JP2002361815A - 離型紙及びそれを用いて製造された合成皮革 - Google Patents

離型紙及びそれを用いて製造された合成皮革

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 合成皮革の表面に高度のマット調を均一に形
成でき、且つ剥離性にも優れた離型紙と、それを用いて
製造された均一で高度のマット調の表面を備えた合成皮
革を生産性よく提供する。 【解決手段】 離型紙10を、基材紙1 の一方の面に離型
性平滑化層2を設け、その上に離型性樹脂に無機及び/
又は有機の微粒子を均一に分散させた樹脂組成物の塗布
液をコーティングする方法で表面の算術平均粗さ(Ra
)が0.5〜15μmの微細な凹凸を有する離型層3
を形成して構成する。また、この離型紙10を用いて公知
のペーストコーティング法又は乾式法により合成皮革
(PVCレザー、PUレザーなど)を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、離型紙及びそれを
用いて製造された合成皮革に関し、更に詳しくは、合成
皮革を製造するために用いる離型紙であって、離型紙の
離型層表面に均一で微細な凹凸が設けられ、合成皮革の
表面に、均一なマット調の表面を形成できる離型紙と、
それを用いて製造された均一で優れたマット調の表面を
備えた合成皮革に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から製造されている合成皮革には、
ポリウレタンレザー(以下、PUレザー)、セミ合皮、
塩化ビニルレザー(以下、PVCレザー)などがある。
PUレザーの製造方法としては、例えば、離型紙上にペ
ースト状の表皮層用ポリウレタン樹脂を塗布し、乾燥、
固化させた後、例えば、2液反応型ポリウレタン系接着
剤を用いて基布と貼り合わせて、50〜70℃の熟成室
内で2〜3日反応させた後に、離型紙を剥がしてPUレ
ザーを製造する方法がある。
【0003】また、セミ合皮の製造方法としては、離型
紙上にペースト状の表皮層用ポリウレタン樹脂を塗布
し、乾燥、固化させた後、ポリ塩化ビニル発泡層を形成
して基布と貼り合わせ、その後、離型紙を剥がしてセミ
合皮を製造する方法がある。そして、PVCレザーの製
造方法としては、離型紙上にポリ塩化ビニルゾルを塗布
し、加熱、ゲル化させた後、ポリ塩化ビニル発泡層を形
成して基布と貼り合わせ、その後、離型紙を剥がしてP
VCレザーを製造する方法がある。
【0004】このような合成皮革の製造方法で使用され
る離型紙としては、例えば、PUレザーの製造用には、
基材紙に離型層としてポリプロピレン(PP)を厚さ2
0〜50μm程度に積層して形成した離型紙(PPタイ
プ)が使用されている。また、セミ合皮、またはPVC
レザーの製造用には、基材紙に離型層としてメチルペン
テン系樹脂を厚さ20〜50μm程度に積層して形成し
た離型紙(メチルペンテン系樹脂タイプ)、または基材
紙に離型層としてアクリル系樹脂を厚さ20〜120μ
m程度に積層して形成した離型紙(アクリル系樹脂タイ
プ)が使用されている。更に、基材紙に離型層としてシ
リコーン樹脂を積層した離型紙(シリコーン樹脂タイ
プ)も使用されている。
【0005】このような離型紙を用いて製造される合成
皮革は、その表面の外観、触感、意匠性など付加価値を
