JP2002285438A - ポリ乳酸仮撚加工糸とその製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸仮撚加工糸とその製造方法

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JP2002285438A JP2001087419A JP2001087419A JP2002285438A JP 2002285438 A JP2002285438 A JP 2002285438A JP 2001087419 A JP2001087419 A JP 2001087419A JP 2001087419 A JP2001087419 A JP 2001087419A JP 2002285438 A JP2002285438 A JP 2002285438A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】伸縮性および熱的寸法安定性に優れ、高捲縮、
高品質のポリ乳酸仮撚加工糸およびその製造方法を提供
する。 【解決手段】ポリ乳酸繊維を用いた仮撚加工糸であっ
て、伸縮復元率が18〜50%、沸騰水収縮率が0〜2
0%、未解撚部分の個数が1mあたり0〜1個であるこ
とを特徴とするポリ乳酸仮撚加工糸。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、伸縮性に優れ、熱
水処理後の収縮が小さく、高捲縮性、高品質であるポリ
乳酸仮撚加工糸およびその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】ポリ乳酸繊維を用いての仮撚加工は、通
常のフリクション仮撚や中空スピンドル仮撚などで実施
されている。これらの方法により得られる加工糸は、高
捲縮性または優れた熱的寸法安定性を有しているもの
の、捲縮特性が良好な加工糸は沸騰水収縮率が著しく高
いものであり、逆に熱的寸法安定性の優れた加工糸は捲
縮特性に劣り、満足できる嵩高性を有するものではなか
った。またいずれの場合にも加工糸には未解撚部分が残
存する問題があり、布帛にした場合のざらつきや染色品
の淡染異常など衣料用繊維としては致命的な欠点を有す
るものであった。このように伸縮性および熱的寸法安定
性に優れ、かつ未解撚の発生のない高品質のポリ乳酸仮
撚加工糸を得ることは現在のところ達成できていない。
【0003】ポリエチレンテレフタレートやナイロン等
の熱可塑性繊維は、捲縮を与えるためにフリクション仮
撚およびスピンドル仮撚などの方法によって仮撚加工を
行うことが一般に行われている。しかしながら、ポリ乳
酸はポリエチレンテレフタレートやナイロンとはポリマ
ー特性が大きく異なり、融点が低く、また加熱時に著し
く軟化してしまうため、従来行われている条件をそのま
ま採用することができない。
【0004】ポリ乳酸繊維の仮撚加工に関しては、例え
ば特開2000−290845号公報に提案されてい
る。この方法は主として摩擦ディスクを用いるフリクシ
ョン仮撚に関するものであり、仮撚加工時の加撚張力お
よび解撚張力が高くならず、捲縮不良となる問題があっ
た。高捲縮糸を得るための方法の一つとしてヒーター温
度を低くして加撚張力を高くする方法があるが、それに
よって熱的寸法安定性が極端に悪くなるという問題が生
じ、逆にヒーター温度を高くすると熱的寸法安定性は良
くなるものの、フィラメント間の融着が起こったり、未
解撚の発生が顕著になるという問題があった。
【0005】特開2000−290845号公報には、
中空スピンドル仮撚で製造されたポリ乳酸仮撚加工糸も
述べられているが、延伸倍率が1.0倍と実質的には延
伸を加えないものであるため加撚張力がほとんど発生せ
ず十分に良好な捲縮糸とはならないものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、伸縮
性および熱的寸法安定性に優れ、高捲縮、高品質のポリ
乳酸仮撚加工糸およびその製造方法を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述した本発明の課題
は、ポリ乳酸繊維を用いた仮撚加工糸であって、伸縮復
元率が18〜50%、沸騰水収縮率が0〜20%、未解
撚部分の個数が1mあたり0〜1個であることを特徴と
するポリ乳酸仮撚加工糸によって達成できる。
【0008】また本発明の別の課題は、ポリ乳酸繊維を
供給糸として仮撚加工を行うに際し延伸倍率1.005
〜3.0倍、ヒーター温度80〜(供給糸の融点−2
0)℃、加撚張力0.03cN/dtex以上、解撚張
力0.15cN/dtex以上の条件下で延伸仮撚加工
を行うことを特徴とするポリ乳酸仮撚加工糸の製造方法
によって達成できる。また、この場合、施撚体としてス
ピナーピンを配した中空スピンドルを用いることが好ま
しく適用できる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明のポリ乳酸仮撚加工
糸およびその製造方法について詳細に説明する。本発明
におけるポリ乳酸とは、L−乳酸および/またはD−乳
酸を主たる繰り返し単位とするポリマーを意味する。ポ
リマーの高融点の観点から、同一ポリマー鎖中における
L−乳酸(あるいはD−乳酸)の比率は98%以上、好
ましくは99%以上が良い。また、ポリL−乳酸とポリ
D−乳酸のブレンドによるステレオコンプレックス技術
を採用したものであっても良い。融点は130℃以上が
好ましく、150℃以上がより好ましく、170℃以上
がさらに好ましい。ここで融点とは、示差走査熱量計
(DSC)測定によって得られた溶融ピークのピーク温
度を意味する。
