JPH11108610A - スピン偏極走査型トンネル顕微鏡及びその探針、及び磁化情報評価方法 - Google Patents

スピン偏極走査型トンネル顕微鏡及びその探針、及び磁化情報評価方法

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JPH11108610A
JPH11108610A JP26899797A JP26899797A JPH11108610A JP H11108610 A JPH11108610 A JP H11108610A JP 26899797 A JP26899797 A JP 26899797A JP 26899797 A JP26899797 A JP 26899797A JP H11108610 A JPH11108610 A JP H11108610A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 測定すべき磁性表面に与える外乱を極力抑制
し、高精度の測定が可能なスピン偏極走査型トンネル顕
微鏡及びその探針、および磁性表面の磁化情報の評価方
法を提供する。 【解決手段】 レーザ光の照射によってスピン偏極した
電子が励起される半導体材料により形成されたスピン偏
極走査型トンネル顕微鏡用の探針である。この探針は、
多角錘の錐面の頂点を先端とし、該先端をある間隔をお
いてある仮想平面に対向させ、該先端を画定する複数の
錐面のうち1つの錐面を、該仮想平面に対して垂直に配
置した場合に、先端のみにおいて仮想平面に最も近接す
るような形状とされている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スピン偏極走査型
トンネル顕微鏡及びその探針、及び磁化情報評価方法に
関する。スピン偏極走査型トンネル顕微鏡は、磁性材料
の磁化の様子を観察することができ、高い分解能を有す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、コンピュータの外部記憶用ハード
ディスク等の磁気記録媒体の記録密度が著しく向上して
いる。その磁気的情報を評価する手法として、磁気力顕
微鏡、ビッター法等が知られている。今後さらに記録密
度が向上し、1つの磁区が微細になると、これらの評価
方法では評価困難になると予測される。
【0003】微細な磁区を有する磁性表面の磁気的情報
を評価する新しい装置として、スピン偏極走査型トンネ
ル顕微鏡が提案されている。スピン偏極走査型トンネル
顕微鏡は、スピン偏極した伝導電子を有する探針の先端
を磁性材料の表面に微小な間隔で対向させ、探針と磁性
材料間にトンネル電流を流し、トンネル電流の大きさで
磁気的情報を評価する装置である。
【0004】このスピン偏極走査型トンネル顕微鏡に
は、スピン偏極した電子を放出する探針が必要とされ
る。この探針は、試料に対して極めて接近して配置され
るため、試料の磁化情報を変化させないために非磁性体
で形成することが好ましい。非磁性体でスピン偏極した
電子を放出し得る材料としてGaAsが知られている。
【0005】G.ニューネス(G. Nunes)らにより、劈
開法を用いて作製したGaAsの探針が報告されてい
る。この探針は、(100)面のGaAs基板を、(1
00)面と90°の角度をなす2面で劈開し、(10
0)面と2つの劈開面の交点を先端とするものである。
【0006】このGaAsの探針に、GaAsのバンド
ギャップに相当する波長の円偏向レーザ光を照射するこ
とにより、価電子帯の電子を励起させ、スピン偏極した
伝導電子を得ることができる。伝導電子の偏極度は50
%であり、その偏極方向は照射レーザ光の光軸に対して
平行である。偏極の向きは、円偏向レーザ光の旋回方向
により決まる。
【0007】この探針を磁性表面に対向させ、磁性表面
に平行な光軸を有するレーザ光を探針に照射すると、探
針内に、磁性表面に対して平行なスピン偏極を有する伝
導電子が励起される。トンネル電流の大きさは、磁性表
面の磁化の向きと探針内の電子のスピン偏極の向きとの
関係により変化する。従って、トンネル電流の大きさを
測定することにより、磁性表面の磁化の向きに関する情
報を得ることができる。
【0008】磁性表面が、その表面に対して平行に磁化
されている場合には、レーザ光の光軸を磁性表面に対し
て平行にする。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】G.ニューネスらの探
針を磁性表面に対向させると、その先端を画定する3つ
の錐面のすべてが磁性表面に対して斜めになり、磁性表
面側を向くことになる。従って、磁性表面に平行な光軸
を有するレーザ光を探針に照射すると、反射光が磁性表
