JP2002255548A - 混合層積層不整結晶構造デラフォサイト型酸化物とその製造方法 - Google Patents

混合層積層不整結晶構造デラフォサイト型酸化物とその製造方法

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JP2002255548A
JP2002255548A JP2001051249A JP2001051249A JP2002255548A JP 2002255548 A JP2002255548 A JP 2002255548A JP 2001051249 A JP2001051249 A JP 2001051249A JP 2001051249 A JP2001051249 A JP 2001051249A JP 2002255548 A JP2002255548 A JP 2002255548A
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delafossite
oxygen
layer
type oxide
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Hiroya Hayashi
宏哉 林
Hideo Hosono
秀雄 細野
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】新規な結晶構造を有し、特異な酸素吸収・放出
特性を有する混合層積層不整結晶構造デラフォサイト型
酸化物およびその製造方法を提供する。 【解決手段】式ABO2 (A:Cu,Ag,Pt,P
d,Au、B:Sc,Al,Ga,In,Tl,Y,L
n,Cr,Fe,Co,Ni,Tiからなる3価金属、
O:酸素)で示され、2H多形型構造層と3R多形型構
造層の混合層が積層不整の結晶構造をなしており、基本
骨格構造の原子配置変化を伴わないで加熱温度に依存し
て酸素吸収および酸素放出特性を有することを特徴とす
る混合層積層不整結晶構造デラフォサイト型酸化物。こ
の酸化物は、酸素吸収・放出材料、NOx分解触媒など
として有用である。定比組成の原料粉末を混合し、加圧
成形した後、空気中で焼成し急冷することにより2H多
形型構造層と3R多形型構造層の混合層が積層不整の結
晶構造をなしているデラフォサイト型酸化物を製造す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デラフォサイト型
酸化物、特に、新規な結晶構造を有し、特異な酸素吸収
・放出特性を有する混合層積層不整結晶構造デラフォサ
イト型酸化物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物における室温での酸素吸収は、S
rFeO25+X、La2 CoO4 などのぺロブスカイト系
酸化物、LaCuO2 またはYCuO2 などのデラフォ
サイト型酸化物においてみられる。特に、デラフォサイ
ト型酸化物は層状構造をしており、酸素原子がインター
カレーションすることが知られている。これらの酸化物
では、室温以上1200℃までの高温での酸素吸収挙動
についての異常は報告されていない。
【0003】既に、CuScO2 に関しては、2層を周
期として積み重なり結晶をなしているもので六方晶系の
対称をもつもの(以下「2H」という)と3層を周期と
して積み重なり結晶をなしているもので3方晶系の対称
をもつもの(以下「3R」という)の2つの多形の存在
が報告されている。3R多形は、LiCuO2 のLiを
Cuと置換する方法でのみ合成できる。
【0004】デラフォサイト型酸化物の用途としては、
これまでに、例えば、CuMO2 (M=Al,Cr,F
e)についてNOx分解触媒(J.of Materi
alScience,27,1353〜1356,19
92年)、光触媒(特開平10−244163号公報、
特開平11−216364号公報)、光機能性材料(特
開平11−130429号公報)、導電性透明酸化物
(特開平11−278834号公報)などが知られてい
る。
【0005】
【発明の構成】本発明者は、式ABO2 で示されるデラ
フォサイト型酸化物であるCuScO 2 に関して、従来
公知の物質である2Hまたは3Rの多形のCuScO2
と物質の組成は同じであっても、その結晶構造を混合層
積層不整結晶構造とすることにより既知の多形構造では
観測されない大変奇妙な物性、すなわち、大気中で、高
温(700〜1000℃程度)における酸化・還元に基
づく酸素の吸収・放出の前に、より低い温度(400〜
600℃)において酸素の吸収・放出が加熱温度に依存
