JP4586390B2 - 糸条パッケージ - Google Patents

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Description

本発明は、ポリ乳酸繊維から構成される原糸または仮撚加工糸が巻き付けてられなるチーズ状パッケージに関するものであり、更に詳しくは、チーズ状パッケージの状態で染色する、所謂先染めを行った後も繊維の力学的特性の低下が小さい、ポリ乳酸繊維から構成される原糸または仮撚加工糸が巻き付けてられなる糸条パッケージと先染め糸条パッケージに関するものである。
最近、地球的規模での環境に対する意識向上に伴い、自然環境の中で分解する繊維素材の開発が切望されている。その背景として、従来の汎用プラスチックは、石油資源を主原料としているが、その石油資源は将来枯渇すること、また、その石油資源の大量消費により地球温暖化が生じていることが、大きな問題として採り上げられている。
このため近年では、脂肪族ポリエステル等の様々なプラスチックや繊維の研究・開発が活発化している。その中でも、微生物により分解されるプラスチック、すなわち生分解性プラスチックを用いた繊維に注目が集まっている。
また別に、二酸化炭素を大気中から取り込み成長する植物資源を原料とすることで、二酸化炭素の循環により地球温暖化を抑制することが期待されているとともに、資源枯渇の問題も解決できる可能性がある。そのため、植物資源を出発点とするプラスチック、すなわちバイオマス利用のプラスチックに注目が集まっている。
これまで、バイオマス利用の生分解性プラスチックは、力学特性や耐熱性が低いと共に、製造コストが高いという課題があり、汎用プラスチックとして使われることはなかった。一方、近年では力学特性や耐熱性が比較的高く、製造コストの低い生分解性のプラスチックとして、でんぷんの発酵で得られる乳酸を原料としたポリ乳酸が脚光を浴びている。
ポリ乳酸は、例えば、手術用縫合糸として医療分野で古くから用いられてきたが、最近は量産技術の向上により価格面においても他の汎用プラスチックと競争できるまでになった。そのため、繊維としての商品開発も活発化してきている。
これまで、ポリ乳酸繊維からなるチーズ状パッケージの先染めは、ポリ乳酸繊維として特別な染色処方を用いているわけではなく、従来素材であるポリエステルやナイロンの技術がそのまま流用されてきた(特許文献1〜特許文献3参照)。
ポリ乳酸繊維に従来技術を適用した場合、先染めを行った後に直ぐ布帛製造工程に移すことができれば、繊維強度の低下は顕在化することはなかった。しかしながら、先染め後、次工程に移さずにチーズの状態で1〜6ヶ月間も保管すると、経時劣化により強度が急激に低下することが判明した。
この現象は、ポリ乳酸の染色による加水分解が大きく関わっている。ポリ乳酸は、その分子鎖末端であるカルボキシル基末端が自己触媒作用を有するため、熱水中で容易に加水分解が進むとともに、繊維構造の緩和が進行する。また、ポリ乳酸は、分子鎖がらせん構造を有していることが一般に知られているが、このらせん構造において、カルボニル基がらせんの内側に向いており、隣り合う分子鎖との水素結合力が極めて小さいため、分子鎖同士が外部からの応力により容易に滑ると考えている。例えば、ポリ乳酸に一定の応力を与え続けると、破断応力よりも十分低い応力であっても、容易にクリープして破断してしまうのである。そのため、ポリ乳酸繊維の先染めを行うには、これらの問題点を解消し、耐久性を高くする必要があった。
特開2002−180340号公報 特開2002−371446号公報 特開2003−247132号公報
本発明の目的は、上記従来の問題点を解決しようとするものであり、優れた力学特性を有するとともに、経時劣化による力学特性の低下が小さく、実用性に優れた生分解性のポリ乳酸繊維からなる原糸または仮撚加工糸が巻き付けてられなる先染めに好適な糸条パッケージと先染め糸条パッケージを提供することにある。
上記目的は、ポリ乳酸繊維から構成される原糸が巻き付けられてなるチーズ状パッケージであって、ポリ乳酸の重量平均分子量が100,000以上であり、該原糸の沸水収縮率が10%以下であり、巻硬度が40〜70度で巻かれていることを特徴とする糸条パッケージにより達成される。
本発明の糸条パッケージの好ましい態様によれば、前記の原糸の収縮応力の最大値は0.01〜0.15cN/dtexであり、前記の原糸のトータルカルボキシル基末端濃度は10当量/ton以下であり、前記の原糸のtanδピーク温度は75℃以上である。
また、本発明の糸条パッケージは、ポリ乳酸繊維から構成される仮撚加工糸が巻き付けられてなるチーズ状パッケージであって、ポリ乳酸の重量平均分子量が100,000以上であり、該仮撚加工糸が下記の特性を有し、巻硬度が40〜70度で巻かれていることを特徴とする糸条パッケージである。
沸水収縮率≦10%
90℃強度≧0.3cN/dtex
伸縮復元率(CR)≧10%
未解撚数≦3個/10m
また、本発明の先染め糸条パッケージは、ポリ乳酸繊維から構成される糸条が巻き付けられてなるチーズ状パッケージであって、該ポリ乳酸繊維が染色されており、該ポリ乳酸の重量平均分子量が100,000以上であり、該糸条の収縮応力の最大値が0.01〜0.10cN/dtexであり、巻硬度が40〜70度で巻かれていることを特徴とする先染め糸条パッケージである。
本発明の先染め糸条パッケージの好ましい態様によれば、チーズ状パッケージは、ポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントと、セルロース系繊維および/またはウール繊維とが混繊されて、巻硬度40〜70度で巻き付けられ、染色されてなるチーズ状パッケージである。
本発明の糸条パッケージは、染色後の分子量低下が小さく、かつ経時劣化による力学特性の低下が小さいために、パッケージのまま数ヶ月間保管しても実用性が損なわれることがなく、先染め用として好ましく用いることができる。
