絶縁体の価電子構造の
計測や欠陥準位の同定等が導体と同様に可能になる。更
に、価電子分光のパラメータにトンネルバイアス電圧と
励起光波長を使えることは、自由度が高いため、計測法
としての可能性が大きい。
【0037】更に、従来不可能であった光学材料となる
ガラス等の絶縁体表面の原子構造と表面欠陥準位が観察
できるようになるため、これらの超精密加工表面の評価
ができるようになる。そして、計測結果を加工プロセス
へフィードバックすることが可能となり、加工プロセス
の開発にも大きな貢献が期待できる。
ガラス等の絶縁体表面の原子構造と表面欠陥準位が観察
できるようになるため、これらの超精密加工表面の評価
ができるようになる。そして、計測結果を加工プロセス
へフィードバックすることが可能となり、加工プロセス
の開発にも大きな貢献が期待できる。
【図1】本発明に係るSTM装置の簡略説明図である。
【図2】探針−試料表面間隔がトンネル領域にある場合
で、試料が半導体である場合のポテンシャル図であり、
(a)はバイアス電圧を印加しないとき、(b)はバイ
アス電圧を印加したときを示している。
で、試料が半導体である場合のポテンシャル図であり、
(a)はバイアス電圧を印加しないとき、(b)はバイ
アス電圧を印加したときを示している。
【図3】探針−試料表面間隔がトンネル領域にある場合
で、試料が絶縁体である場合のポテンシャル図であり、
(a)はバイアス電圧を印加しないとき、(b)はバイ
アス電圧を印加したときを示している。
で、試料が絶縁体である場合のポテンシャル図であり、
(a)はバイアス電圧を印加しないとき、(b)はバイ
アス電圧を印加したときを示している。
【図4】本発明の基礎概念を示し、(a)はバイアス電
圧、電流アンプ出力及びフィードバック信号の各タイム
チャート、(b)は探針−試料間における電位の挙動を
示した模式図である。
圧、電流アンプ出力及びフィードバック信号の各タイム
チャート、(b)は探針−試料間における電位の挙動を
示した模式図である。
【図5】本発明の説明図であり、(a)は実際のSTM
装置の模式図、(b)はその等価回路である。
装置の模式図、(b)はその等価回路である。
【図6】図5(b)の等価回路のシミュレ−ション結果
であり、(a)は時定数が異なる場合(T1≠T2)の電
流波形、(b)は時定数が一致した場合(T1=T2)の
電流波形である。
であり、(a)は時定数が異なる場合(T1≠T2)の電
流波形、(b)は時定数が一致した場合(T1=T2)の
電流波形である。
【図7】実際のSTM装置の回路図である。
【図8】試料としてHOPGを用いた場合の電流アンプ
で検出した電流波形を示すオシログラフである。
で検出した電流波形を示すオシログラフである。
【図9】試料としてSiウェーハ水素終端化表面を用いた
場合のバイアス電圧と電流アンプで検出した電流波形を
示すオシログラフである。
場合のバイアス電圧と電流アンプで検出した電流波形を
示すオシログラフである。
【図10】本発明の装置を用いてバイアス電圧の周波数
20kHzで観察したHOPGのSTM像であり、
(a)は10nm×10nmのスケール、(b)は5n
m×5nmのスケールである。
20kHzで観察したHOPGのSTM像であり、
(a)は10nm×10nmのスケール、(b)は5n
m×5nmのスケールである。
【図11】本発明の装置を用いて観察したHOPGのS
TM像であり、(a)はバイアス電圧の周波数を100
kHzとした場合、(b)はバイアス電圧の周波数を2
00kHzとした場合のSTM像である。
TM像であり、(a)はバイアス電圧の周波数を100
kHzとした場合、(b)はバイアス電圧の周波数を2
00kHzとした場合のSTM像である。
【図12】光励起型高周波パルスSTMの光照射機構を
示す概略配置図である。
示す概略配置図である。
1 防振台 2 メインチェンバー 3 イオンポンプ 4 防振体 5 固定部材 6 3次元ピエゾ駆動体 7 試料ホルダー 8 探針 9 絶縁体試料 10 高電圧アンプ 11 電流アンプ 12 フィードバック回路 13 パルスジェネレーター 14 ファイバー 15 レーザー台 16 CCDカメラ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 遠藤 勝義 大阪府交野市森南1丁目49−8 (72)発明者 片岡 俊彦 京都府京都市左京区松ヶ崎三反長町13 ラ ファミーユ201 (72)発明者 有馬 健太 大阪府箕面市小野原東5−1−1−202 Fターム(参考) 2F063 AA43 CA08 CA09 CA17 DA01 DB05 DD02 EA16 EB23 FA07 LA06 LA07 LA11 LA29 LA30 MA05 2F069 AA60 DD19 GG04 GG06 GG07 GG62 HH09 HH30 JJ07 JJ25 LL03 NN02 QQ05
Claims (7)
- 【請求項1】 探針先端と試料の間隔を極めて接近さ
せ、探針と試料間に印加したバイアス電圧によってトン
ネル電流を生じさせ、このトンネル電流を一定に維持す
る条件でフィードバック信号を駆動系に与えて探針と試
料を相対的に走査し、試料表面の原子スケールの像を観
