JP2002240147A - インフレーション製膜方法とその装置 - Google Patents

インフレーション製膜方法とその装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 たとえ剛直な硬い熱可塑性液晶ポリマーを用
いる場合でも、異方性が緩和されたフィルムを安定して
得ることができるインフレーション製膜方法とその装置
を提供する。 【解決手段】 原料樹脂をチューブ状に溶融押出して、
このチューブ状の溶融物を冷却しながらその内方空間に
気体を供給して膨張させることによりバブル4を形成
し、このバブル4をシート状に折り畳みながら引き取っ
て円筒状延伸フィルム10を得るインフレーション製膜
装置において、前記バブル4の横延伸倍率の変化量を測
定するバブル径測定装置8と、前記フィルム10の分子
配向度を測定する分子配向度測定装置9と、前記バブル
径測定装置8で測定される横延伸倍率の変化量と前記分
子配向度測定装置9で測定されるフィルム10の分子配
向度SORとに基づき、前記バブル4内へのエアー供給
量を調整してバブル径を制御するレギュレータ12を設
けた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性ポリマ
ー、特に光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポ
リマー(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーと称した
り、また、単に液晶ポリマーと略称したりすることがあ
る)からなるフィルム(以下、これを熱可塑性液晶ポリ
マーフィルムと称することがある)の成形に好適に用い
られるインフレーション製膜方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、機械
的強度、電気特性、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性など
に優れた性能を示す。したがって、熱可塑性液晶ポリマ
ーフィルムは、特に電子分野において、絶縁材料、プリ
ント基板材料、積層材料などとして注目され、その他の
分野でも、耐熱性が要求される用途、例えぱ耐熱積層材
料用途など種々の用途が期待されている。
【0003】熱可塑性液晶ポリマーフィルムを構成する
熱可塑性液晶ポリマーは、製膜装置に備えたダイのスリ
ットから吐出させると、その分子が吐出方向に配向し、
そのままでは液晶ポリマー分子の大部分がほとんど同一
方向(フィルムの長手方向、すなわちMD方向)に配向
し、得られる熱可塑性液晶ポリマーフィルムはMD方向
に裂け易い。しかも、MD方向とこれと直角方向のTD
方向とで熱膨張係数や熱寸法変化率が異なるなどの物性
に差異がある熱可塑性液晶ポリマーフィルムとなる。言
い換えれば、MD方向とTD方向とで物性が異なること
を異方性、逆にほぼ等しいことを等方性と称すれば、前
記熱可塑性液晶ポリマーフィルムは異方性となる。
【0004】この異方性フィルムは、MD方向とTD方
向とで例えば熱寸法変化率や熱膨張係数が異なるので、
回路基板特に精密回路基板の絶縁材料として用いる場
合、この回路基板の製造途中で、回路基板に反りや歪み
を生じたり、回路基板上の回路配線の位置ずれを生じた
りするために実用に供し得ない。
【0005】この異方性を緩和するために従来より種々
の製膜方法が提案されている。その一つは、(a)環状
スリットを介して相互に反対方向に回転する可動ダイリ
ップを用いて溶融液晶ポリマーを吐出させるいわゆる回
転ダイを用いるインフレーション製膜方法である(例え
ば特公昭62−33931号、特開昭53−88060
号、特開昭63−199622号、特開平1−1309
30号、特表平3−504948号、特開平2−896
16号、特表平4−506779号各公報)。また、
(b)Tダイで横方向に磁場をかける製膜方法(例えば
特開昭63−242513号公報)、(c)Tダイなど
を用いて得られる異方性液晶ポリマーフィルムを合成樹
脂フィルムとラミネートし、このラミネート体を横延伸
(MD方向よりも大きい延伸倍率でTD方向に延伸)す
る後加工方法(例えば特開平7−323506号、特開
平7−251438号、特開平9−131789号各公
報)、(d)静止環状ダイを用いるインフレーション製
膜方法(例えば特開平2−3430号、特開平2−88
212号各公報)などがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記(a)の
方法では、フィルムの表面と裏面における液晶ポリマー
分子の配向方向が交差して厚さ方向の全体として配向バ
ランスが保たれているが、これらの方法に用いられる特
