JP2002260965A - 固体電解コンデンサの製造方法及び固体電解コンデンサ - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法及び固体電解コンデンサ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡便な製造工程で、良好な特性を有する固体
電解コンデンサを得ることができる固体電解コンデンサ
の製造方法を提供する。 【解決手段】 陽極箔を陰極箔及びセパレータと共に巻
回してコンデンサ素子を形成する。一方、所定の容器に
重合性モノマーと酸化剤と所定の溶媒とを入れて混合
し、その直後に、コンデンサ素子をこの混合液に浸漬
し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発
生させ、固体電解質層を形成する。そして、このコンデ
ンサ素子を外装ケースに挿入し、固体電解コンデンサを
完成する。この場合、所定の溶媒に対する酸化剤の濃度
を40〜55wt%とする、重合性モノマーと酸化剤の
重量比を1:0.9〜1:2.2の範囲内とする、ある
いは上記の混合液に所定の重合促進剤を添加するという
処理の少なくともいずれかを行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体電解コンデン
サの製造方法及び固体電解コンデンサに係り、特に、コ
ンデンサ素子にモノマー溶液と酸化剤溶液を含浸する際
の方法及び条件に改良を施した固体電解コンデンサの製
造方法及び固体電解コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】タンタルあるいはアルミニウム等のよう
な弁作用を有する金属を利用した電解コンデンサは、陽
極側対向電極としての弁作用金属を焼結体あるいはエッ
チング箔等の形状にして誘電体を拡面化することによ
り、小型で大きな容量を得ることができることから、広
く一般に用いられている。特に、電解質に固体電解質を
用いた固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直
列抵抗であることに加えて、チップ化しやすく、表面実
装に適している等の特質を備えていることから、電子機
器の小型化、高機能化、低コスト化に欠かせないものと
なっている。
【0003】この種の固体電解コンデンサにおいて、小
型、大容量用途としては、一般に、アルミニウム等の弁
作用金属からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介在さ
せて巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ
素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等の金属製
ケースや合成樹脂製のケースにコンデンサ素子を収納
し、密閉した構造を有している。なお、陽極材料として
は、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタ
ン等が使用され、陰極材料には、陽極材料と同種の金属
が用いられる。
【0004】また、固体電解コンデンサに用いられる固
体電解質としては、二酸化マンガンや7、7、8、8−
テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られて
いるが、近年、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸
化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオ
フェン(以下、PEDTと記す)等の導電性ポリマーに
着目した技術(特開平2−15611号公報)が存在し
ている。
【0005】このような巻回型のコンデンサ素子にPE
DT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成す
るタイプの固体電解コンデンサは、以下のようにして作
製される。まず、アルミニウム等の弁作用金属からなる
陽極箔の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチ
ング処理により粗面化して、多数のエッチングピットを
形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を
印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成する(化成)。
陽極箔と同様に、陰極箔もアルミニウム等の弁作用金属
からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみで
ある。
【0006】このようにして表面に酸化皮膜層が形成さ
れた陽極箔とエッチングピットのみが形成された陰極箔
とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形
成する。続いて、修復化成を施したコンデンサ素子に、
3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、EDTと
記す)等の重合性モノマーと酸化剤溶液をそれぞれ吐出