面に入射してしまう。磁性表面に入射した反射光が外乱
となり、磁化情報の測定に悪影響を与えると思われる。
【0010】本発明の目的は、測定すべき磁性表面に与
える外乱を極力抑制し、高精度の測定が可能なスピン偏
極走査型トンネル顕微鏡及びその探針、および磁性表面
の磁化情報の評価方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の一観点による
と、レーザ光の照射によってスピン偏極した電子が励起
される半導体材料により形成され、多角錘の錐面の頂点
を先端とし、該先端をある間隔をおいてある仮想平面に
対向させ、該先端を画定する複数の錐面のうち1つの錐
面を、該仮想平面に対して垂直に配置した場合に、前記
先端のみにおいて前記仮想平面に最も近接するスピン偏
極走査型トンネル顕微鏡用の探針が提供される。
【0012】先端を画定する錐面のうち1つの錐面が、
評価対象物の表面に対して垂直になるように配置して測
定を行う。評価対象物の表面に対して垂直に配置した錐
面に、評価対象物の表面に平行な光軸を有するレーザ光
を入射すると、その反射光の光軸も評価対象物の表面に
平行になる。このため、反射光が評価対象物に入射しな
くなり、反射光の入射による測定への影響を回避するこ
とができる。
【0013】本発明の他の観点によると、レーザ光の照
射によってスピン偏極した電子が励起される半導体材料
により形成され、多角錘の錐面の頂点を先端とし、該先
端をある間隔をおいてある仮想平面に対向させ、該先端
を画定する複数の錐面のうち1つの錐面を、該仮想平面
に対して垂直に配置した場合に、前記先端のみにおいて
前記仮想平面に最も近接する探針と、前記探針の先端に
ある間隔をおいて対向する平坦な試料保持面を有する試
料保持台と、前記探針の1つの錐面が前記試料保持面に
垂直になるように前記探針を保持する探針保持手段と、
前記探針の前記1つの錐面に、前記試料保持面に平行な
光軸を有するレーザ光を照射するためのレーザ光学系と
を有するスピン偏極走査型トンネル顕微鏡が提供され
る。
【0014】探針に入射したレーザ光の反射光の光軸が
試料保持面に平行になる。このため、反射光が試料保持
面に載置した評価対象物に入射しなくなり、反射光の入
射による測定への影響を回避することができる。
【0015】本発明の他の観点によると、レーザ光の照
射によってスピン偏極した電子が励起される半導体材料
により形成され、多角錘の錐面の頂点を先端とし、該先
端をある間隔をおいてある仮想平面に対向させ、該先端
を画定する複数の錐面のうち1つの錐面を、該仮想平面
に対して垂直に配置した場合に、前記先端のみにおいて
前記仮想平面に最も近接する探針を、平坦な被測定表面
を有する試料の該被測定表面に対向させ、該探針の先端
を画定する錐面のうち1つの錐面が該被測定表面に垂直
になるように配置する工程と、前記1つの錐面に、前記
被測定表面に平行な光軸を有するレーザ光を照射する工
程と、前記探針と前記試料との間に直流電圧を印加し、
該探針と試料間に流れるトンネル電流を検出する工程と
を有する磁性表面の磁化情報評価方法が提供される。
【0016】探針に入射したレーザ光の反射光の光軸が
被測定表面に平行であるため、反射光が被測定表面に入
射しない。このため、反射光による測定への影響を回避
することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】図1(A)及び(B)は、本発明
の実施例によるスピン偏極走査型トンネル顕微鏡用探針
の斜視図を示す。共にGaAs単結晶により形成されて
いる。
【0018】図1(A)に示す探針は、(100)面、
(011)面、及び(1−10)面を3つの錐面とする
三角錐の頂点を先端とする。(100)面と(011)
面とは直交し、(011)面と(1−10)面とは60
°で交わり、(1−10)面と(100)面とは45°
で交わる。
【0019】この探針は、例えば(100)面または
(011)面が表出したGaAs基板を劈開して作製す
ることができる。まず、GaAs基板を〔110〕方向
に劈開する。劈開した方向に平行にガラス板を置いてケ
ガキながらさらに劈開し、(1−10)面で劈開された
GaAs片を探針とする。
【0020】図1(B)に示す探針は、(001)面、
(1−10)面、及び(0−11)面を3つの錐面とす
る三角錐の頂点を先端とする。この探針は、(001)
面または(1−10)面が表出したGaAs基板を劈開
することにより作製できる。図1(B)に示す探針の形
状は、図1(A)に示す探針と同様であり、図1(B)
の探針の(001)面、(1−10)面、及び(0−1
1)面が、それぞれ図1(A)の探針の(100)面、
