JP4442285B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Description
なお、このような問題点は、重合性モノマーとしてEDTを用いた場合に限らず、他のチオフェン誘導体、ピロール、アニリン等を用いた場合にも同様に生じていた。
すなわち、本発明者は、陽極箔の酸化皮膜層と導電性ポリマー層との間に金属の腐食物が存在することを見出し、この金属の腐食物の存在が、固体電解コンデンサの容量出現率を低下させている要因であることを見出した。特に、陽極箔の化成電圧が低いものほど、この容量出現率は低くなることがわかった。
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法は以下の通りである。すなわち、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔を、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に修復化成を施す。続いて、このコンデンサ素子に、濃度を5wt%以下に調製した導電性ポリアニリン溶液を含浸し、陽極箔に電圧印加した後(あるいは、電圧印加しながら)、溶媒を除去して、コンデンサ素子内で導電性ポリアニリンフィルムを形成する。
その後、重合性モノマーと酸化剤を含浸して、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。その後、このコンデンサ素子を外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した後、エージングを行い、固体電解コンデンサを形成する。
本発明は、コンデンサ素子として、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン等の弁作用金属からなる電極箔とセパレータを介して巻回した巻回素子を用いた固体電解コンデンサ、アルミニウム電極箔単板からなる素子を用いた固体電解コンデンサ、タンタル、ニオブの焼結体からなる素子を用いた固体電解コンデンサに適用することができる。
導電性ポリアニリン溶液の溶媒は、パラキシレンまたは水が好ましい。また、濃度は5wt%以下とすることが好ましい。濃度が10%を超えると均一なポリアニリンフィルムが形成できないからである。
上記のようにして形成したコンデンサ素子に導電性ポリアニリン溶液を含浸する方法としては、以下の2つの方法がある。
第1の方法は、所定の濃度に調製した導電性ポリアニリン溶液を所定の容器に入れ、この溶液中にコンデンサ素子を浸漬し、浸漬した状態で、陽極リードを介して陽極箔に電圧を印加する方法である。なお、この場合、陰極は陰極リード、または容器内に新たに設けた陰極端子板に接続する。電極箔単板からなる素子や焼結体からなる素子等、素子の状態で陰極リードを有しない場合は、前記陰極端子板を用いる。
また、第2の方法は、所定の濃度に調製した導電性ポリアニリン溶液を、ノズル等を用いて直接コンデンサ素子に注入して含浸し、その後、陽極リードを介して陽極箔に電圧を印加する方法である。なお、この場合、陰極は陰極リードに接続する。
また、予め低めの電圧で化成された陽極箔を用い、導電性ポリアニリン溶液中にて陽極箔の化成電圧より高い電圧を印加して、所望の酸化皮膜の厚みになるように陽極箔の化成を実施することもできる。
コンデンサ素子に導電性ポリアニリン溶液を含浸した後、導電性ポリアニリン溶液の溶媒を除去する方法としては、陽極箔に電圧を印加した後、または電圧を印加しながら、コンデンサ素子を容器内に浸漬した状態で、恒温槽中などにおいて加熱処理して溶媒を除去する方法を用いることができる。
なお、上記「(4)導電性ポリアニリン溶液の含浸方法」の項で示した第2の方法は、加熱処理を行いやすいため、より好ましい。
重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDT溶液としては、その濃度が25〜32wt%となるようにEDTを揮発性溶媒に溶解させたものを用いることが好ましい。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
酸化剤としては、エタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができ、酸化剤の溶媒に対する濃度は45〜55wt%が好ましく、50〜55wt%がより好ましい。酸化剤の溶媒に対する濃度が高い程、ESRは低減する。なお、酸化剤の溶媒としては、上記モノマー溶液に用いた揮発性溶媒を用いることができ、なかでもエタノールが好適である。酸化剤の溶媒としてエタノールが好適であるのは、蒸気圧が低いため蒸発しやすく、残存する量が少ないためであると考えられる。
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、浸漬時間は、5〜120分が望ましい。