高めるために、種々の凹凸模様などの型付け加工が行わ
れており、通常は、離型紙の離型層面に合成皮革の凹凸
とは雄雌逆の型付けを施していおて、その離型紙を用い
て合成皮革を製造することにより、合成皮革の表面に目
的とする凹凸模様を賦型する方法が採られている。この
ような型付け加工の一つとしてマット調の型付け加工が
あり、例えば、表面にマット調の微細な凹凸を設けたエ
ンボスロールを作製し、そのエンボスロールで離型紙の
離型層にマット調の凹凸加工を施し、その離型紙を用い
て合成皮革の表面にマット調の微細な凹凸を賦型する方
法が採られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この方法の場
合、エンボスロールの作製に手間と時間がかかり、ま
た、費用も高く、特に、マット調のレベルに関しても、
一般的なマット調では問題はないが、高度のマット調を
要望される場合、微細で且つ深い凹凸を広い面積に均一
に形成する必要があり、このようなエンボスロールを作
製することは、技術的にも困難性が高かった。この問題
を解決するため、エンボス方式に代えてコーティング方
式で離型紙の離型層面にマット調の微細な凹凸を形成す
る方法を研究している。この方法によれば、例えば離型
層の樹脂に適宜の形状と粒子径の微細な粒子を分散させ
て塗布液を作製し、これを基材紙の表面に塗布し、乾燥
させることにより、離型層の表面に微細な凹凸を形成す
ることができる。
【0007】しかしながら、この方法でも、微細な凹凸
の形成は可能であるが、均一性に欠ける問題があった。
これは基材紙の表面の平滑性不足に起因するものと考え
られるが、実際にこの離型紙を用いて合成皮革を作製す
ると、最後に離型紙を剥離する際、剥離抵抗力が大きく
工業生産上問題があり、また、微細な凹凸の凹部に合成
皮革の表皮層の樹脂が引きちぎられて残存する問題もあ
った。このため基材紙として、平滑性の高いキャストコ
ート紙を使用したが、それでも完全には解決することが
できなかった。
【0008】本発明はこのような問題点を解決するため
になされたものであり、その目的とするところは、合成
皮革の表面に優れたマット調の表面を形成することので
きる離型紙であって、離型紙の離型層表面に均一で微細
な凹凸が形成され、且つ、合成皮革の製造の際、合成皮
革の表皮層の樹脂との剥離性がよく、微細な凹凸部に表
皮層の樹脂が残存することもなく、優れたマット調の表
面を有する合成皮革を繰り返し製造することのできる離
型紙を安価に且つ生産性よく提供し、また、その離型紙
を用いて合成皮革を製造することにより、均一で優れた
マット調の表面を有する合成皮革を生産性よく提供する
ことにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、以下の本
発明により解決することができる。即ち、請求項1に記
載した発明は、少なくとも基材紙と該基材紙の一方の面
に設けられた離型層とで形成される離型紙において、該
基材紙と離型層との間に離型性平滑化層が設けられると
共に、該離型層が無機及び/又は有機の微粒子を含有す
る離型性樹脂の塗膜層で形成され、離型層表面の算術平
均粗さ(Ra)が0.5〜15μmとなるように形成さ
れていることを特徴とする離型紙からなる。
【0010】合成皮革の表面を良好なマット調に形成す
るためには、離型層表面の算術平均粗さ(Ra )が0.