本発明の糸条パッケージは、ポリ乳酸繊維から構成される原糸(マルチフィラメントが巻き付けられてなるチーズ状のパッケージである。
本発明において、ポリ乳酸繊維を構成するポリ乳酸は、−(O−CHCH3−CO)n−を繰り返し単位とするポリマーであり、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものをいう。乳酸には、D−乳酸とL−乳酸の2種類の光学異性体が存在するため、その重合体もD体のみからなるポリ(D−乳酸)とL体のみからなるポリ(L−乳酸)、および両者からなるポリ乳酸がある。ポリ乳酸中のD−乳酸あるいはL−乳酸の光学純度は、それらが低くなるとともに結晶性が低下し、融点降下が大きくなる。そのため、耐熱性を高めるために、光学純度は90%以上であることが好ましい。
ただし、上記のように2種類の光学異性体が単純に混合している系とは別に、前記2種類の光学異性体をブレンドして繊維に成形した後、140℃以上の高温熱処理を施してラセミ結晶を形成させたステレオコンプレックスにすると、融点を飛躍的に高めることができる。
また、ポリ乳酸中にはラクチド等の残存モノマーが存在するが、これら低分子量残留物は仮撚加工工程での加熱ヒーター汚れや染色加工工程での染め斑等の染色異常を誘発する原因となる。また、繊維の加水分解性を促進し、耐久性を低下させるため、これら低分子量残留物は、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下である。
また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していてもよい。ただし、バイオマス利用や生分解性の観点から、ポリ乳酸繊維中の乳酸モノマー比率は50重量%以上とすることが必要である。乳酸モノマーは好ましくは75重量%以上、より好ましくは96重量%以上である。また、ポリ乳酸以外の熱可塑性重合体をブレンドしたり、両成分を複合(芯鞘型、バイメタル型)して繊維としてもよい。さらに改質剤として、粒子、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤や紫外線吸収剤等の添加物を含有していてもよい。 また、ポリ乳酸重合体の分子量は、重量平均分子量で100、000以上であることが必要である。
ポリ乳酸繊維は、前記したように末端のカルボキシル基が自己触媒作用を有しており、加水分解を促進する。この加水分解は、精練や染色等の製品製造工程は勿論のこと、製品になってからも徐々に進行することが判っている。一方、ポリ乳酸繊維は、重量平均分子量が50,000以下になると、急激に繊維の力学特性が低下し、特に強度の低下が著しい。そのため、最終製品としては、ポリ乳酸の重量平均分子量は100,000以上であることが必要なのである。なお、重量平均分子量は、繊維の耐加水分解性という観点からいえば高い方が好ましいが、分子量が350,000を超えると溶融粘度が高すぎるために繊維に成形することが困難になると共に、分子配向しにくくなるために力学的特性も低下する傾向にある。そのため、好ましい重量平均分子量は120,000〜310,000であり、より好ましくは140,000〜280,000であり、さらに好ましくは150,000〜250,000である。
本発明で用いられるポリ乳酸の製造方法は、特に限定されない。具体的には、特開平6−65360号公報に開示されている方法が挙げられる。すなわち、乳酸を有機溶媒および触媒の存在下、そのまま脱水縮合する直接脱水縮合法である。また、特開平7−173266号公報に開示されている少なくとも2種類のホモポリマーを重合触媒の存在下に、共重合並びにエステル交換反応させる方法である。さらには、米国特許第2,703,316号明細書に開示されている方法がある。すなわち、乳酸を一旦脱水し、環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法である。
本発明で用いられるポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントは、沸水収縮率が10%以下であることが必要である。本発明の目的である先染めにおいて、沸水収縮率が高いとパッケージ染色したときにパッケージ内での収縮が制限されるため、熱収縮応力によって生じた残留歪により経時劣化が進行する。その結果、染色から1〜6ヶ月経過後の強度が著しく低下する、所謂クリープ破壊が生じることがある。そのため、沸水収縮率は低いほどよく、好ましくは1〜7%であり、より好ましくは1〜5%であり、さらに好ましくは1〜3%である。
同様に、マルチフィラメントの収縮応力も低い方が経時劣化を抑制する効果がある。一方、マルチフィラメントの収縮応力が低すぎるとパッケージ染色後にパッケージフォームが崩れやすくなるという問題もある。そのため、マルチフィラメントの収縮応力の最大値は、好ましくは0.01〜0.15cN/dtexであり、より好ましくは0.015〜0.10cN/dtexであり、さらに好ましくは0.02〜0.05cN/dtexである。
沸水収縮率および収縮応力を制御する手段としては、延伸と同時にガラス転移点以上で熱セットしたり、熱セットと同時に弛緩処理する方法等が挙げられる。しかしながら、後に述べるように弛緩熱処理を施すと、よりクリープし易い繊維構造になり、力学特性が低下する傾向にある。そのため、沸水収縮率は定長もしくは緊張状態で熱処理することが好ましい。また、そのときのストレッチ率は、高くしすぎると収縮応力が高くなる傾向にあるため、0〜12%程度にすることが好ましい。より好ましいストレッチ率は0〜5%である。熱処理温度は高いほど低収縮化する傾向にあるが、熱処理工程での通過性を保持するために100〜150℃の範囲で行うことが好ましい。より好ましい熱処理温度は110〜145℃、さらに好ましくは120〜140℃である。