殊なダイから吐出された溶融液晶ポリマーフィルムは、
ダイから吐出された直後の溶融状態から冷却され、半溶
融状態を経てさらに冷却されて固化に至るフィルム形成
過程において、バブルのネック部とエクスパンド部の表
面および裏面で収縮する方向が交差する。したがって、
これら表面と裏面において方向の異なる収縮応力が発生
し、ネック部とエクスパンド部が捩れるように応力が作
用して、形状が不安定で変わり易いので、長時間安定し
た製膜が困難である。しかも、実用に供することができ
るような膜厚分布が良好な平坦なフィルムが得られにく
い。
【0007】また、上記(b)の方法では、磁場による
作用は小さくて、分子の配向角が効果的に変化するため
に要する時間が長く、実際の製膜に利用できる程度の著
しい異方性緩和は期待できず、実用に供し得る等方性フ
ィルムを得ることは困難である。
【0008】さらに、上記(c)の方法は、異方性緩和
という目的においては有効で、実用に供し得る等方性フ
ィルムを得ることができるが、生産効率の点で問題があ
る。
【0009】上記(d)の方法は、異方性を緩和するた
めに、溶融液晶ポリマーを環状ダイからチューブ状に吐
出してバブルを形成したあと、このバブルにガス内圧を
かけることにより横方向に延伸させる方法であるが、完
全に異方性を解消するためには、横方向の延伸倍率を大
きくする必要がある。しかしながら、横延伸倍率を大と
して異方性を解消しようとすると、バブルが不安定にな
って安定した横延伸倍率を保つことが難しく、均一なフ
ィルムを安定して得ることができない。
【0010】本発明者らは、インフレーション製膜方法
において、異方性が緩和されたフィルムを安定して得る
ことができる製膜方法について鋭意研究を行った結果、
次のことを見い出した。芳香族ポリエステルなどの剛直
性の高い樹脂を前記従来の方法で製膜する場合、バブル
内の空気圧を高める必要があるので、得られるフィルム
に径変動が起こる。また、樹脂溶融張力、樹脂溶融温
度、樹脂吐出量、フィルム引取り速度、冷却エアー能力
などの経時的変動によりバブルの径変動が激しく発生す
るときに、分子配向度の変化が起こる。さらには、フィ
ルムの分子配向度とバブルの横延伸倍率の変化量との間
には、下記の式に示す相関関係があって、バブル径を制
御しながら製膜すれば、得られるフィルムの分子配向度
を小として異方性を緩和できることを知った。
【0011】つまり、インフレーション製膜方法におい
ては、以下の関係式がある。フィルム膜厚をtとし、ダ
イのギャップをTとすれば、 トータル延伸倍率T/t=Dr(縦延伸倍率)×B1 (横延伸倍率) (1) Dr=V/V0 (引き取り速度/樹脂吐出速度) (2) B1 =D/D0 (バブル直径/ダイ直径) (3) の関係があるので、式(3)の横延伸倍率B1 を大とす
ることにより、分子配向度を小として異方性の緩和され
たフィルムとなる。
【0012】また、異方性を確認するには、分子の配向
の度合いから判断して分子配向度SOR(Segment Orie
ntation Ratio )を測定する手法が簡便な方法である。
ここで、分子配向度SORとは、分子を構成するセグメ
ントについての分子配向の度合いを与える指標をいい、
従来のMOR(Molecular Orientation Ratio )とは異
なり、物体の厚さを考慮した値である。この分子配向度
SORは、以下のように算出される。
【0013】まず、周知のマイクロ波分子配向度測定機
を用いて、液晶ポリマーフィルムをマイクロ波の進行方
向にフィルム面が垂直になるようにマイクロ波共振導波
管中に挿入し、フィルムを透過したマイクロ波の電場強
度(マイクロ波透過強度)を測定する。そして、前記測
定値に基づいて次式により、m値(屈折率と称する)を
算出する。 m=(Zo/△z)×[1−νmax/νo] ここで、Zoは装置定数、△zは物体の平均厚、νma
xはマイクロ波の振動数を変化させたとき、最大のマイ
クロ波透過強度を与える振動数、νoは平均厚ゼロのと
き(すなわち物体がないとき)の最大マイクロ波透過強
度を与える振動数である。次に、マイクロ波の振動方向
に対する物体の回転角が0°のとき、つまりマイクロ波
の振動方向と、物体の分子が最もよく配向されている方
向であって、最小マイクロ波透過強度を与える方向とが
合致しているときのm値をmoとし、また回転角が90
°のときのm値をm90として、これらのmo/m90によ
り分子配向度SORを算出する。
【0014】さらに、バブル径と分子配向度SORの関
係を図6に示す。同図のように、横延伸により膨張され
るバブルの径と分子配向度SORは、互いに反比例の関
係にあるので、バブル径を制御すれば、異方性が緩和さ
れたフィルムが得られる。