【0010】ポリ乳酸の製造方法には、乳酸を原料とし
て一旦環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後
開環重合を行う二段階のラクチド法と、乳酸を原料とし
て溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知
られている。本発明で用いられるポリ乳酸は、いずれの
製法によって得られたポリ乳酸であってもよい。いずれ
の方法で得られた物であっても、溶融紡糸以前の段階で
ポリマー中に含有される環状二量体の含有量を0.1重
量%以下とすることが望ましい。
【0011】ポリ乳酸の重量平均分子量は、少なくとも
5万、好ましくは少なくとも10万、より好ましくは1
0〜30万である。重量平均分子量が5万よりも低い場
合には、繊維の強度物性が低下するため好ましくない。
【0012】本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸、D
−乳酸のほかにエステル形成能を有するその他の成分を
共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能
な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、
4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒド
ロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類のほ
か、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタ
ンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレング
リコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの分
子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの
誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタ
ル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン
酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブ
チルホスホニウムイソフタル酸などの分子内に複数のカ
ルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が
挙げられる。
【0013】また、本発明では溶融粘度を低減させるた
めに、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート
およびポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエ
ステルポリマーを内部可塑剤として、あるいは外部可塑
剤として用いることができる。さらには、ポリ乳酸に、
加水分解抑制剤、加水分解促進剤、艶消し剤、消臭剤、
難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料、制電剤、
抗菌剤等として無機粒子や有機化合物を必要に応じて添
加することができる。
【0014】本発明のポリ乳酸仮撚加工糸とは、ポリ乳
酸繊維を少なくとも供給糸の一部として用い、加撚、熱
セット後、解撚することにより得られる3次元のランダ
ム捲縮を有するフィラメントである。また、本発明のポ
リ乳酸仮撚加工糸は、伸縮復元率が18%〜50%、沸
騰水収縮率0〜20%、未解撚状態の個数が1mあたり
0〜1個であることを特徴とするものである。
【0015】伸縮復元率とは仮撚加工糸の伸縮性を表す
指標の一つであり、後記の方法によって測定される値で
ある。この伸縮復元率は18〜50%が良く、20〜4
0%が好ましい。18〜50%の範囲内にあれば、該加
工糸で製作した布帛はソフトな風合いと伸縮性が良好な
ものとなる。一方、伸縮復元率が18%未満ではふくら
みが足らないものとなり、50%より大きいとふかつき
が生じる。
【0016】沸騰水収縮率は0〜20%であることが良
く、より好ましくは0〜15%、さらに好ましくは0〜
10%である。沸騰水収縮率が0〜20%の範囲内にあ
れば、該加工糸は熱的寸法安定性が良好である。一方、
沸騰水収縮率が20%より大きいと、熱的寸法安定性が
悪く、染色工程や高次加工工程において収縮に起因する
問題が生じ、取り扱いが困難となる。
【0017】本発明の仮撚加工糸の未解撚部分の個数は
1mあたり0〜1個であることが必要である。未解撚を
特徴とする加工糸もあるが、1mあたり未解撚部分の個
数が1個より多い場合には、染色異常の原因や加工糸の
ざらつき、外観面での欠点となる。未解撚部分とは、加
撚時の撚りがそのまま解撚されずに残る部分をいう。ポ
リ乳酸繊維の仮撚加工においては、ポリエチレンテレフ
タレートやナイロンと加工張力(加撚張力および解撚張
力)の挙動が大きく異なり、未解撚の発生を抑制するた
めには従来の条件をそのまま採用することはできず特定
の条件を選ぶ必要がある。
【0018】本発明におけるポリ乳酸仮撚加工糸は、そ
の繊維強度が2.5cN/dtex以上であることが好
ましい。強度が2.5cN/dtex未満の場合には、
糸加工時の毛羽発生、糸切れや製織時の糸切れ停台の原
因となったり、織編物など布帛の引裂強力低下による製
品強度の低下を招くため好ましくない。繊維強度はより
好ましくは3.0cN/dtex、最も好ましくは3.