5〜15μmであることが好ましい。算術平均粗さ(R
a )が、0.5μm未満の場合は粗さが不足し、良好な
マット調の表面が得られず、また、15μmを超える場
合は粗さが大きすぎて外観上もマット感から外れてくる
ため好ましくない。
【0011】また、本発明において、離型層表面の算術
平均粗さ(Ra)は、JIS B0601−1994「表面
粗さ−定義及び表示」に基づいて測定したものである。 (測定条件) 触針の先端半径:5μm 荷重:4mN カットオフ値:表1に記載されている標準値を選択す
る。 評価長さ:表1に記載されている標準値を選択する。 測定機器:表面粗さ測定装置Suftest−201〔ミツト
ヨ株式会社製〕
【0012】
【表1】
【0013】前記のような構成を採ることにより、以下
のような作用効果を得ることができる。 離型層の表面にマット調の形成に必要な微細な凹凸、
即ち、算術平均粗さ(Ra )が0.5〜15μmの凹凸
面を塗布液のコーティング方式で形成できるので、高価
なエンボスロールを作製する必要がなく製造コストを低
減できると共に、マットタイプの離型紙を容易に且つ生
産性よく製造することができる。 基材紙と離型層との間に離型性平滑化層が設けられて
いるので、基材紙の平滑性が不十分な場合でもこれを補
って平滑性が向上され、それにより離型層の表面に、無
機及び/又は有機の微粒子による算術平均粗さ(Ra )
が0.5〜15μmの凹凸面を均一に形成することがで
きる。従って、合成皮革の表面に均一で優れたマット調
の表面を賦型できると共に、合成皮革製造後、離型紙を
剥離する際の剥離抵抗力が大きくなることもなく、容易
に離型紙を合成皮革から剥がすことができる。 また、離型性平滑化層の離型性は、必ずしも必要では
ないが、離型性をもたせることにより、その上に形成さ
れる離型層にスポット的な抜けなどを生じた場合でも離
型性が損なわれることがなく、合成皮革の製造後、離型
紙を剥離する際の剥離抵抗力を一層確実に小さく維持す
ることができる。従って、離型層の厚さをマット調の凹
凸形成に必要な最小限の厚さに薄くすることができるの
で、コーティングの際の乾燥性が低下することもなく生
産性を向上させることができる。
【0014】請求項2に記載した発明は、前記離型性平
滑化層が、前記離型層の樹脂組成物から無機及び/又は
有機の微粒子を除き、レベリング剤を含有させた樹脂組
成物で形成されていることを特徴とする請求項1記載の
離型紙からなる。
【0015】このような構成を採ることにより、前記請
求項1に記載した発明の作用効果に加えて、離型性平滑
化層が、離型層と同じ樹脂で且つレベリング剤を加えた
樹脂組成物で形成されるので、基材紙の平滑性を向上で
きると同時に、合成皮革の表皮層の樹脂に対する離型性
も有し、更に、その上に形成される離型層との接着性も
よくすることができる。従って、離型層の表面に、マッ
ト調の表面を賦型するための微細な凹凸を均一に形成で
きると同時に、万一離型層にスポット的な抜けなどを生
じても離型性が損なわれることがなく、合成皮革の製造
後、離型紙の凹凸部に表皮層の樹脂が残留することもな
く、容易に離型紙を剥離することができる。
【0016】請求項3に記載した発明は、前記微粒子
が、シリカ、炭酸カルシウム、タルクのうちのいずれか
一種の微粒子、または二種以上を混合した微粒子である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の離型紙であ
る。
【0017】このような構成を採ることにより、前記請
求項1または2に記載した発明の作用効果に加えて、シ
リカ、炭酸カルシウム、タルクの微粒子は、いずれも耐
熱性に優れると共に、マット調の凹凸面の形成に必要な
粒子形状と粒子径を得やすいので、合成皮革の表面に優
れたマット調の表面を形成できる離型紙を容易に製造す
ることができ、また、その離型紙は、合成皮革製造時の
加熱条件で離型層表面に形成された凹凸形状が劣化する
こともなく、繰り返し良好に使用することができる。
【0018】請求項4に記載した発明は、前記請求項1
乃至3のいずれかに記載の離型紙を用いて製造された合
成皮革である。