【0015】本発明者らは、以上のような知見に基づ
き、さらに研究を行った結果、たとえ剛直な硬い熱可塑
性液晶ポリマーを用いる場合でも、異方性が緩和された
均一なフィルムを安定して得ることができるに至った。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明のインフレーショ
ン製膜方法は、バブルの横延伸倍率の変化量とフィルム
の分子配向度との関係に基づき、前記バブル内へのエア
ー供給量を調整して、このバブルの径を制御する。ま
た、本発明のインフレーション製膜装置は、バブルの横
延伸倍率の変化量を測定するバブル径測定装置と、フィ
ルムの分子配向度を測定する分子配向度測定装置と、前
記バブル径測定装置で測定される横延伸倍率の変化量と
前記分子配向度測定装置で測定されるフィルムの分子配
向度とに基づき、前記バブル内へのエアー供給量を調整
してバブル径を制御するレギュレータを備えている。
【0017】以上のように、バブルの横延伸倍率の変化
量とフィルムの分子配向度との関係に基づき、前記バブ
ル内へのエアー供給量を調整して、このバブル径を制御
することにより、異方性を緩和したフィルムが安定して
得られる。
【0018】以上の方法や装置には、熱可塑性液晶ポリ
マーが好適に用いられる。このような剛直な硬いフィル
ムとなる熱可塑性液晶ポリマーを用いる場合でも、フィ
ルムの異方性が緩和されたフィルムが安定して得られ
る。
【0019】本発明の液晶ポリマーフィルムは、その適
用分野によって必要とされる分子配向度SORは当然異
なるが、SOR≧1.50の場合は液晶ポリマー分子の
配向の偏りが著しいためにフィルムが硬くなり、かつM
D方向に裂け易い。逆にSOR≦0.70の場合はTD
方向に裂け易い。加熱時の反りがないなどの形態安定性
が必要とされるプリント配線板や多層プリント配線板な
どの場合には、0.90≦SOR≦1.3であることが
望ましい。特に加熱時の反りをほとんど無くす必要があ
る精密プリント配線板や多層プリント配線板などの場合
には、0.97≦SOR≦1.03であることが望まし
い。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面
にしたがって説明する。図1は、インフレーション製膜
装置の全体構造を示す概略図である。同図の製膜装置
は、押出機1の樹脂吐出方向前部側にマンドレル2とダ
イ3を取り付けている。このダイ3からは高温の溶融液
晶ポリマーがチューブ状に押出され、冷却されながら内
方空間に空気や窒素などの気体が供給され、内圧により
膨張されてバブル4となり、その上部側が左右一対のロ
ール5によりシート状に折り畳まれて、複数のガイドロ
ール6を経てターレットワインダー7により熱可塑性液
晶ポリマーフィルム10として引き取られる。
【0021】図2は前記バブル4の拡大図である。この
バブル4は、樹脂吐出方向に順に、ネック部41、エク
スパンド部42、シリンダー部43に分かれている。前
記ネック部41とは、ダイ3の環状スリットから吐出さ
れた溶融液晶ポリマーが形成する径の比較的小さいチュ
ーブ状の部分である。前記バブル4は、気体が導入され
ることによって外周方向に膨張して径を増大させる力を
受け、実際に径が増大する領域をエクスパンド部42と
称している。高温の溶融液晶ポリマーは、前記ネック部
41とエクスパンド部42の領域を経て冷却固化され、
もはや径が増大しない領域をシリンダー部43と称して
いる。
【0022】図1,2のように、前記バブル4における
シリンダー部43の外周囲に、バブル4の横延伸倍率の
変化量を測定するバブル径測定装置8を配置するととも
に、前記ターレットワインダ−7の近くに、これに巻き
取られる直前の液晶ポリマーフィルム10の分子配向度
SORを測定する分子配向度測定装置9を配置する。そ
して、前記バブル径測定装置8と分子配向度測定装置9
をCPU11(バブル径測定値とSOR測定値から最適
なSORとなるようにバブル径を調整する装置)の入力
側に接続し、このCPU11の出力側にはレギュレータ
12と、これにより開閉制御されて、前記バブル4内へ
のエアー供給量を調整してバブル径を調整するバルブ1
3を接続する。
【0023】図3は、バブル径測定装置8の一実施形態
を示す平面図である。同図の測定装置8は、レーザービ
ーム出射口81と、これと対向するレーザービーム受光
口82を有するレーザー変位センサー83の2基を有
し、これらを前記バブル4を遮るように2ヵ所に対向配
置し、遮られたレーザー光の強度を測定することによ
り、バブル4のAとBの変動を測定する。バブル4の径
は以下の式で求められる。バブル径=A+D+B
【0024】図4は、分子配向度測定装置9の一実施形
態を示す概念図である。同図の測定装置9は、マイクロ