して、コンデンサ素子内でEDT等の重合性モノマーの
重合反応を促進し、PEDT等の導電性ポリマーからな
る固体電解質層を生成する。
【0007】この後、コンデンサ素子を外装ケースに挿
入し、外装ケース内にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を
付着して熱硬化させることによって、コンデンサ素子の
外周に外装樹脂を被覆し(樹脂封止)、固体電解コンデ
ンサを完成する。なお、このように樹脂封止を行うと、
酸化皮膜層が損傷して漏れ電流特性が低下するため、樹
脂封止後に、コンデンサ定格電圧に応じた電圧を印加し
て高温のエージングを行うことにより酸化皮膜層を修復
し、特性の向上を図っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような製造方法では、コンデンサ素子にEDT等の重合
性モノマーを吐出→乾燥→酸化剤を吐出→重合という工
程が必要となり、工程が煩雑なものとなるため、EDT
溶液等の重合性モノマー溶液と酸化剤溶液を予め混合し
て含浸させる方法が用いられているが、特性が十分なも
のではないという問題点があった。
【0009】本発明は、上述したような従来技術の問題
点を解決するために提案されたものであり、その目的
は、簡便な製造工程で、良好な特性を有する固体電解コ
ンデンサを得ることができる固体電解コンデンサの製造
方法及び固体電解コンデンサを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決すべく、簡便な製造工程で、良好な特性を有する
固体電解コンデンサを得ることができる固体電解コンデ
ンサの製造方法について鋭意検討を重ねた結果、本発明
を完成するに至ったものである。すなわち、本出願人が
別途特許出願したように、一定量の重合性モノマーと一
定量の酸化剤を所定の溶媒と共に混合すると、この混合
の過程で、モノマーと酸化剤が接触して重合も進行す
る、言い換えれば、モノマーと酸化剤の混合が進みなが
らも、2つのモノマーが重合して二量体を形成し、さら
に三量体となり、さらなる重合が進行するという状況に
なる。そして、混合液中のモノマーの二量化が5%以上
進行した時点で、この混合液をコンデンサ素子に含浸す
ると良好な特性が得られるとの知見に基づき、このよう
な混合状態が得られる各種の条件、具体的には、酸化剤
の溶媒に対する濃度、重合性モノマーと酸化剤の重量
比、あるいは添加剤の効果について検討を行ったもので
ある。以下、本発明について詳述する。
【0011】(固体電解コンデンサの製造方法)陽極箔
を陰極箔及びセパレータと共に巻回してコンデンサ素子
を形成する。一方、所定の容器に重合性モノマーと酸化
剤と所定の溶媒とを入れて混合し、その直後に、コンデ
ンサ素子をこの混合液に浸漬し、コンデンサ素子内で導
電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形
成する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに挿
入し、固体電解コンデンサを完成する。この場合、所定
の溶媒に対する酸化剤の濃度を40〜55wt%とす
る、重合性モノマーと酸化剤の重量比を1:0.9〜
1:2.2の範囲内とする、あるいは上記の混合液に所
定の重合促進剤を添加するという処理の少なくともいず
れかを行う。
【0012】(酸化剤及びその濃度)酸化剤としては、
ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、
過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることがで
きる。この場合、酸化剤の溶媒に対する濃度は40〜5
5wt%が好ましく、45〜53wt%がより好まし
い。この範囲未満ではESRが上昇し、この範囲を超え
ると混合液の含浸性が低下して、静電容量等の初期特性
が低下する。
【0013】酸化剤の溶媒に対する濃度を上記の範囲に
規定した理由は、以下の通りである。すなわち、本発明
においては、モノマーと酸化剤を混合するが、これらを
混合する過程で、モノマーと酸化剤が接触して重合も進
行し、粘度も上昇していく。しかし、コンデンサ素子に
この混合液を含浸する時点では、両者の混合は進行して
いるが、重合はあまり進んでいないという状態が好まし
い。
【0014】このような知見に基づいて、本発明者等
は、酸化剤の濃度を種々変えて検討したところ、酸化剤
の溶媒に対する濃度が55wt%以下である場合に良好
な結果が得られたものである。すなわち、酸化剤の濃度
が少ないと、混合液の粘度が低いので混合しやすく、さ
らに重合の進行が少ないので粘度もそれほど上昇せず、
混合が進んで粘度が上がっていないという状態が得ら
れ、この状態でコンデンサ素子に含浸すると良好な混合
液の含浸状態が得られることが分かった。一方、酸化剤
の溶媒に対する濃度が40%未満であると、モノマーを
重合する酸化剤が十分ではなくなり、形成される導電性
ポリマーの量が低下してESRが上昇することが分かっ
た。
【0015】(重合性モノマー)本発明に用いられる重
合性モノマーとしては、所定の酸化剤と混合することに
よって緩やかな重合反応を行って導電性ポリマーを形成