して起こることを発見し、混合層積層不整結晶構造のデ
ラフォサイト型酸化物の特異な有用な物性を見いだし
た。
【0006】すなわち、本発明は、ABO2 (A:C
u,Ag,Pt,Pd,またはAu、B:Sc,Al,
Ga,In,Tl,Y,Ln,Cr,Fe,Co,N
i,またはTiからなる3価金属、O:酸素)で示さ
れ、2H多形型構造層と3R多形型構造層の混合層が積
層不整の結晶構造をなしており、基本骨格構造の原子配
置変化を伴わないで加熱温度に依存して酸素吸収および
酸素放出特性を有することを特徴とする混合層積層不整
結晶構造デラフォサイト型酸化物である。この混合層積
層不整結晶構造デラフォサイト型酸化物は、定比組成の
原料粉末を混合し、加圧成形した後、空気中で焼成し急
冷することにより製造することができる。
【0007】積層不整結晶構造は、粘土、SiC,Cd
2 ,カルコゲナイド化合物などで知られているが、混
合層積層不整結晶構造とは、図1に模式的に示すよう
に、2H(2層で1単位を構成し、Hはヘキサゴナルを
意味する。)多形型構造の層と3R(3層で1単位を構
成し、Rはロンボヒドラル:菱面体を意味する。)多形
型構造の層の単位格子が上方向にはランダムに混合して
積層され(混合層積層)、さらに、水平方向にはシート
状に同じ格子が続いている結晶構造であり、MX 2 組成
の複合遷移金属ダイカルコゲナイドでいくつか見出され
ている。
【0008】従来、酸化セリウムは、排ガス清浄触媒と
して知られており、酸化雰囲気下で酸素吸収し、還元雰
囲気下で酸素放出する特性が知られているが、本発明の
混合層積層不整結晶構造デラフォサイト型酸化物はこの
ような特性とは異なり、酸化・還元を伴わないで加熱温
度に依存して酸素吸収および放出特性を有する。
【0009】例えば、混合層積層不整結晶構造CuSc
2 については、大気中での昇温により、220℃で小
さな酸素放出、420℃で酸素吸収、540℃で酸素放
出、さらに、550℃からの酸化反応でCu2 Sc2
5 になった後、1050℃で還元され、再び混合層積層
不整結晶構造CuScO2 に戻り、1150℃で2H−
CuScO2 に多形転移するという特異な物性を有して
いる。
【0010】混合層積層不整結晶構造CuScO2 の大
気中での昇温過程において呼吸をしているように繰り返
される酸素吸収、放出過程は、酸化物の通常の酸化・還
元を考えると説明がつかない特異な物性である。この特
異な物性の原因は明らかではないが、200℃近傍から
550℃近傍で生じる複雑な酸素の吸収・放出過程は、
相転移が関係しているものと推測される。
【0011】図2の(A)は、デラフォサイトの結晶構
造を示している。図2の(C)は、MX2遷移金属ダイ
カルコゲナイドの結晶構造である。図2の(B)は、デ
ラフォサイトとMX2の陰イオンの配置を示している。
両者の陰イオン配置は同一である。このような陰イオン
の配置が混合層積層不整結晶構造の安定に大きくかかわ
っていると推測される。
【0012】本発明の混合層積層不整結晶構造デラフォ
サイト型酸化物は、酸化・還元によるような構造変化を
伴うことなく、より低温(CuScO2 においは、20
0℃近傍から550℃近傍)での酸素の吸収・放出が可
能であり、400℃台のNOx含有排ガス温度と一致
し、NOx分解触媒として公知のCuFeO2 よりも優
れたNOxの分解触媒として、さらに酸素吸収・放出材
料、例えば、酸素分圧保持剤、燃料電池の酸素電極材等
として有用性が大である。
【0013】混合層積層不整結晶構造CuScO2 の粉
末は、定比組成のCu2 OとSc23 とを混合し、例
えば10tプレスを用いて加圧成形した後、空気中10
50〜1100℃の温度で16〜48時間程度加熱し、
大気中で5℃/秒以上の冷却速度で急冷することにより
合成できる。大気中の合成では、1043℃より低い温
度ではCu2Sc25 が生成し、また、1120℃以上
では2H−CuScO 2 が生成するので加熱温度は上記
の範囲内とする。反応時間が16時間未満では、反応は
完結しない。また、48時間を超えると、CuOの蒸発
が懸念される。
【0014】以下に、本発明の混合層積層不整結晶構造
のデラフォサイト型酸化物の具体例である混合層積層不
整結晶構造CuScO2 についてその製造法と物性につ
いて具体的に説明する。
【0015】混合層積層不整結晶構造CuScO2 の粉
末試料を、定比組成のCu2 O(純度95%以上)とS
2 3 (純度98%以上)とを乳鉢で混合し、10t
プレスで錠剤に整形した後、加熱炉内において空気中、
1050℃の温度で24時間加熱し、炉内から取り出す
ことによって急冷した。