また、糸条パッケージの巻き硬度は、高すぎると経時劣化が進行しやすくなる傾向がある。巻き硬度が高いということは、糸条の糸長手方向の拘束性がそれだけ高いことを示す。つまりパッケージ染色後の収縮が制限されるため、残留歪みによって生じた応力により、経時劣化が生じやすくなる。一方、巻き硬度が過度に低いとパッケージ染色工程やその後の工程においてパッケージフォームが崩れやすくなるという問題がある。そのため、本発明では上記問題を解決し、経時劣化を抑制するために、糸条パッケージの巻き硬度を40〜70度にすることが必要である。好ましい巻き硬度は45〜67度であり、より好ましい巻き硬度は50〜65度である。なお、ポリエステル繊維など汎用の合成繊維の場合は、ポリ乳酸繊維のような低応力下でのクリープ破壊がほとんど進まないため、糸条パッケージの取り扱い性が最優先され、糸条パッケージの巻き硬度はおよそ72〜85度に設定される。
巻き硬度を制御する手段としては、糸形態がPOY、DSD、DTY等のチーズ状パッケージの場合は巻取張力の制御によって行う。ただし、高速紡糸の領域になってくると、最終ロールへの逆巻きを防止するために、ある一定以上の張力が必要になる。そのため、実巻張力を効果的に下げるために、巻取機に付帯しているローラーベイルをモーターで駆動するローラーベイル強制駆動を行うことが好ましい。このときのローラーベイルの周速度は巻取速度と同速か、若干リラックス(巻取速度よりもローラーベイル周速度を0〜1%速くする)にすることが好ましい。また、延伸機や精紡機の場合はトラベラの重量を軽くしたり、トラベラーの滑走速度を低めに設定することで巻き硬度を低くすることができる。
また、ポリ乳酸繊維は、染色工程での熱履歴により配向緩和が進むが、過度に配向緩和が進むと、経時劣化により強度が著しく低下する傾向にある。そのため、本発明で用いられるポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントは、繊維軸方向に高度に配向が進み、染色等の熱処理を受けても配向緩和しにくい構造にする必要がある。なお、このときの経時劣化に影響を与えるのは主として非晶部の分子配向性である。非晶部の分子配向性を知るための指標としては、動的粘弾性測定から求められる損失正接tanδのピーク温度(以下、Tmaxと記載する。)がある。このTmaxが高いほど非晶部の分子密度が高く、分子間の拘束性が高いことを示す。
つまり、Tmaxが高いほど配向緩和しにくく、強度に代表される繊維の力学特性も高いことを示す。本発明においては、Tmaxは75℃以上であると分子間の拘束性が高く、配向緩和しにくいために経時劣化しにくい。Tmaxは、より好ましくは78℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上であり、さらに好ましくは85℃以上である。
Tmaxを高くするための方策としては、例えば、100℃以上の高温で高倍率延伸を行うことにより、分子配向性を高くすること等が有効である。ポリ乳酸繊維は、一般にはα晶という結晶形が生成しているが、α晶中での分子鎖の形態は103らせん構造を採っていることが一般に知られている。ここで、103らせん構造とは、10個のモノマーユニット当たり3回回転するらせん構造を意味している。それに対し、上記のような高温・高倍率延伸によって得られるポリ乳酸繊維中には、β晶という通常のα晶とは異なる結晶が生成する。ここでβ晶とは、3個のモノマーユニット当たり1回回転するらせん構造(31らせん構造)であり、通常の103らせん構造を引き伸ばした緊張型の形態といえる。
このβ晶を形成させるような延伸を行うことによって、非晶部も高度に配向されることがわかり、Tmaxも向上させることが可能になる。なお、このβ晶(31らせん構造)の形成は、固体13C−NMRにおいて171.6ppm付近のピークの有無(ピークが観測されれば形成されている)によって確認することができる。
また、収縮率を下げるために過度の弛緩熱処理を行うとTmaxが低下し、経時劣化しやすい繊維構造になることから、弛緩率は低めに設定し、熱処理温度を高くしたり、熱処理時間を長くすることで低収縮化を計る必要がある。
また、本発明においては前記したように耐加水分解性を高めて分子量低下を抑制することが必要となるので、自己触媒作用を有するカルボキシル基の末端濃度を下げることが経時劣化抑制に有効に作用する。トータルカルボキシル基末端濃度は低い方がよいため、好ましくは10当量/ton以下であり、より好ましくは6当量/ton以下、さらに好ましくは0〜3当量/tonである。トータルカルボキシル基末端濃度を下げる方策としては、例えば、特開平11−80522号公報に記載のジイソシアネート化合物を重合したポリカルボジイミドがあり、中でも4,4'−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドの重合体やテトラメチルキシリレンカルボジイミドの重合体を用いることがより好ましい。
末端封鎖剤を添加する場合、添加する成分のカルボキシル基末端量に対して決めることが重要である。さらに、ラクチド等の残存オリゴマーも加水分解によりカルボキシル基末端を生じることから、ポリマーのカルボキシル基末端だけでなく残存オリゴマーやモノマー由来のものも併せたトータルカルボキシル末端量が重要である。例えば、末端封鎖剤としてポリカルボジイミドを用いる場合、ポリカルボジイミドのカルボジイミド基当量としてトータルカルボキシル末端量の1〜5倍当量添加することで、フリーのポリカルボジイミド化合物を減じることができる。ポリカルボジイミド化合物の添加量は、より好ましくはトータルカルボキシル末端量の1.2〜3倍当量であり、さらに好ましくは1.3〜2.5倍当量である。
