JP2004299216A - フィルム熱処理装置 - Google Patents

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Tsuyoshi Takenaka
剛志 武中
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Abstract

【課題】リタデーションが小さくかつ幅方向にバラツキの少ない、光学的等方性に優れた耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを生産するための熱処理装置を提供する。
【解決手段】少なくともフィルム繰り出し部、エアフローティング式の加熱炉、フィルム巻き取り部を有し、ロール状の耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを加熱炉の出入り口にそれぞれに配置された2本のロール間でフィルム加工方向に張力を加えて熱処理を行う熱処理装置において、加熱炉の内部にフィルム幅方向に温度差をつけることが可能な構造を有していることを特徴とするフィルム熱処理装置。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱性熱可塑性樹脂フィルムをロールトゥロールで熱処理を行う装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来液晶パネルの基板としはガラスが使用されているが、パネルの軽量化、可撓性や耐衝撃性の向上のため、近年プラスティック基板の検討が盛んに行われておりすでに一部で実用化が進んでいる。
プラスティック基板の材料としては、ポリエーテルサルフォン、エポキシ、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリエステル等の耐熱性樹脂が検討されているが、それらの製法は溶融押出し法、溶液流延法、溶液注型法等が用いられる。これら製法のうち、生産性、コストの面では溶融押出し法がもっとも優れているが、加熱溶融させた樹脂をフィルム化する際に発生する分子配向によりフィルムのリタデーションや屈折率楕円体の光学的主軸の振れといった光学的異方性が欠点として明らかになっている。
【0003】
また、DVD等の光記憶媒体も記録の高密度化または小型化に伴い、従来のポリカーボネート等の射出成形による製法から、ポリカーボネートや環状ポリオレフィン等のフィルムを使用した構成の検討がなされている。この場合はフィルムの製法としては溶液流延法、溶融押出し法のいずれかになるが、コスト生産性の面からは溶融押出し法が優れている反面、液晶用途と同様に光学異方性が問題となる。
【0004】
溶融押出しフィルムの光学的異方性を改善するため、樹脂のガラス転移点に近い温度で加工方向に張力を加えることにより分子配向を制御して、リタデーションの低減を図る方法が特許文献1にのべられている。この方法によりリタデーションは改善され、モノクロのSTN型等の液晶表示パネルでは実用に耐えうるレベルのフィルムを作製することは可能である。しかしながら、近年液晶表示パネルのカラー化、高細密化が進み、さらに光学的異方性の小さいフィルムが求められていることへの対応は困難である。
【0005】
溶融押出し法によりフィルム化を行う場合、溶融樹脂がダイスから押出される際のネックインや冷却ロールに達するまでの雰囲気の温度ムラ、冷却ロールで固化される際のフィルム端部と中央部収縮挙動の違い等による分子配向の偏りにより、でき上がったフィルムのリタデーションや光学的主軸の方向にはフィルム幅方向の分布が存在する。フィルムの幅方向の中央部分は比較的安定しているが、両端では偏りが顕著である。
このような幅方向に分布を持つフィルムをガラス転移温度近くで張力を加えて分子配向を制御してリタデーションを低減化しようとした場合、フィルム幅方向に均一な張力を負荷して処理を行っても、フィルム製膜時に形成された幅方向の分布は完全に解消しない。したがって、処理後のフィルムはリタデーションの平均値は低減されるが、幅方向に分布を持つため、フィルム幅方向のリタデーションの改善が望まれている。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−15692号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、リタデーションが小さくかつ幅方向にバラツキの少ない、光学的等方性に優れた耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを生産するための熱処理装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1)少なくともフィルム繰り出し部、エアフローティング式の加熱炉、フィルム巻き取り部を有し、ロール状の耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを加熱炉の出入り口にそれぞれに配置された2本のロール間でフィルム加工方向に張力を加えて熱処理を行う熱処理装置において、加熱炉の内部にフィルム幅方向に温度差をつけることが可能な構造を有していることを特徴とするフィルム熱処理装置、