【0019】このような構成を採ることにより、前記請
求項1乃至3のいずれかに記載した発明の離型紙の性能
を有効に利用して合成皮革の表皮層を形成できるので、
優れたマット調の表面を備えた合成皮革を生産性よく提
供することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図面を参照して説明する。図1は、本発明の離型紙
の一実施例の構成を示す模式断面図である。図1に示し
た離型紙10は、基材紙1の一方の面(図において上側
の面)に離型性平滑化層2を設け、更にその上に、離型
性樹脂に無機及び/又は有機の微粒子を分散させた塗布
液の塗膜層で形成され、表面の算術平均粗さ(Ra )が
0.5〜15μmとなるように形成された離型層3を設
けて構成したものである。
【0021】このような構成を採ることにより、離型性
平滑化層2により基材紙1の平滑性を向上させることが
できるので、その上に設ける離型層3の表面に、算術平
均粗さ(Ra )が0.5〜1.5μmとなる微細な凹凸
を均一に、且つ、容易に形成することができる。この算
術平均粗さ(Ra )が0.5〜1.5μmの微細な凹凸
面は、合成皮革の表皮層にマット調の凹凸を賦型するの
に丁度適したものである。従って、この離型紙10を用
いて合成皮革を製造することにより、均一で優れたマッ
ト調の表面を備えた合成皮革を容易に製造することがで
きる。
【0022】前記基材紙1には、クラフト紙、上質紙、
各種コート紙、キャストコート紙などの紙のほか、紙以
外にも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナ
フタレートなどのポリエステル、各種ナイロンなどのポ
リアミド、ポリプロピレンなどのプラスチックフィル
ム、合成紙、金属箔、織布、不織布などを使用すること
ができ、これらは単独、または適宜積層して使用するこ
とができる。只、合成皮革の製造適性の点では紙を使用
することが好ましく、地合いおよび表面平滑性に優れた
紙が更に好ましい。
【0023】従って、基材紙1に、クラフト紙、上質紙
など表面が比較的ラフな材料を使用する場合は、図には
示していないが、離型性平滑化層2の形成面に、更に、
目止め層を兼ねて平滑性向上層を追加して設けることが
好ましい。このような平滑性向上層は、特に限定はされ
ず、通常、紙のコート層に用いられているクレーコート
層でもよく、また、適宜に選択した樹脂の液、または樹
脂に無機充填剤などを分散させた液を塗布、乾燥して形
成することができる。
【0024】また、基材紙1に前記プラスチックフィル
ムや金属箔を用いる場合は、通常、その表面が平滑であ
るため、前記のような平滑性向上層は必要としないが、
離型性平滑化層2の接着性が不足することがあり、その
場合は、コロナ放電処理、オゾン処理などの易接着性処
理やプライマーコートなどを施すことができる。基材紙
1の厚さは、特に限定はされず、使用する材料とその強
度などを考慮して適宜の厚さに設定することができる。
【0025】離型性平滑化層2は、先にも説明したよう
に、基本的には基材紙1の平滑性を更に向上させるため
に設けるものであり、例えば、基材紙1に紙の中では最
も平滑性に優れるキャストコート紙を使用した場合で
も、尚平滑性が十分ではなく、その上に直接離型層3を
形成すると、離型層3に不均一を生じたために設けたも
のである。このような離型性平滑化層2は、その上に離
型層3を十分な厚さで形成した場合には離型性は特に必
要ではなく、平滑性の向上が可能な樹脂であれば適宜選
択して使用することができる。只、離型層3は、厚さを
厚くすると乾燥性が悪くなるため、表面の微細な凹凸の
形成に支障がない限り、薄く形成することが好ましい。
しかし、離型層3を薄くするとスポット的な抜けなどの
欠陥を生じることがあるため、これをカバーするため
に、離型性平滑化層2には、平滑化性能と共に離型性能
も兼ね備えさせることが好ましい。
【0026】従って、離型性平滑化層2には、特に限定
する訳ではないが、次に説明する離型層3の樹脂組成物
から、無機及び/又は有機の微粒子を除き、レベリング
剤を追加して含有させた樹脂組成物を好適に使用するこ