また、ポリ乳酸からなるマルチフィラメントは、ポリエチレンテレフタレートやポリアミドのような汎用の合成繊維に比較して、耐摩耗性が極めて悪い。これは、ポリ乳酸の分子鎖間相互作用が小さく、容易に分子鎖同士が剥がされるためであると考えられる。また、この傾向は、高温になるほど顕著になる。そのため、製糸工程や製編織工程において高速で糸を走行させると、容易に繊維が削れて毛羽や断糸が発生したりする。また、この傾向は織り密度と強い相関があり、高密度織物になるほど削れが酷くなる。また、衣類等の製品になってからも繰り返し使用や強い摩擦力が加わると、摩耗により表面が荒れて色調異常を来たしたり、風合いの悪化により酷い場合には肌荒れの原因にもなる。このような問題に対し、滑剤の添加により繊維の表面摩擦係数を下げることができるため、過度の温度上昇を抑制したり、破壊に至るまでの応力が加わらないようにすることが可能となる。
滑剤としては、例えば、流動パラフィンやパラフィンワックス、マイクロワックスおよびポリエチレンワックス等の炭化水素系のワックス類、ステアリン酸や12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリルアルコール等の脂肪酸・高級アルコール系ワックス類、ステアリン酸アミドやオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドおよびエチレンビスオレイン酸アミド等のアミド系滑剤、ステアリン酸ブチルやステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のエステル系ワックス、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸鉛等の金属石けん等が適用される。その中でも、融点が100℃以上で、外部滑性に優れるアミド系滑剤が好ましく、その中でも脂肪酸ビスアミド、およびアルキル置換型の脂肪酸モノアミドが最も好ましい。また、これら滑剤を複数含有させてもよい。ポリ乳酸への滑剤の添加量は、上記特性を発揮するために繊維重量に対して0.1重量%以上にすることが必要である。また、含有量が多すぎると繊維の機械的物性が低下したり、黄味を帯びて染色したときに色調が悪くなるので、好ましい含有量は5重量%以下である。該脂肪酸アミドおよび/または脂肪酸エステルの含有量は、より好ましくは0.2〜4重量%、さらに好ましくは0.3〜3重量%である。
本発明において、ポリ乳酸繊維の紡糸については、1,500〜3,000m/分程度の巻取速度で未延伸糸を得た後、1.5〜3倍程度で延撚する方法、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取速度4,000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)等、いずれの方法を採用してもよい。
ポリ乳酸繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、また断面形状は、丸型、三角、T型、Y型、W型、多葉型、偏平型および中空等、最終製品の特性に合わせて適宜選択すればよい。
さらに糸条の形態としては、原糸、仮撚加工糸、先撚仮撚糸、中〜強撚糸、流体噴射加工糸、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸やマルチフィラメント原糸、混繊糸等が挙げられる。この中でも、ポリ乳酸繊維の先染め用途では仮撚加工糸が好ましく用いられる。
本発明において、糸条の形態を仮撚加工糸とした場合は、90℃強度が0.3cN/dtex以上であることが好ましい。90℃強度が0.3cN/dtex以上であれば、最終製品、特に自動車内装材に用いた場合に、製品の軟化・変形が抑制され、外観変化の問題を解消することができる。90℃強度は、より好ましくは0.4cN/dtex以上であり、さらに好ましくは0.5cN/dtex以上である。なお、90℃強度は高いほどよいが、現行の技術では最大2cN/dtex程度が限界値である。
また、後述する測定方法に基づく伸縮復元率(CR)は、10%以上であることが好ましい。CRが10%以上の仮撚加工糸にすることで、繊維構造体にしたときに嵩高性や柔軟性、保温性の高い製品にすることができる。一方、CRが50%を超えると、繊維構造体にしたときに風合いが粗硬化するとともに、表面品位が悪化する傾向にある。したがって、高品位の布帛表面としつつ、加工糸としての嵩高性やストレッチ性を付与するためには、CRは15〜48%がより好ましく、さらに好ましくは20〜45%である。
また、未解撚数は、仮撚加工糸10m当たりで0〜3個であることが好ましい。未解撚数を少なくすることで、最終製品にした場合に染め斑などが無く、均一な外観を与えることができる。未解撚数は仮撚加工糸10m当たり1個以下であればより好ましく、最も好ましくは0個である。
また、使用する染色前のポリ乳酸繊維は、破断強度が2〜4cN/dtexであり、破断伸度が25〜45%であり、初期引張り抵抗度が40〜70cN/dtexであることが好ましい。
また、本発明の糸条パッケージは、ポリ乳酸繊維を含んで構成されていればよく、ポリ乳酸の特徴を活かすため、ポリ乳酸繊維を少なくとも20重量%以上含んでいることが好ましい。ポリ乳酸繊維の含有量はより好ましくは30重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上である。ポリ乳酸繊維が20重量%以上含まれていることで、寸法安定性に優れるとともに、しなやかでドライな触感の織編物とすることができる。
本発明で用いられる糸条を構成するポリ乳酸繊維以外の繊維としては、ウール、綿、麻および絹等に代表される天然繊維、または/およびビスコースレーヨンやキュプラ等の再生セルロース系繊維が好ましく用いられ、これらをポリ乳酸繊維と混繊して用いることができる。