本発明に用いられる重合性モノマーとしては、上記EDTの他に、EDT以外のチオフェン誘導体、アニリン、ピロール、フラン、アセチレンまたはそれらの誘導体であって、所定の酸化剤により酸化重合され、導電性ポリマーを形成するものであれば適用することができる。なお、チオフェン誘導体としては、下記の構造式のものを用いることができる。
本発明は、以下に述べるような種々の構成要素を含んだ固体電解コンデンサに適用することができる。
(a)陰極箔の表面に、化成電圧が10V以下の化成皮膜を形成したエッチング箔又はプレーン箔を用いたもの。
(b)陰極箔の表面に、金属窒化物からなる皮膜を形成したエッチング箔又はプレーン箔を用いたもの。
(c)陰極箔の表面に化成皮膜を形成し、さらにその上に金属窒化物からなる皮膜を形成したエッチング箔又はプレーン箔を用いたもの。
(e)陰極箔の表面に化成皮膜を形成し、さらにその上に酸化することの少ない導電性材料からなる皮膜を形成したエッチング箔又はプレーン箔を用いたもの。
(g)陰極箔として弁金属導体材料からなるプレーン箔を用い、その表面に金属窒化物又は金属からなる皮膜を形成したもの。
(i)陰極箔として表面に金属炭化物からなる皮膜を形成したプレーン箔を用いたもの。
(j)陰極箔として表面に化成皮膜を形成し、さらにその上に金属炭化物からなる皮膜を形成したエッチング箔、または表面に化成皮膜を形成し、さらにその上に金属炭化物からなる皮膜を形成したプレーン箔を用いたもの。
(l)陰極箔として表面に金属炭窒化物からなる皮膜を形成したプレーン箔を用いたもの。
(m)陰極箔として表面に化成皮膜を形成し、さらにその上に金属炭窒化物からなる皮膜を形成したエッチング箔、または表面に化成皮膜を形成し、さらにその上に金属炭窒化物からなる皮膜を形成したプレーン箔を用いたもの。
(o)陰極箔として表面にカーボンからなる皮膜を形成したプレーン箔を用いたもの。
(p)陰極箔として表面に化成皮膜を形成し、さらにその上にカーボンからなる皮膜を形成したエッチング箔、または表面に化成皮膜を形成し、さらにその上にカーボンからなる皮膜を形成したプレーン箔を用いたもの。
(r)陰極箔として表面にインジウム酸化スズからなる皮膜を形成したプレーン箔を用いたもの。
(s)陰極箔として表面に化成皮膜を形成し、さらにその上にインジウム酸化スズからなる皮膜を形成したエッチング箔、または表面に化成皮膜を形成し、さらにその上にインジウム酸化スズからなる皮膜を形成したプレーン箔を用いたもの。
(a)コンデンサ素子内にビニル基を有する化合物を存在させたもの。
(b)セパレータとして、ビニル基を有する化合物をバインダーとして20wt%以上、40wt%以下含むセパレータを用いたもの。
(c)セパレータのバインダーがビニル基を有する化合物から構成され、修復化成前におけるセパレータ中のバインダーの含有量を、温水に浸漬することにより、セパレータの全重量に対して10〜20%としたもの。
(e)セパレータとして、ビニル基を有する化合物をバインダーとして10wt%以上含むセパレータを用い、重合性モノマーと酸化剤を含浸する前に、アセチレンジオール、ジメチルラウリルアミンオキサイドから選ばれる1種または2種をコンデンサ素子内に含有させたもの。
(f)セパレータとして、ビニル基を有する化合物をバインダーとしたセパレータを用い、コンデンサ素子を修復化成した後、150℃以上175℃未満で5〜300分熱処理し、その後に重合性モノマーと酸化剤とを含浸したもの。
(a)コンデンサ素子内に、ホウ酸又はその塩、マンニット、リン酸二水素アンモニウムから選択された一種又は二種以上の添加剤を存在させたもの。
(b)セパレータとしてビニロンからなるセパレータを用い、コンデンサ素子内に、ホウ酸又はその塩、マンニット、リン酸二水素アンモニウムから選択された一種又は二種以上の添加剤を存在させ、130〜200℃で少なくとも30分間熱処理したもの。
(c)コンデンサ素子内に、ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物とからなる結合体を含有させたもの。
(d)セパレータにビニル基を有する化合物を含有させ、コンデンサ素子内に、ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物とからなる結合体を含有させたもの。
(a)セパレータにビニル基を有する化合物を含有させ、このセパレータを用いて巻回したコンデンサ素子を、ポリイミドシリコーン溶液に浸漬して、酸化皮膜の表面にビニル基を有する化合物とポリイミドシリコーンからなる皮膜を形成したもの。
(b)セパレータにビニル基を有する化合物を含有させ、このセパレータを用いて巻回したコンデンサ素子を、ポリイミドシリコーン溶液に浸漬して、酸化皮膜の表面にビニル基を有する化合物とさらにその上に形成されたポリイミドシリコーンの2層からなる皮膜を形成したもの。
(d)コンデンサ素子をポリイミドシリコーン溶液に浸漬した後、そのコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤のモル比を、酸化剤を1とした場合に4:1〜10:1とした重合液を含浸させたもの。