波発信器91とマイクロ波受信器92および共振器93
を備え、この共振器93の内部に前記フィルム10をマ
イクロ波の進行方向に対し垂直となるように挿入通過さ
せて、フィルム10を透過したマイクロ波の電場強度
(マイクロ波透過強度)を測定する。そして、この電場
強度に基づいて、前述した式 m=(Zo/△z)×[1−νmax/νo] により、分子配向度SORを算出する。
【0025】次に、以上の製膜装置によりフィルム10
を成形するときの制御態様について説明する。図5は自
動製膜するときのフローチャートを示している。まず、
成形するフィルム10の分子配向度SOR値と許容値△
SOR値が設定され(S1)、前記分子配向度測定装置
9により測定された成形されるフィルム10のSOR値
が読み取られる(S2)。次に、前記分子配向度測定装
置9により測定されたフィルム10のSOR値と前記設
定SOR値とが比較される(S3)。
【0026】そして、測定SOR値が設定SOR値より
も大きいか小さい場合には、図6に示すバブル径とSO
R値の関係に基づいて設定されたバブル径(S4)と、
前記バブル径測定装置8により実際に測定されたフィル
ム10のバブル径(シリンダー径)(S5)とが比較さ
れる(S6)。このとき、設定バブル径よりも測定バブ
ル径が大きいか小さい場合には、CPU11からの出力
信号によりレギュレータ12を介してバルブ13が開閉
制御され、前記バブル4内へのエアー供給量が調整され
て、バブル径が前記ステップS4で設定された最適なバ
ブル径と同一になるように内圧が調整される(S7)。
例えば、バブル径が設定バブル径よりも小さい場合は、
バブル内圧を高くし、逆に設定バブル径よりも大きい場
合は、バブル内圧を低くする。なお、前記ステップS3
とS6において、各比較値が同一のときには、ステップ
S2からの動作を繰り返して行う。
【0027】本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマー
は特に限定されるものではないが、その具体例として、
以下に例示する(イ)から(ニ)に分類される化合物お
よびその誘導体から導かれる公知のサーモトロピック液
晶ポリエステルおよびサーモトロピック液晶ポリエステ
ルアミドを挙げることができる。但し、光学的に異方性
の溶融相を形成し得るポリマーを得るためには、各々の
原料化合物の組み合わせには適当な範囲があることは言
うまでもない。
【0028】(イ)芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化
合物(代表例は表1参照)
【0029】
【表1】
【0030】(ロ)芳香族または脂肪族ジカルボン酸
(代表例は表2参照)
【0031】
【表2】
【0032】(ハ)芳香族ヒドロキシカルボン酸(代表
例は表3参照)
【0033】
【表3】
【0034】(ニ)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシ
アミンまたは芳香族アミノカルボン酸(代表例は表4参
照)
【0035】
【表4】
【0036】これらの原料化合物から得られる熱可塑性
液晶ポリマーの代表例として表5に示す構造単位を有す
る共重合体(a)〜(e)を挙げることができる。
【0037】
【表5】
【0038】また、本発明に使用される熱可塑性液晶ポ
リマーとしては、フィルムの所望の耐熱性および加工性
を得る目的においては、約200〜約400℃の範囲
内、とりわけ約250〜約350℃の範囲内に融点を有
するものが好ましいが、フィルム製造の点からは、比較
的低い融点を有するものが好ましい。
【0039】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限される
ものではない。なお、以下の実施例において、熱可塑性
液晶ポリマーフィルムの融点は以下の方法により測定し
た。
【0040】融点示差走査熱量計を用いて、フィルムの
熱挙動を観察して得た。つまり、供試フィルムを20℃
/分の速度で昇温して完全に溶融させた後、溶融物を5
0℃/分の速度で50℃まで急冷し、再び20℃/分の
速度で昇温した時に現れる吸熱ピークの位置を、フィル
ムの融点として記録した。
【0041】実施例1 図1に示す本発明の製膜装置を使用し、図5のような制
御を行いながらインフレーションフィルムを製造した。
原料として、p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ
−2−ナフトエ酸の共重合物で、融点280℃の光学的
異方性の溶融物を形成する性質を有する芳香族ポリエス
テルのペレットを用い、これを予め150℃の温度で6
時間加熱し、60mmφの押出機を用いて290℃で溶
融押出し、直径25mmの環状スリット(間隙0.5m