(011)面、及び(1−10)面に対応する。
【0021】次に、図2を参照して、図1(A)に示す
探針を用いて磁性材料の表面の磁化情報を検出する方法
を説明する。なお、図1(B)に示す探針を用いる場合
も同様である。
【0022】平坦な表面を有する磁性材料1の磁性表面
に、数オングストローム程度の間隔をおいて探針2の先
端を対向させる。このとき、(100)面及び(01
1)面が磁性材料1の磁性表面に垂直になるように探針
2を配置する。例えば磁性表面に垂直な光軸を有するレ
ーザ光3を、(100)面に入射させる。レーザ光3
は、GaAsのバンドギャップに相当する波長を有する
円偏向レーザ光である。
【0023】レーザ光3の一部はGaAsの探針に吸収
され、スピン偏極した電子を励起させる。この電子の偏
極方向は、レーザ光3の光軸に平行であり、その向きは
レーザ光3の旋回方向により決まる。磁性材料1には、
探針2に対して正電圧が印加されており、探針2の先端
と磁性材料1との間にトンネル電流が流れる。
【0024】トンネル電流の大きさは、探針2内のスピ
ン偏極した電子の偏極の向きと磁性材料1の磁化の向き
との相対的な関係により決まる。このため、トンネル電
流の大きさを測定することにより、磁性材料1の磁化の
向きを評価することができる。また、磁性表面内に関し
て探針2を走査することにより、磁性表面の磁区の分布
の様子を評価することができる。
【0025】レーザ光3の一部は、探針2の(100)
面により反射する。(100)面が磁性表面に対して垂
直に配置されているため、反射光の光軸も磁性表面に対
して平行になり、反射光が磁性材料1に入射しない。こ
のため、反射光による悪影響を排除し、安定した測定が
可能になる。
【0026】なお、レーザ光の入射する面が磁性表面に
対して垂直とされていることが好ましいが、反射光が実
質的に磁性表面に入射しない程度の傾きであれば、レー
ザ光の入射する面が磁性表面の法線に対して微小に傾い
ていてもよい。ここで、「実質的に磁性表面に入射しな
い」場合とは、反射光が磁性材料の外周よりも外側を通
過する場合、及び反射光が磁性材料に入射するが、その
入射点が観測点から離れているため観測に影響を与えな
いような場合を意味する。
【0027】上記実施例では、GaAsを用いた探針に
ついて説明したが、GaAs以外に、レーザ光の照射に
よってスピン偏極した電子が励起される半導体材料を用
いてもよい。この場合、多角錘の錐面の頂点を先端と
し、この先端をある間隔をおいてある仮想平面に対向さ
せ、先端を画定する複数の錐面のうち1つの錐面を、仮
想平面に対して垂直に配置した場合に、先端のみにおい
て前記仮想平面に最も近接するような形状とする。
【0028】図3は、スピン偏極走査型トンネル顕微鏡
の概略図を示す。真空チャンバ10の中に粗動ステージ
11が配置され、その上に圧電素子12を介して微動ス
テージ13が取り付けられている。粗動ステージ11
は、粗動ステージ制御装置53により制御され、圧電素
子12は圧電制御装置52により制御される。微動ステ
ージ14の上に、評価対称の磁性材料14が載置され
る。磁性材料14の上に、図2の場合と同様に探針16
が配置されている。探針16は探針ホルダ15により所
定の位置に保持される。
【0029】粗動ステージ11により、探針16に対す
る磁性材料14の相対位置の粗い位置決めが行われ、圧
電素子12により、高精度の位置決めが行われる。ま
た、圧電素子12により、磁性材料14をその面内方向
に移動させることにより、2次元の走査が行われる。
【0030】磁性材料14に、バイアス用電源51から
直流電圧が印加される。探針16と磁性材料14間に流
れるトンネル電流がプリアンプ50により増幅され、増
幅された電気信号が制御装置54に入力される。バイア
ス用電源51、圧電制御装置52、及び粗動ステージ制
御装置53は、制御装置54により制御される。
【0031】レーザ発振器30から出力されたレーザ光
が、ポッケルスセル31、λ/4板32を通って真空チ
ャンバ10内に導入され、探針16に入射する。ポッケ
ルスセル31は、レーザ発振器30から出力されたレー
ザ光の偏光軸を旋回させる。偏光軸の旋回角は、ポッケ
ルスセル用電源33からポッケルスセル31に与えられ
る電圧により変化する。
【0032】λ/4板32は、直線偏光されたレーザ光
を円偏光に変換する。円偏光の旋回の向き(右回りまた
は左回り)は、ポッケルスセル31による偏光軸の旋回
角により制御される。すなわち、ポッケルスセル31に
与える電圧を調節することにより、右旋回円偏光または
左旋回円偏光を発生させることができる。
【0033】図4は、図3に示すスピン偏極走査型トン
ネル顕微鏡を用いて(111)面の表出したシリコン基