(f)セパレータとして、その表面にポリイミドシリコーンを付着させたセパレータを用い、このセパレータを陽極箔及び陰極箔と共に巻回したコンデンサ素子を修復化成した後、ポリイミドシリコーンの可溶性溶剤に浸漬したもの。
(g)陽極箔及び陰極箔の少なくとも一方の表面に、ポリイミドシリコーン皮膜が形成されているもの。
陽極箔として、定格電圧に対して所定の割合で高く設定された耐過電圧以下の耐電圧を有する陽極箔を用いたもの。
(a)含浸する重合性モノマーと酸化剤のモル比が、酸化剤を1とした場合に3:1以上であるもの。
(b)含浸する重合性モノマーと酸化剤のモル比を、酸化剤を1とした場合に3:1未満としたもの。
アルミニウム箔の表面にエッチング層および酸化皮膜層(化成電圧4V)が形成された陽極箔と、アルミニウム箔の表面にエッチング層が形成された陰極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成した。なお、セパレータとしては、40μmの6−ナイロンのナノ繊維からなる不織布を用いた。
このコンデンサ素子を、導電化された導電性ポリアニリンを含有する溶液を入れた容器内に浸漬し、陽極箔に電圧を印加した(3V)。その後、コンデンサ素子を溶液から引き出し、50℃で90分間熱処理して溶媒を除去した。この導電性ポリアニリンフィルムの形成工程を3回行った。なお、導電性ポリアニリン溶液としては、パラキシレンを溶媒とした2wt%の導電性ポリアニリン溶液を用いた。
続いて、酸化剤(P−トルエンスルホン酸第二鉄)とEDTモノマーの混合溶液(ブタノール溶液)に浸漬し、60℃で30分、150℃で60分の加熱重合を行い、導電性ポリマー層を形成した。
そして、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケース(アルミニウムケース)に挿入し、開口端部に封口ゴム(ブチルゴム)を装着して、加締め加工によって封止した。その後に、150℃、120分、3.5Vの電圧印加によってエージングを行い、固体電解コンデンサを形成した。
実施例1における導電性ポリアニリンフィルムの形成方法を変えたものであって、導電化されたポリアニリンを含有する溶液を、ノズルを用いてコンデンサ素子に含浸した後、コンデンサ素子を恒温槽内に入れ、電圧(3V)印加しながら加熱処理して溶媒を除去した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様とした。
導電性ポリアニリンフィルム形成時に、電圧印加を行わなかった。その他の条件及び工程は、実施例1と同様とした。
導電性ポリアニリンフィルムを形成せずに、コンデンサ素子形成後、重合工程を行った。その他の条件及び工程は、実施例1と同様とした。
上記の方法により得られた実施例、比較例及び従来例について、電気的特性を調べたところ表1に示すような結果が得られた。
なお、耐電圧の比較は、上記各実施例、比較例及び従来例のそれぞれにおいて、陽極箔の化成電圧を42Vにし、導電性ポリアニリンフィルム形成時における陽極箔への電圧印加を35Vとしたものを用いた。
また、導電性ポリアニリンフィルムの形成方法が異なる実施例1と実施例2とを比較すると、電圧印加しながら溶媒を除去した実施例2の方が、より良好な結果が得られた。
Claims (5)
- 誘電体酸化皮膜を形成した陽極電極体上に、導電性ポリマーからなる電解質層を形成する固体電解コンデンサの製造方法において、
前記誘電体酸化皮膜を形成した陽極電極体に導電性ポリアニリン溶液を含浸し、この陽極電極体に電圧印加した後、溶媒除去して、導電性ポリアニリンフィルムを形成しつつ、この導電性ポリアニリンフィルムを前記誘電体酸化皮膜上に被着させることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 誘電体酸化皮膜を形成した陽極電極体上に、導電性ポリマーからなる電解質層を形成する固体電解コンデンサの製造方法において、
前記誘電体酸化皮膜を形成した陽極電極体に導電性ポリアニリン溶液を含浸し、この陽極電極体に電圧印加しながら溶媒除去して、導電性ポリアニリンフィルムを形成しつつ、この導電性ポリアニリンフィルムを前記誘電体酸化皮膜上に被着させることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 前記導電性ポリアニリンフィルム上に、前記導電性ポリマーからなる電解質層を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記導電性ポリマーが、チオフェン誘導体の重合体であることを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記チオフェン誘導体が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項4に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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