m)からチューブ状に押出した。このチューブ状の溶融
物の外表面を冷却しながら、内方空間に空気を供給し
て、内圧により膨張させてバブル4を形成した。このと
き、前記バブル径測定装置8と分子配向度測定装置9に
よる測定結果に基づき、レギュレータ12を介してバル
ブ13を開閉制御しながら、バブル4の内圧を予め設定
した最適なバブル径と同一になるように調整した。そし
て、前記バブル4をシート状に折り畳みながら、ターレ
ットワインダー7により引き取って平均膜厚は50μm
の熱可塑性液晶ポリマーフィルム10を得た。
【0042】比較例1 前記バブル径測定装置8と分子配向度測定装置9に基づ
くバブルの制御を行うことなく、その他は実施例1と同
様にしてインフレーション製膜を行った。
【0043】図7は、上記実施例1と比較例1により得
られるフィルムの分子配向度SORの変化を示してい
る。同図から明らかなように、比較例1ではSORが激
しく変動するのに対し、実施例1ではSORの変動が極
めて小さい。
【0044】また、表6には、上記実施例1と比較例1
によるインフレーション製膜時間32時間における分子
配向度SORの測定結果を示している。同表において
は、測定された分子配向度SORのMax(最大値)、
Min(最小値)、Ave(平均値)、MaxーMin
(最大値と最小値の差)、(MaxーMin)/Ave
(差の平均値)をそれぞれ示している。
【0045】
【表6】
【0046】同表で示したように、上記比較例1では最
大値と最小値の差が0.025で、また差の平均値も
0.025であるのに対し、上記実施例1では最大値と
最小値の差が0.011で、また差の平均値も0.01
1となって非常に小さい。以上のことから、実施例1に
よれば、異方性が緩和されたフィルムが長時間安定して
得られることが理解できる。
【0047】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、たとえ
剛直な硬い熱可塑性液晶ポリマーを用いる場合でも、異
方性が緩和されたフィルムを安定して得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるインフレーション製膜装置の全
体構造を示す概略図である。
【図2】バブルの拡大図である。
【図3】バブル径測定装置の一実施形態を示す平面図で
ある。
【図4】分子配向度測定装置の一実施形態を示す概念図
である。
【図5】自動製膜するときの制御態様を示すフローチャ
ートである。
【図6】バブル径と分子配向度SORの関係を示す特性
図である。
【図7】実施例1と比較例1により得られるフィルムの
分子配向度SORの変化を示す特性図である。
【符号の説明】
4…バブル、8…バブル径測定装置、9…分子配向度測
定装置、10…円筒状延伸フィルム、12…レギュレー
タ。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料樹脂をチューブ状に溶融押出して、
    このチューブ状の溶融物を冷却しながらその内方空間に
    気体を供給して膨張させることによりバブルを形成し、
    このバブルをシート状に折り畳みながら引き取って円筒
    状延伸フィルムを得るインフレーション製膜方法におい
    て、前記バブルの横延伸倍率の変化量と前記フィルムの
    分子配向度との関係に基づき、前記バブル内へのエアー
    供給量を調整して、このバブルの径を制御することを特
    徴とするインフレーション製膜方法。
  2. 【請求項2】 前記原料樹脂が熱可塑性液晶ポリマーで
    ある請求項1に記載のインフレーション製膜方法。
  3. 【請求項3】 原料樹脂をチューブ状に溶融押出して、
    このチューブ状の溶融物を冷却しながらその内方空間に
    気体を供給して膨張させることによりバブルを形成し、
    このバブルをシート状に折り畳みながら引き取って円筒
    状延伸フィルムを得るインフレーション製膜装置におい
    て、 前記バブルの横延伸倍率の変化量を測定するバブル径測
    定装置と、 前記フィルムの分子配向度を測定する分子配向度測定装
    置と、 前記バブル径測定装置で測定される横延伸倍率の変化量
    と前記分子配向度測定装置で測定されるフィルムの分子
    配向度とに基づき、前記バブル内へのエアー供給量を調
    整してバブル径を制御するレギュレータを備えているこ
    とを特徴とするインフレーション製膜装置。
  4. 【請求項4】 前記原料樹脂が熱可塑性液晶ポリマーで
    ある請求項3に記載のインフレーション製膜装置。
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