【0016】2H−CuScO2 の粉末試料は、同様に
して、加熱炉内において空気中1150℃の温度で24
時間加熱し、炉内から取り出すことによって急冷した。
【0017】化合物の昇温過程における酸素吸収、酸素
放出過程はTAインスツルメンツ社製のTG5000/
2050を用いて定量的に測定した。大気中で、室温か
ら900℃までの温度範囲で測定を行った。昇温速度は
0.05℃/minから1.25℃/minの範囲で選
択した。結晶構造の同定ならびに格子定数の測定は粉末
X線回折法で行った。Philips社製PW3050
を用いて、グラファイトモノクロメーターで単色したC
uKαを線源として2θが10°から80゜の範囲でス
テップ走査で測定を行った。
【0018】また、熱重量法(TG)を用い、合成した
試料粉末の酸素含有量を求めた。試料を空気中900℃
で24時間以上かけて酸化してCu2 Sc2 5 にまで
完全に酸化したときの重量増加から酸素含有量を求め
た。なお、金属の比は原料の金属比が変わらないものと
している。
【0019】図3に、本発明の混合層積層不整結晶構造
デラフォサイト型酸化物である混合層積層不整結晶構造
CuScO2 の粉末X線回折図形を示す。図3中の
(A)は、2H−CuScO2 、(B)は、混合層積層
不整結晶構造CuScO2 、(C)は、Cu2 Sc2
5 の粉末X線回折図形である。これらの粉末X線回折図
形は、混合層積層不整結晶構造CuScO2 を大気中で
昇温する過程で表れる酸化物のものである。
【0020】2H−CuScO2 は、2層周期の構造
で、3R周期の構造のものも報告されているが、混合層
積層不整結晶構造CuScO2 の酸化還元過程では3R
周期の構造のものは出現しない。
【0021】混合層積層不整結晶構造CuScO2 の粉
末X線回折図形は、鋭い001、hk0ピークと広がっ
たhklピークに特徴があり、シャープなピークとブロ
ードなピークが混在していることから、混合層積層不整
であることが分かる。この粉末X線回折図形は、積層不
整結晶構造の化合物に特有のものである。
【0022】CuScO2 の混合層積層不整結晶構造で
は、1050℃〜1070℃で合成したものは、2H層
と3R層の数の割合は、30%が2H層で、70%が3
R層である。また、1080〜1100℃で合成したも
のは、50%が2H層で、50%が3R層になってい
る。
【0023】2H層と3R層の数の割合は、2Hが80
%を超えると420℃近傍の酸素吸収が小さくなる。図
3(B)の粉末X線回折図形は、30%2Hの混合層積
層不整結晶構造のものである。混合層積層不整結晶構造
の構造解析は、モンテカルロ法で1000層の積層モデ
ルを作り、それに基づき粉末X線回折のシュミレーショ
ン図を計算して、観測データとの比較により構造を確定
した。
【0024】Cu2 Sc2 5 は、NaCl構造を基本
として、それがinter growthした構造にな
っている。銅とスカンジウムの酸化物における一番高い
酸化状態のものであり、図3(C)に示した粉末X線回
折図形は、大気中900℃でML−CuScO2 を酸化
した結果得られたCu2 Sc2 5 のものである。
【0025】図4に、混合層積層不整結晶構造CuSc
2 の大気中における昇温速度0.05℃/minのT
G曲線を示す。図4では、3個所の重量減少(A,C,
E)と3箇所の重量増加(B,D,F)がみられる。D
−Fの過程は不可逆であり、Fの過程では構造変化とと
もに酸化しCu2 Sc2 5 に変わる。A−Cの過程は
可逆的であり、A−Eまでの過程は酸素吸収、放出に伴
う格子体積の増減が認められる。このことより、基本骨
格構造の原子配置変化を伴わないで加熱温度に依存して
酸素吸収および酸素放出が行われることが分かる。
【0026】さらに、昇温過程での混合層積層不整結晶
構造CuScO2 の重量の増減を中心にこのTG曲線を
検討する。図5に示すように、室温でCuScO2+X
過剰酸素量xが0.057の試料は、昇温にともない重
量減少を示し、200℃近傍でCuScO2+X の過剰酸
素量xがゼロになる。
【0027】ここから酸素吸収が始まり420℃でx=
0.221まで重量増加する。ここから急激な短い酸素
放出過程があり、445℃でx=0.194まで重量減
少する。再び、ここから酸素吸収が生じ、515℃で、
x=0.236まで重量増加する。ここから三度目の短
い酸素放出が始まり540℃で、x=0.226まで重
量減少する。
【0028】この温度以上では酸化反応に伴う重量増加
が生じ、構造もCu2 Sc2 5 に変わる。図示してい
ないが、DTAによれば、1036℃で大きな吸熱を伴