とができる。このような離型性平滑化層2に用いる樹脂
としては、アルキド系樹脂、メチロールメラミン樹脂、
メトキシメチロールメラミン樹脂などのメラミン系樹
脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂などの熱硬化性
或いは電離放射線硬化性(通常、紫外線または電子線を
照射して硬化させる)樹脂が主に用いられるが、ポリメ
チルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポ
リオレフィン系樹脂なども使用することができ、合成皮
革の表皮層の樹脂との剥離性を考慮して、単独または適
宜混合して使用することができる。
【0027】このような樹脂に含有させるレベリング剤
は、レベリング作用と共に離型性平滑化層2の上に形成
する離型層3の接着性(以下、後接着性という)を阻害
しないことが必要である。レベリング作用は、通常、塗
布面に生じる凹凸を経時的に平坦化させる作用である
が、塗膜表面のゆず肌、しわ、ピンホール、泡、凹み、
ひび割れ、クレータリングなどを防止して表面を平坦に
する作用も含まれる。レベリング剤としては、シリコー
ンオイル、その他シリコーン変性樹脂などシリコーン系
樹脂のほか、有機高分子型レベリング剤と呼ばれる高分
子物質を使用することができる。例えば、シリコーンオ
イルを塗布液に添加すると、シリコーンオイルが塗膜表
面に集まり、一種のバリヤー層を形成し、これにより溶
剤の蒸発が均一になると共に、表面張力が低下すること
により好ましい効果が得られる。只、シリコーンオイル
のみでは後接着性が低下するので、有機高分子型レベリ
ング剤とシリコーンオイルを併用してシリコーンオイル
の添加量を少なくすることが好ましい。
【0028】有機高分子型レベリング剤としては、樹脂
溶液に溶解し、その表面張力を下げ、且つ、後接着性を
低下させないものから選定することが好ましく、例え
ば、ポリビニルブチラール、低分子量のセルロースなど
を好ましく使用できる。このような高分子物質の混合に
より、塗布液の粘度が上昇して動的粘性による泡などの
上昇が抑制され、表面を平坦にすることができる。上記
の他に、後接着性は通常の高分子物質よりも劣るが、内
部硬化型シリコーン樹脂、フッ素系共重合樹脂なども使
用することができる。
【0029】内部硬化型シリコーン樹脂としては、シリ
コーンアクリレートが挙げられ、具体的には、アクリル
シランおよびメタクリルシラン、アクリルシリコーンお
よびメタクリルシリコーン、フェニルシリコーンアクリ
レートおよびメタフェニルシリコーンアクリレートが挙
げられる。更に具体的には、アクリルシランでは、アク
リロキシプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロキ
シプロピルトリメトキシシランが挙げられ、メタクリル
シランでは、メタアクリロキシプロピルメチルジメトキ
シシラン、メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラ
ンなどが挙げられる。
【0030】また、有機高分子型レベリング剤として
は、いわゆる界面活性剤などを用いることもできるが、
これは表面張力を下げる作用を有しており、使用する溶
剤が限定され、例えばアルコール系、またはエマルジョ
ンなどの水系でのコーティングが必要となる。他の有機
溶剤系を用いる場合は、有機高分子型レベリング剤とし
ては、前記高分子物質、シリコーン変性共重合樹脂、フ
ッ素系共重合樹脂などを用いればよく、例えば、「シャ
リーヌシリーズ」(商品名、日信化学工業株式会社製)
などを使用できる。また、低分子量のセルロースなど、
有機共重合体である「ターレン」、「フローレン」、
「ポリフロー」(いずれも商品名、共栄油脂化学工業株
式会社製)なども好ましく使用できる。このような有機
高分子型レベリング剤は、二種以上を併用してもよく、
例えば、低分子量のセルロースに加えて、内部硬化型シ
リコーンを添加することによっても好結果が得られてい
る。有機高分子型レベリング剤は、離型性平滑化層の樹