本発明の先染め糸条パッケージを得るためには、いわゆるチーズ染色によって糸染めすることが必要である。染色後のポリ乳酸繊維は、チーズ染色前と同様、ポリ乳酸の重量平均分子量が100,000以上であると、汎用製品として十分な力学特性及び耐久性を与えることができる。より好ましい重量平均分子量は120,000〜310,000であり、さらに好ましくは140,000〜280,000、最も好ましくは150,000〜250,000である。染色によって分子量を低下させない方法としては、前記したカルボキシル基末端の封鎖や、ラクチド等の残存モノマーの除去により、トータルカルボキシル基末端濃度をできるだけ下げることが有効である。
また、染色後の糸条パッケージは、製品として輸送・保管される場合に高温環境下に置かれることが多い。そのため、糸条パッケージの状態で収縮が起こり、経時劣化することがある。そのため、染色後の沸水収縮率は7%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜5%であり、さらに好ましくは1〜3%である。
同様に、収縮応力も低い方が経時劣化を抑制する効果がある。一方、収縮応力が低すぎるとパッケージ染色後にパッケージフォームが崩れやすくなるという問題もある。そのため、収縮応力の最大値は好ましくは0.01〜0.10cN/dtexであり、より好ましくは0.015〜0.08cN/dtexであり、さらに好ましくは0.02〜0.05cN/dtexである。
また、染色後においても、染色前の糸条パッケージと同様、経時劣化の問題がつきまとう。一方、巻き硬度が過度に低いと、糸条パッケージの搬送時にパッケージフォームが崩れたり、糸条の解舒を行うときに輪抜けが生じる等の問題がある。そのため、染色後の糸条パッケージの巻き硬度を40〜70度にすることが必要である。好ましい巻き硬度は45〜67度であり、より好ましい巻き硬度は50〜65度である。
チーズの染色は、一般に使用されているチーズ染色機を使用することができる。精練は、通常行われているように、原糸油剤等が洗浄される条件であればよいが、加水分解しやすいポリ乳酸の場合はpHを8以下で実施することが好ましい。通常は、ノニオン系界面活性剤や炭酸ソーダ等の存在下で50〜80℃の温度で10〜30分間精練を行う。
ポリ乳酸繊維を染色するためには、ポリエチレンテレフタレート繊維の場合に一般に行われているような、分散染料を用いて染色する方法を採用すればよい。例えば、染色温度は90〜120℃、時間は15〜120分の範囲であればよいが、ポリ乳酸繊維は加水分解しやすいので、高温で染色する場合には染色時間を極力短くすることが必要である。ポリ乳酸繊維の染色は、加水分解を抑制するためにより好ましくは90〜115℃の温度で、さらに好ましくは90〜110℃の温度でで行い、染色時間もより好ましくは15〜90分、さらに好ましくは15〜60分である。
また、糸条がポリ乳酸以外の繊維を含んで構成されている場合は、その繊維を通常染色する際の染色条件を採用し、ポリ乳酸繊維の染色の前後もしくは同時に染色すればよい。
仮撚加工を行う場合は、仮撚加工機としてベルトニップ、フリクションおよびピンの何れのタイプを用いてもよいが、仮撚温度は、ポリ乳酸繊維の融点を考慮すると90〜130℃で行うことが好ましい。仮撚を行った糸条には、集束性を向上させるために50〜1,000T/mの追撚を行ってもよい。追撚の方向としては、仮撚方向の逆方向に追撚を行うと、布帛にしたときの品位が向上するので好ましい。
また、合撚する場合の合糸数、撚数および撚糸方向については、特に限定されるものではないが、諸撚糸の様に下撚りと上撚りを行う場合には、合撚糸の残留トルクが残らない様に撚バランスをとることが好ましく、例えば、2子撚糸の場合、下撚り回数1に対して上撚り回数を0.6〜0.8倍として、できるだけ撚りビリが発生しない様にするのが好ましい。例えば、ポリ乳酸繊維と他の繊維を下撚りした合撚糸を、更に2本あわせて合撚した諸撚糸等が挙げられる。
また、セルロース系繊維またはウール繊維とポリ乳酸繊維が混用された糸条を得る方法としては、例えば、ポリ乳酸繊維とセルロース系繊維またはウール繊維を合撚する方法、ポリ乳酸繊維を芯にして、セルロース系繊維またはウール繊維を巻き付ける様にカバリングする方法、芯糸にポリ乳酸繊維、鞘糸にセルロース系繊維またはウール繊維として流体噴射加工する方法、ポリ乳酸繊維とセルロース系繊維またはウール繊維を引き揃えて仮撚する方法、更に、仮撚加工の前もしくは後にインターレースノズルを用いて交絡させる方法等がある。また、綿やウール繊維等の短繊維の場合には、紡績工程の中の精紡時点で、ポリ乳酸繊維を複合した精紡交撚糸とする方法が挙げられる。
本発明の先染め糸条パッケージは、各種織物(タフタ、ツイル、サテン等)や編物(経編、丸編および横編等)に使用することができ、また、カーペットの表面(立毛部)にも使用することができる。編物の組織としては、天竺、天竺かのこ、ゴム、パール、両面、ポンチローマおよびミラノリブ等が挙げられ、製品の目的に応じて適宜選定すればよい。
また、本発明の先染め糸条は、横編(セーター等)、丸編・織物(アウター、インナー等)、レースや襟部用の付属品、製紐、モール糸、細幅テープ、パイル織編物(アウター、カーシート等)、およびカーペット等に使用することができる。
以下、本発明のポリ乳酸繊維からなる糸条パッケージについて、実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例における物性等の測定と評価方法には、以下の方法を用いた。
A.重量平均分子量
ウオーターズ(Waters)社製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー2690を用い、ポリスチレンを標準として測定した。
B.トータルカルボキシル基末端濃度
精秤した試料をo−クレゾール(水分5%)に溶解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより求めた。このとき、乳酸の環状2量体であるラクチド等のオリゴマーが加水分解し、カルボキシル基末端を生じるため、ポリマーのカルボキシル基末端およびモノマー由来のカルボキシル基末端、オリゴマー由来のカルボキシル基末端の全てを合計したカルボキシル基末端濃度が求まる。