いながら還元が起こり、再び混合層積層不整結晶構造C
uScO2 に戻る。1150℃以上では2H−CuSc
2 になるが、ML−2H間の転移温度は明確ではな
い。
【0029】3つの還元された状態と2つの酸化された
状態の相について、急冷した試料における粉末X線回折
図形の観察からは回折ピーク強度に若干の相違がある程
度でピークの数に変化は見られないし、ピーク位置にも
大きな変化はみられない。しかし、格子の体積は酸素の
吸収、放出に応じて膨張、収縮を示す。
【0030】LaCuO2 およびYCuO2 が室温で酸
素をインターカレーションすることおよび格子体積の膨
張収縮と酸素吸収・放出の対応を考慮すると、これらの
酸素吸収・放出は酸化物表面での酸素分子の吸着脱離現
象ではなく、CuScO2 格子間に酸素がインターカレ
ーションされたことを示唆するものである。
【0031】ここでは、仮に3つの還元された相と2つ
の酸化された相があるものとして、これらにRDI、R
D2、RD3およびOX1,OX2と名前をつけて、大
気中における混合層積層不整結晶構造のCuScO2+X
の酸素吸収、放出過程、酸化、還元過程を整理すると図
6のようになる。
【0032】なお、この図6において、速い昇温過程
(rapid process)と記された反応は、昇
温速度1.25℃/minのデータから求めた。また、
遅い昇温過程(slow process)と記された
反応は、昇温速度0.05℃/minのデータから求め
たものである。
【0033】また、図6に示しているように、2H−C
uScO2 では、昇温速度に関わらず、Cu2 Sc2
5 に酸化される過程は見られるが、混合層積層不整結晶
構造CuScO2 にみられた200℃近傍から550℃
近傍までの複雑な酸素吸収・放出過程は全く見られな
い。したがって、この複雑な酸素吸収・放出過程は酸化
物CuScO2 に固有の性質ではなく、混合層積層不整
結晶構造に固有のものと推認できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、混合層積層不整結晶構造デラフォサイ
ト構造の模式図である。
【図2】図2は、混合層積層不整結晶構造を安定にする
陽イオン配置の模式図である。
【図3】図3は、本発明の混合層積層不整結晶構造Cu
ScO2 の粉末X線回折結果を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の混合層積層不整結晶構造Cu
ScO2 の大気中における昇温速度0.05℃/min
のTG曲線を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の混合層積層不整結晶構造のC
uScO昇温過程における重量増減を示すグラフであ
る。
【図6】図6は、本発明の混合層積層不整結晶構造のC
uScO2+X の酸素吸収、放出過程、酸化、還元過程を
整理した説明図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C01G 3/00 C01G 3/00

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式ABO2 (A:Cu,Ag,Pt,P
    d,またはAu、B:Sc,Al,Ga,In,Tl,
    Y,Ln,Cr,Fe,Co,Ni,またはTiからな
    る3価金属、O:酸素)で示され、2H多形型構造層と
    3R多形型構造層の混合層が積層不整の結晶構造をなし
    ており、基本骨格構造の原子配置変化を伴わないで加熱
    温度に依存して酸素吸収および酸素放出特性を有するこ
    とを特徴とする混合層積層不整結晶構造デラフォサイト
    型酸化物。
  2. 【請求項2】 AがCuであり、BがScであることを
    特徴とする請求項1記載の混合層積層不整結晶構造デラ
    フォサイト型酸化物。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の酸化物からなる
    ことを特徴とする酸素吸収・放出材料。
  4. 【請求項4】 請求項1または2記載の酸化物からなる
    ことを特徴とするNOx分解触媒。
  5. 【請求項5】 定比組成の原料粉末を混合し、加圧成
    形した後、空気中で焼成し急冷することにより2H多形
    型構造層と3R多形型構造層の混合層が積層不整の結晶
    構造をなしているデラフォサイト型酸化物を製造する方
    法。
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