脂100重量部に対して、0.01〜3重量部程度の添
加量が好ましい。添加量が0.01重量部未満の場合は
レベリング効果が得られず、3重量部を超えると後接着
性が低下するため好ましくない。
【0031】次に、離型層3は、離型性樹脂に無機及び
/又は有機の微粒子を添加して塗布液を作製し、これを
前記離型性平滑化層2の上にコーティングして形成す
る。離型層3に用いる離型性樹脂としては、前記離型性
平滑化層2で挙げたアルキド系樹脂、メチロールメラミ
ン樹脂、メトキシメチロールメラミン樹脂などのメラミ
ン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂などの熱
硬化性或いは電離放射線硬化性樹脂が主に用いられる
が、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレ
ンなどのポリオレフィン系樹脂なども使用することがで
きる。これらの樹脂は、合成皮革の表皮層の樹脂との離
型性を考慮して、適宜一種を選択し、または二種以上を
混合して使用することができる。
【0032】上記離型性樹脂に添加する無機及び/又は
有機の微粒子としては、無機の微粒子では、シリカ、炭
酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、酸化チタ
ン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化
アルミニウムなどの微粒子が挙げられ、有機の微粒子で
は、メラミン樹脂、ナイロン樹脂、ポリスチレン、ポリ
プロピレン、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの微粒子が
挙げられる。これらの微粒子は、いずれか一種を選択
し、または二種以上を混合して使用することができる。
このような微粒子は、離型紙が合成皮革の製造の際、高
温度下で使用されるため、耐熱性を有することが好まし
く、この点から無機の微粒子が好ましく、中でもシリ
カ、炭酸カルシウム、タルクが特に好ましい。
【0033】このような微粒子の粒子径は、特に限定は
されないが、離型層表面の算術平均粗さ(Ra )を0.
5〜15μmに形成するためには、平均粒径で0.5〜
5μm程度であることが好ましい。このような無機及び
/又は有機の微粒子の添加量は、離型層の樹脂組成物の
固形分の10〜85重量%の範囲が好ましい。無機及び
/又は有機の微粒子の含有量が、10重量%未満の場合
は、離型層表面の算術平均粗さ(Ra )を0.5〜15
μmとすることができず、また、85重量%を超える場
合は、塗布液の塗布適性が損なわれ、均一な塗膜の形成
が難しくなると共に、塗膜強度も低下するため好ましく
ない。
【0034】離型層3は、前記のような離型性樹脂と無
機及び/又は有機の微粒子を溶剤に溶解または分散さ
せ、更に必要に応じて、分散剤、粘度調節剤、着色剤、
帯電防止剤などの添加剤を適宜加えて溶解または十分に
分散させて塗布液を作製し、ロールコート、リバースロ
ールコート、マイクロバーコート、バーコート、ナイフ
コート、グラビアコートなど公知のコーティング手段を
用いて、前記離型性平滑化層2の上に塗布し、必要な乾
燥、硬化手段(加熱、紫外線照射、電子線照射など)を
用いて乾燥、硬化させることにより、表面の算術平均粗
さ(Ra )が0.5〜15μmとなるように形成するこ
とができる。
【0035】尚、離型層3の厚さは、表面の算術平均粗
さ(Ra )を0.5〜15μmに形成できれば薄くてよ
く、乾燥時の塗布量で1.0〜20g/m2 の範囲とす
ることが好ましい。塗布量が1g/m2 未満の場合は、
均一な塗膜形成が難しく、均一なマット調の表面を形成
できず、離型性も悪化させることがあるため好ましくな
い。塗布量が20g/m2 を超える場合は、既に十分な
マット調の表面と離型性を得ることができ、その必要性
がなく、むしろ乾燥速度など加工速度の低下やコストア
ップがあるため好ましくない。また、塗布量が比較的多
い場合は、離型層を分割して多層で形成してもよく、多
層で形成する場合、温度条件や各層の厚さを調整するこ