5cN/dtex以上である。伸度に関しては、残留伸
度が15〜40%となるように原糸、加工条件を設定す
ることが、製編織時の取り扱い性、へたり性などの点か
ら好ましい。以上のように、ポリ乳酸繊維を用いた仮撚
加工糸であって、伸縮復元率が18〜50%、沸騰水収
縮率が0〜20%、未解撚部分の個数が1mあたり0〜
1個であることを特徴とする伸縮性および熱収縮性に優
れた、高捲縮、高品質ポリ乳酸仮撚加工糸は、今までに
ないポリ乳酸仮撚加工糸である。
【0019】伸縮性および熱的寸法安定性に優れた、高
捲縮、高品質のポリ乳酸仮撚加工糸を得るためには、ポ
リ乳酸繊維を供給糸として仮撚加工を行うに際し、延伸
倍率1.005〜3.0倍、ヒーター温度80〜(供給
糸の融点−20)℃、加撚張力0.03cN/dtex
以上、解撚張力0.15cN/dtex以上の条件下で
延伸仮撚加工を行うことを特徴とするポリ乳酸仮撚加工
糸の製造方法により成し遂げることができる。
【0020】仮撚加工に用いられる施撚体としては、デ
ィスク(フリクション仮撚)およびスピナーピン(スピ
ンドル仮撚)が主に使用されている。ディスクを用いる
フリクション仮撚の場合、摩擦加撚方式であるため低い
加撚張力が解撚張力へ波及して、結果、未解撚が残る捲
縮不良の加工糸となることがある。一方、スピンドル仮
撚の場合、スピナーピンと糸との摩擦が大きいため、仮
撚回転子下流の解撚張力が十分高くなり、未解撚の発生
がほとんどない良好な捲縮形態の加工糸を得ることがで
きる。これらのことから、施撚体としてはスピナーピン
を配した中空スピンドルを用いることが好ましい。
【0021】仮撚加工の際、延伸倍率は1.005〜
3.0倍とする必要がある。ポリ乳酸繊維の仮撚加工で
は、ポリ乳酸繊維は熱板での加熱時に著しく軟化するた
め、延伸倍率1.005倍未満では、加撚張力がほぼゼ
ロとなり良好な捲縮糸とならない問題がある。延伸倍率
1.005〜3.0倍に延伸しながら仮撚加工を行う
と、供給糸が緊張状態になり十分な捲縮糸になる加撚張
力が発生する。この観点から、延伸倍率は1.005倍
以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましい。一方、
延伸倍率が3.0倍より大きい場合、加工糸の低伸度や
加工時の糸切れが問題となる。ここでいう延伸倍率と
は、熱板直上のフィードローラーと中空スピンドル直下
のドローローラーとの間の延伸倍率である。
【0022】ポリ乳酸繊維の仮撚加工の際、ヒーター温
度は80〜(供給糸の融点−20)℃が好ましい。ヒー
ター温度80℃未満では、加撚張力は十分高い値となり
伸縮復元率そのものは良好であるが、沸騰水収縮率が著
しく高くなるため熱的寸法安定性が悪くなり、染色工程
や高次加工工程において収縮に起因する問題が生じ、取
り扱いが困難となる。さらに低温で延伸仮撚を行った場
合には、ボイドが発生して仮撚加工糸が失透する場合も
ある。この場合、実用に耐えうる強度を得ることが難し
くなり、また染色異常の原因となってしまう。これらの
ことからポリ乳酸繊維の場合、延伸仮撚時の加撚域での
ヒーター温度を80℃以上とする必要があり、100℃
以上が好ましい。ヒーター温度が(供給糸の融点−2
0)℃より高い場合、熱的寸法安定性は良いもののフィ
ラメント間に融着が起こり、タイトスポットの発生や強
度および伸度の著しい低下が起こるため好ましくない。
【0023】本発明では、加撚張力0.03cN/dt
ex以上、解撚張力0.15cN/dtex以上とする
必要がある。加撚張力は仮撚加工糸の捲縮特性と密接な