察する走査トンネル顕微鏡であって、前記探針と試料間
に、高周波矩形短パルスの交流バイアス電圧を印加する
とともに、探針と試料間のトンネル抵抗と浮遊容量で決
する時定数と、電流アンプの入力インピーダンスで決す
る時定数を略一致させて、トンネル電流成分だけを検出
し整流してフィードバック信号とすることを特徴とする
高周波パルス走査トンネル顕微鏡。 - 【請求項2】 前記交流バイアス電圧は、トンネル電流
を発生させるのに充分な電圧を有し且つ探針又は試料表
面の原子が移動しない程度の短パルス幅のバイアスパル
ス部と、帯電した試料から電子を除去するための逆電圧
パルス部とを、交互に有するとともに、前記バイアスパ
ルス部と逆電圧パルス部を独立にパルス幅を設定したも
のである請求項1記載の高周波パルス走査トンネル顕微
鏡。 - 【請求項3】 前記交流バイアス電圧の周波数が100
kHz〜10GHzの範囲であり、フィードバック信号
として使用するトンネル電流が1pA〜10nAの範囲
である請求項1又は2記載の高周波パルス走査トンネル
顕微鏡。 - 【請求項4】 前記交流バイアス電圧を変化させて、ト
ンネル分光を行うようになした請求項1〜3何れかに記
載の高周波パルス走査トンネル顕微鏡。 - 【請求項5】 光電子が発生しない波長で且つ欠陥準位
に捕捉された電子を伝導帯に励起するのに充分なエネル
ギーを持つ光を試料表面に照射してなる請求項1〜4何
れかに記載の高周波パルス走査トンネル顕微鏡。 - 【請求項6】 前記試料の表面に一定波長の光を照射し
ながら、バイアス電圧を変化させて、トンネル分光を行
うようになした請求項5記載の高周波パルス走査トンネ
ル顕微鏡。 - 【請求項7】 前記試料の表面に照射する光の波長を変
化させて、トンネル分光を行うようになした請求項5記
載の高周波パルス走査トンネル顕微鏡。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001177564A JP2002365194A (ja) | 2001-06-12 | 2001-06-12 | 高周波パルス走査トンネル顕微鏡 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001177564A JP2002365194A (ja) | 2001-06-12 | 2001-06-12 | 高周波パルス走査トンネル顕微鏡 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002365194A true JP2002365194A (ja) | 2002-12-18 |
Family
ID=19018390
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001177564A Pending JP2002365194A (ja) | 2001-06-12 | 2001-06-12 | 高周波パルス走査トンネル顕微鏡 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2002365194A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007013371A1 (ja) * | 2005-07-25 | 2007-02-01 | Shimadzu Corporation | 走査型トンネル分光方法及び走査型トンネル顕微鏡 |
WO2007102324A1 (ja) * | 2006-03-07 | 2007-09-13 | Osaka Industrial Promotion Organization | 位相ロックイン型高周波走査トンネル顕微鏡 |
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-
2001
- 2001-06-12 JP JP2001177564A patent/JP2002365194A/ja active Pending
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JPWO2007013371A1 (ja) * | 2005-07-25 | 2009-02-05 | 株式会社島津製作所 | 走査型トンネル分光方法及び走査型トンネル顕微鏡 |
JP4755646B2 (ja) * | 2005-07-25 | 2011-08-24 | 株式会社島津製作所 | 走査型トンネル分光方法及び走査型トンネル顕微鏡 |
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JPWO2007102324A1 (ja) * | 2006-03-07 | 2009-07-23 | 財団法人大阪産業振興機構 | 位相ロックイン型高周波走査トンネル顕微鏡 |
JP4590574B2 (ja) * | 2006-03-07 | 2010-12-01 | 財団法人大阪産業振興機構 | 位相ロックイン型高周波走査トンネル顕微鏡 |
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