とで幅方向のカールを小さくすることもできる。
【0036】以上のような離型紙を用いて合成皮革を製
造する方法は、公知のペーストコーティング法(PVC
レザー)、または乾式法(PUレザー)を用いて製造す
ることができる。即ち、離型紙の離型層側の面に、合成
皮革の表皮層用の樹脂組成物を塗布し、加熱乾燥して、
表皮層の被膜を形成させた後、その上に接着剤を用いて
基布を貼り合わせ、乾燥、熟成後、離型紙を剥がすこと
により、優れたマット調の表面を有する合成皮革を製造
することができる。
【0037】上記合成皮革の表皮層用の樹脂組成物は、
例えば、PVCレザーの場合は、ポリ塩化ビニルを主成
分とし、可塑剤、発泡剤、安定剤、着色剤などを適宜加
えたPVCペーストが使用され、PUレザーの場合は、
ポリウレタン溶液に必要に応じて着色剤その他添加剤を
加えたものであり、固形分20〜50重量%程度のもの
が使用される。このような表皮層用の樹脂組成物の塗工
には、ナイフコート、ロールコート、リバースロールコ
ート、グラビアコートなど、公知のコーティング手段を
用いることができる。
【0038】
【実施例】以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を更
に具体的に説明する。 〔実施例1〕基材紙として、米坪155g/m2 のキャ
ストコート紙〔王子製紙(株)製〕を使用し、そのキャ
ストコート面に下記の組成の離型性平滑化層用塗布液
を、乾燥時の塗布量が5g/m2 となるようにロールコ
ーターで塗布し、160℃、1分以上の条件で加熱乾燥
して離型性平滑化層を形成した。
【0039】 (離型性平滑化層用塗布液の組成) メラミン樹脂〔メラン28 日立化成(株)製〕 220重量部 アルキド樹脂〔フタルキッド133-60 日立化成(株)製〕 100重量部 酸触媒(パラトルエンスルホン酸) 8.4重量部 レベリング剤〔有機高分子型レベリング剤、 「シャリーヌ」日信化学工業(株)製〕 0.3重量部 溶剤(トルエン/n−ブチルアルコール 重量比1/1) 980重量部
【0040】次いで、前記離型性平滑化層の上に、下記
の組成の離型層用塗布液を乾燥時の塗布量が10g/m
2 となるようにロールコーターで塗布し、180℃、1
分以上の条件で加熱乾燥して離型層を形成し、実施例1
の離型紙を作製した。 (離型層用塗布液の組成) メチロール化メラミン樹脂 50重量部 シリコーン変性アルキド樹脂 50重量部 酸触媒(パラトルエンスルホン酸) 4.2重量部 無機微粒子〔平均粒径2.5μmの未処理シリカ、 サイリシア430 富士シリシア(株)製〕 10重量部 無機微粒子〔平均粒径2.5μmの処理シリカ、 サイシリア436 富士シリシア(株)製〕 10重量部 溶剤(トルエン/n−ブチルアルコール 重量比1/1) 500重量部 上記離型層用塗布液のコーティングは、はじきの発生も
なく均一に塗布することができ、加熱硬化後の離型性平
滑化層と離型層との接着性も良好であった。また、この
ように作製した実施例1の離型紙の離型層表面の算術平
均粗さ(Ra )は1.2μmであった。
【0041】以上のように作製した実施例1の離型紙を
用いて、以下のようにPVCレザーとPUレザーの2種
類の合成皮革を作製した。 (PVCレザーの作製)前記実施例1の離型紙の離型層
の上に、PVC樹脂(分子量1000)を100重量
部、可塑剤DOPを60重量部、発泡剤を5重量部、安
定剤を2.5重量部、着色剤〔セイカセブンNET−5
794ブラック 大日精化工業(株)製〕を15重量部
の割合で混合して作製した合成皮革の表皮層用のPVC
組成物(ペースト)をナイフコート法で乾燥時の塗布量
が150g/m2 となるように塗工し、190〜200
℃、2分の条件で加熱乾燥した後、その上に接着剤を用
いて基布を貼り合わせ、乾燥、熟成後、離型紙を剥がす
ことにより、剥離抵抗力も小さく容易に剥離でき、優れ
たマット調の表面を有するPVCレザーを製造すること
ができた。
【0042】(PUレザーの作製)前記実施例1の離型
紙の離型層の上に、ポリウレタン〔レザミンNE−88
11 大日精化工業(株)製〕を100重量部、着色剤