C.残存ラクチド量
試料1gをジクロロメタン20mlに溶解し、この溶液にアセトン5mlを添加する。さらにシクロヘキサンで定容して析出させ、島津社製GC17Aを用いて液体クロマトグラフにより分析し、絶対検量線にてラクチド量を求めた。
D.強度および伸度、90℃強度
試料をオリエンテック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT-100でJIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、1998年)に示される定速伸長条件で測定した。なお、破断伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。また、90℃強度は加熱炉中、雰囲気温度90℃にて測定を行い最大強力から求めた。
E.経時劣化後の強度及び伸度
糸条パッケージを製造後、雰囲気温度25℃、相対湿度65%にて約3ヶ月間保管した後、オリエンテック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT-100でJIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、1998年)に示される定速伸長条件で測定した。なお、破断伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。染色後については、チーズ染色機にて110℃の温度まで昇温後、約60分間保持して染色を行い、冷却・取り出した後、上記と同様、雰囲気温度25℃、相対湿度65%にて約3ヶ月間保管し、強度及び伸度を測定した。
F.沸水収縮率
JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、1998年)に準じて測定した。糸条パッケージから検尺機でカセを採取し、90×10-3cN/dtexの実長測定荷重を架けてカセ長L1を測定し、引き続いて実長測定荷重をはずし、沸騰水中に15分間投入した後取り出し、風乾し、再び実長測定荷重を架けてカセ長L2を測定し、次式により沸騰水収縮率を算出した。
沸騰水収縮率(%)=[(L1−L2)/L1]×100。
G.収縮応力
カネボウエンジニアリング(株)社製熱応力測定器を用い、昇温速度150℃/分で測定した。サンプルは10cm×2のループとし、初期張力は繊度(デシテックス)×0.03gfとした。
H.tanδピーク温度
オリエンテック社製レオバイブロンを用い、乾燥空気中、測定周波数110Hz、昇温速度3℃/分にて各温度におけるtanδ(損失正接)および動的弾性率を測定した。得られた結果からtanδ−温度曲線を描き、この曲線上でtanδのピーク温度(Tmax、℃)を求めた。
I.CR値
捲縮糸をカセ取りし、実質的に荷重フリーの状態で沸騰水中で15分間処理し、24時間風乾した。このサンプルに0.088cN/dtex(0.1gf/d)相当の荷重をかけ水中に浸漬し、2分後のかせ長L0を測定した。次に、水中で0.088cN/dtex相当のカセを除き0.0018cN/dtex(2mgf/d)相当の微荷重に交換し、2分後のかせ長L1を測定した。そして下式によりCR値を計算した。
CR(%)=[(L0−L1)/L0]×100(%)。
J.未解撚数
仮撚糸を10m引き出し、目視にて未解撚部分の数を数えた。
K.巻硬度
高分子計器(株)社製ハードネステスター(HARDNESS TESTER)“Type C”(Cellular Rubber & Yarn Package用)を用い、図1において矢印で示したようにパッケージの端面部から2cmの位置(両端の2ヶ所)および中央部の計3ヶ所にて測定し、その平均値を糸条パッケージの巻硬度とした。
ポリ乳酸の製造
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10,000:1)を存在させて窒素雰囲気下180℃の温度でそれぞれ200分、270分および340分と重合時間を変え、分子量の異なる3種類のポリ乳酸を得た。引き続いて180℃の温度で減圧下で脱ラクチド処理した。なお、重合時に安定剤としてGE社製ウルトラノックス“Ultranox 626”(登録商標)をラクチド対比0.2重量%加えた。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は、それぞれ11万、15万および19万であり、トータルカルボキシル基末端濃度(当量/ton)は25、23および22であり、残存ラクチド量(ppm)は240、250および270であった。
(実施例1)
ポリ乳酸の製造で得られた重量平均分子量15万のポリ乳酸と、(株)日清紡製のポリカルボジイミド化合物「LA−1」(カルボジイミド1当量/カルボジイミド化合物247g)を、重量比で99.3:0.7(トータルカルボキシル基末端量に対し1.2倍当量)で混合してホッパー1に仕込み、2軸押出混練機2に導き、溶融温度T1:220℃で溶融混練し、引き続き紡糸温度T2:220℃に加温された紡糸ブロック3にて溶融ポリマーを計量・排出し、内蔵された紡糸パック4に溶融ポリマーを導き、吐出孔径0.3mm、孔深度1.0mm、孔数36孔の口金5から紡出した(図2参照)。このとき、口金下10cmの位置に吸引装置6を設置し、吸引速度25m/分にて昇華するモノマーおよびオリゴマーを取り除いた。紡出した糸条は冷却チムニー7により風速25m/分で冷却固化させた後、口金下2mに設置された給油装置9により給油した。紡糸油剤には、平滑剤として脂肪酸エステルを70重量%、その他の添加剤(乳化剤、制電剤、抗酸化剤および防錆剤)を30重量%の比率で調整し、さらにこの油剤を濃度15重量%になるように水エマルジョンとして調整し、繊維に対して6重量%付着した(純油分として0.9重量%付着)。