関係を有しており、加撚張力が不足すると伸縮復元率が
小さい捲縮に乏しい加工糸しか得られない。このことか
ら加撚張力は0.03cN/dtex以上とする必要が
あり、好ましくは0.05cN/dtex以上、より好
ましくは0.1cN/dtex以上である。加撚張力が
0.03cN/dtex未満では、十分な捲縮と嵩高性
を有する加工糸を得ることが困難である。
【0024】解撚張力については、張力が小さすぎる
と、十分な解撚が達成されないため、未解撚部分やスナ
ールなどが発生し極めて品質の悪い加工糸となってしま
う。未解撚の発生のない良好な捲縮特性を有する加工糸
とするためには、解撚張力は0.15cN/dtex以
上とする必要があり、0.2cN/dtex以上が好ま
しい。
【0025】上述のように、供給糸としてポリ乳酸繊維
を用い、施撚体として中空スピンドルを用いて延伸仮撚
を行うことにより、適度な加撚張力および解撚張力を得
ることができ、捲縮性、熱的寸法安定性に優れた高品質
ポリ乳酸加工糸を得ることができる。また、適度な解撚
張力が得られることから、フリクション仮撚で見られる
未解撚部分やスナールなどの欠点糸となることがなくな
る。
【0026】図1に本発明に関わる仮撚加工装置の例を
示した。供給糸1であるポリ乳酸繊維はフィードローラ
ー2に供給され、中空スピンドルの仮撚回転子5によっ
て糸条に仮撚を施されながらヒーター3で加熱、熱セッ
トされる。その後、冷却板4との接触により十分に冷却
された糸条は、仮撚回転子5の下流にて解撚され、フィ
ードローラー2より速い速度で回転するドローローラー
6によって延伸され、リラックスローラー7により加工
糸をリラックスさせた後、ワインダー8にて巻き取られ
る。
【0027】仮撚加工で供給糸として用いるポリ乳酸繊
維の複屈折率Δnは0.010〜0.040であること
が好ましい。さらにΔnが、0.015〜0.030で
あることがより好ましい。複屈折率はポリマーの配向を
示す尺度である。Δnが0.010未満では、配向があ
まり進まず、構造が不安定であるため、仮撚加工時、ヒ
ーターとの接触によるフィラメント間の融着が発生しや
すい。また、Δnが0.040より大きいと、仮撚加工
時の糸切れが起こりやすい。
【0028】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的
に説明する。 A.伸縮復元率 熱水処理後の伸縮復元率は、次のように求めた。作成し
たかせ(40cm)を90℃の熱水中で20分間浸せき
した後、試料を取り出す。24時間風乾させた後、この
試料をJIS規格L1090−1992 5.8伸縮復
元率に従い測定した。 B.沸騰水収縮率 試料の加工糸をかせ取りし、0.09g/dtexの荷
重下で試料長L0を測定した後、無荷重の状態で15分
間、沸騰水中で処理を行う。処理後、風乾し0.09g
/dtexの荷重下で試料長L1を測定し、下式で算出
する。
【0029】沸騰水収縮率(%)={(L0−L1)/
L0}×100 C.未解撚部分の個数 ポリ乳酸仮撚加工糸の未解撚の個数は、ミノルタカメラ
社製のリーダープリンター(RP503)を用い、倍率
17倍で加工糸1m分の加工糸側面の撮影を行い未解撚
の個数を数えることにより求めた。 D.融点の測定 パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC−7)
を用いて、昇温速度15℃/分の条件で測定し、得られ
た溶融ピークのピーク温度を融点とした。 E.強伸度測定 オリエンテック社製引張試験機(テンシロンUCT−1