〔セイカセブンNET−5794ブラック 大日精化工
業(株)製〕を15重量部、トルエンを25重量部、イ
ソプロピルアルコール(IPA)を25重量部の割合で
混合して作製した合成皮革の表皮層用のポリウレタン組
成物(ペースト)をナイフコート法で乾燥時の塗布量が
150g/m2 となるように塗工し、100〜120
℃、2分の条件で加熱乾燥した後、その上に接着剤を用
いて基布を貼り合わせ、乾燥、熟成後、離型紙を剥がす
ことにより、この場合も剥離抵抗力が小さく容易に剥離
でき、優れたマット調の表面を有するPUレザーを製造
することができた。また、前記PVCレザーとPUレザ
ーの製造後の離型紙は、いずれも離型層の微細な凹凸部
に表皮層の樹脂が残存することもなく、きれいに剥離さ
れており、1回目と同様に、繰り返し3回以上それぞれ
の合成皮革を良好に製造することができた。
【0043】〔比較例1〕実施例1の離型紙の製造にお
いて、離型性平滑化層を取り除き、キャストコート紙の
キャストコート面に直接離型層を形成したほかは、総て
実施例1と同様に加工して比較例1の離型紙を作製し
た。また、この離型紙を用いて、実施例1と同様に、P
VCレザーとPUレザーとを作製したが、いずれも離型
紙の離型層の凹凸部に表皮層の樹脂が不均一に残存し、
作製した合成皮革の表面のマット面にムラを生じ、良好
なマット調の合成皮革を製造することができなかった。
【0044】
【発明の効果】以上、詳しく説明したように、本発明に
よれば、合成皮革の表面に優れたマット調の表面を形成
することのできる離型紙であって、離型紙の離型層面
に、コーティング方式で均一で微細な凹凸を形成でき、
且つ、合成皮革の製造の際、合成皮革の表皮層の樹脂と
の剥離性がよく、離型紙の離型層表面の微細な凹凸部に
表皮層の樹脂が残存することもなく、均一で優れたマッ
ト調の表面を有する合成皮革を繰り返し製造することの
できる離型紙を安価に且つ生産性よく提供することがで
き、また、その離型紙を用いて合成皮革を製造すること
により、均一で優れたマット調の表面を有する合成皮革
を安価に且つ生産性よく提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の離型紙の一実施例の構成を示す模式断
面図である。
【符号の説明】
1 基材紙 2 離型性平滑化層 3 離型層 10 離型紙
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F055 AA01 AA03 BA12 FA08 FA15 GA12 4F100 AA00B AA20B AC10B AH00B AK01B AK01C AK32 AK36 AL05C AR00B AR00C BA03 BA07 BA10A BA10B CC00B DE01B DG10A GB90 JK15C JL14B JL14C YY00B

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも基材紙と該基材紙の一方の面に
    設けられた離型層とで形成される離型紙において、該基
    材紙と離型層との間に離型性平滑化層が設けられると共
    に、該離型層が無機及び/又は有機の微粒子を含有する
    離型性樹脂の塗膜層で形成され、離型層表面の算術平均
    粗さ(Ra)が0.5〜15μmとなるように形成され
    ていることを特徴とする離型紙。
  2. 【請求項2】前記離型性平滑化層が、前記離型層の樹脂
    組成物から無機及び/又は有機の微粒子を除き、レベリ
    ング剤を含有させた樹脂組成物で形成されていることを
    特徴とする請求項1記載の離型紙。
  3. 【請求項3】前記微粒子が、シリカ、炭酸カルシウム、
    タルクのうちのいずれか一種の微粒子、または二種以上
    を混合した微粒子であることを特徴とする請求項1また
    は2に記載の離型紙。
  4. 【請求項4】前記請求項1乃至3のいずれかに記載の離
    型紙を用いて製造された合成皮革。
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