JP2002316231A - 鍛造方法 - Google Patents

鍛造方法

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 従来の焼入焼戻法を採用することなく、金属
組織を微細なフェライト+パーライト組織にして、強度
は焼入焼戻法を越える降伏点(YP値)を得るととも
に、引張強さ(TS)は焼入焼戻法よりも小さくして、
かつ、より機械加工における加工性を向上させることが
できるようにした鍛造方法を提供すること。 【解決手段】 非調質型機械構造用炭素鋼にバナジュウ
ム、ニオブ、タンタルなどの5属金属の少なくとも1種
を加えて製造した鍛造素材を、熱間鍛造に適した温度
(1150〜1250℃)に加熱し、所定の形状に鍛造
後、冷却し、その後、炉内でテンパー温度域の温度に所
定の設定時間保持し、さらに、自然冷却により常温まで
冷却するようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鍛造方法に関し、
特に、衝撃荷重がかかる製品を、焼入焼戻法を採用する
ことなく、金属組織を微細なフェライト+パーライト組
織にして、強度は焼入焼戻法を越える降伏点(YP値)
を得るとともに、引張強さ(TS)は焼入焼戻法よりも
小さくして、より機械加工における加工性を向上させる
ことができるようにした鍛造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、衝撃荷重がかかる製品、例えば、
コネクティングロッド、ステアリングナックル、クラン
クシャフト等は、鍛造にて製造するようにしていた。そ
して、特に瞬間的に大きな衝撃荷重がかかるコネクティ
ングロッドは、製品の強度を増すため、焼入焼戻法を併
用するようにしていた。ところが、この焼入焼戻法は、
製造コストがかかるため、近年のように製造コストの低
減が叫ばれている、例えば、自動車部品のような安価に
多量に生産する製品には適さず、このため、焼入焼戻法
に代わって製造コストを低廉化することができる非調質
法が採用されてきている。この非調質法は、製品の鍛造
後、1200℃前後の高温の製品を、直ちに500℃程
度まで強制的に空冷する方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、製品の鍛造
後、1200℃前後の高温の製品を、直ちに500℃程
度まで強制的に空冷する非調質法では、引張強さ(T
S)は焼入焼戻法とほぼ同程度のものとなるものの、降
伏点(YP値)が低下し、その値は、降伏点を引張強さ
で割れば、すなわち、降伏比(YR)で表現すれば、約
0.6程度である。このため、焼入焼戻法に比べ降伏点
(YP値)が低下する分だけ、鍛造製品の軽量化を図る
場合でも限度があり、しかも、引張強さ(TS)は依然
として焼入焼戻法とほぼ同程度と高いため、焼入焼戻法
により製造した製品と同様、機械加工における加工性が
悪いという問題があった。
【0004】本発明は、上記従来の鍛造方法の有する問
題点に鑑み、従来の焼入焼戻法を採用することなく、金
属組織を微細なフェライト+パーライト組織にして、強
度は焼入焼戻法を越える降伏点(YP値)を得るととも
に、引張強さ(TS)は焼入焼戻法よりも小さくして、
かつ、より機械加工における加工性を向上させることが
できるようにした鍛造方法を提供することを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の鍛造方法は、5属金属の少なくとも1種を
加えて製造した鍛造素材を、熱間鍛造に適した温度に加
熱し、所定の形状に鍛造後、冷却し、その後、炉内でテ
ンパー温度域の温度に所定の設定時間保持し、さらに、
自然冷却により常温まで冷却するようにしたことを特徴
とする。ここで、「テンパー温度域の温度」は、500
〜700℃の範囲の温度に、また、「所定の設定時間」
は、30〜60分間に、それぞれ設定することが望まし
い。
【0006】この鍛造方法は、鍛造素材として通常用い
られるパーライト、フェライト等よりなる金属素材に、
バナジウム、ニオブ等の5属金属の少なくとも1種を加
えて製造した鍛造素材を、熱間鍛造に適した温度に加熱
し、所定の形状に鍛造後、冷却し、その後、炉内でテン
パー温度域の温度に所定の設定時間保持し、さらに、自
然冷却により常温まで冷却するようにしているため、鍛
造素材に添加されているバナジウム、ニオブ等の5属金
属が、フェライトに添加元素を主体とする微細な炭窒化
物を析出させることができ、金属組織が微細なフェライ
ト+パーライト組織のため剛性が高く、衝撃荷重に対し
強くなる降伏点(YP値)を高く設定できるので、鍛造
製品の軽量化を図ることができ、しかも、引張強さ(T