(2)加熱炉の内部にフィルム幅方向に温度差をつけることを目的とした加熱装置が赤外線ヒーターであることを特徴としたフィルム熱処理装置、
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明による熱処理装置は図1に示されるように、ロール状のフィルムを連続的に処理を行うものであり、少なくともフィルム繰り出し部11、加熱炉14、フィルム巻き取り部17で構成される。フィルム繰り出し部11、加熱炉14、フィルム巻き取り部17はそれぞれ独立した張力で制御されていることが好ましく、そのためにはそれぞれの間で張力をカットするニップロール12、16またはサクションロールを配置することが好ましい。
【0010】
また、加熱炉14については、炉内すなわち熱処理区間に搬送用ロールを配さないエアフローティング方式の加熱炉が好ましい。熱処理区間でロール等に接触すると、接触部で応力が生じ、その結果分子配向に乱れが生じるために好ましくない。したがって、熱処理区間では加熱炉の出入り口に配置された加熱炉入口ロール13と加熱炉出口ロール15との2本のロール間でフィルムが張られた状態になることになる。
【0011】
さらには、熱処理装置にはEPC(エッジポジションコントローラー)、ジョイント装置、ウェブクリーナー、位相差計、厚み計、非接触フィルム温度計、アキュムレーター、ターレット等の付帯設備を取り付けても構わない。
【0012】
溶融押し出し製法により作製されたフィルムは、ダイスのリップから出た樹脂の自重による延伸やネックイン、冷却による収縮、引き取り搬送時の張力、流れ方向及び厚み方向に生じる温度分布等の影響を受けるため、できたフィルムの分子配向は避けられない。一般的にはリップから冷却ロールまでの雰囲気下および冷却ロールで冷却固化される際に、幅方向つまり流れ方向に垂直な方向に分子配向が生じるが、端部に近づくに従い、引き取り張力の影響を受け流れ方向に平行なベクトルが付加されるため、流れ方向に若干傾いた配向を持つことになる。
【0013】
このようなフィルムを幅方向に均一な張力を加えながら熱処理した場合、端部近くの分子配向が中央よりも容易に矯正されリタデーションも小さくなるが、中央部のリタデーションをさらに小さくするために張力を加えつづけると、端部は流れ方向の配向が強くなり逆にリタデーションは大きくなり、幅方向に不均一なフィルムとなってしまう。
【0014】
本発明では、加熱炉内にフィルムの幅方向に温度差をつけることが可能な加熱装置を設置することで上記問題を解決できることを見出した。フィルムに一定張力を負荷する場合、フィルム温度が高い方が分子の配向が生じやすい。したがって、フィルム端部を中央側よりも低温にすることにより、フィルム端部を中央側よりも配向が生じにくい状態にすることで、リタデーションの幅方向分布がより均一なフィルムを作製できるものである。
【0015】
具体的には、例えば以下のような実施形態が可能であるが、本発明ではこれら方式に限定するものではない。
通常エアフローティング方式の加熱炉では、フィルムの搬送と温度分布を安定させるため、熱風ノズルはフィルム幅よりも広く設計されている。このような加熱炉内の熱風ノズルのうち数基について、ノズル幅をフィルム幅よりも狭くすることにより、フィルムの端部の温度が中央より低くすることが可能である。ただし、熱風ノズルすべてをフィルム幅よりも狭くするとフィルム搬送の安定性が悪くなり、蛇行などの不具合が生じるため、幅を狭くするノズル数は全体の半数以下にすることが好ましい。また、既存の熱風ノズルの幅は変更せずに既存の熱風ノズルの間に幅の狭い補助ノズルを配置し、乾燥炉の熱風よりも高温の熱風を供給することにより、相対的にフィルム端部を中央より低温にすることも可能である。
【0016】
さらには、加熱炉のノズル間にセラミックヒーター等の赤外線ヒーターを配置することで、フィルムの幅方向に温度差をつけることが可能である。赤外線ヒーターを使用することで、フィルムの幅方向の温度差を容易に制御することが可能となり、処理前のフィルム端部の分子配向状態に応じて温度差を設定することができるのため、より汎用的な装置となる。赤外線加熱装置は一体型の形態でも良いが、図2に示すように幅方向にブロック化されており、それぞれに出力設定が可能な形態にすることがより好ましい。