するものが好ましく、以下に述べるEDTの他に、下記
の構造式で表されるチオフェン誘導体を用いることがで
きる。従って、急速に重合反応が進行するピロール等は
好ましくない。
【化1】
【0016】(EDT)重合性モノマーとしてEDTを
用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとして
は、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと
揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノ
マー溶液を用いることもできる。前記揮発性溶媒として
は、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等の
エーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等の
ケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリ
ル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかで
も、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
【0017】(重合性モノマーと酸化剤の混合比)重合
性モノマーと酸化剤(溶媒を含まず)の混合比は、重量
比で1:0.9〜1:2.2の範囲が好適であり、1:
1.3〜1:2.0の範囲がより好適である。この範囲
外ではESRが上昇する。その理由は、以下の通りであ
ると考えられる。すなわち、モノマーに対する酸化剤の
量が多過ぎると、相対的に含浸されるモノマーの量が低
下するので、形成される導電性ポリマーの量が低下して
ESRが上昇する。一方、酸化剤の量が少なすぎると、
モノマーを重合するのに必要な酸化剤が不足して、形成
される導電性ポリマーの量が低下してESRが上昇す
る。
【0018】(重合促進剤の添加)また、混合液に重合
促進剤を添加すると、重合度が上がるためと考えられる
が、コンデンサの特性が向上し、さらに、耐熱特性が向
上する。なお、重合促進剤の添加量は、混合液中0.5
〜3wt%であることが好ましい。この重合促進剤とし
ては、メチルアミン、エチルアミン等のモノアミン、ト
リエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタ
ノールアミン、ポリアミン等のアミン類、硫酸第一鉄、
ベンゾイル鉄等の鉄塩、N,N−ジメチルアニリン、テ
トラヒドロキノリン等を挙げることができるが、これら
の中でもトリエチルアミン、メチルジエタノールアミン
が好適である。
【0019】なお、これらの重合促進剤の効果は、モノ
マーと酸化剤をコンデンサ素子に含浸して重合させる場
合に得ることができるが、重合促進剤を添加した混合液
を含浸する場合の方が、モノマー乃至酸化剤に重合促進
剤を添加して、これらを別々に含浸する場合に比べて、
重合促進剤が混合液に均一に混合した状態になるので好
適である。
【0020】(含浸方法)本発明に係る混合液をコンデ
ンサ素子に含浸する方法としては、混合液にコンデンサ
素子を浸漬する方法、混合液を吐出法等によってコンデ
ンサ素子に注入する方法等を用いることができるが、工
程的には浸漬法が簡便で好ましい。この場合、所定の容
器に一定量のモノマーと一定量の酸化剤を所定の溶媒と
共に注入し、その後に混合して、この容器にコンデンサ
素子を浸漬して含浸する方法が、容器内では混合が良好
に進行し、工程的に簡便であるためより好ましい。
【0021】(容器の形状)浸漬法に用いる容器の形状
は特に限定されないが、底面及び開口部の面積はコンデ
ンサ素子の底面積の1.05〜1.35倍が望ましく、
1.1〜1.25倍がより望ましい。この範囲未満では
コンデンサ素子を浸漬した際に、混合液の浸透状態が好
ましくなく、この範囲を越えると混合液の振動、混合が
良好に進行しないからである。
【0022】(容器に注入する混合液の量)容器に注入
する混合液の量は、モノマー、酸化剤の総量がコンデン
サ素子の空隙容積(コンデンサ素子内の空間部の容積)
の0.4倍以上であることが望ましく、0.6倍以上で
あることがより望ましい。この範囲未満では、混合液が
不十分であり、十分な量のポリマーを形成することがで
きないからである。
【0023】なお、混合液の注入については、モノマー
と酸化剤溶液を注入する方法が好適である。すなわち、
予め酸化剤と溶媒を混合して酸化剤溶液を作成し、この
酸化剤溶液とモノマーを注入する。この方法によって
も、本発明の方法によって均一に混合することができ
る。さらに、モノマーと酸化剤の注入順序は、注入量の
少ないモノマーを先に注入することが望ましい。
【0024】(混合方法)重合性モノマーと酸化剤を所
定の溶媒と共に混合する方法としては、振動、撹拌、超
音波等を用いることができるが、なかでも、工程的には
振動を用いるのが簡便で好ましい。振動は横振動、縦振
動、斜め振動、さらには円運動、楕円運動やこれらの混
じった振動を用いることができ、これらの振動によって
混合を促進させることができる。さらに、重合性モノマ
ーと酸化剤を容器内に注入する工程においても振動を加
えると、この工程でも混合が進行するので好適である。