S)を低く抑えられ、かつ、金属組織が微細なフェライ
ト+パーライト組織のため、機械加工における加工性を
向上させることができる。
【0007】この場合において、鍛造素材の加熱温度
を、1150〜1250℃の範囲に設定することが望ま
しい。
【0008】これにより、鍛造素材に添加されているバ
ナジウム、ニオブ等の5属金属の固溶が促進されるとと
もに、これが冷却され、析出するときに、鍛造素材の組
織が析出物により歪を受け、多量の微細な炭窒化物とし
て析出するとともに、金属組織が微細となるので、鍛造
素材の強度を増大させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の鍛造方法の実施の
形態を図面に基づいて説明する。
【0010】図1〜図2に、本発明の鍛造方法の工程を
示す。
【0011】一般に、瞬間的に衝撃荷重がかかる自動車
部品等の製品、例えば、コネクティングロッド、ステア
リングナックル、クランクシャフト等は、従来、強度、
低コスト、多量生産に適した方法である鍛造法にて製造
されていた。
【0012】本発明は、この鍛造方法を改良したもの
で、鍛造素材として通常用いられるパーライト、フェラ
イト等よりなる金属素材に、バナジウム、ニオブ、タン
タル、ドブニウム等の5属金属の少なくとも1種を加え
て製造した鍛造素材を、熱間鍛造に適した温度に加熱
し、所定の形状に鍛造後、冷却し、その後、炉内でテン
パー温度域の温度に所定の設定時間保持し、さらに、自
然冷却により常温まで冷却するようにしたものである。
【0013】この場合において、5属金属としては、特
に限定されるものではないが、入手がし易く、かつ、安
価なバナジウム又はニオブを用いることが望ましい。ま
た、その添加量は、鍛造素材にごく微量でよく、例え
ば、0.03〜0.3wt%程度添加するようにする。
【0014】この鍛造素材を用い、熱間鍛造する際、従
来の熱間鍛造に適した加熱温度(この加熱温度は、鍛造
素材の種類によっても異なる。)よりも若干低い温度、
例えば、従来の熱間鍛造に適した加熱温度が1250℃
程度の場合は、1200℃±50℃程度となるように加
熱する。このように、鍛造素材の加熱温度を設定するこ
とにより、鍛造素材に添加されているバナジウム、ニオ
ブ等の5属金属の固溶が促進されるとともに、これが冷
却され、析出するときに、鍛造素材の組織が析出物によ
り歪を受け、多量の微細な炭窒化物として析出するの
で、鍛造素材の強度を増すことができるものとなる。そ
して、この熱間温度に加熱した鍛造素材を、金型を用い
た熱間鍛造にて所定の形状に形成する。この熱間鍛造工
程は、従来の非調質法、焼入焼戻法と同じである。
【0015】鍛造後、金型から離型した鍛造製品は、自
然冷却により、バナジウム、ニオブ等の5属金属が、フ
ェライトに添加元素を主体とする微細な炭窒化物を析出
し易い温度に近い温度まで冷却する。この冷却温度は、
特に限定されるものではないが、600〜800℃程度
とする。この自然冷却は、鍛造装置から排出された鍛造
製品が、次工程の加熱炉へ連続的に搬送されるコンベア
上で、搬送中に自然に冷却させることも、あるいは、コ
ンベア上の鍛造製品に向かってブロアにより空気を吹き
付ける等により、強制的に冷却することもできる。これ
は、鍛造装置より加熱炉までの搬送距離、所要搬送時間
等により適宜選択的に採用することができる。
【0016】このようにして、600〜800℃程度に
冷却された鍛造製品を、加熱炉内に供給する。この加熱
炉内では、鍛造製品が、テンパー温度域の温度、例え
ば、500〜700℃を保持できるようにする。この場
合、加熱炉内に供給された鍛造製品が持つ熱エネルギー
は、加熱炉内の温度よりも少し高めに設定されているた
め、加熱炉内では運転初期以外ほとんど加熱しなくても
設定温度が保持され、省エネルギーで処理することがで
きる。この加熱炉内におけるテンパー温度域の温度を保
持する時間は、鍛造素材に添加されたバナジウム、ニオ
ブ等の5属金属が、フェライトに添加元素を主体とする
微細な炭窒化物として析出するのに要する時間、例え
ば、30〜60分間程度に設定するようにする。なお、
この場合、保温炉等の炉を用いることにより、フェライ
トに添加元素を主体とする微細な炭窒化物として析出す
るのに要する時間の間、所定の温度に保持できるなら
ば、必ずしも加熱炉は使用しなくてもよい。
【0017】このようにして、鍛造製品を、加熱炉内に
て30〜60分間程度、500〜700℃を保持するこ
とにより、鍛造素材に添加されたバナジウム、ニオブ等
の5属金属が、フェライトに添加元素を主体とする微細
な炭窒化物として析出するようにした後、加熱炉より排
出し、自然冷却により常温まで冷却し、製品とする。こ