次に、0.1MPaにて交絡ノズル9により交絡を付与し、周速度4,000m/分、表面温度95℃の第1ホットロール11にて引き取り、続いて周速度5,600m/分、表面温度130℃の第2ホットロール12により延伸倍率1.4倍で延伸し、84dtex、36フィラメントの延伸糸を得た。なお、巻取は外径120mmの紙管に巻き巾110mmで巻き、常に糸条張力が0.07cN/dtexになるように制御した。また、第2ホットロールへの逆巻きを防止するために第2ホットロールと巻取機の間の随伴気流を整流板によって制御した。紡糸時の糸切れ、毛羽の発生はなく、安定して4kgの糸条パッケージを得ることができた。
得られた糸条パッケージの巻硬度および糸物性を表1に示す。糸条パッケージの巻硬度は59度であり、十分低いものであった。また、延伸糸の重量平均分子量は14.1万、強度は3.7cN/dtexであり、沸水収縮率は7%であり、収縮応力の最大値は0.10cN/dtexであり、トータルカルボキシル基末端濃度は5当量/tonであり、tanδピーク温度(Tmax)は84℃であった。該糸条パッケージの経時劣化後(3ヶ月後)の強度は3.6cN/dtexであり、強度低下はほとんどなかった。また、該経時劣化試験後の糸条パッケージを110℃の温度で60分間チーズ染色した後のパッケージの巻硬度は65度であり、重量平均分子量は13.0万であり、強度は3.4cN/dtexであり、沸水収縮率は3%であり、収縮応力の最大値は0.03cN/dtexであり、トータルカルボキシル基末端濃度は7当量/ton、Tmaxは80℃であり、実用上問題のないレベルであった。また、該染色後の糸条パッケージの経時劣化後(3ヶ月後)の強度は3.0cN/dtexであり、実用上問題のないレベルであった。
(実施例2、実施例3)
原料のポリ乳酸の重量平均分子量を変更したこと以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。重量平均分子量11万のポリ乳酸原料を用いた実施例2は染色後の強度が2.5cN/dtexとやや低いものであり、用途がかなり限定されるものであった。また、重量平均分子量19万のポリ乳酸原料を用いた実施例3は染色後も高い強度を示し、実施例1よりも優れた特性を示した。
(比較例1)
重量平均分子量11万のポリ乳酸原料を用い、2軸押出混練機2の溶融温度T1を240℃とし、スピンブロック温度T2を230℃にしたこと以外は、実施例2と同様に実施した。比較例1の糸条パッケージの重量平均分子量は9.5万であった。この糸条パッケージを実施例1と同様にしてチーズ染色した後の重量平均分子量は8万であり、強度は2.2cN/dtexであり、更に3ヶ月経過後の強度は1.5cN/dtexと極めて低いものであった。結果を表1に示す。
(比較例2)
第2ホットロール温度を90℃としたこと以外は、実施例1と同様にして糸条パッケージを得た。比較例2の沸水収縮率は13%、収縮応力は0.17cN/dtexであった。該糸条パッケージの染色前の強度は3.4cN/dtexと十分実用性のあるものであったが、チーズ染色後、更に3ヶ月経過させた後の強度は1.8cN/dtexまで低下してしまい、実用性の乏しいものであった。結果を表1に示す。
Figure 0004586390
(実施例4)
実施例3の製糸上がりの糸条パッケージを、フィードロール−ホットロール−コールドロールの3ロール系延伸機に掛け、150℃の温度のホットロールで定長熱処理した後、コールドロールにて糸条を冷却し、巻取張力0.05cN/dtexで巻き取った。得られた糸条パッケージの解除糸の強度は、実施例3と同様に十分実用性のあるものであった。また、チーズ染色後、更に3ヶ月経過させた後も3.5cN/dtexと強度低下がほとんどないものであった。結果を表2に示す。
(比較例3、比較例4)
巻取張力を0.2cN/dtexおよび0.3cN/dtexとして巻き取ったこと以外は、実施例1と同様にして糸条パッケージを得た。巻取張力を0.2cN/dtexで巻き取った比較例3は、製糸性と糸条の走行安定性は極めて優れていた。しかしながら、チーズ染色後、更に3ヶ月経過後は強度低下が激しく、強度は1.9cN/dtexと実用性に乏しいレベルであった。また、巻取張力を0.3cN/dtexとした比較例4は、比較例3よりもさらに染色後の経時劣化が激しく、チーズ染色後、更に3ヶ月経過後の強度は1.6cN/dtexと極めて低いものであった。結果を表2に示す。
(比較例5)
実施例1の製糸上がりの糸条パッケージを巻き返し機に掛け、巻取張力0.02cN/dtexで巻き取った。得られた糸条パッケージの強度は実施例1と同様に十分実用性のあるものであった。しかしながら、糸条パッケージの巻硬度が38度と低いため、チーズ染色での取り扱い時にパッケージが崩れ、チーズ染色品を得ることができなかった。結果を表2に示す。
Figure 0004586390
(実施例5)
実施例1の製糸上がりの糸条パッケージをフィードロール−ホットロール−コールドロールの3ロール系延伸機に掛け、ホットロール温度90℃、ホットロール−コールドロール間のストレッチ率10%、巻き取り張力0.08cN/dtexで巻き取った。得られた糸条パッケージの解除糸の強度は実施例1よりも更に高いものであったが、染色後、更に3ヶ月経過させた後の強度は2.5cN/dtexであり、実施例1よりも劣るものであった。結果を表3に示す。
(実施例6)
ポリカルボジイミド化合物「LA−1」を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして糸条パッケージを得た。実施例6の糸条パッケージは、実施例1と同様、十分な実用性を有する強度を示したが、染色後の強度は2.7cN/dtexと実施例1よりも劣るものであった。また、染色後、更に3ヶ月経過させた後の強度2.1cN/dtexであり、用途が限定される強度であった。結果を表3に示す。
(実施例7)