【0025】振動は、リニアフィーダー方式、モーター
方式、超音波振動等、振動を与えることができるもので
あればその方式は問わないが、均一な振動を与えること
ができるモーター方式等が好適である。また、振動する
工程における温度は5〜35℃が好ましく、15〜30
℃がより好ましい。5℃未満では混合液が良好に混合せ
ず、35℃を越えると振動中に重合が進行して、良好な
状態で混合液をコンデンサ素子に含浸することができな
いからである。
【0026】さらに、振動の振幅は0.1mm以上であ
ることが好適である。この振幅未満では混合があまり進
行せず、その間に重合が進行して粘度が上昇し、良好な
状態で混合液を含浸することができなくなるからであ
る。また、振動時間は1秒〜1分が好適であり、5〜1
5秒がより好適である。振動時間が短すぎると、混合が
不十分なために良好な混合液が含浸されず、コンデンサ
の特性が低下し、振動時間が長すぎると、重合が進みす
ぎて混合液の粘度が上昇し、含浸性が低下するからであ
る。
【0027】なお、混合時に振動を加える場合の条件
は、容器中の混合液の液量、振動の周波数、振幅の大き
さ、振動時間等によって異なる。例えば、150mgの
混合液に対しては、振動の周波数が50Hz、振幅が4
mmの場合、振動時間は10秒が望ましい。
【0028】(浸漬時間)コンデンサ素子を混合液に浸
漬する時間は、コンデンサ素子の大きさによって決まる
が、φ5×2L程度のコンデンサ素子では5秒以上、φ
8×4L程度のコンデンサ素子では10秒以上が望まし
く、最低でも5秒間は浸漬することが必要である。な
お、長時間浸漬しても特性上の弊害はない。
【0029】(減圧)含浸する工程で減圧すると、含浸
される混合液の量が増大し、コンデンサ素子内で形成さ
れる導電性ポリマーの量が増大することによるものと思
われるが、ESR特性が向上するので好適である。減圧
する方法は、第一にコンデンサ素子を減圧下に保持した
後に混合液に含浸する方法、第二にコンデンサ素子を混
合液に含浸した状態で減圧する方法、第三にコンデンサ
素子を混合液に含浸した後にコンデンサ素子を混合液か
ら引き上げて減圧状態で保持する方法があるが、これら
の中でも第三の方法が簡便で好ましい。
【0030】また、減圧の程度は、10〜360mmH
g程度の減圧状態とすることが望ましい。その理由は、
揮発性溶媒の残留量が少なくなるため、コンデンサ素子
内部でのポリマーの密度が高くなり、熱安定性等の特性
の向上を図ることができるからである。また、電極箔の
ピット内部にも混合液が入りやすくなるため、静電容量
のアップを図ることができるからである。
【0031】(修復化成の化成液)修復化成の化成液と
しては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アン
モニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等
のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジ
ピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、
リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。ま
た、浸漬時間は、5〜120分が望ましい。
【0032】(作用・効果)上記のように、重合性モノ
マーと酸化剤の混合液をコンデンサ素子に含浸する場合
に、酸化剤の溶媒に対する濃度を40〜55wt%とす
ることにより、重合性モノマーと酸化剤を所定の溶媒と
混合した直後において、重合性モノマーと酸化剤の混合
は進行しているが、重合はあまり進んでいないという状
態が得られ、混合液をコンデンサ素子に含浸するのに最
適な状態とすることができる。そのため、上記のような
本発明の製造方法によれば、重合性モノマーと酸化剤と
溶媒を混合した混合液を、含浸に最も適した状態でコン
デンサ素子に含浸することができるので、良好な特性を
有する固体電解コンデンサを得ることができる。
【0033】また、重合性モノマーと酸化剤の混合液を
コンデンサ素子に含浸する場合に、重合性モノマーと酸
化剤の重量比を1:0.9〜1:2.2の範囲とするこ
とにより、重合性モノマーに対する酸化剤の量を適正な
量とすることができ、混合液をコンデンサ素子に含浸す
るのに最適な状態とすることができる。そのため、上記
のような本発明の製造方法によれば、重合性モノマーと
酸化剤と溶媒を混合した混合液を、含浸に最も適した状
態でコンデンサ素子に含浸することができるので、導電
性ポリマーの形成量を増大させることができ、良好な特
性を有する固体電解コンデンサを得ることができる。
【0034】さらに、重合性モノマーと酸化剤の混合液
をコンデンサ素子に含浸する場合に、混合液に重合促進
剤を添加することにより、重合度を上げることができる
ため、コンデンサの特性が向上し、さらに、耐熱特性が
向上する。また、本発明の製造方法によれば、コンデン
サ素子を混合液に浸漬するので、コンデンサ素子が大き
くなっても、コンデンサ素子の外表面の全体から混合液
を浸透させることができるので、均一な浸透が可能にな
る。
【0035】
【実施例】続いて、以下のようにして製造した実施例及