れにより、焼きならしに近いより微細な金属組織とな
り、剛性が高く、衝撃荷重に対し強くなる降伏点(YP
値)を高く設定できるので、降伏比(YR)を大巾に向
上することができる。これによって、軽量化を図ること
ができ、しかも、引張強さ(TS)を低く抑えられるの
で、より機械加工における加工性が向上した鍛造製品を
得ることができる。
【0018】
【実施例】表1及び表2に、本発明の鍛造方法の一実施
例に係るバナジウム0.26%とニオブ0.026%を
添加した非調質型機械構造用炭素鋼(S35C)と、従
来製品(従来の非調質法並びに従来の焼入焼戻法(機械
構造用炭素鋼で同等炭素量(S40C)(表1(A))
及び同等強度値(S55C)(表1(B))))との差
異を示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】なお、上記焼入焼戻法は、ASME Ha
nd Book(1954)のデータを利用した。
【0022】また、図3に、本発明の実施例と従来製品
(従来の非調質法及び従来の焼入焼戻法)の硬さと降伏
比の関係を示す。
【0023】また、図4に、金属組織の顕微鏡写真を示
す。図4(A)は、本発明の実施例の金属組織を400
倍に拡大した顕微鏡写真、図4(B)は、同10000
0倍に拡大した電子顕微鏡写真、また、図4(C)は、
従来製品(従来の非調質法)の金属組織を400倍に拡
大した顕微鏡写真を、それぞれ示す。これらの顕微鏡写
真より、本発明の実施例の金属組織が、微細な組織であ
ることが判る。また、図4(B)に示す100000倍
に拡大した電子顕微鏡写真からも明らかなように、フェ
ライトに添加元素を主体とする微細な炭窒化物が析出し
ており、これにより、鍛造素材の強度が向上することが
判る。
【0024】
【発明の効果】本発明の鍛造方法によれば、鍛造素材と
して通常用いられるパーライト、フェライト等よりなる
金属素材に、バナジウム、ニオブ等の5属金属の少なく
とも1種を加えて製造した鍛造素材を、熱間鍛造に適し
た温度に加熱し、所定の形状に鍛造後、冷却し、その
後、炉内でテンパー温度域の温度に所定の設定時間保持
し、さらに、自然冷却により常温まで冷却するようにし
ているため、鍛造素材に添加されているバナジウム、ニ
オブ等の5属金属が、フェライトに添加元素を主体とす
る微細な炭窒化物を析出させることができ、かつ、金属
組織は微細なフェライト+パーライト組織となるので、
剛性が高く、衝撃荷重に対し強くなる降伏点(YP値)
を高く設定できるので、鍛造製品の軽量化を図ることが
でき、しかも、引張強さ(TS)を低く抑えられるの
で、より機械加工における加工性を向上させることがで
き、鍛造製品のコストの低廉化を図ることができる。
【0025】また、鍛造素材の加熱温度を、1150〜
1250℃の範囲に設定することにより、鍛造素材に添
加されているバナジウム、ニオブ等の5属金属の固溶が
促進されるとともに、これが冷却され、析出するとき
に、鍛造素材の組織が析出物により歪を受け、多量の微
細な炭窒化物として析出するので、鍛造素材の強度を増
大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鍛造方法の一実施の形態を示す鍛造工
程の説明図である。
【図2】同鍛造工程における製品の温度変化の説明図で
ある。
【図3】本発明の本発明の実施例と従来製品(従来の非
調質法及び従来の焼入焼戻法)の硬さと降伏比の関係を
示すグラフである。
【図4】金属組織の顕微鏡写真で、(A)は、本発明の
実施例の金属組織を400倍に拡大した顕微鏡写真、
(B)は、同100000倍に拡大した電子顕微鏡写
真、また、(C)は、従来製品(従来の非調質法)の金
属組織を400倍に拡大した顕微鏡写真を、それぞれ示
す。
フロントページの続き Fターム(参考) 4E087 BA02 CA11 CB01 DB14 DB15 DB24 HA32 HA34 HA82 4K032 AA22 AA33 AA36 CA02 CA03 CD05

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 5属金属の少なくとも1種を加えて製造
    した鍛造素材を、熱間鍛造に適した温度に加熱し、所定
    の形状に鍛造後、冷却し、その後、炉内でテンパー温度
    域の温度に所定の設定時間保持し、さらに、自然冷却に
    より常温まで冷却するようにしたことを特徴とする鍛造
    方法。
  2. 【請求項2】 鍛造素材の加熱温度を、1150〜12
    50℃の範囲に設定したことを特徴とする請求項1記載
    の鍛造方法。
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