00型)を用い、試料長20cm、引張速度20cm/
分の条件で引張試験を行って、破断点の応力を繊維の強
度とした。 F.複屈折 コンペンセーターを内蔵するオリンパス社製の偏光顕微
鏡(BH−2)を用いて、常法により測定した。 G.加撚張力・解撚張力の測定 加撚張力はヒーター直下の冷却板と仮撚回転子間で、解
撚張力は仮撚回転子とドローローラー間で張力計を用い
て測定した。 H.加工糸の触感および外観 仮撚加工糸の評価は、次のようにして行った。ポリ乳酸
仮撚加工糸を筒編物にし、沸水中に15分間処理する。
処理後、風乾した後、触感および目視により評価した。
【0030】実施例1 融点が168℃、重量平均分子量が128000あるポ
リL−乳酸(L体比率99%)のチップを105℃に設
定した真空乾燥器で12時間、減圧乾燥した。乾燥した
チップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、メルター
温度220℃にて溶融し、紡糸温度220℃とした溶融
紡糸パックへ導入して、0.23mmφ−0.30mm
Lの口金孔より紡出した。この紡出糸を20℃、30m
/分のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束
した後、3000m/分で引き取って高配向未延伸糸
(122デシッテクス−36フィラメント、Δn=0.
011)を得た。この高配向未延伸糸を、ホットローラ
ー型延伸機を用いて、加熱ローラー温度85℃、熱セッ
ト温度130℃、延伸倍率1.45倍の条件で延伸して
84デシテックス−36フィラメントの延伸糸(融点1
68℃、Δn=0.026)を得た。
【0031】次にこの延伸糸を供給糸として用い、石川
製作所製仮撚加工機(IVF334)を用い、施撚体と
してスピナーピンを配した2.0mmφの中空スピンド
ルを使用して、2500T/mの仮撚を与えながらフィ
ードローラーとドローローラーとの間で1.4倍に延
伸、ヒーター温度は130℃として仮撚加工を行い、リ
ラックスローラーで5%リラックスして巻き取った。表
1に示すように、加撚張力は0.08cN/dtexと
十分な値であり、解撚張力は0.63cN/dtexと
十分な値であった。得られた加工糸は伸縮復元率24%
と捲縮に優れ、沸騰水収縮率は13%であり熱的寸法安
定性が良好なものであった。
【0032】実施例2 延伸倍率を1.2倍、ヒーター温度を110℃とする以
外は、実施例1と同様に延伸仮撚を行った。加撚張力は
0.08cN/dtex、解撚張力は0.40cN/d
texと十分な値であった。表1に示すように、得られ
た加工糸は伸縮復元率22%と捲縮に優れ、沸騰水収縮
率は17%であり熱的寸法安定性が良好なものであっ
た。
【0033】実施例3 延伸倍率を1.6倍、ヒーター温度140℃とする以外
は、実施例1と同様に延伸仮撚を行った。加撚張力は
0.13cN/dtex、解撚張力は0.50cN/d
texと十分な値であった。表1に示すように、得られ
た加工糸は伸縮復元率21%と捲縮に優れ、沸騰水収縮
率は10%であり熱的寸法安定性が良好なものであっ
た。
【0034】実施例4 延伸倍率を1.05倍、ヒーター温度120℃とする以
外は、実施例1と同様に延伸仮撚を行った。加撚張力は
0.03cN/dtex、解撚張力は0.15cN/d
texと十分な値であった。表1に示すように、得られ
た加工糸は伸縮復元率18%と捲縮に優れ、沸騰水収縮
率は9%であり熱的寸法安定性が良好なものであった。
【0035】実施例5 実施例1で得た高配向未延伸糸を用いて、延伸倍率2.