び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。な
お、本発明に係る実施例1〜実施例4は、重合性モノマ
ーとしてEDT、酸化剤溶液としてパラトルエンスルホ
ン酸第二鉄のブタノール溶液を用い、実施例1及び実施
例3は、所定の容器に、EDTと本発明の範囲内の濃度
に調製したp−トルエンスルホン酸第二鉄のブタノール
溶液を注入したものであり、実施例4は、さらに重合促
進剤としてトリエチルアミンを添加したものである。ま
た、実施例2は、所定の容器に、EDTと本発明の範囲
外の濃度に調製したp−トルエンスルホン酸第二鉄のブ
タノール溶液を、本発明の範囲内の重量比で注入したも
のである。また、実施例5〜実施例10は重合性モノマ
ーとしてそれぞれ下記の構造式のものを用いてコンデン
サ素子を形成したものである。
【0036】また、比較例1は、所定の容器に、EDT
と本発明の範囲外の濃度に調製したp−トルエンスルホ
ン酸第二鉄のブタノール溶液を注入したものであり、比
較例2は、混合液としてピロールと過硫酸アンモニウム
を用い、これらを容器内に注入した後、振動を加えなか
ったものである。また、比較例3及び比較例4は、それ
ぞれ実施例5〜7及び実施例8〜10と同じ重合性モノ
マーを用い、この重合性モノマーとp−トルエンスルホ
ン酸第二鉄のブタノール溶液の混合比が1:0.5とな
るように注入したものである。
【0037】(実施例1)表面に酸化皮膜層が形成され
た陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し、両電極
箔をセパレータを介して巻回して、素子形状が8φ×4
Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデン
サ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸
漬して、修復化成を行った。一方、カップ状の容器に、
EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタ
ノール溶液を、その重量比が1:0.8となるように注
入し、常温で横2mm、縦1.5mmの振動を10秒間
与えた。その後、コンデンサ素子を上記混合液に10秒
間浸漬し、100℃、1時間加熱して、コンデンサ素子
内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形
成した。そして、このコンデンサ素子を有底筒状のアル
ミニウムケースに挿入し、開口部を絞り加工によってゴ
ム封口してエージングを行い、固体電解コンデンサを形
成した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は4
WV、定格容量は820μFである。
【0038】(実施例2)カップ状の容器に、EDTと
35%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶
液を、その混合比が1:1.3となるように注入した。
その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。 (実施例3)カップ状の容器に、EDTと45%のパラ
トルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混
合比が1:1.3となるように注入した。その他の条件
及び工程は、実施例1と同様である。 (実施例4)カップ状の容器に、EDTと45%のパラ
トルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混
合比が1:1.3となるように注入し、さらに重合促進
剤としてトリエチルアミンを4.9g添加したものであ
る。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
【0039】(比較例1)カップ状の容器に、EDTと
35%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶
液を、その混合比が1:0.5となるように注入した。
その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
【0040】(比較例2)表面に酸化皮膜層が形成され
た陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し、両電極
箔をセパレータを介して巻回して、素子形状が8φ×4
Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデン
サ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸
漬して、修復化成を行った。また、混合液として、ピロ
ールと過硫酸アンモニウムを用い、これらをカップ状の
容器に注入した後、振動を加えずに混合し、この混合液
中に上記のコンデンサ素子を浸漬し、常温放置して、ポ
リピロールからなる固体電解質層を形成した。その後、
コンデンサ素子の表面を樹脂で被覆した後、有底筒状の
アルミニウムケースに挿入し、開口部を絞り加工によっ
てゴム封口して、エージングを行い、固体電解コンデン
サを形成した。
【0041】(実施例5)重合性モノマーとして下記の