板表面の観察結果をスケッチした図である。シリコン基
板に印加するバイアス電圧を1.0Vとし、トンネル電
流は1.0nAであった。なお、探針へのレーザ光の入
射は行わなかった。
【0034】シリコン基板の(111)面の7×7構造
が明瞭に観察されていることがわかる。探針にレーザ光
を入射し、スピン偏極された電子を励起させて観察すれ
ば、磁性材料の磁区の様子を評価することができるであ
ろう。
【0035】以上実施例に沿って本発明を説明したが、
本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種
々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に
自明であろう。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
スピン偏極走査型トンネル顕微鏡の探針に入射するレー
ザ光が反射して、評価対象の試料に入射することを防止
できる。このため、外乱を抑制し、安定した観察を行う
ことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるスピン偏極走査型トンネ
ル顕微鏡用探針の斜視図である。
【図2】探針、磁性材料、レーザ光の相対位置関係を示
すためのこれらの斜視図である。
【図3】スピン偏極走査型トンネル顕微鏡の概略図であ
る。
【図4】スピン偏極走査型トンネル顕微鏡を用いたシリ
コン表面の観察結果をスケッチした図である。
【符号の説明】
1 磁性材料 2 探針 3 レーザ光 10 真空チャンバ 11 粗動ステージ 12 圧電素子 13 微動ステージ 14 磁性材料 15 探針ホルダ 16 探針 30 レーザ発振器 31 ポッケルスセル 32 λ/4板 33 ポッケルスセル用電源 50 プリアンプ 51 バイアス用電源 52 圧電制御装置 53 粗動ステージ制御装置 54 制御装置

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザ光の照射によってスピン偏極した
    電子が励起される半導体材料により形成され、多角錘の
    錐面の頂点を先端とし、該先端をある間隔をおいてある
    仮想平面に対向させ、該先端を画定する複数の錐面のう
    ち1つの錐面を、該仮想平面に対して垂直に配置した場
    合に、前記先端のみにおいて前記仮想平面に最も近接す
    るスピン偏極走査型トンネル顕微鏡用の探針。
  2. 【請求項2】 前記探針がGaAs単結晶により形成さ
    れ、前記頂点を画定する錐面が、(100)面、(01
    1)面、及び(1−10)面の3つの結晶面、または
    (001)面、(1−10)面、及び(0−11)面の
    3つの結晶面である請求項1に記載のスピン偏極走査型
    トンネル顕微鏡用の探針。
  3. 【請求項3】 レーザ光の照射によってスピン偏極した
    電子が励起される半導体材料により形成され、多角錘の
    錐面の頂点を先端とし、該先端をある間隔をおいてある
    仮想平面に対向させ、該先端を画定する複数の錐面のう
    ち1つの錐面を、該仮想平面に対して垂直に配置した場
    合に、前記先端のみにおいて前記仮想平面に最も近接す
    る探針と、 前記探針の先端にある間隔をおいて対向する平坦な試料
    保持面を有する試料保持台と、 前記探針の1つの錐面が前記試料保持面に垂直になるよ
    うに前記探針を保持する探針保持手段と、 前記探針の前記1つの錐面に、前記試料保持面に平行な
    光軸を有するレーザ光を照射するためのレーザ光学系と
    を有するスピン偏極走査型トンネル顕微鏡。
  4. 【請求項4】 レーザ光の照射によってスピン偏極した
    電子が励起される半導体材料により形成され、多角錘の
    錐面の頂点を先端とし、該先端をある間隔をおいてある
    仮想平面に対向させ、該先端を画定する複数の錐面のう
    ち1つの錐面を、該仮想平面に対して垂直に配置した場
    合に、前記先端のみにおいて前記仮想平面に最も近接す
    る探針を、平坦な被測定表面を有する試料の該被測定表
    面に対向させ、該探針の先端を画定する錐面のうち1つ
    の錐面が該被測定表面に垂直になるように配置する工程
    と、 前記1つの錐面に、前記被測定表面に平行な光軸を有す
    るレーザ光を照射する工程と、 前記探針と前記試料との間に直流電圧を印加し、該探針
    と試料間に流れるトンネル電流を検出する工程とを有す
    る磁性表面の磁化情報評価方法。
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