0倍とする以外は、実施例1と同様に延伸仮撚を行っ
た。加撚張力は0.20cN/dtex、解撚張力は
0.65cN/dtexと十分な値であった。表1に示
すように、得られた加工糸は伸縮復元率23%と捲縮に
優れ、沸騰水収縮率は13%であり熱的寸法安定性が良
好なものであった。
【0036】比較例1 施撚体として3軸ウレタンディスクを用いた以外は、実
施例1と同様に延伸仮撚を行った。表2に示すように、
解撚張力が0.08cN/dtexと低すぎる値であっ
たため、得られた加工糸は、多数の未解撚部分が存在す
る極めて低品質なものであった。
【0037】比較例2 延伸倍率を1.0倍とする以外は、実施例1と同様に延
伸仮撚を行った。表2に示すように、加撚張力が0.0
06cN/dtexと低すぎるため得られた加工糸は捲
縮性に乏しく、また解撚張力も低いため未解撚部分が存
在するものであった。
【0038】比較例3 ヒーター温度を75℃とする以外は実施例と1と同様に
延伸仮撚を行った。表2に示すように、ヒーター温度が
低すぎるため得られた加工糸は失透し、更に熱的寸法安
定性が極めて悪いものであった。
【0039】比較例4 ヒーター温度を155℃とする以外は実施例1と同様に
延伸仮撚を行った。表2に示すように、ヒーター温度が
高すぎるため、得られた加工糸はフィラメント間で融着
してしまい、捲縮糸とは言えないものであった。
【0040】比較例5 延伸倍率を3.2倍とする以外は実施例1と同様に延伸
仮撚を行った。高延伸倍率であるため、仮撚加工時に糸
切れが多発し、加工糸を得ることができなかった。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、伸縮性および熱的寸法
安定性に優れ、高捲縮性、高品質であるポリ乳酸仮撚加
工糸を得ることができ、織編物に嵩高性と伸縮性を付与
することが可能となるため、従来、生分解性を生かして
産業資材用途中心に展開されているポリ乳酸繊維を一般
衣料分野や資材分野へと広く展開することが可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に関わる仮撚加工装置を説明する
ための正面概略図である。
【符号の説明】
1:供給糸 2:フィードローラー 3:ヒーター 4:冷却板 5:仮撚回転子 6:ドローローラー 7:リラックスローラー 8:ワインダー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L036 MA05 PA05 PA06 PA18 RA03 RA04 UA06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリ乳酸繊維を用いた仮撚加工糸であっ
    て、伸縮復元率が18〜50%、沸騰水収縮率が0〜2
    0%、未解撚部分の個数が1mあたり0〜1個であるこ
    とを特徴とするポリ乳酸仮撚加工糸。
  2. 【請求項2】ポリ乳酸繊維を供給糸として仮撚加工を行
    うに際し、延伸倍率1.005〜3.0倍、ヒーター温
    度80〜(供給糸の融点−20)℃、加撚張力0.03
    cN/dtex以上、解撚張力0.15cN/dtex
    以上の条件下で延伸仮撚加工を行うことを特徴とするポ
    リ乳酸仮撚加工糸の製造方法。
  3. 【請求項3】施撚体としてスピナーピンを配した中空ス
    ピンドルを用いることを特徴とする請求項2に記載のポ
    リ乳酸仮撚加工糸の製造方法。
  4. 【請求項4】供給糸であるポリ乳酸繊維の複屈折率Δn
    が0.010〜0.040であることを特徴とする請求
    項2〜3のいずれか1項に記載のポリ乳酸仮撚加工糸の
    製造方法。
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