構造式のものを用い、カップ状の容器に、この重合性モ
ノマーと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタ
ノール溶液を、その混合比が1:0.8となるように注
入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様であ
る。
【化2】
【0042】(実施例6)カップ状の容器に、実施例5
と同様の重合性モノマーと35%のパラトルエンスルホ
ン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:1.
3となるように注入した。その他の条件及び工程は、実
施例1と同様である。 (実施例7)カップ状の容器に、実施例5と同様の重合
性モノマーと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄の
ブタノール溶液を、その混合比が1:1.3となるよう
に注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様
である。
【0043】(比較例3)実施例5〜7と同様の重合性
モノマーを用い、カップ状の容器に、この重合性モノマ
ーと35%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノー
ル溶液を、その混合比が1:0.5となるように注入し
た。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
【0044】(実施例8)重合性モノマーとして下記の
構造式のものを用い、カップ状の容器に、この重合性モ
ノマーと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタ
ノール溶液を、その混合比が1:0.8となるように注
入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様であ
る。
【化3】
【0045】(実施例9)カップ状の容器に、実施例8
と同様の重合性モノマーと35%のパラトルエンスルホ
ン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:1.
3となるように注入した。その他の条件及び工程は、実
施例1と同様である。 (実施例10)カップ状の容器に、実施例8と同様の重
合性モノマーと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄
のブタノール溶液を、その混合比が1:1.3となるよ
うに注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同
様である。
【0046】(比較例4)実施例8〜10と同様の重合
性モノマーを用い、カップ状の容器に、この重合性モノ
マーと35%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノ
ール溶液を、その混合比が1:0.5となるように注入
した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様であ
る。
【0047】[比較結果]上記の方法により得られた実
施例1〜10及び比較例1〜4の各固体電解コンデンサ
について、電気的特性を調べたところ、表1に示したよ
うな結果が得られた。
【表1】
【0048】表1から明らかなように、本発明に係る実
施例1〜4の固体電解コンデンサの特性はいずれも良好
であった。特に、酸化剤の濃度及びEDTと酸化剤の比
が共に本発明の範囲内で、さらに重合促進剤を添加した
実施例4においては、より優れた特性が得られた。
【0049】一方、酸化剤の濃度及びEDTと酸化剤の
比が共に本発明の範囲外である比較例1では、実施例1
〜4と比べて特性は大幅に低下した。また、ピロールを
用いた比較例2では満足な特性が得られなかった。これ
は、モノマーと酸化剤を注入した時点で急速に重合が始
まり、十分な量の混合液がコンデンサ素子に含浸されな
かったためと考えられる。なお、比較例2において、振
動を加えた場合、特性はさらに低下した。
【0050】また、重合性モノマーとして他のチオフェ
ン誘導体を用いた実施例5〜10及び比較例3,4につ
いても同様の結果が得られた。すなわち、本発明に係る
実施例5〜7の固体電解コンデンサの特性はいずれも良
好であった。特に、酸化剤の濃度及び重合性モノマーと
酸化剤の比が共に本発明の範囲内である実施例7におい
ては、より優れた特性が得られた。一方、酸化剤の濃度
及び重合性モノマーと酸化剤の比が共に本発明の範囲外
である比較例3では、実施例5〜7と比べて特性は大幅
に低下した。
【0051】また、本発明に係る実施例8〜10の固体
電解コンデンサの特性はいずれも良好であった。特に、
酸化剤の濃度及び重合性モノマーと酸化剤の比が共に本
発明の範囲内である実施例10においては、より優れた
特性が得られた。一方、酸化剤の濃度及び重合性モノマ
ーと酸化剤の比が共に本発明の範囲外である比較例4で
は、実施例8〜10と比べて特性は大幅に低下した。
【0052】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、簡