【0017】
なお、フィルム端部と中央部の温度差については、加工する樹脂種、厚み、処理前の分子の配向状態等に応じて適宜設定すればよいが、3℃〜10℃程度の温度差が好ましい。
【0018】
このような熱処理装置により、加工された光学用耐熱熱可塑性樹脂フィルムは、光ディスクや液晶パネルに要求される透明性や耐熱性等の樹脂本来の優れた特性に加え、リタデーションが小さく、なおかつ幅方向分布が良好なものとなる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明する。
実施例および比較例では、住友化学製のポリエーテルサルフォン樹脂:スミカエクセル4100P(ガラス転移温度223℃)を溶融押し出し法により、厚さ0.2mm、幅640mmのロール状に巻き取られたフィルムを作製したものを用いた。
このフィルムの未処理状態でのリタデーションを測定した結果、表1に示すような数値になった。
なお、リタデーションの測定は王子計測機器社製の傾斜型自動複屈折計(KOBRA−21ADH)を使用し、フィルム幅方向について等間隔で9点測定した。
【0020】
《実施例1》
前述のポリエーテルサルフォンフィルムを図1に示すような装置により熱処理を行った。装置はフィルム繰出し部、繰り出し側ニップロール、エアフローティング方式の加熱炉、巻き取り側ニップロール、フィルム巻き取り部を有した構造で、加熱炉内の熱風ノズルのうち半数を正規の800mm幅、残りの半数の熱風吹き出しスリット幅を450mmにして処理を行った。処理条件は、熱風温度220℃、加熱炉内の張力23gf/mm、ライン速度2.0m/minで行った。
加熱炉出口付近でフィルム温度を測定したところ、フィルム端部とフィルム中央で5℃の温度差が生じていた。
処理後のフィルムのリタデーションを測定した結果を表1に示す。
【0021】
《実施例2》
図1に示すような構造の装置において、加熱炉内部の熱風ノズルの間に図2のような赤外線ヒーターを2基設置(図3)して、加熱処理を行った。赤外線ヒーターの出力は過熱炉出口付近のフィルム端部と中央部の温度差が5℃になるように設定した。処理条件は熱風温度220℃、加熱炉内の張力21gf/mm、ライン速度2.0m/minで行った。
処理後のフィルムのリタデーションを測定した結果を表1に示す。
【0022】
《比較例》
実施例で用いたポリエーテルサルフォン樹脂フィルムを、加熱炉の熱風ノズルの幅がすべて同一で800mmであること以外は、実施例1と同様の装置で、かつ実施例1と同様の処理条件で熱処理を行った。
このようにして処理したポリエーテルサルフォンフィルムのリタデーションを測定した結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
Figure 2004299216
【0024】
【発明の効果】
本発明による熱処理装置によりとリタデーションが小さく、かつフィルムの幅方向のバラツキが少ない光学用熱可塑性樹脂フィルムの供給が可能となる。このフィルムに透明導電層等を付与することにより、低コストで従来のガラス基板に比べ軽量で割れに強い液晶パネルを作製することができ、また所定のディスクサイズに打ち抜き記録層や保護層等の必要な層構成に加工することにより、高品質な光ディスクを作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による熱処理装置の例である。
【図2】本発明による赤外線加熱装置の例である。
【図3】本発明による熱処理装置の過熱炉の例である。
【符号の説明】
11 … フィルム繰り出し部
12、16 … ニップロール
13 … 加熱炉入口ロール
14 … 加熱炉
15 … 加熱炉出口ロール
17 … フィルム巻き取り部
31 … 加熱炉の断面
32 … 熱風ノズル
33 … 赤外線ヒーター
34 … フィルム

Claims (2)

  1. 少なくともフィルム繰り出し部、エアフローティング式の加熱炉、フィルム巻き取り部を有し、ロール状の耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを加熱炉の出入り口にそれぞれに配置された2本のロール間でフィルム加工方向に張力を加えて熱処理を行う熱処理装置において、加熱炉の内部にフィルム幅方向に温度差をつけることが可能な構造を有していることを特徴とするフィルム熱処理装置。
  2. 加熱炉の内部にフィルム幅方向に温度差をつけることを目的とした加熱装置が、赤外線ヒーターであることを特徴とした請求項1記載のフィルム熱処理装置。
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