第2ホットロール11の周速度を5000m/分(延伸倍率1.25倍)としたこと以外は、実施例1と同様にして糸条パッケージを得た。得られた糸条パッケージは実施例1と比較してやや低強度、高伸度であるが、実用上問題のないレベルであった。該糸条パッケージをチーズ染色した後、更に3ヶ月経過させた後の強度は2.4cN/dtexであり、やや経時劣化しやすい特性を示すことがわかった。結果を表3に示す。
(実施例8)
紡糸油剤に平滑剤として重量平均分子量2,000のポリエーテルを70重量%、重量平均分子量6,000のポリエーテルを8重量%、エーテルエステルを12重量%、およびその他添加剤(制電剤、抗酸化剤および防錆剤)を10重量%として調整したものを使用し、さらに第1ホットロール11及び第2ホットロール12の周速度を4,000m/分と同速にし、それぞれのホットロール表面温度を非加熱(30±10℃)としたこと以外は、実施例1と同様にして糸条パッケージを得た。この糸条パッケージを図3に示す3軸ツイスター23(11枚構成、糸の供給方向から数えて第1、第2、第11番目をセラミックディスク、その他をウレタンディスクで構成)を備えた仮撚機を用いて加工速度500m/分、加工倍率1.45倍、第1ヒーター20温度130℃、D/Y比1.35で延伸仮撚し、引き続き第2ヒーター25温度120℃、OF率10%にて弛緩熱処理し、巻取張力0.04cN/dtexで巻き取り、嵩高糸条パッケージ29を得た。
得られた糸条パッケージの解舒糸の強度は2.9cN/dtexであり、実用上問題のないレベルであった。また、該チーズ状パッケージを染色した後、更に3ヶ月経過させた後の強度は2.1cN/dtexであり、用途の制約は受けるが、実用性のある強度であった。なお、得られた糸の捲縮特性を示す伸縮復元率(CR)は20%であり、90℃強度は0.5cN/dtexであり、未解撚数は0/10mであり、仮撚加工糸として十分実用に耐える捲縮特性であった。結果を表3に示す。
Figure 0004586390
本発明の先染め糸条パッケージは、タフタ、ツイルおよびサテン等の各種織物や、経編、丸編および横編等の編物に好適である。編物の組織としては、天竺、天竺かのこ、ゴム、パール、両面、ポンチローマおよびミラノリブ等が挙げられ、製品の目的に応じて適宜選定すればよい。また、本発明の先染め糸条は、セーター等の横編、アウターやインナー等の丸編・織物、レースや襟部用の付属品、製紐、モール糸、細幅テープ、アウターやカーシート等のパイル織編物、およびカーペット等に使用することができる。
図1は、本発明で実施する巻硬度測定の方法を説明するための側面図である。 図2は、本発明で好ましく用いられる紡糸、延伸装置を説明するための概略図である。 図3は、本発明で好ましく用いられる仮撚加工装置を説明するため概略図である。
符号の説明
1:ホッパー
2:2軸押出混練機
3:紡糸ブロック
4:紡糸パック
5:口金
6:吸引装置
7:冷却チムニー
8:糸条
9:給油装置
10:交絡装置
11:第1ホットロール
12:第2ホットロール
13:巻取機
14:巻取糸の糸条パッケージ
15:糸条
16〜18:糸道ガイド
19:供給ローラー
20:第1ヒーター
21:糸道ガイド
22:冷却板
23:施撚体
24:延伸ローラー
25:第2ヒーター
26:デリベリローラー
27、28:糸道ガイド
29:捲縮糸の糸条パッケージ

Claims (10)

  1. ポリ乳酸繊維から構成される原糸が巻き付けられてなるチーズ状パッケージであって、ポリ乳酸の重量平均分子量が100,000以上であり、該原糸の沸水収縮率が10%以下であり、巻硬度が40〜70度で巻かれていることを特徴とする糸条パッケージ。
  2. 原糸の収縮応力の最大値が0.01〜0.15cN/dtexであることを特徴とする請求項1記載の糸条パッケージ。
  3. 原糸のトータルカルボキシル基末端濃度が10当量/ton以下であることを特徴とする請求項1または2記載の糸条パッケージ。
  4. 原糸のtanδピーク温度が75℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の糸条パッケージ。
  5. ポリ乳酸繊維から構成される仮撚加工糸が巻き付けられてなるチーズ状パッケージであって、ポリ乳酸の重量平均分子量が100,000以上であり、該仮撚加工糸が下記の特性を有し、巻硬度が40〜70度で巻かれていることを特徴とする糸条パッケージ。
    沸水収縮率≦10%
    90℃強度≧0.3cN/dtex
    伸縮復元率(CR)≧10%
    未解撚数≦3個/10m
  6. 仮撚加工糸の収縮応力の最大値が0.01〜0.15cN/dtexであることを特徴とする請求項5記載の糸条パッケージ。
  7. 仮撚加工糸のトータルカルボキシル基末端濃度が10当量/ton以下であることを特徴とする請求項5または6記載の糸条パッケージ。
  8. 仮撚加工糸のtanδピーク温度が75℃以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の糸条パッケージ。
  9. ポリ乳酸繊維から構成される糸条が巻き付けられてなるチーズ状パッケージであって、該ポリ乳酸繊維が染色されており、該ポリ乳酸の重量平均分子量が100,000以上であり、該糸条の収縮応力の最大値が0.01〜0.10cN/dtexであり、巻硬度が40〜70度で巻かれていることを特徴とする先染め糸条パッケージ。
  10. チーズ状パッケージが、ポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントと、セルロース系繊維および/またはウール繊維とが混繊されて、巻硬度40〜70度で巻き付けられ、染色されてなるチーズ状パッケージであることを特徴とする請求項記載の先染め糸条パッケージ。
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