便な製造工程で、良好な特性を有する固体電解コンデン
サを得ることができる固体電解コンデンサの製造方法及
び固体電解コンデンサを提供することができる。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータ
    を介して巻回したコンデンサ素子に、緩やかな重合反応
    を示す重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリ
    マーからなる固体電解質層を形成してなる固体電解コン
    デンサの製造方法において、 重合性モノマーと酸化剤を所定の溶媒と共に混合する際
    に、前記酸化剤の溶媒に対する濃度を40〜55wt%
    とし、これらを混合した直後に、前記コンデンサ素子に
    この混合液を含浸して固体電解質層を形成することを特
    徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 【請求項2】 陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータ
    を介して巻回したコンデンサ素子に、緩やかな重合反応
    を示す重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリ
    マーからなる固体電解質層を形成してなる固体電解コン
    デンサの製造方法において、 重合性モノマーと酸化剤を所定の溶媒と共に混合する際
    に、前記重合性モノマーと酸化剤の重量比を1:0.9
    〜1:2.2とし、これらを混合した直後に、前記コン
    デンサ素子にこの混合液を含浸して固体電解質層を形成
    することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 【請求項3】 陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータ
    を介して巻回したコンデンサ素子に、緩やかな重合反応
    を示す重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリ
    マーからなる固体電解質層を形成してなる固体電解コン
    デンサの製造方法において、 重合性モノマーと酸化剤を所定の溶媒と共に混合する際
    に、所定の重合促進剤を添加したことを特徴とする固体
    電解コンデンサの製造方法。
  4. 【請求項4】 陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータ
    を介して巻回したコンデンサ素子に、緩やかな重合反応
    を示す重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリ
    マーからなる固体電解質層を形成してなる固体電解コン
    デンサの製造方法において、 重合性モノマーと酸化剤を所定の溶媒と共に混合する際
    に、前記酸化剤の溶媒に対する濃度を40〜55wt%
    とすると共に、前記重合性モノマーと酸化剤の重量比を
    1:0.9〜1:2.2とし、さらに所定の重合促進剤
    を添加し、これらを混合した直後に、前記コンデンサ素
    子にこの混合液を含浸して固体電解質層を形成すること
    を特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記重合促進剤が、トリエチルアミン及
    び/又はメチルジエタノールであることを特徴とする請
    求項3又は請求項4に記載の固体電解コンデンサの製造
    方法。
  6. 【請求項6】 前記コンデンサ素子に前記混合液を含浸
    する方法が、前記混合液にコンデンサ素子を浸漬する方
    法であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいず
    れか一に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記コンデンサ素子に前記混合液を含浸
    する工程において、減圧状態とすることを特徴とする請
    求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の固体電解コン
    デンサの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記重合性モノマーが、チオフェン又は
    その誘導体であることを特徴とする請求項1乃至請求項
    7のいずれか一に記載の固体電解コンデンサの製造方
    法。
  9. 【請求項9】 前記チオフェン誘導体が、3,4−エチ
    レンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項
    8に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1乃至請求項9のいずれか一に
    記載の固体電解コンデンサの製造方法によって形成した
    ことを特徴とする固体電解コンデンサ。
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